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  • 特許-微粒子計測装置 図1
  • 特許-微粒子計測装置 図2
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  • 特許-微粒子計測装置 図4
  • 特許-微粒子計測装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】微粒子計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20240101AFI20240510BHJP
   B01L 1/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G01N15/06 D
B01L1/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021119204
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015431
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 健
(72)【発明者】
【氏名】松村 健史
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-233343(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047409(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/06
B01L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーティクルプローブと、該パーティクルプローブに接続されたパイプと、該パイプに接続されたパーティクルカウンタを有し、微粒子を計測する微粒子計測装置であって、
前記微粒子計測装置は安全キャビネットやアイソレータに設置されるものであり、
前記微粒子計測装置は、前記パイプの外周に円筒パイプを配置し、前記パイプと前記円筒パイプの間に空気の流路を設け、
前記空気の流路は、前記安全キャビネットやアイソレータの排気循環経路につながっていることを特徴とする微粒子計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子計測装置において、
前記パイプと前記円筒パイプの間の前記流路に流量調整ダンパを設けたことを特徴とする微粒子計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の微粒子計測装置において、
設置箇所に固定された内管シャフトを有し、
前記内管シャフトは、前記パイプを内包し、第1の継手を有しており、該第1の継手により前記パーティクルプローブと前記パイプを固定できる構成であることを特徴とする微粒子計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の微粒子計測装置において、
前記パーティクルプローブはラッパ状の形状であって、該ラッパ状の先端は、接続された前記パイプの一部に第2の継手を溶接にて一体化しており、
前記第1の継手と前記第2の継手を接続することで、前記パーティクルプローブと前記パイプは前記内管シャフトを介して前記設置箇所に固定されることを特徴とする微粒子計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の微粒子計測装置において、
前記第1の継手と前記第2の継手はヘルール継手であって、クランプで接続されることを特徴とする微粒子計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の微粒子計測装置において、
前記円筒パイプは前記パーティクルプローブの長手方向にスライド可能なスライド管を有することを特徴とする微粒子計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全キャビネットやアイソレータの作業時における清浄度監視や、クリーンルームの清浄度監視に用いる微粒子計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス等の病原体の研究やワクチン開発等の医薬品の開発などで病原体等を取り扱う場合や、再生医療における細胞培養における細胞観察や培地交換などの作業には、安全キャビネットやアイソレータが使用される。
【0003】
安全キャビネットやアイソレータでは、作業時の清浄度監視を目的として、微粒子を計測するために試料を吸引するパーティクルプローブを作業室内の代表点に設置することがある。パーティクルプローブに配管を接続しパーティクルカウンタを接続することで、微粒子を計測する微粒子計測装置を構築する。クリーンルームにおける微粒子の計測も同様なシステムを構築する。
【0004】
