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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】深度計シール
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20240510BHJP
   G01L 7/08 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G01L19/14
G01L7/08
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022069858
(22)【出願日】2022-04-21
(65)【公開番号】P2022171593
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】21171306.0
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アルノー・テュエ
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-102043(JP,A)
【文献】特開2011-002450(JP,A)
【文献】特開2018-072127(JP,A)
【文献】特開2018-048936(JP,A)
【文献】特開2015-200192(JP,A)
【文献】特開2006-097807(JP,A)
【文献】特開2005-164478(JP,A)
【文献】特表2015-507161(JP,A)
【文献】米国特許第04936148(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00 - 15/14
G01L 7/00 - 23/32
G01L 27/00 - 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深度計(100)であって、
- 底部(28)によって閉じられたケース(6)であって、前記底部(28)は、前記底部(28)が前記ケース(6)に設けられた場合に前記深度計(100)の外側と流体的に連通する圧力チャンバ(29)を形成する、ケース(6)と、
- 前記圧力チャンバ(29)の上方に配置された変形可能膜(12)を備える圧力センサ(17)と、
記圧力チャンバ(29)に対して上方に位置する前記ケース(6)の気密性を確保する、シール(21、121)と、を備え
前記シール(21、121)は、半径方向内側側面(213、223)と、半径方向外側側面(214、224)と、前記変形可能膜(12)の側における上面(212)とは反対側に存する底面(211)と、を備え、
前記シール(21、121)の前記半径方向内側側面(213、223)の半径方向切断面の輪郭における半径方向と直交する第1直線部分(h1)は、前記半径方向外側側面(214、224)の前記輪郭における半径方向と直交する第2直線部分(h2)よりも長く、
前記半径方向内側側面(213、223)および前記半径方向外側側面(214、224)は、前記底面(211)から実質的に直交な方向に沿って延びることを特徴とする、深度計(100)。
【請求項2】
前記シール(21、121)は圧縮され、前記変形可能膜(12)を前記底部(28)に対して支持する支持要素を形成することを特徴とする、請求項に記載の深度計(100)。
【請求項3】
前記シール(21、121)は、前記変形可能膜(12)の周辺領域(13)に配置されることを特徴とする、請求項に記載の深度計(100)。
【請求項4】
前記変形可能膜(12)の前記周辺領域(13)は、前記圧力チャンバ(29)内の圧力の増加の影響下で前記変形可能膜(12)が変形されるときに、前記シール(21、121)に圧力を印加した状態で前記シール(21、121)の上で旋回できることを特徴とする、請求項に記載の深度計(100)。
【請求項5】
前記底部(28)は、前記シール(21、121)を収納するためのチャネルまたは溝がないことを特徴とする、請求項に記載の深度計(100)。
【請求項6】
前記底部(28)は、前記圧力チャンバ(29)の底部分を形成する上面(28a)を備え、前記シール(21、121)は、前記圧力チャンバ(29)の前記底部分を形成する前記底部(28)の前記上面(28a)に直接配置されることを特徴とする、請求項に記載の深度計(100)。
【請求項7】
