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特許7486508ポリアミドを含む携帯用電子デバイス物品又は構成部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ポリアミドを含む携帯用電子デバイス物品又は構成部品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/08 20060101AFI20240510BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20240510BHJP
   C08G 69/36 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C08J5/08 CFG
C08G69/26
C08G69/36
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021548682
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020054367
(87)【国際公開番号】W WO2020169670
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】62/807,426
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19172335.2
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フローレス, ジョエル
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-015106(JP,B1)
【文献】特開2014-122348(JP,A)
【文献】特開2014-122322(JP,A)
【文献】特開2010-084007(JP,A)
【文献】国際公開第2019/027452(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/137703(WO,A1)
【文献】特表2010-513054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00-69/50
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/00-5/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき2.4GHzで3.0未満の誘電率ε、及び/又はASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき2.4GHzで0.010未満の誘電正接(Df)を有し、
式(I):
(式中、
nが16に等しく、且つ
がp-キシリレンである)による繰り返し単位(RPAから本質的になるポリアミド(PA)を30重量%超含む、組成物(C)から製造される、携帯用電子デバイス物品又は構成部品。
【請求項2】
前記ポリアミド(PA)が、
- p-キシリレンジアミン及
- HOOC-(CH16-COOH、又はその誘導体とを含む混合物の縮合生成物である、請求項1に記載の物品又は構成部品。
【請求項3】
前記縮合生成物が、
- 少なくとも1種のジカルボン酸成分又はその誘導体及び少なくとも1種のジアミン成分、
- 少なくとも1種のアミノカルボン酸、及び/又は
- 少なくとも1種のラクタム
からなる群から選択される少なくとも1つの付加的な成分を更に含む、請求項に記載の物品又は構成部品。
【請求項4】
- 前記ジカルボン酸成分は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸及びそれらの混合物からなる群から選択され、及び/又は
- 前記ジアミン成分は、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアモノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクトアン、1,10-ジアミンデカン、1,12-ジアミノドデカン、HN-(CH-O-(CH-O(CH-NH、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の物品又は構成部品。
【請求項5】
前記ラクタムが、カプロラクタム、ラウロラクタム及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の物品又は構成部品。
【請求項6】
前記ポリアミド(PA)が、ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき、2.4GHzで3.0未満の誘電率εを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の物品又は構成部品。
【請求項7】
前記ポリアミド(PA)が、ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき2.4GHzで0.010未満の誘電正接(Df)を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の物品又は構成部品。
【請求項8】
補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の物品又は構成部品。
【請求項9】
前記組成物の総重量を基準として10重量%~60重量%のガラス繊維を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の物品又は構成部品。
【請求項10】
顔料、染料及び着色剤が、前記組成物の総重量を基準として0.5重量%~5重量%の量で存在し、TiO2、カーボンブラック、硫化亜鉛、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化第二鉄及びこれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から各々独立に選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の物品又は構成部品。
【請求項11】
前記組成物の総重量を基準として40重量%~70重量%の前記ポリアミド(PA)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の物品又は構成部品。
【請求項12】
