(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】湿気硬化性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/10 20060101AFI20240510BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240510BHJP
C08L 23/28 20060101ALI20240510BHJP
C09J 201/10 20060101ALI20240510BHJP
C09J 171/02 20060101ALI20240510BHJP
C09J 123/28 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C08L101/10
C08L71/02
C08L23/28
C09J201/10
C09J171/02
C09J123/28
(21)【出願番号】P 2021551516
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 US2020020416
(87)【国際公開番号】W WO2020176861
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-20
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518156602
【氏名又は名称】カネカ アメリカズ ホールディング,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】サザーランド,ケン
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2007/142067(JP,A1)
【文献】国際公開第2012/117902(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/073334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーを有する成分(A)であって、
この有機ポリマーは、23℃で20,000cPより大きい粘度を有し、この反応性ケイ素基は、以下の一般式(1)により表され、
-Si(R
1
3~a)X
a (1)
式中、
R
1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、
Xは、加水分解性基を表し、2個以上のXが存在する場合は、各Xは同じかまたは異なり、
aは、1~3の整数であり、
aが1である場合は、各R
1は、同じでもまたは異なってもよく、
aが2または3である場合は、各Xは、同じでもまたは異なってもよい、成分(A)と、
反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーを有する成分(B)であって、この有機ポリマーは、23℃で10,000cP未満の粘度を有し、この反応性ケイ素基は、以下の一般式(2)により表され、
-Si(R
2
3~b)X
b (2)
式中、
R
2は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、
Xは、ヒドロキシル基または加水分解性基を表し、2個以上のXが存在する場合は、各Xは同じかまたは異なり、
bは、1~3の整数であり、
bが1である場合は、各R
2は、同じでもまたは異なってもよく、
bが2または3である場合は、各Xは、同じでもまたは異なってもよい、成分(B)と、
ポリオレフィンポリマーを有する成分(C)と
を含
み、
前記成分(A)が、硬化性組成物の総重量に基づいて10~70重量%の量で存在し、
前記成分(B)が、硬化性組成物の総重量に基づいて1~50重量%の量で存在し、
前記成分(C)が、硬化性組成物の総重量に基づいて0.5~10重量%の量で存在する、硬化性組成物。
【請求項2】
前記成分(B)の有機ポリマーが、23℃で5,000cP未満の粘度を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記成分(A)の有機ポリマーが、ポリオキシプロピレンの主鎖を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記成分(B)の有機ポリマーが、ポリオキシプロピレンの主鎖を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記成分(A)の有機ポリマーが、以下の一般式(3)により表される基を含み、
-NR
3C(=O)- (3)
式中、R
3は、水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表す、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記成分(B)の有機ポリマーが、以下の一般式(4)により表される基を含み、
-NR
4C(=O)- (4)
式中、R
4は、水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表す、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記成分(C)が、塩素化ポリオレフィンポリマーを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記成分(C)が、アクリル酸部分、マレイン酸および/または無水マレイン酸で変性されたポリマーを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記成分(C)が、前記ポリオレフィンポリマーを分散させる溶剤または可塑剤を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
添加剤をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記添加剤が、充填剤、接着促進剤、脱水剤、可塑剤、垂れ防止剤、安定剤、硬化触媒、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項
10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
硬化性組成物を塗布する方法であって、
請求項1に記載の硬化性組成物を基材に塗布することを含む、方法。
【請求項13】
前記基材が、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、および熱可塑性ポリオレフィン(TPO)からなる群から選択される、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記基材が、スムースバック基材である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記硬化性組成物の塗布の前に、プライマーを前記基材に塗布することをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項16】
基材;および
前記基材上にある、請求項1に記載の硬化性組成物
を含む、
製品。
【請求項17】
