(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】圧縮器の空気又は気体軸受上にリブを機械加工する方法
(51)【国際特許分類】
B23B 5/48 20060101AFI20240510BHJP
F04D 29/053 20060101ALI20240510BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20240510BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20240510BHJP
B23B 5/00 20060101ALI20240510BHJP
B23B 5/08 20060101ALI20240510BHJP
B23P 15/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B23B5/48
F04D29/053 Z
B23B27/14 B
B23B27/20
B23B5/00 A
B23B5/08
B23P15/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022166093
(22)【出願日】2022-10-17
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510010894
【氏名又は名称】ベレノス・クリーン・パワー・ホールディング・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】レジェプ・ガシ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-190457(JP,A)
【文献】特開2002-036004(JP,A)
【文献】特開2013-185658(JP,A)
【文献】特開2002-219603(JP,A)
【文献】特開平06-254701(JP,A)
【文献】特開平10-328902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 5/00 - 5/48
F04D 29/053
B23B 27/00 - 27/24
B23P 15/00
F16C 17/00 - 17/26
F16C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心圧縮器(1)の長手方向軸(A-A)回りに回転させることを意図する工作物(7、24)上にリブ又は溝を機械加工する方法であって、前記工作物(7、24)は、シャフト(7)であり、前記シャフト(7)上に、電気モータの少なくとも1つの永久磁石(16a)を有するロータ構造体(16)が取り付けられ、前記シャフトが回転するように前記シャフトを駆動するか、又は前記工作物(7、24)は、前記シャフト(7)の一端に取り付けられる空気若しくは気体アキシャル軸受(24)であり、前記遠心圧縮器(1)は、流体入口(5)及び圧縮流体出口(6)を有する筐体(2)と、前記筐体(2)内で前記シャフト(7)
の2つの端部に組み付けられた第1の羽根車(8)及び第2の羽根車(10)と、前記シャフト(7)の第1の端部上に組み付けられた前方空気又は気体ラジアル軸受(18)と、前記シャフト(7)の第2の端部上に組み付けられた後方空気又は気体ラジアル軸受(22)とを更に備え、前記機械加工方法は、機械加工ユニット(100)内で実行され、前記機械加工ユニット(100)は、前記工作物の受入れに適合し、前記工作物の少なくとも一部分上にリブ又は溝を機械加工する
機械加工工具を有する工具保持器(110)を備え、
前記空気若しくは気体アキシャル軸受(24)の一工作物部分に形成される前記リブ又は溝(24
a)の全て
、又は前記シャフト(7)の一工作物部分に形成される前記リブ又は溝(32)の全ては、前記機械加工
ユニット(100)を通じて、前記工作物
(7、24)を回転させるように駆動し、かつ前記工作物(7、24)又は前記工具保持器(110)
を機械加工
によって前記リブ又は溝(24a、32)を延設する方向
へ移動さ
せ、さらに前記機械加工工具
を、
前記機械加工の開始から終了まで前記工作物と接触する機械加工位置
と前記工作物と接触しない位置
との間を往復運動させることによって一度に得られ、
前記機械加工ユニットは、正弦プログラムにしたがって、前記工作物(7、24)の回転角を正弦関数的に連続して変化させることで正転および逆転を繰り返すように回転させつつ、この前記工作物(7、24)の回転と前記機械加工工具の
往復運動