携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、カメラ、ポータブルオーディオプレーヤー、ポータブルラジオ、全地球測位システム受信機及びポータブルゲームコンソールからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の物品又は構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年2月19日出願の米国仮特許出願第62/807,426号に対する及び2019年5月2日出願の欧州特許出願第19172335.2号に対する優先権を主張するものであり、これら出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、式(I):
(式中、
nが16に等しく、且つ
がp-キシリレンである)による繰り返し単位(RPA)を含む少なくとも1つのポリアミド(PA)を含む携帯用電子デバイス物品又は構成部品に関する。
【背景技術】
【0003】
その重量の低下及び高い機械的性能のため、ポリマー組成物は、携帯用電子デバイス構成部品を製造するために幅広く使用されている。現在、改良された誘電性能(すなわち低い誘電率及び誘電正接)を有する携帯用電子デバイス構成部品を製造するために使用されるポリマー組成物に対して市場からの高い需要がある。
【0004】
携帯用電子デバイスにおいて、様々な構成部品及びハウジングを形成する材料は、1つ以上のアンテナを通して携帯用電子デバイスにより送信及び受信されるワイヤレス無線信号(例えば、1MHz、2.4GHz及び5.0GHzの周波数)を著しく損なう可能性がある。携帯用電子デバイスにおいて使用される材料の誘電性能は、誘電率を測定することによって決定され得、それは、材料が電磁線と相互作用して、材料を通って移動する電磁信号(例えば無線信号)を破壊する能力を表す。したがって、所与の周波数における材料の誘電定数が低いほど、その周波数における材料による電磁信号の破壊が少なくなる。
【0005】
本出願人は、携帯用電子デバイス構成部品のための材料としてそれらをとりわけ適したものにする、改良された誘電性能を有するポリアミドの新規なクラスを特定した。
【0006】
これらのポリアミドは、p-キシリレンジアミンと、1つの長鎖脂肪族ジカルボン酸HOOC-(CH16-COOHとに由来する。
【0007】
Kazuo Saotone及びHiroshi Komoto(Journal of Polymer Science,Vol 5,107-117,1967)の論文には、N,N’-ジアルキルp-キシリレンジアミン及びN,N’-ジアルキルヘキサメチレンジアミン(ここでアルキルは具体的にはメチル又はエチルである)と長鎖脂肪族ジカルボン酸とからのN-アルキル置換ポリアミド及びコポリアミドの調製が記載されている。また、この論文には、さまざまな組成物について結晶性であることがわかっているN-アルキルコポリアミドの調製が記載されている。
【0008】
Heideckerらの論文(Antec 2002,Vol 3,3624-3628)は、様々な脂肪族及び芳香族ジアミンを或る比率の4,4-ジメチルビベンゾエート及び1,18-オクタデカン二酸(C18二酸)とブレンドすることによって得られる、液晶ポリマーに関する。
【0009】
カナダ特許第2565483号明細書(Degussa)には、m-キシリレンジアミンから出発する、様々な半結晶性ポリアミド、とりわけポリアミドMXD14及びMXD18の調製が記載されている。
【0010】
米国特許出願公開第2010/062272A1号明細書には、とりわけ、以下の出発原料m-キシリレンジアミン及び1,18-オクタデカン二酸から調製されるポリアミド50~100重量部を含有する、ポリアミド組成物が記載されている。
【0011】
しかしながら、上に列挙した文献のいずれも、本発明のポリアミドの使用及び携帯用電子デバイスの構成部品としてのそれらの有利な特性を記載していない。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、式(I):
(式中、
nが16に等しく、且つ
がp-キシリレンである)による繰り返し単位(RPA)を含むポリアミド(PA)を含む、携帯用電子デバイス物品又は構成部品に関する。
【0013】
好ましくは、ポリアミド(PA)は:
- p-キシリレンジアミンを含有する少なくとも1種のジアミン成分と、
- HOOC-(CH16-COOH、又はその誘導体を含有する少なくとも1種のジカルボン酸成分とを含む混合物の縮合物であり、より好ましくはジカルボン酸は1,18-オクタデカン二酸である。
【0014】
ある実施形態によれば、本発明の物品又は構成部品は、ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき2.4GHzで3.0未満の誘電率ε、及び/又はASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき2.4GHzで0.010未満の誘電正接(Df)を有するポリアミド(PA)又は組成物(C)から製造される。
【0015】
物品は、例えば、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、カメラ、ポータブルオーディオプレーヤー、ポータブルラジオ、全地球測位システム受信機、及びポータブルゲームコンソールからなる群から選択され得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載されるのは、例えばp-キシリレンジアミン(PXD)と、少なくともジカルボン酸HOOC-(CH16-COOHとから誘導されるポリアミド(PA)、並びにこのポリアミドと、任意選択により補強充填剤と1つ以上の添加剤とを含有するポリアミド組成物(C)である。ポリアミド(PA)は、低い誘電率ε(高い誘電性能)を有し、したがって携帯用電子デバイス物品又は構成部品のための材料として適している。
【0017】
また、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、良い機械的性能(例えば引張弾性率、GPa;引張強さ、MPa;破断点引張伸び)及び大気水分に対する低い感受性を有する。
【0018】
ある実施形態によれば、ポリアミド(PA)又はポリアミド組成物(C)は好ましくは、ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき2.4GHzで3.0未満、好ましくは2.9未満又は2.8未満の誘電率εを有する。
