IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バスクテック リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-外科デバイス 図1
  • 特許-外科デバイス 図2A
  • 特許-外科デバイス 図2B
  • 特許-外科デバイス 図2C
  • 特許-外科デバイス 図3A
  • 特許-外科デバイス 図3B
  • 特許-外科デバイス 図3C
  • 特許-外科デバイス 図4
  • 特許-外科デバイス 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】外科デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A61B17/122
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021512535
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 GB2019052533
(87)【国際公開番号】W WO2020065260
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】1815630.7
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503116084
【氏名又は名称】バスクテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VASCUTEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】セオネイド バーバラ ニモ
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/001309(WO,A1)
【文献】西独国特許出願公開第02402677(DE,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0256365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れることができる内腔を画定する脈管(1;101)内における流体流を制御するデバイス(10;100;40)において、
内腔を画定する前記脈管を包囲する眼口部(20;120;60)を形成するよう構成されており、前記眼口部(20;120;60)は調整可能なサイズの直径を有し、第1取付けポイント及び第2取付けポイントを有する少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42,42′)と、並びに
前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42,42′)における前記第1取付けポイント及び第2取付けポイントに取り付けることができる圧縮可能な動作部材(13;113;43)であって、前記動作部材(13;113;43)に圧力を加える際に圧縮可能であり、また前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42,42′)に作用するよう動作可能であり、前記作用は、前記眼口部(20;120;60)が前記内腔内の流体流を抑止するよう、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42、42′)が緊張状態の下にある第1位置、及び前記眼口部(20;120;60)が前記内腔内の流体流を抑止しないよう、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42,42′)が弛緩する第2位置から移動可能となるようにするものである、該動作部材(13;113;43)と、
を備え、
前記動作部材(13;113;43)は、ギャップ(17;117;47)によって分離した第1アーム(14;114;44)及び第2アーム(16;116;46)を有するC字状部材であり、前記第1アーム(14;114;44)は前記前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132;42)の前記第1取付けポイントに取り付けることができ、また前記第2アーム(16;116;46)は前記前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;134;42′)の前記第2取付けポイントに取り付けることができ、前記眼口部(20;120;60)は前記ギャップ(17;117;47)内に位置付けられ、前記第1アーム(14;114;44)及び第2アーム(16;116;46)の少なくとも一方は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42,42′)を前記第1位置から前記第2位置に移動させるよう、内方に移動可能であり、
前記少なくとも1つの細長可撓性部材は、第1端部(22)及び第2端部(24)を有する単一の細長可撓性部材(12)であり、前記動作部材(13)の前記第1アーム(14)は第1挿通構成(26)を有し、また前記動作部材(13)の前記第2アーム(16)は第2挿通構成(28)を有し、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12)の前記第1端部(22)は、前記動作部材(13)の前記第1挿通構成(26)に挿通し、また前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12)の前記第2端部(24)は、前記動作部材(13)の前記第2挿通構成(28)に挿通し、
前記第1挿通構成(26)及び前記第2挿通構成(28)の各々は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材を挿通するための複数の巻き付けポイントを生ずる形状にした櫛型の開孔を有し、
前記デバイス(10;100;40)は、前記脈管(1;101)から除去可能である、デバイス。
【請求項2】
