(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】二次電池の制御方法、制御装置及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240510BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/10 L
H02J7/10 H
(21)【出願番号】P 2021141150
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2023-02-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年11月19日 第61回電池討論会にて発表 (2)令和3年2月18日 国立大学法人豊橋技術科学大学電気・電子情報工学専攻 集積電子システム・機能電気システム 令和2(2020)年度 修士学位論文審査会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】西 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 庸司
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197545(JP,A)
【文献】特開2019-102356(JP,A)
【文献】特開2012-016263(JP,A)
【文献】特開2017-117519(JP,A)
【文献】特開2017-103896(JP,A)
【文献】特開2010-273492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータの演算処理によるリチウムを含む二次電池の制御方法であって、
前記二次電池の温度、及び、充電電流を検出する状態検出処理と、
前記充電電流が予め設定した充電電流閾値を越えたときの期間の長さを示す超過時間を算出する超過時間算出処理と、
前記超過時間中の前記充電電流の大きさを前記二次電池の温度毎に算出する超過時電流量算出処理と、
前記二次電池の温度と、前記充電電流及び超過時間に基づき前記温度毎のリチウム析出量を算出するリチウム析出量算出処理と、
前記充電電流、前記超過時間及び前記温度に基づき核形成過電圧を算出する核形成過電圧算出処理と、
前記核形成過電圧毎の発熱量を算出し、算出した前記発熱量に基づいて前記二次電池に設定した最大発熱制限値を引き下げる最大温度設定処理と、
を行う二次電池の制御方法。
【請求項2】
前記最大温度設定処理は、
前記核形成過電圧毎の発熱量を算出する第1の発熱量算出処理と、
前記核形成過電圧毎の発熱量を合算して前記二次電池の総発熱量を算出する第2の発熱量算出処理と、を行い、
前記総発熱量が予め設定した発熱閾値を超えた場合に、前記最大発熱制限値を引き下げる請求項1に記載の二次電池の制御方法。
【請求項3】
前記核形成過電圧算出処理では、予め作成した核形成過電圧マップを参照して前記核形成過電圧を算出し、
前記核形成過電圧マップは、前記充電電流と前記超過時間と前記核形成過電圧との関係が前記温度毎に示されるテーブルまたは計算式である請求項1又は2に記載の二次電池の制御方法。
【請求項4】
前記第1の発熱量算出処理では、予め作成した熱量判定マップを参照して前記核形成過電圧毎の発熱量を算出し、
前記熱量判定マップは、前記核形成過電圧と析出したリチウムの単位重量当りの熱安定性との関係がテーブルまたは計算式で示される請求項2に記載の二次電池の制御方法。
【請求項5】
二次電池の温度、及び、充電電流を検出し、前記充電電流が予め設定した充電電流閾値を越えたときの期間の長さを示す超過時間を算出する超過時間算出部と、
前記超過時間中の前記充電電流の大きさを前記二次電池の温度毎に算出する超過時電流量算出部と、
前記二次電池の温度と、前記充電電流及び超過時間に基づき前記温度毎のリチウム析出量を算出するリチウム析出量算出部と、
前記充電電流、前記超過時間及び前記温度に基づき核形成過電圧を算出する核形成過電圧算出部と、
前記核形成過電圧毎の発熱量を算出し、算出した前記発熱量に基づいて前記二次電池に設定した最大発熱制限値を引き下げる最大温度設定部と、
を有する二次電池の制御装置。
【請求項6】
コンピュータの演算部において実行され、リチウムを含む二次電池を制御する二次電池の制御プログラムであって、
前記二次電池の温度、及び、充電電流を検出する状態検出処理と、