【0019】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、式(I):
(式中、
nが16に等しく、且つ
がp-キシリレン(PX)である)の繰り返し単位(RPA)を含む。
【0020】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、本質的に繰り返し単位(RPA)に存するポリアミド又は繰り返し単位(RPA)を含むコポリアミド(PA)であり得る。より正確には、表現「コポリアミド」は本明細書では、PXDと、少なくともジカルボン酸HOOC-(CH16-COOHとから誘導される繰り返し単位(RPA)、並びに、繰り返し単位(RPA)と明確に異なる、繰り返し単位(RPA*)を含むコポリアミドを意味するために使用される。
【0021】
ある実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、例えばp-キシリレンジアミン(PXD)及び1,18-オクタデカン二酸から誘導される、式(I)の繰り返し単位(RPA)に本質的に存する。
【0022】
ポリアミド(PA)が繰り返し単位(RPA*)を含むとき、繰り返し単位(RPA*)は、式(II)及び/又は(III):
(式中、
は、結合、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)(例えば、式中、Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg又はCaである)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C15アルキル及びC~C30アリールからなる群から選択され;
は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)(例えば、式中、Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg又はCaである)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C20アルキル及びC~C30アリールからなる群から選択され;及び
は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N及びS)を任意選択的に含み、且つハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)(例えば、式中、Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg又はCaである)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換された直鎖又は分岐C~C14アルキルからなる群から選択される)であり得る。
【0023】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、式(IV):
(式中、
、n及びnは、それぞれ各繰り返し単位x、y及びzのモル%であり;
繰り返し単位x、y及びzは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置されており;
+n+n=100であり;
5≦n<100であり;
、R、R及びRは上に記載されたとおりである)であり得る。
【0024】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、1,000g/モル~40,000g/モル、例えば2,000g/モル~35,000g/モル又は4,000~30,000g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有し得る。数平均分子量Mnは、ポリスチレン標準物質を用いて、ASTM D5296を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0025】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)において、繰り返し単位yは、脂肪族又は芳香族であり得る。本発明の目的のために、表現「芳香族繰り返し単位」は、少なくとも1つの芳香族基を含む任意の繰り返し単位を意味することを意図する。芳香族繰り返し単位は、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合、又は少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとの重縮合、又は芳香族アミノカルボン酸の重縮合によって形成され得る。本発明の目的のために、ジカルボン酸又はジアミンは、それが1つ又は2つ以上の芳香族基を含む場合に「芳香族」と考えられる。
【0026】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)において、繰り返し単位zは、脂肪族であり、Rは、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N及びS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換された直鎖又は分岐C~C14アルキルである。
【0027】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、繰り返し単位x及びy、又は繰り返し単位x及びz、又は繰り返し単位x、y及びzから構成され得る。繰り返し単位x、y及びzは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置される。
【0028】
本出願において:
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本出願で明示的に企図される関連実施形態において、要素又は成分はまた、別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つであり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群から選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 本明細書での端点による数値範囲のいずれの列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0029】
本明細書の全体にわたり、全ての温度は、度摂氏(℃)単位で示される。
【0030】