請求項1記載のデバイスにおいて、前記動作部材(13;113;43)は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42、42′)が前記第1位置に向かうよう偏移させられるよう、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42,42′)に作用する動作が可能である、デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデバイス(10;40)において、前記動作部材(13;43)は、ギャップ(17;47)によって分離した第1及び第2のアーム(14,16;44,46)を持つV又はU字状ヒンジ部分(18;48)を有し、前記アームは基端側の前記V又はU字状ヒンジ部分(18;48)から延在し、前記第1及び第2のアーム(14,16;44,46)各々は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;42,42′)を前記動作部材(13;43)の前記第1及び第2のアーム(14,16;44,46)に挿通取付けするよう前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;42,42′)を受け入れるための末端側の遊端を有する、デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイス(10)において、前記第1挿通構成(26)及び前記第2挿通構成(28)のうち少なくとも一方は開孔を有し、前記開孔は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材の一部分を前記開孔内に摩擦によって保持する構成(30)にされた、デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイス(10)において、前記開孔は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12)との摩擦相互作用を高めるよう、粗面化、又はリブ付き、又は溝付き、又は鋸歯状化した内面(30)を有する、デバイス。
【請求項6】
請求項1~のうちいずれか1項記載のデバイス(100)において、前記少なくとも1つの細長可撓性部材は、第1ループ(136)を形成するよう構成された第1細長可撓性部材(132)と、第2ループ(138)を形成するよう構成された第2細長可撓性部材(134)とを有し、前記第1及び第2の細長可撓性部材(132,134)は、前記第1及び第2のループ(136,138)が前記内腔を包囲する眼口部(120)を画定するようリンク連結される構成にし、前記第1細長可撓性部材(132)の一部分は第1取付けポイントを有し、また前記第2細長可撓性部材(134)の一部分は第2取付けポイントを有する、デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイス(100)において、前記第1アーム(114)は第1挿通構成(126)を有し、また前記第2アーム(116)は第2挿通構成(128)を有し、前記第1細長可撓性部材(132)は前記第1挿通構成(126)に挿通し、また前記第2細長可撓性部材(134)は前記第2挿通構成(128)に挿通する、デバイス。
【請求項8】
請求項又は7に記載のデバイスにおいて、前記第1及び第2の挿通構成(26,28;126,128)は、前記動作部材(13;113)の対応するアームの側面からアクセス可能なJ字状溝孔を有する、デバイス。
【請求項9】
請求項1~のうちいずれか1項記載のデバイス(40)において、第1アーム(44)は該第1アーム(44)上に第1開孔(61)を有する第1挿通構成(56)を有し、第2アーム(46)は、該第2アーム(46)上に第2開孔(61)を有する第2挿通構成58)を有し、ループを形成するよう第1細長可撓性部材(42)の端部を第1挿通構成(56)の前記第1開孔(61)に挿通し、また前記第1細長可撓性部材(42)の前記端部を前記第1挿通構成(56)の前記第1開孔(61)に戻して挿通し、ループを形成するよう第2細長可撓性部材(42′)の端部を第2挿通構成(58)の前記第2開孔(61)に挿通し、また前記第2細長可撓性部材(42′)の前記端部を前記第2挿通構成(58)の前記第2開孔(61)に戻して挿通し、可撓性部材(42,42′)の各々は、一方の可撓性部材(42)が他方の可撓性部材(42′)によって形成される前記ループに貫通するよう挿通される、デバイス。
【請求項10】
請求項1~のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、第1ループ(136)を形成するよう構成された第1細長可撓性部材(132;42)及び第2ループ(138)を形成するよう構成された第2細長可撓性部材(134;42′)を備え、前記第1及び第2の細長可撓性部材(132,134;42,42′)は、前記第1及び第2のループ(136,138)が前記内腔を包囲する眼口部(120;60)を画定するよう交差する構成にされる、デバイス。
【請求項11】
請求項1~10のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42、42′)は、引張荷重の下で限定伸張を呈し、荷重を除去すると元の長さに復元する弾性シリコーン材料から形成される、デバイス。
【請求項12】
請求項1~11のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記少なくとも1つの細長可撓性部材(12;132,134;42、42′)は、引張荷重の下で伸張し、荷重を除去すると元の長さに復元する弾性コードである、デバイス。
【請求項13】
請求項1~12のうちいずれか1項記載のデバイスにおいて、前記動作部材(13;113;43)は指圧力を加える際に圧縮可能であり、また前記動作部材は、指圧力を加え易くするよう外部窪み(344,346)を有する、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内腔を画定する脈管内の流体流を制御する外科デバイスに関する。生理的機能系及び臓器内における流体流を可能にする内腔を画定する天然の脈管は、脈管構造、リンパ系、腎臓系、呼吸器系、等々の管状接続組織を有する。合成的又は補綴的なデバイスは、さらに、外科的処置の少なくとも一部分中に流体流制御が望ましい管状パーツを有する。本開示は、内腔又は貫通通路を画定する長さ及び横方向寸法を有する天然及び合成双方の脈管に適用することができ、脈管は、例えばクランプによって貫流を閉じることができる可撓性の壁付き脈管とすることができる。
【背景技術】
【0002】
