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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】脳画像内の領域を特定するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240510BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240510BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20240510BHJP
【FI】
A61B6/03 560Z
A61B6/46 536Z
A61B6/50 500D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021528900
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2019081253
(87)【国際公開番号】W WO2020109006
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】18208216.4
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オラサヌ エリザ テオドラ
(72)【発明者】
【氏名】ウェンゼル ファビアン
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-505949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0260394(US,A1)
【文献】特開2005-131010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0113680(US,A1)
【文献】STOEL B.C. et al.,Automated brain computed tomographic densitometry of early ischemic changes in acute stroke,Journal of Medical Imaging,2015年03月,2(1),014004-1 - 014004-10,https://www.spiedigitallibrary.org/journals/journal-of-medical-imaging/volume-2/issue-1/014004/Automated-brain-computed-tomographic-densitometry-of-early-ischemic-changes-in/10.1117/1.JMI.2.1.014004.full?SSO=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定装置であって、
生体の脳を示す3次元画像を提供する画像提供ユニットと、
生体の頭部の3次元モデルを提供するモデル提供ユニットであって、前記3次元モデルは、脳のアルベルタ脳卒中プログラム早期CTスコア(ASPECTS)領域を含む、モデル提供ユニットと、
前記3次元モデルを前記3次元画像に適用することによって、前記3次元画像内のASPECTS領域を特定する領域特定ユニットと、
前記ASPECTS領域内の画像値に基づいて、前記脳内の虚血性変化を示すスコアを決定するスコア決定ユニットと、を含み、
前記スコア決定ユニットは、前記スコアを決定するために、各ASPECTS領域について、前記画像値を、対照者又は対照群の画像値と比較する、
域特定装置。
【請求項2】
前記モデル提供ユニットは、頭蓋骨、左半球、右半球、及び脳室のうちの少なくとも1つも含むように前記3次元モデルを提供する、請求項1に記載の領域特定装置。
【請求項3】
前記モデル提供ユニットは、前記脳の左半球及び右半球を含むように前記3次元モデルを提供し、前記3次元モデルの前記左半球及び前記右半球は、互いに対して対称である、請求項2に記載の領域特定装置。
【請求項4】
前記モデル提供ユニットは、前記脳の左半球及び右半球を含むように前記3次元モデルを提供し、前記脳の前記左半球及び前記右半球内の同じ構造は、同じトポロジを有する、請求項2又は3に記載の領域特定装置。
【請求項5】
前記モデル提供ユニットは、前記脳のスライスも画定するように前記3次元モデルを提供し、前記領域特定ユニットはさらに、前記3次元画像に適用された前記3次元モデルに基づいて、前記3次元画像内の前記脳の2次元スライスを決定し、決定された前記2次元スライス内の前記ASPECTS領域を特定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の領域特定装置。
【請求項6】
前記領域特定ユニットは、前記3次元画像に適用された前記3次元モデルに基づいて、前記3次元画像内の前記脳の2つの2次元スライスのみを決定し、決定された前記2つの2次元スライス内の前記ASPECTS領域を特定する、請求項5に記載の領域特定装置。
【請求項7】
前記対照者又は前記対照群は、健康な脳に対応し、
前記スコア決定ユニットは、
類似性尺度を前記画像値に適用することによって、前記生体のASPECTS領域の前記画像値を、前記対照者又は前記対照群の前記ASPECTS領域の前記画像値と比較し、
前記類似性尺度を所与として、前記対照者又は前記対照群の対応するASPECTS領域の前記画像値と類似していない画像値を有する候補ASPECTS領域を決定し、
前記候補ASPECTS領域の中から、新しい虚血性卒中病変を示す候補ASPECTS領域を決定し、
初期スコア値を提供し、
新しい虚血性卒中病変を示すと決定された各候補ASPECTS領域について、提供された前記初期スコア値から所定の値を減算することによって前記スコアを決定する、請求項に記載の領域特定装置。
【請求項8】
前記スコア決定ユニットは、決定された前記2次元スライスにおける前記ASPECTS領域内の画像値に基づいて、前記脳内の虚血性変化を示すスコアを決定する、請求項5又は6に記載の領域特定装置。
