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特許7486535ガルデニア・ヤスミノイデスの花からの油抽出物及び同抽出物を含む化粧用組成物
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  • 特許-ガルデニア・ヤスミノイデスの花からの油抽出物及び同抽出物を含む化粧用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ガルデニア・ヤスミノイデスの花からの油抽出物及び同抽出物を含む化粧用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240510BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/08
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022011828
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2022117487
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2022-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】21305117
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521440585
【氏名又は名称】シャネル・パルファム・ボーテ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・リアック
(72)【発明者】
【氏名】マエヴァ・ジレ
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】宮崎 大輔
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109925391(CN,A)
【文献】特開平7-309770(JP,A)
【文献】特開2003-2813(JP,A)
【文献】特開2009-73777(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101993782(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105213548(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物の調製の方法であって、少なくとも、55から65℃の間の温度にて、且つ35から50MPaの間の圧力にて、乾燥させたガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末から超臨界CO2で抽出する工程を含み、
ガルデニア・ヤスミノイデスの花が、日光又は真空下40℃の温度のいずれかにて脱水されることにより乾燥され、
超臨界CO 2 での抽出が、スクワラン、パルミチン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸及びカプリン酸トリグリセリド、ツバキ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ゴマ油、アプリコット核油、ブドウ種子油、スイートアーモンド油、サフラワー油、ヘーゼルナッツ油、アルガン油、マスクローズ油、月見草油、ルリチシャ油、液体ホホバワックス、及びこれらの混合物から選択される油溶媒の存在下で行われる、方法。
【請求項2】
油溶媒が、200:1から50:1の間のCO2の油溶媒に対する体積比で添加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末が、ガルデニア・ヤスミノイデスの生花を乾燥させて次いでミリングすることによって得られることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
超臨界CO2での抽出の工程の終了時に、CO2が気体状態に変化するように、圧力が低下されうることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも以下の工程:
i)ガルデニア・ヤスミノイデスの生花を乾燥させてミリングする工程と、
ii)55から65℃の間の温度にて、且つ35から50MPaの間の圧力にて、乾燥させたガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末から超臨界CO2で抽出する工程であって、前記ガルデニア・ヤスミノイデスの花が、日光又は真空下40℃の温度のいずれかにて脱水されることにより乾燥される工程と、
iii)7.4MPa以下へ圧力を低下させることによって、CO2を蒸発させる工程と、
v)乾燥済みの花の油溶媒に対する質量比が1:5~1:20となるまで、油溶媒を添加する工程と、