血管内送達系内に止血を生ずる市販の弁は多くの人々には極端に高価であり、過剰にオーバースペックになりがちであると考えられている。時間の経過につれて、これら弁はその効率を喪失することが分かっており、また例えば止血を生ずる能力が失われる。
【0003】
外科的な縫合糸、ループ又は結紮糸は、外科手術中に天然脈管を抑止する又は結紮するのに現在使用されている。保持部材を有するワイヤ状外科的ループを備える装置が特許文献1(国際公開第01/76487号)に開示されている。しかしながら、時間の効率的な使用が重要であるとき、外科的処置中にこれら外科的ループを緩めたり締め付けたりするのは面倒かつ時間を要することが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第01/76487号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来デバイスにおける少なくとも1つの問題を軽減又は排除して、設計簡単かつ使用容易であるデバイスを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様によれば、流体が流れることができる内腔を画定する脈管(1;101)内における流体流を制御するデバイスを提供し、このデバイスは、
内腔を画定する前記脈管を包囲する眼口部を形成するよう構成されており、第1取付けポイント及び第2取付けポイントを有する少なくとも1つの細長可撓性部材と、並びに
前記少なくとも1つの細長可撓性部材を備え付けるための動作部材であって、ハンドル又は継手とすることができる共通ポイントからそれぞれ延在する少なくとも第1及び第2のアームを有し、また好適な実施形態においてほぼC字状、V字状又はU字状等々の形状のものとして構成され得る、該動作部材とを備える。前記動作部材の前記第1アームは前記少なくとも1つの細長可撓性部材の前記第1取付けポイントに取付け可能であり、前記動作部材の前記第2アームは前記少なくとも1つの細長可撓性部材の前記第2取付けポイントに取付け可能である。動作部材は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材を備え付けるための手持ちデバイスをなすよう、ユーザーが片手で動作部材を取扱い操作するサイズである。
【0007】
実施形態において、前記動作部材は、必要とされるとき少なくとも1つの細長可撓性部材に緊張を付与するとともに、必要とされるとき少なくとも1つの細長可撓性部材の緊張を減少するようユーザーが動作部材を取扱い操作できる十分な弾性を有する可撓性材料から形成することができる。前記動作部材の共通ポイントは、前記動作部材の前記第1及び第2のアームが相対移動する屈曲部又はばね負荷ヒンジ部分とすることができる。前記動作部材、とくに、屈曲部のために選択される材料は、永久変形することなく復元可能な歪みを生ずる。
【0008】
各細長部材が比較的高い可撓性であることが知られている材料、例えば、シリコーンゴムコードから選択される実施形態において、当業者であれば、引張係数(GPa単位)及び復元可能引張歪み(%)を含む細長可撓性部材の材料パラメータを理解し、また十分な配慮するであろう。これら双方の特性は、一軸引張応力-歪み試験(例えば、ASTM D412、ASTM D638、又は随意的にASTM D1708)を使用して細長可撓性部材に対して測定することができ、この場合、細長部材は、所定最大偏位までの張力負荷を掛け、また負荷解除する。この事例で、「可撓性」細長部材の代表的な適正係数範囲は0.01~0.1GPaであり、代表的な適正復元可能歪みは5%~300%である。しかし、これらは単に例示的範囲であり、細長可撓性部材がこの範囲外にある特性を有する他の実施形態も考えられる(例えば、より高い弾性率及びより低い復元可能歪みを有するが、異なる断面/長さジオメトリを有する材料の細長部材)。この事例で、細長可撓性部材がポリマー又は金属/合金製のワイヤ又は編組から成る実施形態も考えられる。
【0009】
この事例で比較的低い引張剛性及び高い復元可能歪み特性を有するこのような可撓性細長部材を使用することは、比較的低い力で細長部材材料を伸張させることによって(例えば、止血を維持しつつ血管内のガイドワイヤ上に大きなカテーテルを挿入することによって)、「眼口部」を拡大できることを意味し、またこの伸張は細長部材の永久変形を生ずる結果とならないことを意味する。
【0010】
細長部材が比較的引張剛性が高いものであるよう選択される事例に対しては(例えば、モノフィラメント若しくは多重フィラメントの縫合糸、ナイロン若しくはポリエチレンベースの編組ストリング)、重要な材料パラメータは引張剛性である。この事例において、この剛性は、止血シールを得るに関与する力の下で細長部材の無視できる伸張しかないように十分高いものとすべきである。この事例で使用される材料の観点から、それらは、1~10GPaの範囲内におけるヤング率を有するポリマーとすることができる。しかし、異なるヤング率を有する他の材料も選択して十分な引張剛性を有する細長部材設計にすることができる。
【0011】
この事例において、細長部材の比較的高い引張剛性は、「眼口部」のサイズは使用にあたり主に圧縮可能な動作部材の位置によって制御されることを意味する(すなわち、アームに対する圧縮によりユーザーが眼口部を拡大することができ、またアームを釈放することによって細長可撓性部材を復元し、これにより眼口部直径を減少させることを可能にする)。
【0012】
或る実施形態において、圧縮可能な動作部材は、少なくとも1つの細長可撓性部材における第1取付けポイント及び第2取付けポイントに取り付けることができ、圧縮可能な動作部材の少なくとも1つのアームは圧縮可能動作部材に対する圧力印加の際に圧縮可能であり、また少なくとも1つの細長可撓性部材に作用するよう動作可能であり、この作用は、前記眼口部が前記内腔内の流体流を抑止するよう、前記少なくとも1つの細長可撓性部材が緊張状態の下にある第1位置、及び前記眼口部が前記内腔内の流体流を抑止しないよう、前記少なくとも1つの細長可撓性部材が弛緩する第2位置から移動可能となるようにするものである。
【0013】
圧縮可能動作部材に対する圧力印加は、デバイスユーザーの指圧力とすることができる。デバイスは、都合よくはユーザーが手で保持されるものであり、また圧力は、ユーザーの親指と1つ又はそれ以上の指との間でデバイスの圧縮可能動作部材を圧縮することによって印加することができる。
【0014】