【請求項9】
前記モデル提供ユニットは、10個のASPECTS領域を含むように前記脳の前記3次元モデルを提供し、前記領域特定ユニットは、前記3次元モデルを前記3次元画像に適用することによって、前記3次元画像内の前記10個のASPECTS領域を特定する、請求項1からのいずれか一項に記載の領域特定装置。
【請求項10】
前記画像提供ユニットは、前記3次元画像として、コンピュータ断層撮影画像を提供する、請求項1からのいずれか一項に記載の領域特定装置。
【請求項11】
脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定方法であって、
画像提供ユニットによって、生体の脳を示す3次元画像を提供するステップと、
モデル提供ユニットによって、生体の頭部の3次元モデルを提供するステップであって、前記3次元モデルは、脳のASPECTS領域を含む、提供するステップと、
領域特定ユニットによって、前記3次元モデルを前記3次元画像に適用することによって、前記3次元画像内のASPECTS領域を特定するステップと、
前記ASPECTS領域内の画像値に基づいて、前記脳内の虚血性変化を示すスコアを決定するステップと、を含み、
前記スコアを決定するステップは、前記スコアを決定するために、各ASPECTS領域について、前記画像値を、対照者又は対照群の画像値と比較することを含む、
域特定方法。
【請求項12】
脳を示す画像内の領域を特定するためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、請求項1に記載の領域特定装置を制御するコンピュータ上で実行されるときに、前記領域特定装置に、請求項11に記載の領域特定方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定装置、方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中後に取得したコンピュータ断層撮影画像における早期虚血性変化の検出及び定量化は、患者に最も適した療法及び治療を特定するために極めて重要である。R.I.Avivらによる論文「Alberta Stroke Program Early CT Scoring of CT Perfusion in Early Stroke Visualization and Assessment」(American Journal of Neuroradiology、第28巻、1975~1980頁(2007年))は、いわゆるアルベルタ脳卒中プログラム早期コンピュータ断層撮影スコア(Alberta Stroke Program Early Computed Tomography Score:ASPECTS)に基づいたこれらの早期虚血性変化の定量化について開示している。このスコアは、コンピュータ断層撮影画像の2つの2次元スライス内の、ASPECTS領域と命名される10個の関心領域における虚血性損傷に基づいて評価される。2次元スライス内のASPECTS領域の特定は、コンピュータ断層撮影スキャナにおける患者の頭部の最適ではない向き、最適ではないスライスの厚さ、又はユーザ間のばらつき、すなわち、異なるユーザがASPECTS領域を異なって輪郭描出することが多いなど、いくつかの理由のために、あまり正確ではないことが多い。これは、決定されたスコアの品質低下、したがって、脳内の虚血性変化の定量化の品質低下につながる可能性がある。
【0003】
Stoel Berend Cらの「Automated brain computed tomographic densitometry of early ischemic changes in acute stroke」は、手動スコアリングを支援する補助ツールとしての自動ASPECTS方法について開示している。
【0004】
Noriyuki takahashiらの「Computer-aided detection scheme for identification of hypoattenuation of acute stroke in unenhanced CT」は、急性脳卒中の血栓溶解のための患者を選択するための、非増強CT画像上の急性脳卒中の低吸収域の特定のためのコンピュータ支援検出スキームについて開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脳卒中後の患者の脳内の虚血性変化の定量化を向上させる、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定装置、方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様では、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定装置が提示される。領域特定装置は、
‐生体の脳を示す3次元画像を提供する画像提供ユニットと、
‐生体の頭部の3次元モデルを提供するモデル提供ユニットであって、3次元モデルは、脳のASPECTS領域を含む、モデル提供ユニットと、
‐3次元モデルを3次元画像に適用することによって、3次元画像内のASPECTS領域を特定する領域特定ユニットとを含む。
【0007】
脳のASPECTS領域を含む3次元モデルが提供され、この3次元モデルが生体の脳を示す3次元画像に適用されて、3次元画像内のASPECTS領域が特定されるので、3次元画像を生成するために使用されるイメージングシステムにおける生体の頭部の向きとは無関係に、画像スライス厚さとは無関係に、またさらに、医師といったユーザとは無関係に、ASPECTS領域を特定できる。これは、脳卒中後の脳内の虚血性変化の定量化を向上させるASPECTS領域の決定精度の向上につながる。これはまた、治療法の推奨も向上させる。
【0008】