微粒子計測装置の一例として、特許文献1がある。特許文献1には、レーザ出力変動によるレーザノイズ、空気分子などから発せられるレイリー散乱光、光学系筐体内部壁面での光反射などに起因する光ノイズの影響をなくし、微粒子を精度よく測定することが可能な微粒子計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-73070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された微粒子計測装置では、光ノイズによる測定誤差は考慮されているが、パーティクルプローブを設置する近傍の主流とパーティクルプローブ内部の流速の差異による非等速吸引誤差は考慮されていない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、非等速吸引誤差を極力抑えることができる微粒子計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一例を挙げるならば、パーティクルプローブと、パーティクルプローブに接続されたパイプと、パイプに接続されたパーティクルカウンタを有し、微粒子を計測する微粒子計測装置であって、パイプの外周に円筒パイプを配置し、パイプと円筒パイプの間に空気の流路を設けた構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非等速吸引誤差を極力抑えることができる微粒子計測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における微粒子計測装置を安全キャビネットに設置した構成図である。
図2】実施例1における微粒子計測装置の構成模式図である。
図3】実施例1における流量調整ダンパの模式図である。
図4】実施例1における非等速吸引誤差を説明する図である。
図5】実施例2における微粒子計測装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例における微粒子計測装置を安全キャビネットに設置した構成図である。図1において、(a)は安全キャビネットの正面図であり、(b)は、(a)のA-A’断面を右方より見た安全キャビネットの側面図である。
【0013】
図1に示すように、安全キャビネット100は、内部に、前面を前面シャッター103で構成した作業空間102を有している。作業空間102の下面は作業台101からなる。前面シャッター103の下方には、作業開口部104を形成している。安全キャビネットのファン106を運転した場合、圧力チャンバ109を加圧する。圧力チャンバ109には、吹き出し用HEPAフィルタ111が接続され、圧力チャンバ109内の塵埃を吹き出し用HEPAフィルタ111でろ過し、清浄化した空気を吹き出し、作業空間102内に吹き出し気流113として供給する。
【0014】
圧力チャンバ109には、排気用HEPAフィルタ110も接続されている。圧力チャンバ109で加圧された空気は、排気用HEPAフィルタ110でろ過され、安全キャビネットの排気口を通り、排気空気114として安全キャビネット100から排気される。
【0015】
そして、安全キャビネット100から排気される空気と等しい量の空気が、安全キャビネット100内に入る。その空気は、前面シャッター103の下方の作業開口部104に発生する流入気流112である。流入気流112は、作業空間102の吹き出し気流113の一部とともに、作業台101とドレンパン119で形成される排気循環経路120を通り、背面経路105を介して安全キャビネットのファン106に吸い込まれる。これにより、作業開口部104からの流入気流112は作業空間102に滞留することなく排出されるので、作業開口部104からの流入気流112のエアバリアとして働く。
【0016】
作業空間102内では病原体等を含む塵埃、エアロゾルを取り扱っているため、背面経路105、圧力チャンバ109内にも、病原体等を含む塵埃、エアロゾルが存在する。作業空間102に空気を供給する際と、安全キャビネット100から空気を排気する際には、この塵埃、エアロゾルは、吹き出し用HEPAフィルタ111、排気用HEPAフィルタ110で除去されている。作業者は安全キャビネット100の正面に座り、作業開口部104から作業空間102に腕を挿入し、前面シャッター103を通して作業空間102内を見ながら作業を行う。
【0017】
安全キャビネットの作業空間102内の奥側に微粒子を計測するために試料を吸引するパーティクルプローブ210を配置している。パーティクルプローブ210は、一体化したパイプ211でパーティクルカウンタ220に接続され、微粒子計測装置を構築している。
【0018】
図2は、図1(b)の側面図において、本実施例における微粒子計測装置の部分を拡大した構成模式図である。図2において、図1と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0019】
図2において、パーティクルプローブ210は、等速吸引するために先端がラッパ状になっている。また、配管の曲がりによる粒子の沈降を防止するため、パーティクルプローブと一体化したパイプ211は曲げ部のない直管となっている。
【0020】
パイプ211は、ユニオン継手218を介して、寸法を調整しやすいようにウレタンやシリコン製などのチューブ219を用いてパーティクルカウンタ220に接続されている。
【0021】
パーティクルカウンタ220に内蔵されたポンプを起動すると、チューブ219とユニオン継手218とパイプ211を経由して、パーティクルプローブ210から清浄度を計測する空気が吸引される。
【0022】
パーティクルプローブ210のラッパ状の先端は、接続されたパイプ211の一部にワンタッチで取り外し可能な第1のヘルール継手212を溶接にて一体化している。
【0023】
一方、ドレンパン119と接続され安全キャビネット本体と一体になった内管シャフト(メンテナンス用パイプ)213は、パイプ211を内包し、第2のヘルール継手212を有し、第1と第2のヘルール継手212によりパーティクルプローブ210とパイプ211を図示しないクランプで固定できる構成となっている。
【0024】