vi)ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物を清澄化する工程と
を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも以下の工程:
i)ガルデニア・ヤスミノイデスの生花を乾燥させてミリングする工程と、
ii)55から65℃の間の温度にて、且つ35から50MPaの間の圧力にて、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末から超臨界CO2で抽出する工程と、
iii)7.4MPa以下へ圧力を低下させることによって、CO2を蒸発させる工程と、
iv)アルコール流を添加して、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末と、溶媒との混合物を回収し、次いで前記アルコールを蒸発させる工程と、
v)乾燥済みの花の油溶媒に対する質量比が1:5~1:20となるまで、油溶媒を添加する工程と、
vi)ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物を清澄化する工程と
を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程vi)の清澄化が、1μm未満の多孔度を有する膜上のろ過によって行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によって得られることを特徴とする、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物。
【請求項9】
生理的に許容される媒質中に、少なくとも1種の、請求項8に記載のガルデニア・ヤスミノイデスの花からの油抽出物を含む、化粧用組成物。
【請求項10】
請求項8に記載のガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物の、老化又は光老化に起因する皮膚への変化を予防する及び/又は処置するための、化粧上の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、ガルデニア・ヤスミノイデス(Gardenia jasminoides)の花からの油抽出物であって、それが花からの超臨界CO2での抽出によって得ることができることを特徴とする、油抽出物であり、詳細には、老化に起因する、又は年齢に関連する生理的機序に起因する、又はそれらの機序に関連する問題に起因する、皮膚の変質を予防する及び/又は処置するための、化粧料におけるそれらの使用でもある。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、大概、3つの層から作られており、具体的には、最外表面から出発して、表皮、真皮及び皮下組織である。
【0003】
皮膚の外層、表皮は、重層化されており、且つ外的な攻撃に対して皮膚を保護するよう、主に寄与している。真皮は、皮膚のために粘着と栄養との両方の機能を付与する、結合組織である。
【0004】
皮膚の老化は、内的な要因と外的な要因とを包含する、2つの別々のかつ独立したプロセスからもたらされる。
【0005】
内的な又は時間生物学的な老化は、年齢に関係する「正常な」又は生理的な老化に相当する。
【0006】
外的な老化は、一般に、環境によって引き起こされる老化に相当し、より具体的には、日光への暴露に起因する光老化に相当する。
【0007】
本発明は、内的な又は生理的な皮膚老化に関心を向け、且つまた外的な皮膚老化にも関心を向ける。
【0008】
皮膚老化は、結合組織の変換、及び細胞再生能の減退へと続く。この効果は、経時的な微細な線及び斑の出現によって見られる。微小循環は、表在性真皮の近くで低減される。コラーゲン、エラスチン及びグリコサミノグリカン等の高分子は、その構成要素のうちの1種がヒアルロン酸であり、化学的に変質される。真皮の厚さでさえ退行し、繊維は劣化し、皮膚はその生体力学的性質及び弾力性を失う。化学的及び酵素的な酸化現象が年齢と共に増加し、コラーゲン繊維等の繊維同士の間の架橋反応の増加へと至らせる。
【0009】
老化に関連する変化は、様々に見ることができ、それらの中で、以下を挙げることができる:
- 丈夫さ、柔軟性及び弾性の減損へと至らせる、又はクモ状静脈の出現による、エラスチン繊維の組織崩壊、
- 微小循環の低減に起因する輝きの減損、及び表皮近くの細胞再生の緩慢化、及び微細な線又はしわの出現、
- メラニン合成(メラニン形成)の機能不全に関連する色素斑の出現に伴うパーチメント出現を展開させる皮膚の黄色化、
- 角層のバリア機能の低減及び表皮の再生の緩慢化からもたらされる皮膚乾燥。
【0010】
この理由により、老化に起因する、及び/又は年齢に関連する生理的機序の変容などに起因する、一連の皮膚の変質の原因に作用しうる、多機能性活性剤を提供する必要性が存在する。
【0011】