とを少なくとも同期させ、これにより前記工作物部分上に生成
されるべき
プログラムされたリブ又は溝
を形成することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記工作物は炭化タングステン又はセラミックから作製されたシャフト(7)であり、前記シャフト(7)のため、前記機械加工工具の頭部(120)は、ダイヤモンドから作製し、前記シャフト(7)は、長手方向軸(A-A)回りの機械加工の間に回転するように駆動され、前記リブ又は溝(32)の全ては、前記機械加工ユニット(100)がプログラムした方法に従って、前記機械加工工具の
前記往復運動及び前記回転シャフト(7)の
前記リブ又は溝(24a、32)を延設する方向
への変位によって、前記シャフト(7)の第1の端部の第1の工作物部分上で、前記第1の
工作物部分の
加工開始
部分か
ら加工終了
部分まで一度に得られることを特徴とする、請求項1に記載の機械加工方法。
【請求項3】
前記工作物は炭化タングステン又はセラミックから作製されたシャフト(7)であり、前記シャフト(7)のため、前記機械加工工具の頭部(120)は、ダイヤモンドから作製し、前記シャフト(7)は、長手方向軸(A-A)回りの機械加工の間に回転するように駆動され、前記リブ又は溝(32)の全ては、前記機械加工ユニット(100)がプログラムした方法に従って、前記機械加工工具の
前記往復運動及び前記工具保持器(110)の
前記リブ又は溝(24a、32)を延設する方向
への変位によって、前記シャフト(7)の第1の端部の第1の工作物部分上で、前記第1の
工作物部分の
加工開始
部分から前記第1の
工作物部分の
加工終了
部分まで一度に得られることを特徴とする、請求項1に記載の機械加工方法。
【請求項4】
前記リブ又は溝(32)を機械加工する間、前記機械加工ユニットがプログラムした方法に従って、前記シャフト(7)の前記第1の端部の前記第1の工作物部分に沿った中間地点を通過した際、前記リブ又は溝(32)の向きの変化が生じ、前記第1の
工作物部分の長
さにわたりV字形溝を得るようにし、前記圧縮器の動作中に前記シャフト(7)が制限速度を上回って回転した場合に前記第1の
工作物部分上に配設された前記前方ラジアル軸受(18)内に空気又は気体圧力を生成し、前記前方ラジアル軸受(18)ともはや機械的に接触しないようにすることを特徴とする、請求項2に記載の機械加工方法。
【請求項5】
前記リブ又は溝(32)を機械加工する間、前記機械加工ユニットがプログラムした方法に従って、前記シャフト(7)の前記第1の端部の前記第1の工作物部分に沿った中間地点を通過した際、前記リブ又は溝(32)の向きの変化が生じ、前記第1の
工作物部分の長
さにわたりV字形溝を得るようにし、前記圧縮器の動作中に前記シャフト(7)が制限速度を上回って回転した場合に前記第1の
工作物部分上に配設された前記前方ラジアル軸受(18)内に空気又は気体圧力を生成し、前記前方ラジアル軸受(18)ともはや機械的に接触しないようにすることを特徴とする、請求項3に記載の機械加工方法。
【請求項6】
前記リブ又は溝(32)の全ては、前記機械加工ユニット(100)がプログラムした方法に従った前記機械加工工具の
前記往復運動、及び前記回転シャフト(7)又は前記工具保持器(110)の長
手方向
への変位によって、前記シャフト(7)の前記第2の端部の第2の工作物部分上で、前記第2の
工作物部分の
加工開始
部分から前記第2の
工作物部分の
加工終了
部分まで一度に得られることを特徴とする、請求項2に記載の機械加工方法。
【請求項7】
前記リブ又は溝(32)の全ては、前記機械加工ユニット(100)がプログラムした方法に従った前記機械加工工具の
前記往復運動、及び前記回転シャフト(7)又は前記工具保持器(110)の長
手方向
への変位によって、前記シャフト(7)の前記第2の端部の第2の工作物部分上で、前記第2の
工作物部分の
加工開始
部分から前記第2の
工作物部分の
加工終了
部分まで一度に得られることを特徴とする、請求項3に記載の機械加工方法。
【請求項8】
前記リブ又は溝(32)を機械加工する間、前記機械加工ユニット(100)がプログラムした方法に従って、前記シャフト(7)の前記第2の端部の前記第2の工作物部分に沿った中間地点を通過した際、前記リブ又は溝(32)の向きの変化が生じ、前記第2の機械加工部分の長さ部にわたりV字形溝を得るようにし、前記圧縮器(1)の動作中に前記シャフト(7)が制限速度を上回って回転した場合に前記第2の
工作物部分上に配設された前記後方ラジアル軸受(22)内に空気又は気体圧力を生成し、前記後方ラジアル軸受(22)ともはや機械的に接触しないようにすることを特徴とする、請求項7に記載の機械加工方法。