前記深度計(100)は、前記シール(21、121)のセンタリングを容易にするために、前記底部(28)の前記上面(28a)に配置されたインデクス部材(31)を備えることを特徴とする、請求項に記載の深度計(100)。
【請求項8】
前記シール(21、121)は、前記圧力チャンバ(29)の周辺部分を区切ることを特徴とする、請求項に記載の深度計(100)。
【請求項9】
前記変形可能膜(12)は、金属ディスクによって、またはアモルファス金属合金ディスクによって形成されることを特徴とする、請求項に記載の深度計(100)。
【請求項10】
請求項に記載の深度計(100)を備えた、計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、流体の圧力を受ける深度計をシールするためのデバイスに関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、深度計のシール、より具体的には、膜圧センサを備えた機械式深度計のシールに関し、シールは、膜圧センサにおける気密性を確保する。
【0003】
本発明はまた、そのような機械式深度計を備えた計時器に関する。
【背景技術】
【0004】
図1に示されるように、機械式深度計1は、たとえば、特に、深度計ケース6に収納された圧力センサを使用して、文字盤4の目盛3に面する回転針2によって水深を示すことを可能にする。圧力センサは、従来、機械式トランスミッションによって針2に接続されている。
【0005】
圧力センサは、一般に、ケース6に配置された圧力チャンバ内に収納され、そのようなチャンバは、加圧された流体を受け入れることを目的としている。
【0006】
機械式深度計では、圧力センサが、たとえば、弾性たわみの振幅を変更するために同心のうねりを備えた金属ディスクの形態で、変形可能膜を備えることが一般的である。
【0007】
そのような圧力センサを固定し、深度計ケースの内側と外側との間の気密性を確保するために、たとえば、特許文献1を参照して示すように、変形可能膜をはんだ付けすること、または特許文献2で提案されているように変形可能膜を把持することが知られている。しかしながら、これらの変形可能膜の製造は比較的複雑であり、満足のいく再現性を有していない。さらに、圧力センサが、その使用圧力を超える圧力を受けた場合、変形可能膜が、その塑性変形範囲に入らないことを保証することは容易ではない。
【0008】
これらの欠点を改善するために、製造業者は、起伏のあるこれら金属ディスクを、平坦な変形可能膜によって置き換えたが、固定方法は、かなりの実質的な欠点を生み出し続けている。実際、変形可能膜の周辺領域が、センサ構造にはんだ付けされると、これにより、膜が塑性変形する前に耐えることができる弾性変形が減少するため、圧力センサの感度が低下する。
【0009】
さらに、はんだ付けは、はんだごとに異なる剛性特性を導入する。結果として生じる変形可能膜のたわみの不正確さは、明らかにセンサの精度を低下させ、さらに、変形可能膜の塑性変形を防ぐバンキングを使用することを困難にする。センサの構造を設定して変形可能膜を固定することにも、上記のいくつかの欠点がある。
【0010】
これらの欠点を部分的に改善するために、単純な設計の圧力センサが提案され、シールの使用によって十分な気密性を維持しながら、変形可能膜が流体の圧力下で可能な限り自由に屈曲することを可能にする。
【0011】
したがって、特許文献3は、圧力チャンバ内の流体の圧力の増加の影響下で変形可能膜が曲がるとき、変形可能膜の周辺領域がバンキングストリップ上で旋回できるように、変形可能膜の周辺領域を深度計の本体またはカバーに堅固に接続しないことを提案している。そのようなアーキテクチャは、深度計1のケース6の周辺領域を示す図2によって表される。
【0012】
そのようなアセンブリの気密性を確保するために、Oリングタイプのシール7が、変形可能膜8の周辺領域に対して圧縮され、圧力チャンバ10に対する深度計の内部容積の気密性を確保する。シール7はさらに、特に変形可能膜8が旋回するときに、変形可能膜8の周辺領域をバンキング9に対して絶えず押し付けるための支持要素として機能する。
【0013】
Oリング7は、深度計の底部に形成された長方形の輪郭を有する円形溝11に収納されている。そのような円形溝11は、組立て中のOリング7の位置決めを容易にするという利点を有する。そのような円形溝11はまた、組立て中、ならびに圧力チャンバ10の加圧、したがって変形可能膜8の変形中に、Oリング7の圧縮時の半径方向の広がりを制限することを可能にする。したがって、円形溝11は、深度計の使用範囲において必要な気密性を確保するために、変形可能膜8に十分な接触圧力を確保することを可能にする。