前記充電電流が予め設定した充電電流閾値を越えたときの期間の長さを示す超過時間、を算出する超過時間算出処理と、
前記超過時間中の前記充電電流の大きさを前記二次電池の温度毎に算出する超過時電流量算出処理と、
前記二次電池の温度と、前記充電電流及び超過時間に基づき前記温度毎のリチウム析出量を算出するリチウム析出量算出処理と、
前記充電電流、前記超過時間及び前記温度に基づき核形成過電圧を算出する核形成過電圧算出処理と、
前記核形成過電圧毎の発熱量を算出し、算出した前記発熱量に基づいて前記二次電池に設定した最大発熱制限値を引き下げる最大温度設定処理と、
を行う二次電池の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リチウムイオン電池の温度制御を行う二次電池の制御方法、制御装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池では、過充電等によりリチウムが析出する現象が発生する。この析出したリチウム金属は、熱安定性が低く、一定の発熱量を超えると電池が発火するおそれがある。そのため、リチウムイオン電池では、リチウムの析出を制御することが重要になる。そこで、リチウムイオン電池におけるリチウムの析出制御に関する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のリチウムイオン二次電池の制御装置は、リチウムイオン二次電池の充電電流が許容充電電流を超える状態が継続した時間である「超過時間t2」と、超過時間t2中における充電電流の最大値である「最大充電電流Imax」とを用いて、リチウムの析出量に関連する第1パラメータとして「リチウムの析出総量A」を算出するとともに、リチウムの析出形状に関連する第2パラメータとして「リチウムの針状析出量B」を算出する。そして、リチウムイオン二次電池の制御装置は、析出総量Aおよび針状析出量Bを用いて使用温度上限値Tlimを設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、第2のパラメータとして利用しているリチウムの析出形態が針状であるのか粒状であるかの2つの状態でしか判断しておらず、発熱量の推定精度が十分ではなく、発熱量に応じた使用温度の上限値に設けるマージンを必要以上に大きくしなければならない問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、発熱量に応じた使用温度の上限値を適切に設定し、二次電池の使用範囲を広くすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる二次電池の制御方法の一態様は、コンピュータの演算処理によるリチウムを含む二次電池の制御方法であって、前記二次電池の温度、及び、充電電流を検出する状態検出処理と、前記充電電流が予め設定した充電電流閾値を越えたときの期間の長さを示す超過時間を算出する超過時間算出処理と、前記超過時間中の前記充電電流の大きさを前記二次電池の温度毎に算出する超過時電流量算出処理と、前記二次電池の温度と、前記充電電流及び超過時間に基づき前記温度毎のリチウム析出量を算出するリチウム析出量算出処理と、前記充電電流、前記超過時間及び前記温度に基づき核形成過電圧を算出する核形成過電圧算出処理と、前記核形成過電圧毎の発熱量を算出し、算出した前記発熱量に基づいて前記二次電池に設定した最大発熱制限値を引き下げる最大温度設定処理と、を行う。
【0008】
本発明にかかる二次電池の制御装置の一態様は、二次電池の温度、及び、充電電流を検出し、前記充電電流が予め設定した充電電流閾値を越えたときの期間の長さを示す超過時間を算出する超過時間算出部と、前記超過時間中の前記充電電流の大きさを前記二次電池の温度毎に算出する超過時電流量算出部と、前記二次電池の温度と、前記充電電流及び超過時間に基づき前記温度毎のリチウム析出量を算出するリチウム析出量算出部と、前記充電電流、前記超過時間及び前記温度に基づき核形成過電圧を算出する核形成過電圧算出部と、前記核形成過電圧毎の発熱量を算出し、算出した前記発熱量に基づいて前記二次電池に設定した最大発熱制限値を引き下げる最大温度設定部と、を有する。
【0009】