画像提供ユニットは、コンピュータ断層撮影スキャナ、磁気共鳴イメージングスキャナなどといった、脳を示す3次元画像を生成するためのイメージングスキャナであり得る。しかしながら、画像提供ユニットはまた、記憶ユニット及び/又は受信ユニットであってもよい。例えば、画像提供ユニットは、例えば、イメージングスキャナや、病院のデータベースといったデータベースから、3次元画像を受信してもよく、この場合、画像提供ユニットは、受信した3次元画像を領域特定ユニットに直接提供するか、又は、受信した3次元画像を最初に記憶し、それを提供のために後で取り出してもよい。
【0009】
モデル提供ユニットは、好ましくは、頭蓋骨、左半球、右半球、及び脳室のうちの少なくとも1つも含むように3次元モデルを提供する。特に、一実施形態では、提供された3次元モデルは、ASPECTS領域に加えて、頭蓋骨、左半球、右半球、及び脳室のすべてを含む。これらの要素は、一般に、提供された3次元画像において明白に認識できるため、3次元画像への3次元モデルの適用、したがって、3次元画像内のASPECTS領域の特定がさらに向上され得る。
【0010】
モデル提供ユニットは、記憶ユニット及び/又は受信ユニットであってもよい。モデル提供ユニットは、例えば、3次元モデルを生成するモデル生成ユニットや、病院のデータベースといったデータベースから、3次元モデルを受信してもよく、モデル提供ユニットは、受信した3次元モデルを領域特定ユニットに直接提供するか、又は、受信した3次元モデルを最初に記憶し、それを提供のために後で取り出してもよい。モデル提供ユニットは、モデル生成ユニット自体であってもよい。
【0011】
3次元モデルが、脳の左半球及び右半球を含む場合、モデルの左半球及び右半球は、好ましくは、互いに対して対称である。したがって、3次元モデルは、好ましくは、左半球と右半球とを分離する脳の長手方向の溝に対して左右対称性を有する。特に、脳の左半球及び右半球内の同じ構造は、同じトポロジを有する。例えば、モデルは、好ましくは、三角形である表面メッシュを含む表面モデルであり、用語「同じトポロジ」とは、好ましくは、三角形といった表面メッシュが同数であることを指す。したがって、好ましい実施形態では、左半球及び右半球内の同じ構造は、提供された3次元モデルの同数の表面メッシュによってモデル化される。これにより、左半球及び右半球内の構造間の比較が容易になり、脳内の病変の検出を向上できる。
【0012】
好ましくは、モデル提供ユニットは、脳のスライスも画定するように3次元モデルを提供し、領域特定ユニットはさらに、3次元画像に適用された3次元モデルに基づいて、3次元画像内の脳の2次元スライスを決定し、決定された2次元スライス内のASPECTS領域を特定し得る。これにより、3次元画像の生成に使用されるイメージングスキャナにおける生体の頭部の向きとは無関係に、好ましくは軸方向スライスである所定の2次元スライス内のASPECTS領域を、非常に正確に特定できる。特に、領域特定ユニットは、3次元画像に適用された3次元モデルに基づいて、3次元画像内の脳の2つの2次元スライスのみを決定し、決定された2つの2次元スライス内のASPECTS領域を特定できる。
【0013】
領域特定装置は、ASPECTS領域内の画像値に基づいて、脳内の虚血性変化を示すスコアを決定するスコア決定ユニットをさらに含み得る。特に、スコア決定ユニットは、スコアを決定するために、各ASPECTS領域について、画像値を、対照者又は対照群の画像値と比較し得る。一実施形態では、対照者又は対照群は、健康な脳に対応する。スコア決定ユニットは、a)類似性尺度を画像値に適用することによって、生体のASPECTS領域の画像値を、対照者又は対照群のASPECTS領域の画像値と比較し、b)類似性尺度を所与として、対照者又は対照群の対応するASPECTS領域の画像値と類似していない画像値を有する候補ASPECTS領域を決定し、c)候補ASPECTS領域の中から、新しい虚血性卒中病変を示す候補ASPECTS領域を決定し、d)初期スコア値を提供し、e)新しい虚血性卒中病変を示すと決定された各候補ASPECTS領域について、提供された初期スコアから所定の値を減算することによってスコアを決定する。スコアは、3次元画像において特定された3次元ASPECTS領域に基づいて決定されても、及び/又は、2次元スライスにおいて特定された2次元ASPECTS領域に基づいて決定されてもよい。特に、2次元スライスにおける2次元ASPECTS領域のみが考慮される場合に、正確なスコアを決定できる。スコアを決定するために2つの2次元スライスのみを使用することで十分であり、それによって、計算労力が少なくて済む。
【0014】
モデル提供ユニットは、好ましくは、10個のASPECTS領域を含むように脳の3次元モデルを提供し、領域特定ユニットは、3次元モデルを3次元画像に適用することによって、3次元画像内の10個のASPECTS領域を特定する。10個のASPECTS領域の各々は、好ましくは、2つの対応するサブ領域、すなわち、脳の左半球内のサブ領域と、脳の右半球内のサブ領域とによって形成される。特に、第1のASPECTS領域は、2つの半球内の前中大脳動脈(MCA)皮質(M1)によって形成され、第2のASPECTS領域は、2つの半球内の島皮質の外側のMCA皮質(M2)によって形成され、第3のASPECTS領域は、2つの半球内の後MCA皮質(M3)によって形成され、第4のASPECTS領域は、2つの半球内のM1の直ぐ吻側の前皮質(M4)によって形成され、第5のASPECTS領域は、2つの半球内のM3のすぐ吻側の外側皮質(M5)によって形成され、第6のASPECTS領域は、2つの半球内のM3のすぐ吻側の後皮質(M6)によって形成され、第7のASPECTS領域は、2つの半球内のレンズ核(L)によって形成され、第8のASPECTS領域は、2つの半球内の尾状核(C)によって形成され、第9のASPECTS領域は、2つの半球内の島皮質(I)によって形成され、第10のASPECTS領域は、2つの半球内の内包(IC)によって形成される。さらに、画像提供ユニットは、好ましくは、3次元画像として、コンピュータ断層撮影画像を提供する。3次元モデルが、10個のASPECTS領域を含む場合、3次元画像への3次元モデルの適用をさらに向上できる。さらに、3次元画像が3次元コンピュータ断層撮影画像である場合、この適用、したがって、3次元画像内のASPECTS領域を決定する精度、したがって、虚血性変化の定量化をさらに向上できる。
