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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】優れた光学品質を有する自動車用ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/04 20060101AFI20240510BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240510BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C03C17/04 Z
B60J1/00 H
C03C27/12 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021546391
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2020053568
(87)【国際公開番号】W WO2020165232
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】19156943.3
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー, プリシル
(72)【発明者】
【氏名】デシャン, ファビアン
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/068381(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/012962(WO,A1)
【文献】特開昭54-062214(JP,A)
【文献】特開昭54-034316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00-17/44,27/12,
C03B 23/023,
B32B 17/06-17/10,
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学センサ装置(6)を含む自動車用ガラス(1)を製造する方法において、以下のステップを以下の順序で含むことを特徴とする方法:
- 少なくとも1つのガラスシート(3、4)を提供するステップ、
- 自動車の外側からの視野をブロックするために、前記少なくとも1つのガラスシート(3、4)の少なくとも1つの面に黒色エナメル遮蔽マスク(2)を付与するステップであって、前記黒色エナメル遮蔽マスク(2)は、少なくとも1つの前記光学センサ装置(6)が固定されることを意図される領域に広がり、前記黒色エナメル遮蔽マスク(2)は、自動車の内部側に、少なくとも1つの開口(7、7’、7’’)を含み、前記少なくとも1つの開口(7、7’、7’’)は、それを通して、その上に固定されることを意図される前記光学センサ装置(6)から情報を取得することができるようにするためのものである、ステップ、
- 前記黒色エナメル遮蔽マスク(2)を乾燥させるか又は焼成するステップ、
- 前記少なくとも1つの開口(7、7’、7’’)の表面上に、少なくとも620℃の温度に耐える洗浄可能な黒色カバー層(25)を付与するステップ、
- 好ましくは曲げ又は焼き戻しプロセス中、前記ガラスシートを450℃より高い、好ましくは650℃より高い温度での熱処理に供するステップ、
- 前記洗浄可能な黒色カバー層(25)を洗浄することによって除去するステップ。
【請求項2】
前記自動車用ガラス(1)は、少なくとも1つの外側ガラスシート(3)及び1つの内側ガラスシート(4)が熱可塑性中間層(5)と共に積層されることによって形成される積層ガラスであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記洗浄可能な黒色カバー層(25)は、前記少なくとも1つの開口(7、7’、7’’)を覆い、且つ前記開口(7、7’、7’’)の周辺縁(21)から前記開口(7、7’、7’’)の周囲の前記黒色エナメル遮蔽マスク(2)に向かって部分的に広がることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記洗浄可能な黒色カバー層(25)は、少なくとも620℃の温度に耐える、フリットを含まない洗浄可能エナメル若しくはインク又は鉱物粒子の懸濁液であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記洗浄可能な黒色カバー層(25)は、スクリーン印刷又はスプレー法によって付与されることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄可能な黒色カバー層(25)は、90℃~150℃の温度で前記黒色エナメル遮蔽マスク(2)を乾燥させるステップの後に付与されることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記洗浄可能な黒色カバー層(25)は、550℃より高い温度で10秒間を超えて前記黒色エナメル遮蔽マスク(2)を焼成するステップの後に付与されることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記黒色エナメル遮蔽マスク(2)は、前記外側ガラスシート(3)の内面(P2)の上又は前記内側ガラスシート(3)の内面(P3)の上若しくは外面(P4)の上或いは両方の上に付与されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ガラス(1)は、フロントガラスであることを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過を制限するパターンを含むガラスに関する。