【請求項9】
前記工作物は、円板の形態の空気又は気体アキシャル軸受(24)であり、前記リブ又は溝(24a)及び前記リブ又は溝(24a)の構成は、前記機械加工工具(120)を起動する前記機械加工ユニット(100)内でプログラムされており、単一機械加工方向で、前記円板の外周部から前記リブ若しくは溝の環状領域の底部まで、又は前記リブ若しくは溝の環状領域の底部から前記円板の外周部まで、前記機械加工工具又は前記回転円板を移動させることによって、及び前記機械加工ユニット(100)がプログラムした方法に従って前記機械加工工具(120)を
前記往復運動させることによって前記円板の
外周縁から中心に向かって延在する環状の領域を備える第1の面上で前記リブ又は溝の全てを一度に生成することを特徴とする、請求項1
から8のいずれか一項に記載の機械加工方法。
【請求項10】
単一機械加工方向で、前記円板の外周部から前記リブ若しくは溝(24a)の環状領域の底部まで、又は前記リブ若しくは溝(24a)の環状領域の底部から前記円板の外周部まで、前記機械加工工具又は前記回転円板を移動させることによって、及び前記機械加工ユニット(100)がプログラムした方法に従って前記機械加工工具(120)を
前記往復運動させることによって前記円板の
外周縁から中心に向かって延在する前記第1の面と異なる環状の領域を備える第2の面上で前記リブ又は溝(24a)の全てを一度に生成することを特徴とする、請求項9に記載の機械加工方法。
【請求項11】
前記リブ又は溝(24a)の全ては、2つの面上で同じ向き又は2つの異なる向きで渦巻きの形態で生成され、前記遠心圧縮器(1)の動作中に長手方向で中心に良好に置かれた所定の位置で軸を保持するように前記シャフトを回転させる際に溝を介して空気膜を生成するようにすることを特徴とする、請求項10に記載の機械加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速遠心流体圧縮器の空気又は気体軸受上にリブ又は溝を機械加工する方法に関する。圧縮器は、2段圧縮器であり、流体入口と圧縮流体出口とを有する筐体を備え、長手方向軸回りに回転するように組み付けられたシャフトを囲繞する。第1の羽根車及び第2の羽根車は、シャフト上に背中合わせに組み付けられ、第1の羽根車は、第1の圧縮段を構成し、第2の羽根車は、第2の圧縮段を構成する。遠心圧縮器は、モータ、好ましくは、同期式電気モータを更に備え、モータは、第1の羽根車と第2の羽根車との間に配置され、シャフトを回転させるように構成される。少なくとも1つの空気又は気体アキシャル軸受は、シャフトの一端に組み付けられ、前方空気又は気体ラジアル軸受は、シャフトの第1の端部上に組み付けられ、後方空気又は気体ラジアル軸受は、シャフトの第2の端部上に組み付けられる。
【背景技術】
【0002】
流体圧縮器は、概して、ターボチャージャ又は遠心圧縮器と呼ばれる。流体圧縮器は、永久磁石同期モータ(ブラシレス・モータ)を形成するステータとロータと備える。これらは、100,000から500,000回転/分等、かなりの高速に達し得る。モータは、羽根車を高速で駆動し、羽根車は、流体を圧縮する。流体は、空気、気体、冷却液又はあらゆる他の適切な流体とし得る。2つの羽根車を使用することにより、流体を2倍多く圧縮可能にする。
【0003】
これらの圧縮器は、例えば、電気、ハイブリッド又は水素車両等における、冷媒気体を有する携帯HVAC(暖房、換気及び空調)システムで使用し得る。これらの圧縮器は、熱ポンプ等、冷媒気体を有する固定システムでも使用し得る。
【0004】
これらの圧縮器は、概して、圧縮すべき流体を循環させる第1の回路と、圧縮器の冷却に使用される冷却液を循環させる第2の回路とを備え、より詳細には、モータと、空気又は気体軸受とを備え、空気又は気体軸受は、一方で、モータのシャフトを支持し、もう一方で、電子構成要素を支持する。より詳細には、モータの高速回転は、かなり著しい熱の発生をもたらすので、圧縮器に対する損傷を防止するために、圧縮器の要素を冷却しなければならない。これらの回路は、典型的には、圧縮器自体の外側に設けられ、少なくとも、冷却回路とみなされる。特に高速での圧縮器の動作中、冷却気体又は空気の流れを促進するための対策はなく、欠点となる。更に、ロータ・シャフトを支持する空気又は気体軸受は、摩擦を伴わずにロータ・シャフトを支持するように設計されておらず、ロータが高速で回転する際に著しい熱の発生をもたらし、別の欠点となる。
【0005】
