(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによって、プロセスの動的挙動の変化を監視するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
G05B23/02 T
(21)【出願番号】P 2021552813
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 CA2020050299
(87)【国際公開番号】W WO2020176992
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508322831
【氏名又は名称】ハネウェル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】フォーブズ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バックストロム、ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート、グレゴリー イー.
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-506253(JP,A)
【文献】特開2017-167663(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0082536(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
産業用プロセス制御及び自動化システム(100)で収集されたプロセスデータを取得する工程(601)と、
前記プロセスデータの2つ以上のパラメータ(405、410、415)を組み合わせることによって、又は前記プロセスデータの周波数応答を調べることによって、前記プロセスデータの次元空間を削減する工程(603)
であって、前記プロセスデータの前記次元空間は、時定数パラメータ(410)と時間遅延パラメータ(415)とを組み合わせて応答時間パラメータ(420)とすることによって削減される、工程と、
前記削減された次元空間における前記プロセスデータの変化に基づいて、プロセスの変化を判定する工程(605)と、
前記プロセスの前記判定された変化に基づいて、結果を出力する工程(607)と、
を含む、方法。
【請求項2】
方法であって、
産業用プロセス制御及び自動化システム(100)で収集されたプロセスデータを取得する工程(601)と、
時定数パラメータ(410)と時間遅延パラメータ(415)とを組み合わせて応答時間パラメータ(420)とすることによって、前記プロセスデータ
の次元空間を削減する工程(603)と、
前記削減された次元空間における前記プロセスデータの変化に基づいて、プロセスの変化を判定する工程(605)と、
前記プロセスの前記判定された変化に基づいて結果を出力する工程(607)と、を含み、
前記出力された結果は、ユーザへの警報又は警告を含み、前記警報又は警告は、前記産業用プロセス制御及び自動化システムの構成要素を再調整又は較正するように前記ユーザに指示する、方法。
【請求項3】
装置であって、
少なくとも1つの処理デバイス(502)を備え、前記処理デバイスは、
産業用プロセス制御及び自動化システム(100)で収集されたプロセスデータを取得し、
前記プロセスデータの2つ以上のパラメータ(405、410、415)を組み合わせることによって、又は前記プロセスデータの周波数応答を調べることによって、前記プロセスデータの次元空間を削減し、
前記削減された次元空間における前記プロセスデータの変化に基づいて、プロセスの変化を判定し、
前記プロセスの前記判定された変化に基づいて結果を出力する、
ように構成されて
おり、
前記プロセスデータの前記次元空間は、時定数パラメータ(410)と時間遅延パラメータ(415)とを組み合わせて応答時間パラメータ(420)とすることによって削減される、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、産業用プロセス制御及び自動化システムに関する。より具体的には、本開示は、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによって、プロセスの動的挙動の変化を監視するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用プロセス制御及び自動化システムは、多くの場合、大型で複雑な産業用プロセスを自動化するために使用される。これらの種類のシステムは通常、センサ、アクチュエータ、及びコントローラを含む。コントローラのうちのいくつかは、典型的には、センサから測定値を受信し、アクチュエータに対する制御信号を生成する。他のコントローラは、多くの場合、計画、スケジューリング、及び最適化動作などの、より高いレベルの機能を実行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
産業用プロセスで生産される製品の品質は、典型的には、プロセスの自動制御システムの良好な動作に大きく依存する。ほとんどの自動制御ループ又は多変数コントローラは、プロセスの動的挙動に合わせて調整される調整パラメータを有する。これらが正しく調整されると、コントローラは良好に動作し、プロセスは良好に制御され、製品は高品質となる。しかしながら、プロセスの動的挙動が変化した場合、制御性能の低下及びその結果としての品質低下を回避するために、コントローラを再調整する必要があり得る。
【0004】
