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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】相互接続体および電気機械用の固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
H02K3/50 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021544484
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020055564
(87)【国際公開番号】W WO2020178288
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】102019202911.6
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィットスタット,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィラッカー,カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットマン,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】バウムガート,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ロハス,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュレンク,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】リンドヴュルム,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ウィーダー,クリストフ
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-311123(JP,A)
【文献】特開2014-207828(JP,A)
【文献】特開2011-259654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0307362(US,A1)
【文献】特表2015-530864(JP,A)
【文献】特開2013-121317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30- 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械の固定子(100)用の相互接続体(10)であって、
前記相互接続体(10)は少なくとも1つの成形バスバー(12)を備え、
前記成形バスバー(12)は、
外部接続部(23)と接続するために設けられた前記相互接続体(10)の接続点(16)を有する第1領域(14)と、
前記バスバー(12)を固定子巻線(102)に接続するために設けられた接続点(20)を有する第2領域(18)と、
前記第1領域(14)と前記第2領域(18)とを接続する中間領域(22)と、を備え、
前記中間領域(22)は、前記第1領域(14)と前記中間領域(22)との間、および前記第2領域(18)と前記中間領域(22)との間の移行部分のそれぞれの角度(α)が直角から逸脱するように配置され
前記第2領域(18)は、前記第1領域(14)より下方で横たわるように配置され、
前記バスバー(12)は、前記第1領域(14)と前記中間領域(22)と前記第2領域(18)とにより、略コ字状に形成されている、
ことを特徴とする相互接続体(10)。
【請求項2】
前記第1領域(14)および前記第2領域(18)は、平行な平面(30,31)上に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の相互接続体(10)。
【請求項3】
前記中間領域(22)の少なくともサブ領域は接続平面(36)に配置され、
前記接続平面(36)と前記第領域の平面(30)との間の角度(α)は、直角から逸脱する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の相互接続体(10)。
【請求項4】
前記バスバー(12)は、前記中間領域(22)において少なくとも1つの湾曲部(34)を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の相互接続体(10)。
【請求項5】
