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特許7486554耐候性および耐衝撃性に優れた消光性高分子組成物およびこれを含む無光沢シート
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  • 特許-耐候性および耐衝撃性に優れた消光性高分子組成物およびこれを含む無光沢シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】耐候性および耐衝撃性に優れた消光性高分子組成物およびこれを含む無光沢シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20240510BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20240510BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20240510BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240510BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240510BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240510BHJP
   C08L 25/14 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C08L51/04
C08L25/12
C08G81/00
B32B27/30 A
B32B27/30 B
B32B27/18 Z
C08J5/00 CET
C08J5/00 CEY
C08L25/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022136443
(22)【出願日】2022-08-30
(65)【公開番号】P2023037595
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0117851
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515299911
【氏名又は名称】ハンナノテク カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ハ ド ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム ス ワン
(72)【発明者】
【氏名】ハ スン ウク
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0185655(US,A1)
【文献】特開平11-060883(JP,A)
【文献】米国特許第05530062(US,A)
【文献】特表2007-522273(JP,A)
【文献】特表2021-503032(JP,A)
【文献】特開2023-036048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 55/00
C08L 25/12
C08G 81/00
B32B 27/30
B32B 27/18
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体と、
(B-1)第1スチレン-アクリロニトリル共重合体と、
(B-2)第2スチレン-アクリロニトリル共重合体と、
(C)艶消し剤とを含み、
前記第1スチレン-アクリロニトリル共重合体および第2スチレン-アクリロニトリル共重合体は、互いに異なるアクリロニトリルの含量を有し、
前記第1スチレン-アクリロニトリル共重合体は、アクリロニトリルの含量が31~40wt%であり、かつ第2スチレン-アクリロニトリル共重合体は、アクリロニトリルの含量が22~30wt%であって、
前記艶消し剤は、ポリスチレン(PS)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、N-フェニルマレイミド系共重合体(PMI)、脂環族エポキシ化合物および酸化合物を含む第1の反応押出用組成物、または、ポリカーボネート(PC)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、脂環族エポキシ化合物および酸化合物を含む第2の反応押出用組成物から製造される、
艶消し高分子組成物。
【請求項2】
前記脂環族エポキシ化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)スクシネート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートおよび1,2,8,9-ジエポキシリモネンからなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項3】
前記酸化合物は、RCOOHまたはRSOHおよびその塩化合物からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の組み合わせであり、前記RおよびRは、独立して、C6-30アルキル、C6-30アリールまたはC6-30アルC6-30アルキルである、請求項1に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項4】
前記第1の反応押出用組成物は、ポリスチレン10~20wt%、スチレン-アクリロニトリル共重合体60~80wt%、N-フェニルマレイミド系共重合体5~20wt%、脂環族エポキシ化合物1~6wt%および酸化合物0.01~1.5wt%を含む、請求項1に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項5】
前記第2の反応押出用組成物は、ポリカーボネート15~35wt%、スチレン-アクリロニトリル共重合体60~80wt%、脂環族エポキシ化合物1~6wt%および酸化合物0.01~1.65wt%を含む、請求項1に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項6】