本開示は、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによって、プロセスの動的挙動の変化を監視するためのシステム及び方法を提供する。
【0005】
第1の実施形態では、方法が、産業用プロセス制御及び自動化システムで収集されたプロセスデータを取得する工程を含む。方法はまた、プロセスデータの2つ以上のパラメータを組み合わせることによって、又はプロセスデータの周波数応答を調べることによって、プロセスデータの次元空間を削減する工程も含む。方法は更に、次元削減された空間におけるプロセスデータの変化に基づいて、プロセスの変化を判定する工程も含む。方法はまた、プロセスの判定された変化に基づいて結果を出力する工程も含む。
【0006】
第2の実施形態では、装置は、少なくとも1つの処理デバイスを含む。少なくとも1つの処理デバイスは、産業用プロセス制御及び自動化システムで収集されたプロセスデータを取得し、プロセスデータの2つ以上のパラメータを組み合わせることによって、又はプロセスデータの周波数応答を調べることによって、プロセスデータの次元空間を削減し、次元削減された空間におけるプロセスデータの変化に基づいて、プロセスの変化を判定し、プロセスの判定された変化に基づいて結果を出力するように構成されている。
【0007】
第3の実施形態では、非一時的なコンピュータ可読媒体が命令を含み、命令は、実行時に、少なくとも1つの処理デバイスに、産業用プロセス制御及び自動化システムで収集されたプロセスデータを取得させ、プロセスデータの2つ以上のパラメータを組み合わせることによって、又はプロセスデータの周波数応答を調べることによって、プロセスデータの次元空間を削減させ、次元削減された空間におけるプロセスデータの変化に基づいて、プロセスの変化を判定させ、プロセスの判定された変化に基づいて結果を出力させる。
【0008】
当業者には、以下の図、説明、及び請求項から他の技術的特徴が容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
ここでは、本開示をより完全に理解するために、添付の図面と共に以下の説明を参照する。
【0010】
【
図1】
図1は、本開示による、例示の産業用プロセス制御及び自動化システムを示す。
【0011】
【
図2】
図2は、本開示による単入力単出力システムのための日常的なプロセスデータの一例を示すグラフを図示したものである。
【0012】
【
図3】
図3は、本開示による例示的なボード線図を示す。
【0013】
【
図4】
図4は、本開示による、プロセス中のある期間にわたって周期的に作成される一次プラスデッドタイムのプロセスモデルパラメータ推定値を示すグラフを図示したものである。
【0014】
【
図5】
図5は、本開示による、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによってプロセスの動的挙動の変化を監視するための方法をサポートする例示的なデバイスを示す。
【0015】
【
図6】
図6は、本開示による、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによってプロセスの動的挙動の変化を監視するための例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下で説明する図面及び本特許文献で本発明の原則を説明するために使用される様々な実施形態は、実例としてのものであり、いかなる方法においても本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の原則が任意の種類の好適に配置されたデバイス又はシステムで実施され得ることを理解するであろう。
【0017】
図1は、本開示による、例示の産業用プロセス制御及び自動化システム100を示す。
図1に示すように、システム100は、少なくとも1つの製品又は他の材料の製造又は加工を容易にする様々な構成要素を含む。例えば、システム100は、1つ又は複数の産業用プラント内の構成要素の制御を容易にするために使用され得る。各プラントは、少なくとも1つの製品又は他の材料を製造するための1つ以上の製造設備など1つ以上の加工設備(又はその1つ以上の部分)を示す。一般に、各プラントは、1つ以上の産業用プロセスを実施してよく、個別に、又は総じてプロセスシステムと呼ばれ得る。プロセスシステムは、1つ以上の製品又は他の材料を何らかの方法で加工するように構成されている、任意のシステム又はその一部を概ね示す。
【0018】
図1では、システム100は、1つ以上のセンサ102a及び1つ以上のアクチュエータ102bを含む。センサ102a及びアクチュエータ102bは、多種多様な機能のいずれかを実行し得る、プロセスシステム内の構成要素を示す。例えば、センサ102aは、プロセスシステム内の圧力、温度、又は流速など多種多様な特性を測定し得る。また、アクチュエータ102bは、プロセスシステム内の多種多様な特性を変更し得る。センサ102aのそれぞれは、プロセスシステム内の1つ以上の特性を測定するための任意の好適な構造を含む。アクチュエータ102bのそれぞれは、プロセスシステム内の1つ以上の条件で動作する、又はこれらに影響を及ぼすための任意の好適な構造を含む。
【0019】
少なくとも1つのネットワーク104が、センサ102a及びアクチュエータ102bに結合されている。ネットワーク104は、センサ102a及びアクチュエータ102bとの相互作用を容易にする。例えば、ネットワーク104は、センサ102aからの測定データを伝送し、アクチュエータ102bに制御信号を提供し得る。ネットワーク104は、任意の好適なネットワーク又はネットワークの組み合わせを示し得る。特定の例として、ネットワーク104は、少なくとも1つのEthernetネットワーク、電気信号ネットワーク(HARTネットワークなど)、空気制御信号ネットワーク、又は任意の他の、若しくは追加の種類のネットワークを示し得る。