より詳細には、本発明は、光透過を制限するパターンと、例えばカメラ、赤外線カメラ、ライダ、レーザポインタ等の光学センサとを含むガラスに関する。自動車用ガラスの多くは、不体裁な要素、特に接着剤接合部、電気配線及び特にガラス上に配置されるカメラに接続されるものを隠すように意図されたエナメルパターンを含む。これらのパターンは、例えば、キャリア中に懸濁されたガラスフリットと顔料を含む組成物を付与することによって得られる。これらのエナメル組成物の付与後、高温硬化が行われ、これは、フリットを溶融させて、エナメルを支持体に固定する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ガラスユニットの大部分がこのようなパターンを含む場合、建築用又は産業用ガラスユニットも、光透過をきわめて強力に制限するこのようなパターンを有することがある。この理由から、本発明は、もともと自動車のガラスユニットのために意図されたものの、これは、他の種類のガラス及び一般的にガラスシート上へのパターンの形成全般にも、特にガラスがその構成又はその実装において熱処理又は画像捕捉の点で制約がある場合に関係する。
【0003】
簡潔にするために、以下の説明では自動車用ガラスに言及しているが、これは、本発明の目的を限定しないことを理解されたい。
【0004】
通常、ガラスへのエナメルパターンの付与は、スクリーン印刷法によって行われる。その後、付与された組成物を乾燥させ、キャリアの大半を除去し、硬化を行ってガラスシートの成分を固定させる。エナメル組成物の硬化は、シート形成/曲げ処理中に行うことができる。形成が行われる温度条件は、焼き戻し又は曲げを問わず、フリットの融点より大幅に高くなるような条件である。
【0005】
さらに、ガラスシート上にエナメル組成物が存在することは、これらの曲げ/焼き戻し作業の実行中に様々な問題を引き起こす。これは、シートの熱的挙動が局所的に変化することによる。エナメルの存在の結果、熱放射の吸収が実質的に異なり、それによって形成/曲げの動力学の局所的な差が生じる。これらの差は、処理条件において考慮されなければ、形成のムラの原因となる。
【0006】
したがって、曲げプロセス中に生じる熱勾配から問題が発生する。想像の通り、黒いフリットは、透明ガラスより多くの放射熱を吸収する。放射熱は、ガラスを曲げるために使用される主な熱源である。ガラスの黒いフリットの領域は、隣接する透明領域より高温になる。ガラスは、熱をあまり伝導しないため、短い距離で摂氏数十度の熱勾配が生じる可能性がある。表面上のこのような高い急峻な熱勾配の結果、黒色帯の内側の縁辺に沿って光学的ゆがみ及び高い残留が発生する。これは、業界では「焼け」線と呼ばれる。これは、ほとんどのフロントガラスの縁辺に沿って見られる黒い遮蔽マスク(「黒色帯」又は「遮蔽帯」)の縁に沿って発見されることが多い。
【0007】
今日、現代の車両に占める電子部品の割合の増大に伴い、多くの車両においてフロントガラスの上部中央付近の領域の部品の密集度が高まっている。バックミラーの領域では、この位置に様々な機器が装着されている。
【0008】
この領域に装着されるようになった最初の機器の1つは、フロントガラスワイパの動作及びサンルーフの開閉等の他の車両機能を全自動モードにするために使用される赤外線雨センサであった。
【0009】
広い視野及び高い光学的透明性が必要なカメラの使用も、様々なレベルの自律動作を提供できる車両の導入と共に急速に増大しつつある。カメラの解像度も、同等の速さで向上している。これらのカメラは、典型的には、フロントガラスのいわゆる「カメラゾーン」と呼ばれる箇所に装着しなければならない。今日、カメラを用いるシステムは、車間距離制御、障害物検出、車線逸脱警報及び自律動作の支援を含む様々な安全機能を提供するために使用されている。これらの用途の多くが、複数のカメラの使用を必要とする。鮮明でゆがみのない視野は、カメラを用いるシステムがその所期の通りに動作するために特に重要である。これらのシステムは、物体を迅速に区別し、文字を捕捉し、標識を識別し、最小の照明で動作できることが重要である。さらに、使用されるカメラの高解像度化に伴い、鮮明でゆがみのない視野に対する必要性が高まっている。
【0010】
従来、自動車のための積層ガラスでは、ガラスの縁辺の全周並びにガラスの面2及び/又は面4のセンサの統合領域にわたって印刷されて、マスキングストリップが形成される。このマスキングストリップは、一方では、結合システムをUV放射、コネクタ、加熱配線網、ブラケット等のガラスに追加される要素から保護し、他方では、これらの要素を覆い、且つカメラ、雨センサ等の他の光学検出器を覆う。
【0011】
したがって、マスキングストリップの目的は、2つあり、一方では、外側からこれらの要素の全てが見えないという点での審美性、他方では、日光への露出により誘導される接着剤の損傷防止である。