前記艶消し高分子組成物は、アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体100重量部に対して、第1スチレン-アクリロニトリル共重合体50~90重量部、第2スチレン-アクリロニトリル共重合体15~35重量部および艶消し剤2~24重量部を含む、請求項1に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項7】
前記第1スチレン-アクリロニトリル共重合体と第2スチレン-アクリロニトリル共重合体の重量比は1:0.1~0.5である、請求項6に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項8】
前記第2スチレン-アクリロニトリル共重合体のガラス転移温度は110~130℃である、請求項1に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項9】
前記艶消し高分子組成物は、アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体100重量部に対して、第1スチレン-アクリロニトリル共重合体5~50重量部、第2スチレン-アクリロニトリル共重合体30~100重量部および艶消し剤2~24重量部を含む、請求項8に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項10】
前記艶消し高分子組成物は、重量平均分子量が4,000,000g/mol以上である第3スチレン-アクリロニトリル共重合体をさらに含む、請求項1に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項11】
前記第3スチレン-アクリロニトリル共重合体は、アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体100重量部に対して1~6重量部含まれる、請求項10に記載の艶消し高分子組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の艶消し高分子組成物を押出または射出して製造される、成形品。
【請求項13】
基材層および前記基材層上に請求項1に記載の艶消し高分子組成物が共押出されて積層されたスキン層を含む、シート。
【請求項14】
前記基材層は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(polyamide)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)およびこれらの混合物からなる群から選択される一つ以上である、請求項13に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性および耐衝撃性に優れた消光性高分子組成物およびこれを含む無光沢シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建築用素材にポリ塩化ビニル(PVC)ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)など、様々な熱可塑性樹脂が使用される。最近、消費者の感性品質水準が高くなるにつれて、素材に高級化した質感を付与するために、無光沢樹脂に対するニーズが増加している。
【0003】
このような無光沢表面を演出するために、樹脂の表面を物理的に加工して光沢を低下させる方法を使用していたが、経済的な問題と加工時の摩滅によって消光性能が低下する問題がある。他の方法としては、前記PVCおよびABSなどの機械的、化学的物性に優れた熱可塑性樹脂を基材層として消光性樹脂を積層する方法もある。例えば、ABS樹脂を基材層としてPMMAおよび消光剤を含む消光性樹脂と共押出して多層シートを製造していたが、消光剤の投入によってシートの機械的強度が大きく低下し、耐候性が充分でなく、満足するほどの無光沢表面を確保することができなかった。
【0004】
また、建築用外装材として使用されるために、耐候性、耐熱性および機械的物性を満たす必要があるが、一般的に、前記多層シートの基材層として使用されるPVCは、耐薬品性には優れるが、耐候性および着色性が充分ではなく、ABSは、成形加工性および耐衝撃性などに優れるが、耐候性が脆いため、建築用外装材の必須条件である耐候性を改善するとともに無光沢表面を確保することが重要である。
【0005】
したがって、耐候性と機械的および化学的物性に優れ、且つ無光沢表面および高品質の表面外観を確保することができる消光性高分子組成物に関する研究開発が切実に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、消光効果に優れた消光剤を含む消光性高分子組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の目的は、アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体とアクリロニトリルの含量が互いに異なる2種のスチレン-アクリロニトリル共重合体を消光剤とともに押出または射出加工して、耐候性および衝撃強度のような機械的物性に優れ、且つ無光沢表面および高品質の表面外観を有するようにする消光性高分子組成物およびその成形品を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、上述の消光性高分子組成物を共押出して基材層上に積層した無光沢多層シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題点を解決するために、アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体とアクリロニトリルの含量が互いに異なる2種のスチレン-アクリロニトリル共重合体を特定の消光剤とともに押出または射出加工する場合に、耐候性および衝撃強度のような機械的物性に優れ、且つ優れた消光効果および高品質の表面外観を有する成形品を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、(A)アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体と、(B-1)第1スチレン-アクリロニトリル共重合体と、(B-2)第2スチレン-アクリロニトリル共重合体と、(C)消光剤とを含み、前記第1スチレン-アクリロニトリル共重合体および第2スチレン-アクリロニトリル共重合体は、互いに異なるアクリロニトリルの含量を有する消光性高分子組成物を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態によって、前記第1スチレン-アクリロニトリル共重合体は、アクリロニトリルの含量が31~40wt%であり、第2スチレン-アクリロニトリル共重合体は、アクリロニトリルの含量が22~30wt%であることができる。