前記バスバー(12)は、前記中間領域(22)において少なくとも部分的に弓形になるように形成される、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の相互接続体(10)。
【請求項6】
前記バスバー(12)の厚さ(D)は5mm未満である、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の相互接続体(10)。
【請求項7】
前記バスバー(12)の厚さ(D)に対する前記バスバーの幅(B)の比率は、少なくとも2倍である、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の相互接続体(10)。
【請求項8】
電気機械の固定子(100)用の相互接続体(10)であって、
前記相互接続体(10)は少なくとも1つの成形バスバー(12)を備え、
前記成形バスバー(12)は、
外部接続部(23)と接続するために設けられた前記相互接続体(10)の接続点(16)を有する第1領域(14)と、
前記バスバー(12)を固定子巻線(102)に接続するために設けられた接続点(20)を有する第2領域(18)と、
前記第1領域(14)と前記第2領域(18)とを接続する中間領域(22)と、を備え、
前記中間領域(22)は、前記第1領域(14)と前記中間領域(22)との間、および前記第2領域(18)と前記中間領域(22)との間の移行部分のそれぞれの角度(α)が直角から逸脱するように配置され、
前記相互接続体(10)は、前記固定子巻線(102)の3つの位相と接触するために設けられ、互いに電気的に絶縁されるように形成された3つの前記バスバー(12,12a,12b)を有し、
前記バスバー(12,12a,12b)の各中間領域(22,22a,22b)は、異なる非平行平面上に配置される、
ことを特徴とす相互接続体(10)。
【請求項9】
前記相互接続体(10)は、前記固定子巻線(102)の3つの位相と接触するために設けられ、互いに電気的に絶縁されるように形成された3つの前記バスバー(12,12a,12b)を有し、
前記バスバー(12,12a,12b)の各第1領域(14,14a,14b)は、共通の平面上に配置される、
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の相互接続体(10)。
【請求項10】
電気機械用の固定子(100)であって、
前記固定子(100)は、
固定子巻線(102)と前記固定子巻線(102)に電圧を供給するために設けられた電気コネクタ装置との間に接触を確立するために設けられた請求項1ないし9のいずれか一項に記載の相互接続体(10)を備える、
ことを特徴とする固定子(100)。
【請求項11】
前記相互接続体(10)のバスバー(12)の第1領域(14)は、前記固定子(100)の主軸の法線平面上に配置され、
前記バスバー(12)の中間領域(22)の弾性によって、前記第1領域(14)は、軸方向へ少なくとも1mm変位する、
ことを特徴とする請求項10に記載の固定子(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械の固定子用の相互接続体、および本発明に係る相互接続体を備えた電気機械用の固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、相互接続体を用いて電気機械の固定子コイルまたは固定子巻線を外部接続点または電力接続部に接触させ、電気回路またはパワーエレクトロニクスを介して巻線の個々の位相へ電圧をそれぞれ印加する構成が知られている。
【0003】
従来の相互接続体は、例えば、3つのコネクタリングを備え、これらはキャリアの内部に収容されている。また同時に、キャリアによりコネクタリングの位置決めがされるととも、コネクタリング同士の電気的絶縁がされている。コネクタリングはキャリア内でしっかりと固定されている。
【0004】
コネクタリングは、例えば、相互接続体を固定子巻線に接続するためのコイル接続領域と、相互接続体を外部接続部に接続するための外部接続領域とを有している。個々の固定子巻線のそれぞれは、外部接続領域を介して、パワーエレクトロニクスの電力ケーブル等の外部接続部と接触している。
【0005】
米国特許出願公開第2003/094879号明細書に開示された車両の薄型ブラシレスモータ用の集中配電ユニットは、複数のバスバーと、バスバーを覆う樹脂絶縁層と、バスバーを保持する複数の保持溝を有する絶縁ホルダとを備えている。バスバーは厚さ方向に予め屈曲され、ほぼ環状に形成されている。バスバーの接続部は、バスバーの埋込部から直角に突出している。
【0006】
