(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックデバイス、並びにその製造方法および操作方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/153 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
G02F1/153
(21)【出願番号】P 2022522875
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 RU2019000749
(87)【国際公開番号】W WO2021075999
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-07-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518301590
【氏名又は名称】ビトロ フラット グラス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソコル、イヴァン アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】マスロフ、ボリス
(72)【発明者】
【氏名】コッサコフスキー、ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】ザイキン、パヴェル アナトリエヴィチ
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118933(JP,A)
【文献】特開2018-070475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0373107(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0024792(US,A1)
【文献】特開2010-072070(JP,A)
【文献】特表2019-502145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15ー1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、第2の電極、および1つまたは複数のエレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック組成物を含み、
前記1つまたは複数のエレクトロクロミック材料の少なくとも1つは、前記第1の電極または前記第2の電極のいずれかでのみ電子交換を行い、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記第1の電極と前記第2の電極との間にそれらに接触して配置され、前記電極間の入力信号に応答して、光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成され
、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記1つまたは複数のエレクトロクロミック材料として陰極化合物および陽極化合物を含み、前記第1の電極または前記第2の電極のいずれかまたは両方は、前記陽極化合物の還元および酸化を実質的に禁止しながら、実質的に前記陰極化合物および/またはその還元形態のみを還元および酸化することを選択的に可能にする、エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
前記第1の電極または前記第2の電極のいずれかまたは両方は、前記エレクトロクロミック組成物との界面に半導体材料を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項3】
前記第1の電極は、前記第2の電極の材料とは異なる材料を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項4】
前記エレクトロクロミック組成物は、入力信号に応答して、可視光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成される、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項5】
前記エレクトロクロミック組成物内で、第1の電極と第2の電極との間に配置された、選択的透過性膜をさらに含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項6】
前記膜は、中心部分および周辺部分を有し、前記中心部分は、前記周辺部分の透過性とは異なる透過性を有する、請求項
5に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項7】
前記膜は、中心部分および周辺部分を有し、前記中心部分は、前記周辺部分よりも高い透過性を有する、請求項
5に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項8】
前記第1の電極、第2の電極、およびエレクトロクロミック組成物は、可変透過率層(VTL)を形成し、前記VTLは、前記VTLの中心部分において、前記VTLの周辺部とは異なる電気特性を有する、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項9】
前記エレクトロクロミック組成物は、ゲルの形態にある、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項10】
前記ゲルの形態のエレクトロクロミック層は、前記ゲルの横方向において前記ゲルの異なる領域で実質的に異なる電気的特性を有する、請求項
9に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項11】
入力信号を印加するためのコントローラをさらに含み、前記コントローラは、分散型多点電気接続によって前記第1および第2の電極に電気的に接続され、前記電極間のオーム降下を最小限に抑える、および/または前記コントローラは、前記エレクトロクロミック組成物のイオン移動制限条件で両方の電極を動作させるように構成される、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項12】
第1の電極、第2の電極、および1つまたは複数のエレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック組成物を含み、
前記1つまたは複数のエレクトロクロミック材料の少なくとも1つは、前記第1の電極または前記第2の電極のいずれかでのみ電子交換を行い、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記第1の電極と前記第2の電極との間にそれらに接触して配置され、前記電極間の入力信号に応答して、光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成され、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記1つまたは複数のエレクトロクロミック材料として陰極化合物および陽極化合物を含み、前記第1の電極または前記第2の電極のいずれかまたは両方は、前記陰極化合物の還元および酸化を実質的に禁止しながら、実質的に前記陽極化合物および/またはその酸化形態のみを還元および酸化することを選択的に可能にする、エレクトロクロミックデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック材料、デバイス、並びにその製造方法およびそれらの操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミズムは、特定の化合物、組成物、またはアセンブリに見られる物理現象であり、制御電圧と呼ばれる電圧の印加によって発生する電流によって、色または光の透過率などの光学特性を可逆的に変化させることができる。エレクトロクロミズムは、窓、鏡、ディスプレイの形態のスマートガラスなどの様々なエレクトロクロミックデバイスの操作の基礎を提供する。様々なタイプの光学材料および構造を使用して、エレクトロクロミック特性を備えた組成物を構築することができ、特定の構造は、エレクトロクロミックデバイスの特定の目的に依存する。
【0003】
様々な特許および特許出願が、エレクトロクロミック材料およびデバイスを開示している。そのような特許および特許出願には、例えば、エレクトロクロミック組成物およびデバイスを説明している特許文献1、有機活性エレクトロクロミック材料を含むポリマーマトリックスのUV硬化によって製造された有機エレクトロクロミックデバイスの製造と操作について説明している特許文献2が含まれる。特許文献3~特許文献8は、様々なエレクトロクロミック材料およびデバイスを開示している。総説は、オールインワンのゲルベースのエレクトロクロミックデバイスを開示している。非特許文献1を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0353819号明細書
【文献】露国特許第2642558号明細書
【文献】米国特許第6262832号明細書
【文献】米国特許第6433914号明細書
【文献】米国特許第6445486号明細書
【文献】米国特許第6710906号明細書
【文献】米国特許第7031043号明細書
【文献】米国特許第8294974号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】Alesancoら、Materials 2018、11、414、pp.1-27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エレクトロクロミック材料、デバイス、それらの製造方法、およびそれらの操作方法に対する継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の利点には、エレクトロクロミックデバイスおよびその構成要素、ならびにエレクトロクロミックデバイスを制御するためのシステムおよび方法が含まれる。本開示の追加の利点には、エレクトロクロミック材料、エレクトロクロミック組成物、およびエレクトロクロミック層が含まれる。本開示の特定の態様では、エレクトロクロミック組成物および層は、ゲルの形態とすることができる。本開示はまた、エレクトロクロミックデバイスおよびその構成要素、エレクトロクロミック組成物、層、およびゲルを製造するための方法を提供する。
【0008】
本発明の追加の利点は、以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになり、本発明の好ましい実施形態のみが、本発明を実施するための考えられる最良の様式の例示として単に示され、説明される。理解されるように、本発明は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本発明から逸脱することなく、様々な明白な点で修正することができる。したがって、図面および説明は、本質的に例示的なものと見なされるべきであり、限定的なものとして見なされるべきではない。
【0009】
添付の図面を参照し、同じ符号の記載を有する要素は、全体を通して同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示の一実装形態に係るエレクトロクロミックデバイスを示す。
【
図1B】本開示の一実装形態に係るエレクトロクロミックデバイスの可変透過率層の構造の一例を示す。
【
図1C】本開示の態様を実施する際に使用することができる例示的なビオロゲンを示す。
【
図2】本開示の態様に係るいくつかのエレクトロクロミックデバイスの設計を示す。
【
図3】本開示の一実施形態に係るエレクトロクロミックデバイスの電極への電気的接触を提供する基板のエッジを超えてバスバーを提供するためのプロセスを示す。
【
図4】本開示の一実施形態に係るエレクトロクロミックデバイス用のバスバーを有する電極の一代替例を示す。
【
図5A】本開示の一実施形態に係るエレクトロクロミックデバイス内にエレクトロクロミック組成物(ECC)をシールするためのシール構成を示す。
【
図5B】本開示の一実施形態に係るエレクトロクロミックデバイス内にエレクトロクロミック組成物(ECC)をシールするための代替のシール構成を示す。
【
図6A】本開示の一実施形態に係るECデバイスを組み立てる方法を示す。
【
図6B】本開示の一実施形態に係るECデバイスを組み立てる方法を示す。
【
図7A】本開示の一実施形態に係るECデバイスを製造する際に、ECCを基板上に注ぐ方法を示す。
【
図7B】本開示の一実施形態に係るECデバイスを製造している間に、ECCを基板上に注ぐ代替の方法を示す。
【
図8】本開示の一実施形態に係るECデバイスを製造している間に、ECCを基板上に注ぐさらなる代替の方法を示す。
【
図9】本開示の一実施形態に係る電極フィルム上にECCを提供する方法を示す。
【
図10A】本開示の一実施形態に係るECデバイスに使用される可変透過率層の構成を示す。