【0014】
しかしながら、特許文献3に記載され、図2に示されるように、深度計を集中的に使用する場合、および/または、ユーザによるその不十分な洗浄の場合、塩残留物が、円形溝11またはこの円形溝の近くに蓄積する可能性があり、この領域の腐食のリスクおよび変形可能膜8の早期摩耗をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】DE10147124
【文献】WO01/01098
【文献】EP2264399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この文脈では、本発明は、特に変形可能膜を用いて、変形可能膜のこの周辺領域に塩の残留物が蓄積することを防ぐように、深度計のシーリングゾーンで様々な要素の形状を単純化することを可能にしながら、そのような使用のために必要な気密性レベルを正しく確保することを可能にする、圧力センサでの使用に特に適した輪郭を有する新しい深度計シールを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のために、本発明は、半径方向内側側面および半径方向外側側面を備えた回転軸Zの深度計のためのシールに関し、前記シールの半径方向内側側面は、半径方向外側側面の高さよりも高い高さを有することを特徴とする。
【0018】
上記の段落で述べた特徴に加えて、本発明によるシールは、個別にまたは技術的に可能な任意の組合せにしたがって考慮される、以下の追加の特徴、すなわち、
- シールは、半径方向切断面に沿って、多角形形状を有する断面を有し、
- 断面は、2つの平行な側部を備えた台形形状を備え、台形の2つの平行な側部は、半径方向外側側面および半径方向内側側面によって形成され、
- 断面は、底面に対して少なくとも1つの傾斜した平面部分を備えた上面を有し、
- 上面は、底面と平行な第1の平面部分と、底面に対して傾斜した平面部分とを備え、
- 前記少なくとも1つの傾斜した平面部分は、前記底面に対して傾斜を有し、前記傾斜は、0°より大きく、45°以下であり、
- シールは、半径方向切断面に沿って、1/4円形状を有する断面を有し、
- シールは、エラストマ製、好ましくはニトリル製であり、
- シールは、深度計圧力センサの変形可能膜に対して圧縮されるように構成される、のうちの1つまたは複数を有することができる。
【0019】
本発明はまた、
- 底部によって閉じられたケースであって、底部は、深度計の外側と流体的に連通している圧力チャンバを区切る、ケースと、
- 前記圧力チャンバの上方に配置された変形可能膜を備えた圧力センサと、
- 本発明によるシールであって、前記圧力チャンバに対する前記ケースの気密性を確保する、シールとを備えた深度計に関する。
【0020】
有利には、シールは圧縮され、前記変形可能膜の支持要素を形成する。
【0021】
有利には、シールは、前記変形可能膜の周辺領域に配置される。
【0022】
有利には、変形可能膜の周辺領域は、圧力チャンバ内の圧力の増加の影響下で変形可能膜が変形するときに、シールを押して旋回できる。
【0023】
有利には、底部は、シールを収納するためのチャネルまたは溝がない。
【0024】
有利には、底部は、前記圧力チャンバの底部分を区切る上面を備え、シールは、前記圧力チャンバの前記底部分を区切る底部の上面に直接配置される。
【0025】
有利には、深度計は、前記シールのセンタリングを容易にするために、底部の上面に設けられたインデクス部材を備える。
【0026】
有利には、シールは、前記圧力チャンバの周辺部分を区切る。
【0027】
有利には、変形可能膜は、金属ディスクによって、またはアモルファス金属合金ディスクによって形成される。
【0028】
有利には、ディスクは平坦である。
【0029】
本発明はまた、計時器、たとえば腕時計、より具体的には、本発明による深度計を備えたダイビング腕時計に関する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の目的、利点、および特徴は、以下の図を参照して以下の詳細な説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】先行技術による膜圧センサを備えた深度計の概略正面図である。