前記基材が、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、および熱可塑性ポリオレフィン(TPO)からなる群から選択される、請求項
16に記載の
製品。
【請求項18】
前記基材が、スムースバック基材である、請求項
17に記載の
製品。
【請求項19】
前記硬化性組成物に粘着付与剤が含まれていない、請求項1に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月28日に出願された米国仮特許出願第62/811,640号の優先権を主張し、その開示は本明細書の記載の一部をなすものとする。
【0002】
本発明は、反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーを含む湿気硬化性接着剤組成物に関する。本発明は、詳細には、ポリ塩化ビニル(以下、「PVC」と定義する)、エチレンプロピレンジエンゴム(以下、「EPDM」と定義する)、熱可塑性ポリオレフィン(以下、「TPO」という)および同様のものなどの接着抵抗性基材に対して万能の接着性を有する湿気硬化性接着剤組成物ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
近年では、反応性ケイ素基含有有機ポリマーへの熱可塑性エラストマーの添加により、EPDMなどの接着抵抗性基材に対する接着性を改善するための研究がなされてきた(例えば、株式会社カネカおよびカネカ テキサス コーポレーションの特許第4485246号公報)。
【0004】
株式会社カネカの米国特許第7759425号は、粘着付与剤および塩素化ポリオレフィンの反応性ケイ素基含有有機ポリマーへの組込みを通してTPOに対する接着を改善する湿気硬化性配合物を記載している。
【0005】
Chemlink,Inc.の米国特許第7767308号は、ゴム材料との結合のための、反応性ケイ素基含有有機ポリマー、フェノール系粘着付与剤、およびシラン接着促進剤の使用を記載している。
【0006】
残念ながら、これらの配合物は、EPDM、PVC、およびTPOを含む異なる基材にわたる万能で良好な接着をもたらすことができない。これらの基材のスムースバック(smooth-back)型に対する接着を達成することは、そのフリースバック(fleece-back)型と比較して特に困難であり、接着を改善するために付加的な表面処理を含む。溶剤ベースの接着剤は、これらの難接着性のプラスチック基材に対して優れた接着性能を有する、市場で依然として広く使用されている製品である。しかしながら、溶剤ベース系は、2種の基材が互いに結合する前に、溶剤を蒸発させることが必要である。これは空気の質に影響を与え、建築予定が延長される。したがって、製造中に作業者に対する安全および健康への懸念が生じ、居住中の建造物の場合、通常の建築物運用が、有害臭のために停止されなければならない。溶剤ベース系はまた、重大な環境負荷または火災危険に至る場合もある。無溶剤かまたは低量の溶剤を含有するかのいずれかであるが、基材のスムースバック変形体およびフリースバックの変形体の両方において、EPDM、PVC、TPO、および同様のものなどの基材に万能で良好な接着特性を依然として提供し得る接着剤配合物を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
湿気硬化性組成物が本明細書に開示される。一部の実施形態では、この湿気硬化性組成物は、
23℃で20,000cPより大きい粘度を有する有機ポリマーの成分(A)であって、この有機ポリマーは以下の一般式(1)で表される反応性ケイ素基を含有し、
-Si(R1
3~a)Xa (1)
式中、
R1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、
Xは、加水分解性基を表し、2個以上のXが存在する場合は、各Xは同じでもまたは異なってもよく、
aは、1、2または3を表し、
ただし、aが1である場合は、各R1は、同じでもまたは異なってもよく、
ただし、aが2または3である場合は、各Xは、同じでもまたは異なってもよい、成分(A)と、
23℃で10,000cP未満の粘度を有する有機ポリマーの成分(B)であって、この有機ポリマーは以下の一般式(2)で表される反応性ケイ素基を含有し、
-Si(R2
3~b)Xb (2)
式中、
R2は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、
Xは、加水分解性基を表し、2個以上のXが存在する場合は、各Xは同じでもまたは異なってもよく、
bは、1、2または3を表し、
ただし、bが1である場合は、各R2は、同じでもまたは異なってもよく、
ただし、bが2または3である場合は、各Xは、同じでもまたは異なってもよい、成分(B)と、
ポリオレフィンポリマーを含む成分(C)と
を含む。
【0008】
一部の実施形態では、一般式(1)および一般式(2)におけるXは、-ORにより表され、式中、Rは、1~2個の炭素原子を有するアルキルである。
【0009】
一部の実施形態では、成分(A)および/または成分(B)の有機ポリマーは、ポリオキシプロピレンの主鎖を有し得る。
【0010】
一部の実施形態では、成分(A)および/または成分(B)の有機ポリマーは、以下の一般式(3)により表される基を含んでもよく、
-NR3C(=O)- (3)
式中、R3は、水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表す。
【0011】
一部の実施形態では、成分(C)のポリオレフィンポリマーは、塩素化ポリオレフィンポリマーであり得る。
【0012】
一部の実施形態では、成分(C)のポリオレフィンポリマーは、アクリル酸部分、マレイン酸および/または無水マレイン酸で変性されたポリマーであり得る。
【0013】
一部の実施形態では、成分(C)は、溶剤または可塑剤を含んでもよい。
【0014】
一部の実施形態では、湿気硬化性組成物は、
以下の一般式(1)により表される反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーの成分(A)であって、
-Si(R1
3~a)Xa (1)
式中、
R1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、
Xは、加水分解性基を表し、2個以上のXが存在する場合は、各Xは同じでもまたは異なってもよく、
aは、1、2または3を表し、
ただし、aが1である場合は、各R1は、同じでもまたは異なってもよく、
ただし、aが2または3である場合は、各Xは、同じでもまたは異なってもよい、成分(A)と、
23℃で5,000cP未満の粘度を有する有機ポリマーの成分(B)であって、この有機ポリマーは以下の一般式(2)により表される反応性ケイ素基を含有し、
-Si(R2
3~b)Xb (2)
式中、
R2は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、
Xは、加水分解性基を表し、2個以上のXが存在する場合は、各Xは同じでもまたは異なってもよく、
bは、1、2または3を表し、
ただし、bが1である場合は、各R2は、同じでもまたは異なってもよく、
ただし、bが2または3である場合は、各Xは、同じでもまたは異なってもよい、成分(B)と、
ポリオレフィンポリマーを含む成分(C)と