ガルデニアは、約250種の、アカネ科(Rubiaceae)からの顕花植物を含む属であるガルデニア属(genus Gardenia)からの植物であり、アフリカ、南アジア、オーストララシア及びオセアニアの、熱帯から亜熱帯地域を原産とする。それらの花からの一般に水性である抽出物は、香水製造業における使用のために求められうる。
【0012】
しかしながら、例えばメイクアップ組成物のような、大概が非水性組成物にある化粧用配合物にとって、ガルデニア・ヤスミノイデスの油抽出物を有することは、望ましい。
【0013】
ガルデニア・ヤスミノイデスの実からの油は既に研究されてきているが、花からの抽出物について科学的研究はほとんどなされていない。
【0014】
出願CN104905999は、香水における使用のためのガルデニアの花の油抽出物を提案した。したがって、求められている油抽出物は、香りがし、揮発性であり壊れやすく、きわめて穏やかな抽出温度及び圧力条件下でのみ得られうる。この出願において記載されている抽出物は、抽出物中に香りのする分子を保存するために、ガルデニアの生花からの超臨界CO2での抽出によって、穏やかな条件下(35℃/15~20MPa)で得られる。同様に、FR2969656は、多種の壊れやすい花の生花又は葉から、香りのする抽出物を得ることを求めている。ここでも再度、抽出中に、香りのする分子を保存するために、文献FR2969656に記載されている方法を、きわめて穏やかな圧力条件下(20MPa下)、及び中程度の温度(55℃、好ましくは45℃の下)にて操作する。
【0015】
本発明の出願者はこの度、完全に驚くべきことに、ガルデニア・ヤスミノイデスの乾燥済みの花から超臨界CO2で、より強力な温度及び圧力条件下で抽出した油が、老化に起因する、又は年齢に関連する生理的機序に起因する、又は表皮及び/若しくは真皮中のこれらの機序に伴う関連する問題に起因する症状に、活性を有することを示した。
【0016】
この観察が、新規の非治療的な化粧用組成物を完成させることに至らせ、より具体的には、老化に起因する、又は年齢に関連する生理的機序に起因する、又は表皮及び/若しくは真皮に近いこれらの機序に関連するトラブルに起因する症状においてそれが作用することが求められる全ての用途について有用な非治療的化粧用組成物を、完成させることに至らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】CN104905999
【文献】FR2969656
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、第1の態様では、本発明は、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物の調製の方法であって、40から80℃の間、好ましくは43から75°℃の間、再度好ましくは50から70℃の間、より好ましくは55から65℃の間、再度より好ましくは57から62℃の間の温度にて、且つ25から50MPaの間、好ましくは30から45MPaの間、より好ましくは35から45MPaの間、なおもより好ましくは40から45MPaの間の圧力にて、少なくとも、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末からの超臨界CO2での抽出する工程を含む、方法に関する。
【0019】
このような方法は、ガルデニア・ヤスミノイデスの花から香りの分子を抽出するようには働かず、その理由は、該分子が、特許請求している圧力及び温度において破壊されるからである。同じように、それは、対象の化粧料の抗老化の性質を有する新規の予期せぬ分子の抽出を可能にする。
【0020】
本発明の目的はまた、このような方法によって得られるガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物である。本発明によるガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物は、油溶媒中、ステロール等の非極性分子に富む。
【0021】
第3の態様によれば、本発明はまた、生理的に許容される媒質中に、少なくとも1種の、本発明によるガルデニア・ヤスミノイデスの花からの油抽出物を含む、化粧用組成物にも関する。
【0022】
最後に、第4の態様によれば、本発明の目的は、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物の、老化又は光老化に起因する皮膚の変質を予防する及び/又は処置するための、先に記載したもの等の、非治療的な化粧上の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるガルデニア・ヤスミノイデスの花からの油抽出物での0.25%における処理後の、メラノサイト中の遺伝子TIMP1及びTIMP2の発現の増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ガルデニア・ヤスミノイデス
ガルデニア・ヤスミノイデス[Gardenia jasminoides J. Ellis(ガルデニア・フロリダ(Gardenia florida)と同義語)]は、アカネ科の顕花植物の属である。