圧縮可能動作部材は、ヒンジ、継手又は可撓性部分のような共通ポイントからそれぞれ延在する第1及び第2のアームを有することができ、したがって、圧縮可能動作部材は、ほぼC字状、V字状又はU字状の形状として構成され、ユーザーが圧縮するとき互いに接近する方向に移動可能である互いに離れた遊端を有する。第1及び第2のアームは、個別に真直ぐ又は湾曲した長さ部分を有することができる。第1及び第2のアームは、弾性形状保持材料から作成することができ、これによりユーザーが圧縮した状態から第1及び第2のアームを釈放するとき、第1及び第2のアームをそれらの元の形態に復元させる。非圧縮状態は、細長可撓性部材が第1位置にある第1形態と見なすことができる。圧縮状態は、細長可撓性部材が第2位置にある第2形態と見なすことができる。
【0015】
デバイスは、ユーザーが圧縮可能動作部材を圧縮し、また釈放した後に、第1及び第2のアームを非圧縮の第1形態に確実に復元させる形態バイアス部材を組み込むことができる。形態バイアス部材は、少なくとも1つの細長可撓性部材に対する干渉を回避するよう十分な幅の空間内で第1及び第2のアーム間に、随意的に圧縮可能動作部材のヒンジ、継手若しくは可撓性部分に又はその近傍に配置するコイルばね、板ばね、トーションばね、等々のようなばねとすることができ、第1及び第2のアームを非圧縮状態の第1形態に向けて押圧偏移させることができる。このような形態バイアス部材は、少なくとも1つの細長可撓性部材における張力を維持する又は対向させるのに有益でもあり得る。
【0016】
動作部材が少ない可撓性又はより高い剛性であり、ユーザーの手又は指の圧力による圧縮により抵抗性の高い材料である実施形態において、少なくとも1つの細長可撓性部材は、緊張状態の下で弾性特性を保持する細長弾性部材とすることができる。細長弾性部材は、引張荷重の下で限定伸張を呈するが、荷重を除去すると元の長さに復元する。引張荷重の下にある間に細長弾性部材は、更なる伸張又は「クリープ」に対して抵抗を示す。
【0017】
シルク又はコットンのような天然ファイバを単独で又はその自然特性を変更するためコーティングして使用することができるが、可撓性シリコーン材料が少なくとも1つの細長可撓性部材に好適であり得る。少なくとも1つの細長可撓性部材は合成フィラメントとすることができ、このフィラメントは随意的にシリコーン被覆する、又は部分的にPTFE被覆することができ、このフィラメントは、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又は取扱い操作及び整形が容易であるが、圧縮可能動作部材に取り付けるとき開示された使用に対して想定される張力の下で恒久的伸張しない同様の物理的特性の他の可撓性材料をベースとすることができる。
【0018】
少なくとも1つの細長可撓性部材は、内腔閉塞条件から内腔開放条件にシフトするようユーザー起動される取扱い操作が容易な機構を提供することを意図するが、第1位置と第2位置との間の中間位置にユーザーが細長可撓性部材を握って取扱い操作できることは理解されるであろう。
【0019】
「脈管」は血管のような天然脈管とすることができる。代案として、「脈管」は血管グラフトにおける分岐のような合成脈管とすることができる。「細長可撓性部材」は、少なくとも1つのループを容易に形成することができ、本明細書で「眼口部」と称されるループ内の内部空間を画定することができる細長可撓性部材であると理解すべきである。細長可撓性部材は、例えば、撚糸、スレッド、フィラメント、リボン、ファイバ若しくはコード、又はストリング片とすることができ、ループ内の空間が脈管の幅を収容し得るものである。細長可撓性部材は、取扱い操作及び整形が容易であり、また弾性を有するが、圧縮可能動作部材に取り付けるとき開示された使用向けに細長可撓性部材が作成される材料の弾性限界を超える張力の下で伸張しないものとすることができる。
【0020】
柔らかい織物管状部分を有する補綴デバイスとしての用途の事例において、補綴デバイスの柔らかい織物管状部分の周りにおける眼口部の閉鎖は、補綴デバイスの柔らかい織物管状部分内に存在するいかなる物体周りの適合可能な封止を可能にすることは理解されるであろう。したがって、止血シールを生ずることができるとともに、カテーテル、ワイヤ又は他の代表的送達システムコンポーネントのような任意な物体を、必要とされる場合に補綴デバイスの柔らかい織物管状部分に通過させることを可能にする。このようにして、開示したデバイスは、容易に適用及び除去可能な止血バルブとして作用する。随意的に、デバイスは、外科処置中に所定位置にグラフトを維持するようグラフトにテザー付け(テザリング)できる。
【0021】
動作部材は、少なくとも1つの細長可撓性部材を第1位置に向けて押圧偏移させるよう、少なくとも1つの細長可撓性部材に作用する動作が可能であるものとすることができる。
【0022】
動作部材は、「C」字状部材、又はV字状若しくはU字状若しくはギャップにより分離した第1及び第2のアームを有する同様な形態のような二股デバイスとすることができる。動作部材の第1アームは少なくとも1つの細長可撓性部材の第1取付けポイントに取り付け可能であり、動作部材の第2アームは少なくとも1つの細長可撓性部材の第2取付けポイントに取り付け可能である。少なくとも1つの細長可撓性部材は、動作部材に取り付ける前に眼口部を画定する少なくとも1つのループを形成するよう操作することができる。眼口部は、動作部材の第1及び第2のアーム間におけるギャップに位置付けることができる。動作部材の第1及び第2のアームのうち少なくとも一方は、少なくとも1つの細長可撓性部材を第1位置から第2位置に移動するよう、動作部材の第1及び第2のアームのうち他方に対して内方に移動可能とすることができる。第1及び第2のアームの各々は、使用前の組立てステップで前記少なくとも1つの細長可撓性部材を通過させて対応するアームに取り付けることができる開孔を有することができる。第1及び第2のアームの各々における対応する開孔は、アームの上方及び下方からアクセスすることができる、すなわち、開孔は円形若しくは楕円形とし、又は付加的に側方溝孔からアクセス可能とすることができ、例えば、上方から見たときほぼJ字状、若しくはL字状の開孔とすることができる。開孔は取付け構造の一部を形成し、例えば、少なくとも1つの細長可撓性部材を取り付けるための挿通構成としての役目を果たす。
【0023】