【0012】
一般に、使用される印刷は、エナメルのスクリーン印刷である。実際、エナメルにより、必要な光学品質及び前述のような要素の十分なマスキングを提供することができる。
【0013】
積層体では、エナメルは、外側位置用のガラスシート(すなわち大気に触れる側となることが意図されるガラスシート)の、面2と呼ばれる内側、及び/又は内側位置用のガラスシート(特に車両の車室の内部大気と接触することが意図されるガラスシート)の、面4と呼ばれる外側にスクリーン印刷される。
【0014】
したがって、光学センサ装置及びより詳細にはカメラシステムが装着されたガラスの場合、一般に「カメラゾーン」と呼ばれる位置、すなわちガラス表面上の、例えばカメラ、赤外線カメラ、ライダ又はレーザポインタ等の光学センサが設置される場所における光学的ゆがみを限定し、さらに排除する必要がある。一般に、例えば、カメラ、赤外線カメラ、ライダ又はレーザポインタ等の光学センサは、室内バックミラーの付近の、黒色帯のないゾーン(カメラゾーン)内に配置される。昼光用開口を取り囲む黒色エナメルフリットのこの遮蔽帯は、一般に、「黒色帯」と呼ばれる。光学センサは、バックミラーの付近以外の領域にも配置できることを理解されたい。光学センサ装置は、例えば、ガラスの周辺領域又はこのようなセンサを受けることのできる他の何れかのゾーンの、運転者又は乗員の視野外の場所に配置されることができる。
【0015】
他の問題は、表面ミスマッチである。積層ガラス、より詳細にはフロントガラスの場合、積層体は、少なくとも2つのガラスシートを含む。フリットは、典型的には、ガラスシートの1つ又は2つに付与される。その結果、表面の形状に若干の相違が生じる可能性がある。積層中に2つのガラスシートが相互に圧迫されると、このミスマッチによって積層体の残留応力及び光学的ゆがみが引き起こされる。
【0016】
上述のような問題は、よく知られている。上で挙げた欠点を克服し、少なくとも軽減させるための解決策は、複雑な形状を有さないガラスについて知られている。非常に複雑な形状では、部分的な圧迫によってシートを形成し/曲げる必要があることが多く、それによって必然的にエナメル部分と接触することになる。
【0017】
標準的な方法は、黒色エナメルフリットの帯を広げて表面上に遮蔽部を作り、光学センサ装置に必要な視野のための開口を遮蔽部に設けることである。
【0018】
黒色エナメルフリットの帯を上側中央の黒色帯から下に広げて少なくとも1つの開口を有する遮蔽部を作る場合、光学的ゆがみ及び応力が大きい問題となる可能性がある。これは、黒色フリットが縁を越えて、ガラスを曲げるためにより多くの熱を加えなければならない領域内まで広がるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
これらの問題を回避し、マスキングの要求事項を満たすために、本発明は、優れた光学品質を有する積層ガラスを提供することを提案する。本発明の別の目的は、少なくとも光学センサ装置のための昼光用開口を取り囲む黒色エナメルフリットの遮蔽マスクを含むガラスの光学的ゆがみを軽減させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の1つの主題は、光学センサ装置を含む自動車用ガラスを製造する方法において、
- 内面及び外面を含む少なくとも1つのガラスシートを提供するステップ、
- 自動車の外側からの視野をブロックするために、少なくとも1つのガラスシートの少なくとも1つの面にエナメル遮蔽マスクを付与するステップであって、遮蔽マスクは、少なくとも1つの光学センサ装置が固定されることを意図される領域に広がり、遮蔽マスクは、自動車の内部側に、少なくとも1つの開口を含み、この少なくとも1つの開口は、それを通して、その上に固定されることを意図される光学センサ装置から情報を取得することができるようにするためのものである、ステップ、
- エナメル遮蔽マスク(2)を乾燥若しくは火炎乾燥させるか又は焼成するステップ、
- 少なくとも1つの開口の表面上に、少なくとも620℃の温度に耐える洗浄可能カバー層を付与するステップ、
- 好ましくは曲げ又は焼き戻しプロセス中、ガラスシートを450℃より高い、好ましくは650℃より高い温度での熱処理に供するステップ、
- カバー層を洗浄することによって除去するステップ
を含むことを特徴とする方法を提供することである。
【0021】
曲げ又は焼き戻しステップ前に、遮蔽マスク内に設けられた少なくとも1つの開口の表面上に洗浄可能カバー層を追加することにより、光学的に、曲げ中にその部分の熱分布がより均一化されるという結果が得られ、それによって熱勾配に起因する光学的ゆがみが低減され、さらに排除される。したがって、エナメル遮蔽マスクによる光学的ゆがみが少なくとも1つの開口内で低減され、さらに排除されるため、開口内に固定されることを意図される光学センサ装置は、いわゆる「カメラゾーン」内の光学的ゆがみの影響を受けずにより効率的に動作する。
【0022】
本発明によれば、洗浄可能カバー層は、よく知られた技術によってガラスシートの表面で測定したときに少なくとも620℃の温度に耐えられる。
【0023】