図2図1に示される先行技術による深度計の周辺領域のバンキングの線IIに沿った部分的な半径方向断面図である。
図3】膜圧センサおよび本発明によるシールを備えた、本発明による深度計の実施形態の例の概略部分半径方向断面図である。
図4図3の詳細IIIの、より具体的には、深度計が大気圧よりも高い外圧を受けていないときの、本発明による圧力センサおよびシールの周辺領域を示す拡大図である。
図5図3の詳細IIIの、より具体的には、深度計が大気圧よりも高い外圧を受けたときの、本発明による圧力センサおよびシールの周辺領域を示す拡大図である。
図6】本発明によるシールの第1の実施形態の例の半径方向切断面に沿った概略断面図である。
図7】本発明によるシールの第2の実施形態の例の半径方向切断面に沿った概略断面図である。
図8図6に示される本発明によるシールの第1の実施形態の例の代替実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
すべての図において、他に特定されない限り、共通の要素は同じ参照番号を有する。
【0033】
図1および図2は、本発明の前文において上述された。
【0034】
図3から図5は、本発明による、回転軸Zの深度計100を概略的に表す。
【0035】
深度計100は、たとえば、リストレット(図示せず)によって、ユーザの手首に装着されることを意図された深度計である。従来、本発明の深度計100は、水深を示す針2を備え、針2は、深度計100のケース6に収納された圧力センサ17を用いて、文字盤4に設けられた目盛3に面して回転する。
【0036】
ケース6の底部に配置された圧力センサ17は、圧力センサ17の軸方向の動きを、深度計100の回転軸Zに沿って、回転軸Zの周りの回転運動へ変換するように構成された機械式トランスミッション部材19によって針2に接続されている。
【0037】
トランスミッション部材19は、特に、フィーラスピンドル23を備えた回転シャフト22を備える。明らかに、本発明の文脈を逸脱することなく、他の機械式トランスミッション部材アーキテクチャを想定できる。
【0038】
深度計100は、同じケース6における腕時計、特にダイビング腕時計と組み合わせることができるが、それは必須ではないことに留意されたい。この場合、ケース6はさらに、時計のムーブメント(図示せず)を備え、文字盤4は、時間情報に関連する情報を示すための目盛を備える。
【0039】
ケース6は、貫通された底部11によって閉じられている。圧力センサ17は、たとえば、図3から図5に示されるように、ケース6の底部11に取り付けられる。
【0040】
圧力センサ17は、底部28によって区切られた圧力チャンバ29の上方に配置される。圧力チャンバ29は、穴30を介してケース6の外側と連通しており、その結果、圧力チャンバ29は、深度計100の外側と流体的に連通する。したがって、この圧力チャンバ29に含まれる流体は、深度計100の周りに広がる圧力を受ける。
【0041】
圧力センサ17は、たとえば平坦で円形の変形可能膜12を備え、ここでは、周辺領域13は、底部28と、圧力センサ17の変形可能膜12の変形を制限できるケース6に固定された剛性バンキング14との間にクランプされる。
【0042】
図3に示される実施形態の例では、剛性バンキング14は、特にフィーラスピンドル23を挿入するための中央開口部15を備えている。したがって、フィーラスピンドル23は、開口部15内で垂直に移動し、変形可能膜12の変位(変形)にしたがってシャフト22を旋回させることができる。
【0043】
明らかに、剛性バンキング14の形状は、使用されるトランスミッション部材のアーキテクチャに応じて、異なっていてもよく、中央開口部15を有していなくてもよい。
【0044】
戻りばね(図示せず)は、これらの2つの要素間の恒久的な接触を確保するために、フィーラスピンドル23の自由端を、変形可能膜12に押し付けたままにする。
【0045】
変形可能膜12の開口部15と周辺領域13との間で、剛性バンキング14は、変形可能膜12とともに、開口部15を介してケース6の内部容積の残りと連通しているチャンバ18を区切る、わずかに凹状をした底面を有する。この凹面は、変形可能膜12が、以下に定義される制限圧力を超える差圧を受けると、変形可能膜12のたわみを制限する停止面20を形成する。
【0046】
ケース6の内部容積は、基準圧力で、空気または別のガスを含む。
【0047】
回転軸Zのシール21は、変形可能膜12に対して、より具体的には、その周辺領域13において圧縮され、圧力チャンバ29およびケース6の外側に対するケース6の内部容積の気密性を確保する。