を含む。
【0015】
一部の実施形態では、一般式(1)および一般式(2)におけるXは-ORにより表され、式中、Rは、1~2個の炭素原子を有するアルキルである。一部の実施形態では、成分(A)および/または成分(B)の有機ポリマーは、ポリオキシプロピレンの主鎖を有し得る。
【0016】
一部の実施形態では、成分(A)および/または成分(B)の有機ポリマーは、以下の一般式(3)により表される基を含んでもよく、
-NR3C(=O)- (3)
式中、R3は、水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表す。
【0017】
一部の実施形態では、成分(C)のポリオレフィンポリマーは、塩素化ポリオレフィンポリマーであり得る。
【0018】
一部の実施形態では、成分(C)のポリオレフィンポリマーは、アクリル酸部分、マレイン酸および/または無水マレイン酸で変性されたポリマーであり得る。
【0019】
一部の実施形態では、成分(C)は、溶剤または可塑剤を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的は、EPDM、PVC、およびTPOを含むなどの接着抵抗性表面を含むあらゆる表面に、これらの基材のスムースバック変形体およびフリースバック変形体のいずれかにプライマーを使用することなく、優れた接着性をもたらす湿気硬化性接着剤組成物を提供することである。例示的なEPDM基材には、Carlisle Sure-Seal(登録商標)EPDM、Carlisle Sure-White(登録商標)EPDM、Johns Manville EPDM NR/R、Firestone RubberGard(商標)EPDM、Firestone Ecowhite(商標)EPDM、および/またはFirestone Fullforce(商標)EPDMが含まれ得る。例示的なPVC基材には、GAF EverGuard(登録商標)PVC、GAF EverGuard(登録商標)PVC XK、Carlisle Sure-Flex(登録商標)PVC、Carlisle Sure-Flex(登録商標)KEE HP、Johns Manville PVC SD Plus、KEEを含むJohns Manville PVC、および/またはSika Sarnafil PVCが含まれ得る。例示的なTPO基材には、Firestone UltraPly(商標)TPO、Firestone UltraPly(商標)TPO XR、Firestone UltraPly(商標)TPO Flex Adhered、Firestone Platinum TPO、GAF EverGuard(登録商標)TPO、GAF EverGuard Extreme(登録商標)TPO、GAF EverGuard(登録商標)TPO Ultra、および/またはCarlisle Sure-Weld TPOが含まれ得る。
【0021】
湿気硬化性組成物は、以下の一般式(1)により表される反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーを含む成分(A)を含み、
-Si(R1
3~a)Xa (1)
式中、R1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、Xは、加水分解性基を表し、aは、1~3の整数であり、ただし、aが1である場合は、各R1は、同じでもまたは異なってもよく、ただし、aが2または3である場合は、各Xは、同じでもまたは異なってもよい。
【0022】
一部の実施形態では、Xは-ORを表し、式中、Rは1~2個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0023】
一部の実施形態では、成分(A)の有機ポリマーは、23℃で20,000cPより大きい粘度を有する。
【0024】
硬化性組成物は、23℃で10,000cP未満の粘度を有する有機ポリマーを有する成分(B)を含み、この有機ポリマーは一般式(2)により表される反応性ケイ素基を含有し、
-Si(R2
3~b)Xb (2)
式中、R2は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、Xは、加水分解性基を表し、bは、1~3の整数を表し、ただし、bが1である場合は、各R2は、同じでもまたは異なってもよく、かつbが2または3である場合は、各Xは、同じでもまたは異なってもよい。
【0025】
一部の実施形態では、Xは-ORを表し、式中、Rは1~2個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0026】
一部の実施形態では、成分(B)の有機ポリマーは、23℃で5,000cP未満の粘度を有する。
【0027】
硬化性組成物は、ポリオレフィンポリマーを有する成分(C)を含む。
【0028】
一般式(1)および一般式(2)におけるXが加水分解性基である場合、Xが公知の加水分解性基である限り、Xは特に限定されない。それらの特定の例には、水素およびハロゲン原子;ならびにアルコキシ、アシルオキシ、ケトキシメート、アミノ、アミド、酸アミド、アミノオキシ、メルカプト、およびアルケニルオキシ基が含まれる。これらのうち、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシ基などのアルコキシ基は、それらの加水分解性が穏やかであり、化合物を容易に扱うことが可能となるため、特に好ましい。
【0029】
一般式(1)におけるR1および一般式(2)におけるR2は特に限定されず、いずれも、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基であり得る。それらの特定の例には、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、ならびにベンジル基などのアラルキル基が含まれる。これらの基のうち、出発物質の利用能の観点から、メチル基が特に好ましい。
【0030】
一般式(1)または一般式(2)により表される反応性ケイ素基の特定の構造は、その構造が公知である限り、特に限定されない。特に好ましいものは、それらの反応性および利用能の観点から、トリメトキシシリル、メチルジメトキシシリル、トリエトキシシリル、およびメチルジエトキシシリル基である。
【0031】
1種、または2種以上の反応性ケイ素基が、化学式(1)および化学式(2)のそれぞれと組み合わせて使用されてもよい。
【0032】
成分(A)および/または成分(B)のポリオキシアルキレンポリマー主鎖への、反応性ケイ素基の導入は、公知の方法により実施される。それらの例には、以下の方法が含まれる。
【0033】
(i)ヒドロキシ基などの官能基を有するポリオキシアルキレンポリマーと、該官能基との反応性を示す活性基を有し、かつ不飽和基を有する有機化合物とを反応させ、それにより、不飽和基を有するポリオキシアルキレンポリマーを得る。あるいは、例えば、エポキシドに開環重合を施して、ポリオキシアルキレンポリマーを得る場合、不飽和基含有のエポキシドがこれと開環共重合され、不飽和基含有のポリオキシアルキレンポリマーを得る。そのようにして、任意の重合反応に関係しない不飽和基を有するモノマーが共重合され、それにより不飽和基含有の有機ポリマーを得る。次に、反応性ケイ素基を有するヒドロシランと、得られた反応生成物(reaction production)とを反応させ、それにより反応生成物をヒドロシリル化する。