本発明によれば、少なくとも1つのガラスシートの少なくとも1つの面にエナメル遮蔽マスク及び洗浄可能カバー層が設けられた本発明によるガラスシートは、好ましくは、曲げ又は焼き戻しプロセス中、450℃より高い、好ましくは650℃より高い温度での熱処理に供される。前記温度は、ガラスシートにこの種の高温が加えられる炉内で測定される温度に対応する。
【0024】
本発明の1つの実施形態によれば、自動車用ガラスは、積層ガラスである。積層ガラスは、好ましくは、少なくとも1つの外側ガラスシート及び1つの内側ガラスシートが熱可塑性中間層と共に積層されることによって形成される。
【0025】
積層ガラスの場合、エナメル遮蔽フリットマスクは、好ましくは、内側ガラスシートの内面(P4)上に提供される。
【0026】
本発明の1つの実施形態によれば、エナメル遮蔽マスク内に設けられた少なくとも1つの開口を覆う洗浄可能カバー層は、部分的に開口の周辺縁から開口周囲の遮蔽マスクに向かって広がることができる。
【0027】
より具体的な実施形態において、エナメル遮蔽マスク内に設けられた少なくとも1つの開口を覆う洗浄可能カバー層は、部分的に開口の周辺縁から、開口の周囲の遮蔽マスクの、開口の周辺縁から開口の周囲の遮蔽マスク層に向かって5~50mmの範囲に対応する領域内で広がることができる。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、洗浄可能カバー層は、少なくとも620℃の温度に耐える、フリットを含まない洗浄可能エナメル若しくはインク又は鉱物粒子の懸濁液である。
【0029】
「洗浄可能(washable)」という用語は、カバー層が、水による洗浄処理又はガラス表面の機械的ブラッシング等の、エナメル遮蔽帯を劣化させずにカバー層を除去できる任意の除去プロセスの後に(つまり、かかる除去プロセスによって)除去されることができる材料から作られていることを意味することを理解されたい。
【0030】
1つの具体的な実施形態によれば、少なくとも620℃の温度に耐える洗浄可能エナメルは、「Constrast Coating(登録商標)」又は「Kontrast Print(登録商標)」という市販品等の、フリット(高温で溶融されてガラスが作られるシリカ及びフラックスの混合物)を含まないエナメルであることができる。これらの種類のエナメルは、従来のガラスエナメルと組み合わせて使用されることができる。これらの種類のエナメルの仕様は、これらが焼成中にガラス表面には融着せず、フリットを含む従来のエナメルにより被覆された表面にのみ融着するというものである。
【0031】
好ましい実施形態において、洗浄可能エナメルは、フリットを含まない白色エナメルである。既知の市販の白色エナメルは、Johnson Mattery社からPG000-654-63の参照番号で提供されている。洗浄可能エナメルは、好ましくは、少なくとも1つの開口を覆い、部分的に開口の周辺縁から開口の周囲の遮蔽マスクに向かって、開口の周辺縁から開口の周囲の遮蔽マスク層に向かう5~50mmの範囲に対応する領域において広がる。
【0032】
このように、本発明者らは、驚くべきことに、光学センサ装置が固定される領域及びより一般的には少なくとも1つの開口の周囲の領域の光学的ゆがみが大幅に低減することを実証した。「カメラゾーン」内の光学的ゆがみは、ガラスの曲げ前に、「カメラゾーン」内の開口が、フリットを含まない洗浄可能エナメルカバー層により覆われていないガラスと比較して、さらに50%まで低減されることができることが証明されている。
【0033】
洗浄可能エナメルは、白色顔料以外の顔料を含むことができることを理解されたい。例えば、洗浄可能エナメルカバー層は、黒色顔料を含むことができる。
【0034】
洗浄可能エナメルカバー層は、液体又はペーストの形態であることができ、スクリーン印刷若しくはスプレー法又は何れの適当な技術によっても付与されることができる。
【0035】
本発明の他の実施形態によれば、少なくとも620℃の温度に耐える洗浄可能カバー層は、インクであることができる。
【0036】
本発明の他の実施形態によれば、少なくとも620℃の温度に耐える洗浄可能カバー層は、鉱物粒子の懸濁液であることができる。例えば、鉱物粒子の懸濁液は、黒鉛系溶液(炭素粉末)であることができる。黒鉛溶液は、好ましくは、エナメル遮蔽マスクの上に部分的に広がらず、エナメル遮蔽マスク内の少なくとも1つの開口の表面にのみ噴霧されることができる。したがって、カメラゾーン内の光学ゆがみは、ガラスの曲げ前に、「カメラゾーン」内の開口が、インクによる洗浄可能カバー層により覆われていないガラスと比較して、さらに40%まで改善されることができることが証明されている。
【0037】
したがって、前述のように、使用される洗浄可能カバー層の種類に応じて、カバー層は、スクリーン印刷又は噴霧されることができる。洗浄可能カバー層は、遮蔽マスクが設けられた少なくとも1つの開口によって区切られた、光学センサ装置を受けるためのゾーンのみに付与されることができるか、又は部分的にエナメル遮蔽マスク上に広がることができる。
【0038】
本発明によれば、洗浄可能カバー層は、少なくともエナメル遮蔽マスクを90℃~150℃の温度で乾燥させるステップの後に付与される。
【0039】
本発明の1つの実施形態によれば、洗浄可能カバー層は、550℃より高い温度で10秒間を超えてエナメル遮蔽マスクを硬化/焼成するステップの後に付与される。
