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特許7486577RIPキナーゼ阻害剤を含む脱毛防止または発毛促進用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】RIPキナーゼ阻害剤を含む脱毛防止または発毛促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4178 20060101AFI20240510BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240510BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61P17/14
A61P43/00 111
A61K31/7105
A61K31/437
A61K31/415
A61K31/553
A61K8/00
A61K8/49
A61K8/64
A61K8/60
A61K48/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022522024
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 KR2020014074
(87)【国際公開番号】W WO2021075870
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0129125
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0020639
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0101144
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522051971
【氏名又は名称】エピ バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】スン ジョン ヒュク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン ス
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2003153(KR,B1)
【文献】Scientific Reports,2018年06月,Vol.8,pp.1-11
【文献】Cell Death Discovery,2015年,Vol.1,Article No.15009
【文献】The FEBS Journal,2017年,Vol.284,pp.3050-3068
【文献】J.Med.Chem.,2017年,Vol.60,pp.1247-1261
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 48/00
A61K 8/00- 8/99
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする脱毛防止または発毛促進用組成物。
【化1】
・・・(1)
式中、
1は、C1~C6のアルキルであり、
2は、OまたはSであり、
3~R5は、Hであり、
6は、ハロであり、
1~X4は、Cであり、及び
aは、0~1の整数である。
【請求項2】
下記一般式(2)または一般式(3)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
【化2】
・・・(2)、
【化3】
・・・(3)。
【請求項3】
下記一般式(5)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする、毛防止または発毛促進用組成物。
【化4】
・・・(5)。
【請求項4】
下記一般式(6)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする脱毛防止または発毛促進用組成物。
【化5】
・・・(6)
式中、R1はフェニルであり、R2は、C1~C6のアルキルである。
【請求項5】
下記一般式(7)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする、請求項に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
【化6】
・・・(7)。
【請求項6】
下記一般式(8)の化合物またはその異性体、またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする脱毛防止または発毛促進用組成物。
【化7】
・・・(8)
式中、R1はフェニルであり、R2は、C1~C6のアルキルである。
【請求項7】
下記一般式(9)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする、請求項に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
【化8】
・・・(9)。
【請求項8】