更に、空気又は気体流のために、溝又はリブを空気又は気体軸受上に作製し、圧力及び冷却をもたらすことは、公知である。しかし、溝は、レーザー機械加工によって特定の構成を伴わずに生成され、欠点となる。というのは、機械加工時間が長すぎるため、機械加工費用が高額すぎるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、各空気又は気体ラジアル軸受におけるロータ・シャフト上、及びシャフトに取り付けられた空気又は気体アキシャル軸受上に溝又はリブを迅速に生成する方法により、上記で述べた様々な欠点を克服することである。シャフト内の前記溝は、圧縮器のシャフトが各軸受内で高速で回転する際に重力を克服し、空気又は気体流上で、ラジアル軸受内の機械的接触を伴わずに、したがって、ほとんど摩擦がなく回転ロータ・シャフトを保持可能にするように構成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的で、本発明は、高速流圧縮器の空気又は気体軸受上にリブ又は溝を機械加工する方法に関し、方法は、独立請求項1の特徴を含む。
【0008】
方法の特有のステップは、従属請求項2から11において規定される。
【0009】
機械加工ユニット内で、圧縮器の工作物上にリブ又は溝を機械加工する方法の1つの利点は、全てのリブ又は溝が、工作物部分の開始から終了まで前後に移動する機械加工工具によって、回転駆動される工作物部分上に一度に得られることである。このため、機械加工工具の前後運動は、機械加工ユニット内の正弦プログラム機構、及び工作物部分上に生成すべきリブ又は溝に対する所望の構成と同期する。
【0010】
工作物を機械加工する間、工作物、又は機械加工工具を支持する工具保持器も長手機械加工方向で変位する一方で、機械加工工具は、前後運動を実行する。
【0011】
工具の前後運動は、前記所望のリブ又は溝を得るために、機械加工ユニットがプログラムした方法に従って工具の前後運動を加速又は減速させるように発振周波数を変更し得る圧電発振器と比較される。前後運動の間、工具は、機械加工位置内にあり、工作物と一度接触し、別の時間では工作物と接触しない。
【0012】
工作物は、シャフト、又は少なくとも1つの空気若しくは気体アキシャル軸受であり、シャフトは、シャフトを回転駆動する電気モータのロータ構造体に取り付けられ、少なくとも1つの空気又は気体アキシャル軸受は、羽根車と空気又は気体ラジアル軸受との間のシャフトの第1の端部に組み付けられる。リブ又は溝は、空気又は気体アキシャル軸受の円板の片面上、又は好ましくは、両面上に生成し得る。
【0013】
機械加工ユニット内でリブ又は溝を機械加工する方法の1つの利点は、リブ又は溝が非常に迅速に、1分未満で、空気又は気体ラジアル軸受のためのシャフトの各工作物部分上に多大な精度で生成されることである。同様のことは、回転駆動される空気又は気体アキシャル軸受の円板の片面又は両面上に生成される溝又はリブにも当てはまる。機械加工工具は、シャフトの材料、又は空気若しくは気体アキシャル軸受の材料よりも硬い。
【0014】
上記で説明したように、機械加工ユニットは、各空気若しくは気体ラジアル軸受又は空気若しくは気体アキシャル軸受のためのシャフトの各工作物部分上にリブ又は溝構成を得るため、正弦プログラムに従って機械加工工具と同時に同期的な回転でプログラムし得る。
【0015】
好ましくは、シャフト上の各機械加工部分の中心で各リブ又は溝の向きが変化した、V字形のそのようなリブ又は溝の機械加工の結果、高速回転するシャフトを、圧縮器内で機械的に接触させずに空気又は気体ラジアル軸受内で保持し得る。したがって、シャフトは、シャフトの高速回転の結果、溝又はリブ内を通過する空気又は気体の圧力によって、ほぼ摩擦を伴わずに各ラジアル軸受内で保持される。各空力ラジアル軸受における6,000rpmほどの低い空気又は気体圧から、シャフトは、静圧ラジアル軸受ともはや機械的に接触せず、したがって、あらゆる機械的な摩擦を回避する。言うまでもないが、シャフトがより速く回転するほど、ラジアル軸受内の空気圧はより大きく、より多くの空気又は気体の摩擦が自動的に生成される。
【0016】
溝又はリブは、正弦プログラム及び所望の溝又はリブの構成に従って、シャフト上の溝又はリブの向きが逆になるように機械加工ユニット及び機械加工工具によって機械加工される。溝又はリブの向きは、実質的に、前記リブ上に置かれた各静圧ラジアル軸受の内側半部に向かうものである。このことにより、シャフトがより速く回転するほど大きくなり得る空気又は気体圧力が生じる。
【0017】
そのような高速遠心流体圧縮器は、空気又は気体軸受上にリブ又は溝を生成することにより、過度の加熱を伴わずにかなりの高速で回転し得る。
【0018】