特に具体的に限定しない限り、用語「アルキル」並びに「アルコキシ」、「アシル」及び「アルキルチオ」などの派生用語は、本明細書で用いる場合、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖及び環状部分を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1-ジメチルエチル及びシクロプロピルである。特に具体的に記述しない限り、各アルキル及びアリール基は、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ若しくはC~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1個以上の置換基で置換され得、ただし、置換基が立体的に適合性(sterically compatible)であり、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、フッ素が好ましい。
【0031】
用語「アリール」は、フェニル、インダニル又はナフチル基を意味する。アリール基は、1つ以上のアルキル基を含み得、この場合、「アルキルアリール」と呼ばれることもあり、例えばシクロ芳香族基及び2つのC~C基(例えば、メチル又はエチル)から構成され得る。また、アリール基は、1つ以上のヘテロ原子、例えばN、O又はSも含み得、この場合、「ヘテロアリール」基と呼ばれることもあり、これらのヘテロ芳香環は、他の芳香族系に縮合し得る。そのようなヘテロ芳香環には、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル及びトリアジニル環構造が含まれるが、それらに限定されない。アリール又はヘテロアリール置換基は、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C~Cアルコキシ、スルホ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ若しくはC~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1個以上の置換基で置換され得、ただし、置換基が立体的に適合性であり、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0032】
ある実施形態によれば、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、
- 少なくとも5モル%のPXD、
(又は少なくとも10モル%、少なくとも15モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、少なくとも45モル%、少なくとも50モル%、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%又は少なくとも98モル%のPXD)を含む少なくとも1種のジアミン成分と、
- 少なくとも5モル%のHOOC-(CH16-COOH、又はその誘導体、
(又は少なくとも10モル%、少なくとも15モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、少なくとも45モル%、少なくとも50モル%、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%又は少なくとも98モル%のHOOC-(CH16-COOH)を含む少なくとも1種のジカルボン酸成分とを含む混合物の縮合生成物である。
【0033】
ある実施形態によれば、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、
- 少なくとも1種のジカルボン酸成分(本明細書では二酸とも呼ばれる)又はその誘導体及び少なくとも1種のジアミン成分、
- 少なくとも1種のアミノカルボン酸、及び
- 少なくとも1種のラクタム
からなる群から選択される成分の少なくとも1つを含む混合物の縮合生成物である。
【0034】
本発明のポリアミド(PA)は、例えばPXDから誘導される、繰り返し単位(RPA)の少なくとも5モル%と、少なくとも1種のジカルボン酸HOOC-(CH16-COOH、例えば少なくとも約10モル%、少なくとも約15モル%、少なくとも約20モル%、少なくとも約25モル%、少なくとも約30モル%、少なくとも約35モル%、少なくとも約40モル%、少なくとも約45モル%、少なくとも約50モル%、少なくとも約55モル%、少なくとも約60モル%、少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%又は少なくとも約98モル%とを含み得る。
【0035】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、繰り返し単位(RPA)に本質的に存するポリアミドであり得る。このような場合、ポリアミドは、繰り返し単位(RPA)と明確に異なる繰り返し単位2モル%未満、例えば、繰り返し単位(RPA)と明確に異なる繰り返し単位1モル%未満、0.5モル%未満又は更に0.1モル%未満を含む。
【0036】
表現「少なくとも」は、本明細書では、「~に等しいか又はそれを超える」を意味することを意図する。例えば、本明細書では表現「少なくとも5モル%の繰り返し単位(RPA)」は、ポリアミド(PA)が5モル%の繰り返し単位(RPA)、又は5モル%超の繰り返し単位(RPA)を含み得ることを意味する。表現「少なくとも」は、そのため、本発明との関連で数学的記号「≧」に対応する。
【0037】
表現「未満」は、本発明との関連で数学的記号「<」に対応する。例えば、表現「100モル%未満の繰り返し単位(RPA)」は、本明細書では、ポリアミドが厳密に100モル%未満の繰り返し単位(RPA)を含み、したがって繰り返し単位(RPA)と少なくとも1つの別の繰り返し単位(RPA*)とから製造される、コポリアミドとみなされる。
【0038】
この実施形態によれば、ジカルボン酸成分は、少なくとも2個の酸性部分-COOHを含む多様な脂肪族又は芳香族成分の中で選択することができる。この実施形態によれば、ジアミン成分は、少なくとも2個のアミン部分-NHを含む多様な脂肪族又は芳香族成分の中で選択することができる。
【0039】
表現「その誘導体」は、表現「ジカルボン酸」と組み合わせて用いられる場合、重縮合条件で反応を受けてアミド結合を生成するいずれの誘導体も意味することを意図する。アミド形成誘導体の例としては、そのようなカルボン酸のモノ-又はジメチル、エチル又はプロピルエステルなどのモノ-又はジアルキルエステル;そのモノ-又はジアリールエステル;その一酸又は二酸ハロゲン化物;そのカルボン酸無水物及びその一酸又は二酸アミド、モノ-又はジカルボキシレート塩が挙げられる。