配列番号1及び配列番号2の塩基配列の対を含むsiRNA、または配列番号3及び配列番号4の塩基配列の対を含むsiRNAを含むことを特徴とする脱毛防止または発毛促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RIPキナーゼ(RIPK)阻害剤を含む脱毛防止または発毛促進用組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、低分子化合物、siRNA、shRNA、または抗体からなる群から選択される少なくとも1種のRIPキナーゼ阻害剤を含む脱毛防止または発毛促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、美容への関心が高まるにつれ、脱毛症の治療への関心もまた高まっている。脱毛症とは、通常あるべき箇所に髪の毛がない状態のことである。髪の毛は、生命に直結する重要な生理的機能を有してはいないものの、美容の観点からは非常に大きな役割を果たしており、その他、紫外線遮断や頭部の保護などの機能も備えている。激しい脱毛症があると、社会生活に支障をきたす虞があり、心理的にも深刻な影響を与える可能性があるため、生活の質の面で重要である。
【0003】
脱毛は、臨床的に傷を伴う瘢痕性脱毛症と毛髪だけが抜ける非瘢痕性脱毛症に分けられる。瘢痕性脱毛症の場合、毛包が破壊されるため、再び髪の毛が生えることがない。毛髪は毛包という場所で作られ、各毛包は周期的に活動と休止のサイクルを経ている。そのような毛周期の時間間隔は、体の部位によって様々であるが、髪の毛は2~6年程度の成長期(anagen)と2~4週間の退行期(catagen)を経て、3~4ヶ月程度の休止期(telogen)に入ることになる。各毛包は、生涯にわたって10~20回の毛包成長周期(hair follicle growth cycle)を有する。
【0004】
現在、脱毛治療に最も一般的に用いられている外科的方法は自毛植毛であり、プロペシア及びミノキシジルを用いた薬物治療も広く施されている。薬物治療の場合、投与している間には発毛効果が現れるが、治療を中止すると再び脱毛が進行し、特にミノキシジルの場合、性機能障害などの副作用がある。
【0005】
一方、RIPキナーゼ(RIP kinase;receptor-interacting protein kinase、RIPK)は、生来の免疫シグナル伝達に関連するTKL系列セリン/スレオニンタンパク質キナーゼであり、ヒトには、RIPK1、RIPK2、RIPK3、RIPK4及びRIPK5のような5つのRIPキナーゼが存在することが知られている。RIPキナーゼ阻害剤は、主に壊死抑制(特許文献1)や自己免疫治療(特許文献2)のために研究されているが、これらのRIPキナーゼ阻害剤が毛髪成長に関連する内容は知られていない。
【0006】
特に、RIP1/RIPK1経路を遮断することが知られているネクロスタチン-1(necrostatin-1)及びその誘導体(necrostatin-1sなど)、シビリリン(sibiriline)、GSK963またはGSK2982772は、細胞壊死に対するトリプトファンベースの小分子阻害剤であり、ネクロトーシス(necroptosis)を特異的に阻害することが知られているが、それらの毛髪成長促進効果については知られていない。
【0007】
そこで、本発明では、より効果的な脱毛予防及び治療用組成物を開発するために鋭意努力した結果、低分子化合物、siRNA、shRNA、または抗体からなる群から選択される少なくとも1種のRIPキナーゼ阻害剤によって毛髪成長誘導が促進されるのみならず、マウスにおいて発毛効果が有意に増加することを確認し、本発明の完成に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-1640068号公報(2016年7月18日)
【文献】韓国登録特許第10-1858346号公報(2018年5月16日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、RIPキナーゼ阻害剤を有効成分として含む脱毛防止または発毛促進用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、RIPキナーゼ阻害剤を含む脱毛防止または発毛促進用組成物を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、RIPカナーゼ阻害剤を用いて脱毛を防止するか、あるいは発毛を促進する方法に関する。
【0012】
一実施形態において、前記RIPキナーゼ阻害剤は、RIPK1またはRIPK3を阻害するものであってもよい。
【0013】
一実施形態において、前記RIPキナーゼ阻害剤は、低分子化合物、siRNA、shRNA、または抗体であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記低分子化合物は、下記一般式(1)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であってもよい。
【0015】
【化1】
・・・(1)
【0016】
式中、R1は、C1~C6のアルキル、C2~C6のアルケニルまたはC2~C6のアルキニルであり、
2は、OまたはSであり、
3~R5は、H、C1~C6のアルキル、C2~C6のアルケニル、C2~C6のアルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであり、
6は、それぞれ独立して、ハロ、アルコキシまたはヒドロキシであり、
1~X4は、それぞれ独立して、CまたはNであり、及び
aは、0~4の整数であってもよい。
【0017】
一実施形態において、前記R1は、C1~C6のアルキルであり、
3~R5は、Hであり、
6は、ハロであり、
1~X4は、Cであり、及び
aは、0または1であってもよい。
【0018】
他の実施形態において、前記低分子化合物は、下記一般式(2)または一般式(3)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であってもよい。下記一般式(2)の化合物は、ネクロスタチン-1であり、一般式(3)の化合物は、ネクロスタチン-1sを示す。