【0012】
本発明の一実施形態によって、前記消光剤は、ポリスチレン(PS)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、N-フェニルマレイミド系共重合体(PMI)、脂環族エポキシ化合物および酸化合物を含む反応押出用組成物から製造されることができる。
【0013】
本発明の一実施形態によって、前記消光剤は、ポリカーボネート(PC)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、脂環族エポキシ化合物および酸化合物を含む反応押出用組成物から製造されることができる。
【0014】
前記脂環族エポキシ化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)スクシネート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートおよび1,2,8,9-ジエポキシリモネンなどからなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0015】
本発明の一実施形態によって、前記酸化合物は、RCOOHまたはRSOHおよびその塩化合物からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の組み合わせであり、前記RおよびRは、独立して、C6-30アルキル、C6-30アリールまたはC6-30アルC6-30アルキルであることができる。
【0016】
本発明の一実施形態によって、前記反応押出用組成物は、ポリスチレン10~20wt%、スチレン-アクリロニトリル共重合体60~80wt%、N-フェニルマレイミド系共重合体5~20wt%、脂環族エポキシ化合物1~6wt%および酸化合物0.01~1.5wt%を含むことができる。
【0017】
本発明の一実施形態によって、前記反応押出用組成物は、ポリカーボネート15~35wt%、スチレン-アクリロニトリル共重合体60~80wt%、脂環族エポキシ化合物1~6wt%および酸化合物0.01~1.65wt%を含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態によって、前記消光性高分子組成物は、アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体100重量部に対して、第1スチレン-アクリロニトリル共重合体50~90重量部、第2スチレン-アクリロニトリル共重合体15~35重量部および消光剤2~24重量部を含むことができる。
【0019】
本発明の一実施形態によって、前記第1スチレン-アクリロニトリル共重合体と第2スチレン-アクリロニトリル共重合体の重量比は1:0.1~0.5であることができる。
【0020】
本発明の一実施形態によって、前記第2スチレン-アクリロニトリル共重合体のガラス転移温度は110~130℃であることができる。
【0021】
本発明の一実施形態によって、前記消光性高分子組成物は、アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体100重量部に対して、第1スチレン-アクリロニトリル共重合体5~50重量部、第2スチレン-アクリロニトリル共重合体30~100重量部および消光剤2~24重量部を含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態によって、前記消光性高分子組成物は、重量平均分子量が4,000,000g/mol以上である第3スチレン-アクリロニトリル共重合体をさらに含むことができる。
【0023】
本発明の一実施形態によって、前記第3スチレン-アクリロニトリル共重合体は、アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体100重量部に対して1~6重量部含まれることができる。
【0024】
本発明は、上述の消光性高分子組成物を押出または射出して製造された成形品を提供することができる。
【0025】
本発明は、基材層および前記基材層上に上述の消光性高分子組成物が共押出されて積層されたスキン層を含むシートを提供することができる。
【0026】
本発明の一実施形態によって、前記基材層は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(polyamide)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)およびこれらの混合物などからなる群から選択される一つ以上であることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明による消光性高分子組成物を押出、射出加工して製造した成形品は、優れた耐候性と衝撃強度などの機械的物性を有し、且つ優れた消光効果と高品質の表面外観を示すことができて好ましい。
【0028】
本発明の消光性高分子組成物を用いて無光沢多層シートを製造することができ、これを建築用外装材用、インテリアー用および家電製品用などの様々な分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例1による押出シートの表面外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を含む具体例または実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の具体例または実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な形態に実現されることができる。