また、アキシャル軸受は、第1の羽根車と第1のラジアル軸受との間に設けられる。溝又はリブは、アキシャル軸受の円板の表面及び裏面上に渦巻きの形態で外周部に作製される。空気膜は、シャフトを長手方向で十分に中心の位置で保持するように、シャフトが回転する際に溝によって生成される。
【0019】
本発明の目的、利点及び特徴は、非限定的な例として、添付の図面に示す本発明の実施形態に対する以下の詳細な説明を読めばより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による高速遠心圧縮器の軸A-Aに沿った長手方向断面図である。
【
図2】
図2aは、本発明による羽根車、空力アキシャル軸受及びラジアル軸受並びに永久磁石ロータ構造を有するシャフトの軸A-Aに沿った長手方向断面図である。
図2bは、本発明による第1の羽根車及びアキシャル軸受の側部からの平面図である。
【
図3】
図2の組立体の3次元図であり、本発明によるシャフトの上に隆起した状態で示す各静圧ラジアル軸受内の溝又はリブを示す。
【
図4】空気又は気体アキシャル軸受の平面図である。
【
図5】シャフトの一端に配設されたリブ又は溝の図であり、シャフトの一端上に、長手方向断面を介して示す本発明による静圧ラジアル軸受が配設される。
【
図6】溝又はリブがシャフトの2つの端部に配設されたシャフトの図であり、シャフトの2つの端部上に、本発明による静圧空気又は気体ラジアル軸受がそれぞれ配設される。
【
図7】本発明による遠心圧縮器のシャフト上に溝又はリブを機械加工する機械加工ユニットの概観図である。
【
図8】本発明による空気又は気体ラジアル軸受のシャフト上に生成された高精度リブのグラフである。
【
図9】本発明による遠心圧縮器の空気又は気体アキシャル軸受上に溝又はリブを機械加工する機械加工ユニットの3次元概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において、従来技術で周知の遠心圧縮器の一部を形成する全ての構成要素は、本明細書では手短にしか説明しない。というのは、本発明は、本質的に、シャフトの2つの部分上にリブ又は溝を生成し、2つの静圧空気若しくは気体ラジアル軸受又は空気若しくは気体アキシャル軸受によってそれぞれ覆われるようにする様式に関するためである。
【0022】
図1は、高速遠心変換器1の長手方向軸A-Aに沿った断面を示す。遠心変換器は、筐体2内に、炭化タングステン又はセラミックから作製され、前面2b及び後面2cを通過する長手方向軸A-A回りに回転するように組み付けられたシャフト7と、シャフト7の各端部に背中合わせに組み付けられた第1の遠心羽根車8及び第2の遠心羽根車10とを備え、前記第1の羽根車8は第1の圧縮段を構成し、前記第2の羽根車10は、第2の圧縮段を構成する。特に、シャフト7は、本実施形態では中空であり、ねじ山の付いた棒11を囲繞し、棒11の各端部に、羽根車8、10の一方が螺入され、羽根車を容易に組み付け、取り外すことを可能にする。したがって、2つの羽根車8及び10は、同じシャフト7上で駆動され、これにより、エネルギー効率を改善し、歯車箱の必要性をなくす。羽根車8及び10の後部は、圧縮器内の圧力を制御し、軸方向の力を平衡化するラビリンス・シールを含む。
【0023】
筐体2は、電気モータを更に囲繞し、電気モータは、好ましくは、第1の羽根車8と第2の羽根車10との間に同期的に配置され、シャフト7を回転させるように構成される。モータは、少なくとも1つの永久磁石16aを有する同期的電気モータ(ブラシレス・モータ)を形成するように互いに相互作用するステータ構造体14とロータ構造体16とを備える。より詳細には、ステータ14は、コイル14a及び2つのフェライト要素14bによって形成され、コイル14a及び2つのフェライト要素14bが筐体2に対して固定されるように組み付けられる。ロータ構造体16は、例えば接合によってシャフト7と一体に作製した1つ又は複数の永久磁石16aを備え、チタン・ライニング16bによって覆われる。チタン・フランジ16cは、ライニングの横端部に(例えば接合によって)取り付けられ、ロータが高速で遠心力に抵抗することを保証する。
【0024】