或る実施形態において、少なくとも1つの細長可撓性部材が通過できる少なくとも1つの開孔は、動作部材の第1及び第2のアームのうち少なくとも一方におけるピンホール開孔とすることができる。このピンホール開孔は、少なくとも1つの細長可撓性部材の少なくとも一部分が接触の際に相互作用するよう構成された表面によって画定することができ、この相互作用は、前記表面と前記少なくとも1つの細長可撓性部材の前記接触部分が付加的緊締手段なしに前記少なくとも1つの細長可撓性部材を十分位置決めするよう作用する。ピンホール開孔を画定する表面は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材との摩擦相互作用を高めるよう、粗面化、又はリブ付き、又は溝付き、又は鋸歯状化することができる。これにより、前記少なくとも1つの細長可撓性部材は、使用のために適切に位置決め及び構成することができるとともに、使用中の望ましくない緩み又はたるみを回避することができる。好適には、第1及び第2のアームの各々にこのようなピンホール開孔を設ける。ユーザーは、選択的にその形態を変化させることができ、例えば、少なくとも1つの細長可撓性部材の接触部分とピンホール開孔を画定する表面との間における摩擦に打ち勝つよう少なくとも1つの細長可撓性部材の一部分に十分な力を加えることによって、「眼口部」を拡大することができる。
【0024】
或る実施形態において、前記動作部材及び前記少なくとも1つの細長可撓性部材は、流体を流せる内腔を画定する脈管内の流体流を制御するための「使える準備が整っている」デバイスをユーザーに提供するよう予め組み立てる。このような実施形態において、少なくとも1つの細長可撓性部材は、所望サイズの眼口部を画定するループを形成するのに十分な長さだけ、開孔に挿通し、また引っ張り込む。
【0025】
前記少なくとも1つの細長可撓性部材は、少なくとも1つの細長可撓性部材の接触部分とピンホール開孔を画定する表面との間における摩擦に打ち勝つに十分な力のユーザー印加の引っ張りがない場合に開孔から滑り抜ける傾向を減少させる材料から作成することができる。可撓性シリコーン材料が前記少なくとも1つの細長可撓性部材に好適なものであり得る。この可撓性シリコーン材料における少なくとも一部分は、少なくとも1つの細長可撓性部材を開孔に挿通するとき組立を容易にするよう除去可能な低摩擦材料でカバーすることができる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テープはこの除去可能な低摩擦材料としての役目を果たすことができる。モノフィラメント又は多重フィラメントの編組材料を少なくとも1つの細長可撓性部材として使用することができる。
【0026】
前記少なくとも1つの細長可撓性部材は、第1及び第2の端部を有する単一の細長可撓性部材とすることができる。前記動作部材の前記第1アームは第1挿通構成を有し、また前記動作部材の前記第2アームは第2挿通構成を有し得る。前記第1端部は前記第1挿通構成に挿通し、また前記第2端部は前記第2挿通構成に挿通することができる。
【0027】
前記第1及び第2の挿通構成の各々は、前記挿通のための複数の巻き付けポイントを生ずる形状にした開孔を有することができる。
【0028】
前記第1及び第2の挿通構成のうち少なくとも一方、及び随意的には双方は、前記動作部材における前記アームの側面からアクセス可能な横方向に配設されたJ溝孔とすることができる。
【0029】
前記少なくとも1つの細長可撓性部材は、第1ループを形成するよう構成された第1細長可撓性部材と、第2ループを形成するよう構成された第2細長可撓性部材とを有することができる。前記第1及び第2の細長可撓性部材は、前記内腔を包囲する眼口部を画定するよう前記第1及び第2のループが並置される構成とすることができる。例えば、前記第1及び第2のループは互いにリンク連結することができる。前記第1細長可撓性部材は第1取付けポイントを有し、また前記第2細長可撓性部材は第2取付けポイントを有することができる。
【0030】
前記動作部材の前記第1アームは第1挿通構成を有し、また前記動作部材の前記第2アームは第2挿通構成を有することができる。前記第1細長可撓性部材は前記第1挿通構成に挿通し、また前記第2細長可撓性部材は前記第2挿通構成に挿通することができる。
【0031】
各挿通構成は開孔を有することができ、また各細長可撓性部材は、前記開孔を経て他方の細長可撓性部材によって形成されたループに挿通し、また前記開孔に戻して挿通をすることができる。各挿通構成の前記開孔は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材の少なくとも一部分が接触の際に相互作用するよう構成された表面によって画定することができ、この相互作用は、前記表面と前記少なくとも1つの細長可撓性部材の前記接触部分が付加的緊締手段若しくは保持手段なしに前記少なくとも1つの細長可撓性部材を十分位置決めするよう作用する。前記開孔を画定する表面は、前記少なくとも1つの細長可撓性部材との摩擦相互作用を高めるよう、粗面化、又はリブ付き、又は溝付き、又は鋸歯状化することができる。これにより、前記少なくとも1つの細長可撓性部材は、使用のために適切に位置決め及び構成することができるとともに、使用中の望ましくない緩み又はたるみを回避することができる。
【0032】
前記少なくとも1つの細長可撓性部材を前記動作部材の前記第1及び第2のアームに取り付けるために前記少なくとも1つの細長可撓性部材を挿通することは、使用中に前記動作部材のアームにおける開孔から滑り抜けるのを回避するため、前記少なくとも1つの細長可撓性部材に結び目を作ることによって固定することができる。
【0033】
前記少なくとも1つの細長可撓性部材はシリコーンから形成し得る。
前記少なくとも1つの細長可撓性部材は弾性コードとすることができる。
前記動作部材は、指圧力を加える際に圧縮可能とすることができる。
【0034】
デバイスの使用にあたり、とくに、前記少なくとも1つの細長可撓性部材が実際上単一の細長可撓性部材である実施形態において、デバイスを脈管に対して当接させる又は取り外す取扱い操作している間に拡張したループ形態にある眼口部の維持は、細いプローブ、カテーテル端部、外科用メスの柄、尿道拡張器、等々のような手操作する任意な細長器具とすることができる細長保持具を挿入することによって容易にすることができる。
【0035】
好適な実施形態において、可変寸法の眼口部を画定するよう互いに動作可能な第1及び第2の細長可撓性部材の2つの交差ループを使用することは、形成される眼口部はいつでも脈管周りに拡張又は閉鎖するため利用可能に維持することをもたらす。
【0036】