【0048】
シール21はまた、変形可能膜12の変形状態に関係なく、変形可能部材12の周辺領域13を、剛性バンキング14に対して常に押し付けるように構成された変形可能膜12の支持要素を形成する。変形可能膜に対するシール21の圧縮は、ケース6の気密性を確保するのに十分な接触圧力を得ることを可能にする。
【0049】
変形可能膜12が変形され、圧力センサ17がチャンバ29、18間で差圧を受けるとき、本発明による圧力センサ17およびシール21の周辺領域をより具体的に示す図5に示されるように、シール21は、ケース6の内部容積の気密性を確保するために必要な接触圧力を確保しながら、変形可能膜12の周辺領域13の旋回を可能にするように構成される。
【0050】
底部28は、底部28の周辺領域に配置された垂直リム24を有し、垂直リム24は、剛性バンキング14に隣接し、垂直リム24の高さは、深度計100の圧力センサ17の使用圧力の全範囲でそれらの間の気密性を確保するために、図4に示されるように、シール21が、変形可能膜12に対して実質的に予応力がかけられるように選択される。
【0051】
シール21の圧縮は、変形可能膜12の周辺領域13を、剛性バンキング14の一部、すなわち、凹状停止面20の縁にしたがって、実際にシール21の位置に面して配置される支持ストリップ25に押し付ける。この例では、支持ストリップ25は平面であるが、丸みを帯びたまたは隆起した横方向の輪郭を有することもできる。
【0052】
変形可能膜12の材料および厚さは、変形可能膜12の変形が、センサ17が受ける圧力の全範囲において弾性範囲内に留まるように選択される。
【0053】
変形可能膜12は、そのような用途のために、当業者によって従来使用され、知られている材料から製造される。
【0054】
好ましくは、変形可能膜12は、金属ディスク、または、金属ガラスとしても知られるアモルファス金属合金で作られたディスクである。
【0055】
静止時のその平面形状のおかげで、変形可能膜を製造するための方法は、たとえば、ステンレス鋼シートを切断することによって容易に実行される。シール21を除いて、圧力センサ17の他の要素は、たとえば、金属または剛性の合成材料で作ることができる。
【0056】
深度計100が水中のある深さまで沈められると、変形可能膜12は、変形可能膜12のいずれかの側に位置するチャンバ29、18間の増加した差圧の下で弾性的に屈曲する。変形可能膜12のたわみは、フィーラスピンドル23に伝達される。フィーラスピンドル23と針2との間のトランスミッション部材19による機械式トランスミッションは、圧力変化にしたがって針2の実質的な線形移動を生成するように配置される。しかしながら、トランスミッション部材19および使用される異なるギアトレインに応じて、針2の非線形移動を生成することも可能である。この場合、文字盤は、非線形目盛3を有する。
【0057】
停止面20に与えられた形状は、上記の制限圧力に対する変形可能膜12の変形形状の輪郭に有利に対応する。この輪郭は、たわみが小さい円形の膜では理論的に放物線状であり、機械加工が容易な球形のドーム形状で接近できる。好ましくは、前記制限圧力は、深度計100の最大使用圧力よりもわずかに大きい。深度計100は一般に、最大使用圧力よりも実質的に高い最大試験圧力を受ける必要があるので、停止面20の主な役割は、これら試験条件下で、変形可能膜12の塑性変形を阻止することである。なぜなら、変形可能膜12が次に、それよりもはるかに剛性の高い剛性バンキング14によって押されるからである。
【0058】
図3から図5に示される実施形態の例では、開口部15に面する変形可能膜12の中央部分のみが追加のたわみを受ける可能性があるが、追加の応力は低減され、適切な寸法で、弾性範囲内に留まる。明らかに、これらの利点は、圧力センサが、誤って過度の圧力を受けた場合、たとえば圧力計のウォータハンマの場合にも存在する。
【0059】
変形可能膜12の周辺領域13は、それを支持する構造に、はんだ付けも硬化もされていないことを考えると、支持ストリップ25上で実質的に自由に回転して、傾斜して、バンキング面20に近づくことができる。
【0060】
皿穴26が、シール21と垂直リム24との間に配置され、変形可能膜12の縁がその変形中に自由に下降することを可能にすることにも留意されたい。
【0061】
図6は、本発明によるシール21の第1の実施形態の例を表し、図7は、本発明によるシール121の第2の実施形態の例を表す。
【0062】