そして、メンテナンス時は、クランプをワンタッチで外し、第1と第2のヘルール継手212を非接続とすることで、パーティクルプローブ210とパイプ211を内管シャフト213から取り外すことができる。これにより、内管シャフト213内部を貫通したパイプ211が一体化したパーティクルプローブ210を安全キャビネット本体から簡単に取り外すことができ、単品で洗浄可能な構造となっている。
【0025】
また、内管シャフト213の更に外側に円筒パイプ(負圧吸引経路)214を設置し、排気循環経路120につながる流路215を設けることで、負圧吸引経路を形成しパーティクルプローブ210の外側の気流を引き込み、パーティクルプローブ210を設置する近傍の主流を吸引することで、主流の流速を上げることができる。なお、円筒パイプ214は、材質としてはSUS(ステンレス鋼)が望ましい。
【0026】
また、円筒パイプ214の上端には流量を調整することのできる流量調整ダンパ216が付加されている。流量調整ダンパ216により、パーティクルプローブを設置する近傍の主流の流速を調整することができ、主流とパーティクルプローブ内部の流速を同等に調整することが可能となり、主流とパーティクルプローブ内部の流速の差異による計測濃度の誤差である非等速吸引誤差を極力抑えることができる。
【0027】
図3は、本実施例における流量調整ダンパ216の模式図である。図3に示すように、流量調整ダンパ216は、材質として例えばゴムで形成されたゴムキャップであって、複数の貫通孔217が形成されており、図示しない閉止キャップで貫通孔217をいくつ塞ぐかで流量を調整することができる。なお、流量調整ダンパとしては、図3に限定されるものではなく、例えば、グローブ弁、仕切り弁、ボール弁等の流量を調整できるものであればよい。
【0028】
図4は、本実施例における非等速吸引誤差を説明する図である。気流中の粒子濃度を測定する場合、気流の速度と異なる速度で吸引すると得られた粒子濃度に誤差が生じ、これは非等速吸引誤差と呼ばれている。すなわち、パーティクルプローブの流入速度と外側の気流速度が異なると測定値と実際の濃度との誤差が大きくなる。例えば、図4(a)に示すように、パーティクルプローブ210に流入する流入速度が外側の気流速度よりも小さい場合、速度の大きい外側の気流速度での粒子濃度が小さくなり、結果的に、パーティクルプローブ210による測定値は実際の濃度より大きくなる。また、図4(c)に示すように、パーティクルプローブ210に流入する流入速度が外側の気流速度よりも大きい場合、速度の大きい流入速度での粒子濃度が小さくなり、結果的に、パーティクルプローブ210による測定値は実際の濃度より小さくなる。そして、図4(b)に示すように、パーティクルプローブ210に流入する流入速度と外側の気流速度が等しい場合、等速吸引となり、パーティクルプローブ210による測定値は実際の濃度と等しくなる。
【0029】
本実施例では、円筒パイプ214の径を、パーティクルプローブの流入速度と外側の気流速度が等しくなるように設定することで、流量調整ダンパ216なしでも、非等速吸引誤差を極力抑えることができる。
【0030】
一方、流量調整ダンパ216で流量の微調整を行うことで、より正確に非等速吸引誤差を抑えることができる。なお、この際には、円筒パイプ214の径を、外側の気流速度、すなわち、パーティクルプローブを設置する近傍の主流の流速がパーティクルプローブの流入速度に対して大きめになるように設定することで、流量調整ダンパ216で外側の気流速度を減少させる方向で微調整を行なうことが可能となる。
【0031】
以上のように、本実施例によれば、パーティクルプローブを設置する近傍の主流とパーティクルプローブ内部の流速の差異により得られる計測濃度に誤差が生じる非等速吸引誤差を極力抑えることができる微粒子計測装置を提供できる。また、パーティクルプローブと一体化したパイプの外側にそのパイプを固定するための内管シャフトを設けることで、メンテナンス時にはパーティクルプローブとパイプをワンタッチで取り外し可能とした微粒子計測装置を提供できる。
【実施例2】
【0032】
図5は、本実施例における微粒子計測装置の構成模式図である。図5において、図2と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
図5において、図2と異なる点は、円筒パイプ214にスライド管234を設けた点である。スライド管234は、円筒パイプ214に沿って、パーティクルプローブ210の長手方向にスライド可能となる構成を有する。
【0034】
スライド管234は、スライド量を調整することで、円筒パイプ214によって生じるパーティクルプローブ210を設置する近傍の主流の流速を調整できる。
【0035】
これにより、実施例1に対して、より非等速吸引誤差を抑えることができる微粒子計測装置を提供できる。
【0036】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
100:安全キャビネット、101:作業台、102:作業空間、103:前面シャッター、104:作業開口部、105:背面経路、106:ファン、109:圧力チャンバ、110:排気用HEPAフィルタ、111:吹き出し用HEPAフィルタ、112:流入気流、113:吹き出し気流、114:排気空気、119:ドレンパン、120:排気循環経路、210:パーティクルプローブ、211:パイプ、212:ヘルール継手、213:内管シャフト(メンテナンス用パイプ)、214:円筒パイプ(負圧吸引経路)、215:流路、216:流量調整ダンパ、217:貫通孔、218:ユニオン継手、219:チューブ、220:パーティクルカウンタ、234:スライド管
図1
図2
図3
図4
図5