本発明の第2態様によれば、内腔を画定する管状分岐を有する補綴グラフトと、及び前記管状分岐における内腔における流体流を制御するため、デバイスの眼口部が前記グラフトの分岐を包囲する上述したデバイスとを提供する。
【0037】
本発明の好適な実施形態を以下に単なる例として添付図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1実施形態によるデバイスを示す。
図2A】本発明の第2実施形態によるデバイスを示す。
図2B】本発明の第2実施形態によるデバイスを示す。
図2C】本発明の第2実施形態によるデバイスを示す。
図3A】本発明の実施形態における手動制御流体流デバイスの一部を形成するほぼC字状の圧縮可能な動作部材の斜視図を示す。
図3B図3Aに示される圧縮可能な動作部材の縦断面図を示し、使用にあたり動作部材の圧縮を容易にするユーザーの指のための上側表面及び下側表面における窪みを示す。
図3C図3Aに示される圧縮可能な動作部材の縦断面を上方及び一方の側面から見た斜視図を示し、細長可撓性部材を受け入れるための各ねじ孔のリブ付き内面をよりはっきりと示す。
図4】使用のために組み立てた本発明デバイスの実施形態を示し、このデバイスは、外科的処置中に抑止すべき血管(図示せず)を収容する眼口部を画定する交差挿通させた2重の細長可撓性部材を有する圧縮可能な動作部材を備える。
図5】管状補綴インプラントの分岐脈管に使用する第2実施形態によるデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に図1につき説明すると、これは本発明の第1実施形態による、内腔を画定する脈管1を通過する流体を制御するデバイス10を示す。このデバイス10は、図示の例では可撓性コードである細長可撓性部材12を備える。
【0040】
デバイス10は、さらに、図示の例ではC字状である圧縮可能な動作部材13を備える。このC字状部材13は、ギャップ17によって分離した末端側の遊端を持ち、またC字状部材の基端側におけるヒンジ部分18の形態である共通ポイントから延在する第1及び第2のアーム14、16を有する。図示の例では、ヒンジ部分18は、C字状部材13における可撓性のU字状部分である。図1に示すように、細長可撓性部材12は、脈管1を包囲する眼口部20を形成するよう構成される。眼口部20はギャップ17に位置付けられ、また使用にあたり脈管1の外部上でほぼ横断するよう位置する。
【0041】
本開示及び特許請求の範囲で使用される用語「ヒンジ」及び「ヒンジ部分」は、この実施形態又は任意な実施形態で第1及び第2のアームの基端側端部間における可撓性の連結、継手、又は戻り部分に関し、これにより第1及び第2のアームのうち一方は、第1及び第2のアームのうち他方に向かって移動することができる。
【0042】
第1アーム14は第1挿通構成26を有し、また第2アーム16は第2挿通構成28を有する。細長可撓性部材12は、細長可撓性部材の第1端部22を第1挿通構成26に挿通することによって、また細長可撓性部材の第2端部24を第2挿通構成28に挿通することによって、C字状部材13に取り付けられる。
【0043】
図示の例において、第1及び第2の挿通構成26、28の各々は、櫛状部分を有する開孔である。各開孔は、したがって、C字状部材13における複数の歯30を形成する。図示の例において、細長可撓性部材12の各端部は、それに関連する挿通構成26、28の歯30の周りに挿通する。挿通構成26、28の一方に位置付けられる細長可撓性部材12の各部分は、挿通構成に摩擦嵌合を形成し、これによりギャップ17に位置付けられる第1細長可撓性部材12の部分を緊張させることができ、また眼口部を閉じた位置に向かって偏移させることができる。細長可撓性部材12は挿通構成26、28に挿通させ、この挿通は、休止位置でギャップ17内に位置付けられる細長可撓性部材12の部分が緊張状態の下にあり、また眼口部20が内腔を通過する流体流を絞ることができるように行う。
【0044】
アーム14、16のいずれか一方は外表面に加わる圧力に応答して内方に移動可能である。このことは、アーム14、16の一方に圧力が加わる場合、ギャップ17内に位置付けられる細長可撓性部材の部分は弛緩し、この弛緩は眼口部20のサイズを増大させる効果を有し、内腔における流体流を可能にする。各アーム14、16は加わる指圧力に応答して移動可能であるのが好ましい。
【0045】
次に図2A、2B及び2Cにつき説明すると、これは本発明の第2実施形態による、内腔102を画定する脈管101内における流体流を制御するデバイス100を示す。図示の実施形態においてこのデバイス100は、図示の例では可撓性コードである細長可撓性部材132、134を備える。第1細長可撓性部材132は第1ループ136を形成するよう構成され、また第2細長可撓性部材134は第2ループ138を形成するよう構成される。図示のように、脈管101を包囲する眼口部120を画定するよう第1ループ136は第2ループ138にリンク連結される。第1及び第2の細長可撓性部材132、134のうち一方の部分が他方におけるループ内を少なくとも1回通過して交差ループを形成するよう構成される第1及び第2の細長可撓性部材132、134の使用は、眼口部120に安定性を与え、これにより脈管若しくはカテーテル又は外科器具のような物体が眼口部内に存在しない場合でも眼口部形態が保持される。安定化した眼口部は、例えば、ユーザーが眼口部を物体上に通過させたい、又は物体を眼口部内にインサートしたいときに使用が容易である。交差ループの使用は、物体周りのループにならない場合に緩めてほどける単一ループよりも有利である。
【0046】
デバイス100は、さらに、第1及び第2の細長可撓性部材132、134に作用して眼口部120を再度閉じることができるよう動作可能な動作部材113を備える。この実施形態において、動作部材113はC字状部材である。図示の例において、動作部材113は、眼口部120が位置付けられるギャップ117によって分離した第1及び第2のアーム114、116を有する。第1及び第2のアーム114、116はヒンジ部分118から上方に延在する。
【0047】