【
図10B】本開示の一実施形態に係るECデバイスに使用される可変透過率層の構成を示す。
【
図10C】層の周辺領域よりも高い導電率を有する中心領域を有するエレクトロクロミック層を示す。
【
図11】本開示の一実施形態に係るECデバイスを制御するための制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図12A】本開示の組成物、層、ゲル、およびデバイスで使用することができるビオロゲンをリストし、示す。
【
図12B】本開示の組成物、層、ゲル、およびデバイスで使用することができるビオロゲンをリストし、示す。
【
図12C】本開示の組成物、層、ゲル、およびデバイスで使用することができるビオロゲンをリストし、示す。
【
図12D】本開示の組成物、層、ゲル、およびデバイスで使用することができるビオロゲンをリストし、示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の命名規則は、この開示全体を通して使用される。
【0012】
化学ポテンシャル(μ)-化学反応または相転移などにおいて、特定の種の粒子数の変化によって吸収または放出される可能性のあるエネルギー。混合物中の種の化学ポテンシャルは、系に追加される種の原子または分子の数の変化に対する熱力学系の自由エネルギーの変化率として定義される。したがって、それは種の量に関する自由エネルギーの偏導関数であり、混合物中の他のすべての種の濃度は一定のままである:
【数1】
モル化学ポテンシャルは、部分モル自由エネルギーとしても知られている。温度と圧力の両方が一定に保たれている場合、化学ポテンシャルは部分モルギブズの自由エネルギーに等しい。理想的な混合物または溶液では、化学ポテンシャルは、次のように表すことができる:
【数2】
ここで、x
iはi番目の成分のモル分率であり、μ
i
*は、その温度と圧力でその純粋な形態での成分のモル自由エネルギーである。非理想的な混合物および溶液の場合、化学ポテンシャルは、
【数3】
である。ここで、a
iはi番目の成分の相対活量であり、γ
iは活量係数である。
【0013】
電気化学ポテンシャル
【数4】
-静電気のエネルギー寄与:
【数5】
を省略しない化学ポテンシャルの熱力学的測定。ここで、z
iはi番目の成分の電荷、Fはファラデー定数、ψは局所静電ポテンシャルである。
【0014】
濃度-成分の存在量を混合物の総体積で割ったもの。
【0015】
活量-混合物中の種の「有効濃度」の尺度。種の化学ポテンシャルが、理想的な溶液の濃度に依存するのと同じように、実際の溶液の活量に依存するという意味である。物質の絶対活量は、
【数6】
で表され、相対活量は、
【数7】
のように定義される。ここで、μは化学ポテンシャル、μ
0は、活量が1と見なされる定義された標準状態における材料のモル自由エネルギー(標準化学ポテンシャル)。
【0016】
律速プロセス(ステップ)-最小の速度係数による連続反応の最も遅いプロセス。
【0017】
レドックス対-1つまたは複数の電子が異なる分子(イオン)のペア。
【0018】
レドックス反応-反応物が互いの間で電子を交換する化学反応。電子を獲得および放出するプロセスは、それぞれ還元および酸化と呼ばれる。各々のレドックス反応は、同時に起こる還元と酸化の両方を含む。還元を受ける反応物は酸化剤と呼ばれ、酸化される反応物は還元剤と呼ばれる。レドックス応は、正式には、酸化と還元を別々に表す少なくとも2つの半反応に分割できる。半反応における酸化形態および還元形態の単一の参加者は、レドックス対を含む。各々の半反応は、参照システムとしての標準水素電極に対して測定された標準(酸化還元)電位に起因する。
【0019】
可逆的なレドックス反応-この用語は3つの異なる文脈で使用される。化学的に可逆的なレドックス反応-2つの方向、つまり反応物から生成物へ、および逆方向に進行し得るレドックス反応。熱力学的に可逆的なレドックス反応-常に平衡状態にあるレドックス反応。初期状態から最終状態まで、一連の平衡状態を経て進行するため、非常にゆっくりと進行し、無限の時間が必要になる。駆動力の方向の微小な変化により、プロセスの方向が逆になる。電気化学的に可逆的なレドックス反応-レドックス対の両方の種の表面濃度が、電極と電解質の界面に印加される任意の電位差でネルンストの式に従うレドックス反応または電極反応。この場合、界面での電荷移動は、すべての対になった物質移動プロセスよりもはるかに高速である。
【0020】
界面-2つの相を分離する2次元平面。2つの相間の界面の安定性に対する一般的な熱力学的要件は、正のギブスエネルギーの形成であり、さもなければ、界面が変動するか、消失するためである。界面の両側の分子間力は特定の異方性をもっているため、最表面層の構造は相の内部の構造とは異なる。
【0021】
電気活性物質-相間に電界を印加すると、相間電荷移動中に酸化状態が変化する物質。
【0022】
電極(工学/電子工学)-電流が物体または領域に出入りする電子的導体でできた要素。最も単純なケースでは、純固体金属である。しかしながら、電子導体はまた、合金(例えば、アマルガム)、炭素(例えば、グラファイト、ガラス状炭素、カーボンナノチューブ)、半導体(例えば、ホウ素ドープダイヤモンド、金属酸化物、金属塩、ドープシリコン、ゲルマニウム合金)、または自由電子のドリフトによって電流を伝導するその他の材料とすることができる。
【0023】
光学的に透明な電極(OTE)-可視光を透過する電極(工学)。OTEは、透明な基板(ガラス、石英、プラスチックなど)に蒸着された金属または半導体の薄膜を含むことができる。さらに、OTEは、一般的に透明導電性酸化物(TCO)と呼ばれる透明酸化物から作製できる。あるいはまた、OTEは細い金網またはグリッドの形態とすることができる。OTEは、電流分配マニホールドとして機能し、例えばEC層(ECL)のすべての領域との間で電流をやり取りできる。理想的には、OTEは透過光を実質的に歪ませる(吸収する、および散乱する)ことはない。
【0024】
理想的に分極可能な電極-その電子およびイオン導体相が、電荷を変化させて相間を移動できる共通の構成要素をもたないため、熱力学的平衡に達することができない電極。この基準は、潜在的な範囲、時間スケールなど、いくつかの条件下でのみ適用できる。
【0025】
理想的に分極可能でない電極-その電子導体相とイオン導体相との間で共通の荷電粒子の交換が妨げられない電極。この基準は、潜在的な範囲、時間スケールなど、いくつかの条件下でのみ適用できる。
【0026】
電気触媒電極-電気化学的プロセスが触媒作用を受ける、つまり、ほとんどの場合、その速度が増加する、電極。
【0027】
基準電極-電位が電位スケールのゼロ値として選択される電気化学セルの電極。水性電解質を備えた3電極セルでは、実験中に電位が実質的に一定のままであるため、通常、第二種の別個の電極(飽和カロメル電極、SCE、またはAgCl電極など)で表される。非水系(有機)システムでは、疑似参照(例えば、Ag金属)電極が、一般的にインサイチューレドックス参照とともに使用され、このレドックス電位は、電解質の特性(例えば、フェロセン)とは実質的に無関係である。3電極セルの原理は、基準電極を流れる電流がゼロに近いことを前提としている。2電極セルでは、対電極が基準電極として使用される。
【0028】
標準水素電極-電気化学の主要な基準であり、その標準電位が、分子状水素の溶媒和(水和)プロトンへの酸化を伴うセル反応の標準電位の値として定義される電極。
【0029】
作用電極-所与の電極プロセスが検査される電極。この用語は通常、分析電気化学の文脈で使用される。
【0030】
対電極-作用電極を有するセル内の第2の電解質-電極界面を表す電極。これにより、セルを外部回路に接続することができ、作用電極のプロセスを進めることができる。
【0031】
陰極-電気化学セルでは、陰極は還元が起こり、電子が電極から電解質に流れる電極である。
【0032】
陽極-電気化学セルでは、陽極は酸化が起こり、電子が電解質から電極に流れる電極である。
【0033】
陽極/陰極/電極スタック-少なくとも1つの陽極層または少なくとも1つの陰極層を含む層のスタック。このようなスタックは、機械的支持体(基板)、表面の電子伝導性、および界面電荷移動の機能を実行することができる。基板と表面導体の間の層間接着は、必要に応じて追加の層(複数可)によって促進され得る。陽極スタックは充電条件で陽極として機能し、陰極スタックは充電条件で陰極として機能する(放電時に逆もまた同様である)。層の機能を組み合わせてもよい。つまり、1つの層が複数の機能を実行してもよい。同様に、1つの機能がいくつかの層によって実行されてもよい。
【0034】
電気化学セル-イオン伝導体(一般的な場合は溶液)と接触している少なくとも2つの電極の組み合わせ。電気化学セルは、反応が自発的に発生して化学エネルギーが電気エネルギーに変換される場合はガルバニ電池として、または電気エネルギーが化学エネルギーに変換される電解セルとして動作することができる。
【0035】
ガルバニ電池-電極が導体によって外部に接続されている場合、電極で反応が自発的に発生する電気化学セル。これは、発生する反応が負のギブズエネルギー差(ΔG<0))を有する必要があることを意味する。
【0036】
電解セル-そのギブス反応が正(ΔG>0)であるため、セルに電気エネルギーが外部から供給されるまで反応が発生しない、電気化学セル。
【0037】
電気化学セルの充電/放電-電流の流れを伴うプロセスで、陰極と陽極の間の平衡電位差の増減を引き起こす。充電時には電気化学セルが電解セルとして機能し、放電時にはガルバニ電池として機能する。
【0038】
セル反応-ガルバニ電池内で自発的に発生する化学反応。反応のギブズエネルギー変化は、電気エネルギーと熱に変換される。
【0039】
半反応(電極反応)-2つの電極を分離するイオン伝導体を介したイオン輸送によって相互接続されるように、電極で空間的に分離されて行われる化学プロセス(酸化または還元)。
【0040】
開回路電位(OCP)-一般的に、電位または電流が印加されていないときにシステムの一対の電極間で測定される電圧。電気化学セルの場合、電位または電流がセルに印加されていないときの、基準電極に対する作用電極の電位。可逆電極システムの場合、平衡電位とも呼ばれる。それ以外の場合は、調査対象のシステムに応じて、静止電位または腐食電位と呼ばれる。
【0041】
平衡電極電位-完全な平衡下で電流がない場合に、単一のレドックスシステムOx/Redによって排他的に決定される電極電位の値。これらの状況下では、OxからRedへの還元速度とRedからOxへの酸化速度は同じである。平衡電極電位の値は、ネルンストの式によって決定される。
【0042】
交換電流密度-平衡化された電極で、正味電流値がゼロに等しい場合、陰極電流密度成分と均衡の取れた陽極電流密度成分の大きさに対応する値。
【0043】
ネルンストの式-電気化学の基本的な方程式で、平衡電極電位の接触相の組成への依存性を説明する:
【数8】
ここで、a
iは関与する種の活量である。
【0044】
電荷移動係数(α)-電極電位Eの変化に関して、電荷移動中に電子が乗り越えなければならないエネルギー障壁の高さの変化の比率を与える係数。α=0の値は、電極電位の変化がバリアの高さに影響を与えないことを意味し、α=1は、電極電位の変化がバリアの高さの正確に等しい変化を引き起こすことを意味する。対称的なエネルギー障壁は、α=0.5をもたらす。通常、αは、0.3~0.7の範囲内にある。
【0045】
バトラー・ボルマー式-電流密度と電極電位との間の関係を説明する電極反応速度論の基本式:
【数9】
ここで、jは電流密度、a
iは界面での活量、αは電荷移動係数、Fはファラデー定数、
η=(E-E
formal)は過電圧、j
0は交換電流密度である。
【0046】
Frumkin効果-Frumkinの低速放電の理論に由来し、駆動電位値の偏差の影響は、電気的中性破壊から生じる過電圧を形成する。Frumkin補正は、バトラー・ボルマー式に寄与する:
【数10】
ここで、Ψ
1(psi-primeポテンシャル)は、バルク液体ポテンシャルに対する反応物位置の点のポテンシャルを表す。外側ヘルムホルツ平面ポテンシャル(ψ
OHP))は、OHPが最も可能性の高い界面電荷移動の位置であるため、psi-primeポテンシャルと見なされることがよくある。
【0047】
標準電位-標準状態の条件下での、つまり、温度Tで(圧力および濃度からのフガシティーと活量の偏差をそれぞれ無視して)すべての成分の相対的な活量が1で、圧力が1気圧の溶液における、電極の平衡電位。
【0048】
見掛け電位(Ef)-活量係数の値が不明な場合にセル反応の標準電位を置き換える値。したがって、活量の代わりにセル電位の組成依存性を表す式で使用される濃度。
【0049】
半波電位(E
1/2)-様々な波形の電気化学的応答の制限電流の半分に対応する電位。可逆ポーラログラフ波と、酸化(Ox)種と還元(Red)種の両方を含む溶液の場合、E
1/2は見掛け電位から逸脱する:
【数11】
【0050】
開始電位(Eonset)-電気化学において、電流-電位曲線の電流の増加によって決定されるような、特定のプロセスが開始する不明確な電位。
【0051】