【0031】
また他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0032】
また、明細書および添付の特許請求の範囲にて使用される単数形態は、文脈で特別な脂示がない限り、複数形態も含むことを意図し得る。
【0033】
また、ある部分がある構成要素を「含む」とした時に、これは特別に反対意味の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0034】
本明細書の用語「消光性」は、非相溶性高分子組成物において、高分子間および高分子と添加剤との収縮率および屈折率の差または表面加工により乱反射効果によって光沢を下げる性質を意味する。
【0035】
本発明は、下記の実施形態によってよりよく理解することができ、下記の実施形態は、本発明の例示目的のためのものであって、添付の特許請求の範囲によって限定される保護範囲を制限するものではない。
【0036】
以下、本発明の一実施形態についてより詳細に説明する。
【0037】
本発明は、(A)アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体と、(B-1)第1スチレン-アクリロニトリル共重合体と、(B-2)第2スチレン-アクリロニトリル共重合体と、(C)消光剤とを含み、前記第1スチレン-アクリロニトリル共重合体および第2スチレン-アクリロニトリル共重合体は、互いに異なるアクリロニトリルの含量を有する消光性高分子組成物を提供する。
【0038】
前記アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体は、アクリレート、スチレンおよびアクリロニトリルが通常もしくは公知の方法により重合されたアクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、ASA)を使用することができ、乳化重合法および懸濁重合法で重合されたグラフト共重合体であることができ、市販の製品を制限なく使用することができる。好ましくは、前記共重合体でアクリレート含量が35wt%以上または40~80wt%含まれたASAを使用することができ、前記範囲を満たす場合、衝撃強度などの機械的物性が向上することができる。また、前記ASAの含量は、消光性高分子組成物の全重量に対して10~90wt%、好ましくは40~70wt%含まれることができるが、これに制限されない。本発明では、外装材の必須物性である耐候性を容易に確保するために、ABSの代わりにASAを使用し、前記ASAにアクリロニトリルの含量が互いに異なるスチレン-アクリロニトリル共重合体2種以上を混合することで、より向上した耐候性および衝撃強度を有する消光性高分子組成物を製造することができる。
【0039】
前記第1スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、SAN-1)は、スチレンおよびアクリロニトリルが通常もしくは公知の方法により重合された共重合体であることができ、好ましくは、前記共重合体において、アクリロニトリルの含量(AN%SAN-1)が31~40wt%、または31~35wt%であることができ、前記SAN-1の重量平均分子量は、50,000~150,000g/mol、または90,000~120,000g/molであることができる。前記SAN-1は、上述のアクリロニトリルの含量範囲および前記重量平均分子量を満たす場合、市販のSAN製品を制限なく使用することができる。
【0040】
前記第2スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、SAN-2)は、スチレンおよびアクリロニトリルが通常もしくは公知の方法により重合された共重合体であることができ、好ましくは、前記共重合体において、アクリロニトリルの含量(AN%SAN-2)が22~30wt%、または24~29wt%であることができ、前記SAN-2の重量平均分子量は、70,000~250,000g/mol、好ましくは80,000~195,000g/mol、または100,000~170,000g/molであることができ、前記SAN-2のガラス転移温度は、80~150℃、好ましくは90~130℃であることができる。前記SAN-2は、上述のアクリロニトリルの含量範囲および前記重量平均分子量を満たす場合、市販のSAN製品を制限なく使用することができる。
【0041】
前記SAN-1に含まれたアクリロニトリルの含量(AN%SAN-1)とSAN-2に含まれたアクリロニトリルの含量(AN%SAN-2)との差(AN%SAN-1-AN%SAN-2)は、2~18wt%、2~15wt%、3~12wt%、または4~10wt%であることができる。前記範囲を満たす場合、前記ASAベース高分子との相溶性に優れ、衝撃強度などの機械的物性が向上することができ、押出加工時に、均一な無光沢表面を効果的に演出することができて好ましい。
【0042】
本発明の一実施形態によって、前記消光性高分子組成物は、前記ASA100重量部に対して前記SAN-1を20~110重量部、前記SAN-2を5~80重量部含むことができ、好ましくは、SAN-1を50~90重量部、前記SAN-2を15~35重量部、さらに好ましくはSAN-1を60~80重量部、前記SAN-2を10~30重量部含むことができる。前記含量範囲を満たす場合、組成物に含まれたアクリロニトリルの含量を適切に調節して成形品の黄変を効果的に抑制することができ、ASAとの相溶性がより向上して優れた耐候性および衝撃強度を有することができる。また、前記消光性高分子組成物を押出/射出加工して建築用外装材などの外部環境に露出する製品を製造することができて好ましい。
【0043】
また、前記SAN-1とSAN-2の重量比は、1:0.05~1、好ましくは0.1~0.5、さらに好ましくは0.2~0.3であることができる。前記重量比の範囲を満たす場合、組成物の分散性に優れ、衝撃強度などの機械的物性がより向上することができ、組成物に含まれたアクリロニトリルの全含量が適切に調節されて耐候性および表面外観品質がより向上することができる。
【0044】