【0015】
本発明のさらなる態様では、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定方法が提示される。領域特定方法は、
‐画像提供ユニットによって、生体の脳を示す3次元画像を提供するステップと、
‐モデル提供ユニットによって、生体の頭部の3次元モデルを提供するステップであって、3次元モデルは、脳のASPECTS領域を含む、提供するステップと、
‐領域特定ユニットによって、3次元モデルを3次元画像に適用することによって、3次元画像内のASPECTS領域を特定するステップとを含む。
【0016】
本発明の別の態様では、脳を示す画像内の領域を特定するためのコンピュータプログラムが提示され、コンピュータプログラムは、請求項1に記載の領域特定装置を制御するコンピュータ上で実行されるときに、領域特定装置に、請求項13に記載の領域特定方法のステップを実行させるためのプログラムコード手段を含む。
【0017】
請求項1の領域特定装置、請求項13の領域特定方法、及び請求項14のコンピュータプログラムは、特に従属請求項に規定されるように、類似及び/又は同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組合せであってもよいことを理解されたい。
【0019】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定装置の実施形態を概略的かつ例示的に示す。
図2図2は、生体の頭部の3次元モデルのいくつかの要素を概略的かつ例示的に示す。
図3図3は、図2に示す3次元モデルのさらなる要素を示す図である。
図4図4は、図2及び図3に示す3次元モデルを用いて決定された、提供された3次元画像の2つの2次元軸方向スライスを概略的かつ例示的に示す。
図5図5は、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定方法の実施形態を例示的に示すフローチャートを示す。
図6図6は、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定装置のさらなる実施形態を概略的かつ例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定装置の実施形態を概略的かつ例示的に示す。領域特定装置1は、患者テーブル4といった支持手段上に横たわる生体2の頭部3の3次元画像を提供する画像提供ユニット5を含み、この実施形態では、画像提供ユニット5は、3次元コンピュータ断層撮影画像を提供するコンピュータ断層撮影スキャナである。3次元コンピュータ断層撮影画像は、好ましくは、非造影コンピュータ断層撮影画像、すなわち、頭部に造影剤がないときに生成されたコンピュータ断層撮影画像である。
【0022】
領域特定装置1は、図2及び図3に概略的かつ例示的に示されている頭部の3次元モデル30を提供するモデル提供ユニット6をさらに含む。3次元モデルは、頭蓋骨31、左半球32、右半球33、及び脳室38を含む。さらに、3次元モデル30は、図2において参照番号34で参照されるASPECTS領域M1~M6と、皮質下のASPECTS領域、すなわち、参照番号35で参照される内包(IC)と、参照番号36で参照されるレンズ核(L)と、参照番号37で参照される島皮質(I)とを含む。さらなるASPECTS領域である尾状核(C)も3次元モデル30に含まれるが、図2及び図3では見えない。したがって、3次元モデル30は、頭蓋骨31、左半球32、右半球33、及び脳室38に加えて、10個のASPECTS領域を含み、各ASPECTS領域は、脳の2つの半球内の2つの対応するサブ領域によって形成される。
【0023】
モデル30の左半球32及び右半球33は、互いに対して対称である。特に、脳の左半球32及び右半球33内の同じ構造は、同じトポロジを有する。本実施形態では、3次元モデルは、三角形の表面要素からなる表面メッシュであり、左半球32及び右半球33内の同じ構造は、同数の三角形メッシュ要素を有する。例えば、左尾状核及び右尾状核は、同数の三角形メッシュ要素によってモデル化される。
【0024】
領域特定装置1は、3次元モデル30を、提供された3次元コンピュータ断層撮影画像に適用することによって、提供された3次元コンピュータ断層撮影画像内のASPECTS領域を特定する領域特定ユニット7をさらに含む。したがって、提供された3次元モデル30を使用することによって、提供された3次元コンピュータ断層撮影画像内の10個のASPECTS領域がセグメント化される。
【0025】
3次元モデル30は、脳の軸方向スライスも画定するように提供され、領域特定ユニット7はさらに、3次元コンピュータ断層撮影画像に適用された3次元モデル30に基づいて、3次元コンピュータ断層撮影画像内の脳の2次元スライス20、21を決定し、図4に概略的かつ例示的に示される、決定された2次元軸方向スライス20、21内のASPECTS領域を特定する。この例では、スライス20は、頭部内の上側の軸方向スライスであり、スライス21は、下側の軸方向スライスである。図4では、2次元軸方向スライス20、21内の特定されたASPECTS領域は、線40によって示されている。
【0026】
領域特定装置1は、決定された2次元軸方向スライス20、21内のASPECTS領域内の画像値に基づいて、脳内の虚血性変化を示すスコアを決定するスコア決定ユニット8をさらに含む。特に、スコア決定ユニット8は、スコアとしてASPECTSを決定する。また、領域特定装置1は、キーボード、コンピュータマウス、タッチパッドなどといった入力ユニット9と、ディスプレイといった出力ユニット10とを含む。
【0027】
以下、図5に示されるフローチャートを参照して、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定方法の実施形態を例示的に説明する。
【0028】