ゼータ電位(ζ)-バルク溶液と「せん断面/滑りやすい面」または二重層の高剛性部分の外側の限界との間の電位差。多くの場合、OHPで表される。
【0052】
過電圧-電極を通して所与の電流を流すために必要なその平衡値からの電極の電位の偏差。
【0053】
電極の電荷-電子導体表面と電解質バルクの間で電荷が交換されない特定の電位条件で、界面を平衡状態まで帯電させるために必要な電気の総量。
【0054】
ゼロ電荷の電位(Epzc)-ゼロ電極電荷に対応する電位。
【0055】
酸化還元電位-ネルンストの式で与えられるレドックス対の平衡電位。
【0056】
バンドベンディング-半導体材料の内部に内部電界が発生し、半導体との界面のエネルギーバンド図でバンドエッジが湾曲しているように見える結果。
【0057】
フラットバンド電位-例えば、金属-半導体接合、金属-絶縁体-半導体接合、および溶液-半導体界面で形成されるエネルギー障壁において、半導体界面で電界がゼロに等しくなる電位、つまり、バンドベンディングがない電位。溶液-半導体界面の場合、フラットバンド電位は、半導体に過剰な電荷がなく、その結果、空乏層がない状態に対応する。
【0058】
印加電位-材料、デバイス、セル、インターフェースなどに外部から印加される電位差。電気化学セルに印加されると、印加電位は、各々が、溶液(例えば、EC層)のバルクと、電極の導電性材料の内部との間に存在する電位の差である、2つの電極電位に分割され、溶液(例えば、EC層)を通るオーム電位降下、および各々の電極を通る別のオーム電位降下である。エレクトロクロミックデバイスの文脈では、印加電位は、(1)陽極の導電性リードから、電極を介して、陽極電極上の特定の点に至る、陽極のオーム電位降下、(2)陽極電極のこの特定の点から、陽極とEC層との間の導電性界面を横切って、陽極上のこの特定の点に直接近接しているEC層の対応する点に至る、電位降下、(3)電極を介して、陰極の導電性リードから、陰極電極上の特定の点に至る、陰極オーム電位降下、(4)陰極電極のこの特定の点から、陰極とEC層との間の導電性界面を横切って、陰極上のこの特定の点に直接近接しているEC層の対応する点に至る、電位降下、および、(5)EC層の同じ陽極点と陰極点との間の電位降下の組み合わせとして現れる可能性がある。
【0059】
電気化学窓-電気化学実験において、感知できるほどの電流なしにアクセスできる電位の範囲、つまり、電極が理想的に分極可能であると見なされ得る電位範囲。
【0060】
バンドギャップ、Eg-半導体または絶縁体の伝導帯の下部と価電子帯の上部との間のエネルギー差。「広いバンドギャップ」は、3.0eVを超えるバンドギャップを表し、「狭いバンドギャップ」は2.0eV未満の値を示す。
【0061】
伝導帯-電子が自由にまたはほぼ自由に移動できる系を形成する多数の原子の配列から生じる、空いている、または部分的にしか占有されていない多くの近接した電子レベルのセット。
【0062】
価電子帯-0Kで電子によって完全に占有されている固体のエネルギーレベルの最高エネルギー連続体。
【0063】
フェルミエネルギー(EF)-絶対零度で相互作用しないフェルミ粒子の量子系における最高占有単一粒子状態と最低占有単一粒子状態との間のエネルギー差。バンド理論の文脈では、半分の確率で電子が占めるレベル(フェルミ準位と呼ばれる)のエネルギーを指す。フェルミ準位は仮想であり、実際には存在しない可能性がある(例えば、半導体または絶縁体のバンドギャップ内にある)。溶液のEF(EF、redox)は、界面の電解質側での電子検出の確率が0.5になるエネルギーである。このレベルも仮想であり、物理的に存在するエネルギー状態によって表されない。EFは、電子の電気化学ポテンシャルに等しい。
【0064】
仕事関数-電子を相の大部分からそのかなり外側の点まで除去するために必要なエネルギー。これは、ФM=E∞-EFとして表すことができ、ここで、EFはフェルミエネルギーであり、E∞は無限距離で静止している電子エネルギーである。
【0065】
定常状態(電気化学)-対象の変数(例えば、濃度、流束、電流、または電位)が時間とともに変化しない場合に発生する系の状態。定常状態は特定の瞬間に取得されるのではなく徐々に近づくため、定常状態は時間の経過後に達成され、理論的には無限の長さの時間が必要である。したがって、「定常状態に到達する」とは、定常状態の特定のパーセンテージ内に到達することを意味する。
【0066】
溶媒-溶質(化学的に異なる液体、固体、または気体)を溶解して、溶液を生成する物質である。
【0067】
溶媒和シース(シェル)-溶質を構成する化合物の溶媒界面。
【0068】
再編成エネルギー(λ)-マーカス理論では、反応する分子(内部成分、λi)内の結合長の変化、および溶媒和イオンの半径または溶媒和ダイポールの配向(外部成分、λo)を含む溶媒和球の変化に起因する系のエネルギーの変化。
【0069】
デバイ長(κ
-1)-溶液中の電荷キャリアの正味の静電効果とその静電効果が持続する距離の尺度:溶液の場合:
【数12】
ここで、εは相対透過率、ε
0は電気定数、eは電子電荷、k
Bはボルツマン定数、Tは絶対温度、c
iはi番目の成分の濃度、およびz
iはi番目の成分の電荷である。
【0070】
電解質-溶媒中で解離するとイオンに解離し、そのような解離によってイオン伝導性を提供する化合物。電解質のイオン伝導性溶液を電解質と呼ぶこともある。固体状態でかなり高いイオン伝導性を有する化合物は、固体電解質と呼ばれる。
【0071】
支持電解質-使用されている印加電位の範囲内でそのイオンが電気活性をもたない電解質。通常、支持電解質の濃度は、溶液に溶解している電気活性物質の濃度よりも高い。
【0072】
電子移動-電子が他の閉じられた系に(またはそこから)輸送され、それによって少なくとも1つの電子状態の占有数の変化を引き起こすプロセス。
【0073】
電荷移動反応-必然的に電荷移動ステップを伴う界面(不均一)反応。後者(電荷移動ステップ)はそれぞれ、イオンの中和または形成(イオン移動)、または金属との間の電子の獲得または喪失によるイオン電荷の変化であり得る。
【0074】
二重層-一般的に、2つの導電性媒体間の界面に存在する電荷の層。一方の側は正の過剰電荷をもち、もう一方の側の負の過剰の等しい大きさと均衡が取れている。結果として生じる界面を超える電位降下が、二重層電位である。2つの限定的なケースが存在する。理想的に分極可能な界面では、2つの隣接する相は電荷を交換できず、系はコンデンサのように振る舞い、外部電位を印加することで充電できる。理想的に非分極性の界面では、2つの相が電荷キャリア、イオン、または電子を交換でき、静止している場合、電位差は2つの相のこれらのキャリアの化学ポテンシャルの差によって決まる。
【0075】
内部ヘルムホルツ層-二重層において、電極表面に特異的に吸着されるすべての種を含む層。1種類の分子またはイオンのみが吸着され、それらがすべて同等の位置にある場合、それらの中心は内部ヘルムホルツ平面(IHP)を画定する。
【0076】
外部ヘルムホルツ層-二重層において、電極表面に最も近いが、特異的に吸着されていないイオンを含む層。それらは溶媒和球を無傷に保ち、静電力によってのみ拘束される。これらすべてのイオンが同等である場合、それらの中心は外部ヘルムホルツ平面(OHP)を画定する。
【0077】
滑りやすい平面(せん断平面)-固定化された溶液種と固定化されていない溶液種の領域を分離する二重層構造の仮想平面。
【0078】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)-課された小振幅の正弦波の周波数fまたは角周波数ωの関数としての研究中の電気化学システムの複素インピーダンスZの(平衡または定常状態条件下での)測定に基づく実験手法。
【0079】
等価回路-電気化学インピーダンス分光法(EIS)において、電気化学システムの完全な電気的(AC+DC)挙動を模倣する理想的な受動電気部品の仮想ネットワーク。
【0080】
物質移動-通常、流れ、相、画分、または成分を意味する、1つの場所から別の1つの場所への物質の正味の移動。
【0081】
拡散-化学ポテンシャルの局所的な違いによって引き起こされる粒子の移動。粒子の流束は、化学ポテンシャル(または単純化された場合は濃度)の勾配に比例する。
【0082】
対流-物質移動のモードの1つ。分子メカニズムによって溶液中の1つの場所から別の1つの場所へ種の移動が発生する場合の拡散または移動とは対照的に、対流の場合、溶液の全体積要素の移動が発生する。密度勾配(自然対流)により対流が発生する場合がある。密度勾配は、特に技術的な電気分解およびクーロメトリー実験において、物質の生成または枯渇のために大電流で発生する可能性がある。加熱または冷却も密度勾配を引き起こす可能性がある。強制対流は、例えば振動が原因で意図的ではない場合があるが、攪拌などによって引き起こされる場合がある。
【0083】
泳動-イオンおよび溶液中の電位勾配の存在に関連する一種の電荷/物質移動。電流が溶液を流れるとき、それはイオンによって運ばれ、これが泳動輸送を構成する。
【0084】
Beer-Lambert-Bouguer則-光の減衰を光が通過する材料の特性に関連付ける物理法則。Beer-Lambert-Bouguerの法則によれば、均質な等方性媒体におけるコリメートされた単色放射のビームの減衰係数(光学密度Dと呼ばれる)は、吸収経路l、化合物の10進モル吸光係数ε(吸収、散乱、および蛍光の影響を含む)、およびモル濃度Cに比例する:
【数13】
ここで、Iは通過する光の強度に関連し、I
0は減衰媒体に入る光の強度に関連する。溶液の場合、溶質による光の減衰の強さを表すためにモル吸光係数が使用される。
【0085】
エレクトロクロミズム(EC)は、制御電圧と呼ばれる電圧の印加によって発生する電流によって、色または光透過率などの光学特性を可逆的に変化させることができる、特定の化合物、組成物、またはアセンブリに見られる物理現象である。エレクトロクロミズムの現象を示す系または材料は、「エレクトロクロミック」と呼ばれる。
【0086】
エレクトロクロミック材料-エレクトロクロミズムを示す材料。このような材料は、一般的にタイプI、II、またはIIIに分類できる。「タイプI」の材料は、還元と酸化(レドックス)の両方の状態で可溶であり、一例は、1,10-ジメチル-4,40-ビピリジリウム(「メチルビオロゲン」)であり、還元すると無色のジカチオンから青色のラジカルカチオンへ切り替わる。「タイプII」の材料は、1つの酸化還元状態に可溶であるが、電子移動後に電極の表面に固体膜を形成する。ここでの一例は、1,1-ジ-ヘプチル-4,4-ビピリジリウム(「ヘプチルビオロゲン」)である。酸化タングステン、プルシアンブルー、電気活性共役ポリマーなどの「タイプIII」の材料では、両方またはすべての酸化還元状態が固体であり、このような系は一般的に電極表面の薄膜として使用される。タイプIIおよびIIIの場合、酸化還元状態が切り替えられると、新しいエレクトロクロミック状態を保持するためにそれ以上の電荷注入は必要なく、そのような系は「光メモリ」を有すると言われる。タイプIのエレクトロクロミック材料の場合、電極から離れて電気化学的に生成された可溶性の生成物材料の拡散が起こり、溶液全体が電気分解されるまで電流を流し続ける必要がある。所与の電解質溶液中で2つを超える酸化還元状態が電気化学的にアクセス可能である場合、エレクトロクロミック材料はいくつかの色を示し、ポリエレクトロクロミックと呼ばれることがあり、電気活性共役ポリマーの薄膜の頻繁な特性である。
【0087】
エレクトロクロミックデバイス(ECデバイス)-エレクトロクロミズムの現象を利用するデバイス。
【0088】
オールインワンECデバイス-すべてのエレクトロクロミック材料が電子伝導性を有する別々のエレクトロクロミック相に分離されるのではなく、イオン伝導体相(複数可)内に組み込まれるエレクトロクロミックデバイスのクラス。
【0089】
エレクトロクロミック層(EC層)-表面を覆う、または2つの物体間に配置されるエレクトロクロミック材料または組成物。オールインワンECデバイス内のEC層は、そのようなデバイスの電極を介して電気入力信号を印加すると、オールインワンECデバイスの光学特性を変化させることができるイオン伝導要素として機能する。特定の態様では、EC層は、実質的または完全に透明、非混濁、非濁り、無色、または着色された媒体とすることができる。それは、可変透過率層の陽極および陰極スタックの両方と接触するか、または少なくとも1つの陽極または陰極スタックおよび反対の機能の少なくとも1つの補助電極(例えば、EC層の光路の外側に位置する電極)と接触することができる。
【0090】
光吸収化合物-可視および/またはUVおよび/またはNIR領域で電磁放射フラックスの減衰を提供し、したがって(1)ECデバイスを通して見ている人間および/またはそれが設置されている領域に望ましい視覚感覚を作り出す、および(2)ECデバイスに、前述の電磁放射の領域に入る電磁放射エネルギーの量を調整する機能を提供する、化合物。これらの化合物は、ECデバイスの通常の動作中にEC層内で形成および消費され、その量はECデバイスに印加される電気入力信号によって変化する。
【0091】
補助化合物-初期の電気化学的プロセスから光吸収種の形成または消費に至る反応シーケンスを促進するEC組成物または層に含まれ得る成分。