米国特許出願公開第2005/082923号明細書に開示された回転電機の固定子は、固定子鉄心、複数のコイル対、および複数の線を備えている。固定子鉄心は、薄い鋼板を円筒状に積層してなる積層鉄心組立体を備える。また、固定子鉄心は、円周方向に沿って一定間隔で設けられた複数のスロットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2003/094879号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/082923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
相互接続体に関する公知の構成では、その構成要素が高い剛性を有することから、相互接続体が設置された状態において、電気的接触点で機械的応力が生じる可能性がある。これにより、例えば、2つの電気導体間の機械的接触が損なわれ、よって、電気導体間の電気的接触も損なわれるおそれがある。
【0009】
そこで、相互接続体が設置された状態において機械的応力が発生することを防止するために、例えば、可撓性を有するコイルのワイヤ巻線を巻回した連続体を用いるなど、接続要素を柔軟に設計して対応することができる。しかしながら、その取り付けにかかる労力が大きくなり、また、このような接続要素を用いる場合、可撓性を有する個々の導体(例えば、ワイヤまたは積層体)をそれぞれ予め正確に位置決めしなければならないが、巻線は変形しやすいため、位置決めには困難が伴う。
【0010】
本発明の目的は、電気機械の固定子用の相互接続体を改良して提供することである。本発明によれば、相互接続体が設置された状態において、それぞれの接触点で生じ得る機械的応力を防止することができ、かつ/または相互接続体を簡易に取り付けることができる。
【0011】
本発明の上記目的は、独立請求項に記載の構成により達成される。また、さらなる効果を生じさせる本発明の他の態様および特徴を、従属項、以下に記す詳細な説明、および関連する図面において説明する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明が提案する電気機械の固定子用の相互接続体は、複数の領域からなる少なくとも1つの成形バスバーを備えている。バスバーの第1領域は、外部接続部と接続するために設けられた相互接続体の接続点を備えている。この接続点により、相互接続体と、例えば、固定子の固定子巻線を制御するためのパワーエレクトロニクスとの間の接触が確立される。また、バスバーの第2領域は、バスバーと固定子巻線との間の接続を形成するために設けられた接続点を備えている。バスバーの中間領域は、第1領域を第2領域に接続する。
【0013】
上記構成により、相互接続体は、バスバーの一部分において、供給電子機器と接触することができる。また、相互接続体は、例えば、バスバーにて形成されるコネクタリングセグメント(例えば、バスバーの第2領域との共通平面上)に形成されるバスバーの他の部分において、固定子の巻線と接触することができる。コネクタリングセグメントは、相互接続体のハウジング内に収容され固定される。
【0014】
本発明によれば、中間領域は、第1領域との間および第2領域との間の各移行部分のそれぞれの角度が直角から逸脱するように配置される。すなわち、互いに隣接する領域間の移行角度は90°に等しくならない。この場合、領域間の成形バスバーのベンドの曲げ半径の外側にある領域間の角度を測定する。
【0015】
例えば、移行角度は、公差に関連する値よりも大きな値で直角から逸脱する。直角が公差の影響を受ける場合、その値は、例えば、90°+/-1°(または+/-2°)である。一方で、本発明によれば、移行角度は、計画的または意図的に直角からずらして形成される。そのずれ幅は、例えば、3°超(または5°超、10°超、20°超、30°超、40°超、50°超、または60°超)および/または70°未満(または60°未満、50°未満、40°未満、30未満、20°未満、または15°未満)でもよい。例えば、ずれ幅は、3°の値(または4°、5°、7°、10°、15°、20°、または25°の値)である。
【0016】
上述のように移行角度を選択することで、中間領域に穏やかな、すなわち、わずかな弾性を持たせることができる。この結果、例えば、第1領域は第2領域に対して所定の距離(例えば、1mm、2mm、または3mmまで)だけ変位するため、結果として生じるバスバーの機械的負荷または変形は、主に中間領域で生じることになる。言い換えると、このように構成した中間領域によって、小さな変位経路に亘るばね効果を得ることができる。
【0017】