図6は、その非圧縮状態における、本発明によるシール21の第1の実施形態の例の、半径方向切断面に沿った断面Sを、より具体的に概略的に示す。
【0063】
図7は、その非圧縮状態における、本発明によるシール121の第2の実施形態の例の、半径方向切断面に沿った断面S’を、より具体的に概略的に示す。
【0064】
図2を参照して本発明の前文に記載された先行技術から知られているシールとは異なり、本発明によるシール21、121は、非円形断面を有し、半径方向内側部分Piと半径方向外側部分Peとの間で対称性を有さない。
【0065】
図6および図7において、半径方向内側部分Piは、シール21、121の断面S、S’の幅Lの中央を表す点線軸の左側に配置され、半径方向外側部分Peは、問題の点線軸の右側に配置される。
【0066】
「半径方向内側」および「半径方向外側」という表現は、明らかに、深度計100の回転軸Zおよびシール21、121に対して考慮されるべきであり、両回転軸はマージされている。したがって、半径方向内側部分、側面、または面は、半径方向外側部分、側面、または面よりも、半径方向に回転軸Zに近い。
【0067】
側面という用語は、シール21、121の外側部分を示す。
【0068】
図6から図8に示されるように、シール21、121は、その非圧縮状態において、半径方向外側側面の高さh2よりも高い高さh1を有する半径方向内側側面213、223を有し、したがって、シール21、121の半径方向内側部分Piと半径方向外側部分Peとの間の材料の厚さの差をもたらす。
【0069】
たとえば、半径方向内側側面213、223の高さh1と、半径方向外側側面214、224の高さh2との比は、2から1.25の間である。
【0070】
たとえば、半径方向内側側面213、223の高さh1は、シール21、121の幅Lと同一である。
【0071】
半径方向内側側面213、223と、半径方向外側側面214、224との間の高さの差は、シール21、121の半径方向内側部分Piと半径方向外側部分Peとの間の材料体積の差を有利に得ることを可能にする。
【0072】
半径方向内側部分Piと半径方向外側部分Peとの間のこの差は、変形可能膜12が変形してシール21、121で旋回するときに、シール21の接触表面積全体にわたって十分な接触圧力を保持することを可能にするので、ケース6への底部28のクランプおよび取付け中に、シール21、121の圧縮中に、以前に得られた接触圧力を解放する。実際、変形可能膜12は、正圧下で変形すると、剛性バンキング14に向かって移動し、したがってケース底部28から離れる。
【0073】
本発明によるシール21、121は、図2に示されるように従来は底部に配置された、シールを収納するためのチャネルまたは溝の使用を有利に排除することを可能にする形状を有し、したがって、必要な気密性レベルを確保するために、変形可能膜12の変形中に、シールの半径方向の広がりを制限し、十分な圧縮を維持する目的で、シールに半径方向に応力を加えるために、その半径方向内側部分に支持面を有する必要がある。
【0074】
実際、本発明によるシール21、121は、変形可能膜12に対するその圧縮中に、その半径方向の広がりを制限できる支持面を必要としないように、特にその半径方向内側部分Piにおいて十分な剛性を有する。
【0075】
したがって、本発明によるシール21、121は、変形可能膜12の周辺領域13に近いこの領域に、塩残留物の蓄積を引き起こす、そのようなチャネルまたは溝の過圧を可能にしながら、深度計100の圧力センサ17の使用圧力の全範囲内で、ケース6の気密性を確保することを可能にする。
【0076】
したがって、本発明によるシール21、121は、深度計100の使用範囲内で必要な気密性レベルを確保しながら、深度計100の不十分な洗浄の場合に塩残留物の蓄積を促進する任意のリブ、粗さを、有利に除去することを可能にする。
【0077】
本発明によるシール21、121は、有利には、底部28の上面28a上に直接配置され、圧力チャンバ29の底部分を区切っており、圧力チャンバ29の上部は、変形可能膜12の底面によって区切られる。
【0078】
本発明によるシール21、121を用いて、圧力チャンバ29の周辺部分は、シール21、121によって、特にその半径方向内側側面213、223によって直接区切られる。
【0079】