シャフト7は、少なくとも1つの前方ラジアル軸受18、1つの後方ラジアル軸受22及び1つのアキシャル軸受24により、筐体2内で長手方向軸A-A回りに回転し得るように組み付けられる。遠心圧縮器1は、前方ラジアル軸受18を支持する前方ラジアル軸受ブラケット26と、後方ラジアル軸受22を支持する後方ラジアル軸受ブラケット28とを備え、前方ラジアル軸受ブラケット26及び後方ラジアル軸受ブラケット28は、それぞれモータの前方及び後方でシャフト7の周囲に配置される。後方には、後方ラジアル軸受ブラケット28と後方カバー3cとの間にボリュート29も設けられる。ボリュート29は、圧縮後の接線方向流体の出口6につながるオリフィスを備える。アキシャル軸受24を支持するように、アキシャル軸受ブラケット30も設けられ、アキシャル軸受ブラケット30は、シャフト7の周囲に、第1の羽根車8と前方ラジアル軸受ブラケット26との間に配置される。アキシャル軸受は、モータの後方に設け得ることは明らかである。
【0025】
軸受は、摩擦をほとんど生じさせないように、非接触、空力型軸受である。軸受は、潤滑剤を必要とせず、整備をほとんど必要としない。より詳細には、
図2a、
図2b及び
図3を参照すると、アキシャル軸受24は、空力軸受であり、その面の少なくとも一方に、外周部の環状領域にわたり、第1の溝24a、好ましくは渦巻き形状の溝を含む円板によって構成される。好ましくは、アキシャル軸受24は、アキシャル軸受24の円板の外周部に渦巻き形状の溝又はリブ24aを表面及び裏面に備え、溝又はリブは、以下で説明する機械加工方法によって得られる。溝又はリブ24aの向きは、表面と裏面で異なっても、同一であってもよい。溝又はリブ24aを有するアキシャル軸受24は、表面及び裏面から空気膜を生成することによって、回転シャフト7を長手方向中心に置かれたままにする。前方ラジアル軸受18及び後方ラジアル軸受22は、空力軸受であり、シャフト7は、前方ラジアル軸受18及び後方ラジアル軸受22に面して、シャフトが空気又は気体ラジアル軸受内で回転する際に空気又は気体膜を生成するように構成された第2の溝又はリブ32を有する。
【0026】
図2a、
図2b及び
図3において、第1の遠心羽根車8及び第2の遠心羽根車10は、依然として、シャフト7の各端部で背中合わせに組み付けられているのがわかる。シャフト7の2つの端部において、機械加工された溝又はリブ32の第1の部分、及び他端において、機械加工された溝又はリブ32の第2の部分がある。少なくとも1つの永久磁石16aを有するロータ構造体16は、電気モータのために中心位置でシャフト上に固定される。
【0027】
図4は、空気又は気体アキシャル軸受24の一実施形態を示す。
図4に平面図で示すように、特定の深さをもつリブ又は溝24aは、環状領域上に生成され、環状領域は、円板の外周部から開始され、円板の中心の方に通じる。リブ又は溝24a及びその構成は、特に、機械加工工具を起動する機械加工ユニット内にプログラムされており、リブ又は溝の全てを一度で生成する、即ち、工具保持器又は回転円板を単一機械加工方向で、例えば、円板の外周部からリブ又は溝の環状領域の底部まで移動させることによって、生成する。例えば、円板の一方の面の外周部から開始すると、溝部分は、機械加工工具の前後運動によって、円板を回転させる機械加工ユニットと同期して、正弦プログラムに従った所与の速度で次第に形成される。
【0028】
このプログラムの場合、機械加工工具の制御された前後運動と組み合わせて、溝24aの全ての開始は、円板の回転及び機械加工工具の前後運動によって達成される。このことは、第1の溝部分から環状領域の端部又は底部まで、後続の溝又はリブ部分のために連続的に繰り返される。円板24上に異なるリブ又は溝24aを生成するそのような方法の場合、円板の溝付き面ごとの機械加工時間は、1分未満であり、レーザー・ビームを使用する以前の機械加工技法とは著しく異なる。
【0029】
図5は、第1の空気又は気体ラジアル軸受18を有するシャフト7の第1の端部上に生成されたリブ又は溝32の第1の部分を示し、機械加工方法によって生成されたリブ又は溝32の第1の部分上の長手方向断面を介して示される。
【0030】
上記したアキシャル円板上に溝又はリブを生成する場合と同様に、これらの溝又はリブ32を機械加工する間、シャフト7は、機械加工ユニットによって長手方向軸回りに回転し、機械加工方向で長手方向軸に沿って移動する。工具保持器内に配設された機械加工工具は、機械加工ユニットがプログラムした方法に応じて異なる周波数で、機械加工すべきシャフトの第1の部分の反対側で前後に移動する。シャフト7を長手方向で移動させるのではなく、工具保持器を長手機械加工方向で移動し得ることに留意されたい。リブ又は溝32の全ては、機械加工工具によって、回転駆動されるシャフトの第1の端部の第1の工作物部分上で一度に得られ、前記機械加工工具は、シャフト7の第1の工作物部分の開始から終了まで前後運動を実行する。
【0031】