移行角度の値は、第1領域と第2領域との間の距離に応じて選択することができる。例えば、中間領域に十分な弾性を持たせるためには、第1領域と第2領域との間の距離が小さい場合、直角からより大きく逸脱する角度のずれ幅を選択する。例えば、バスバーの厚さの5倍未満の距離に対しては、移行角度を少なくとも20°の値で直角から逸脱させ、バスバーの厚さの5倍超10倍未満の距離に対しては、移行角度を8°超20°未満の値で直角から逸脱させ、および/またはバスバーの厚さの10倍超の距離に対しては、移行角度を8°未満の値で直角から逸脱させる。このように、本発明にかかる相互接続体においては、バスバーを種々に構成しても、取り付け中に、必要な長さを常に補償することができる。
【0018】
例えば、第1領域および第2領域は、平行な平面上に配置される。また、例えば、第1領域は、第2領域の平面に対して1°未満(または少なくとも2°未満、または5°未満)傾斜した平面上にある。固定子に相互接続体を設置した状態において、例えば外部接続部と相互接続体との接触を簡易に行うことができるように、平面を固定子の径方向に一致させてもよい。この場合、例えば、第2領域を軸方向に伸長または圧縮することで、バスバーの第1領域と電力接続部との間の公差ギャップを補償することができる。
【0019】
例えば、中間領域の少なくとも1つのサブ領域は接続平面上に配置され、接続平面と第1領域の平面との間の角度は、直角から逸脱する。この角度の値の範囲は、上記定義した通りである。例えば、サブ領域は、中間領域の面積の少なくとも50%を占める。また、例えば、中間領域の中間部分(例えば、中間領域の面積の50%未満)を、第1領域または第2領域の平面に対して90°の角度で配置してもよく、このように構成した相互接続体においても、長さを補償することができる。
【0020】
さらに、本発明にかかる相互接続体によれば、バスバーは、中間領域において少なくとも1つの湾曲部を有する。言い換えると、中間領域を、例えば、1つ以上のさらなるキンクまたはベンドを伴って形成することができる。よって、例えば、低膨張時でも中間領域の弾性を増加させることができる等、中間領域の弾性は正確な影響を受けやすくなる。バスバーは、中間領域において少なくとも部分的に弓形になるように形成してもよい。
【0021】
例えば、バスバーの厚さは、20mm未満(または10mm未満、5mm未満、4mm未満、3mm未満または2mm未満)および/または1mm超(または3mm超または5mm超)である。また、代替的または追加的に、バスバーの厚さに対するバスバーの幅の比率を、少なくとも2倍(または少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、または少なくとも5倍)とすることができる。バスバーの幾何学的形状は、中間領域におけるバスバーの弾性に影響を及ぼす。
【0022】
例えば、バスバーの第2領域は、固定子用コネクタリングまたはコネクタリングセグメントの少なくとも一部を形成する。第2領域は円周方向に延在し、コネクタリングセグメントの外側径方向の領域で中間領域に隣接する。
【0023】
相互接続体は、単一のバスバーまたは2つのバスバーを備えてもよい。一実施形態によると、相互接続体は3つのバスバーを有し、これらのバスバーは、互いに電気的に絶縁されて形成され、固定子巻線の3つの位相と接触する。また、例えば、4相または5相の巻線に接触するために相互接続体を用いる場合は、4つまたは5つのバスバーを設けることができる。
【0024】
相互接続体は、例えば、固定子巻線の3つの位相と接触するために設けられ、互いに電気的に絶縁されるように形成された3つのバスバーを有し、バスバーの各中間領域は、異なる非平行平面に配置される。上述したように、中間領域が軸方向および/または径方向に変形することで、製造公差等が補償される。変形によって、相互接続体または固定子に力が作用する可能性があるが、この力を低減するために、複数のバスバーの中間領域を異なる平面上に配置する。平面同士は、平行に延在しないことが好ましい。このように構成することで、個々のバスバーで発生し得る力の特に径方向への増大が防止され、バスパーに作用する力を低く抑えられるとともに、互いに中和または低減される。
【0025】
例えば、相互接続体が複数のバスバーを有する場合、少なくとも2つのバスバーを互いに異なるように形成することができる。例えば、第1のバスバーの中間領域は屈曲部を有するように形成し、一方で、第2のバスバーの中間領域は直線状または平面状に形成する。また、例えば、第1および第2の両方のバスバーの第1領域を共通平面上に形成し、一方で、第1のバスバーの第2領域を、第2のバスバーの第2領域よりも共通平面に近づけて配置してもよい。
【0026】