【0020】
システム100はまた、様々なコントローラ106を含む。コントローラ106は、1つ以上の産業用プロセスを制御するために、様々な機能を実行するようにシステム100内で使用され得る。例えば、第1のセットのコントローラ106が、1つ以上のセンサ102aからの測定値を使用して、1つ以上のアクチュエータ102bの動作を制御してもよい。第2のセットのコントローラ106が、第1のセットのコントローラによって実行される制御ロジック又は他の動作を最適化するために使用され得る。第3のセットのコントローラ106が、追加の機能を実行するために使用され得る。コントローラ106は、1つ以上のネットワーク108及び関連付けられたスイッチ、ファイアウォール、及び他の構成要素を介して通信することができる。
【0021】
各コントローラ106は、1つ以上の態様の産業用プロセスを制御するために、任意の好適な構造を含む。コントローラ106のうちの少なくともいくつかは、例えば、モデル予測制御又は他の前進予測制御を実施するコントローラなどの比例積分微分(proportional-integral-derivative、PID)コントローラ又は多変数コントローラを示し得る。特定の例として、各コントローラ106は、リアルタイムのオペレーティングシステム、WINDOWSオペレーティングシステム、又は他のオペレーティングシステムを実行しているコンピューティングデバイスを示し得る。
【0022】
コントローラ106及びシステム100の他の構成要素に対するオペレータのアクセス及び対話は、様々なオペレータコンソール110を介して行うことができる。各オペレータコンソール110は、オペレータに情報を提供し、オペレータから情報を受信するために使用され得る。例えば、各オペレータコンソール110は、産業用プロセスと関連付けられた様々なプロセス変数及び警報の値など、産業用プロセスの現在の状態を特定する情報をオペレータに提供し得る。各オペレータコンソール110はまた、コントローラ106によって制御されるプロセス変数、又は、コントローラ106がどのように産業用プロセスを制御するかを変更する又はどのように産業用プロセスを制御するかに影響を及ぼす他の情報のための、設定点又は制御モードを受信することなどによって、産業用プロセスがどのように制御されるかに影響を及ぼす情報を受信し得る。各オペレータコンソール110は、オペレータに情報を表示し、オペレータと対話するための任意の好適な構造を含む。例えば、各オペレータコンソール110は、WINDOWSオペレーティングシステム又は他のオペレーティングシステムを実行しているコンピューティングデバイスを示し得る。
【0023】
複数のオペレータコンソール110は、一緒にグループ化され、1つ以上の制御室112で使用され得る。各制御室112は、任意の好適な配置で任意の数のオペレータコンソール110を含み得る。いくつかの実施形態では、複数の制御室112を使用して、各制御室112が産業用プラントの別個の部品を管理するために使用されるオペレータコンソール110を包含する場合など、産業用プラントを制御することができる。
【0024】
制御及び自動化システム100はまた、少なくとも1つのヒストリアン114及び1つ以上のサーバ116を含む。ヒストリアン114は、システム100に関する様々な情報を格納する構成要素を示す。ヒストリアン114は、例えば、1つ以上の産業用プロセスの制御中に、様々なコントローラ106によって生成された情報を格納し得る。ヒストリアン114は、情報を格納し、情報の検索を容易にするための、任意の好適な構造を含む。ここでは単一の構成要素として図示されているが、ヒストリアン114は、システム100内のどこか他の場所に位置し得る、又は複数のヒストリアンがシステム100内の異なる場所に分散し得る。
【0025】
各サーバ116は、オペレータコンソール110のユーザに対するアプリケーション又は他のアプリケーションを実行するコンピューティングデバイスを表す。アプリケーションは、オペレータコンソール110、コントローラ106、又はシステム100の他の構成要素のための様々な機能をサポートするために使用され得る。各サーバ116は、WINDOWSオペレーティングシステム又は他のオペレーティングシステムを実行しているコンピューティングデバイスを示し得る。サーバ116、ヒストリアン114、又はその両方の機能は、制御及び自動化システム100内でローカルであるとして図示されているが、制御及び自動化システム100からリモートであってもよいことに留意されたい。例えば、サーバ116及び/又はヒストリアン114の機能は、ゲートウェイ120を介して制御及び自動化システム100に通信可能に連結されたコンピューティングクラウド118又はリモートサーバ内に実装され得る。
【0026】
一般に、産業用プロセスで生産される製品の品質は、典型的には、プロセスの自動制御システムの良好な動作に大きく依存する。ほとんどの自動制御ループ又は多変数コントローラは、プロセスの動的挙動に合わせて調整される調整パラメータを有する。これらが正しく調整されると、コントローラは良好に動作し、プロセスは良好に制御され、製品は高品質となる。しかしながら、プロセスの動的挙動が変化した場合、制御性能の低下及びその結果としての品質低下を回避するために、コントローラを再調整する必要があり得る。
【0027】