【0019】
【化2】
・・・(2)
【化3】
・・・(3)
【0020】
本発明の一実施形態において、前記低分子化合物は、下記一般式(4)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であってもよい。
【0021】
【化4】
・・・(4)
【0022】
式中、Rは、H、C1~C6のアルキル、C2~C6のアルケニル、C2~C6のアルキニル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであってもよい。
【0023】
さらに他の一実施形態において、前記低分子化合物は、下記一般式(5)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であってもよい。下記一般式(5)の化合物は、シビリリン(sibiriline)という。
【0024】
【化5】
・・・(5)
【0025】
本発明の一実施形態において、前記低分子化合物は、下記一般式(6)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であってもよい。
【0026】
【化6】
・・・(6)
【0027】
式中、R1またはR2は、それぞれ独立して、H、C1~C6のアルキル、C2~C6のアルケニル、C2~C6のアルキニル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであってもよい。
【0028】
一実施形態において、前記R1は、アリールであり、R2は、C1~C6のアルキルであってもよい。
【0029】
さらに他の一実施形態において、前記低分子化合物は、下記一般式(7)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であってもよい。下記一般式(7)の化合物は、GSK963という。
【0030】
【化7】
・・・(7)
【0031】
本発明の一実施形態において、前記低分子化合物は、下記一般式(8)の化合物またはその異性体、またはその薬学的に許容される塩であってもよい。
【0032】
【化8】
・・・(8)
【0033】
式中、R1またはR2は、それぞれ独立して、H、C1~C6のアルキル、C2~C6のアルケニル、C2~C6のアルキニル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであってもよい。
【0034】
一実施形態において、前記R1は、アリールであり、R2は、C1~C6のアルキルであってもよい。
【0035】
さらに他の一実施形態において、前記低分子化合物は、下記一般式(9)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であってもよい。下記一般式(9)の化合物は、GSK2982772という。
【0036】
【化9】
・・・(9)
【0037】
本発明の一実施形態において、前記siRNAは、配列番号1及び配列番号2の塩基配列の対を含むsiRNA、または配列番号3及び配列番号4の塩基配列の対を含むsiRNAであってもよい。
【0038】
さらに、本発明は、脱毛症患者にRIPキナーゼ阻害剤を投与することで、脱毛を予防または治療する方法を提供する。そのとき、RIPキナーゼ阻害剤は、前記低分子化合物、siRNA、shRNA、または抗体であってもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明では、RIPキナーゼ阻害剤であるネクロスタチン-1、ネクロスタチン-1s、シビリリン、GSK963またはGSK2982772により、マウス剛毛の毛髪成長誘導促進及びマウスの発毛効果が有意に増加することを確認した。さらに、RIPキナーゼに対するsiRNAもまた毛髪成長を促進することが確認されたので、本発明のRIPキナーゼ阻害剤は、脱毛防止または発毛促進のための用途に容易に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】マウス剛毛にネクロスタチン-1(necrostatin-1)またはネクロスタチン-1sを処理したときの、毛髪成長誘導促進の程度を示す図である。
図2】(a)ネクロスタチン-1sを除毛したマウスに塗布した後、毛が生えた様子及び(b)毛の重量を測定した結果を示す図である。
図3】マウス剛毛にシビリリン(sibiriline)を処理したときの、毛髪成長誘導促進の程度を示す図である。
図4】マウス剛毛にGSK963を処理したときの、毛髪成長誘導促進の程度を示す図である。
図5】マウス剛毛にGSK2982772を処理したときの、毛髪成長誘導促進の程度を示す図である。
図6】マウス剛毛に本発明のsiRNAを処理したときの、毛髪成長誘導促進の程度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本願の実施形態及び実施例について詳しく説明する。しかしながら、本願は、様々な形態で実施され得るので、以下に説明する実施形態及び実施例に限定されるものではない。
【0042】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に断らない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0043】
本発明は、RIPキナーゼ阻害剤を有効成分として含む脱毛防止または発毛促進用組成物に関する。RIPキナーゼ阻害剤は、低分子化合物、siRNA、shRNA、または抗体からなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、RIPK1またはRIPK3を阻害するものであってもよい。