【0040】
この実施形態は、ガラスを曲げ前に保管すべき場合に特に興味深い。エナメル遮蔽マスク(光学センサ装置のための少なくとも1つの開口を有する)が設けられたガラスは、保管して、そのガラスを曲げることになったときに洗浄可能カバー層を付与することができ、それによってエナメル遮蔽マスクへの損傷が回避される。
【0041】
本発明の1つの実施形態によれば、エナメル遮蔽マスクは、面2、若しくは面3、若しくは面4又は面2及び面4に付与されることができる。遮蔽マスクの位置は、消費者が求める最終的な審美性又は黒色帯により隠すべきガラス上の具体的なインサート、若しくはバスバー、若しくは要素に依存する。
【0042】
本発明によれば、エナメル遮蔽マスクは、顔料、キャリア、バインダ及び微細粉砕ガラスを含む黒色エナメルフリットである。特定の特性、すなわち焼成温度、固着防止、耐薬品性等を向上させるために他の材料も添加されることがある。黒色フリットは、加熱及び曲げ前にシルクスクリーン又はインクジェット印刷プロセスを用いて付与される。曲げプロセス中、フリット中の微細粉砕ガラスが軟化し、ガラス面に融着する。フリットは、これが発生すると「焼成された」と言われる。
【0043】
本発明の1つの実施形態によれば、この方法により製造されるガラスは、自動車のフロントガラスである。
【0044】
本発明による方法は、その上にエナメル遮蔽マスクが付与され、光学センサ装置を固定することを意図される少なくとも1つの開口を含む何れの積層ガラスにも適用されることができることを理解されたい。
【0045】
特に、本発明は、光学センサ、特にカメラが遮蔽帯内、より具体的には黒色セラミック帯内の少なくとも1つの開口内に設置される領域において光学的ゆがみが低減され、さらに排除される積層ガラス、特にフロントガラスに関する。
【0046】
特に、本発明は、光学センサ装置が、少なくとも1つの開口を通して情報を取得することができるように、ガラスシートの表面上の車両内部側の少なくとも1つの開口上に配置される、積層ガラス、特にフロントガラスに関する。
【0047】
本発明によれば、複数の開口がエナメル遮蔽マスク内に提供されて、複数の光学センサ装置を受けることができる。開口の数は、ガラス上に固定しようとする光学センサの数に依存することができる。
【0048】
本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つの光学センサ装置は、カメラ、赤外線カメラ、ライダ及びレーザポインタのなかから選択される。
【0049】
本発明の特定の実施形態において、光学センサ装置は、カメラである。
【0050】
広い視野及び高いレベルの光学的鮮明さを必要とするカメラの使用も、様々な自律動作が可能な自動車の導入と共に急速に増えている。カメラの解像度も、同じ速さで改善されている。これらのカメラは、典型的には、フロントガラスのワイパ領域に装着しなければならない。初期段階での用途は、暗視用であった。今日、カメラに基づくシステムは、車間距離制御装置、障害物検出、車線逸脱警報及び自律動作の支援を含む様々な安全機能を提供するために使用されている。これらの用途の多くが、複数のカメラの使用を必要とする。鮮明でゆがみのない視野は、カメラを用いるシステムがその所期の通りに動作するために特に重要である。これらのシステムは、物体を迅速に区別し、文字を捕捉し、標識を識別し、最小の照明で動作できることが重要である。さらに、使用されるカメラの高解像度化に伴い、鮮明でゆがみのない視野に対する必要性が高まっている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】エナメル遮蔽フリットマスク2(より詳細には黒色帯)が設けられた典型的な自動車フロントガラス1を示す。
図2】フロントガラスの側辺縁21に沿って広がるエナメル遮蔽フリットマスク(黒色帯)2、ワイパレスト遮蔽部23及び黒色帯遮蔽部2から下方に広がり、1つのカメラのための前方視野を提供するための少なくとも1つの開口7を有する遮蔽中央マスク22を有する自動車フロントガラス1を示す。
図3】光学センサ6、より詳細にはカメラが、フロントガラスの面4に設けられたエナメル遮蔽フリットマスクの背後に設置された自動車フロントガラス1を示す。
図4】本発明による方法の概略図を示す。
図5a】本発明の1つの実施形態による白色(図5a-1)又は黒色(図5a-2)を有する3つの開口7、7’、7’’を含むカメラゾーンのマスキング及び「カメラゾーン」における光学的ゆがみの改善を示す。
図5b】本発明により得られる結果を示す。
図6a】本発明の1つの実施形態による洗浄可能エナメルとして、開口7、7’の表面のみ(図6a-1)又は開口7、7’を覆う表面及び部分的にエナメル遮蔽帯2(図6a-2)に溶解炭素粉末溶液が噴霧された開口7、7’のマスキング並びに「カメラゾーン」内の光学的ゆがみの改善を示す。
図6b】本発明により得られる結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
説明される実施形態及びその利点は、以下の説明を添付の図面と共に参照することによって最もよく理解されることができる。これらの図面は、当業者が、説明された実施形態に対して、説明された実施形態の趣旨及び範囲から逸脱せずになすことができる、形態及び詳細におけるいかなる変更形態も限定しない。