【0034】
方法(i)では、反応性ケイ素基を高導入率で導入するために、CH2=C(R4)-CH2-またはCH(R4)=CH-CH2-により表される不飽和基を含有する有機ポリマーに、ヒドロシラン化合物を添加し、それにより導入を達成することが好ましい。式中、R4は、水素または1~10個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。R4は、水素またはメチル基であることがより好ましい。反応性ケイ素基の導入率を85%以上に設定するために、R4はメチル基であることが特に重要である。
【0035】
方法(i)で使用されるヒドロシラン化合物の特定の例には、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、およびフェニルジクロロシランなどのハロゲン化シラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、およびフェニルジメトキシシランなどのアルコキシシラン;メチルジアセトキシシラン、およびフェニルジアセトキシシランなどのアシルオキシシラン;ならびにビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、およびビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランなどのケトキシメートシランが含まれる。しかしながら、ヒドロシラン化合物はこれらに限定されない。これらの化合物のうち、ハロゲン化シランおよびアルコキシシランが特に好ましく、それから得られた組成物の加水分解性が穏やかであり、その結果、組成物を容易に扱えるため、アルコキシシランが最も好ましい。
【0036】
(ii)メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物と、方法(i)と同じ手法で得られた不飽和基含有ポリオキシアルキレンポリマーとを反応させる。
【0037】
合成方法(ii)は、例えば、ラジカル開始剤および/またはラジカル生成源の存在下でラジカル付加反応により、有機ポリマーの不飽和結合部分に、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を導入する方法である。しかしながら、方法は、特に限定されない。メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物の特定の例には、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、およびγ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
(iii)ヒドロキシル基、エポキシ基、またはイソシアネート基などの官能基を有するポリオキシアルキレンポリマーと、前述の官能基に対する反応性を有する官能基を有し、かつ反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる。化合物の官能基は、限定されないが、イソシアネート基またはアミノ基が好ましい。イソシアネート基が特に好ましい。
【0039】
合成方法(iii)に関する個々の選択のうち、その末端にヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレンポリマーと、イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法は、例えば、特開平3-47825号に記載される方法である。しかしながら、方法は、特に限定されない。イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物の特定の例には、γ-イソシアナトプロピル-トリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピル-メチルジメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピル-トリエトキシシラン、γ-イソシアナトプロピル-メチルジエトキシシラン、α-イソシアナトメチル-ジメトキシメチルシラン、およびα-イソシアナトメチル-トリメトキシシランが含まれる。しかしながら、化合物はこれらに限定されない。
【0040】
上述の方法のうち、方法(ii)により得られるポリマーはメルカプトシランに基づく強い臭いを発するため、方法(i)または(iii)が好ましい。反応性ケイ素基を導入する方法と関連して、方法(i)により得られる有機ポリマーは、反応性ケイ素基を有し、ポリマーが低粘度および良好な実用可能性を有する組成物となるため、方法(iii)により得られるポリマーより好ましい。一方、ヒドロキシル基含有ポリマーへのシリル基の導入が1ステップのみで達成することができ、その結果、成分(A)および成分(B)を良好な生産性で製造することができるため、方法(iii)は好ましい。
【0041】
方法(iii)に関する個々の選択のうち、その末端にヒドロキシル基を有するポリオキシアルキレンポリマーと、イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法は、相対的に短い反応時間で高変換率が得られるため好ましい。そのような反応により得られるオキシアルキレンポリマーは、反応性ケイ素基および以下の一般式(3)により表される基を有するポリマーであり、
-NR3-C(=O)- (3)
式中、R3は、水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表す。
【0042】
一般式(1)により表される基を有する成分(A)および一般式(2)により表される基を有する成分(B)はまた、上述の方法以外の方法によっても得ることができる。詳細には、ポリオールと、例えば、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、またはイソホロンジイソシアネートもしくはヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との鎖伸長反応により得られる化合物は、反応性ケイ素基を導入する方法にかかわらず、一般式(3)の基を有する化合物である。
【0043】
成分(A)は、直鎖または分岐であってもよく、その数平均分子量は好ましくは3,000以上であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づき、ポリスチレン換算により現実的には100,000以下である。数平均分子量は、より好ましくは10,000以上~50,000以下である。分子量は、送液系としてのHLC-8120GPC(TOSOH CORPORATION)、TSK-GEL H型カラム(TOSOH CORPORATION)、およびTHF溶剤を使用して測定する。
【0044】
成分(B)は、直鎖または分岐であってもよく、その数平均分子量は好ましくは500以上であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づき、ポリスチレン換算により現実的には15,000以下である。数平均分子量は、より好ましくは1,000以上~10,000以下である。分子量は、送液系としてのHLC-8120GPC(TOSOH CORPORATION)、TSK-GEL H型カラム(TOSOH CORPORATION)、およびTHF溶剤を使用して測定する。