ステップ101において、画像提供ユニット5によって、生体の脳を示す3次元画像が提供される。この実施形態では、画像提供ユニット5によって、3次元コンピュータ断層撮影画像が提供される。ステップ102において、モデル提供ユニット6が、生体の頭部の3次元モデル30を提供する。この3次元モデル30は、脳の10個のASPECTS領域を含み、各ASPECTS領域は、脳の2つの半球内の2つの対応するサブ領域によって形成される。この実施形態では、3次元モデル30はまた、頭蓋骨、左半球、右半球、及び脳室を含む、すなわち、モデル化する。
【0029】
ステップ103において、3次元コンピュータ断層撮影画像内のASPECTS領域を特定するために、領域特定ユニット7によって、3次元モデル30が3次元コンピュータ断層撮影画像に適用される。したがって、提供された3次元モデル30を使用することによって、3次元コンピュータ断層撮影画像内に、10個のASPECTS領域がセグメント化される。ステップ104において、3次元コンピュータ断層撮影画像に適用された、提供された3次元モデルに基づいて、3次元コンピュータ断層撮影画像内の脳の2つの2次元軸方向スライスが決定され、3次元コンピュータ断層撮影画像内の対応するセグメント化に基づいて、決定された2つの2次元軸方向スライス内のASPECTS領域が特定される。ステップ105において、スコア決定ユニット8が、決定された2次元軸方向スライス内で特定されたASPECTS領域内の画像値に基づいて、脳内の虚血性変化を示すスコア、特に、ASPECTSを決定する。
【0030】
図1を参照して上述した実施形態では、画像提供ユニットは、イメージングスキャナ、特に、コンピュータ断層撮影スキャナであるが、別の実施形態では、画像提供ユニットは、単に3次元画像が記憶され、記憶された3次元画像がそれを提供するために取り出される記憶ユニットであってもよい。画像提供ユニットはまた、例えば、イメージングスキャナ又は画像データベースから3次元画像を受信する受信ユニットであってもよく、この例では、画像提供ユニットは、3次元画像、すなわち、この場合では、受信した3次元画像を提供してもよい。
【0031】
図6は、3次元画像を記憶し、記憶された3次元画像を領域特定ユニット7に提供する記憶ユニットである画像提供ユニット105を有する実施形態を概略的かつ例示的に示す。対応する領域特定装置101は、図1を参照して上述したように、モデル提供ユニット6、領域特定ユニット7、スコア決定ユニット8、入力ユニット9、及び出力ユニット10をさらに含む。
【0032】
脳卒中後に取得したコンピュータ断層撮影における早期虚血性変化の検出及び定量化は、患者に最も適した療法及び治療を特定するために極めて重要である。これらの変化の多様性は、例えば、R.I.Avivらによる上記論文に開示されているように、ASPECTSを用いて定量化できる。このスコアは、関心領域内、すなわち、ASPECTS領域内の虚血性損傷について評価され、その精度は、通常は手動で行われるASPECTS領域の輪郭描出の質に依存する。図1から図6を参照して上述した、脳を示す画像内の領域を特定するための領域特定装置及び方法は、脳を示し、したがって、3次元の脳モデルとみなすこともできる人の頭部の3次元モデルを使用する。3次元モデルは、実際のデータ、すなわち、実際の患者の実際の3次元画像と、トレーニング目的のために非常に正確に輪郭描出された対応するASPECTS領域とを使用することによって、トレーニングできる。3次元モデルは、一貫したやり方で、ASPECTS領域を自動的に輪郭描出するために使用される。ASPECTS領域を特定するための3次元モデルを使用することによって、ASPECTS領域のこの特定は、コンピュータ断層撮影画像の取得方向及びスライス厚さや、観察者間のばらつきとは無関係であり得る。さらに、ASPECTS領域を決定するこのアプローチはまた、計算的に非常に効率的であるという利点を有する。
【0033】
脳卒中後の早期虚血性変化の検出及び定量化の場合、超急性虚血性脳卒中の血栓溶解治療前に、3次元画像、特に3次元コンピュータ断層撮影画像を取得すべきである。というのは、それは、例えば、P.A.Barberらによる論文「Validity and reliability of a quantitative computed tomography score in predicting outcome of hyperacute stroke before thrombolytic therapy」(The Lancet、第355巻、1670-1674頁(2000年))において開示されているように、脳内出血の検出に非常に感度が高いからである。3次元コンピュータ断層撮影画像といった3次元画像に基づいた早期虚血性変化の検出及び定量化、並びに機能的転帰との相関におけるその意義を利用して、血栓溶解薬を用いた介入脳卒中治療に最も適切な患者を特定できる。
【0034】
ASPECTS、すなわち、スコアは、中大脳動脈卒中患者のコンピュータ断層撮影脳スキャンで早期虚血性変化を定量化するのに特に有用である。ASPECTSは、10点式の定量的トポグラフィコンピュータ断層撮影スキャンスコアであり、MCA血管領域のセグメント評価が行われ、注意力低下、灰白質-白質の境界不明瞭化、又は限局性腫脹といった虚血性損傷のエビデンスを示すASPECTS領域の各々について、10である最初のスコアから1点が差し引かれる。MCA領域内に虚血がない画像は、10の最大スコアを有し、一方、MCA領域全体の拡散関与を伴うスキャンは、0のスコアになる。ASPECTSスコアが7以下であれば、3ヵ月時点での機能的転帰の悪化だけでなく、症候性出血が予測される。ASPECTS、すなわち、スコアが基づくASPECTS領域は、皮質下構造である尾状核(C)、島皮質(I)、及び内包(IC)、並びに、MCA皮質領域であるレンズ核(L)、前MCA皮質(M1)、島皮質の外側のMCA皮質(M2)、後MCA皮質(M3)、M1のすぐ吻側の前皮質(M4)、M3のすぐ吻側の外側皮質(M5)、及びM3のすぐ吻側の後皮質(M6)である。図1から図6を参照して上述した領域特定装置及び方法を用いることなく、これらの10個のASPECTS領域は、スコアリングが行われる2つの軸方向コンピュータ断層撮影スライスにおいて手動で輪郭描出できる。しかしながら、軸方向コンピュータ断層撮影スライス上にASPECTS領域を手動で輪郭描出する代わりに、図1から図6を参照して上述した領域特定装置及び方法は、比較的少ない計算労力で、かつ、コンピュータ断層撮影スキャナにおける患者の頭部の向き又は傾斜とは無関係に、3次元コンピュータ断層撮影画像内、したがって、3次元コンピュータ断層撮影画像から得られる軸方向コンピュータ断層撮影スライス内のASPECTS領域の正確な自動輪郭描出を可能にする。計算労力が比較的少ないことは、ASPECTS領域の高速特定につながり、これは、脳卒中の場合、時間窓が極めて重要であり、治療計画が比較的短時間で実行されなければならないため、重要である。