システム100などの産業用プロセス制御及び自動化システムの挙動及び動作は、1つ以上のプロセスモデルを使用してモデル化することができる。正確なプロセスモデルは、多くの理由で有益であるか、又は必要とされ得る。例えば、プロセスモデルを使用して、プロセスに関する予測を行ったり、コントローラを調整したりすることができる。プロセス挙動がいつ大きく変化したかを判定することは、多くの場合、困難な問題である。多くの産業用プロセスでは、プロセスモデルパラメータがデータから推定され、推定で使用されるデータは、通常、情報の豊富なデータを作成するように設計された計画された実験から得られる。プロセスが経時的に変化する場合、プロセスモデルを再同定することが必要となり得る。しかしながら、計画された実験は時間がかかる場合があり、製品の品質を損なうおそれがある。したがって、必要な場合にのみ実験を実施できるように、プロセス挙動がいつ変化したかを判定可能とすることに対する強い動機が存在する。
【0028】
いくつかのプロセス挙動監視技術は、日常的なプロセスデータに基づいてプロセスモデルパラメータを周期的に推定することを含む。これらのパラメータ推定値は経時的に監視され、公称値からの有意な偏差が検出された場合、プロセス挙動が変化したと判断される。しかしながら、プロセスデータにノイズが多い場合には、モデルパラメータ推定値にもノイズが多い可能性がある。複数のパラメータが存在する場合には、推定値が変動しやすいために、値がいつ有意に変化したかを判定することが困難となる可能性がある。一般に、パラメータが多いほど、変化を検出することは困難であり得る。
【0029】
これらの及び他の問題に対処するために、本開示の実施形態は、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによって、プロセスの動的挙動の変化を監視するためのシステム及び方法を提供する。本開示の実施形態は、パラメータ間に相関性がある場合、次元削減を使用して挙動の変化をより検出しやすくすることができることを考慮している。このため、パラメータ空間の次元が低くなり、公称値からのずれを検出する作業が簡単になる。本開示の実施形態は、低次元化された空間におけるプロセスモデルパラメータ推定値を監視することによってプロセス挙動がいつ変化したかを判定する1つ以上の技術を採用する。
【0030】
パラメータ空間を削減する複数の技術を使用することができる。第1の技術では、時間遅延と時定数パラメータとを加算することにより、組み合わされた応答時間パラメータを生成することができる。この組み合わされたパラメータは、個々のパラメータよりも変動しにくいことが判明している。第2の技術では、プロセスモデルの周波数応答を調べることができる。公称モデルのカットオフ周波数などの重要な周波数におけるゲイン及び位相シフトを調べることができる。これにより、パラメータ空間は、経時的に監視可能な2つのパラメータに削減される。これらの技術のいずれかを使用して、モデルのパラメータ空間は、ノイズの少ない2つのパラメータに削減される。いくつかの実施形態では、
図1の構成要素(オペレータコンソール110、ヒストリアン114、サーバ116又はコンピューティングクラウド118など)のうちの1つ以上を、これらの動作を実行するように構成することができる。
【0031】
本開示の実施形態により、監視用パラメータの少数化及び安定化が図られ、監視がより容易となり、プロセス挙動の変化を検出できる可能性が高まる。プロセス挙動の変化の検出後に、手動の又は自動の介入を開始してプラント実験を実施し、コントローラの再調整及び良好なプロセス制御の維持のためのより正確なプロセスモデルを生成することができる。これらの長所は、ノイズの多いデータがプロセス挙動の変化を隠してしまう従来のシステムに勝る技術的利点を意味する。本開示の実施形態に関する更なる詳細を以下に提供する。
【0032】
図1は産業用プロセス制御及び自動化システム100の一例を示すが、
図1には、様々な変更が加えられ得る。例えば、システム100は、任意の数のセンサ、アクチュエータ、コントローラ、ネットワーク、オペレータステーション、制御室、ヒストリアン、サーバ、及び他の構成要素を含み得る。また、
図1のシステム100の構成及び配置は、例示のみのためのものである。特定の必要性に従って、任意の他の好適な構成での構成要素の追加、除外、結合、更なる細分化、又は配置が行われ得る。更に、特定の機能は、システム100の特定の構成要素によって実施されるものとして記載されている。これは、例示のみのためのものである。一般に、制御及び自動化システムは、高度に構成可能であり、特定の必要性に応じて任意の好適な様式で構成され得る。加えて、
図1は、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによってプロセスの動的挙動の変化を監視することができる動作環境の一例を示す。この機能性は、任意の他の好適なシステムで使用することができる。
【0033】
上述の第1及び第2の技術を、以下により詳細に説明する。
【0034】
技術1:プロセス応答時間を使用して、より高次のプロセス動特性を表す。
【0035】
第1の技術では、プロセス応答時間を使用して、より高次のプロセス動特性を表すことができる。プロセス応答時間は、プロセスステップ応答がその最終値の63.2%に到達するのにかかる時間として定義することができる。一次プラスデッドタイムモデルの場合、プロセス応答時間は、時定数と時間遅延との和である。より高次のモデルの場合、ステップ応答をシミュレートしてプロセス応答時間を求めることができる。具体的には、より高次のモデルを応答時間に削減することができる。
【0036】
プロセスPは、例えば、微分方程式の線形系によってモデル化することができ、これはラプラス伝達関数形式で以下のように記述することができる:
【数1】
式中、yはプロセス出力であり、mはプロセス入力の数であり、u
iはi番目のプロセス入力であり、各P
iは、以下の形式
【数2】
をとり、b
i及びf
iは、ラプラスドメイン変数sにおける多項式であり、d
iは純粋な時間遅延である。
【0037】
一次プラスデッドタイムの伝達関数は、コントローラ設計の目的で十分に多くの産業用プロセスを記述するために使用可能な、単純であるが強力なモデルである。一次プラスデッドタイムの伝達関数は、式(2)の特定の形式であり、次の形式をとる:
【数3】
式中、k
iはプロセスゲインであり、τ
iはプロセス時定数である。
【0038】
プロセスモデルを取得する1つの方法は、プロセスデータに基づくプロセスモデル同定からである。
図2は、本開示による単入力単出力システムのための日常的なプロセスデータの一例を示すグラフ205、210を図示したものである。
図2に示すように、グラフ205は、例示的なシステムの経時的なプロセス入力uを示す。グラフ210は、システムの経時的なプロセス出力yを示す。グラフ210の他のプロットは、経時的なrを示し、rは目標出力又は設定点である。
【0039】
プロセスモデルのパラメータを推定する際に、以下のような最適化を実行することができる:
【数4】
式中、y(i)は、測定されたプロセス値であり、y
θ(i)は、パラメータθを有するモデルに基づく予測であり、Nはデータ点の数である。
【0040】
この最適化は、測定されたプロセス値とプロセスモデルによって予測される値との間の誤差の二乗和を最小化するプロセスモデルパラメータ値を求める。プロセスモデルパラメータ推定のための技術は周知であり、本明細書では更なる詳細な説明は行わない。
【0041】
情報の豊富なデータ(例えば、計画されたプラント実験からのデータ)を入手できる場合には、正確なプロセスモデルパラメータ推定値を取得することが可能である。典型的には、日常的なプロセス動作からのデータは情報が豊富ではないため、日常的な動作データからのプロセスモデルパラメータ推定値は、大きな変動や他の潜在的な不正確さを有する傾向がある。しかしながら、日常的なプロセスデータではプロセスモデルを正確に推定できない可能性があるものの、プロセスモデルパラメータが周期的に再推定される場合には、プロセス挙動の変化は推定値の変動として検出され得る。
【0042】
目的は、日常的な動作データから作成されたパラメータ推定値を監視し、変化を探すことである。例えば、紙を製造するためのプロセスを有する製紙工場の場合を考察する。最も重要なパラメータの1つは、製造された紙が正しい坪量を有することである。紙の坪量を調整するための1つの方法では、ヘッドボックスにおいて原料流弁を調整する。これを、ゲイン、時間遅延、及び時定数の3つのパラメータによって表すことができる。
【0043】
ゲインの一例として、原料流弁が量xだけ開いた場合、紙の重量は量yだけ変化する。簡略化された例では、ゲインはy/xであってもよい。時間遅延は、原料流弁が調整されてから紙の重量の変化が生じるまでの時間の長さを示す。時定数は、漸進的変化の「ランプタイム」を測定し、すなわち、時定数は、変化が最初に測定された時点から新たな定常状態値が測定されるまでの時間の長さを示す。製紙工場の場合、時定数は、ヘッドボックスにより多くの原料を追加した後、ヘッドボックス内の濃度が以前の定常状態値から新たな定常状態値まで増加するのにかかる時間の長さを示してもよい。
【0044】
一次プラスデッドタイムモデルの場合、時定数と時間遅延との両方がプロセス応答の速度に影響を及ぼし、これらのパラメータの推定値間に相関性が存在し得る。例えば、時定数と時間遅延とは、逆方向に移動する傾向がある。このため、これら2つのパラメータを単に加算し、典型的にはより安定したパラメータである和を監視することが有利であり得る。一次プラス時間遅延プロセスの場合、時定数と時間遅延との和は63.2%のプロセス応答時間であることに留意されたい。この技術は、より高次のプロセスに一般化することもできる。単純な方法では、ステップ応答をシミュレートしてプロセス応答時間を求める。
【0045】
これは、ゲイン、時定数及び時間遅延、又はプロセスモデルの次数によっては更に多数のパラメータを監視するのとは対照的に、この技術を使用することで、ゲイン及び応答時間の2つのパラメータを監視してプロセス挙動の変化を検出することができるという点で、次元削減技術と見なすことができる。この問題に使用され得る次元削減の他の多くの技術が存在する。
【0046】
技術2:モデルカットオフ周波数における位相を使用してプロセス動特性を表す。
【0047】
プロセス挙動の変化を監視するための第2のプロセスモデルパラメータ次元削減技術では、プロセスモデルの周波数応答を調べる。ボード線図によって表されるプロセスモデルの周波数応答は、周波数の関数としてのプロセスゲイン及び位相を示す。
【0048】
ボード線図は、以下のように導出される。上記式(2)のような伝達関数形式のプロセスモデルの場合、P
i(jω)は、s=jωを代入することによって得られる。この複素数値関数の極形式は、以下の通りである:
【数5】
式中、|P
i(jω)|は振幅比であり、φ
iは、ωの関数としての位相角である。ボード線図は、単にこれら2つの関数のプロットである。ボード線図及び周波数ドメイン分析は確立された分野であり、更なる詳細は本明細書に含まれない。
【0049】
図3は、本開示による例示的なボード線
図300を示す。ボード線
図300を調べることで、カットオフ周波数305及びカットオフ周波数における位相310を求めることができる。カットオフ周波数305は、振幅比が0.707、又は大きさがデシベルで表される場合は-3に等しい周波数を見つけることによって求められる。カットオフ周波数305における位相310は、単にカットオフ周波数における位相の値である。ボード線