【0045】
成分(A)および成分(B)の反応性ケイ素基は、ポリオキシアルキレンポリマーの末端に、もしくはその末端間のポリマー鎖に沿って結合されてもよく、または複数の反応性ケイ素基は、その両方の末端に、かつその末端間のポリマー鎖に沿って結合されてもよい。詳細には、反応性ケイ素基が末端のみに結合する場合、組成物に含有されるポリマー成分のネットワークが効果的に構築される。したがって、強度および伸度が高いゴム状硬化生成物が容易に得られるため、この事例が好ましい。
【0046】
成分(A)および成分(B)における反応性ケイ素基の導入率を測定する方法として、さまざまな方法を使用することができる。該導入率は、その1H-NMRスペクトルに基づいて、反応性ケイ素基が導入された末端の積分値から算出することができる。反応性ケイ素基の導入率は、分子中に存在する反応性ケイ素基の数を、分子の末端の数で除することにより得られる値を百分率で表すことにより得られる数値である。詳細には、その単一ポリマー鎖中に平均して2個の反応性ケイ素基を有する直鎖ポリマー(すなわち、2つの末端を有するポリマー)の場合には、100%の導入率が算出される。この理由から、ポリマー鎖の末端以外の部分に多くの反応性ケイ素基が存在するポリマーについては、導入率の算出値は100%を超える場合がある。本発明では、反応性ケイ素基を両方の末端のみに有する直鎖ポリマーが、好ましくは使用され得る。通例、85%未満の導入率のポリマーが使用される。反応性ケイ素基をその両方の末端のみに有する直鎖ポリオキシアルキレンポリマーは、以下のように調製することができる。
【0047】
(a)直鎖ポリオキシアルキレンポリマーの末端のみに存在するヒドロキシル基を、-OM基(式中、MはNaまたはKである)に変換する。得られたポリマーと、式CH2=C(R4)-CH2-Z(式中、R4は上に定義したものと同じであり、Zはハロゲン原子である)により表される有機ハロゲン化合物とを反応させて、不飽和基をその末端のみに有するポリオキシアルキレンポリマーを得る。式H-Si(R1
3~a)Xa(式中、R1、X、およびaは上に定義したものと同じである)により表されるヒドロシラン化合物を添加し、不飽和基をその末端のみに有するポリオキシアルキレンポリマーと反応させて、反応性ケイ素基をその末端のみに有する直鎖ポリオキシアルキレンポリマーを得る。
【0048】
(b)ヒドロキシル基をその末端のみに有する直鎖ポリオキシアルキレンポリマーと、イソシアネート基および式-Si(R1
3~a)Xa(式中、R1、X、およびaは上に定義したものと同じである)により表される基を有する化合物とを反応させて、反応性ケイ素基をその末端のみに有する直鎖ポリオキシアルキレンポリマーを得る。
【0049】
成分(A)の単一ポリマー鎖中の反応性ケイ素基の数は、好ましくは平均して1以上であり、好ましくは1.1~5である。
【0050】
成分(B)の単一ポリマー鎖中の反応性ケイ素基の数は、好ましくは平均して0.5以上であり、好ましくは0.8~3である。
【0051】
反応性ケイ素基を有する、成分(A)のポリオキシアルキレンポリマーの特定の例は、特公昭45-36319号公報、特公昭46-12154号公報、特開昭50-156599号公報、特開昭54-6096号公報、特開昭55-13767号公報、特開昭55-13468号公報、特開昭57-164123号公報、特公平3-2450号公報、米国特許第3632557号、同第4345053号、同第4366307号および同第4960844号、ならびに他のものに提案されている。それらの他の例は、特開昭61-197631号公報、特開昭61-215622号公報、特開昭61-215623号公報および特開昭61-218632号公報で提案されたポリオキシアルキレンポリマーである。ポリオキシアルキレンポリマーは、6,000以上の数平均分子量および1.6以下の分子量分布(Mw/Mn)を有し、かつ反応性ケイ素基を有するポリマーであり、高分子量および狭い分子量分布を有する。しかしながら、成分(a)は、特にこれらに限定されない。
【0052】
上述のポリオキシアルキレンポリマーは、それぞれ反応性ケイ素基を有し、単独でまたはそれらの2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0053】
本発明で使用される成分(C)のポリオレフィンポリマーは特に限定されず、当技術分野で公知であり得る。それらの特定の例には、エチレン、プロピレンおよびブチレンなどのポリオレフィンホモポリマー、ならびにそれらのコポリマー;エチレン-プロピレン-ジエンベースのゴム(EPDM)およびそれらの変性生成物;塩素化ポリエチレンおよび塩素化ポリプロピレン、それらのコポリマーなどの塩素化ポリオレフィン、ならびにアクリル酸部分、マレイン酸および/または無水マレイン酸で変性された塩素化ポリオレフィン;エチレン-アクリル酸コポリマー、およびイソブチレン-無水マレイン酸コポリマーなどのオレフィンおよびカルボン酸モノマーから作製されたコポリマーが含まれる。ポリオレフィンポリマーは、溶剤または可塑剤中に分散され得る。溶剤または可塑剤中に分散されたポリオレフィンポリマーの特定の例には、AdvaBond(登録商標)8203、AdvaBond(登録商標)8232、AdvaBond(登録商標)8214、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
本発明による湿気硬化性接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に基づいて、1~100重量%、および好ましくは10~70重量%の成分(A)と、接着剤組成物の総重量に基づいて、1~100重量%、および好ましくは1~50重量%の成分(B)と、接着剤組成物の総重量に基づいて、0.1~20重量%、および好ましくは0.5~10重量%の成分(C)とを含む。驚くべきことに、これらの組成物は、プライマーを使用しない場合でさえ、EPDM、PVCおよびTPOを含む異なる基材にわたり、万能で良好な接着を達成することが可能である。これらの組成物は、揮発性有機化合物(VOC)を無含有または低量の揮発性有機化合物を含有して配合されてもよく、それらは重大な環境負荷、健康上のリスクまたは火災危険をもたらさない。接着剤組成物に使用される成分は、室温で自由流動性の液体であり、接着剤製造プロセス中の加工を容易にする。