【0035】
領域特定装置及び方法は、少なくともASPECTS領域を含む3次元モデルを使用することから、例えば、3次元画像の傾斜又は向き補正を行うための前処理を必要とせずに、3次元画像内、したがって、3次元画像の2次元スライス内のASPECTS領域を、正確かつ高速に特定できる。特に、3次元モデルは、コンピュータ断層撮影スキャナにおける患者の頭部の向きとは無関係であるために、提供された3次元画像内のASPECTS領域をセグメント化するために使用される。すなわち、比較的少ない計算労力で、頭部の向き及びスライス厚とは無関係に、同じASPECTS領域を一貫してセグメント化できる。提供された3次元画像内のASPECTS領域のセグメント化はまた、ASPECTS領域の適切かつ一貫した視覚化のためだけでなく、ASPECTSスコアリングの自動定量化のために、画像の向きをリフォーマットするためにも使用できる。したがって、装置は、頭部が、ユーザによって選択可能な及び/又は所定の所望の向きを有するように、3次元画像を示せる。特に、3次元画像への3次元モデルの適応により、3次元画像内の頭部の向きが既知であるため、装置は、頭部を所望の及び/又は所定の向きで示すように、3次元画像を適応できる。したがって、頭部は、イメージング中の及び最初に提供された3次元画像内の頭部の実際の向きとは無関係に、所望の及び/又は所定の向きで示される。これは、例えば、イメージング中の及び最初に提供された3次元画像内の頭部の実際の向きとは無関係に、異なる患者の頭部をすべて同じ向きで示せることを意味する。
【0036】
ASPECTS領域をモデル化した3次元画像モデルを用いることにより、提供された3次元画像においてASPECTS領域をセグメント化するので、セグメント化は、モデルベースのセグメント化とみなすことができる。モデルは、好ましくは、頭蓋骨、左半球、右半球、脳室、及び異なるASPECTS領域の境界といったモデル化される異なる要素の境界を表す三角形メッシュを含む。モデル化される異なる要素の境界を表す三角形メッシュは、特にASPECTS領域のセグメント化が事前の解剖学的知識に基づくように、事前の解剖学的知識に基づいて生成され、これは、この技術を、提供された3次元画像内の可能なアーチファクトに対して非常にロバストにする。この事前の解剖学的知識の考慮は、事前の解剖学的知識に基づくセグメント化の正則化であるとみなせる。セグメント化は、セグメント化される異なる要素の全体の形状が保存されるように実行される。セグメント化については、O.Ecabertらによる論文「Automatic Model-Based Segmentation of the Heart in CT Images」(IEEE Transactions on Medical Imaging、第27巻、1189~1201頁(2008年))、J.Petersらによる論文「Optimizing boundary detection via simulated search with applications to multi-modal heart segmentation」(Medical Image Analysis、第14巻、70~84頁(2010年))、及びT.Broschらによる論文「Deep Learning-Based Boundary Detection for Model-Based Segmentation with Application to MR Prostate Segmentation」(Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention-MICCAI2018)に開示されているセグメント化アルゴリズムといった既知のセグメント化アルゴリズムを使用できる。
【0037】
提供された3次元モデルは、好ましくは、ASPECTS領域を含む三角形モデルであり、これは、ASPECTS領域を一貫してかつ自動的にセグメント化するために使用される。上述したように、3次元の使用は、画像内の患者の頭部の向きとは無関係であるという利点を有し、このアプローチはまた、計算的に非常に効率的であるという利点を有する。
【0038】
脳をモデル化していることにより3次元脳モデルともみなされる3次元モデルは、好ましくは、10個のASPECTS領域だけでなく、コンピュータ断層撮影画像において可視であり、ASPECTS領域の正確なセグメント化を支援するために使用される半球及び脳室などの追加の構造を含む左右対称のモデルであり、各ASPECTS領域は、脳の2つの半球内の2つの対応するサブ領域によって形成される。好ましい3次元モデルの左右対称性は、右半球と左半球とを分離する脳の長手方向の溝を指す。3次元モデルはまた、上述したように、頭蓋骨をモデル化できる。3次元モデルを生成するために、それは、実際のデータ、すなわち、ASPECTS領域の対応する正確な手動で生成された輪郭描出を有する実際の患者の実際の3次元コンピュータ断層撮影画像でトレーニングされる。モデルをトレーニングするために使用される手動輪郭描出は、好ましくは、Avivらによる上記論文に開示されているASPECTS輪郭描出ガイドラインに従う。
【0039】