【0040】
脂肪族ジカルボン酸の非限定的な例は、とりわけ、シュウ酸(HOOC-COOH)、マロン酸(HOOC-CH-COOH)、コハク酸[HOOC-(CH-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH-COOH]、2,2-ジメチルグルタル酸[HOOC-C(CH-(CH-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH-COOH]、2,4,4-トリメチル-アジピン酸[HOOC-CH(CH)-CH-C(CH-CH-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH-COOH]、ウンデカン二酸[HOOC-(CH-COOH]、ドデカン二酸[HOOC-(CH10-COOH]、トリデカン二酸[HOOC-(CH11-COOH]、テトラデカン二酸[HOOC-(CH12-COOH]、ペンタデカン二酸[HOOC-(CH13-COOH]、ヘキサデカン二酸[HOOC-(CH14-COOH]、オクタデカン二酸[HOOC-(CH16-COOH]である。このカテゴリーに1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及び1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸も含まれる。
【0041】
芳香族二酸の非限定的な例は、とりわけ、イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)などのフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えばナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、4,4’-ビ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。
【0042】
芳香族ジアミン(NNar)の非限定的な例は、とりわけ、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)である。
【0043】
脂肪族ジアミン(NNal)の非限定的な例は、とりわけ、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン(プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン(すなわち1,6-ジアミノヘキサン)、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、2,5-ジアモノテトラヒドロフラン及びN,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミンである。このカテゴリーにイソホロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(メチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(メチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)及びビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)などの脂環式ジアミンもまた含まれる。
【0044】
脂肪族ジアミン(NNal)は、更にポリエーテルジアミンの群の中で選択することもできる。ポリエーテルジアミンは、エトキシレート化(EO)主鎖及び/又はプロポキシレート化(PO)主鎖をベースとすることができ、それらは、エチレンオキシド末端、プロピレンオキシド末端又はブチレンオキシド末端ジアミンであり得る。そのようなポリエーテルジアミンは、例えば、商品名Jeffamine(登録商標)及びElastamine(登録商標)(Hunstman)で販売されている。
【0045】
ある実施形態によれば、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、少なくとも1種のアミノカルボン酸(繰り返し単位z)及び/又は少なくとも1種のラクタム(繰り返し単位z)を含む。
【0046】
アミノカルボン酸は、3~15個の炭素原子、例えば4~13個の炭素原子を有し得る。ある実施形態によれば、アミノカルボン酸は、6-アミノヘキサン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、13-アミノトリデカン酸、3-(アミノメチル)安息香酸、4-(アミノメチル)安息香酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
ラクタムは、3~15個の炭素原子、例えば4~13個の炭素原子を有し得る。ある実施形態によれば、ラクタムは、カプロラクタム、ラウロラクタム及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
ある実施形態によれば、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、
- PXDである少なくとも1種のジアミンと、
- 少なくとも5モル%の、1種のジカルボン酸(DA)HOOC-(CH16-COOH、又はその誘導体と、
-(DA)と明確に異なる、少なくとも1つの付加的なジカルボン酸成分と、
- PXDと明確に異なる、少なくとも1つの付加的なジアミン成分とを含む混合物の縮合生成物であり、
ここで、
- 付加的なジカルボン酸成分は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,4-シクロヘキサン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
- 付加的なジアミン成分は、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアモノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクトアン、1,10-ジアミンデカン、1,12-ジアミノドデカン、HN-(CH-O-(CH-O(CH-NH、1,3-ビス(メチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(メチル)シクロヘキサン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