【0092】
修飾剤-例えば、耐久性、安定性、粘度、製造特性などの特定の特性を調整するためにEC組成物または層に含めることができる成分。
【0093】
マトリックス-最適化されたEC組成物または層の媒体であり、光吸収化合物の形成と消費、そのような化合物、それらの前駆体、およびEC組成物または層の他の可溶性成分の十分な可溶性のための条件を提供する。最適化されたマトリックスは、製造後のEC層の光学的および低ヘイズ特性、光吸収化合物の光吸収特性(ソルバトクロミック効果)、光吸収化合物の形成と消費につながるシーケンスの電気化学的ステップを容易にする、電極スタックとのインターフェース、可変透過率層に構造上の剛性(耐久性)を提供する、電極へのEC層の接着、電気化学的に活性な化合物および反応生成物、イオン(イオン伝導度)、および補助化合物/修飾剤の物質移動速度、最適化されたECデバイスの動作条件(電位、電流、化学組成など)での化学的および電気化学的安定性、(修飾剤の組成とともに)製造プロセスに適したレオロジー、電極-電解質界面の光学特性(反射、透過、屈折)をサポートできる。
【0094】
追加の要素-スペーサ(例えば、ガラスビーズ)、イオン選択性または多孔質膜、基準電極(例えば、PtまたはAgワイヤー)、または補助電極(例えば、Li/グラファイト電極)など、EC組成物または層に含めることができるが、その中に溶解しない物質。
【0095】
エレクトロクロミック組成物-1つまたは複数のエレクトロクロミック材料を含む混合物。EC組成物はまた、キャスティング中、後処理中、またはEC組成物をEC層の形態でデバイスに統合することができる他のプロセスの間などの「現状のまま」のマトリックスまたはマトリックスを形成する成分を含むことができる。そのような成分は、溶媒、高分子材料、または高分子材料を形成するための成分、支持電解質、補助化合物、修飾剤、追加の要素などのうちの1つまたは複数を含むことができる。EC組成物は、溶液、分散液、溶融物、またはゲルの形態で存在し得る。
【0096】
AM1太陽光-太陽の方向が地表に垂直である場合の、海面での、つまり、大気を横断する、地上の全天日射量または太陽放射照度。
【0097】
光バンドパスフィルタ-指定された波長範囲内の放射線の透過を許可し、より高いまたはより低い波長の放射線の透過を許可しない光学デバイス。
【0098】
アイリスまたはハロー効果-一般的に、外部回路接続点(電極など)から離れた領域から、そのような接続の近くの領域と比較して、横方向の可変透過率層の上の着色の不均一な分布。
【0099】
ゾル-液体媒体中の固体粒子のコロイド懸濁液。
【0100】
ゲル-流体によってその全体積全体に拡張される非流体コロイドネットワークまたはポリマーネットワーク。ゲルは、実質的に希薄な架橋システムであり得る。特定のゲルは、大気圧(1気圧)および室温(20℃)で定常状態下において効果的に流れを示さない可能性がある。重量では、ゲルはほとんど液体である可能性があるが、液体内の3次元の架橋ネットワークにより、固体のように振る舞う。
【0101】
基板-柔軟性または剛性があり得る、下にある物質または層。特定の基板は、EC層を機械的に支持できる。
【0102】
可変透過率層-陽極および陰極と電気的に接触し、外部電気回路を使用して制御できるEC組成物または層を含むアセンブリ。このようなアセンブリは、EC層と、外部電気回路を使用して制御できる1つまたは複数の電極スタックとすることができる。EC層は、2つの電極間、例えば、2つの電極スタックの間、または電極のない基板と電極の間などにあり得る。
【0103】
ゲル電解質-ゲルの形態の電解質。
【0104】
可視光透過率(VLT、τ
v)-380nm~780nmの可視スペクトル(可視光とも呼ばれる)で知覚される光の透過率に関連する:
【数14】
ここで、D
λは照明D65の相対スペクトル分布(ISO/CIE 10526を参照)、τ(λ)は波長λでのスペクトル透過率、V(λ)は測光の標準オブザーバを画定するフォトピックビジョンのスペクトル発光効率(ISO/CIE 10527を参照)、およびΔλは波長間隔である。
【0105】
UVおよびNIR-約10nm~約400nmの範囲の紫外線(UV)電磁スペクトル、および約750nm~約1400nmの範囲の近赤外線(NIR)に関連する。
【0106】
CIE-国際照明委員会。
【0107】
CIE L*a*b*(CIELAB)空間-色を3つの値として表す色空間:黒(0)から白(100)までの明度のL*、緑(-)から赤(+)までのa*、および青(-)から黄色(+)までのb*。CIELABは、これらの値の同じ量の数値変化が、視覚的に知覚されるほぼ同じ量の変化に対応するように設計されたものである。L*、a*、およびb*の非線形関係は、人間の目の非線形応答を模倣することを目的としている。さらに、L*a*b*色空間の成分の均一な変化は、知覚される色の均一な変化に対応することを目的としているため、L*a*b*の任意の2色間の相対的な知覚の違いは、各色を(3つの成分:L*、a*、b*を有する)3次元空間内の点として扱い、それらの間のユークリッド距離を取ることによって概算できる。RGBおよびCMYK色モデルはデバイスに依存するため、RGBまたはCMYK値とL*a*b*との間の変換の簡単な式はない。しかしながら、色のCIELAB座標は、UV/Vis透過スペクトルから計算できる。
【0108】
CIELABマッチング-人間の目に対するCIELAB空間の線形性を使用して、他のいくつかの色から知覚された色を構成するアプローチ。例えば、光吸収化合物のペアが溶液中に存在する場合、人間が知覚する結果の色は、それらのL*値に従って重み付けされた同じ濃度の単一成分の溶液のa*値とb*値の合計で表されるであろう。
【0109】
ECデバイスの色経路-白化と暗化の一時的なプロセス中にデバイスの色がどのように変化するかを示す、ECデバイスの特性である。
【0110】
本開示は、エレクトロクロミックデバイスおよびその構成要素、ならびにエレクトロクロミックデバイスを制御するためのシステムおよび方法に関するものである。本開示はまた、ゲル形態のエレクトロクロミック組成物および層を含むエレクトロクロミック材料および組成物を対象とする。本開示の様々な態様の詳細を説明する前に、本開示のECデバイスならびにECデバイスの一般的な構成要素および構造に関係する様々なメカニズムを説明することが役立つ可能性がある。そのようなメカニズムおよび構造を以下に提供する。
【0111】
一般的なデバイス構造
一般的に、エレクトロクロミックデバイスは、その上に電極を含むことができる2つの基板の間に配置された(例えば、EC層の形態の)エレクトロクロミック組成物を含む。エレクトロクロミック層は、エレクトロクロミック組成物を横切って印加された入力信号に応答して、光透過(可視、赤外線、および/または紫外線)を1つの状態(例えば、高光透過状態)から別の1つの状態(例えば、低光透過状態)に変化させるように構成される。そのような入力信号は、印加電圧、電流、電界、またはエレクトロクロミック材料にその光学特性を変化させる他の入力とすることができる。エレクトロクロミック組成物は、タイプIおよびタイプIIのエレクトロクロミック材料ならびにそれらのハイブリッドを含むことができる。いくつかの実施形態では、ECエレクトロクロミック組成物は、入力信号に応答して1つの状態から別の1つの状態に光透過を変化させることができる1つまたは複数のエレクトロクロミック材料を含む。エレクトロクロミック組成物はまた、マトリックスおよび1つまたは複数の修飾剤、追加の要素、補助化合物、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0112】
本開示の特定の態様では、エレクトロクロミック組成物または層は、ゲルの形態とすることができる。このようなゲルは、固体ネットワーク相と液相を含む。有利には、このようなゲルは、フィルム上に配置することができ、ゲル-フィルム複合体は、独立した製品として提供される。本開示の特定の態様では、ゲルの形態のエレクトロクロミック組成物は、大気圧(すなわち、1気圧)および室温(すなわち、20℃)下で効果的にほとんどまたは全く流れを示さない可能性がある。
【0113】
ECデバイスの必要な減衰係数、可視光透過率(VLT)、およびスペクトル特性を取得するには、選択した着色種の濃度、モル吸収係数、吸収スペクトル、およびECデバイスに対する吸収経路の特性を適切に組み合わせる必要がある。ECデバイスのEC層は、いくつかの可能な構成を有し得る。
(1)溶液タイプ(タイプIエレクトロクロミック材料を含む)。エレクトロクロミック効果は、層の体積全体にわたって着色種の濃度プロファイルを変化させることによって得られますが、層の厚さは固定されている。
(2)堆積タイプ(タイプIIエレクトロクロミック材料を含む)。エレクトロクロミック効果は、電極界面のEC層に着色された沈殿物を堆積させることによって得られる。
(3)薄膜タイプ(タイプIIIエレクトロクロミック材料を含む)。エレクトロクロミック効果は、タイプIIIエレクトロクロミック材料の別々の相の1つまたは複数のプレキャストフィルムの吸収スペクトル(したがって、吸収係数)を変化させることによって得られる。
(4)ネットワークリンクタイプ。エレクトロクロミック効果は、ゲルの固定化されたポリマー骨格に化学的に結合した発色基部分の吸収スペクトルを変化させることによって得られる。
(5)ハイブリッドタイプ(いくつかのタイプのエレクトロクロミック材料を含む)。前述のタイプの特性を組み合わせたもの。
【0114】
第1のタイプのEC層では、減衰経路に沿った着色種の濃度が均一でない場合があるため、すべての着色成分の総減衰は、光伝搬経路全体にわたるその濃度の積分に比例する。第2のタイプでは、吸収特性(吸収係数とスペクトル)が減衰経路に沿って均一であるため、堆積層の厚さが光の減衰の強度を決定する。
【0115】
オールインワンECデバイスには、通常、一部の種類のタイプ3EC層は含まれない。
【0116】
ECデバイスの所望の視覚感覚を達成するために、EC組成物または層の光吸収化合物を適切に合わせて、所望の効果で人間の視覚システムを刺激するように構成することができる。人間の視覚は、網膜、錐体、および桿体の感光性細胞によって可視範囲の電磁放射を知覚する。比較的高い輝度(10-3cd/m2以上)(J.Pokornyら、先天性および後天性色覚障害(Congenital and Acquired Color Vision Defects)、Grune&Stratton、1979)では、錐体細胞は光知覚に関与し、色認識(明所視/薄明視)の能力を与える。人間による色の知覚に関して、光吸収化合物の要件は、明所視/薄明視の感度曲線に従って様々な種類の錐体細胞が刺激されるように、ECデバイスを透過した光をフィルタリングすることである。
【0117】
ニュートラル(グレースケール)ECデバイスの構成:グレースケールデバイスを作り出すために、可視光範囲で理想的にフラットな吸収特性を有するEC組成物または層を構成する必要はない。代わりに、吸収の最小値または最大値を、人間の錐体細胞の感度の最大値の近くに配置し、それらの強度を視覚感度曲線に従って一致させることができる。それを達成するための最も便利な方法は、CIELABマッチングを使用することである。
【0118】
化合物の光吸収:電磁放射フラックスを減衰させるために、化合物は電磁放射吸収の特性を示し、これは、電子エネルギー状態間の放射誘起電子遷移の現象に関連している。化合物には、電磁放射との相互作用に関するその振る舞いを決定する一連の許容された電子遷移がある。一般的に、化合物のUV/可視光/NIR吸収のスペクトルは、いくつかの個別の吸収帯で構成され、それらの各々が単一の放射誘起電子遷移に起因する。ピークの広がりにより、スペクトルは連続している。各々の遷移には強度があり、その確率と吸収断面積によって画定される。化合物の各々の電子エネルギーレベルには、吸収帯の形状を決定する振動および回転の下部構造がある。制御方法、製造を簡素化し、ECデバイスのスイッチングの色経路を最適化するために、最小数の光吸収化合物によって所望の光吸収特性を得ることが非常に好ましい。そのような選好のために、広い吸収帯(強い光吸収)を有する1つまたは複数の光吸収化合物を選択することが好ましい。強い光吸収を有する光吸収化合物の別の利点は、そのような成分を低濃度で使用できることであり、ECデバイスのコストと電力消費を削減する。
【0119】
濃度-吸収関係の特殊なケース:一部の化合物は、溶液中の着色種間の化学的相互作用を伴うプロセスにより、非線形の濃度-吸収依存性を示す場合がある。例えば、いくつかの化合物は、異なる吸収特性を有する二量体を形成する傾向がある。この場合、濃度に対する光学密度の依存性は、例えば放物線状になり、Bouguer-Lambert-Beer則から逸脱する可能性がある。異なる濃度の溶液の色も異なる場合がある。これらの特性は、多色デバイスを構築するために使用でき、特にタイプI/IIデバイス(下記参照)の場合、濃度プロファイルの形状に依存する暗色化と退色の色経路に関して考慮に入れる必要がある。光吸収化合物のそのような特性の存在は、目標のVLT値がより薄くて濃縮されたEC層によって得られる場合、より費用効果が高く電力効率の良いデバイスを構築するために使用することができる。この特性は、化合物が濃度依存の色シフトを示す場合のCIELABマッチングなどのスペクトル調整にも使用できる。二量体化がECデバイスの性能を損なう場合、例えば低いVLT値でシェードの不要なシフトを引き起こす場合、化学修飾によって抑制される可能性がある。