しかしながら、図4および図5に示されるように、底部28は、シール21、121に対する半径方向外側の領域に、たとえば垂直またはわずかに傾斜した壁27を有することができ、シール21、121の位置決めのための横方向のバンキングを形成できる。したがって、組立て中のその滑りが防止され、剛性バンキング14の支持ストリップ25に面するシール21、121の正しい位置決めが確保される。この領域は、圧力チャンバ29内を循環する流体と連通しておらず、塩残留物の蓄積のリスクがなく、したがって、変形可能膜12の早期劣化のリスクがない。
【0080】
図6を参照して示すように、シール21の第1の実施形態の例は、多角形、より具体的には、2つの平行な側部を備えた台形形状の断面Sを有し、台形の2つの平行な側部は、シールの半径方向外側側面214および半径方向内側側面213によって形成される。
【0081】
シール21の断面Sは、異なる平面または面の間に結合部分を形成する丸みを帯びたセクタによって互いに分離された平面を有する。
【0082】
より具体的には、シール21は、4つの平面、すなわち、
- 底面211と、
- 上面212と、
- 上記の半径方向内側側面213を形成する半径方向内側面と、
- 上記の半径方向外側側面214を形成する半径方向外側面とを備える。
【0083】
円の弧に成形された断面を有する異なる面を接続する丸みを帯びたセクタであって、丸みを帯びた面は、比較的大きな曲率半径を有することができる。
【0084】
好ましくは、半径方向内側面および半径方向外側面は、底面211に実質的に垂直な方向に沿って延びる。したがって、シール21の側面213、214は、底面211に対して実質的に垂直に延びる。
【0085】
シール21の上面212は、底面211に対して、たとえば、0°より大きく45°以下の傾斜を有する少なくとも1つの部分を有する。
【0086】
図6に示される実施形態の例では、上面212全体が傾斜しているが、図8に示される代替の実施形態によれば、上面212は、底面211と平行な第1の平面部分212aと、底面211に対して傾斜を有する第2の平面部分212bとを有すると想定できる。この場合、傾斜した平面部分212bは、第1の平面部分212aに対して半径方向外側の領域に配置される。
【0087】
変形可能膜12と接触することを意図されたシール21の上面212の少なくとも一部の傾斜は、上記で説明したように、変形可能膜12の旋回中のシール21の振舞いをさらに改善することを可能にする。
【0088】
シール21の上面212の少なくとも一部の傾斜はまた、チャンバ29内で優勢な圧力に関係なく、変形可能膜12の変形中に、最適でより均一な接触圧力を確保することを可能にする。
【0089】
少なくとも1つの傾斜した上面を生成することにより、深度計100の使用の全圧力範囲内で、シール21と変形可能膜12との間の十分な接触圧力レベルを確保することが可能になる。
【0090】
したがって、この特定の形状によって、本発明によるシール21は、チャネルまたは溝によって形成された支持壁の排除による変形可能膜12の旋回中の圧力損失を補償することを可能にする。したがって、シール21は、特に、図5に例示されるように膜が変形するとき、気密の必要性が最大のとき、およびシールの広がりを制限するチャネルまたは溝がなくても、必要な気密性レベルを確保することを可能にする。
【0091】
さらに、本発明によるシールによって、変形可能膜12および底部28における接触圧力は、チャネルまたは溝がない場合、円形Oリングと比較して、表面積全体にわたってより均一である。
【0092】
図7は、本発明によるシール121の第2の実施形態の例を示す。
【0093】
シール121は、以下に説明するものを除いて、上述した第1の実施形態の例と同一である。したがって、第1の実施形態の例を参照して説明されたすべての特徴は、この第2の実施形態の例にも適合する。
【0094】
シール121はまた、4つの平面、すなわち
- 底面221と、
- 上面222と、
- 上記の半径方向内側側面223を形成する半径方向内側面と、
- 上記の半径方向外側側面224を形成する半径方向外側面とを備える。
【0095】
この第2の実施形態の例では、傾斜した上面212は、底面221と実質的に平行で、寸法が縮小された(たとえば、L/2のオーダの)平坦な上面222によって置き換えられ、上面222と半径方向外面224との間の結合セクタ225は、典型的にはL/2のオーダである、より大きな曲率半径を有している。
【0096】
したがって、上面222と、半径方向外側側面224を形成する半径方向外面とは、典型的にはL/2のオーダである、第1の実施形態の例よりも小さい寸法を有する。
【0097】