図300において、カットオフ周波数305は約0.1rad/sであり、その周波数における位相310は約-100度である。モデルは、式(2)の伝達関数を構成する多項式の次数を問わず、ボード線
図300によって要約され得る。位相プロットは、モデルの動特性と関連付けられ、特にカットオフ周波数付近での位相の大きな変化は、プロセス動特性の重要な変化と関連付けられ得る。
【0050】
このため、プロセス挙動の変化を監視するために、プロセスモデルの次数に関係なく、カットオフ周波数における位相を使用してプロセスモデルの動特性を表すことができる。明確化のために、一連のモデルが比較される場合、対象の周波数を公称モデルのカットオフ周波数として選択することができる。その後、後続のモデルの動特性を、それらのゲインによって、及び対象の周波数(公称モデルのカットオフ周波数)におけるそれらの位相によって要約することができる。
【0051】
プロセス動特性に関連する全ての個々のパラメータを監視する代わりに、公称モデルのカットオフ周波数などの重要な周波数における位相を監視してもよい。これは以下の例で実証される。
【0052】
図2に示すような日常的なプロセスデータを考慮する。このプロセスを監視するために、プロセスモデルパラメータ推定値を、例えば30分毎など、周期的に作成してもよい。次いで、30分が経過するたびに、例えば直近4時間などの最新のデータのウィンドウを使用して、プロセスモデルパラメータを推定してもよい。次いで、これらのパラメータ推定値を次元削減された空間に変換してもよい。例えば、モデルの応答時間を計算してもよく、又は公称モデルのカットオフ周波数における位相を計算してもよい。次いで、次元削減された推定値を経時的に監視してもよく、公称値付近の閾値を超える値の変動は、プロセス挙動の1つ以上の変化を示す。
【0053】
プロセス挙動が変化したと判定された場合は、プロセスに励起(例えば1つ以上の外乱、摂動など)を加えて情報の豊富なデータセットを生成し、新たなプロセス挙動の正確なモデルが得られるようにすることができる。
【0054】
図4は、本開示による、プロセス中のある期間にわたって周期的に作成される一次プラスデッドタイムのプロセスモデルパラメータ推定値を示すグラフ400を図示したものである。ゲイン、時定数、及び時間遅延は全て、ある期間(ここでは16時間)にわたって推定され、変化検出のための公称モデル値及び閾値と共に、それぞれプロット405、プロット410及びプロット415にプロットされる。加えて、推定プロセス応答時間及び公称カットオフ周波数における位相もまた、それぞれプロット420及びプロット425にプロットされる。ここで、推定応答時間プロット420は、上述の技術1を使用して求められた推定時定数プロット410と推定時間遅延プロット415との和である。公称カットオフ周波数における位相を示すプロット415は、上記の技術2を使用して得られる。
【0055】
グラフ400に示すデータセットでは、約10時間から始まるプロセスの変化(特に、閾値外の値への時定数の変化)がある。目的は、異なるプロット405~425におけるデータを調べることによって変化を検出することである。推定ゲインプロット405は、いかなる時点においても推定値が公称値付近の閾値を超えないことを示しており、正確である。推定時定数プロット410は、推定値の経時的な著しい変動を示し、推定値は、(実際の値は10時間のマークの前は閾値内にあるにもかかわらず)10時間のマークの前に数回検出閾値から外れており、不正確である。また、推定値は、(時定数の実際の値は約10時間のマークから閾値外に変化しているにもかかわらず)11時間から13時間の間、閾値内にあり、不正確である。したがって、(推定時定数プロット410によって表されるような)時定数推定データは、変化検出の監視に関して信頼性がない。時間遅延推定データも同様の問題を有する。
【0056】
しかしながら、推定応答時間プロット420は、約10時間で生じる変化をより明確に示している。推定応答時間プロット420は、推定値が約10時間のマークまで閾値内にあることを示している。プロット420は、推定値が10時間のマークの後は閾値外にあることを示している。この種の明確なパターンは、信頼性の高い変化検出に望ましいものである。公称カットオフ周波数における位相を示すプロット425は、推定値が10時間のマークの前に数回のみ閾値から外れていることを示している。10時間のマークの後、推定値は、13.5時間における推定値を除いて閾値外にある。したがって、このデータセットでは、技術2(公称カットオフ周波数での位相を使用する)は、変化検出に関する信頼性が技術1(プロセス応答時間)ほどには高くないものの、技術2は、時定数と時間遅延とを別々に監視するよりは優れている。
【0057】
図4に示すこの例は、経時的にプロセスモデルパラメータ推定値を調べることによってプロセス挙動の変化を監視する場合に、監視するパラメータの数を減らすことが有用であることを実証している。多くの場合、パラメータ空間の次元を削減することにより、監視の信頼性を向上させることができる。本明細書に記載の技術は、プロセス応答時間又はカットオフ周波数における位相のいずれかによって、プロセス動特性に関連するパラメータ(ゲイン以外のパラメータ)を要約するための種々の方法を提供する。
【0058】
図5は、本開示による、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによってプロセスの動的挙動の変化を監視するための方法をサポートする例示的なデバイス500を示す。デバイス500は、例えば、