【0044】
低分子化合物は、低分子量の化合物であり、RIPキナーゼ関連遺伝子の発現、転写または活性を阻害することができる化学物質を含む。
【0045】
本発明に用いられる残基及び置換基の定義は、特に断らない限り、以下の定義を有し、当業者によって一般的に理解されるような意味で用いられる。
【0046】
本明細書において、「アルキル」は、第1級、第2級、第3級、または第4級炭素原子を有する炭化水素であり、直鎖状、分岐状、または環状、あるいはそれらの組み合わせであってもよい飽和脂肪族基を含む。例えば、アルキル基は、1~20個の炭素原子(すなわち、C1~C20のアルキル)、1~10個の炭素原子(すなわち、C1~C10のアルキル)、または1~6個の炭素原子(すなわち、C1~C6のアルキル)を有してもよい。好適なアルキル基の例としては、メチル(Me、-CH3)、エチル(Et、-CH2CH3)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH32)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CH2CH2CH2CH3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CH2CH(CH32)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH3)CH2CH3)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH33)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH2CH3)、3-ペンチル(-CH(CH2CH32)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH32CH2CH3)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH3)CH(CH32)、3-メチル-1-ブチル(-CH2CH2CH(CH32)、2-メチル-1-ブチル(-CH2CH(CH3)CH2CH3)、1-ヘキシル(-CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ヘキシル(-CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3-ヘキシル(-CH(CH2CH3)(CH2CH2CH3))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CH32CH2CH2CH3)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH(CH32)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH3)(CH2CH32)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CH2CH3)CH(CH32)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CH32CH(CH32)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH3)C(CH33)、及びオクチル(-(CH27CH3)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
さらに、明細書、実施例、及び特許請求の範囲の全般にわたって用いられる「アルキル」なる用語は、非置換及び置換のアルキル基の両方を含むことを意図し、それらのうち後者は、トリフルオロメチル及び2,2,2-トリフルオロエチルのようなハロアルキル基などを含む、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル残基を指す。
【0048】
「Cx-y」または「Cx-Cy」なる用語は、アルキル、アルケニルまたはアルキニルなどの化学的残基と組み合わせて用いられる場合、鎖内にxないしy個の炭素を含有する基を含むものとみなされる。C0のアルキルは、基が末端位置にある場合は水素を示し、内部にある場合は結合を示す。例えば、C1~C20のアルキル基は、鎖内に1~20個の炭素原子を含有する。
【0049】
「アルケニル」は、第1級、第2級、第3級、または第4級炭素原子を有し、直鎖状、分岐状、及び環状の基、またはそれらの組み合わせを含み、少なくとも1つの不飽和領域、すなわち、炭素-炭素sp2二重結合を有する炭化水素である。例えば、アルケニル基は、2~20個の炭素原子(すなわち、C2~C20のアルケニル)、2~12個の炭素原子(すなわち、C2~C12のアルケニル)、2~10個の炭素原子(すなわち、C2~C10のアルケニル)、または2~6個の炭素原子(すなわち、C2~C6のアルケニル)を有してもよい。好適なアルケニル基の例としては、ビニル(-CH=CH2)、アリル(-CH2CH=CH2)、シクロペンテニル(-C57)、及び5-ヘキセニル(-CH2CH2CH2CH2CH=CH2)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