この第2の実施形態の例によるシール121の断面は、1/4円形状に類似することができる。
【0098】
第1の実施形態の例と同様に、この第2の実施形態の例によれば、シール121のこの形状は、必要な気密性レベルを確保するために、シールの圧縮中に、シールの半径方向の広がりを制限し、目標圧縮を維持する目的で、シールに半径方向に応力を加えるために、従来、底部28に配置されたシールを収納するためのチャネルまたは溝の使用と、その半径方向内側部分に支持面を有する必要性とを有利に排除することを可能にする。
【0099】
大きな表面積を有する丸みを帯びた面225はまた、拡張された表面積にわたって最適かつ均一な接触圧力を確保にするために、変形可能膜12の旋回中、シール121の振舞いを改善することを可能にする。
【0100】
明らかに、他のシール断面輪郭は、半径方向外側部分に対して半径方向内側部分でより大きな材料体積を有し、接触圧力で均一性を失うことなく圧力差を受けたときに、シールの上面が変形可能膜12の旋回にしたがうことを可能にする輪郭を有している限り、本発明の文脈を逸脱していないと想定される。
【0101】
シール21、121は、エラストマ製、好ましくはニトリル製である。
【0102】
底部28はまた、チャネルまたは溝がない場合にシール21、121の位置決めおよびセンタリングを容易にするために、底部28の上面28aの少なくとも一部に配置されたインデクス要素31を備えることができる。
【0103】
このインデクス要素31は、ボスなどの隆起を形成する。インデクス要素31は、底部28の上面28aの少なくとも一部にわたって円形に延びる。好ましくは、インデクス要素31は円形である。
【0104】
そのようなインデクス要素31は、組立て中のシール21、121の位置決めおよびセンタリングを容易にする視覚的および/または感覚的インジケータを形成する。このインデクス要素31は、シール21、121の高さ、または垂直リム27よりも実質的に低い高さを有することに留意されたい。実際、説明および表示されるように、インデクス要素31は、シール21、121を位置決めするためのチャネルまたは溝を形成することは意図されていないが、シール21、121の正しいセンタリングを示すことができるわずかなボスを形成する。
【0105】
圧力センサ17の組立てに関して、特に、
- 剛性バンキング14をケース6に挿入し、
- シール21、121を底部28の上面28aに配置し、
- シール膜12をシール21、121に取り付け、
- 通常の方式で底部28をケース6に固定し、第2の垂直リム24の高さが、シール21、121に加えられる予応力を自動的に決定することしか単に必要とされないので、圧力センサ17の組立ては、極めて単純であると容易に理解される。
【0106】
本発明はまた、腕時計などの計時器、特に、計時器ケースに対する圧力センサの気密性を確保できる本発明による深度計およびシールを備えたダイビング腕時計に関する。
【0107】
本発明によるシールはまた、以下の利点、すなわち、
- 潜水深度に関係なく、したがって圧力センサの位置に関係なく、必要な気密性レベルを確保すること、
- 深度計、特にダイビングウォッチで従来使用されているシールと同様のサイズ、
- シールを配置するためのチャネルまたは溝を排除することにより、変形可能膜の周辺領域の腐食の問題を取り除くことを可能にする。
【符号の説明】
【0108】
1 深度計
2 回転針、針
3 目盛
4 文字盤
6 ケース
7 シール
8 変形可能膜
9 バンキング
10 圧力チャンバ
11 底部、円形溝
12 変形可能膜
13 周辺領域
14 剛性バンキング
15 開口部
17 圧力センサ
18 チャンバ
19 トランスミッション部材
20 停止面、バンキング面
21 シール
22 シャフト
23 フィーラスピンドル
24 垂直リム
25 支持ストリップ
26 皿穴
27 垂直リム、壁
28 底部
28a 上面
29 圧力チャンバ
30 穴
31 インデクス要素、インデクス部材
100 深度計
121 シール
211 底面
212 上面
212a 第1の平面部分
212b 第2の平面部分
213 半径方向内側側面
214 半径方向外側側面
221 底面
222 上面
223 半径方向内側側面
224 半径方向外側側面
225 丸みを帯びた面、結合セクタ
h1 高さ
h2 高さ
L 幅
Pe 半径方向外側部分
Pi 半径方向内側部分
S 断面
S’ 断面
Z 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8