バスバーは、例えば導電性材料、特に金属で形成される。バスバーは、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金を含んで形成することが可能である。
【0027】
本発明の一実施態様にかかる電気機械用の固定子は、固定子の巻線(固定子巻線)と、固定子巻線に電圧を供給するために設けられたコネクタ装置との間の接触を確立するために設けられた上記または下記の相互接続体を備えている。本発明は、さらに、例えば、電力接続部と接触するために設けられた相互接続体を備える固定子を有する電気機械に関する。
【0028】
固定子巻線の巻線とバスバーの第2領域の接続点との間の接続は、着脱不能(例えば溶接接続)に形成されている。一方で、例えば、電力接続部とバスバーの第1領域との間の接続は、取り外し可能(例えば、ねじまたはプラグ接続)に形成されている。
【0029】
さらに、本発明にかかる固定子によれば、相互接続体のバスバーの第1領域が、固定子の主軸(例えば、ロータ軸)の法線平面上に配置される。つまり、第1領域の平面の法線ベクトルは主軸に平行となる。この場合、バスバーの中間領域が弾性を有することから、例えば、第1領域は軸方向に少なくとも1mm変位可能である。例えば、第1領域が3mmまで変位する際、ほぼ中間領域のみが変形する。
【0030】
したがって、例えば、電気機械の電力接続部に向かって第1領域を導くことで、相互接続体と電力接続部および/または固定子巻線との間の接触点に機械的応力を生じさせることなく(または、ほんのわずかな機械的応力のみで)、取り付け公差を補償することが可能になる。これにより、例えば、接触点における電気的接触の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0031】
結果として、本発明によれば、例えば、電気機械用に設けられ、長さの補償が可能な相互接続体が提供される。本発明のように中間領域を構成することによって、相互接続体を取り付ける際にバスバーの長さをわずかに変化させることができるため、公差に関連したギャップが補償される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】固定子巻線との接触のために設けられた相互接続体を例示した実施形態を示す図である。
図2】供給接続部を取り付けた状態の相互接続体を例示した実施形態を示す図である。
図3】供給接続部を取り付けた状態の相互接続体の断面図である。
図4】相互接続体を備えた電気機械の固定子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明にかかる固定子および電気機械の特徴は、相互接続体について記載している特徴に関連する。このように、相互接続体に関連する特徴は固定子および電気機械に同様に関連することから、繰り返しの説明は省略する。
【0034】
添付の図面を一例として参照し、相互接続体の実施形態を以下の通り詳細に説明する。
【0035】
図1は、コイル巻線と、コイル巻線のパワーエレクトロニクスとの間の接触を確立するために設けられた相互接続体10の実施形態を説明する図である。回路体10は、3つのバスバー12,12a,12bを有している。これらのバスバーはそれぞれ互いに電気的に絶縁され、相互接続体10の保持手段またはハウジング13によって適所に固定されている。
【0036】
バスバー12に設けられた第1領域14には、バスバーと外部接続部とを接続する接続点16が形成されている。接続点16は、例えば、ねじ接続またはプラグ接続によって、外部接続ケーブルまたは他のバスバーをバスバー12に接続するように形成されている。接続点16を有する第1領域14は、例えば、外部接続ラグとして形成されている。
【0037】
バスバー12にさらに設けられた第2領域18には、バスバー12を固定子巻線に接続するための接続点20が形成されている。この接続点は平面状の連続面として形成され、コイル巻線の各巻線を各接続点20に接続する。第2領域と固定子巻線との接続は、例えば、溶接接続またははんだ接続によって、取り外し不能(または破壊によってのみ取り外し可能)に形成することができる。接続点20は、例えば、コイル接続ラグとして形成される。
【0038】
バスバー12にさらに設けられた中間領域22は、第1領域14と第2領域18とを互いに接続している。第1領域14と中間領域22との間の移行部分、すなわち、バスバー12における2つの領域の間の屈曲部分では、直角から逸脱する角度αが形成される。例えば、図1に示す例における角度αの値は100°であり、したがって10°の値だけ直角から逸脱している。第2領域18と中間領域22との間の移行部分の角度βの値も、図1に示す例では100°である。なお、角度αおよび角度βは、同一または異なるように選択することができる。例えば、2つの角度のうちの一方を鋭角とし、他方を平坦な角度としてもよい。