機械加工ユニットは、前方空気又は気体ラジアル軸受18のためにシャフト7の第1の工作物部分上にリブ又は溝32の所定の構成が得られるように、正弦プログラムに従ってシャフト7が機械加工工具と同時に同期的に回転するようにプログラムされている。例えば、第1の端部と同じ側のシャフト7の第1の工作物部分の開始から、一機械加工方向で開始すると、シャフト7の第1の端部の第1の部分の端部に関するかぎり、リブ又は溝32の全ては、一度で機械加工され、機械加工時間を著しく低減する。
【0032】
シャフト7の第1の端部の第1の部分上に生成されるリブ又は溝32の特定の構成は、機械加工ユニット内にプログラムされている。所望の一実施形態では、リブ又は溝32は、それぞれV字形である、即ち、原則的にシャフト7の第1の工作物部分の中間からの向きの変化を含む。このことは、圧縮器内で高速で回転するシャフトが、空気又は気体軸受と機械的に接触せずに保持されることを保証する。各空力ラジアル軸受における6,000rpmほどの低い空気又は気体圧から、シャフトは、静圧ラジアル軸受ともはや機械的に接触せず、したがって、あらゆる機械的な摩擦を回避する。
【0033】
図6は、シャフト7を示し、シャフト7は、シャフトの第1の端部上に機械加工されたリブ又は溝32を含む第1の部分と、シャフト7の第2の端部上に第2の部分とを有する。第1の部分及び第2の部分は、
図5を参照しながら上記説明したものと同様に機械加工される。同じ構成のV字形リブ又は溝32をシャフト7の2つの端部に設け得る。
【0034】
図1に対する補足として、圧縮器1は、アルミニウムから作製された筐体2を備え、筐体2の上面2aは、上カバー3aによって閉鎖され、筐体2の前面2b及び後面2cは、前カバー3b及び後カバー3cによってそれぞれ閉鎖される。筐体の側面2dは、基部で接合され、U字形断面を有する底部2eを形成する。
【0035】
上カバー3aは、圧縮器の電子構成要素と同じ側に配置される。したがって、圧縮器内に統合された電子構成要素へのアクセスは容易であり、このアクセスは、上カバー3aを通じてもたらさられる。前カバー3b及び後カバー3cは、圧縮器の内部(モータ、ロータ、軸受等)に手を届かせるために使用される。ガスケットは、筐体2の上面と上カバー3aとの間に介挿される。このガスケットは、電子構成要素をほこり及び湿気から保護する。
【0036】
筐体2は、圧縮すべき流体のための入口5と、圧縮流体のための接線方向出口6とを有し、入口5は、前カバー3b上に設けられ、出口6は、筐体2の側面の1つの上に設けられる。
【0037】
図1において、筐体2は、内側ハウジングを備え、内側ハウジングは、端から端まで、筐体2の前面2bと後面2cとの間で長手方向軸A-Aと同軸に延在し、前方ラジアル軸受ブラケット26及び前方ラジアル軸受18、シャフト7に取り付けられたモータ及びロータ構造体16、後方ラジアル軸受ブラケット28及び後方ラジアル軸受22、第2の羽根車10及びボリュート29を受け入れる。上面2b側では、内側ハウジングは、前カバー3bによって閉鎖され、前カバー3bは、第1の羽根車8、アキシャル軸受ブラケット30及びアキシャル軸受24を統合する。後面2c側では、内側ハウジングは、後カバー3cによって閉鎖される。
【0038】
更に、少なくとも1つのオリフィスは、有利には、例えば、参照番号57aで示される点に設けられ、通路内を循環する圧縮すべき流体が、モータに入り、ステータ14とロータ構造体16との間を循環可能であるように構成され、少なくとも1つのオリフィスは、例えば、参照番号57bで示される点に設けられ、圧縮すべき流体が、モータを冷却した後、モータを出て、前記通路に再度合流するように構成される。
【0039】
同様に、少なくとも1つのオリフィスは、有利には、例えば、
図1の参照番号59aで示される点に設けられ、通路54内を循環する圧縮すべき流体が、アキシャル軸受24、前方ラジアル軸受18及び後方ラジアル軸受22の近傍を循環可能であるように構成され、例えば、参照番号57bで示される同じ点に対応する少なくとも1つのオリフィスは、圧縮すべき流体が、前記アキシャル軸受24、前方ラジアル軸受18及び後方ラジアル軸受22を冷却した後、前記通路54に再度合流するように構成される。
【0040】
したがって、入口5を通じて第1の圧縮段に入った後、圧縮すべき流体は、第1の圧縮段と第2の圧縮段の間で長手方向軸に沿って位置する圧縮器の部品を通って通路54内を通過し、第2の圧縮段に再度合流する。したがって、圧縮すべき流体は、内壁52とモータのフェライト要素14bとの間を通過するにつれて、内壁52及びモータのフェライト要素14bを冷却し、損失熱をモータから回収し、第2の圧縮段に入る前に熱効率を増大させる。更に、オリフィス57a、57b、59aは、流れのわずかな偏移を可能にし、圧縮すべき流体が、ステータ14とロータ構造体16との間、及び軸受内にも循環するようにしてこれらの要素を冷却し、モータからの熱損失及び軸受内の摩擦による熱損失を回収するようにする。