【0120】
化学修飾による色調整:所望の吸収スペクトルを構成および/または調整するために、光吸収化合物のコアの化学構造の化学修飾を実施することができる。多種多様な官能基を有機化合物に導入して、それらの特性、例えば可視光の吸収を変更することができる。イオンラジカルの形態で吸収される前駆体化合物を酸化または還元すると、前のフロンティア軌道(空のLUMOまたは完全に占有されたHOMO)のうちの1つが単一の占有されたSOMOに変わり、近接したSOMO-N軌道またはSOMO+N軌道から/への遷移が可能になる。この現象は、イオンラジカル種のバンドギャップが狭く、可視範囲で強い吸収を引き起こす原因である。光吸収化合物の化学的調整の文脈では、イオンラジカルの吸収に対する官能基の影響は、前駆体のHOMO-LUMOバンドギャップ幅に対する、したがって対応するエレクトロクロミック材料の非ラジカル無色形態の吸収に対する有意な影響を伴うべきではない。強い発色基(例えば、-NR2、-OR、-NO2、-N=N-など)の導入は、前駆体のバンドギャップ内のエネルギーレベルを変位させ、それに色を与える可能性があるため、好ましくない。さらに、これらの基は化学的性質に強く影響し、前駆体/イオンラジカルの安定性を悪化させる可能性がある。前駆体の電子的下部構造を変化させることは、この順序でよりよく達成される。
【0121】
(1)大きなバンドギャップ(>3.0eV)によって分離されたかなりの数のπ軌道を有する、前駆体の芳香族コアと結合した官能基:フェニル、ナフチル、ビフェニルの導入。この修飾により、前駆体のバンドギャップの上下にいくつかのエネルギーレベルが挿入され、光誘起遷移が許容されるレベル間の最小距離が低下するため、イオンラジカルの色が大きくシフトする。
【0122】
(2)誘導性(-CH3/アルキル/分岐アルキル、-CF3/フッ素化または過フッ素化アルキル/分岐フッ素化または過フッ素化アルキル、-F、-SF5など)または弱いメソメリック(-OCF3、メタ-OR’、メタ-NR’2など、R’はアルキルまたは置換アルキルなど)ドナー/アクセプターを有する芳香族置換基の修飾。これらの官能基は、前駆体のバンドギャップが大幅に狭くならないように、エネルギー準位の位置をシフトするか、それらの準位を置き換える。吸収スペクトルの微調整には、効果が非常に弱い基の導入が使用される。所望の効果を達成するために、いくつかの基を導入することができる。
【0123】
修飾の特殊なケースは、その傾向のある化合物の二量体化を誘発または抑制するものであり、例えば、二量体化を誘発するための2つのイオンラジカル光吸収コアの間に脂肪族リンカーを追加するか、または二量体化を抑制するためにバルキーな置換基(例えば、tert-ブチル置換基)を導入する。二量体化は吸収特性を大幅に変化させ、濃度依存性を歪める。また、ソルバトクロミック効果を引き起こす可能性がある。
化学修飾の他の目的:色の調整は、前駆体の化学修飾の唯一の目的ではない。調整可能なパラメータは、(1)バルキーな置換基を追加することによる物質移動特性、(2)(それぞれの場合に固有の)イオンラジカル形態の酸素/水安定性、(3)エネルギー構造全体をシフトさせるが、バンドギャップを大幅に狭くしない顕著な電子効果を有する置換基を導入することによる酸化還元電位、(4)(使用するマトリックスに固有の)特に低温での溶解度、(5)陽極反応と陰極反応の着色生成物間の化学相互作用の速度(タイプI/IIの場合)を含む。
【0124】
一般的に、すべての置換基は一度にすべての特性に複雑な影響を及ぼすが、一部の結果は他の結果よりも顕著である。したがって、適切な修飾は、デバイスの最終的な目的に大きく依存する。
【0125】
電荷移動の現象、界面平衡:電気化学的プロセスの基本的な現象は、相間電荷移動である。2つの相が接触すると、それらは界面を形成し、この界面で、両方の相の電子の電気化学ポテンシャル(フェルミ準位(EF)とも呼ばれる)が等しくなる傾向がある。EF等化のメカニズムは、界面を形成する材料の種類に依存するが、そのプロセスには常に電子移動が伴い、等エネルギーでなければならない(H.Gerischer in “Physical Chemistry:An Advance Treatise”、Vol.9A、H.Eyring、D.Henderson、and W.Jost、Ed.、Academic Press、New York、N.Y.、1970、(b)H.Gerischer、Adv.Electrochem.Electrochem.Eng。、I、139(1961))。したがって、電子移動が進行するためには、界面を形成する2つの相に等しいエネルギー(熱ゆらぎkTの範囲内)の一対の占有レベル(状態)と空のレベル(状態)が存在する必要がある。特定のオールインワンECデバイスでは、初期の電気化学反応は、イオン伝導性(ほとんどの場合、溶液)のEC層と電極(例えば、電極スタックの金属層または半導体/誘電体層)との間の界面で発生する。
【0126】
界面の溶液側:溶液タイプのEC層は、通常、液相を含む。金属溶融物を除く液体の電気伝導率は、イオンの物質移動によって提供されるため、液相には通常、溶解したイオン性化合物(つまり電解質)が含まれる。EC層は、導電性材料との界面を有することができ、それらの伝導は自由電子のドリフトに関連している。したがって、電極とEC層との間の相境界で、イオン伝導体と電子伝導体の接触が発生する。バルク液体イオン伝導体では、平衡状態下では、時間平均力は、バルク電解質内のすべての方向とすべての点で同じであり、正味の優先的に向けられた電界はない。しかしながら、液相は相境界で中断されるため、バルク液体中で均一であるイオン-イオンおよびイオン-溶媒の相互作用が乱され、電気的中性がフロンティアで崩壊する。液相の過剰な電荷は、荷電粒子と相互作用する電界を生成し、その粒子から電極が作られる。この相互作用により、電極に電荷が誘導される。したがって、電位差が電極界面を横切って発生し、その後、帯電する。前述の相互作用は、「二重層」または「電気二重層」(以下、EDL)として知られる特定の界面構造を形成することが知られている。界面の厚さが非常に薄いため、電位差が小さい場合でも、非常に強い(107V・cm-1のオーダーの)電界が発生する可能性があり、これは、液体の界面領域の帯電種に影響を与える。電気活性溶質が界面にある場合、溶液エネルギー状態への/からの電荷移動が起こり、電気化学反応を引き起こす可能性がある。
【0127】
溶液への/溶液からの電子移動:小分子種の溶質は、離散的なエネルギースペクトルを有する。小分子溶質の可逆的酸化還元プロセスには、溶質のフロンティア軌道(HOMO、SOMO、またはLUMO)のエネルギーレベルからの/への電子移動が含まれる。しかしながら、電気活性溶質の場合、溶液状態のエネルギーは、Red種とOx種の周囲の溶媒シースエネルギーλの違いにより、状態が占有されている(Red)か、空いている(Ox)かに依存する。レドックス活性種の配位圏とバルク電解質との間の溶媒分子交換は、様々な溶媒シースエネルギーにつながる動的プロセスであるため、レドックス状態の密度は、個別のガウス分布の観点から最もよく説明される。電極-電解質電子移動の有効距離は、(滑りやすい平面と見なされる)OHP距離の値を有すると想定される。これは、特定の吸着がない場合に電気活性種が到達できる最も近い位置であるためである(この文脈では、レドックス電極のみが議論される)。したがって、界面での駆動電位差は、電極表面(半導体の場合はより複雑)の電位とOHPの電位の差である。後者(OHPの電位)は、電極の種類、その電位、および電解質の特性によって決められる。電極は外部電気回路に接続され得るので、そのフェルミ準位が変更される可能性があり、可動電荷キャリアを含む媒体としての電解質は、泳動効果のために、印加された電界によって分極されることが知られている。したがって、電界は特定の深さまでのみ媒体を貫通すると見なされ、バルク媒体では電界強度はゼロになる(図)。非電気中性層(したがってEDL)の厚さは、溶液のイオン強度に依存し、数デバイ長の値として大まかに見積もることができる。EDLが狭いほど、電極とOHPとの間に発生する駆動電位差が大きくなり、電子移動の可能性が高くなる。
【0128】
金属-電解質界面電荷移動:金属の伝導帯(CB)と価電子帯(VB)が重なっているため、電子に禁止されているエネルギーレベルはない。エネルギースペクトルは連続的であるため、フェルミ準位は電子が(その周囲の熱分布を考慮に入れて)有することができるエネルギーの最上位を反映する。電荷が金属に導入または金属から引き抜かれると、その中の電子数の変化によってそのフェルミ準位が変化し(イオンは電子と比較して固定化されていると見なされる)、電子は、フェルミ-ディラック統計に従って可能な限り最も低いエネルギーレベルを占有する。金属が電気化学的に活性な溶質を含む電解質と接触すると、それらのエネルギーレベルは電解質側に現れる。一部のレベルは1度または2度占有され、一部はフリーである。種の還元型(ドナー、Red)および酸化型(アクセプター、Ox)を表す化合物のペアは、レドックス対を形成する。界面での非ゼロ密度のRed状態および/またはOx状態では、金属のフェルミ準位と電解質の酸化還元フェルミ準位が等しくなるまで電荷移動が発生する。すべての電子移動は等エネルギーでなければならないため、フェルミ準位が非ゼロ密度のOx状態の領域と重なると溶質の還元が起こる可能性があり、フェルミ準位が非ゼロ密度のRed状態の領域と重なると酸化が起こる可能性がある(H.Gerischer in “Physical Chemistry:An Advance Treatise”、Vol.9A、H.Eyring。D.Henderson、and W.Jost、Ed.、Academic Press、New York、N.Y.、1970、H.Gerischer、Adv. Electrochem.Electrochem.Eng.、I、139(1961))。
【0129】
半導体-電解質界面の界面電荷移動:金属とは対照的に、半導体(SC)のCBとVBはオーバーラップしないため、禁止状態の範囲(バンドギャップ)が存在する。等エネルギー電荷移動は、電解質内のアクセプター(Ox)またはドナー(Red)状態の非ゼロ密度のエネルギーレベルが半導体内の相補状態(電子または正孔)のエネルギーレベルと一致する場合にのみ発生し得る。したがって、伝導帯または価電子帯に近いエネルギーを有する溶質のみが、(表面状態または伝導帯と価電子帯との間のエネルギー準位などの複雑な要因がない場合)半導体電極と電子を交換できる(Journal of the American Chemical Society/97.26/1975年12月24日)。半導体内の電荷キャリアの濃度は、金属の106~108分の1である可能性があるため、半導体で利用可能な状態の密度は、その電気化学的挙動に影響を与え、真性半導体(暗条件)は、CBに電子とVBに正孔の両方の濃度が低い可能性があるため、電荷移動の速度はごくわずかである可能性があり、n型半導体はCBに比較的大量の電子を有するため、アクセプター(Ox)状態へのかなりの電荷移動速度を維持でき、同様に、p型半導体は、VBに比較的高濃度の正孔があるため、ドナー(Red)状態から電子を効率的に引き抜くことができる。しかしながら、縮退ドープされた半導体は、電位がフラットバンド電位(Vfb)を超える(n型ではより負、p型ではより正になる)と金属のような挙動を示すことができるため、それらは還元と酸化の両方に適切に使用できるが、溶質に対してのみ、OxおよびRed状態のエネルギーは、Vfbよりも高い(n型半導体の場合)または低い(p型半導体の場合)(Journal of the American Chemical Society/97.26/1975年12月24日)。
【0130】
透明導電性酸化物(TCO)電極:透明導電性酸化物(TCO)は、準金属伝導性を有する縮退ドープ半導体であり、広いバンドギャップ(-3.0eV以上)を備えているため、可視光とほとんど相互作用しない。ほとんどの普及しているTCOはn型であるため、界面で溶質を酸化および還元する能力を維持するために、金属のような電極の振る舞いを提供する電位の範囲が好ましい。より良好な性能を得て、使用可能な溶質の種類を広げるために、陽極には高仕事関数の材料が好ましい。準金属伝導性は低いオーム抵抗率と特定の界面特性を与えるため、TCOは表面伝導と界面電荷移動の機能を組み合わせることができるが、追加の表面導電層および/または界面層が、TCOを含む電極スタックにさらに導入される場合がある。
【0131】
半導体界面効果:半導体(SC)の特性を使用して、可変透明層の電極上の電気化学的プロセスを制御できる。例えば、陰極界面で十分に低い仕事関数のSC(例えば、無垢のSC導電層または1つまたは複数の界面層を備えたもの)を使用すると、最初に電気還元に敏感な化合物の還元状態のプロセスを除いて、酸化プロセスをブロックできる。これにより、例えばタイプIIデバイス(以下でより詳しく説明する)のように、強い逆過電圧を印加することにより、可変透明層の高速放電を使用できる。