【0025】
コーヒー及びタヒチアン・ガルデニア(Tahitian gardenia)のようなアカネ科の常緑低木は、0.3~3mの高さである。
【0026】
その葉は、厚く、暗緑色であり、光沢がある。
【0027】
ガルデニア属は、約250種の顕花植物を含み、アフリカ、南アジア、オーストララシア及びオセアニアの、熱帯から亜熱帯地域を原産とする。ガルデニア・ヤスミノイデスはまた、名称ガルデニア・アングスチフォリア(Gardenia angustifolia Lodd)、ガルデニア・グランジフロラ(Gardenia grandiflora Lour)、ジェニパ・フロリダ(Genipa Florida (L.) Baill)、ジェニパ・グランジフロラ(Genipa grandiflora (Lour.) Baill)、ジャスミナム・カペンセ(Jasminum capense Mill)でも知られている。
【0028】
この壮観な顕花は、温暖な気候では通年、より冷涼な気候では春の終わりから夏の初めまで(3月~7月)、非常に良い香りを放ち、きわめて大きい白色の花弁を有する八重咲きであることが多い。
【0029】
変種に応じて、この白色の花は、ジャスミンの香りに似た香りを有する。ガルデニア・ヤスミノイデスは、実際、ケープジャスミンの名称でも知られている。ガルデニア・ヤスミノイデスは、多様な性質のための伝統的な中国の薬剤(皮膚軟化剤、催吐剤、利尿剤、駆虫剤、鎮痙剤、防腐剤、鎮痛剤)中で使用されている。実は卵形であり、黄色又は黄色-橙色ベリーであり、わずかに曲がった種子を含有する。
【0030】
本発明による抽出物は、ガルデニア・ヤスミノイデスの花から、好ましくは白色の花から、詳細には5cmの一重咲きの花を伴う変種「Kleim's Hardy」及び7cmの八重咲きの花を伴う変種「Crown Jewel」から得られる。好ましくは、本発明において使用されるガルデニア・ヤスミノイデスの花は、フランスのゴジャックで栽培されている。
【0031】
ガルデニア・ヤスミノイデスの花の抽出物は、好ましくは、分散性乾燥粉末の形態で生じる。分散性とは、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末が、微細に分散されうる分離された形態で生じること、例えば原材料が粒子形態にある、好ましくは粉末にあることを意味すると理解される。ガルデニア・ヤスミノイデスの生花は、例えば、第1の工程において、茎から分離されて、次いで開かれて、格子の上に平らに置かれる。次いでそれらは、日光又は真空下約40°Cの温度のいずれかにて、穏やかな条件下で脱水される。花は、80%超、好ましくは85%超の乾燥物含有量に到達するまで好ましくは乾燥される。
【0032】
次いで、花は、当業者に既知の任意の従来のミリング方法によって、例えばカッティングミル中で室温にて、又は好ましい一実施形態によれば低温ミリングによって、分散性粉末へと低減される。低温ミリングのために、花は好ましくは-80°Cに冷却され、螺旋形ミキサー中で-20から-80°Cの間の温度にて直ちにミリングされて、微細で均質な粉末を得る。冷凍は、有利には、花の中に含有されている分子の水和性の良好な保持を確実にするように働く。
【0033】
好ましくは、本発明による抽出物の調製のために実践されるガルデニア・ヤスミノイデスの花の分散性粉末は、500μm未満、好ましくは300μm未満の平均粒径を有する。ガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末は、穏やかな花の香りを有し、クリーム白色から赤みがかった褐色までの範囲の色を有する。
【0034】
ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物の調製の方法
本発明の必須の一態様によれば、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物は、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末からの超臨界CO2での、特定の温度及び圧力条件下での、少なくとも1つの抽出の工程を含む。
【0035】
効果的に、本出願者の実績であるのは、ガルデニア・ヤスミノイデスの花からの超臨界CO2での、特定の温度及び圧力条件下での油抽出を進めることによって、皮膚の老化及び光老化と闘うために全く予期せぬ有効性を示した、ステロール等の非極性分子に富む抽出物を得ることが可能であったことを示したことである。
【0036】
詳細には、超臨界CO2での抽出は、40から80℃の間、好ましくは43から75℃の間、再度好ましくは50から70℃の間、より好ましくは55から65℃の間、再度より好ましくは57から62℃の間の温度にて、且つ25から50MPaの間、好ましくは30から45MPaの間、より好ましくは35から45MPaの間、なおもより好ましくは40から45MPaの間の圧力にて、行われる。
【0037】