図1のオペレータコンソール110、ヒストリアン114、サーバ116、又はコンピューティングクラウド118内のデバイスを表すことができる。しかしながら、これらの構成要素は、任意の他の好適なデバイス又はシステムを使用して実装することができ、デバイス500は、任意の他の好適なシステムで使用することができる。
【0059】
図5に示されるように、デバイス500は、少なくとも1つのプロセッサ502、少なくとも1つの記憶デバイス504、少なくとも1つの通信ユニット506、及び少なくとも1つの入出力(input/output、I/O)ユニット508を含む。各プロセッサ502は、メモリ512にロードすることができる上述のプロセス及び方法を実装する命令などの命令を実行することができる。各プロセッサ502は、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)、又はディスクリート回路などの任意の好適な処理デバイスを表す。
【0060】
メモリ512及び固定記憶域514は、情報(一時的又は永続的なデータ、プログラムコード、及び/又は他の好適な情報)を格納し、容易に検索できる任意の構造を示す、記憶デバイス504の例である。メモリ512は、ランダムアクセスメモリ又は任意の他の好適な揮発性若しくは不揮発性記憶デバイスを示し得る。固定記憶域514は、読み取り専用メモリ、ハードドライブ、フラッシュメモリ、又は光ディスクなどのデータの長期記憶をサポートする1つ以上の構成要素又はデバイスを含んでもよい。メモリ512又は固定記憶域514は、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによって、プロセスの動的挙動の変化を監視することに関連する情報及びデータを記憶するように構成されてもよい。
【0061】
通信ユニット506は、他のシステム又はデバイスとの通信をサポートする。例えば、通信ユニット506は、有線又は無線ネットワーク(ネットワーク108など)上での通信を容易にするネットワークインターフェースカード又は無線送受信機を含み得る。通信ユニット506は、任意の好適な物理的通信リンク又は無線通信リンクを介した通信をサポートし得る。
【0062】
I/Oユニット508は、データの入出力を可能にする。例えば、I/Oユニット508は、キーボード、マウス、キーパッド、タッチスクリーン、又は他の好適な入力デバイスを介したユーザ入力に接続を提供し得る。I/Oユニット508はまた、ディスプレイ、プリンタ、又は他の好適な出力デバイスに出力を送信し得る。
【0063】
図5は、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによって、プロセスの動的挙動の変化を監視するための方法をサポートするデバイス500の一例を示しているが、様々な変更を
図5に加えることができる。例えば、
図5の様々な構成要素は、組み合わせられるか、更に細分化されるか、又は省略されてもよく、追加の構成要素が、特定の必要性に従って追加されてもよい。また、コンピューティングデバイスは、多種多様な構成で提供され得、
図5は、本開示をコンピューティングデバイスの任意の特定の構成に限定しない。
【0064】
図6は、本開示による、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによって、プロセスの動的挙動の変化を監視するための例示的な方法600を示す。方法600は、例えば、
図1のシステム100などの産業用プロセス制御及び自動化システムにおけるプロセス変更を監視するために使用され得る。いくつかの実施形態では、方法600は、オペレータステーション110、サーバ116又はコンピューティングクラウド118などのシステム100の1つ以上の構成要素によって実行することができる。しかしながら、方法600は、任意の他の好適なデバイス又はシステムと共に使用され得る。説明を容易にするために、方法600を、
図5のデバイス500などのコンピューティングデバイスによって実行されるものとして説明する。
【0065】
工程601において、デバイスは、産業用プロセス制御及び自動化システムにおけるプロセスの実行中に収集されたプロセスデータを取得する。これは、例えば、デバイスがヒストリアンからプロセスデータを取得することを含み得る。プロセスデータは、産業用プロセス制御及び自動化システム内の1つ以上のコントローラから出力され得る。いくつかの実施形態では、プロセスデータは、プロセスデータが1つ以上のコントローラから出力された後にヒストリアンに記憶される。いくつかの実施形態では、データは、データのバッチが、毎分又は数秒毎にデバイスにアップロードされるという点で、ある程度リアルタイムで取得される。
【0066】
工程603において、デバイスは、プロセスデータの2つ以上のパラメータを組み合わせることによって、又はプロセスデータの周波数応答を調べることによって、プロセスデータの次元空間を削減する。いくつかの実施形態では、デバイスは、時定数パラメータと時間遅延パラメータとを組み合わせて応答時間パラメータとすることによって、プロセスデータの次元空間を削減する。いくつかの実施形態では、デバイスは、プロセスデータの次元空間を、カットオフ周波数におけるプロセスデータのゲイン及び位相シフトに削減する。
【0067】
工程605において、デバイスは、次元削減された空間におけるプロセスデータの変化に基づいて、プロセスの変化を判定する。いくつかの実施形態では、デバイスは、次元削減された空間におけるプロセスデータをアルゴリズムに入力し、プロセスデータが所定の閾値を超えていることを示すアルゴリズムの出力を受信することによって、プロセスの変化を判定する。