【0132】
また、対極上で電気化学的に生成された種の逆電気化学的プロセスは、SC界面を使用することによって抑制され得る(以下のタイプIIデバイスを参照)。
【0133】
物質移動、イオン移動:すべての界面電荷移動は、電気酸化の場合は還元種を酸化種に変換し、電気還元の場合はその逆に変換する。電解質の酸化還元フェルミ準位が電荷移動によってシフトすると、界面での試薬/生成物溶質の濃度が(バルク電解質と比較して)変化し、濃度勾配が発生し、拡散フラックスが発生する。さらに、界面での電子移動は、OHPの電解質内に補償されていない過剰な電荷の出現をもたらし、これが電界に寄与する。帯電したすべての種はそれと相互作用し、エレクトロマイグレーションを引き起こす。電解液中の補償されていない電荷は、界面上の駆動電圧を変化させる(Frumkin効果、上記を参照)。溶液成分は、電荷によって誘導された静電界と相互作用し、周囲の媒体の再編成を引き起こし、イオンを泳動させ、溶媒の双極子を再配向させる。電荷補償の速度は、溶液の誘電率とイオン移動の速度に依存する。
【0134】
電荷移動速度が試薬溶質の物質移動速度を超える場合、電気化学反応の全体的な速度(したがって総電流)は、物質移動に依存するようになる。したがって、試薬溶質の物質移動は、反応速度に大きく寄与する。ほとんどの場合、電荷移動ステップの速度は、物質移動の速度よりも高くなる。適切な物質移動速度は、ECデバイスの性能の最適化に影響し、物質移動速度が高すぎると、過剰な電流と電力消費が発生する可能性があり(これにより、電極のオーム降下が大きくなり、ECデバイスが誤動作する可能性があり)、一方、物質移動速度が低すぎると、スイッチング時間が極端に長くなり、光学特性が低下する可能性がある。物質移動プロセスの速度は、所与のアプリケーションに対して溶質構造のマトリックスと化学的調整を変更することで設定できる。
【0135】
イオン性化合物に関しては、物質移動速度への重要な寄与は、イオン会合の現象によって与えられる。強いイオン会合は溶解度を低下させ、物質移動速度を大幅に悪化させる可能性がある。したがって、EC組成物または層は、少なくとも1つの弱く配位するイオン(陽イオン/陰イオンまたはその両方、以下を参照)を含むことが好ましい。
【0136】
対流:電解質が液体の場合、物質移動メカニズムは拡散と泳動に限定されない。化学的および電気化学的反応の熱的影響、(光吸収化合物による光路に沿った、および露出した表面上の様々な熱放出のために発生する可能性がある)ECデバイスの部品間の動作温度差、溶解した種の濃度に対する密度の依存性、および他の要因が、EC層内のバルクフローを引き起こし、それによって対流効果(例えば、Rayleigh-Benardセル、色分解など)を引き起こす可能性がある。ECデバイスでは、これは透過率の変動および勾配、高い動作電流を引き起こす可能性があり、したがって、EC層のレオロジーを調整することによって抑制されることが望ましい。
【0137】
電荷保存則:電極と電解質の界面で電気化学反応が発生した場合、電極に形成された過剰な電荷は、外部の電気回路(例えば、制御回路)によって引き抜かれる必要がある。ECデバイスに電流を流すには、電荷を受け取る部分を第1の電極と電気的に結合する必要がある。最初のプロセスはイオン伝導体から電子伝導体へのファラデー電荷移動であるため、EC層の電気的中性を維持するには、システムには、電極からEC層への相補的なファラデー電荷移動を可能にする電子導体とイオン導体の第2の接点が含まれている必要がある。したがって、典型的なオールインワンECデバイスは、少なくとも2つの電極(陽極と陰極)を含む電気化学セルと、電気酸化に敏感な1つの化合物と電気還元に敏感な1つの化合物を少なくとも含むEC層によって表すことができる。しかしながら、陽極と陰極の両方を透明にする必要はなく、光透過率のための光路内に配置する必要もない。本開示のECデバイスの特定の態様では、組成物または層の上で着色種を生成/消費するために、1つの電極のみが、光透過率のための光路内に配置され、EC組成物または層と接触する。そのような場合、光路を画定する第2の基板は、電極または電極スタックを有さなくてもよいか、または第1の基板として陽極または陰極電極(例えば、2つの光学的に透明な陽極または2つの光学的に透明な陰極)を有し得る。第2の電極は、例えば、EC組成物または層とイオン的に結合された任意の補助容積内に配置することができる。
【0138】
上で説明したように、本開示は、とりわけ、エレクトロクロミックデバイスおよびその構成要素、ならびにエレクトロクロミックデバイスを制御するためのシステムおよび方法に関するものである。ここで図面を参照すると、
図1Aは、例示的なエレクトロクロミックデバイス100を示している。図に示されるように、コントローラ110は、電気接続112a、112bならびにバスバー130aおよび130bをそれぞれ介して可変透過率層120に電気的に接続されている。コントローラ110は、入力信号を可変透過率層に印加するための回路、および任意選択でソフトウェアを含むことができる。可変透過率層120は、2つの光学的に透明な基板の間に配置されたEC層を含むことができ、そのうちの少なくとも1つは、電極を形成する導電性表面を含む。この特定の例では、可変透過率層120は、それぞれが電極を形成する導電性表面を含む2つの光学的に透明な基板を含む。この例では、バスバー130aおよび130bはオンであり、そのような電極の各々と電気的に接触している。
【0139】
各々の電極には複数の接続があってもよく、異なる接続は、異なる機能を有し得る。例えば、一部の接続は信号機能を有することができ、他の接続は感知機能を有することができる。
【0140】
デバイス100のエレクトロクロミック活性は、可変透過率層120によって提供される。可変透過率層は、1つの電極スタック、無垢の誘電体基板、およびEC層、または2つの電極スタックおよびそれらの間のEC層を含むことができる。例示的な可変透過率層120の構造が
図1Bに示されている。例えば、
図1Bに示されるように、可変透過率層120は、誘電体基板124aおよび124b、陽極126a、陰極126b、および光透過を制御するためのエレクトロクロミック層121を含むことができる。陽極界面層(または陽極側相間電子移動層)128a、および/または陰極界面層(または陰極側相間電子移動層)128bは、任意選択で可変透過率層に含めることができる。さらなる外部コーティング122aおよび122bは、任意選択で、それぞれ誘電体基板124aおよび124b上にあり得る。
【0141】
EC層121は、EC層121と、それと接触している電極スタック123および125との間に電気バイアスが印加されたときに、透過率を変化させる能力を提供する。制御システムは、エレクトロクロミック層と接触している電気接続および電極を介して入力信号を印加するための回路を含むことができる。入力信号は、例えば、エレクトロクロミック層の光透過を1つの状態(例えば、高光透過状態)から別の1つの状態(例えば、低光透過状態)へ変化させるように、例えば、約1.5V未満、好ましくは約1.3V未満、より好ましくは約1.2V未満の特定の電圧を含むことができる。
【0142】
これらの要素の機能は次の通りである。
【0143】
可変透過率層120の基板の外面は、例えば、アンチグレア、屈折率整合、反射防止コーティング、低放射率(low-e)コーティング、放射線フィルタ(UV/NIRブロッカー、色フィルタ)、傷防止または装甲コーティング、ハイドロ-、オレオ-、またはオムニフォビックコーティング、接着剤(ECデバイスが塗布されると考えられる特定の材料の屈折率整合機能を保持する場合がある)などの1つまたは複数の機能性コーティング(例えば、外部コーティング122a、122b)で任意選択に覆われることができる。
【0144】
可変透過率層の電極スタックの誘電体基板124a/124bは、高い光透過性、低いヘイズの構造要素である。基板は、様々な実施形態では、ガラス、プラスチック(バルクまたはフィルム)、または透明セラミックスでできていてもよい。いくつかの実施形態では、バスバー(本明細書の他の箇所で説明される)が基板に追加され、それぞれの電極(陽極126aまたは陰極126b)に電気的に接続される。一実施形態では、基板は、1つの固体層、例えば、ガラス板を含むことができる。あるいはまた、基板は、例えば、合わせガラストリプレックスなどの複数の層を含むことができる。そのような構造は安全のために有益であり得る。基板はまた、他の機能を提供し得る。
【0145】
ガラスは、多くの用途に好ましい透明な誘電体基板である。通常、優れた透明性、低いヘイズ、構造安定性を有する。構造的に損なわれていなければ、気体および液体の影響を受けないため、敏感な化合物を保護するための優れたバリアになる。
【0146】
ガラスの操作上の安定性および安全性には、多くの場合、厳しい要件がある。これらの機能は通常、強化ガラス、熱処理ガラス、および/または安全中間層による合わせガラスを使用することによって実現される。このようなガラス基板は、本開示のECデバイスで使用することができる。
【0147】
焼き戻しとは、560℃を超える温度にガラス板を加熱した後、空気流を利用して急冷することを含むガラス板の熱処理である。焼き戻しは、ガラスがローラーによって輸送される炉内で行われる。ローラー構造のインプリントは、通常、強化ガラスの波状の形状をもたらし、光学的歪みを引き起こす可能性がある。このような不要な歪みを減らす1つの方法は、1枚のガラス板の山をもう1枚のガラス板の谷に対してほぼ一致させて2枚の強化ガラス板をラミネートすることである。したがって、本開示の一態様では、ECデバイスは、1つまたは複数の光学基板として、第1の強化ガラス板の山を第2の強化ガラス板の谷に対してほぼ一致させて、第2の強化ガラス板にラミネートされた第1の強化ガラス板を含むことができる。
【0148】
強化ガラスは、通常の焼きなましガラスよりも機械的強度が高い。強化ガラスが破損すると、鋭いエッジをほとんど含まない複数の小さなガラス片に崩壊し、それによって安全機能を実現する。自動車のサイドウィンドウとリアウィンドウの大部分は強化ガラスで作られている。
【0149】
ガラスのラミネートは、安全機能を実現するためのもう1つの方法である。中間層シートを使用して、2枚のガラス板を結合する。次に、アセンブリは温度および/または圧力で処理され、気泡を除去するために真空脱気を伴うことがよくある。中間層シートの2つの最も一般的なクラスは、ポリビニルブチラール(PVB)とエチレン酢酸ビニル(EVA)から作られている。合わせガラスは、一度割れると中間層に付着したままになり、それによって安全機能を実現する。
【0150】
いくつかの実施形態では、透明なプラスチックがエレクトロクロミックデバイス用の基板として使用される。ガラスと比較した場合の利点は、例えば、軽量で、可撓性があり、フィルムの形態で作られた場合、例えばロールツーロール形式での大量処理などである。一方、プラスチックにもいくつかの欠点があり、例えば、ガラスと比較して一般的に低い光学品質、透明電極の低い光学的および電気的品質、ガスおよび水蒸気透過性、エレクトロクロミック組成物の成分との起こり得る長期の化学反応性、または劣化をもたらすUV感受性、処理オプションを制限する可能性のある低温安定性などである。
【0151】
エレクトロクロミックデバイスおよび本開示の用途に適したプラスチック基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、およびその他から形成され得るが、これらに限定されない。プラスチックとEC材料との化学反応性を低減または排除するために、EC材料と接触している表面を不活性材料で不動態化することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、基板は透明なセラミックスである。透明導電性電極は、ガラス上と同じ方法でそのような基板の表面に堆積される。
【0153】
EC層121と組み合わせた光学的に透明な電極スタック(例えば、陽極スタック123および/または陰極スタック125)は、可変透過率層120の領域にわたって電極-電解質界面で電気化学的プロセスを維持する。
図1Aの例では、電極スタックは、十分に低いオーム降下で表面電流を維持するために、少なくとも1つの表面導電層、例えば、陽極126aおよび/または陰極126bを含む。
【0154】
陽極および陰極の表面導電層は、OTEなどの透明な導電性電極で形成することができる。OTEは今日、業界で広く使用されており、太陽光発電、フラットスクリーン、タッチスクリーン、加熱された透明な表面、EMIシールドなど、無数のアプリケーションで使用される様々なデバイスを可能にする。OTEは通常、その光学的および電気的特性によって特徴付けられる。
【0155】
光学的には、OTEの望ましい特性は、透明度(高い値が望ましい)、色(ニュートラルが好ましい)、およびヘイズ(低い値が望ましい)に関連している。
【0156】