【0055】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーを含む成分(A)を含む。成分(A)の有機ポリマーは市販されており、および/または当技術分野で公知の技術に従って調製することができる。反応性ケイ素基を含有するこれらのポリマーの例には、シリル末端のポリエーテルおよびシラン末端のポリウレタンが含まれるが、これらに限定されない。成分(A)用の反応性ケイ素基を含有する市販のポリマーのより特定の例には、KANEKA MS ポリマー(登録商標)S327、KANEKA MS ポリマー(登録商標)S227、KANEKA SILYL(登録商標)SAX220、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、23℃で10,000cP未満、および一部の実施形態では、23℃で5,000cP未満の粘度を有する、反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーを有する成分(B)を含む。反応性ケイ素基を含有する低粘度の市販のポリマーの例には、KANEKA SILYL(登録商標)SAT145、KANEKA SILYL(登録商標)SAT115、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明の湿気硬化性接着剤組成物は、充填剤、接着促進剤、脱水剤、可塑剤、垂れ防止剤(チキソトロープ剤)、安定剤、および硬化触媒などのさまざまな他の添加剤を任意選択で含有してもよい。
【0058】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、さまざまな充填剤を含有してもよい。充填剤の例には、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、結晶性シリカ、およびカーボンブラックなどの補強充填剤;重質炭酸カルシウム、コロイド状炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、焼成粘土、粘土、タルク、酸化チタン、およびベントナイトなどの充填剤;ならびにガラス繊維およびフィラメントなどの繊維充填剤が含まれる。
【0059】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、保存安定性を改善するために脱水剤を含んでもよい。脱水剤は、n-プロピルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、またはビニルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物であってもよいが、限定される必要はない。
【0060】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、接着促進剤を含む。接着促進剤は、シランカップリング剤、シランカップリング剤の反応生成物、またはシランカップリング剤以外の化合物から選択されてもよい。シランカップリング剤の特定の例には、イソシアネート基含有のシラン;アミノ基含有のシラン、メルカプト基含有のシラン;エポキシ基含有のシラン;ビニル性不飽和基含有のシラン;およびハロゲン含有のシランが含まれるが、これらに限定されない。他のシランカップリング剤には、アミノ変性シリルポリマー、不飽和アミノシラン複合体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、およびシリル化ポリエステルなどの、前述の化合物を変性することにより得られる誘導体が含まれる。
【0061】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、硬化/縮合触媒を含む。縮合触媒は、反応性ケイ素基含有の有機ポリマーの反応性シリル基の加水分解および縮合を促進して架橋を起こすために、本発明の硬化性組成物に添加される。硬化触媒の例には、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラプロピル、およびテトラアセチルアセトン酸チタンなどのチタン化合物;ジラウリン酸ジブチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、フタル酸ジブチルスズ、ジブチルスズジオクテート、ジエチルヘキサン酸ジブチルスズ、ジメチルマレイン酸ジブチルスズ、ジエチルマレイン酸ジブチルスズ、ジブチルマレイン酸ジブチルスズ、ジオクチルマレイン酸ジブチルスズ、ジトリデシルマレイン酸ジブチルスズ、ジベンジルマレイン酸ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、ジエチルマレイン酸ジオクチルスズ、ジオクチルマレイン酸ジオクチルスズ、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジノニルフェノキシド、ジブテニルスズオキシド、ジアセチルアセトン酸ジブチルスズ、ジエチルアセトアセトン酸ジブチルスズ、およびジブチルスズオキシドとフタル酸エステルとの反応生成物などの4価スズ化合物;オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、およびステアリン酸スズなどの2価スズ化合物;トリスアセチルアセトン酸アルミニウム、トリスエチルアセト酢酸アルミニウム、およびエチルアセト酢酸ジイソプロポキシアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;テトラアセチルアセトン酸ジルコニウムなどのジルコニウム化合物;脂肪族第1級アミン、脂肪族第2級アミン、脂肪族第3級アミン、および脂肪族不飽和アミンなどのアミン化合物;ピリジン、イミダゾール、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)などの窒素含有複素環化合物;グアニジン、フェニルグアニジン、およびジフェニルグアニジンなどのグアニジン;ならびにブチルビグアニド、1-o-トリルビグアニド、および1-フェニルビグアニドなどのビグアニド;ならびにカルボン酸金属塩、酸性触媒および塩基性触媒などの他の公知のシラノール縮合触媒が含まれるが、これらに限定されない。これらの触媒は、単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0062】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤は、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤である。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例には、BASFから入手可能なIrganox(登録商標)245、Irganox(登録商標)1010、およびIrganox(登録商標)1076ならびにこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、光安定剤を含んでもよい。光安定剤は、硬化生成物の光酸化分解を妨げることができる。光安定剤の例には、ベンゾトリアゾール化合物、ヒンダードアミン化合物、およびベンゾエート化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
一部の実施形態では、接着剤組成物は、紫外線吸収剤を含んでもよい。紫外線吸収剤は、硬化生成物の表面耐候性を増加させることができる。紫外線吸収剤の例には、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチレート化合物、置換トリル化合物、および金属キレート化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、チキソトロープ剤を含んでもよい。チキソトロープ剤の特定の例には、水添ヒマシ油、有機アミドワックス、有機ベントナイト、およびステアリン酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。これらのチキソトロープ剤は、単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0066】