好ましい一実施形態では、CO2流量は、少なくとも150g/分、好ましくは200g/分である。
【0038】
CO2は、不燃性、非毒性、無臭、及び入手が容易であるという利点を有し、その理由は、CO2が空気の主要な成分であるためである。
【0039】
超臨界CO2での抽出は、スクワラン、パルミチン酸2-エチルヘキシル、カプリル酸及びカプリン酸トリグリセリド、並びに植物油から好ましくは選択される油溶媒の存在下で行われる。
【0040】
植物油は、例えば、ツバキ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ゴマ油、アプリコット核油、ブドウ種子油、スイートアーモンド油、サフラワー油、ヘーゼルナッツ油、アルガン油、マスクローズ油、月見草油、ルリチシャ油、液体ホホバワックス、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0041】
好ましい一実践によれば、超臨界CO2での抽出は、スクワランの存在下で行われる。
【0042】
超臨界CO2での抽出中にスクワランを添加すると、ガルデニアの花の中に存在する対象の分子の、より良好な可溶化が得られたことが実際に観察された。更に、スクワランは、皮膚との生体模倣の性質を有するという利点を有し、その理由は、スクワランが、ヒトの皮脂の天然成分であり、且つ皮膚上にハイドロリピディック膜を形成するためである。スクワランの使用は、化粧用組成物中の抽出物の配合物と適合性があり、それは皮膚に絹のような効果を付与し、且つ即座に浸透する。
【0043】
特定の一実施形態によれば、油溶媒、好ましくはスクワランは、超臨界CO2での抽出の工程中に、200:1から50:1の間で含まれるCO2の油溶媒に対する体積比で添加される。
【0044】
1バッチ当たり約1kgのガルデニア・ヤスミノイデスの花が抽出されるとき、超臨界CO2での抽出の工程は、30分~6時間、好ましくは1時間~3時間の範囲の時間の間、好ましくは実行される。
【0045】
本発明の文脈において、超臨界CO2での抽出の工程の終了時に、圧力は、全てのCO2が本当に気体状態に戻ったことを保証するために、詳細には7.4MPa以下、好ましくは6MPa未満の圧力へ、CO2が気体状態に変化するように低下されうる。
【0046】
特定の一実施形態によれば、本発明による方法は、少なくとも以下の工程:
i)ガルデニア・ヤスミノイデスの生花を乾燥させてミリングする工程と、
ii)40から80℃の間、好ましくは43から75℃の間、再度好ましくは50から70℃の間、より好ましくは55から65℃の間、再度より好ましくは57から62℃の間の温度にて、且つ25から50MPaの間、好ましくは30から45MPaの間、より好ましくは35から45MPaの間、なおもより好ましくは40から45MPaの間の圧力にて、例えば30分~6時間にわたり、好ましくはスクワラン等の油溶媒の存在下で、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末から超臨界CO2で抽出する工程と、
iii)7.4MPa以下、好ましくは6MPa以下へ圧力を低下させることによって、CO2を蒸発させる工程と、
iv)アルコール流、好ましくはエタノールを任意選択で添加して、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の粉末と、溶媒、詳細にはスクワランとの混合物を回収し、次いで前記アルコールを蒸発させる工程と、
v)乾燥済みの花の油溶媒に対する質量比が1:5~1:20となるまで、油溶媒、詳細にはスクワランを添加する工程と、
vi)ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物を清澄化する工程と、を含む。
【0047】
仕上げのために、本発明による方法は、油抽出物の清澄化のための1つ又はいくつかの工程を含む。
【0048】
清澄化は、当業者に既知の、全てが機械的な分離を意味すると理解される。それらは、例えば、ろ過、デキャンティング、遠心分離、スピニング、又はこれらの技術の組み合わせから選択することができる。
【0049】
好ましい一実施形態によれば、清澄化は、4μm以下の多孔度、又は更には2μmの多孔度を有する膜上のろ過によって行われる。
【0050】
清澄化の工程は、実質的に見た目が清澄であることと、懸濁している微粒子が無いこととの両方である生成物を得るように働く。
【0051】
特に好ましい一実施形態によれば、本発明によるガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物の調製の方法は、以下の工程を含む:
i.1)ガルデニア・ヤスミノイデスの花を日光に当てて又は真空下40℃にて乾燥させる工程と、
i.2)乾燥済みの花をミリングして、それらを超臨界CO2抽出器の篭中に添加する工程と、
ii.1)二酸化炭素を、実験室規模において45MPa、又は工業規模において30MPaに等価な圧力に圧縮する工程と、
ii.2)圧縮済みCO2を、化粧用抽出溶媒、詳細にはスクワランと、CO2のスクワランに対する体積比99:1によって混合する工程と、