モデルは、O.Ecabertら及びJ.Petersらによる上記論文に開示されているトレーニングアルゴリズムに従ってトレーニングできる。モデルのトレーニングはまた、例えば、T.Broschらによる上記論文に説明されているように、深層学習アプローチを使用することによっても実行できる。
【0040】
スコア決定ユニット8が、提供された3次元画像内のASPECTS領域の自動輪郭描出を使用して、ASPECTS、すなわち、スコアを自動的に計算できる。スコアのこの決定は、ASPECTS領域内の画像値と、対照群の対応するASPECTS領域の対応する画像値との比較に基づくか、又は深層学習などの機械学習手法を使用することによってでもよい。特に、3次元モデルは、すべての被検者にわたって一貫したメッシュで関心のASPECTS領域を記述するので、各提供された3次元画像において、どの画像要素がどのASPECTS領域に対応しているかが明確であり、これにより、スコア決定ユニット8が、異なる画像内の同じASPECTS領域の画像値を比較できる。一実施形態では、各ASPECTS領域について、患者の画像値が、健康な被検者からなる対照者又は対照群の画像値と比較される。この比較のために、好ましくは、類似性尺度が画定される。類似性尺度を所与として、患者のASPECTS領域の画像値が、健康な被験者の対応するASPECTS領域の画像値と類似していない場合、このASPECTS領域は、候補ASPECTS領域とみなされる。次に、分類ステップにおいて、どの候補ASPECTS領域が現在の脳卒中によって実際に影響を受けるかが決定され、これにより、そのようなASPECTS領域が、古い虚血性病変、腫瘍、ウィルヒョウ(Virchow)空間などを含むASPECTS領域から区別される。新しい虚血性病変を示すと分類された候補ASPECTS領域の数に基づいて、スコアを決定できる。特に、新しい虚血性病変を示す各候補ASPECTS領域について、10の初期値から1が減算される。したがって、すべてのASPECTS領域が、新しい虚血性病変を示す候補ASPECTS領域である場合、スコアはゼロとなり、ASPECTS領域が、新しい虚血性病変を示す候補ASPECTS領域ではない場合、スコアは10となる。ここで、各ASPECTS領域は、2つの対応するサブ領域によって形成されており、2つのサブ領域の一方又は両方において、現在の脳卒中によって悪影響を受けていると決定される場合、最初に10であるスコアから1が差し引かれることに留意されたい。したがって、第1のASPECTS領域M1を形成するサブ領域のうちの1つが影響を受けている場合、スコアから1が差し引かれ、第2のASPECT領域M2を形成するサブ領域のうちの1つが影響を受けている場合も1が差し引かれ、以下同様である。
【0041】
類似性尺度は、対応するASPECTS領域内の画像の強度分布のヒストグラムの互いからの偏差に基づいていてもよい。しかしながら、現在の患者のASPECTS領域内の画像値を、対照者又は対照群のASPECT領域と比較するために、他の類似性尺度も使用できる。類似性尺度は、異なる領域の画像値が類似しているか否かを決定するために閾値と比較できる類似性値を出力できる。
【0042】
候補ASPECTS領域を分類するために、この分類ステップのためにトレーニングされたニューラルネットワークといった人工知能に基づく分類技術、ヒストグラムベースの分類技術、特徴ベースの分類技術、パターンベースの分類技術などを使用できる。
【0043】
どのASPECTS領域が現在の脳卒中によって悪影響を受け、どのASPECTS領域が現在の脳卒中によって悪影響を受けていないかの決定は、3次元画像において、又はその画像の2次元軸方向スライスにおいて実行できる。画像のこれらの2次元軸方向スライスは、提供された3次元画像に適応されている3次元モデルに基づいて自動的に決定される。特に、3次元モデルを提供された3次元画像に適応させることによって、2次元軸方向スライスが自動的に決定されるように、2次元軸方向スライスを3次元モデルに関して画定できる。例えば、2つの2次元スライスは、それらが互いに平行であるように自動的に決定され、このとき、第1のスライスは、視床及び大脳基底核のレベルにあり、第2のスライスは、神経節構造が見えないように、神経節構造の最も上位の縁に隣接する。
【0044】
一般に、コンピュータ断層撮影画像は、コンピュータ断層撮影画像内の2次元軸方向スライスを選択するために、コンピュータ断層撮影画像内の脳の向きに対応する向きを有するアトラステンプレートに位置合わせされる。しかしながら、このような位置合わせは、2次元軸方向スライスの選択、したがって、可能な後続の輪郭描出及びスコアの決定に影響を及ぼす位置合わせ誤差を導入する。これとは対照的に、図1から図6を参照して上述した領域特定装置及び方法は、必ずしもこのような位置合わせステップを必要とせず、誤差を低減する可能性がある。図1から図6に示される説明された領域特定装置及び方法による2次元スライスの選択もまた、ASPECTS領域を含む3次元モデルと、提供された3次元画像へのこの3次元モデルの適応とが関与するので、3次元画像内の脳の向きとは無関係である。さらに、アトラステンプレートへの提供された3次元画像のこのような位置合わせは、ASPECTS領域の自動決定及びスコアの自動計算も含まない。さらに、アトラステンプレートへの3次元画像のこのような位置合わせは、ASPECTS領域を含む3次元モデルを提供された3次元画像に単に適応させることと比較して、比較的多い計算労力を必要とする。
【0045】
ASPECTS領域は、好ましくは三角形である対称表面メッシュによって画定されることによって、好ましくはトポロジ的に対称である。したがって、左尾状核といった左半球内のASPECTS領域のサブ領域は、右尾状核といった右半球内の同じASPECTS領域のサブ領域と同じトポロジ、すなわち、好ましくは同数の三角形を有する。したがって、左半球及び右半球内の同じASPECTS領域のサブ領域は、例えば、メッシュベースの画像ワーピングを介して、追加の前処理ステップを必要とすることなく、容易に比較できる。例えば、非対称病変を検出できる。つまり、ASPECTS領域の左のサブ領域における、脳卒中によって引き起こされた病変が、ASPECTS領域の対応する右のサブ領域における病変と類似しているか否かを、所定の類似性尺度の考慮の下で検出できることを意味する。また、ここで、類似性尺度は、同じASPECTS領域の対応するサブ領域における画像値の強度分布のヒストグラムの互いからの偏差に基づいていてもよい。しかしながら、ASPECTS領域の左のサブ領域内の画像値を、同じASPECTS領域の対応する右のサブ領域と比較するために、他の類似性尺度も使用できる。