「アルキニル」は、第1級、第2級、第3級、または第4級炭素原子を有し、直鎖状、分岐状、及び環状の基、またはそれらの組み合わせを含み、少なくとも1つの炭素-炭素sp三重結合を有する炭化水素である。例えば、アルキニル基は、2~20個の炭素原子(すなわち、C2~C20のアルキニル)、2~12個の炭素原子(すなわち、C2~C12のアルキニル)、2~10個の炭素原子(すなわち、C2~C10のアルキニル)、または2~6個の炭素原子(すなわち、C2~C6のアルキニル)を有してもよい。好適なアルキニル基の例としては、アセチレン系(-C≡CH)及びプロパルギル(-CH2C≡CH)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本明細書中で使用される「ハロ」なる用語は、クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードを含む。
【0052】
「シクロアルキル」は、モノサイクリック、ビサイクリック、またはポリサイクリックであってもよく、環の原子のそれぞれが炭素である、非芳香族飽和または不飽和、一価または二価環を指す。シクロアルキル基は、モノサイクルとして3~7個の炭素原子、ビサイクルとして7~12個の炭素原子、及びポリサイクルとして約20個以下の炭素原子を有してもよい。
【0053】
「ヘテロシクロアルキル」は、シクロアルキルの環構造が、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1~2個のヘテロ原子を含むことを意味する。好適なヘテロ原子の例としては、酸素、硫黄及び窒素が挙げられる。
【0054】
「アリール」は、環の各原子が炭素である、モノサイクリック(単環式)、ビサイクリック(二環式)、またはポリサイクリック(多環式)である、一価または二価の芳香族炭化水素基を含む。アリール環は、6~20員環を有してもよく、好ましくは6~14員環を有してもよい。
【0055】
「ヘテロアリール」は、環内に少なくとも1つのヘテロ原子を含む、モノサイクリック、ビサイクリック、またはポリサイクリックである、一価または二価の芳香族基を指す。好適なヘテロ原子の例としては、酸素、硫黄及び窒素が挙げられる。
【0056】
本発明において「siRNA」とは、特定のmRNAの切断(cleavage)によってRNA干渉(RNAi;RNA interference)現象を誘導することのできる短い二本鎖RNAを意味する。siRNAは、標的遺伝子のmRNAと同じ配列を有するセンスRNA鎖と、それと相補的な配列を有するアンチセンスRNA鎖で構成されている。siRNAは、標的遺伝子の発現を阻害することができるため、効率的な遺伝子ノックダウン(knock-down)法または遺伝子治療(gene therapy)法として提供される。
【0057】
siRNAは、RNA同士で対をなす二本鎖RNA部分が完全な対をなすものだけでなく、ミスマッチ(mismatch;対応する塩基が相補的ではない)、バルジ(bulge;一方の鎖に対応する塩基がない)などの対をなしていない部分が一部含まれてもよい。全長は10~100塩基、好ましくは15~80塩基、さらに好ましくは20~70塩基である。siRNA末端構造は、RNAi効果によって標的遺伝子の発現を阻害できるものであれば、平滑(blunt)末端あるいは粘着(cohesive)末端のいずれも可能である。粘着末端構造は、3′末端側が突出した構造または5′末端側が突出した構造のいずれも可能である。突出する塩基数は限定されるものではない。例えば、塩基数は、1~8塩基、好ましくは2~6塩基であってもよい。
【0058】
また、siRNAは、標的遺伝子の発現阻害効果を維持できる範囲で、例えば、一端の突出部に低分子RNA(例えば、tRNA、rRNA、ウイルスRNAなどの天然のRNA分子または人工のRNA分子)を含んでもよい。siRNA末端構造は、両側とも切断構造を有する必要はなく、二本鎖RNAの一方の末端部分がリンカーRNA(linker RNA)によって接続されたステムループ(stem-loop)型構造であってもよい。リンカーの長さは、ステム部分の対をなすのに支障のない長さであれば、特に限定されるものではない。
【0059】
siRNAを調製する方法は、試験管でsiRNAを直接合成し、その後形質移入(transfection)過程を経て細胞内に導入させる方法と、siRNAが細胞内で発現されるように調製されたsiRNA発現ベクターまたはPCR-derived siRNA発現カセットを細胞内に形質移入または感染(infection)させる方法がある。siRNAを調製し、細胞または動物に導入する方法の決定は、実験の目的及び標的遺伝子産物の細胞生物学的機能に応じて異ならせてもよい。
【0060】
本発明において、「shRNA」とは、small hairpin RNAまたはshort hairpin RNA(shRNA)のことであり、RNA干渉によって遺伝子の発現をサイレンシング(silencing)させるときに使用する小さなhairpin構造を有するRNAである。shRNAは、ベクターを用いて細胞に導入され、shRNA hairpin構造は、細胞内の他の物質によって切断されてsiRNAになる。そこで、そのsiRNAがRNA induced silencing complex(RISC)と結合し、その複合体(complex)は、siRNAとマッチする配列部分を有するmRNAに付着してそのmRNAを切断する。その結果、mRNAが破壊されるため、mRNAの有する遺伝子が発現されず、遺伝子サイレンシングを引き起こす。
【0061】
本発明において、siRNAは、配列番号1及び配列番号2の塩基配列対からなるsiRNAまたは配列番号3及び配列番号4の塩基配列対からなるsiRNAであることを特徴とするが、siRNAの塩基配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上同じ配列を含んでもよい。
【0062】