【0068】
工程607において、デバイスは、プロセスの判定された変化に基づいて結果を出力する。いくつかの実施形態では、出力された結果は、ユーザへの警報又は警告を含み、警報又は警告は、産業用プロセス制御及び自動化システムの構成要素を再調整又は較正するようにユーザに指示する。いくつかの実施形態では、出力された結果は、デバイスによって産業用プロセス制御及び自動化システムの構成要素に送信される信号又は命令を含み、信号又は命令は、構成要素の設定を自動的に変更するように構成されている。
【0069】
図6は、パラメータを低次元化された空間にマッピングすることによってプロセスの動的挙動の変化を監視するための方法600の一例を示しているが、様々な変更を
図6に加えることができる。例えば、一連の工程として示されているが、
図6に示す様々な工程は、重複してもよく、並行して生じてもよく、異なる順序で生じてもよく、又は複数回生じてもよい。更に、いくつかの工程を組み合わせるか又は除去してもよく、特に必要な場合には更なる工程を追加してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、本特許文献に記載した様々な機能は、コンピュータ可読プログラムコードから形成され、コンピュータ可読媒体において具現化されるコンピュータプログラムによって実施される、又はサポートされる。「コンピュータ可読プログラムコード」という語句は、ソースコード、オブジェクトコード、及び実行可能コードなど、任意の種類のコンピュータコードを含む。「コンピュータ可読媒体」という語句は、読み取り専用メモリ(read only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(compact disc、CD)、デジタルビデオディスク(digital video disc、DVD)、又は任意の他の種類のメモリなど、コンピュータによってアクセスされ得る任意の種類の媒体を含む。「非一時的」なコンピュータ可読媒体は、一時的な電気信号又は他の信号を搬送する有線リンク、無線リンク、光リンク、又は他の通信リンクを除外する。非一時的なコンピュータ可読媒体は、再書き込み可能光ディスク又は消去可能メモリ素子など、データが永続的に格納され得る媒体、及びデータが格納されて後に上書きされ得る媒体を含む。
【0071】
本特許文献を通じて使用される特定の単語及び語句の定義を説明することは有益となろう。「アプリケーション」及び「プログラム」という用語は、1つ以上のコンピュータプログラム、ソフトウェアコンポーネント、命令のセット、プロシージャ、関数、オブジェクト、クラス、インスタンス、関連データ、又は(ソースコード、オブジェクトコード、又は実行可能コードなど)好適なコンピュータコードにおいて実施するために適合された、これらの一部を指す。「通信する」という用語並びにその派生語は、直接通信及び間接通信の両方を含む。「含む(include)」及び「含む(comprise)」という用語並びにその派生語は、限定的ではない包含を意味する。「又は」という用語は、包括的であり、「及び/又は」を意味する。「~と関連付けられる」という語句、並びにその派生語は、含むこと、中に含まれること、相互接続すること、包含すること、中に包含されること、相互に接続すること、相互に結合すること、通信可能であること、協調すること、交互配置すること、並列すること、近接すること、相互に結び付けられること、有すること、属性を有すること、相互に関係を有することなどを含むことを意味してもよい。「~のうちの少なくとも1つ」という語句は、項目のリストと共に使用される場合、リストされている項目の1つ以上の様々な組み合わせが使用されてもよく、リスト内の1つの項目のみが必要とされ得ることを意味する。例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つ」は、A、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、並びにA及びB及びCという組み合わせのいずれかを含む。
【0072】
本出願における記載は、任意の特定の要素、工程、又は機能が、特許請求の範囲に含まれなければいけない本質的な要素、又は重大な要素であることを暗示すると読まれるべきではない。特許発明の主題の範囲は、許可された請求項によってのみ規定される。更に、「~のための手段」又は「~のための工程」という正にその語句が特定の請求項で明示的に使用され、機能を特定する分詞句がそれに続かない限り、請求項は、添付の請求項又は請求項要素のいずれに関しても米国特許法第112条(f)を発動させることを意図していない。請求項内における「機構」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「構成要素」、「要素」、「部材」、「デバイス」、「機械」、「システム」、「プロセス」、又は「コントローラ」などの用語(ただし、これらに限定されない)の使用は、当業者に既知であり、請求項自体の特徴によって更に変更、又は強化される構造を指すことが理解され、意図されており、米国特許法第112条(f)の発動は意図されていない。
【0073】
本開示は、特定の実施形態及び一般に関連する方法について記載してきたが、これらの実施形態及び方法の改変及び変更は、当業者に明らかであろう。したがって、例示の実施形態の上記の説明は、本開示を定義又は制約することはない。他の変更、代替、及び改変はまた、添付の特許請求の範囲により定義される本開示の趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で可能である。