ii.3)工程i.2から得られた混合物を熱交換器中に送り、60℃の温度に到達させる工程と、
ii.4)少なくとも1時間30分間抽出し、その間、工程i.2からの混合物を、乾燥済みのガルデニアの花を収容する篭に少なくとも200g/分の速度で通し、抽出された分子を混合物中に拡散させる工程と、
iii)CO2が再度気体になるよう約50バールに到達するように、超臨界CO2/スクワラン/ガルデニア抽出物混合物を減圧する工程と、
iv.1)スクワラン/ガルデニア抽出物混合物を押し出すためにエタノール流を送り、該混合物を、抽出系の回収器中へ送る工程と、
iv.2)該系と外部環境との圧力差を利用して混合物を取り出し、(CO2が蒸発したため)エタノール/スクワラン/ガルデニア抽出物混合物を得る工程と、
iv.3)残っているエタノールを真空下で蒸発させる工程と、
v)乾燥済みの花の油溶媒に対する質量比が1:10となるまで、油溶媒、詳細にはスクワランを添加する工程と、
vi)1μm未満の多孔度を有する膜を通してろ過し、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物を清澄化させて、ありうる沈殿物を除去する工程。
【0052】
ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物
本出願の主題である本発明はまた、先に記載した方法によって得られるガルデニア・ヤスミノイデスの花からの油抽出物も包含する。
【0053】
本発明の目的はまた、ステロール等の非極性分子に富むガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物でもある。
【0054】
化粧用組成物
本発明の別の目的は、生理的に許容される媒質中に、少なくとも1種のガルデニア・ヤスミノイデスの花からの油抽出物を含む、化粧用組成物である。
【0055】
本発明によって実践される組成物は、先に記載した抽出物に加えて、生理的に許容されて好ましくは化粧料として許容される媒質を一般に含み、このことは、それが、毒性、非適合性、不安定性、アレルギー反応のリスクなしに、詳細にはそれが不快な感覚(発赤、つっぱり感、刺痛)を引き起こさずに、ヒトの皮膚との接触における使用に好適であることを意味する。
【0056】
有利には、前記化粧用又は皮膚科用組成物は、粉末、エマルション、マイクロエマルション、ナノエマルション、サスペンションの形態で生じてもよく、ローション、クリーム、水性ゲル又は水-アルコール溶液、発泡体、しょう液、エアロゾルの溶液若しくは分散体、又は脂質小胞の分散体の形態で生じてもよい。
【0057】
エマルションの事例では、それは、水中油エマルションであっても油中水エマルションであってもよい。
【0058】
本発明による化粧用組成物又は皮膚科用組成物はまた、多種の成分及び投与の形態に基づいて選択される溶媒も含んでもよい。
【0059】
以下を、例として挙げることができる: 水(好ましくは脱塩水又はフローラルウォーター)、エタノール等のアルコール。
【0060】
前記化粧用組成物はまた、本発明による抽出物に加えて、以下を含んでもよい:
- 当分野で典型的な少なくとも1種の添加剤、例えば、皮膚軟化剤又は湿潤剤、ゲル化剤及び/又は増粘剤、界面活性剤、油、活性成分、着色剤、保存剤、抗酸化剤、有機又は無機粉末、日焼け止め剤及び香料から選択される少なくとも1種の化合物等。
- 1種又は複数の湿潤剤、ポリオール(グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、カプリリルグリコール、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール)等、糖、ヒアルロン酸並びにこれらの塩及びエステル等のグリコサミノグリカン、並びにlipidure PMB等のポリクオタニウム。前記湿潤剤は、組成物中に、組成物の総質量に対して、0~30%、好ましくは0.005~10%の桁の濃度で存在することになる。
- 1種又は複数の皮膚軟化剤、これは、例えば、ホホバエステル、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル(ミリスチン酸オクチルドデシル、トリメチルヘキサノイン、炭酸ジカプリリル、イソステアリン酸イソステアリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)等のエステル、シアバター等のバター(シア脂(Butyrospermum parkii)バター抽出物、シアバターエチルエステル、名称LIPEX SHEASOFT、LIPEX SHEA-U、LIPEX SHEA、LIPEX SHEALIGHT、LIPEX SHEA TRISで販売されている)、又はワサビノキ(ワサビノキ油/水素化ワサビノキ油エステル)、ワックス[フサアカシア(Acacia decurrens)の花ワックス&ヒマワリ(Helianthus annuus)種子ワックス、C10~C18トリグリセリド]、植物油、フィトスクワラン、及びアルカン(ウンデカン、トリデカン)から選択されうる。前記皮膚軟化剤は、組成物中に、組成物の総質量に対して、0.1~30%、好ましくは0.5~10%の桁の濃度で存在することになる。