電気的には、OTEの対象となる特性は、オーム/平方の単位で測定されるシート抵抗である。一部のアプリケーション、例えばタッチスクリーン用の静電容量センサでは、数百オーム/平方のオーダーの比較的高いシート抵抗が必要である。エレクトロクロミックデバイスは、通常、かなりの電流を消費する低電圧デバイスであるため、抵抗損失を最小限に抑える必要があり、低シート抵抗の要件を、好ましくは約100オーム/平方未満、例えば約70オーム/平方未満、例えば約50、30、20、15、10、5オーム/平方未満にする。
【0157】
OTEの主なクラスには、一般的に透明導電性酸化物(TCO)と呼ばれる透明酸化物から作られたOTEが含まれる。TCOの例には、インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化モリブデン(MoO3)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、スズ亜鉛酸化物(TZO)、酸化スズ(SnO2)、アルミニウムドープ酸化スズ(ATO)、亜鉛酸化物(ZnO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化ガリウム(Ga2O3)、亜鉛ドープ酸化スズ(ZTO)、インジウムドープ酸化ガリウム(IGO)、ガリウム-インジウムドープ酸化スズ(GITO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、亜鉛ドープインジウムスズ酸化物(ZITO)、亜鉛インジウム酸化物(ZIO)、ガリウムドープ酸化インジウム(GIO)、アルミン酸銅(CuAlO2)などが含まれるが、これらに限定されない。最も一般的なものは、インジウムドープ酸化スズ(ITO)とフッ素ドープ酸化スズ(FTO)である。
【0158】
他の適切なOTEには、例えば、金属の薄層および金属メッシュまたはグリッド(例えば、金属ナノワイヤーのメッシュまたはグリッド)が含まれる。金属(例えば、銀または金)の薄層(可視光の特徴的な波長よりも薄い)は透明であり、優れた導電性を有する。これらの金属は他の金属と合金化されることがあり、コストを削減し、化学的安定性を向上させる。金属は、薄膜として、または気相または液相からのナノ粒子として堆積させることができる。適切に設計された金属層は、IR範囲で反射特性を備えている可能性があるため、このような層を有するOTEは、導電性のその主要な機能に加えて、低放射率コーティングとして使用できる。
【0159】
いくつかの実施形態では、TCOと金属の層を組み合わせることによって作られたハイブリッドOTEが使用される。このようなハイブリッド構造の利点には、スタック全体の厚さが減少し、所与の抵抗に対する光学特性が向上するか、所与のOTE厚に対して抵抗が低下することが含まれる。
【0160】
OTEに適した他の材料には、例えば、炭素材料(例えば、単層または多層のカーボンナノチューブ、グラフェン)、導電性ポリマー、導電性金属有機または共有結合性有機フレームワーク(MOF/COF)、または導電性金属錯体が含まれる。前述の材料は、陰極または陽極の表面導電層に混合またはスタックさせることができ、陽極および陰極のスタックは互いに異なることができることが理解されるであろう。
【0161】
ECデバイスは、それに接続された電源を有するため、このようなデバイスに組み込むことができる機能の1つは、曇り除去機能である。ECデバイスの曇り除去は、デバイスに熱的に接続された発熱体を含む構成によって実現できる。曇り除去は、デバイスの基板またはその外部コーティングを加熱することによって、またはデバイスのOTE自体を加熱することによって行うことができる。デバイスのOTEが加熱される場合、エレクトロクロミック層への悪影響を最小限に抑えるか回避することが重要である。悪影響は、高温および電気化学的プロセスに起因する可能性がある。望ましくない電気化学的プロセスを回避する1つの方法は、デバイス内のエレクトロクロミック反応の特徴的な拡散時間定数に対応する周波数を超える周波数で、(エレクトロクロミックデバイスのDC駆動動作とは対照的に)交流で加熱を達成することである。
【0162】
EC用途を考慮して、OTEは、望ましくは、それらの構造的完全性を維持し、過電圧の動作範囲内でEC層121からの化学物質と反応しないことが理解されるであろう。構造的完全性の問題は、フレキシブル基板上のOTEで特に顕著である。例えば、ITOがPETに堆積されると、取り扱い/曲げ時に亀裂が入る可能性がある。一般的に、ITOはEC化学物質と比較して安定している。しかしながら、亀裂の形成により、ITOとそのドーパントの局所的な化学量論が変化し、EC化学物質との反応性が高まり、デバイスが急速に劣化する可能性がある。化学的劣化がなくても、電位の分布がデバイスの表面全体で均一でなくなるため、亀裂が形成されるとデバイスが動作しなくなる可能性がある。そのような不均一性は、デバイスの斑状の着色および他の光学的欠陥をもたらす。
【0163】
化学的適合性の観点から、金属をベースにした一部のOTEは、過電圧の動作範囲内でECコンポーネントとの接触に耐えられない場合がある。例えば、銀と銅はこのような条件下で急速に腐食する。金、パラジウム、白金、イリジウム、ハステロイ、その他の金属および合金の一部を含む、他の金属および金属合金はより安定している。ECアプリケーションで金属OTEを保護する1つの方法は、TCO、例えば光学的に透明な基板上のOTE/金属、OTE/OTE層状構造と共にハイブリッド多層配置でそれらを使用することである。例えば、そのようなハイブリッド電極は、フレキシブル基板上のITOの層、続いて銀の薄層、続いてITOの別の層、例えば、光学的に透明な基板上のITO/銀、OTE/ITO層状構造を含むことができる。ITOの外層は、OTEの一部および銀の保護層の両方として機能し、銀とEC層が直接接触するのを防ぐ。
【0164】
別の選択肢は、特殊な陽極および/または陰極界面層を使用することである。このような層は、それ自体では良好なOTEを形成しない場合があるが、電気回路を実質的に妨げることなく、OTEの金属層のための保護を提供する。そのような層の1つの選択肢は、カーボンナノチューブの懸濁液からそれを作ることである。しかしながら、界面層の目的は、OTEの保護に限定されない(以下を参照)。
【0165】
ECデバイスが(2つの基板上にある)2つのスタックを有する場合、スタックと基板が同一である必要はない。実際、特定のアプリケーションおよびデバイス構造では、あるスタックを別のスタックとは異なるものにすることが有利な場合がある。以下は、そのような非対称配置の例とその利点である。
【0166】
ECデバイスのいくつかのアプリケーションは、それらが動作する環境に関して非対称である。例えば、建築用窓の場合、窓の内側と外側の環境は大きく異なる。太陽の負荷は外部から作用しているため、UVおよびIRの負荷の大部分は、外部に面しているECデバイスの表面に作用している。したがって、外向きの基板を内向きの基板とは異なるものにすることが好ましい場合がある。例えば、外向きの基板は、UV吸収および/またはIR反射性などの追加の機能を有し得る。このような機能は、外向きの基板に属するスタックの別個の層として実装することも、(例えば、プラスチック基板内のUV吸収添加剤として)基板のバルク内に組み込むこともできる。外向きのスタックに任意選択で追加できるもう1つの光制御機能は、偏光制御である。基板またはその層の1つを偏光子として機能させることにより、全体的な太陽の負荷とグレアを減らすことができる。したがって、本開示の一態様では、光学的に透明な基板、好ましくは外向きの基板は、光を偏光するか、またはその上に光を偏光する層を含む。
【0167】
考えられる非対称性のもう1つのタイプは、異なる材料で作られた2つの基板にある。例えば、ARゴーグルの場合、基板の1つは比較的厚いポリカーボネートレンズであり、もう1つは軽量フィルム、例えばPETである。
【0168】
窓の場合、一方の基板はガラスとすることができ、もう一方はフィルムベースとすることができる。このような配置は、例えば、フィルムベースの基板が不活性雰囲気を含むIGUの内部空洞に面する断熱ガラスユニット(IGU)アセンブリで可能である。この場合、フィルムベースの基板は不活性環境に面しているため、完全に取り除かれないとしても、エッジと領域のシーリング要件が緩和される可能性がある。これにより、デバイスの複雑さが簡素化され、コストが削減される。
図1Cと以下の説明は、そのようなIGUの追加の詳細を提供する。
【0169】
表面導電層126a/126bは、(それぞれ)界面層128a/128bまたは可変透過率層が界面層を含まない溶液への相間電荷移動を提供する。陽極および陰極界面層128a/128bは、電極-電解質界面(陽極および/または陰極)での電荷移動挙動を調整し、したがって、高い表面電子伝導性を有さない可能性がある。界面層は、例えば、モノマー/ポリマー有機半導体、無機半導体、有機誘電体、無機誘電体、MOF、炭素材料(例えば、単層または多層のカーボンナノチューブ、グラフェン)、(固定化されたレドックスシャトルのように機能し得る)電気化学的に活性な化合物の物理的または化学的に吸着または結合した分子層、または、界面で溶液特性(例えば、誘電透過性、イオン強度、イオン会合など)を変更した電気化学的に不活性な化合物の物理的または化学的に吸着または結合した分子層で形成することができる。
【0170】
界面層はまた、界面の機械的、光学的、または他の非電気的特性(例えば、界面接着、屈折率整合、または電極表面の濡れ性)を変更するために使用することができる。可変透過率層の製造中、電極スタック123/125の1つまたは複数の界面層128a/128bは、事前に組み立てられて使用することができるか、または製造中にインサイチューで部分的または完全に自己組み立てすることができる。
【0171】
ECデバイスのタイプに関係なく、EC層121は、1つまたは複数の光吸収化合物を含むことができる。EC層121は、補助化合物、修飾剤、マトリックス、溶媒、支持電解質、ポリマー添加剤(複数可)、および追加の構成要素のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0172】
上で説明したように、エレクトロクロミックデバイスは、対向する基板が異なる材料から作られているという点で非対称であり得る。例えば、1つの光学的に透明な基板はガラスとすることができ、一方、対向する光学的に透明な基板は、ポリマー(例えば、PETフィルム)などの可撓性材料を含むことができる。あるいはまた、ECデバイスは、2つの異なるタイプのガラス、2つの異なる厚さ、2つの異なる化学組成、および/または両方がOTEを有する場合は基板上の異なるタイプのOTEから作られた光学的に透明な基板を含むことができる。特定の電気光学性能の利点に加えて、そのようなデバイス構造には、断熱ガラスユニット(IGU)などの窓アセンブリに統合するための利点がある。
【0173】
一般的に、断熱ガラスユニットは、第1のガラス基板と第2のガラス基板とを含み、これらは、間に容積を有するチャンバを画定する。チャンバは、不活性雰囲気を含むことができ、チャンバはまた、1つまたは複数のエレクトロクロミックデバイスの一部または全部を含むことができる。そのような構成は、エレクトロクロミックデバイスの1つまたは複数のエッジを不活性雰囲気にさらすことを可能にし得る、および/またはIGUの第1のガラス基板または第2のガラス基板のうちの少なくとも1つがエレクトロクロミックデバイスと電気的に連通していない場合を可能にし得る。
【0174】
図1Cは、本開示の一態様に係るIGUの断面を示している。図に示すように、2つの対向する基板(例えば、第1のガラス基板1010および第2のガラス基板1012)は、間隔を置いて配置され、そのエッジでシーリング要素1014aおよび1014bによってシールされて、容積を有する内部チャンバ(1016)を形成する。対向する基板(1010および1012)は、光学的に透明であり、ガラス、プラスチック、またはECデバイスに適した他の基板のいずれかを含む、同じ材料または異なる材料または異なる厚さで作ることができる。シーリング要素は、窓業界で一般的な方法と材料を使用して形成できる。有利には、内部チャンバ1016は、不活性雰囲気を含むことができる。本明細書で使用される場合の不活性雰囲気は、実質的に不活性ガス、例えば、窒素、アルゴンなど、またはそれらの組み合わせを含む雰囲気である。
図1Cは、2つの基板(例えば、2つのガラスペイン)を備えたIGUを示しており、追加の基板は、構造に含めることができる(例えば、3つ以上のガラスペイン)。例えば、それぞれが間隔を空けて配置された3つ以上のガラスペインを備えた(例えば、第3の基板が第2の基板から間隔を空けて配置され、不活性雰囲気による第2の容積を画定する)アセンブリがあり得る。
【0175】
本開示の一態様では、1つまたは複数のECデバイスは、ECデバイスが不活性雰囲気を有するIGUの不活性雰囲気に曝され、したがってそれによって保護されるように、IGUの内部内に部分的または全体的に形成することができる。
図1Cの例に示されているように、IGUは、ECデバイスをさらに含む。この実施形態では、ECデバイスは、IGUを形成する基板によって形成される。特に、ECデバイス1200は、第1の光学的に透明な電極(1212)がその上に配置された第1の光学的に透明な基板(1210)と、第2の光学的に透明な電極(1216)がその上に配置された第2の基板(1012)と、第1の基板と第2の基板との間に配置されたエレクトロクロミック組成物(1218)(例えば、EC層)とを含む。