siRNAは、好ましくはRIPK1またはRIPK3の遺伝子発現を阻害することを特徴とするが、それに限定されるものではなく、RIPK1またはRIPK3以外に他のRIPキナーゼ関連遺伝子発現を阻害してもよい。
【0063】
「抗体」は、RIPキナーゼ(RIPK)に特異的に結合してRIPキナーゼ活性を阻害することができるものであり、抗体は、2つの全長の軽鎖及び2つの全長の重鎖を有する完全な形態だけでなく、抗体分子の断片が使用されてもよい。抗体分子の断片とは、少なくともペプチドタグ(エピトープ;epitope)結合機能を保持している断片のことであり、単鎖Fv(scFv)、Fab、F(ab′)、F(ab′)2、単一ドメイン(single domain)などが挙げられる。
【0064】
本発明の組成物は、薬学的組成物、医薬部外品組成物または化粧料組成物として調製されてもよい。
【0065】
本発明の組成物が薬学的組成物として調製される場合、本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含む。本発明の薬学的組成物に含まれる薬学的に許容される担体には、通常用いられるものであり、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油などが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、前記成分以外に、滑沢剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含んでもよい。
【0066】
本発明の薬学的組成物は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法で、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することにより、単位用量の形態または多用量容器に入れた形態に調製されてもよい。そのとき、剤形は、油または水性媒体中の溶液、懸濁液、シロップ剤または乳化液の形態であるか、あるいはエキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含んでもよい。
【0067】
本発明の組成物が医薬部外品組成物として調製される場合、脱毛防止または発毛促進効果を示すRIPキナーゼ阻害剤をそのまま添加するか、あるいは他の医薬部外品または医薬部外品成分と併用してもよく、従来の方法に従って適宜使用されてもよい。
【0068】
本発明の脱毛防止または発毛促進用医薬部外品組成物は、その剤形において特に限定されることなく、脱毛防止または発毛促進効果を示すものとして当業界に知られている医薬部外品の形態で様々に剤形化されてもよい。剤形化された医薬部外品としては、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアムース、ヘアジェル、ヘアコンディショナー、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアパック、ヘアトリートメント、眉発毛剤、まつげ発毛剤、まつげ栄養剤、ペット用シャンプー、ペット用リンス、ハンドソープ、洗剤石鹸、石鹸、消毒清潔剤、ウェットティッシュ、マスク、軟膏剤、パッチまたはフィルター充填剤などが挙げられ、通常の意味でのあらゆる医薬部外品を含む。
【0069】
また、各剤形において、脱毛防止または発毛促進用の医薬部外品組成物は、他の成分を他の医薬部外品の剤形または使用目的などに応じて任意に選定して配合してもよい。
【0070】
本発明の組成物が化粧料組成物として調製される場合、本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分としてのRIPキナーゼ阻害剤以外に、化粧品組成物に通常用いられる成分を含み、例えば、抗酸化剤、安定化剤、可溶化剤、ビタミン、顔料及び香料などの通常の補助剤、及び担体を含む。
【0071】
本発明の化粧料組成物は、当該技術分野において通常調製されるいかなる剤形に調製してもよく、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、スプレーなどに剤形化してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、下記の実施例は説明を目的とするものに過ぎず、本願発明の範囲を限定しようとする意図ではない。
【実施例1】
【0073】
ネクロスタチン-1またはネクロスタチン-1s処理による毛髪成長誘導効果の確認
RIPキナーゼ阻害剤であるネクロスタチン-1(Nec-1、一般式(2))またはネクロスタチン-1s(Nec-1s、一般式(3))処理による毛髪成長誘導効果を確認するために、下記不活性型ネクロスタチン-1(Nec-1i、一般式(10))を対照群として実験を行った。
【0074】
【化10】
・・・(10)
【0075】
前記不活性型ネクロスタチン-1と、本発明のネクロスタチン-1及びネクロスタチン-1sをマウスの剛毛(vibrissae)に処理し、毛髪成長誘導の程度を確認した。
【0076】
具体的には、C57BL/6雌マウスの剛毛(vibrissae)をトリムして器官培養(organ culture)した。トリムした剛毛は、48ウェルプレートで1ウェルあたり1個となるように培養し、無処理群、不活性型ネクロスタチン-1処理群、ネクロスタチン-1処理群、及びネクロスタチン-1s処理群のように合計4つのグループに分け、3つの処理群の剛毛にそれぞれ10μMずつ処理し、その後37℃の培養器で3日間培養した。その結果を図1に示す。
【0077】
図1に示すように、不活性型ネクロスタチン-1に対して、ネクロスタチン-1及びネクロスタチン-1sは、優れた毛髪成長促進効果を有することが確認された。