別の実施形態によれば、本明細書で説明されるポリアミドは、
-PXDである少なくとも1種のジアミンと、
- 少なくとも5モル%の、1種のジカルボン酸(DA)HOOC-(CH16-COOH、又はその誘導体と、
- (DA)と明確に異なる、少なくとも1つの付加的なジカルボン酸成分と、
- PXDと明確に異なる、少なくとも1つの付加的なジアミン成分とを含む混合物の縮合生成物であり、
ここで、
- 付加的なジカルボン酸成分は、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びそれらの混合物からなる群から選択され、
- 付加的なジアミン成分は、1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
別の実施形態によれば、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、
- PXDである少なくとも1種のジアミンと、
- 少なくとも5モル%の、1種のジカルボン酸(DA)HOOC-(CH16-COOH、又はその誘導体と、
- カプロラクタム、ラウロラクタム、11-アミノウンデカン酸、1,3-ビス-(アミノメチル)安息香酸及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのラクタム又はアミノ酸とを含む混合物の縮合生成物である。
【0051】
好ましい実施形態によれば、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPA)、例えば少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%の繰り返し単位(RPA)を含む。
【0052】
この実施形態によれば、ポリアミド(RPA)は、式(IV):
において、50≦n≦100、
60≦n≦100、
70≦n≦100、又は
75≦n≦100であるようなものである。
【0053】
本明細書で説明されるポリアミドは、100モル%未満の繰り返し単位(RPA)を含み得る。
【0054】
別の好ましい実施形態によれば、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、99モル%未満の繰り返し単位(RPA)、例えば98モル%未満、97モル%未満、96モル%未満の繰り返し単位(RPA)を含む。
【0055】
この実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、式(IV):
において、5≦n≦99、
5≦n≦98、
5≦n≦97、又は
5≦n≦96であるようなものである。
【0056】
、n及びnは、それぞれ各繰り返し単位x、y及びzのモル%である。本明細書で説明される異なる実施形態の例として、本発明のポリアミド(PA)が専ら繰り返し単位x及びyから構成される場合、n+n=100であり、n=0である。この場合、繰り返し単位yは、ジアミン成分及び二酸成分から構成され、縮合反応に添加されるジアミンのモル数及び二酸のモル数は、等しい。例えば、ポリアミドが専らPXD、及びジカルボン酸(DA)HOOC-(CH16-COOH、並びにテレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンから構成され、n=60モル%及びn=40モル%である場合、実質的に同じモル数のテレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンが、すなわち40モル%が縮合混合物に添加されるのがよい。用語「実質的に」は、本明細書では、比二酸/ジアミンが0.9~1.1、例えば0.95~1.05で変わることを意味することを意図する。
【0057】
ある実施形態によれば、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、ASTM D3418に従って測定されるとき、少なくとも約160℃、例えば少なくとも約168℃、少なくとも約170℃の融解温度(Tm)を有する。
【0058】
ある実施形態によれば、本発明のポリアミド(PA)は:
- ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき、2.4GHzで3.0未満、好ましくは2.9未満又は2.8未満の誘電率ε、及び又は
- ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき2.4MHzで0.010未満、好ましくは0.0094未満又は0.0093未満の誘電正接(Df)を有する。
【0059】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、ポリアミド及びポリフタルアミドの合成に適合された任意の従来の方法によって調製することができる。
【0060】
優先的には、本発明のポリアミドは、モノマーを40重量%未満の水、優先的には30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満の存在下で、優先的には水を加えずに、少なくともTm+10℃の温度(Tmはポリアミドの融解温度である)まで加熱して反応させることによって調製される。
【0061】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は例えば、モノマー及びコモノマーの水溶液の熱重縮合によって調製することができる。コポリアミドは、アミン又はカルボン酸部分と反応することができる、一官能性分子であり、且つコポリアミドの分子量を制御するために使用される連鎖リミッターを含有し得る。例えば、連鎖リミッターは、酢酸、プロピオン酸、安息香酸及び/又はベンジルアミンであり得る。触媒も使用することができる。触媒の例は、亜リン酸、オルト-リン酸、メタ-リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどのアルカリ金属ハイポホスファイト及びフェニルホスフィン酸である。また、ホスフィットなどの安定剤も使用することができる。
【0062】
また、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、無溶媒プロセスによって、すなわち、溶媒の非存在下で、溶融体として行われる方法によって調製することができる。縮合が無溶媒である場合、反応は、モノマーに対して不活性な材料製の装置の中で行うことができる。この場合、モノマーを十分に接触させ、揮発性反応生成物の除去が実行可能であるように装置が選択される。適した装置は、撹拌機付き反応器、押出機及びニーダーを含む。