本発明にかかる二次電池の制御プログラムの一態様は、コンピュータの演算部において実行され、リチウムを含む二次電池を制御する二次電池の制御プログラムであって、前記二次電池の温度、及び、充電電流を検出する状態検出処理と、前記充電電流が予め設定した充電電流閾値を越えたときの期間の長さを示す超過時間、を算出する超過時間算出処理と、前記超過時間中の前記充電電流の大きさを前記二次電池の温度毎に算出する超過時電流量算出処理と、前記二次電池の温度と、前記充電電流及び超過時間に基づき前記温度毎のリチウム析出量を算出するリチウム析出量算出処理と、前記充電電流、前記超過時間及び前記温度に基づき核形成過電圧を算出する核形成過電圧算出処理と、前記核形成過電圧毎の発熱量を算出し、算出した前記発熱量に基づいて前記二次電池に設定した最大発熱制限値を引き下げる最大温度設定処理と、を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二次電池の制御方法、制御装置及び制御プログラムによれば、発熱量に応じた使用温度の上限値を適切に設定し、二次電池の使用範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1にかかる二次電池において析出したリチウム金属の形状を説明する図である。
【
図2】実施の形態1にかかる二次電池の制御方法で利用する核形成過電圧マップを説明する図である。
【
図3】実施の形態1にかかる二次電池の制御方法で利用する熱量判定マップを説明する図である。
【
図4】実施の形態1にかかる二次電池の制御装置のブロック図である。
【
図5】実施の形態1にかかる二次電池の制御方法の処理フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0014】
実施の形態1
実施の形態1にかかる制御装置10では、制御対象の二次電池としてリチウムイオンを負極に採用したリチウムイオン電池を用いた例について説明する。実施の形態1にかかる制御装置10では、二次電池の状態からリチウム金属の析出量を推定して、推定したリチウム析出量と、析出したリチウム金属の形状の違いによる熱安定性の推定値と、に基づき二次電池の発熱量の制御を行う。
【0015】
そこで、まずリチウムイオン電池におけるリチウム金属の析出について説明する。リチウムイオン電池では負極にリチウム金属が用いられ、充電電流が充電電流閾値を越えると負極活物質表面にリチウム金属が析出する。このとき、種々の実験により充電レート及び電池温度の違いにより析出したリチウム金属の形状が異なることが分かった。具体的には、リチウム金属の析出条件によって析出したリチウム金属の形状が異なるため、析出したリチウム金属の体積が同じであっても表面積が異なる。なお、充電電流閾値とは、リチウムの析出が発生しないと判断される電流値であり、予め行われる実験により決定されるものである。
【0016】
ここで、析出したリチウム金属の形状の違いについて
図1を参照して説明する。
図1は、実施の形態1にかかる二次電池において析出したリチウム金属の形状を説明する図である。
図1に示すように、リチウム金属は負極活物質表面に析出する。このとき、リチウム金属の形状は、電池の温度が高いほど1つの析出物の体積が大きくなり、電池の温度が低いほど1つの析出物の体積が小さくなる。また、充電レート(単位時間当りに電池に流れ込む電流の量)が低いほど1つの析出物の体積が大きくなり、充電レートが高いほど1つの析出物の体積が小さくなる。なお、析出物の総体積は、いずれの条件においても同じである。つまり、析出したリチウム金属全体の表面積は、1つの析出物の体積が小さくなるほど大きくなる。
【0017】
ここで、実施の形態1にかかる二次電池の制御方法では、析出したリチウム金属の表面積の判断のパラメータとして、電池の温度と充電レートとから算出される核形成過電圧を用いる。この核形成過電圧は、電池温度が高く充電レートが低いほど小さく、電池温度が低く充電レートが高いほど大きくなる。そして、析出したリチウム金属は、核形成電圧が小さいほど1つの体積は大きく、かつ、析出物全体の表面積は小さくなる。また、析出したリチウム金属は、核形成電圧が大きいほど1つの体積は小さく、かつ、析出物全体の表面積は大きくなる。
【0018】
この核形成過電圧について詳細に説明する。そこで、
図2に実施の形態1にかかる二次電池の制御方法で利用する核形成過電圧マップを説明する図に示す。
図2に示すように、横軸に充電レート、縦軸に核形成過電圧をとると、充電レートと核形成過電圧は、所定の関係式より算出可能な関係を有する。また、
図2に示すように、電池温度毎に充電レートと核形成過電圧の関係は異なる式(例えば、温度により曲線がシフトする式)により表わすことができる。このように、核形成過電圧は電池の温度毎に充電レートを取得することで、電池の温度毎に核形成過電圧を算出することができる。