各アーム114、116は、各細長可撓性部材132、134のための挿通構成126、128を有する。図示の例において、各挿通構成126、128は単一開孔を有する。図示の例において、各細長可撓性部材132、134は、それに対応する開孔126、128を経てギャップ117内に挿通され、他方の細長可撓性部材におけるループを経て対応する開孔に戻るよう挿通される。各細長可撓性部材132、134は弾性コードとし、また対応する開孔内で対応するアームに対して摩擦嵌合を形成するよう、対応する開孔126、128のサイズに相関するサイズにすることができる。このことは、ループを形成する各細長可撓性部材132、134の部分がループのサイズを調整することにより緊張させることを可能にする。
【0048】
この実施形態において、ループ136、138の双方は、それらが連携動作するよう互いにリンク連結し、このことは、眼口部を安定化する全体的効果を有し、また動作部材113による張力バイアスの下でループ136、138は、図2Bに示すような眼口部120を閉じる休止位置に向かおうとする。図2Cに示すように、アーム114、116は内方に移動可能である。このことは、アームを内方に移動させるよう十分な圧縮力が動作部材113に加えるとき、各ループ136、138は緩み、これにより眼口部120を開く。
【0049】
ここで開示するデバイスの使用を、図1につき上述した第1実施形態を参照して以下に説明する。使用にあたり、第1実施形態のデバイス10は、例えば、脈管1が血管グラフトの分岐管である場合、眼口部20が既に脈管1を包囲するよう準備することができる。代案として、デバイス10は、以下に説明するように医療従事者によって現場で組み立てることができる。デバイス10を組み立てるとき、医療従事者は、脈管が眼口部20内に位置付けられた状態で眼口部20を形成するよう細長可撓性部材12を構成する。組立手順の一部として、医療従事者は細長可撓性部材12の第1端部22を第1挿通構成26に挿通し、また第2端部24を第2挿通構成28に挿通する。次に医療従事者は、眼口部が脈管1内の流れを抑止するようギャップ17内に位置付けられる細長可撓性部材12の部分を緊張させる。医療従事者が脈管1内に流体を流したいと思う場合、医療従事者は動作部材を掴み、また単に動作部材13に指圧力を加えるよう指と親指との間で操作することができ、これは眼口部20の寸法を変更させ、眼口部20を開いて脈管における流体流を可能にする形態に眼口部20を変化させる効果を有する。医療従事者が指圧力を解除して動作部材13が眼口部20を閉鎖位置に向けて押圧偏移させるとき、眼口部20は脈管1の周りにより緊密な形態に復帰し、これにより眼口部20は脈管1を抑制し、脈管内での流体流を阻害する。
【0050】
第2実施形態の使用を図2A、2B及び2Cにつき以下に説明する。使用にあたり、第2実施形態のデバイスは、脈管が、例えば、血管グラフトのような補綴デバイスの管状分岐である場合、眼口部120を予め脈管101の周りを包囲するよう準備することができる。代案として、デバイス100は、以下に説明するように医療従事者によって現場で組み立てることができる。デバイス100を組み立てるとき、医療従事者は、第1及び第2の細長可撓性部材132、134各々がループを形成し、また眼口部120を画定するようリンク連結されるよう、細長可撓性部材132、134を構成する。医療従事者は、細長可撓性部材132、134をそれに対応する開孔126、128を経てギャップ117内に、また細長可撓性部材132、134のうち一方を他方の細長可撓性部材のループに挿通し、また対応する開孔126、128に戻って挿通することによって、このことを行うことができる。次に医療従事者は、眼口部が脈管1内の流れを抑止するよう各細長可撓性部材を緊張させる。図5につき説明すると、医療従事者が脈管内に流体を流したいと思うとき、医療従事者は動作部材を掴み、また単に動作部材113に指圧力を加えるよう操作することができ、これは脈管101における流体流を可能にする位置に眼口部を移動させる効果を有する。医療従事者がこの圧力を解除して動作部材113が眼口部を閉鎖位置に向けて押圧偏移させるとき、眼口部は、眼口部が脈管101における流体流を阻害する位置に復帰する。
【0051】
比較的複雑さがないことに起因して商業的に訴求力があり、また使用にあたり予測可能な信頼性があるという利点をもたらす他の実施形態を以下に図3A、3B及び3C並びに図4につき説明する。
【0052】
先ず図4説明すると、これは、他の実施形態による、内腔を画定する脈管(図示せず)内の流体を制御するのに適した組み立て済みのデバイス40を示す。このデバイス40は、図示及び例において、可変寸法の眼口部60を画定するよう互いに動作可能な交差挿通した2つの細長可撓性部材42、42′から形成される細長可撓性部材42を備える。各細長可撓性部材42、42′は、可撓性シリコーンコードから作成される。細長可撓性部材42、42′は、図3A、3B、及び3Cにおいて別個に図示されるユーザー圧縮可能な動作部材43のアームにそれぞれ挿通される。
【0053】
図3A、3B、及び3Cにつき説明すると、この実施形態において、ユーザー圧縮可能な動作部材43は、ほぼC字状部材であり、基端側ヒンジ部分48と、この基端側ヒンジ部分48から延在しかつ末端側遊端を持つ第1及び第2のアーム44、46とを有する。第1及び第2のアーム44、46はギャップ47によって分離する。図示の例において、ヒンジ部分48は、C字状部材43におけるV字状又はU字状の部分である。第1及び第2のアーム44、46各々は、対応する第1及び第2のアーム44、46の末端部近傍にピンホール開孔61を有する。各ピンホール開孔61を画定する内面62は、この実施形態において、細長可撓性部材42、42′を対応するピンホール開孔61に挿通するとき細長可撓性部材42、42′の一部分と摩擦的に相互作用するリブを形成する。
【0054】
図4に示すように、圧縮可能な動作部材43は一対の細長可撓性部材42、42′を収容し、これら細長可撓性部材は、各個に脈管を包囲する眼口部60をなすよう構成された細長可撓性部材を形成するものとして互いに機能する。
【0055】