【0039】
例えば、バスバー12の厚さDの値は3mmである。角度αおよび角度βを所定の値とすることで、例えば、中間領域にはわずかな弾性が生じる。このように、中間領域22が穏やかなばね効果を有するため、第1領域14および/または第2領域18にほぼ機械的応力(例えば、剪断力または平行平面への法線ベクトル方向の力)がかかることなく、第1領域14は第1領域14と平行な平面への法線ベクトル方向に小さく移動(例えば、1mmまたは2mm)することができる。この場合、例えば、バスバー12の剛性として厚さDは十分であることから、第1領域14は、圧力または引張力の影響を受けることなく所定の位置に配置されたままであり、したがって、外部接続部との容易な接触が可能になる。
【0040】
相互接続体10は、例えば、3つのコネクタリングと、ハウジング13等のキャリアとを有している。図1に示すように、コネクタリングは、コネクタリングセグメントとして設計することができる。コネクタリングセグメントは、例えば、ハウジング13内のバスバー12の第2領域18によって形成される。
【0041】
図1に示す相互接続体10は、3相の固定子巻線用に設けられている。電気電圧は、3つのバスバー12,12a,12bを介して各ケースのそれぞれの位相に印加される。他の2つのバスバー12a,12bも同様に、第1領域、第2領域、中間領域をそれぞれ有し、それぞれの移行角度は90°から逸脱する。
【0042】
キャリアは、キャリア部として別体に形成することができる。キャリアの外形は分割壁を有してU字形に形成可能であり、その形状において、コネクタリングは互いに絶縁されるように収容される。キャリアは、例えば、コネクタリングを有する単一部品に形成されたプラスチック製のオーバーモールドとして設計することができる。
【0043】
コイル接続ラグは、第1平面においてコイルに接続される。外部接続ラグは、第2平面において外部接続部に接続される。どちらの平面も互いに軸方向の距離上に存在する。軸方向の距離を埋めるために、外部接続ラグ(例えば、第1領域、第2領域、および中間領域)は複数回屈曲され、例えば、3つの平面上に3つの領域を有するように設計される。
【0044】
所定の領域、例えば第2領域18は、コイル接続ラグとほぼ同じ平面上に配置され、径方向に突出する(例えば、コネクタリングセグメントから突出する)円周部を形成する。他の領域、例えば、中間領域22は、前述のある領域を起点として延びる外部接続ラグの一部である。中間領域22は、例えば軸方向に屈曲し、次いで、最終領域、例えば、第1領域14を形成するように屈曲する。ある領域および最終領域の平面は、例えば、互いにほぼ平行である。前述の他の領域の平面は、他の2つの領域の平面と所定の角度で交差する。
【0045】
この所定の角度を例えば角度αとすると、角度αは90°ではなく、90°よりも大きいかまたは小さく(例えば、少なくとも95°より大きい、または少なくとも85°より小さい)すること、言い換えると、前述の他の領域が屈曲していることで、相互接続体の取り付けの際に長さが補償される。すなわち、相互接続体10の外部接続部分に電力接続部をねじ接続する際、その接続箇所として機能する第1領域が、関連付けられていた平面から例えば第2領域の平面方向に移動し、それにより長さが補償される。この場合、例えば、第2領域のみが、既存の角度位置の結果として変形する。
【0046】
一方で、中間領域が他の2つの領域に対して垂直に配置されている場合、接触を確立するためのねじ止め手順の間、相互接続体全体が変形する。そのため、コイルの溶接点にも力が伝導してしまい、結果的に、例えば、動作中に分裂するおそれがある。
【0047】
そこで、本発明の相互接続体10のように、中間領域を所定の角度位置に設けて、バスバーに穏やかなばね効果を生じさせる構成が提案される。
【0048】
図2は、供給接続部23が取り付けられた相互接続体10の実施形態を示す図である。供給接続部23は、第1領域14と電気的接触を形成するために設けられたバスバー24を有する。バスバー24とバスバー12との機械的接続は、二部締結手段26a,26bによって、ねじ接続にてすることができる。
【0049】
バスバー12a,12bと接触する他の供給接続部23は、それぞれ対応するバスバー24a,24bを有しており、これらは対応する締結手段を用いて相互接続体上に取り付けられる。本実施形態では、パワーエレクトロニクスの接続部、例えば、供給接続部23が、相互接続体10の外部接続ラグに、コネクタリングとは反対側、または対向する側から挿入される。
【0050】