【0019】
実施の形態1にかかる二次電池の制御方法では、
図2に示すグラフを構成する情報を核形成過電圧マップとして利用する。核形成過電圧は、
図2に示すグラフを構成する情報をテーブルデータ、或いは、計算式としてコンピュータ処理に適した形式で制御装置に実装される。また、核形成過電圧マップは、事前の実験において得られた結果から作成されるものである。
【0020】
また、析出したリチウム金属の発熱量を考える。ここで、
図3に実施の形態1にかかる二次電池の制御方法で利用する熱量判定マップを説明する図を示す。
図3に示すように、横軸に核形成過電圧η、縦軸に単位リチウム析出重量当りの熱安定性をとると、核形成過電圧に対するリチウム金属の熱安定性の関係は一定の関係式により算出可能な関係を有する。そして、
図3に示すように、析出したリチウム金属は、析出物全体の表面積が大きいほど電解液との接触面積が大きくなるため、熱安定性が低くなり、発熱量が大きくなる。そのため、析出したリチウム金属の全体の表面積が大きい場合は、析出したリチウム金属の全体の表面積が小さい場合に比べて二次電池の最大温度を抑制した方が安全性を高めることができる。なお、
図3の熱量判定マップは、事前の実験において得られた結果から作成されるものである。
【0021】
続いて、実施の形態1にかかる二次電池の制御方法を実現する二次電池の制御装置について説明する。
図4に実施の形態1にかかる二次電池の制御装置10のブロック図を示す。
図4では、制御装置10を含む電池システム1についてのブロック図である。
図4に示すように、実施の形態1にかかる電池システム1は、制御装置10、二次電池11、電力源回路12、負荷回路13を有する。二次電池11は、電力源回路12から供給される充電電流により充電されるとともに、充電した電力を負荷回路13に供給する。そして、制御装置10は、二次電池11におけるリチウム金属の析出状態に基づき電力源回路12から二次電池11への充電レートを制御することで二次電池11を最大温度制限値以下に抑制する。
【0022】
また、電池システム1では、制御装置10がリチウム金属の析出状態を判断するために必要な電池温度、二次電池11の出力電圧(以下、電池電圧と称す)、充電電流の情報を取得するために、温度センサ21、電圧センサ22、電流センサ23を設ける。温度センサ21は、二次電池11の近傍に設けられる。電圧センサ22は、二次電池11に接続される正極配線と負極配線との間の電圧差を検出する。電流センサ23は、二次電池11に接続される正極配線に挿入される。
【0023】
制御装置10は、充電電流判定部30、超過時間算出部31、超過時電流量算出部32、リチウム析出量算出部33、記憶部34、核形成過電圧算出部35、最大温度設定部36を有する。また、最大温度設定部36は、第1の発熱量算出部37、第2の発熱量算出部38、最大温度更新部39を有する。ここで、制御装置10は、例えば、ECU等のプログラムを実行可能な演算部とメモリとを備える装置である。そして、記憶部34は、不揮発性メモリ等であることが好ましく、他の処理ブロックは例えばFPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルな専用ハードウェア、或いは、ソフトウェアプログラムにより実現可能なものである。
【0024】
充電電流判定部30は、電流センサ23から充電電流を取得して充電電流が予め設定した充電電流閾値Ilimを越えていた場合に、超過時間算出部31に電流超過状態が発生したことを通知する。超過時間算出部31は、電流超過状態が発生している超過時間を計測する。
【0025】
超過時電流量算出部32は、二次電池の温度、出力電圧(例えば電池電圧)、及び、充電電流をそれぞれ温度センサ21、電圧センサ22及び電流センサ23から検出する。なお、以下の処理で利用するのは、二次電池の温度と充電電流であるため、出力電圧は必ずしも取得する必要はない。そして、超過時電流量算出部32は、充電電流が予め設定した充電電流閾値Ilimを越えたときの期間の長さを示す超過時間及び充電電流の大きさを二次電池の温度毎に算出する。
【0026】
リチウム析出量算出部33は、二次電池の温度と、充電電流及び超過時間に基づき温度毎のリチウム析出量を算出する。ここでのリチウム析出量の計算は、リチウム析出量(g)の計算は、所定の計算式を用いて行う。この所定の計算式は、例えば、「充電電流値(A)×超過時間(h)÷リチウムの析出反応が1mol発生した時の電気量(Ah/mol)×リチウムの原子量(g/mol)」で表わされる。