本発明の他の様態によって、前記第2スチレン-アクリロニトリル共重合体は、α-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、α-SAN-2)であることができ、前記共重合体を構成する構造単位の総モル数に対して、α-メチルスチレンを50~80mol%、または65~75mol%含むことができる。前記α-SAN-2のガラス転移温度は、100~150℃、好ましくは100~140℃、さらに好ましくは110~130℃であることができ、重量平均分子量は、50,000~150,000g/mol、または70,000~130,000g/molであることができる。また、前記消光性高分子組成物は、ASA共重合体100重量部に対して、SAN-1は1~80重量部およびα-SAN-2は10~150重量部、好ましくはSAN-1は5~50重量部およびα-SAN-2は30~100重量部、さらに好ましくはSAN-1は10~30重量部およびα-SAN-2は 50~90重量部を含むことができるが、本発明で目的とする物性を阻害しない場合、これに制限されない。前記α-SAN-2がα-メチルスチレンを含むことにより、前記α-SAN-2を含む消光性高分子組成物はより優れた耐熱性を有することができ、押出加工時に加工性に優れ、向上した品質の表面外観を有することができて好ましい。また、前記範囲を満たす場合、耐熱性などの熱安定性がより向上することができ、熱的特性が求められる様々な用途に適用することができる。
【0045】
本発明の一実施形態によって、前記消光性高分子組成物は、重量平均分子量が4,000,000g/mol以上、好ましくは5,000,000g/mol以上、非制限的には10,000,000g/mol以下の第3スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、SAN-3)をさらに含むことができる。前記SAN-3は、アクリロニトリル20~30wt%およびスチレン70~80wt%を含む重合性組成物から乳化重合法により製造されることができるが、これに制限されない。
【0046】
前記分子量範囲を満たすSAN-3樹脂を消光性高分子組成物に添加する場合、押出加工時に、微細且つ均一に表面に粗さを付与することで、消光性能がより向上することができ、また、耐衝撃性などの機械的物性の低下がないだけでなく、耐候性および耐熱性が効果的に向上することができて好ましい。また、前記SAN-3は、ASA100重量部に対して、0.1~6重量部、好ましくは1~5重量部含まれることができる。
【0047】
前記消光剤は、市販のスチレン系消光剤を使用することができるが、好ましくは、ポリスチレン(PS)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、N-フェニルマレイミド系共重合体(PMI)、脂環族エポキシ化合物および酸化合物を含む反応押出用組成物から製造された消光剤を使用することができる。前記反応押出用組成物から製造された消光剤をASA、SAN-1およびSAN-2と混合して使用する場合、機械的な物性の低下なしに、表面光沢を著しく低減することができ、特に、押出加工時に、より優れた品質の表面外観を有する成形品を製造することができる。
【0048】
前記反応押出用組成物に含まれるポリスチレン(PS)は、市販の汎用ポリスチレンを使用することができ、好ましくは、重量平均分子量は80,000~300,000g/molであることができ、ガラス転移温度は95~110℃であることができ、前記範囲を満たすポリスチレンであれば制限なく使用することができる。また、市販の製品を使用することができる。
【0049】
前記反応押出用組成物に含まれるスチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)は、重量平均分子量が50,000~300,000g/molであることができ、ガラス転移温度が95~130℃または95~120℃であることができ、アクリロニトリルの含量が5~50wt%または15~40wt%であることができるが、これに制限されず、前記範囲を満たすスチレン-アクリロニトリル共重合体であれば制限なく使用することができる。また、市販の製品を使用することができる。
【0050】
前記反応押出用組成物に含まれるN-フェニルマレイミド系共重合体(PMI)は、N-置換マレイミド単量体10~60wt%およびビニル系単量体40~90wt%、またはN-置換マレイミド単量体10~40wt%およびビニル系単量体60~90wt%を共重合して製造されることができ、前記N-置換マレイミド単量体は、N-フェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ブロモフェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、およびN-ニトロフェニルマレイミドなどからなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0051】
また、前記ビニル系単量体は、芳香族ビニル系単量体であることができ、具体的には、スチレン、α-メチルスチレンビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ハロゲン置換スチレン、1,3-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレンおよびエチルスチレンなどからなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0052】
前記N-フェニルマレイミド系共重合体は、通常使用されるか、公知の方法を使用して共重合されることができ、前記N-フェニルマレイミド系共重合体の重量平均分子量は30,000~200,000g/molであることができ、ガラス転移温度は110~180℃、または130~160℃であることができる。前記範囲および条件を満たすN-フェニルマレイミド系共重合体であれば特に制限なく使用することができ、市販の製品を使用することができる。
【0053】
前記反応押出用組成物に含まれる脂環族エポキシ化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)スクシネート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートおよび1,2,8,9-ジエポキシリモネンなどからなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0054】