【0041】
遠心圧縮器1は、100,000rpmから500,000rpmまでの範囲内にある非常に高い回転速度に達することが可能である。遠心圧縮器1は、第1の圧縮段で圧縮される流体がシステム全体を実質的に通過し、あらゆる廃熱、特にモータ、軸受及び電子構成要素からの廃熱を回収し、第2の圧縮段に入る前に熱効率を増大させることが可能である(圧縮すべき流体の温度が増大するにつれて、流体の圧力も増大する)。更に、圧縮器を冷却するために更なる冷却回路を用いずに、圧縮すべき流体のみを使用し、筐体内に統合される電子機器のための圧縮器内の電子構成要素の構成により、かなり小型の圧縮器がもたらされる。したがって、本発明による圧縮器は、高回転速度及び高圧縮比を有する一方で、占有体積は小さい。例えば、本発明による圧縮器は、3よりも大きい圧縮比、及び約4kWの電力を有し、寸法L×W×Hは、cmで約14×8×11であり、重量はわずか1.6kgである。
【0042】
例えば、本発明による圧縮器は、燃料電池、又はあらゆる圧縮空気を使用する他のシステム(産業用圧縮器、医療用圧縮器、船等)に給電するために空気又は気体と共に使用し得る。
【0043】
冷媒気体の場合、本発明による圧縮器は、電気、ハイブリッド又は水素車両等における携帯HVAC(暖房、換気及び空調)システムで使用し得る。
【0044】
遠心圧縮器は、熱ポンプ等、冷媒気体を有する固定システムでも使用し得る。
【0045】
遠心圧縮器は、天然気体と共に使用することもできる。
【0046】
図7は、シャフトの第1の端部及び第2の端部の部分上にリブ又は溝を生成する機械加工ユニット100の概観を示す。
【0047】
機械加工ユニット100は、リブ又は溝を機械加工する際、シャフト7を保持し、回転させるスピンドル140を有する旋盤130を備える。代替実施形態によれば、シャフトを回転する状態で保持するスピンドルは、矢印Smが示すように、リブ又は溝を生成するための長手機械加工方向で移動させることができる。
【0048】
機械加工ユニット100は、旋盤130の構造体に接続された工具保持器110を更に備える。工具保持器110は、機械加工工具120を支持し、機械加工工具の機械加工頭部は、シャフトと接触して溝又はリブを機械加工し、機械加工ユニットがプログラムした方法に従って前後に移動させることができる。機械加工工具120の頭部は、炭化タングステン又はセラミックから作製されたシャフト7上にリブ又は溝を機械加工するように、ダイヤモンドから作製し得る。機械加工は、各前方空気又は後方空気若しくは気体ラジアル軸受のためのシャフト7の工作物部分上にリブ又は溝の所定の構成が得られるように、正弦プログラムに従ってシャフト7が機械加工工具と同時に同期的に回転するように実行される。
【0049】
代替実施形態では、シャフト7の代わりに、工具保持器110も、シャフト上にリブ又は溝を機械加工するために長手機械加工方向で移動させることができる。
【0050】
工具の前後運動の頻度は、機械加工ユニット100がプログラムした方法に従って変更することもできる。
【0051】
図8は、機械加工工具の前後運動によって得られた、空気又は気体軸受のための高精度のリブ又は溝を示し、機械加工工具は、機械加工すべき材料、機械加工作業のためのシャフトの回転速度、シャフトの直径及び多数の他のパラメータによって決定される。
【0052】
最後に、
図9は、空気又は気体アキシャル軸受24の円板の1つ又は2つの面上にリブ又は溝を生成する機械加工ユニット100を示す。この機械加工ユニット100は、
図7を参照して説明したものと同じ要素を備え、この
図9に関しては繰り返さない。工具保持器110を旋盤130の構造体に接続する様式のみに留意されたい。
【0053】
言うまでもないが、本発明は、図示の例に限定されるものではなく、当業者には明らかであろう様々な代替形態及び修正形態を本発明に対して行い得る。当然、遠心圧縮器で公知であるものとの他の組合せが可能である。リブ又は溝の迅速で正確な機械加工は、上記で説明したもの以外の他の工作物に対して、等価な機械加工要素により実行し得る。
【符号の説明】
【0054】
1 遠心圧縮器
2 筐体
5 流体入口
6 圧縮流体出口
7 シャフト
8 第1の羽根車
10 第2の羽根車
16 ロータ構造体
18 前方空気又は気体ラジアル軸受
22 後方空気又は気体ラジアル軸受
24 空気又は気体アキシャル軸受
32 リブ又は溝
100 機械加工ユニット
110 工具保持器