第1アーム44は第1挿通構成56を有し、また第2アーム46は第2挿通構成58を有する。細長可撓性部材42、42′は、細長可撓性部材42の第1端部52を第1挿通構成56に挿通して第1ループを形成し、また第1端部52を第1挿通構成56に戻って挿通することによってC字状部材43に取り付ける。このとき第2細長可撓性部材42′は第2端部54として画定される遊端を有し、この第2端部54は、第2挿通構成58に挿通し、また第1ループに挿通してリンク連結された第2ループを形成し、次に第2端部54を第2挿通構成58に戻って挿通させる。図示の例において、再び図3A、3B、及び3Cにつき説明すると、第1及び第2の挿通構成56、58の各々はリブ付き内面部分62を有するピンホール開孔61として構成される。したがって、各ピンホール開孔は、C字状部材43のピンホール開孔61内に複数のリブ63を形成する。図示の例において、細長可撓性部材42、42′の各端部は、それに関連付けられる挿通構成56、58のリブ63を通過するよう挿通される。挿通構成56、58のうち一方に位置する細長可撓性部材42、42′の各部分は、挿通構成56、58のピンホール開孔61内におけるリブ付き表面部分62との摩擦嵌合を形成し、このことは、ギャップ47内に位置付けられる第1細長可撓性部材42、42′の一部分を緊張させ、また眼口部60を閉鎖位置に向けて偏移することを可能にする。細長可撓性部材42、42′は各挿通構成56、58におけるピンホール開孔61に挿通し、これにより休止位置において、ギャップ47内に位置付けられる細長可撓性部材42の部分は緊張状態の下にあり、また眼口部60は脈管の内腔の流体流を抑止することができる。
【0056】
各アーム44、46は、その外表面に加える圧力に応答して内方に移動可能である。このことは、圧力がアーム44、46のうち一方に加わる場合、ギャップ47内に位置付けられる細長可撓性部材42の部分は弛緩し、このことは、眼口部60のサイズを増大させる効果を有し、また内腔における流体流を可能にすることを意味する。各アーム44、46は、好適には、それに加える指圧力に応答して内方に移動可能とする。各アーム44、46の外表面における窪み344、346は、外科処置における体液がデバイス表面を濡らし、これによりデバイス40の意図する使用を妨げるおそれがあるデバイス40の使用中に、アームから指が滑落するリスクを減少してユーザーの指を当接させる指圧力ガイドとして供する。
【0057】
少なくとも1つの細長可撓性部材は、可撓性シリコーン材料又はフィラメントから形成することができ、この材料又はフィラメントは、随意的にシリコーン被覆又は少なくとも部分的にPTFE被覆することができ、フィラメントは、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又は取扱い操作及び整形が容易であるが、張力の下で恒久的伸張しない同様の物理的特性を有する他の可撓性材料をベースとすることができる。
【0058】
動作部材は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ナイロン、又は形状記憶を有し、またユーザーによる取扱い操作により繰り返し圧縮される能力を保持する形状記憶を有する、十分な屈曲/曲げ弾性率を示す任意な他の材料を含む広範囲な材料から形成することができる。一方の端部で対にしまた接合又は融合し、反対側を遊端とし、また随意的にアームの外表面にミリング加工した把持孔を形成したステンレス鋼製のアームを使用することができる。随意的に、ラッカー又は樹脂で不浸透性被覆を施したスチーム成形合板も、幾つかの状況下での使用は可能であるが、セラミック又はガラスのような壊れやすい物質は不適当であり、また合成発泡体又はゴムのような柔らかい物質は過度に可撓性があり、したがって、動作部材には不向きである。
【0059】
動作部材は、加える圧力の下で互いに接近する方向に移動可能であり、圧力を釈放するとき弾性的に復元でき、またとくに、ユーザーが動作部材に圧力を選択的に加えるとき圧縮可能である、湾曲した又は角度付きのアームを有する圧縮可能動作部材とすることができる。動作部材は、指圧力に応答してアームの末端部を互いに接近する方向に移動させるに十分な圧縮性を有するものとすることができる。
【0060】
デバイスは、本明細書記載のデバイスと、内腔を画定する管状分岐を有する補綴グラフトとから成るキットの一部として設けることができる。このようなキットにおいて、デバイスは、デバイスの眼口部が分岐を包囲するよう動作部材及び細長可撓性部材が組み立てられた「使える準備が整っている(ready for use)」ものとして設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本明細書記載のデバイスは外科処置に使用することができる。
本明細書記載のデバイスは、既存送達システムにおけるのと同一材料を使用し、また天然及び合成の脈管双方に迅速かつ効率的に使用できる「手間がかからない」クリップを提供する。さらに、幾つかの市販デバイスと比べると比較的簡素であることに起因してユーザーによって直感的に容易に操作される。
【0062】
本明細書記載のデバイスは、異なるサイズのカテーテルを脈管内に設置するとき止血を生ずるのに有利に使用することができる。医療従事者は、カテーテルを脈管内に挿入ときにデバイスに対していかなる調整をもする必要がなく、デバイスは脈管内流を制御する。
【0063】
本明細書記載のデバイスは、動作部材に圧力を加えることによって内腔内における流体流を迅速かつ選択的に制御する簡単な方法を医療従事者に提供する。
【0064】
本明細書記載のデバイスは、引っ張ることによって引き締めるときより小さい貫通孔又は「眼口部」を生ずるループを提供する。ループと周りにループが形成される脈管表面、例えば、ソフトゼルウィ―ブ織物表面を有するグラフトとの間における相互作用は、グラフトにおける内腔に挿入される任意なデバイス、例えば、カテーテル又はグラフト内腔内に送達されているデバイス周りのシースに適合するシールを生ずる。
【0065】
有利にも、デバイスは医療従事者が必要に応じて現場で分解及び再組み立てることができる。
【0066】
本明細書記載のデバイスは、内腔又は貫通通路を画定する長さ及び横方向寸法を有する天然及び合成双方の脈管に適用することができ、脈管は、可撓性の壁付き脈管とすることができ、壁部分を挟み込む又は締め付けて互いに閉じ合わせ、内腔の横方向寸法を減少させるよう脈管を挟み込む又は締め付けることができ、付加的に内腔内のカテーテルのような物体を閉じてそれと適合したシールを形成し、これによりカテーテルを所定位置に配置するとき、又はそれを除去している間に内腔内の流れを完全に閉塞することができる。
【0067】
添付図面の上述した記載に使用した参照符号は特許請求の範囲にも使用し、これは単に図示の実施形態における技術的特徴の識別を支援し、また範囲の限定なく特許請求の範囲の理解を促進するためのものである。
【0068】
特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変更及び改変を組み込むことができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5