一部の実施形態では、湿気硬化性接着剤組成物は、粘度を調節するために可塑剤を含んでもよい。可塑剤の特定の例には、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、およびフタル酸ジイソデシルなどのフタル酸エステル化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルなどの非フタル酸エステル化合物;脂肪族ポリカルボキシレート化合物;不飽和脂肪酸エステル化合物、アルキルスルホン酸フェニルエステル、炭化水素油およびポリエーテルポリオールなどのポリマー可塑剤が含まれるが、これらに限定されない。これらの可塑剤は、単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0067】
さまざまな他の添加剤が、硬化性組成物または硬化生成物の特性を調節するために、本発明の湿気硬化性接着剤組成物に任意選択で添加されてもよい。そのような添加剤の例には、難燃剤、硬化性改質剤、滑沢剤、顔料、および抗真菌剤が含まれる。これらの添加剤は、単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【実施例】
【0068】
本発明の硬化性組成物は、以下の実施例に基づいて記載される。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0069】
[ポリマー1の合成]
400グラムのポリプロピレングリコール(分子量8000g/mol)を、撹拌機を装備したガラス反応器に装入した。ポリプロピレングリコールを60℃に加熱した。5.86グラムのジイソシアン酸イソホロン、続いて0.16グラムのスズ触媒(Fomrez SUL-4、ジラウリン酸ジブチルスズ)を反応器に滴下添加した。溶液を95℃で2時間撹拌した。次に、9.13グラムのイソシアン酸3-(トリメトキシシリル)プロピルを反応器に添加した。溶液を95℃でさらに5時間撹拌して、トリメトキシシリル末端基を有するポリオキシプロピレンポリマーを得た。
【0070】
本明細書で実施例および比較例において使用されたさまざまなブレンドされた成分を以下に列記する。
【0071】
成分(A):メチルジメトキシシリル基を含有するポリオキシプロピレンポリマーであり、株式会社カネカから入手可能なKaneka MSポリマー(登録商標)S327およびS227、ならびにポリマー1。
【0072】
成分(B):メチルジメトキシシリル基を含有するポリオキシプロピレンポリマーであり、株式会社カネカから入手可能なKaneka SILYL(登録商標)ポリマーSAT145。
【0073】
成分(C):キシレン中の塩素化ポリプロピレン樹脂溶液である、AdvaBond(登録商標)8203、および溶剤無含有の塩素化ポリオレフィン接着促進剤である、AdvaBond(登録商標)8232、両方ともAdvanced Polymer,Inc.から入手可能。
【0074】
他の添加剤には、ロジンエステル粘着付与剤であり、Kraton Corporationから入手可能なSYLVATAC RE25;表面処理炭酸カルシウムであり、Huber Engineered Materials(Atlanta、Georgia、USA)から入手可能なHubercarb(登録商標)G2T;炭酸カルシウムであり、Huber Engineered Materialsから入手可能なHubercarb(登録商標)G8;立体的ヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、BASFから入手可能なIrganox(登録商標)245;ビニルトリメトキシシラン脱水剤であり、Evonik Industriesから入手可能なVTMO;N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン接着促進剤であり、Evonik Industriesから入手可能なDAMO-T;シラン/シロキサンアルコキシオリゴマー接着促進剤であり、Advanced Polymer,Inc.から入手可能なAPS-P35;1-(o-トリル)ビグアニドであり、AlzChem Groupから入手可能なDyhard OTB;およびジアセチルアセトン酸ジブチルスズであり、日東化成株式会社から入手可能なNeostann U220Hが含まれる。
【0075】
[比較例1~4および本発明の実施例1~6]
全ての成分を、表1に示す配合に従って秤量し、次に、ミキサーにより、脱水条件下で実質的に水を用いず、混合し、混練した。その後、混合物を防湿容器(ポリエチレンカートリッジ)に入れた。実施例1~6および比較例1~4の硬化性組成物を、このように生成した。得られた硬化性組成物の特性を、以下のように測定した。
【0076】
粘度:RV型Brookfield粘度計を使用して、各組成物の粘度を測定した(スピンドル:No.7、回転速度2および10rpm、温度:23℃)。
【0077】
表面形成時間:組成物のそれぞれを基材に塗布した後、組成物の表面を平らにした。表面を平らにした時間点は、開始時間と定義した。組成物の表面をスパチュラで触れ、混合物がスパチュラに付着しなくなるまでに必要な期間を、23℃および50%の相対湿度(「R.H.」)の条件で決定した。
【0078】
はく離接着強さ:接着強さを、T-はく離試験により決定した。大きさ1.0インチ×6.0インチの試験片を、EPDMの単層屋根膜から切り出した。それぞれの組成物をEPDM試験片に塗布して均一層を形成し、次に別のEPDM試験片を、接着剤層の上部に押し付けた。各配合物に対して3つの試験片を調製した。試験片を、23℃および50%のR.H.で28日間硬化させた。28日間の硬化後、Shimadzu引張り試験機モデルAGS-20KNXDを、ASTM D 1876に準拠してはく離速度2インチ/分で使用して、接着強さを測定し、平均はく離接着強さを記録した。同じ方法を使用して、PVCまたはTPOの屋根膜基材に対する接着強さを測定した。
【0079】
プライマーを使用する場合のT-はく離接着試験片の調製:TPO基材に関するいくつかの実施例では、AdvaBond(登録商標)8203をプライマーとして使用した。AdvaBond(登録商標)8203を固形分5%に至るまでキシレンを使用して希釈することにより、プライマー溶液を調製した。5%の固溶体をTPO基材に塗布し、ヒュームフード中で少なくとも30分間乾燥させた。それぞれの接着剤組成物を、次に、プライマーの上部に塗布し、均一層を形成し、次に別のプライマーコーティングされたTPO試験片を接着剤層の上部に押し付けた。得られたものを、23℃および50%のR.H.で28日間硬化させた。28日間の硬化後、引張り試験機を、ASTM D 1876に準拠してはく離速度2インチ/分で使用して、接着強さを測定し、平均はく離接着強さを記録した。
【0080】