前記反応押出用組成物に含まれる酸化合物は、RCOOH、RSOHおよびその塩化合物からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の組み合わせであり、前記RおよびRは、独立して、C6-30アルキル、C6-30アリールまたはC6-30アルC6-30アルキルであることができ、前記酸化合物の塩化合物は、RCOOMおよびRSOMで表されることができ、前記RおよびRは、上述のとおりであり、Mは、カチオンであることができる。前記Mは、アルカリ金属カチオンまたはアンモニウムカチオンであることができ、非制限的な例として、Mは、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよびリチウムイオンなどからなる群から選択される一つ以上であることができるが、これに制限されない。好ましくは、前記酸化合物は、RSOHであり、前記RはC6-12アルC6-18アルキルであることができ、一例として、ブチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸およびペンタデシルベンゼンスルホン酸などから選択されることができるが、これに制限されない。
【0055】
本発明の一実施形態によって、前記反応押出用組成物は、ポリスチレン5~40wt%、スチレン-アクリロニトリル共重合体40~90wt%、N-フェニルマレイミド系共重合体1~35wt%、脂環族エポキシ化合物1~6wt%および酸化合物0.01~1.5wt%を含むことができる。具体的には、ポリスチレン10~20wt%、スチレン-アクリロニトリル共重合体60~80wt%、N-フェニルマレイミド系共重合体5~20wt%、脂環族エポキシ化合物1~6wt%および酸化合物0.01~1.5wt%を含むことができる。前記範囲を満たす場合、機械的物性の低下なしに、優れた消光効果を発揮する消光剤を製造することができ、これを消光性高分子組成物に添加して加工する場合、高品質の表面外観を有する成形品を製造することができる。
【0056】
本発明のさらに他の一実施形態によって、前記消光剤は、ポリカーボネート、スチレン-アクリロニトリル、脂環族エポキシ化合物および酸化合物を含む反応押出用組成物から製造された消光剤であることができる。
【0057】
前記反応押出用組成物に含まれるポリカーボネート(PC)は、重量平均分子量が15,000~60,000g/molであることができ、ガラス転移温度が130~170℃または140~160℃であることができるが、これに制限されず、前記範囲を満たすポリカーボネートであれば制限なく使用することができる。また、市販の製品を使用することができる。
【0058】
前記反応押出用組成物に含まれるスチレン-アクリロニトリル、脂環族エポキシ化合物および酸化合物は、上述のとおりである。
【0059】
前記ポリカーボネート、スチレン-アクリロニトリル、脂環族エポキシ化合物および酸化合物を含む反応押出用組成物は、ポリカーボネート10~40wt%、スチレン-アクリロニトリル共重合体55~85wt%、脂環族エポキシ化合物1~6wt%および酸化合物0.01~1.65wt%を含むことができる。具体的にはポリカーボネート15~35wt%、スチレン-アクリロニトリル共重合体60~80wt%、脂環族エポキシ化合物1~6wt%および酸化合物0.01~1.65wt%を含むことができる。前記範囲を満たす場合、機械的物性の低下なしに、優れた消光効果を発揮する消光剤を製造することができ、これを消光性高分子組成物に添加して加工する場合、高品質の表面外観を有する成形品を製造することができる。
【0060】
前記消光剤含量は、前記ASA100重量部に対して1~40重量部、好ましくは1~30重量部、さらに好ましくは2~24重量部、または2~20重量部含まれることができる。前記範囲を満たす場合、機械的な物性の低下なく、優れた消光効果を示すことができて好ましい。
【0061】
また、前記反応押出用組成物から製造された消光剤は、少量の添加だけで既存ベース高分子の物性を低下させることなく効果的に光沢度を低減することができ、ベース高分子との分散性に優れ、稠密な架橋度を有してより向上した耐熱性および高品質の表面外観を有することができて好ましい。
【0062】
本発明の一実施形態によって、前記消光性高分子組成物は、目的および用途に応じて、当該技術分野において一般的に使用される添加剤をさらに含むことができる。例えば、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調節剤、可塑剤、熱安定剤、染料、顔料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工調剤、金属不活性化剤、難燃剤、耐摩擦剤、耐摩耗剤および活剤などをさらに含むことができる。ここで、前記添加剤は、本発明が目的とする物性を阻害しない範囲内で適切な含量で含まれることができる。
【0063】
前記紫外線安定剤は、通常使用されるか公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、HALS系紫外線安定剤などを使用することができ、前記HALS系紫外線安定剤の非制限的な例として、1,1-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-N-ブチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルマロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸の縮合生成物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-tert-オクチルアミノ-2,6-ジ-クロロ-1,3,5-トリアジンの直鎖状または環状縮合生成物、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ニトリロトリアセテートおよびテトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートなどからなる群から選択される一つまたは二つ以上であることができるが、これに制限されず、市販の製品を使用することができる。