【0053】
簡略化するために、説明におけるガラスシートの番号は、ガラスについて従来採用されている番号付与方式に関する。したがって、積層体の、車両の外側環境と接触する面は、面1として知られ、内側、すなわち車両の車室と接触する面は、面4と呼ばれる。
【0054】
疑義の発生を回避するために、「外側」及び「内側」という用語は、車両にガラスとして取り付けているときのガラスの向きを指す。
【0055】
疑義の発生を回避するために、本発明は、以下の説明がより積層ガラスに向けられているとしても、積層ガラス及び焼き戻しガラスにも関する。
【0056】
したがって、本発明は、先行技術の黒色フリット遮蔽部に関わる欠点を、形成/曲げステップ又は焼き戻しステップ前に黒色フリット遮蔽部内の開口を洗浄可能エナメルによってマスクすることによって排除する。これにより、曲げ中にその部品全体を通したより均一な熱分布が得られ、それは、熱勾配に起因する残留応力及び光学的ゆがみを低減させる。
【0057】
本発明者らは、驚くべきことに、「カメラゾーン」とも呼ばれる、光学センサ装置が固定される領域、より一般的には少なくとも1つの開口を取り囲む領域における光学的ゆがみが有意に低減することを実証している。「カメラゾーン」内の光学的ゆがみは、「カメラゾーン」内の開口が、ガラスの曲げ前にフリットを含まない洗浄可能エナメルカバー層で覆われていないガラスと比較してさらに50%まで低減されることができることが証明されている。
【0058】
プロセスの他の利点は、積層体の光学特性を微調整できることである。
【0059】
完成した積層体に対する利点に加えて、黒色フリット領域内に存在する不均一な加熱及び高い熱勾配が排除されることにより、曲げプロセス中の歩留まりが高まる。
【0060】
フロントガラスのゆがみは、屈折力又は光学パワーの点で測定される。光学パワーは、ある距離に沿った隅角偏位の変化である。十分に高いレベルであると、認識可能な光学的ゆがみが発生する可能性がある。光学パワーは、ディオプトリ又は自動車ガラスの分野では特にミリディオプトリで表現される。
α及びαは、ガラスを通過する2つの平行な光線の入射角である。2つの入射角の差は、ラジアンを単位とするゆがみである。ΔXは、2つの平行な光線間の距離であり、長さの差とも呼ばれ、単位は、メートルである。Dは、光学パワーであり、ミリディオプトリ(mdpt)を単位とするゆがみを表す。
【0061】
大規模なフロントガラス製造ラインの多くは、ガラスをスキャンするオンライン自動検査システムを利用し、光学的ゆがみをディオプトリで示す加熱マップを作成する。
【0062】
本発明のある実施形態により、カメラ6又はより一般的に言えば光学センサ装置6が取り付けられる(図3に示される)フロントガラス1について、図面を参照しながら説明する。この実施形態による図1に示されるフロントガラス1は、自動車のためのフロントガラス1の形態の積層ガラスである。フロントガラスは、外面P1と内面P2とを有する外側ガラスシート3と、内面P3と外面P4とを有する内側ガラスシート4とを含み、これらは、熱可塑性中間層と共に積層されている。フロントガラス1の周辺に沿った黒色エナメルフリットマスク(帯)2は、以下では「黒色帯」と呼び、積層ガラスの内面P4に設けられる。黒色帯は、自動車分野において、不体裁な部分を隠すか、又は接着剤をU.V.から保護するために古典的に使用されているエナメルフリットマスクである。エナメルフリットマスクは、例えば、グレイ色又はエナメル遮蔽フリットマスクの要求事項を満たす他の適当な色等の、黒以外のマスキングカラーを有することができることを理解されたい。
【0063】
既知のガラスシートは、外側ガラスシート3及び内側ガラスシート4として使用できる。これらのガラスシートは、IR吸収ガラス、通常の透明ガラス若しくは緑色ガラス又はUV緑色ガラスから作られることもできる。しかしながら、ガラスシート3及び4は、安全基準に適合する可視光の透過率を実現する必要がある。
【0064】
この実施形態による積層ガラスの厚さについての制限は、特にないが、外側ガラスシート3と内側ガラスシート4との厚さの合計は、軽量化の観点から、好ましくは2.4~4.2mm、より好ましくは2.6~3.4mm、特に好ましくは2.7~3.2mmに設定される。
【0065】
内側ガラスシート4の厚さは、外側ガラスシート3のものと同等であることができるが、内側ガラスシート4の厚さは、例えば、積層ガラスの軽量化のために外側ガラスシート3のものより薄いことができる。
【0066】
中間層5は、外側シート3及び内側シート4と共に積層される熱可塑性中間層である。中間層5は、よく知られた防音用中間層であることができる。熱可塑性中間層は、単相又は多層熱可塑性中間層であることができる。層131を構成する材料についての限定は、特にないが、中間層の層131は、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)から作られることができる。ポリビニルブチラール樹脂は、ガラスシートへの高い接着性及び貫入抵抗を有し、したがって好ましい。
【0067】
前述のように、この実施形態による積層ガラスは、光学センサ装置又はより具体的にはカメラを使用する自動車のフロントガラスで使用される。カメラの場合、カメラは、先行車からの可視光又は赤外光線を受け取って画像を撮影し、先行車の速度及び先行車までの距離を測定する。したがって、積層ガラスは、所定の範囲の波長を有する光に関する透過率を実現する必要がある。