- 水性相のための1種又は複数のゲル化剤及び/又は増粘剤、これらは、例えば、セルロース誘導体、植物起源のガム(グアー、カロブ、アルギネート、カラゲナン、ペクチン)、微生物起源(キサンチン)、クレイ(ラポナイト)、架橋又は非架橋のホモポリマー及びコポリマー、親水性又は両親媒性、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸(AMPS)及び/又はアクリルアミド及び/又はアクリル酸及び/又はアクリル酸の塩若しくはエステル(名称ARISTOFLEX AVC、Aristoflex AVS、Aristoflex HMB、SIMULGEL NS、Simulgel EG、Simulgel 600、Simulgel 800、Pemulen、carbopol、Sepiplus 400、Seppimax zen、Sepiplus S、COSMEDIA SPで販売されている)から選択される。前記ゲル化剤及び/又は増粘剤は、組成物中に、組成物の総質量に対して0.1~10%の桁の濃度で存在することになる。
- 1種又は複数の界面活性剤、レシチン、ポリグリセロール誘導体、糖誘導体(名称MONTANOV 68、MONTANOV 202、Montanov 82、MONTANOV L、EASYNOVで販売されているグルコシド又はキシロシドの誘導体)、ホスフェート(名称SENSANOV WRで販売されているC20~C22リン酸アルキル)等。前記界面活性剤は、組成物の総質量に対して、0.1~8質量%、好ましくは0.5~3質量%の桁の濃度で存在することになる。
- 1種又は複数の活性成分、これは、生物的活性を有し、且つ生物的部位を介して皮膚上に有効性を有する、天然の、バイオテクノロジーの又は合成起源の、活性成分、例えば、ビタミンC及びその誘導体(アスコルビルグルコシド、3-o-エチルアスコルビン酸、テトライソパルミチン酸アスコルビル)、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンB3又はナイアシンアミド、パンテノール等のビタミン、少数元素、アラントイン、アデノシン、ペプチド(パルミトイルテトラペプチド-7、パルミトイルトリペプチド-1、パルミトイルペンタペプチド-4、アセチルジペプチド-1セチルエステル、アセチルテトラペプチド-5(名称NP RIGIN、MATRIXYL 3000、IDEALIFT、EYESERYLで販売されている)、植物抽出物[カンゾウ(Glycyrrhiza glabra)抽出物、ツボクサ(Centella asiatica)葉抽出物、ライムギ(Secale cereale)種子抽出物]、酵母抽出物、グリコール酸又は乳酸等のアルファヒドロキシ酸、セチルトラネキサムエステル等のトラネキサム酸及びその誘導体、その他から選択される。前記活性成分は、組成物中に、組成物の総質量に対して、0.1~10%の桁の濃度で存在することになる。
【0061】
化粧料中で典型的に使用される他の添加剤がまた、本発明による組成物中に存在してもよく、詳細には、当技術分野で周知の保存剤、抗酸化剤又は香料である。
【0062】
当業者であれば、ありうる添加剤のセットから、組成物がそれらの性質の全てを保持することになるように、組成物に添加されることになるものの種類と量との両方を選択することができる。
【0063】
本発明の目的はまた、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物の、老化又は光老化に起因する皮膚への変化を予防する及び/又は処置するための、化粧上の使用である。
【0064】
詳細には、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物は、滑らかにする抗老化効果を与えるために使用することができる。
【0065】
この実施形態では、該抽出物又は該組成物は、変質した皮膚に適用されるが、病理学的な皮膚には適用されない。
【0066】
本発明の別の目的は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性を阻害する作用剤として先に記載したもの等の、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物の、非治療的な化粧上の使用である。
【0067】
最後に、本発明は、細胞の代謝を刺激する、詳細にはTIMP1及び/又はTIMP2遺伝子の発現を刺激する作用剤として先に記載されたもの等の、ガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物の、非治療的な化粧上の使用を標的とする。
【0068】
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例によって例示する。