【0064】
前記紫外線吸収剤は、通常使用されるか公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などを使用することができ、前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の非制限的な例として、ヒドロキシベンゾトリアゾールであることができ、具体的には、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールおよび2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル-5-クロロベンゾトリアゾールなどからなる群から選択される一つまたは二つ以上であることができるが、これに制限されず、市販の製品を使用することができる。
【0065】
前記紫外線安定剤および紫外線吸収剤は、それぞれ独立して使用することができ、好ましくは混合して使用することができる。前記紫外線安定剤の含量は、ASA100重量部に対して、0.01~5.0重量部、または0.1~3.0重量部含まれることができ、前記紫外線吸収剤は、0.01~5.0重量部、または0.1~3.0重量部含まれることができる。前記紫外線安定剤および紫外線吸収剤を混合して使用する場合、その含量は、ASA100重量部に対して、0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部含まれることができる。前記範囲を満たす場合、衝撃強度および流動性を阻害しないとともに耐候性をより向上させることができて好ましい。また、前記紫外線安定剤および紫外線吸収剤の重量比は、1~9:9~1を満たすことができるが、本発明で目的とする物性を阻害しなければ、これに制限されない。
【0066】
本発明は、上述の消光性高分子組成物を加工して製造された成形品を提供することができる。前記成形品は、衝撃強度および耐候性に優れ、且つ成形品表面の粗さが均一に形成されて無光沢性が卓越しており、ピンホール、ダイラインおよびクラックなどの不良を効果的に防止して高品質の表面外観を有することができる。前記成形品の加工方法は、通常使用されるか公知の方法であれば特に制限なく使用することができ、例えば、キャスティング、押出、射出およびブローモールディングなどの方法を用いることができ、好ましくは、押出または射出加工方法を用いることができる。
【0067】
従来、消光剤を含む高分子組成物を押出加工により成形品を製造する場合、成形品の表面にピンホール、ダイラインおよびクラックなどの不良がよく発生する点と、不充分な消光性能が問題として現れた。しかし、好ましい一様態による消光性高分子組成物は、アクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体、互いに異なるアクリロニトリルの含量を有する2種のスチレン-アクリロニトリル共重合体および反応押出型組成物から製造された消光剤を含むことにより、前記組成物から製造された成形品は優れた消光性能および著しく減少した表面不良特性が実現されることができる。
【0068】
本発明は、基材層および前記基材層上に前記消光性高分子組成物が共押出されて積層されたスキン層を含むシートを提供することができる。前記共押出方法は、基材層高分子組成物およびスキン層高分子組成物の溶融温度以上の温度で維持される共押出機を用いてそれぞれの成分を溶融および積層して多層シートを製造することができるが、これに制限されず、公知の通常製造される方法により前記シートを製造することができる。また、前記シートは、基材層とスキン層との間に一つまたは二つ以上のフィルムまたは接着層がさらに積層された多層シートであることもできるが、本発明が目的とする物性を阻害しなければ、これに制限されない。
【0069】
本発明の一実施形態によって、前記基材層は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(polyamide)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)およびアクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)などからなる群から選択される一つまたはこれらの混合物であることができるが、本発明で目的とする物性を阻害しなければ、これに制限されない。
【0070】
前記シートの厚さは、1~500μmであることができるが、適用しようとする分野に応じて厚さを調節して加工することができ、前記スキン層は、その厚さが全体のシート厚さの0.01~25%、0.1~20%、または1~15%であることができるが、これに制限されない。
【0071】
また、前記共押出(Co-extrusion)は、二つ以上の押出機を使用して押出コーティング、フィルムまたはシートの作製時に、一つ以上の層(layer)を加えて多層の構造を形成する方法を意味し、例えば、2台以上のT-die方式の押出機から押出された基材層およびスキン層をロールで接合する方法を適用することができるが、これに制限されず、前記押出機は、通常の一軸押出機、別の混練区間がある一軸および二軸押出機などから選択される一つの押出機を使用することができる。
【0072】
また、前記のような共押出工程により平面形態の多層シートを製造することができ、特殊なプロファイル(profile)形態の屈曲したデザインを有する成形品などを製造することができるが、前記基材層高分子組成物および上述の消光性高分子組成物を溶融加工して製品を製造することができれば、押出方式や成形品の形態に特に制限されない。
【0073】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための一つの例示であって、本発明が下記の実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0074】
[物性の測定方法]
1)表面光沢度(GLOSS):ASTM D523に準じて20゜、60゜および85゜で測定した。
【0075】
2)表面外観:押出シートの表面を肉眼で観察し、表面粗さ、粗さの均一性およびピンホール発生の有無を下記の条件にしたがって、優秀(◎)、良好(○)、普通(△)、不良(×)と評価した。
【0076】
-優秀:表面粗さが均一であり、ピンホールが存在しない。