【0068】
カメラは、例えば、先行車の速度及び先行車までの距離を測定する赤外線カメラであることができる。このような場合、700~800nmの波長を有する光(赤外光線)に関する有効透過率は、30%以上、80%以下、好ましくは40%以上、60%以下である。
【0069】
本発明は、光学センサ6及びより具体的にはカメラ6が取り付けられる、優れた光学品質を有する自動車用積層ガラス又は焼き戻しガラスを製造する方法を提案する。本発明の他の目的は、エナメル遮蔽マスクを含むガラスにおける光学的ゆがみを低減させる方法を提供することである。
【0070】
本発明による方法は、図4のようにまとめられることができる。本発明による方法は、
a.少なくとも1つのガラスシートを提供するステップ、
b.光学センサ及びより具体的にはカメラが取り付けられる少なくとも1つの開口を有するエナメル遮蔽マスクを付与するステップ、
c.少なくとも1つの開口の表面上に、少なくとも620℃の温度に耐える洗浄可能カバー層を付与するステップ、
d.開口が洗浄可能カバー層でも覆われたエナメル遮蔽帯を有する少なくとも1つのガラスを、炉内において450℃より高い、好ましくは750℃より高い温度での焼き戻し又は曲げ/形成ステップ等の熱処理に供するステップ、
e.洗浄可能カバー層を洗浄することによって除去するステップ
を含む。
【0071】
本発明の1つの実施形態によれば、自動車用ガラスは、内側ガラスシートの外面、すなわちガラスの面4(図1のP4)にエナメル遮蔽帯2が設けられた積層フロントガラス1である。図2図5及び図6に示されるように、マスク層2は、ガラスシートの縁辺に、カメラが取り付けられることを意図された「カメラブラケット」と呼ばれる位置に開口7を残して形成される。マスク層が形成されている平坦な形状のガラスシートは、自動車メーカにより要求される形態に既知の技術によって加熱曲げ形成されると想定される。ガラスシート3、4は、金型を用いて湾曲形状に成型される。ガラスシートを曲げるために使用される金型は、輸送台上に配置され、これは、200℃~750℃の温度の加熱炉内を通り、マスク層を硬化させ、ガラスシートを曲げる。積層ガラスの場合、外側及び内側ガラスシートは、2つのガラスシートを重ねることにより、別々に(シートごとのプロセス)又は一体で(フルプレスプロセス)曲げられることができる。湾曲形状は、一方向のみの曲率又は複数の方向への曲率を有することができる。その後、加熱炉の外でアニーリングを行うことによってフロントガラスが得られる。
【0072】
図2に示されるような第一のマスク層2は、ガラスシート1に隣接して形成される。マスク層2は、ガラスシート1を車両本体に取り付けるために付与される接着剤等を外側から隠すための領域として機能し、ガラスシート1の外側周辺縁に形成される周辺縁マスク層21と、ガラスシート1の上縁の中央において周辺縁マスク層21から下方に広がる、古典的にカメラゾーンとも呼ばれる中央マスク層22とを含む。前述の測定ユニット6は、中央マスク層22に取り付けられる。測定ユニット6は、センサ6から発せられる光が開口の中心を通過し、先行車及び障害物により反射された光を受け取ることができるように配置されていれば十分である。マスク層2は、様々な材料から作られることができるが、マスク層2が車両の外側からの視野をブロックする限り、材料に関する制限はなく、マスク層2は、例えば、ガラスシート1に黒等の暗色のセラミックを付与することによって形成できる。
【0073】
図2において、本発明の例として、中央マスク層22は、縦に延びる「長方形のような」形状に形成され、開口7は、台形の形状に形成され、光学センサのため及びより具体的にはカメラ6のための視野を形成する。
【0074】
中央マスク層22は、縦に延び、ガラスに取り付けられることを意図されるカメラの数に応じて複数の開口(7、7’、7’’)が形成される何れの適当な形態にも形成されることができることを理解されたい。開口は、縦方向、すなわち上側開口及び下側開口又は図5及び図6に示されるように中央マスク層22内に水平方向にも整列されることができる。開口は、台形又はカメラの視野に合わせられた何れの適当な形態も有することができる。開口は、「逆V字型」の形状としての「開放型形態」又は台形の形態(閉鎖型形態)を有することができる。複数の開口7が中央マスク層22に設けられる場合、開口は、同じ形態又は異なる形態(閉鎖型形態)を有することができる。開口の大きさに関する限定は、特にないが、例えば、上側開口231は、縦方向の長さ約58mm、横方向の長さ約58mmとなるように形成でき、下側開口は縦方向の長さ約52mm、横方向の長さ約27mmとなるように形成できる。
【0075】
本発明によれば、エナメル遮蔽マスク2が付与されると、ガラスシートは、エナメルを硬化又は乾燥させるための熱処理に供される。使用される洗浄可能カバー層25の種類に応じて、エナメルマスク2は、乾燥又は硬化されるべきである。実際に、幾つかの洗浄可能カバー層25の場合、これらをエナメル遮蔽マスク2の硬化後に付与することができる。しかしながら、幾つかの洗浄可能カバー層25は、エナメル遮蔽マスク2の乾燥直後に付与して時間を節約できるようにすることができる。これは、洗浄可能カバー層25の組成に依存し、より具体的にはそれが硬化されないエナメルマスク2と相互作用する幾つかの成分を含む場合に当てはまる。