【実施例2】
【0078】
ネクロスタチン-1s処理による発毛効果の確認
生後6週齢の雄C3H/HeNマウス10匹を、脱毛機を用いて毛を短く剃り、除毛剤を用いて残っている毛を完全に除去し、その後、1日間安定させてから実験に用いた。
【0079】
以下の条件でマウス5匹ずつグループを分けて実験を行った。
(i)無処理対照群
(ii)2%ミノキシジル(MNX;minoxidil)投与群
(iii)ネクロスタチン-1s 10μM投与群
(iv)ネクロスタチン-1s 100μM投与群
【0080】
グループごとにマウスの背中部分に、13日間合計13回、100μLずつ塗布し、13日にかけてマウスの背中部分の発毛程度を観察した。13日後、発毛が行われたマウスの背中部分を、剃刀を用いて剃毛し、その後、得られた毛の重量を測定した。その結果を図2に示す。
【0081】
図2に示すように、ネクロスタチン-1s投与群は、無処理対照群に対して、優れた毛髪成長効果を示すことが確認された。特に、ネクロスタチン-1s 100μM投与群は、市販品であるミノキシジル投与群に対して、より優れた毛髪成長誘導効果を有することが確認された。
【実施例3】
【0082】
シビリリン(sibiriline)処理による毛髪成長誘導効果の確認
RIPキナーゼ阻害剤であるシビリリン(sibiriline、一般式(5))処理による毛髪成長誘導効果を確認するために、シビリリンをマウスの剛毛(vibrissae)に処理し、毛髪成長誘導程度を確認した。
【0083】
具体的には、C57BL/6雌マウスの剛毛(vibrissae)をトリムして器官培養(organ culture)した。トリムした剛毛は、48ウェルプレートで1ウェルあたり1個となるように培養し、無処理群(対照群)、シビリリン1μM処理群、及びシビリリン10μM処理群の合計3つのグループに分け、剛毛にそれぞれ処理し、その後、37℃の培養器で3日間培養した。その結果を図3に示す。
【0084】
図3に示すように、シビリリン1μM及び10μM処理群は、優れた毛髪成長促進効果を有することが確認された。
【実施例4】
【0085】
GSK963処理による毛髪成長誘導効果の確認
RIPキナーゼ阻害剤であるGSK963(一般式(7))処理による毛髪成長誘導効果を確認するために、GSK963をマウスの剛毛(vibrissae)に処理し、毛髪成長誘導程度を確認した。
【0086】
具体的には、C57BL/6雌マウスの剛毛(vibrissae)をトリムして器官培養(organ culture)した。トリムした剛毛は、48ウェルプレートで1ウェルあたり1個となるように培養し、無処理群(対照群)、GSK963 1μM処理群、及びGSK963 10μM処理群の合計3つのグループに分け、剛毛にそれぞれ処理し、その後、37℃の培養器で3日間培養した。その結果を図4に示す。
【0087】
図4に示すように、GSK963 1μM及び10μM処理群は、優れた毛髪成長促進効果を有することが確認された。
【実施例5】
【0088】
GSK2982772処理による毛髪成長誘導効果の確認
RIPキナーゼ阻害剤であるGSK2982772(一般式(9))処理による毛髪成長誘導効果を確認するために、GSK2982772をマウスの剛毛(vibrissae)に処理し、毛髪成長誘導程度を確認した。
【0089】
具体的には、C57/BL6雌マウスの剛毛(vibrissae)をトリムして器官培養(organ culture)した。トリムした剛毛は、48ウェルプレートで1ウェルあたり1個となるように培養し、無処理群(対照群)、GSK2982772 1μM処理群、GSK2982772 10μM処理群、及びGSK2982772 50μM処理群の合計4つのグループに分け、剛毛にそれぞれ処理し、その後、37℃の培養器で3日間培養した。その結果を図5に示す。
【0090】
図5に示すように、GSK2982772 1μM、10μM、及び50μM処理群は、いずれも優れた毛髪成長促進効果を有することが確認された。
【実施例6】
【0091】
RIPキナーゼに対するsiRNA処理による毛髪成長誘導効果の確認
RIPキナーゼ発現を阻害することのできるsiRNA処理による毛髪成長誘導効果を確認するために、下記表1のようにsiRNAを合成し、対照群であるcontrol siRNAは、(株)バイオニアから購入して用いた。
【0092】
【表1】
【0093】
表1のsiRNAをマウスの剛毛(vibrissae)に処理し、毛髪成長誘導の程度を確認した。
【0094】
具体的には、C57BL/6雌マウスの剛毛(vibrissae)をトリムして器官培養(organ culture)した。トリムした剛毛は、48ウェルプレートで1ウェルあたり1個となるように培養し、表1のRIPK1 siRNA処理群、RIPK3 siRNA処理群、及びcontrol siRNA処理群(対照群)の合計3つのグループに分け、剛毛にそれぞれ処理し、その後、37℃の培養器で3日間培養した。その結果を図6に示す。
【0095】
図6に示すように、RIPK1 siRNA及びRIPK3 siRNA処理によって毛髪成長が促進されることが確認された。
【0096】
以上の実験結果から、RIPキナーゼ発現阻害によって毛髪成長が促進されることが分かるので、本発明に用いたsiRNA以外の他のRIPキナーゼ阻害剤もまた、脱毛防止または発毛促進の効果を有することが分かる。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕RIPキナーゼ(receptor-interacting protein kinase)阻害剤を含む、脱毛防止または発毛促進用組成物。