-良好:表面粗さが均一であり、単位面積(100mm×100mm)当たりピンホールが5個未満である。
-普通:表面粗さが均一ではなく、単位面積(100mm×100mm)当たりピンホールが5個以上10個未満である。
-不良:表面粗さが均一ではなく、単位面積(100mm×100mm)当たりピンホールが10個以上である。
【0077】
3)アイゾット衝撃強度(Noched IZOD Impact strength):ASTM D256に準じて、1/4”および1/8”で測定した。
【0078】
4)ビカット軟化温度(VST):ISO R306 B50(50N、50℃/HR)に準じて測定した。
【0079】
5)耐候性:SAE J1960に準じて測定し、具体的には、試験片に2000時間、強度4000KJの光源を照射した後、dE/dbを測定した。
【0080】
[製造例1]反応押出型消光剤の製造
ポリスチレン(KUMHO GP-125)17.5wt%、スチレン-アクリロニトリル共重合体(LG化学92HR)70wt%およびN-フェニルマレイミド系共重合体(DENKA IP)12.5wt%で構成された高分子組成物を二軸押出機に投入した。次いで前記高分子組成物100重量部に対して3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート3.5重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸0.1重量部を投入した後、265℃の温度で溶融押出し、ゲルが約65wt%含まれた反応押出型消光剤を取得した。
【0081】
[製造例2]反応押出型消光剤の製造
ポリカーボネート(ロッテケミカルSC-1220R)25wt%およびスチレン-アクリロニトリル共重合体(LG化学92HR)で構成された高分子組成物を二軸押出機に投入した。次いで、前記高分子組成物100重量部に対して3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート2重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸0.15重量部を投入した後、270℃の温度で溶融押出し、ゲルが約58wt%含まれた反応押出型消光剤を取得した。
【0082】
[実施例1~10および比較例1~3]射出成形品および押出シートの製造
下記表1によって構成された消光性高分子組成物とともにASA100重量部に対してベンゾトリアゾール系紫外線安定剤(Tinuvin P)1重量部およびHALS系紫外線安定剤(Sanol LS-770)1重量部とASAおよびSANの総和である100重量部に対して、TiOを3重量部およびフェノール系酸化防止剤0.3重量部を投入してミックスした後、二軸押出機により消光性高分子組成物ペレットを得て、前記ペレットを乾燥し、射出機で、横、縦および厚さが100mm×100mm×3.0mmである射出成形品試験片と単一シート押出機で、横、縦および厚さが50mm×500mm×2.0mmであるシート形態の押出シート試験片を製造した。製造した射出成形品および押出シートの物性を測定し、下記表2に示した。
【0083】
【表1】
-ASA:KUMHO石油化学、XC-500A(アクリレート含量60wt%)
-SAN-1:LG化学、95HC
(Mw100,000g/mol、アクリロニトリルの含量32wt%、ガラス転移温度106℃)
-SAN-2:LG化学、92HR
(Mw125,000g/mol、アクリロニトリルの含量26wt%、ガラス転移温度105℃)
-α-SAN-2:LG化学、200UH
(Mw85,000g/mol、アクリロニトリルの含量29wt%、ガラス転移温度124℃)
-SAN-3:Galata Chemical、Blendex 869
(Mw約5,000,000g/mol、アクリロニトリルの含量25wt%、ガラス転移温度107℃)
-Blendex B-MAT(Galata Chemical):スチレン-アクリロニトリル共重合体
-XPHERE-NGR(Pocera):スチレン-アクリロニトリル共重合体
【0084】
【表2】
【0085】
前記表2に示されているように、本発明の消光性高分子組成物を押出または射出加工して製造したシート(成形品)の場合、表面光沢度が効果的に減少し、且つ優れた耐候性と高品質の表面外観を有することができることを確認した。特に、実施例1~8に示されているように、上述の反応押出用組成物から製造された消光剤を使用する場合、押出シートでの光沢度が効果的に低減し、シート表面の粗さが均一であり、ピンホールもほとんどなく、高品質の表面外観を有する押出シートを製造することができた。前記実施例1による押出シートの表面外観を図1に図示した。
【0086】
具体的には、前記実施例1~8の場合、押出シートの85゜光沢度は、いずれも20以下、好ましくは15以下であり、前記実施例はいずれも衝撃強度(1/8”)は25J/m以上であり、耐候性を示すdEは2.0以下に示される点で、本発明による消光性高分子組成物が優れた物性を有することを確認することができた。
【0087】
また、実施例1を比較例1~3と比較すると、前記SAN-1およびSAN-2を含む場合、消光性能、耐候性および表面外観がいずれも効果的に向上した製品を製造することができることを確認することができ、実施例1~3を比較すると、ASA100重量部に対して、SAN-1を50~90重量部、SAN-2を15~35重量部含む場合、より優れた耐熱性および耐衝撃性を示した。
【0088】
さらに、実施例5は、SAN-3を少量添加することによって押出シートの85゜表面光沢度が効果的に低減し、実施例6および8はSAN-2-2を含むことによって熱軟化温度が向上したことを確認した。
【0089】
以上、本発明は、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明されているが、これは本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0090】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等または等価的な変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属すると言える。
図1