【0046】
上述の実施形態では、提供された3次元モデル画像は、コンピュータ断層撮影画像であるが、ASPECTS領域が脳卒中によって悪影響を受けたか否かを特定することを可能にする別の種類の画像であってもよい。例えば、脳を含む頭部の提供された3次元画像は、磁気共鳴画像であってもよい。
【0047】
上述の実施形態では、ASPECTS、すなわち、スコアは、ASPECTS領域画像値に類似性尺度を適用することによって、その画像値を、対照者又は対照群のASPECTS領域の画像値と比較することによって、類似性尺度を所与として、対照者又は対照群の対応するASPECTS領域の画像値に類似していない画像値を有する候補ASPECTS領域を決定することによって、候補ASPECTS領域の中から、新しい虚血性脳卒中病変を示す候補ASPECTS領域を決定することによって、初期スコア値を提供することによって、及び、新しい虚血性脳卒中病変を示すと決定された各候補ASPECTS領域について、提供された初期スコアから所定の値を減算することによってスコアを決定することによって、自動的に決定されるが、スコアはまた、別のやり方でも自動的に決定できる。例えば、類似性尺度を画像値に適用することによって、ASPECTS領域の左のサブ領域の画像値を、同じASPECTS領域の右のサブ領域と比較することもでき、類似性尺度を所与として、左のサブ領域の画像値が、ASPECTS領域の右のサブ領域の画像値と異なる場合、このASPECTS領域も候補ASPECTS領域であると決定される。したがって、候補ASPECTS領域を決定するために、生体、すなわち、現在の患者のASPECTS領域の画像値を、対照者又は対照群の対応するASPECTS領域の画像値と比較できるか、及び/又は、生体、すなわち、現在の患者の同じASPECTS領域のサブ領域の画像値を互いに比較できる。
【0048】
どのASPECTS領域が現在の脳卒中によって影響されているかを決定するために、人工知能といった他の手段、例えば、トレーニングされた畳み込みニューラルネットワークも使用できる。検出された病変の形状、検出された病変の画像値の平均などに基づくパターン認識技術も使用できる。どのASPECTS領域が、新しい脳卒中によって実際に影響を受けているかが決定された後、例えば、新しい脳卒中によって影響を受けていると決定された各ASPECTS領域について、提供された初期スコアから所定の値を減算することによって、スコアを自動的に決定できる。
【0049】
上述の実施形態では、ASPECTS、すなわち、スコアは自動的に決定されるが、当然ながら、特定されたASPECTS領域が、単に医師といったユーザに示されてもよく、次に、医師といったユーザは、スコアを決定するためにこれらの特定されたASPECTS領域を使用できる。
【0050】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の精査から、特許請求されている発明を実施する際に当業者によって理解され、達成され得る。
【0051】
特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は、複数を排除するものではない。
【0052】
単一のユニット又はデバイスが、特許請求の範囲に列挙されるいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用することができないことを示すものではない。
【0053】
3次元モデルを提供すること、3次元画像内のASPECTS領域を特定するために、3次元モデルを3次元画像に適応させることによって、3次元モデルを、提供された3次元画像に適用すること、特定されたASPECTS領域内の画像値に基づいてスコアを計算することなどといった、1つ若しくはいくつかのユニット又はデバイスによって行われる手順は、他の任意の数のユニット又はデバイスによって行われてもよい。例えば、図5を参照して上述したステップ101からステップ105は、単一のユニットによって、又は任意の他の数の異なるユニットによって行われてもよい。領域特定方法による領域特定装置のこれらの手順及び/又は制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段及び/又は専用ハードウェアとして実施できる。
【0054】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶/配布することができるが、インターネット又は他の有線もしくは無線電気通信システムなどを介して他の形態で配布することもできる。
【0055】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0056】
本発明は、脳を示すコンピュータ断層撮影画像といった画像内の領域を特定するための領域特定装置に関する。モデル提供ユニットが、生体の頭部の3次元モデルを提供し、3次元モデルは、脳のASPECTS領域を含む。領域特定ユニットが、3次元モデルを3次元画像に適用することによって、3次元画像内のASPECTS領域を特定する。これにより、イメージングシステムにおける頭部の向きとは無関係に、画像スライスの厚さとは無関係に、またさらに、医師といったユーザとは無関係に、ASPECTS領域を正確にかつ自動的に特定できる。これは、脳卒中後の脳内の虚血性変化の定量化を向上させるASPECTS領域の決定精度の向上につながる。これはまた、治療法の推奨も向上させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6