【0076】
本発明によれば、洗浄可能カバー層25は、図6aに示されるように少なくとも1つの開口のみを覆うように付与されることができる。しかしながら、洗浄可能カバー層25は、少なくとも1つの開口を覆い、部分的に開口の周辺縁から開口7、7’、7’’の周囲の遮蔽マスク2に向かって、例えば開口の周辺縁から開口の周囲の遮蔽マスク層2に向かう5~50mmの範囲に対応する領域に広がるように付与されることができる。
【0077】
本発明によれば、カバー層25は、スプレー法、スクリーン印刷等、何れの適当な既知の方法によっても付与されることができる。
【0078】
図5a-1は、中央遮蔽マスク22内のカメラゾーン26が、白色顔料を含有する、フリットを含まないエナメル2により覆われる実施形態を示す。洗浄可能カバー層25は、開口7、7’、7’’を覆うように噴霧されており、洗浄可能カバー層25は、開口の周辺縁から開口7、7’、7’’の周囲の遮蔽マスク2に向かって部分的に広がる。洗浄可能カバー層25は、中央遮蔽マスク22に、中央遮蔽マスク22が付与され、最低温度90℃で乾燥された後に内側ガラスシート4の内面P4に付与されている。白色顔料を含有する、フリットを含まないエナメル2が面P4に付与されると、ガラスシートは、曲げプロセスに供され、ガラスシートの温度は、最低40秒で620℃の温度に達し、ガラスシートの最終形状が得られている。曲げステップ後、洗浄可能カバー層25は、洗浄/ブラッシングによって除去されている。外側ガラスシート3と内側ガラスシート4とが一緒に(フルプレス)又は別々に(シートごとに)曲げられた後、2つのガラスシート3、4は、PVB等の熱可塑性中間層と共に積層される。積層は、よく知られた方法により実行される。このようにして、この実施形態による積層ガラスが製造される。
【0079】
その後、得られた積層ガラス上のカメラゾーンにおいて光学的ゆがみを測定し、開口7、7’、7’’を有する黒色エナメル遮蔽帯2が設けられた古典的な積層ガラスと比較した。
【0080】
図5a-2は、本発明の他の実施形態を示し、この場合、黒色顔料を含む、フリットを有さないエナメルの洗浄可能カバー層25が図5a-1のように噴霧され、曲げプロセス中に図5a-1のように熱処理に供されている。光学的ゆがみを同じくカメラゾーンで測定し、開口7、7’、7’’を有する黒色エナメル遮蔽帯2が設けられたガラスシートと比較した。
【0081】
したがって、図5bは、開口7、7’、7’’が洗浄可能カバー層25で覆われていない、黒色エナメル遮蔽帯2が設けられたガラス、及び開口7、7’、7’’が白及び黒色顔料を含む洗浄可能カバー層25により覆われた、黒色エナメル遮蔽帯2が設けられたガラスから測定された光学的ゆがみの結果を示す。図5bに示される値は、mdptの単位で表現される。このように、開口を黒色の洗浄可能カバー層25で覆うことにより、光学的ゆがみは、開口7、7’、7’’が洗浄可能カバー層25により覆われていない、黒色エナメル遮蔽帯2が設けられたガラスシートと比較して15%改善されている。開口を白色の洗浄可能カバー層25で覆うことにより、光学的ゆがみは、開口7、7’、7’’が洗浄可能カバー層25で覆われていない、黒色エナメル遮蔽帯2が設けられたガラスシートと比較して50%まで改善されている。
【0082】
図6a-1に示されるような本発明の他の実施形態によれば、炭素粉末を含む溶液、すなわち洗浄可能カバー層25は、例えば、前述のように、ガラスシートのP4上に遮蔽マスク2がスクリーン印刷され、乾燥された後、開口7、7’、7’’の表面のみに噴霧されている。
【0083】
図6a-2に示されるような本発明の他の実施形態によれば、炭素粉末を含む溶液は、開口7、7’、7’’の表面のみに噴霧されており、洗浄可能カバー層25は、開口の周辺縁から開口7、7’、7’’の周囲の遮蔽マスク2に向かって部分的に広がる。
【0084】
したがって、図6bは、開口7、7’、7’’が洗浄可能カバー層25で覆われていない、黒色エナメル遮蔽帯2が設けられたガラス、及び開口7、7’、7’’が溶解炭素粉末の懸濁液により覆われた、黒色エナメル遮蔽帯2が設けられたガラス及び開口を有し、黒色エナメル遮蔽帯2が部分的に覆われたガラスから測定された光学的ゆがみの結果を示す。図6bに示される値は、mdptの単位で表現される。
【0085】
このように、開口を、洗浄可能カバー層25として溶解炭素粉末を含む溶液で覆うことにより、光学的ゆがみは、開口7、7’、7’’が洗浄可能カバー層25により覆われていない黒色エナメル遮蔽層2が設けられたガラスシートと比較して40%まで改善されている。
【0086】
本発明は、本発明による方法によって得られたガラスにも関する。
【符号の説明】
【0087】
1 積層ガラス
2 エナメル遮蔽フリットマスク
3 外側ガラスシート
4 内側ガラスシート
5 中間層
6 光学装置
7、7’ 視野/開口
21 周辺縁マスク
22 中央遮蔽マスク
23 ワイパレスト遮蔽マスク
25 洗浄可能カバー層
26 カメラゾーン
P1 外側ガラスシートの外面
P2 外側ガラスシートの内面
P3 内側ガラスシートの内面
P4 内側ガラスシートの外面
図1
図2
図3
図4
図5
図6