〔2〕前記RIPキナーゼ阻害剤が、低分子化合物、siRNA、shRNA、または抗体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、前記〔1〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
〔3〕前記低分子化合物が、下記一般式(1)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、前記〔2〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
・・・(1)
式中、
1 は、C 1 ~C 6 のアルキル、C 2 ~C 6 のアルケニルまたはC 2 ~C 6 のアルキニルであり、
2 は、OまたはSであり、
3 ~R 5 は、H、C 1 ~C 6 のアルキル、C 2 ~C 6 のアルケニル、C 2 ~C 6 のアルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであり、
6 は、それぞれ独立して、ハロ、アルコキシまたはヒドロキシであり、
1 ~X 4 は、それぞれ独立して、CまたはNであり、及び
aは、0~4の整数である。
〔4〕R 1 は、C 1 ~C 6 のアルキルであり、
3 ~R 5 は、Hであり、
6 は、ハロであり、
1 ~X 4 は、Cであり、及び
aは、0または1であることを特徴とする、前記〔3〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
〔5〕前記低分子化合物が、下記一般式(2)または一般式(3)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、前記〔3〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
・・・(2)、
・・・(3)。
〔6〕前記低分子化合物が、下記一般式(4)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、前記〔2〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
・・・(4)
式中、
Rは、H、C 1 ~C 6 のアルキル、C 2 ~C 6 のアルケニル、C 2 ~C 6 のアルキニル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルである。
〔7〕前記低分子化合物が、下記一般式(5)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、前記〔6〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
・・・(5)。
〔8〕前記低分子化合物が、下記一般式(6)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、前記〔2〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
・・・(6)
式中、R 1 またはR 2 は、それぞれ独立して、H、C 1 ~C 6 のアルキル、C 2 ~C 6 のアルケニル、C 2 ~C 6 のアルキニル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルである。
〔9〕R 1 は、アリールであり、及び
2 は、C 1 ~C 6 のアルキルであることを特徴とする、前記〔8〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
〔10〕前記低分子化合物が、下記一般式(7)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、前記〔8〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
・・・(7)。
〔11〕前記低分子化合物が、下記一般式(8)の化合物またはその異性体、またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、前記〔2〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
・・・(8)
式中、R 1 またはR 2 は、それぞれ独立して、H、C 1 ~C 6 のアルキル、C 2 ~C 6 のアルケニル、C 2 ~C 6 のアルキニル、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルである。
〔12〕R 1 は、アリールであり、及び
2 は、C 1 ~C 6 のアルキルであることを特徴とする、前記〔11〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
〔13〕前記低分子化合物が、下記一般式(9)の化合物、またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、前記〔11〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
・・・(9)。
〔14〕前記siRNAが、配列番号1及び配列番号2の塩基配列の対を含むsiRNA、または配列番号3及び配列番号4の塩基配列の対を含むsiRNAであることを特徴とする、前記〔2〕に記載の脱毛防止または発毛促進用組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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