【0063】
本明細書で説明されるポリアミドは、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として30重量%超、35重量%超、40重量%超又は45重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0064】
ポリアミドは、ポリマー組成物(C)の総重量に基づいて、99.95重量%未満、99重量%未満、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満若しくは60重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0065】
ポリアミドは、例えば、ポリアミド組成物(C)の総重量を基準として35~60重量%、例えば40~55重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0066】
組成物(C)は、補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1種の成分も含み得る。
【0067】
幅広い選択肢の補強剤(補強繊維又は充填剤とも呼ばれる)が本発明による組成物に添加され得る。それらは、繊維状及び粒子状の補強剤から選択することができる。繊維補強充填剤は、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の長さと最大の幅及び厚さとの間の平均比として定義されるアスペクト比を有する。
【0068】
補強充填剤は、鉱物充填剤(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維及びウォラストナイトから選択され得る。
【0069】
繊維充填剤の中ではガラス繊維が好ましい;ガラス繊維には、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのchapter5.2.3,p.43~48に記載されているようなチョップドストランドであるA-、E-、C-、D-、S-及びR-ガラス繊維が含まれる。好ましくは、充填剤は、繊維充填剤から選択される。充填剤は、より好ましくは、高温の用途に耐えられる補強繊維である。
【0070】
補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として15重量%超、20重量%超、25重量%超又は30重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満又は50重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0071】
補強充填剤は、例えば、ポリアミド組成物(C)の総重量を基準として20~60重量%、例えば30~50重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0072】
本発明の組成物(C)は、強化剤も含み得る。強化剤は、一般に、低いガラス転移温度(T)のポリマーであり、例えば室温未満、0℃未満、更に-25℃未満のTを有する。その低いTの結果として、強化剤は、典型的には室温でエラストマー性である。強化剤は、官能化されたポリマー主鎖であり得る。
【0073】
強化剤のポリマー主鎖は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン-ブテン;エチレン-オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレン-ゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-ビニルアセテート(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー又は上記の1種以上の混合物を含むエラストマー主鎖から選択することができる。
【0074】
強化剤が官能化されている場合、主鎖の官能化は、官能化を含むモノマーの共重合又は更なる成分でのポリマー主鎖のグラフト化によって起こり得る。
【0075】
官能化された強化剤の具体的な例は、とりわけ、エチレンと、アクリル酸エステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとブチルエステルアクリレートとのコポリマー;エチレンと、ブチルエステルアクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン-アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーである。
【0076】
強化剤は、組成物(C)の総重量を基準として1重量%超、2重量%超又は3重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。強化剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満又は10重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0077】
組成物(C)は、可塑剤、着色剤、顔料(例えば、カーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば、線状低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤など、当技術分野で一般に使用されている他の従来の添加剤も含み得る。
【0078】
組成物(C)は、1種以上の他のポリマー、好ましくは本発明のポリアミド(PA)と異なるポリアミドも含み得る。とりわけ、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド及びより一般的には芳香族若しくは脂肪族飽和二酸と脂肪族飽和若しくは芳香族第一級ジアミン、ラクタム、アミノ酸又はこれらの異なるモノマーの混合物との間の重縮合によって得られるポリアミドなど、半結晶性又は非晶性ポリアミドを挙げることができる。
【0079】
一実施形態によれば、ポリアミド組成物(C)は:
- ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき、2.4GHzで3.0未満、好ましくは2.9未満、好ましくは2.8未満の誘電率(Dk)、及び/又は
- ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるとき、2.4MHzで0.010未満、好ましくは0.009未満、好ましくは0.0089未満の誘電正接(Df)を有する。