【0027】
記憶部34は、
図2で示した核形成過電圧マップ及び熱量判定マップを保持する不揮発性メモリである。核形成過電圧算出部35は、充電電流、超過時間及び温度に基づき核形成過電圧を算出する。核形成過電圧算出部35は、この核形成過電圧を算出するときに記憶部34の核形成過電圧マップを参照する。また、核形成過電圧算出部35は、核形成過電圧は、二次電池の温度毎に算出する。
【0028】
最大温度設定部36は、核形成過電圧毎の発熱量を算出し、算出した発熱量に基づいて二次電池に設定した最大発熱制限値を引き下げる。最大温度設定部36では、この処理を行うために第1の発熱量算出部37、第2の発熱量算出部38、最大温度更新部39を有する。
【0029】
第1の発熱量算出部37は、核形成過電圧毎の発熱量を算出する。第1の発熱量算出部37は、発熱量を算出する場合、記憶部34の熱量判定マップを参照する。第2の発熱量算出部38は、第1の発熱量算出部37が算出した核形成過電圧毎の発熱量を合算して二次電池11の総発熱量を算出する。最大温度更新部39は、総発熱量が予め設定した発熱閾値を超えた場合に、二次電池に設定した最大発熱制限値を引き下げる。
【0030】
続いて、実施の形態1にかかる制御装置を用いた制御方法について説明する。
図5に実施の形態1にかかる二次電池の制御方法の処理フローを説明するフローチャートを示す。
図5に示すように、実施の形態1にかかる電池システム1では動作を開始させると制御装置10による温度管理制御を開始する。なお、この温度管理制御は、一定の周期で繰り返し行われるものである。
【0031】
制御装置10は動作を開始すると、まず、充電電流判定部30及び超過時電流量算出部32において二次電池11の温度T、電池電圧V及び充電電流Iを取得する(ステップS1)。続いて、充電電流判定部30により充電電流Iが予め設定した充電電流閾値Ilimを越えたかどうかを判定する(ステップS2)。このステップS2の判断において充電電流Iが充電電流閾値Ilimを越えていなければ再び温度T、電池電圧V、充電電流Iの監視を継続する。一方、ステップS2の判断において充電電流Iが充電電流閾値Ilimを越えていた場合、充電電流判定部30は、超過時間算出部31に充電電流Iが充電電流閾値Ilimを超過したことを通知する。そして、通知を受けた超過時間算出部31は、超過時間を算出とともに、超過時電流量算出部32が超過時間中の充電電流Iを温度毎に算出する(ステップS3)。
【0032】
ステップS3の後、リチウム析出量算出部33がステップS2で算出された温度T、充電電流I及び超過時間に基づきリチウムの析出量の総量を算出する(ステップS4)。その後、核形成過電圧算出部35が核形成過電圧マップを参照し、ステップS2で算出した充電電流I及び超過時間に対応する核形成過電圧を算出する(ステップS5)。そして、第1の発熱量算出部37が熱量判定マップを参照し、算出された核形成過電圧に対応する発熱量を算出する(ステップS6)。その後、第2の発熱量算出部38が、ステップS6で算出された発熱量を合算して総発熱量を算出する(ステップS7)。このようにして算出された総発熱量が発熱閾値を越えた場合(ステップS8のYESの枝)、最大温度更新部39が二次電池に対して設定する最大温度制限値を引き下げる(ステップS9)。一方、総発熱量が発熱閾値を越えなかった場合(ステップS8のNOの枝)、最大温度更新部39は二次電池に対して設定する最大温度制限値を維持し、処理をステップS1に戻す。
【0033】
上記説明より、実施の形態1にかかる二次電池の制御方法によれば、リチウム金属の析出状態に起因する発熱量を詳細に反映できる核形成過電圧に基づき算出する。そのため、実施の形態1にかかる二次電池の制御方法では、二次電池の発熱量の最大値を二次電池の本来の限界近くに設定できるため、二次電池の利用範囲を拡大することができる。つまり、実施の形態1にかかる二次電池の制御方法では、安全マージンを減らしながら、高い安全性を確保することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 電池システム
10 制御装置
11 二次電池
12 電力源回路
13 負荷回路
21 温度センサ
22 電圧センサ
23 電流センサ
30 充電電流判定部
31 超過時間算出部
32 超過時電流量算出部
33 リチウム析出量算出部
34 記憶部
35 核形成過電圧算出部
36 最大温度設定部
37 第1の発熱量算出部
38 第2の発熱量算出部
39 最大温度更新部
Ilim 充電電流閾値