図2には、バスバー12の幅Bが示されている。厚さDに対するバスバーの幅Bの比率は2倍より大きいため、例えば、外部接続部へのバスバー12のねじ接続が可能になる。
【0051】
図3は、供給接続部23が取り付けられた相互接続体10の断面図である。第1領域14および第2領域18は整列されているか、または平行な平面30,31上に配置されていることが図3から分かる。中間領域22の範囲によって画定される距離32は、第1領域14と第2領域18との間の距離である。なお、固定子上に相互接続体10が取り付けられた状態では、距離32は、例えば軸方向距離となる。
【0052】
さらに図3を参照すると、バスバー12の中間領域22は、湾曲部34、例えば、キンクまたはベンドを有することが分かる。例えば、中間領域22の柔軟性は湾曲部34を設けたことにより増大させることが可能である。よって、距離32の変化に応じて中間領域22のみが変形し、バスバー12の第1領域14と供給接続部のバスバー24との間の接続箇所、またはバスバー12の第2領域18と取り付け後の固定子巻線(図4参照)との間の接続箇所に機械的応力を生じさせない。また、例えば、中間領域22の延設範囲が径方向に伸長または圧縮されると、軸方向の長さを補償することできる。
【0053】
さらに図3を参照すると、中間領域22aは、全体として、第1領域14aの平面30aに対して角度αで設けられた接続平面36内に形成されている。中間領域の弾性は、例えば、中間領域が線的に延設される場合にも得ることができる。第1領域14,14a,14bは共通平面上に配置される。一方で、第2領域18,18a,18bは、例えば、それぞれ異なる平面上に配置される。このように配置することで、固定子巻線のそれぞれの位相の接触は、相互接続体における各バスバー12,12a,12bによって簡易になされる。
【0054】
図4は、コネクタ装置10を備えた電気機械(図示せず)の固定子100を示す。固定子100は、固定子巻線102を備えている。固定子巻線102の各巻線または巻端104は、それぞれのバスバー12,12a,12bの各接続点20にしっかりと接続されている。
【0055】
固定子巻線102の位相を電気的に接触させるために、電力接続部がバスバー12にねじ止めされる。この場合、第1領域14と、例えば、電力接続部のバスバーとの間の公差に関連する軸方向の距離は、バスバー12の中間領域22の柔軟性によって補償することができる。例えば、第1領域14と第2領域18との間の距離は、中間領域22を圧縮することで減少させることができ、また、中間領域22を伸長することで増加させることができる。領域間の移行角度および/またはバスバー12の厚さは、第1領域14と第2領域18との間の距離が、例えば、1mm以上(または2mm以上)および/または3mm未満(または2mm未満の)の範囲で、相互接続体の接続箇所に機械的応力を生じさせず変化できるように選択することができる。
【0056】
その結果、例えば、パワーエレクトロニクスと相互接続体10との間の接触を確立する際に、中間領域22のわずかな柔軟性または弾力性によって公差に関連するギャップを補償することができる。また一方で、この場合、中間領域22の弾力性としては、相互接続体10の外部接続点がそのまま所定の位置に留まって、電力接続部の取り付けを簡易に行うことができる程度に低い弾力性が選択される。
【0057】
実際の使用例では、電気機械は、例えば、電気機械の接続点、またはパワーエレクトロニクスの外部接続部との接触を確立するための相互接続体の接続点が、変位したり一致したりすることができないように、ハウジング内に設置される。この場合、例えば、パワーエレクトロニクスの外部接続部も、その設置位置に関して固定されるため、例えば、2つの接続点の位置合わせをすることは不可能である。そのため、例えば、公差の連鎖により、電気機械の接続点とパワーエレクトロニクスとの間に約1mmの軸方向の距離が生じる可能性がある。
【0058】
そこで、本発明は、固定子の外部接続部または相互接続体と、電力接続部との間のこのような取り付け公差を補償することができる相互接続体を提供する。したがって、例えば、電気機械の接続点とパワーエレクトロニクスとの間の軸方向のねじの力が、固定子コイルとの接触点に負の影響を及ぼすことはない。
【符号の説明】
【0059】
10 相互接続体
12 バスバー
B バスバーの幅
D バスバーの厚さ
13 ハウジング
14 バスバーの第1領域
16 外部接続部との接続点
18 バスバーの第2領域
20 固定子との接続点
22 中間領域
α,β 移行部分の角度
23 供給接続部
24 供給接続部のバスバー
26a,26b 締結手段
30,31 平行な平面
32 距離
34 湾曲部
36 接続平面
100 固定子
102 固定子巻線
104 巻端
図1
図2
図3
図4