以下に明示される実施例に示されるように、粘着付与剤の含有により、製造プロセス中に制約を有する接着剤組成物がもたらされる。当業者に公知のように、粘着付与剤は、室温で非常に粘性があり、粘着性のある材料である。粘着付与剤は、配合プロセス中に接着剤配合物に組み込まれ得る前に、加熱および溶融しなければならない。このため、より長いプロセス時間に至る場合がある。得られた接着剤製品は、いくつかの基材に十分な接着をもたらし得るけれども、粘着付与剤を成分として含有する接着剤を製造するプロセスは有利ではない。例えば、粘着付与剤を含む比較例1を参照されたい。
【0081】
対照的に、本発明の接着剤組成物は、低粘度、すなわち、23℃で10,000cP未満の粘度、またはより好ましくは、23℃で5,000cP未満の粘度を有するポリマーを含有する反応性ケイ素基を含む。これらのポリマーは、配合プロセス中に接着剤配合物に容易に組み込まれた。さらに、得られた接着剤組成物はまた、配合物への低粘度ポリマーの導入によって、より低い粘度を有し、得られた製品は塗布プロセス中に容易に塗布される。例えば、比較例1および2に対して実施例1を参照されたい。
【0082】
接着剤組成物への異なる接着促進剤の含有により、接着強さに著しく影響を及ぼす。本明細書では、T-はく離接着強さを測定し、接着性能を確認した。4ポンド/リニアインチ(「pli」)未満のT-はく離接着強さは、不十分と考えられる。4~5pliの間のT-はく離接着強さは、適切と考えられる。5~6pliの間のT-はく離接着強さは良好と考えられ、6pliを超えるT-はく離接着強さは、優秀と考えられる。例えば、アミノ-シランのみをベースとする接着促進剤を含む接着剤組成物は、全ての被検基材に対して4pli未満のT-はく離接着強さで制限された接着を示すことが見出された(例えば、比較例3を参照されたい)。比較として、付加的なオリゴマーシランをベースとする接着促進剤(APS-P35など)を接着促進剤成分に含む接着剤組成物は、EPDMおよびPVC基材に対して、プライマーの使用を伴わず、5pliを超えるT-はく離接着強さで良好な接着を提供したが、TPOに対しては適切な接着を提供するためには、プライマーがさらに必要とされた(例えば、比較例4を参照されたい)。変性ポリオレフィン接着促進剤(AdvaBond(登録商標)8203またはAdvaBond(登録商標)8232)を含む接着剤組成物は、EPDM、PVCおよびTPOに対して、プライマーを用いない場合でさえも良好な接着を提供することが驚いたことに見出された(実施例1~5)。
【0083】
高い可撓性を有する反応性ケイ素基を含有する好適なポリマーの選択を組み込むことにより、硬化した材料は、高い残存粘着性を示し、これは、接着性能を改善する助けともなる。
【0084】
EPDM、PVCおよびTPOに加えて、本発明の接着剤配合物は、例えば実施例1および4を参照すると、ポリプロピレンおよびKynarのフッ化ポリビニリデンコーティングなどの樹脂ベースのコーティングのような他の難接着性のプラスチック基材に対しても、良好な接着プロファイルを示した。
【0085】
【0086】
【0087】
表3および4に示されるように、実施例1~6は、一連の接着抵抗性基材にわたり、万能で良好な接着をもたらした。実施例および比較例で使用された基材は、全てスムースバック基材であった。これは、比較例1~4より顕著に良好であった。
【0088】
【0089】
【0090】
要約すると、本開示の硬化性組成物は、以下の一般式(1):-Si(R1
3~a)Xa (1)、[式中、R1は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、Xは、加水分解性基を表し、2個以上のXが存在する場合は、各Xは、同じかまたは異なり、aは、1~3の整数であり、aが1である場合は、各R1は、同じでもまたは異なってもよく、aが2または3である場合は、各Xは、同じでもまたは異なってもよい]により表される反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーを有する成分(A);反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーを有する成分(B)であって、該有機ポリマーが、23℃で10,000cP未満の粘度を有し、該反応性ケイ素基が、以下の一般式(2):-Si(R2
3~b)Xb (2)[式中、R2は、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表し、Xは、ヒドロキシル基または加水分解性基を表し、2個以上のXが存在する場合は、各Xは、同じかまたは異なり、bは、1~3の整数であり、bが1である場合は、各R2は、同じでもまたは異なってもよく、bが2または3である場合は、各Xは同じでもまたは異なってもよい]により表される、成分(B);およびポリオレフィンポリマーを有する成分(C)を含み;および/または
成分(B)の有機ポリマーは、23℃で5,000cP未満の粘度を有し;および/または
成分(A)の有機ポリマーは、23℃で20,000cPより大きい粘度を有し;および/または
成分(A)の有機ポリマーは、ポリオキシプロピレンの主鎖を含み;および/または
成分(B)の有機ポリマーは、ポリオキシプロピレンの主鎖を含み;および/または
成分(A)の有機ポリマーは、以下の一般式(3):-NR3C(=O)- (3)[式中、R3は、水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表す]により表される基を含み;および/または
成分(B)の有機ポリマーは、以下の一般式(4):-NR4C(=O)- (4)[式中、R4は、水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表す]により表される基を含み;および/または
成分(C)は、塩素化ポリオレフィンポリマーを含み;および/または
成分(C)は、アクリル酸部分、マレイン酸および/または無水マレイン酸で変性されたポリマーを含み;および/または
成分(C)は、ポリオレフィンポリマーを分散させる溶剤または可塑剤であり;および/または
請求項1に記載の硬化性組成物は、添加剤を含み;および/または
添加剤は、充填剤、接着促進剤、脱水剤、可塑剤、垂れ防止剤、安定剤、硬化触媒、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0091】
上記の硬化性組成物を塗布する方法であって、上記の硬化性組成物を基材に塗布することを含む、方法が記載され;および/または
基材は、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)からなる群から選択され;および/または
基材は、スムースバック基材であり;および/または
該方法は、硬化性組成物の塗布の前に、プライマーを基材に塗布することをさらに含む。
【0092】
基材、および上記の硬化性組成物を含む組成物;ならびに/または
基材は、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)からなる群から選択され;ならびに/または
基材は、スムースバック基材であることもまた、本明細書に記載される。
【0093】
本明細書の発明は、特定の実施形態に関連して記載されているが、これらの実施形態は、本発明の原理および適用の単に例示的なものであることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの修正を施すことができ、他の構成を考案することができることを理解されたい。