【0080】
ポリアミド組成物(C)の調製
また、本明細書で説明されるのは、上で詳述されたような組成物(C)を製造する方法であって、ポリアミド(PA)と、特定の成分、例えば充填剤、強化剤、安定化剤及び任意の他の任意選択の添加剤とを溶融ブレンドする工程を含む方法である。
【0081】
任意の溶融ブレンドする方法は、本発明との関連ではポリマー成分と非ポリマー成分とを混合するために使用することができる。例えば、ポリマー成分及び非ポリマー成分は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリューニーダー又はバンバリーミキサー等の溶融ミキサーへ供給することができ、添加するステップは、全ての成分の同時添加又はバッチ式の段階的添加であり得る。ポリマー成分及び非ポリマー成分がバッチ式で徐々に添加される場合、ポリマー成分及び/又は非ポリマー成分の一部がまず添加され、次に、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分及び非ポリマー成分と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、延伸押出成形を用いて補強された組成物を調製することができる。
【0082】
本発明は、本明細書で説明されるポリアミド(PA)を含む物品に関する。
【0083】
本物品は、モバイルエレクトロニクスにおいて使用される。本物品は、例えば、携帯用電子デバイス構成部品であり得る。本明細書で用いる場合、「携帯用電子デバイス」は、様々な場所で便利に運ばれ且つ使用されることを意図される電子デバイスを意味する。携帯用電子デバイスには、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(「PDA」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートグラス等)、カメラ、ポータブルオーディオプレーヤー、ポータブルラジオ、全地球測位システム受信機及びポータブルゲームコンソールが含まれ得るが、それらに限定されない。
【0084】
携帯用電子デバイス構成部品は、例えば、無線アンテナ及び組成物(C)を含み得る。この場合、無線アンテナは、WiFiアンテナ又はRFIDアンテナであり得る。また、携帯用電子デバイス構成部品はアンテナハウジングであり得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、携帯用電子デバイス構成部品は、アンテナハウジングである。いくつかのそのような実施形態では、無線アンテナの少なくとも一部分は、ポリアミド組成物(C)上に配置される。更に又は代わりに、無線アンテナの少なくとも一部をポリアミド組成物(C)からずらすことができる。いくつかの実施形態において、デバイス構成部品は、取付け穴又は他の締結デバイス(それ自体と、回路基板、マイクロホン、スピーカー、ディスプレイ、バッテリー、カバー、ハウジング、電気若しくは電子コネクタ、ヒンジ、無線アンテナ、スイッチ又はスイッチパッドを含むが、それらに限定されない、携帯用電子デバイスの別の構成部品との間のスナップフィットコネクタを含むが、それらに限定されない)を有する取付け構成部品のものであり得る。いくつかの実施形態では、携帯用電子デバイスは、入力デバイスの少なくとも一部であることができる。
【0086】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0087】
これらの実施例は、いくつかの本発明の又は比較用ポリアミドの熱的性能、誘電性能及び機械的性能を実証する。
原材料
PXD:Aldrichから得られるp-キシリレンジアミン
MXD:Aldrichから得られるm-キシリレンジアミン
HMD:Aldrichからのヘキサメチレンジアミン
C6:Aldrichから得られる1,6-ヘキサンジアミン
C18:Elevanceから得られる1,18-オクタデカン二酸、Inherent(商標)C18
【0088】
ポリアミド調製
以下に例示される全てのポリアミドは、アジテーターと、圧力調整バルブを装着した蒸留ラインと、を備えた電気加熱式反応器の中で同様のプロセスに従って調製した。実施例1は、300mlのParr反応器内のガラススリーブ内で50gスケールで製造された。反応器に16.84g(121mmol)のPXD、37.92g(121mmol)のC18、23gの水及び39.7mgの亜燐酸(0.48mmol)を入れた。反応器を240℃の温度に100psigの圧力で加熱した。圧力は100psigで蒸留によって制御され、温度は50分間にわたって280℃に上昇された。温度を287℃に上昇させながら圧力を25分間にわたって大気圧に低下させた。大気圧を10分間維持し、その後に、15分間窒素スイープを実施した。生成物を撹拌機に付着したクリーム色がかった黄色のプラグとして、冷却された反応器から取り出した。
【0089】
試験
熱転移(Tg、Tm)
様々なポリアミドのガラス転移温度及び溶融温度は、20℃/分の加熱及び冷却速度を用いてASTM D3418に従って示差走査熱量分析を使用して測定した。3つの走査:340℃までの第1加熱、続いて30℃への第1冷却、続いて350℃までの第2加熱を各DSC試験について使用した。Tg及びTmは、第2加熱から測定した。ガラス転移温度及び溶融温度を下の表1に一覧にする。
【0090】
【0091】
圧縮成形
本発明の2インチ×1/8インチのディスク及び比較用ディスクの圧縮成形を以下の表2に記載された条件に従ってCarver 8393実験室用プレスを使用して、乾燥された粒状ポリマーで実施した。
【0092】
【0093】
誘電性能
誘電率ε及び誘電正接DfをASTM D2520に従って測定した。「成形したままの乾燥(dry-as-molded)」圧縮成形ディスクから粉砕された試料で測定を実施し、各場合において、0.08インチ×0.20インチ×1.0インチの寸法の四角柱形をもたらす。
【0094】
【0095】
機械的特性
乾燥された、粒状ポリマーをDSMXplore(登録商標)Microcompounder及びミニ射出システムで加工した。押出機バレル温度を310℃に設定し、溶融温度を290℃に維持した。溶融体を100rpmで2分間混合し、次に、290℃に維持される移送ワンド内に押出し、型を充填するために使用した。型温度を80℃に設定した。タイプV引張試験片を0.05インチ/分の試験速度でASTM D638に従って試験した。興味深いことに、実施例1からのポリアミドは、比較例2及び4よりも高い弾性率及び強度を示す。
【0096】