【実施例
【0069】
実施例:ガルデニア・ヤスミノイデスの油抽出物で処理した正常なヒトのメラノサイトにおける2種のMMP阻害剤の活性
抽出物の調製:
本発明によるガルデニア・ヤスミノイデスの油抽出物を、以下の工程によって調製した:
a)集めた生花を、それらの品質を保存するために、日光に当て又は真空下40℃にて乾燥させて、次いで微細にミリングする工程と、
b)ミリング済みの花を超臨界CO2抽出器の篭中に置く工程と、
c)実験室規模の450バール又は工業規模の300バールと等価な圧力へ、二酸化炭素(CO2)を圧縮する工程と、
d)次いで、圧縮済みCO2を、化粧用溶媒、スクワランと、99:1の比(CO2:スクワラン、体積比)で混合する工程と、
e)該混合物を熱交換器中へ送り、60℃の温度に到達させる工程と、
f)該混合物を、少なくとも1時間30分間、少なくとも200g/分の速度で、乾燥済みのガルデニアの花を収容する篭を通して、抽出済み分子を混合物中に分散させる工程と、
g)次いで、超臨界CO2/スクワラン/ガルデニア抽出物混合物を減圧して、圧力を約50バールに低下させ、CO2が再度気体となる工程と、
h)スクワラン/ガルデニア抽出物混合物を押し出すためにエタノール流をこの点まで送り、該混合物を抽出系の回収器中へ送る工程と、
i)該系と外部環境との圧力差を利用して該混合物を取り出し、(CO2が蒸発したため)エタノール/スクワラン/ガルデニア抽出物混合物をもたらす工程と、
j)残っているエタノールを真空下で蒸発させる工程と、
k)該抽出物の最終質量が、使用する植物の質量よりも10倍多くなるように必要な量のスクワランを再添加する(例えば使用する乾燥済みの花100gにスクワラン1000gを添加する)工程と、
l)1μm膜上で抽出物をろ過して、ありうる沈殿物を除去する工程。
【0070】
プロトコル
異なる3人の提供者からの正常なヒトの表皮のメラノサイトを、37°C及び5%CO2にて72時間、1%HMGSで補充したM254媒質中、6ウェルプレート上で培養した。70%の培養密度にて、細胞を、調製済みガルデニア・ヤスミノイデスの油抽出物の非細胞傷害性濃度(0.25%)で24時間インキュベートした又はしなかった(非処理条件)。それぞれの条件を、二重に行った。総てのRNAを、供給業者の推奨によってRNeasy 96 Plate Extraction kit(Qiagen社)を用いて抽出した。RNAの量及び品質を、分光光度計(Multiskan GO、Thermo Fisher社)により評価した。次いで、相補的DNAを、供給業者によって記載されている手順(iScript SUPER mix、Biorad社)によりRNAマイクログラムから合成し、対象の遺伝子の発現のレベルを定量的PCRによって決定するのに使用した。分析を、正規化後のCtを、参照遺伝子の発現に対して比較する方法によって、Biorad Maestro CFSソフトウェアを用いて行った。
【0071】
結果:
本発明によるガルデニア・ヤスミノイデスの油抽出物(GO)によるメラノサイトの処理後に得た結果を図1に示す。非処理のメラノサイトと比較して、0.25%GOで処理したメラノサイトにおいて、TIMP1及びTIMP2遺伝子(TMP: Tissue Inhibitor of Metalloproteinase、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤)の発現の有意な増加を観察した。処理したメラノサイトは、このように、非処理のメラノサイトよりも、平均(n=3)して、2.15倍多いTIMP1及び2.45倍多いTIMP2を発現した。
【0072】
【表1】
【0073】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性の特定の阻害剤として作用する、TIMPファミリーの4つのメンバー(TIMP1~4)が存在する。MMPは、真皮の細胞外マトリックスの崩壊及び皮膚の老化に関わることが知られている。詳細には、UV線への暴露に続いてMMPの生成が高くなることが観察され、これが、皮膚の光老化に寄与する。この度、メラノサイトが、特にMMPにおいて分泌することによって、きわめて高いタンパク質分解活性を有することが示された。そのため、本発明によるガルデニア・ヤスミノイデスの花の油抽出物は、メラノサイト中のTIMPの発現を刺激することによってMMPの活性を阻害することができ、したがって、例えば滑らかにする抗老化効果によって、老化及び/又は光老化を予防する及び/又は処置することに関与することができる。
【0074】
実施例:化粧用組成物
以下の組成物は、当業者であれば、従来調製することができる。以下に示す量は、質量パーセントで表している。全てが大文字である成分は、INCI名によって特定されているものである。
【0075】
A-油/水エマルション
【0076】
【表2】
【0077】
B-油/水エマルションクリーム
【0078】
【表3】
【0079】
これらの組成物は、毎日、朝及び/又は夜に、皮膚に適用することができる。
図1