【0176】
有利には、ECデバイス1200は、IGUの内部チャンバ内に部分的に形成されるので、デバイスの少なくとも第1の光学的に透明な基板(1210)は、不活性雰囲気に曝されるエッジ(1214aおよび1214b)を有する。IGUの内部雰囲気は化学的に不活性であるため、したがって、EC組成物が可動性でない限り、EC組成物のエッジの周りにシールを形成する必要はない。あるいはまた、EC組成物のエッジをシールすることもできるが、そのようなシールの酸素および水蒸気バリア要件は、酸素雰囲気に曝されるアセンブリの要件と比較して大幅に低くなるであろう。また、デバイスの第2の光学的に透明な基板(1218)は、IGUの構造の一部ではないので、それは、窓に必要とされない特性を有することができ、可撓性フィルムなどの形態および組成を含むことができる。
【0177】
図1Cに示される例では、ECデバイスの第2の光学的に透明な基板(1012)は、不活性雰囲気(1012a、1012b)に曝されないが、代わりにそれぞれシーリング要素1014aおよび1041bでシールされる第2のエッジを有する。
図1Cは、IGUの外部基板で部分的に形成されたECデバイスを示し、ECデバイスは、例えば、IGU(1012)の外部基板を、その上にOTEを有するが、内部チャンバ(1016)内にあり、エッジが不活性雰囲気に曝された第2の光学的に透明な基板(例えば、ECデバイスを形成するためのチャンバ内の追加の基板)で置き換えたECデバイス1200などの、内部チャンバ(1016)内の構成要素で形成することができる。このような構成では、IGUの外部ガラスペインはECデバイスの一部を形成しないため、ペインはEC機能に参加しないが、他のペインはECデバイスを含んでもよい。
【0178】
また、複数のECデバイスをIGUの内部チャンバに含めることができる。このような複数のデバイスは独立して操作でき、それらの光学状態を個別に変えることができることを意味する。複数のECデバイスを独立して操作する理由の1つは、より広いダイナミックレンジの着色を実現することである。例えば、2つのECデバイスの最小VLTが個別に10%の場合、両方のデバイスが最小VLT状態を有する場合の実効最小VLTは1%になる。複数のECデバイスを個別に操作するもう1つの理由は、それらを異なる色に調整して、必要に応じて窓の外観を変更することである。
【0179】
IGUで形成されたECデバイスは、入力信号をEC組成物に印加するために第1および第2の電極に電気的に接続された制御システムまたはコントローラなどのECデバイスを操作するための構成要素をさらに含む。
【0180】
図2は、本開示の特定の実装形態に係るいくつかのデバイス構成を示している。デバイスには、陰極、陽極、および様々な構成のエレクトロクロミック組成物が含まれる。
図2に示されるデバイスについては、エレクトロクロミック組成物は、陰極と陽極との間に、それらに接触して配置され、陰極と陽極との間の入力信号に応答して、光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させる(例えば、可視、赤外光透過、および/またはUV光透過を高状態から低状態の透過に変更する)ように構成される。
【0181】
例えば、
図2に示されるように、タイプIデバイスは、第1の電極(212)(例えば、陽極)を有する第1の基板(210)、第2の電極(222)(例えば、陰極)を有する第2の基板(220)、および第1と第2の基板間に配置されたエレクトロクロミック組成物(230)、およびこの構成では反対に構成されているエッジシール(240a、240b)を含む。このようなエッジシールは、エレクトロクロミック組成物を保護し、基板間からのエレクトロクロミック組成物の漏れを防ぐことができる。第1および第2の電極は、界面層を含むことができる。この例では、電極と任意選択の界面層にはエレクトロクロミック選択性がない。第1の光学的に透明な基板(210)および第2の光学的に透明な基板(220)およびそれらの間のエレクトロクロミック組成物(230)は、光透過率のための光路(211)を画定する。
【0182】
この例で示されているように、タイプIデバイスは、2つの反対にバイアスが掛けられた光学的に透明な電極(陽極、陰極)の間に等方性EC層が挟まれた平面薄層セルである。このようなECデバイスでは、反対側の電極上に形成される種の拡散流束は、電極に対して法線方向にゼロ以外の投影を有する。陽極反応と陰極反応はEC層によってのみ分離された電極で発生するため、イオン移動距離はEC層の厚さのオーダーになる。正のバイアス電極上に形成された種が負のバイアス電極に到達し(およびその逆)、それらの電気化学的挙動が電位の動作範囲内で可逆的である場合、非常に高い逆過電圧が維持されているため、その前駆体に容易に変換され、前駆体の逆流束が現れる。対極での非常に高い逆反応速度のために、相補反応鎖で生成された種の濃度はゼロに近く(試薬の枯渇)、最高の濃度勾配(したがって拡散物質移動の好ましい方向)が、いわゆる消費境界、すなわち対極への方向に現れる。セルは平面であるため、これは電極に対して垂直な方向である。これは、電気化学的に生成された溶質の横方向の移動が、可変透明層の直線サイズと比較してほとんどの場合無視できることを意味する。
【0183】
したがって、このような構造のECデバイスでは、通常、試薬を生成物に完全に電気化学的変換することはできない。言い換えると、タイプIのECデバイスは単安定であり、開回路状態を除くすべての状態でかなりの電流を消費する。もう1つの特徴は、陽極および陰極反応シーケンスのメンバーである2つの種が、EC層内でそれらの前駆体の形成によって反応し(すべての化学的または電気化学的プロセスの可逆性のため)、化学的自己放電を引き起こす可能性があることである。したがって、そのようなECデバイスがバイアスを掛けた後にオープンチェーンのままにされると、比較的短時間で自己放電する可能性がある。しかしながら、自己放電プロセスは、(電極内面に対して)開回路状態で通常の方向に向けられた拡散物質移動を引き起こすプロセスにすぎないため、自己放電プロセスの速度が低い場合、横方向の移動は、開回路状態で大きく寄与する可能性がある。タイプIのECデバイスのもう1つの特徴は、試薬と電気化学反応の生成物の界面比が異なる少なくとも2つのゾーン(同じ電極の近く)が存在する場合、これらのゾーンでの同じ電極の電位は、この電極を流れる電流の原因となるものが異なり、電気化学反応を通して差が揃う傾向がある。
【0184】
単安定ECデバイスの場合、光吸収種の消費速度は、それらの形成速度よりも低い。それ以外の場合、光吸収種の準定常濃度はEC層全体で無視でき、電流がまだ消費されているにもかかわらず透過率の変化は発生しない。したがって、タイプIのECデバイスの場合、電気化学的に活性な試薬の完全な電気分解を得るのが難しいため、オフ状態で完全に透明な動作モードのみが実行可能である。
【0185】
したがって、タイプIのECデバイスの場合、光吸収化合物のいくつかの好ましい特性が存在する可能性があり、ECデバイスが複数の光吸収化合物を使用し、少なくとも1つのOTEが試薬の物質移動制限モードで動作する場合、その電極上で反応する電気化学的に活性な前駆体の拡散係数を一致させて、過渡状態での光吸収化合物濃度の同一の分布を取得する必要がある。両方の電極が試薬の物質移動制限モードで動作する場合、すべての前駆体は拡散係数に関して一致する必要がある。そうでなければ、陽極と陰極の電流分布が異なるため(電極プロセスの拡散制御と表面導体のオーム降下により)、(本明細書の他の箇所でさらに説明されているように)過渡状態および/または中間レベルの色合いで色の偏差が発生する可能性がある。本明細書の他の箇所で議論されるように、光吸収化合物のコアおよびそれらの前駆体の化学修飾は、拡散係数を変更するために使用されるべきである。
【0186】
上記の試薬の不均等な拡散速度の影響は、(1)電極を制御回路に分散(多点)接続して、電極間のオーム降下を最小限に抑える、および/または(2)両方の電極を(Frumkin効果を介して)イオン移動制限条件で動作するように設定することによって軽減または回避できる。後者は、エレクトロクロミック組成物、組成物のイオン伝導度、およびエレクトロクロミック種の濃度を適切に調整することによって達成される。上記の両方のアプローチは、「アイリス」効果を軽減するために使用できる。したがって、本開示の一態様では、本開示のECデバイスは、入力信号をエレクトロクロミック組成物または層に印加するための制御システムまたはコントローラを含むことができ、コントローラは、分散型多点電気接続によってエレクトロクロミック組成物または層と接触してデバイスの1つまたは複数の電極に電気的に接続され、電極間のオーム降下を最小限に抑える。さらに、または代替として、コントローラは、エレクトロクロミック組成物または層のイオン移動制限条件で両方の電極を動作させるように構成することができる。1つまたは複数の電極への分散型多点電気接続、および/またはイオン移動制限条件で両方の電極を動作させるように構成されたコントローラを含む構成を、本開示のすべてのECデバイスに含めることができる。
【0187】
図2は、第1の電極(252)(例えば、陽極)を有する第1の基板(210)、第2の電極(262)(例えば、陰極)を有する第2の基板(220)、および第1および第2の基板の間に配置され、第1および第2の電極(252、262)と接触しているエレクトロクロミック組成物(230)を含むタイプIIのECデバイスをさらに示す。タイプIIデバイスには、エッジシールも含まれており、この構成では、エッジシールは反対に構成されている(240a、240b)。この例では、電極の一方または両方が、EC組成物中の不要な電気化学的プロセスを抑制でき、例えば、陰極電極または陽極電極のいずれかまたは両方は、エレクトロクロミック組成物の特定の成分の実質的に還元または酸化のみを選択的に可能にする。そのような電極は、エレクトロクロミック組成物に曝される表面として、半導体材料を有することができる。そのような構成では、陰極または陽極のいずれかまたは両方が、エレクトロクロミック組成物との界面に半導体材料を含む。
【0188】
タイプIIのECデバイスは、電極上の不要なプロセスが抑制されることを除いて、タイプIのECデバイスに似ており、これにより、エレクトロクロミック組成物内で種の完全な電気分解を実行できる。タイプIIのECデバイスでは、化学的自己放電プロセスが残っているため、デバイスは依然として単安定である。しかしながら、自己放電プロセスの速度が無視できる場合は、このタイプのECデバイスをストレートモードとリバースモードの両方で動作させることができる(オフ状態で完全に透明または完全に暗くなる)。したがって、デバイスは双安定デバイスと見なして制御することもできる(つまり、どの状態でも実質的にゼロの電力消費であり、電力は状態を切り替えるためにのみ消費される)。
【0189】
タイプIIのECデバイスでは、自己放電速度が低い場合、通常の方向に向けられた有意な拡散フラックスは存在しない。したがって、横方向の拡散物質移動距離は、タイプIのECデバイスとは対照的に、バイアスが掛けられた状態でも可変透過率層の横方向の直線サイズと比較してかなり大きくなる可能性がある。
【0190】
図2はさらに、第1の電極(例えば、陽極)を有する第1の基板、第2の電極(例えば、陰極)を有する第2の基板、およびを含む、第1および第2の基板間に配置されたエレクトロクロミック組成物、およびこの構成では反対に構成されているエッジシールを含むタイプIIIのECデバイスを示す。基板、電極、エレクトロクロミック組成物、およびエッジシールは、上記のタイプIおよびタイプIIのデバイスで説明されているように構成することができる。
【0191】
しかしながら、本開示のタイプIIIのデバイスは、EC層内に部分的に透過性の追加の要素を含む。例えば、タイプIIIのデバイスは、EC組成物内に膜、例えば、選択的に透過性であるEC層を含むことができる。
図2に示されるように、エレクトロクロミックデバイスは、陰極電極と陽極電極との間に配置された選択的透過性膜(270)を含むことができる。
【0192】
そのような構成では、膜は、小さなイオンの透過を実質的に可能にすることができるが、大きなイオンの透過を実質的に禁止する。例えば、膜は、プロトンの透過を実質的に可能にすることができるが、プロトンよりも大きいイオンの透過を実質的に禁止する。代替的に、または組み合わせて、膜は、支持電解質の電気化学的に不活性なイオン種のみの透過を実質的に可能にすることができるが、反応種の透過は可能にしない。
【0193】
エレクトロクロミック組成物内の膜の特定の選択性の下では、電気生成された溶質は、対極に到達することも、その上に形成される化学反応種と接触することもできない。したがって、有意な自己放電または逆電気化学反応速度は存在しない。タイプIIIのECデバイスは、完全な電気分解を可能にし得るため、双安定である。タイプIIのECデバイスと同様に、接線方向の拡散物質移動距離は、可変透過率層の直線サイズと比較してかなり大きい。
【0194】
本開示の一態様では、選択的透過性膜は、中心部分および周辺部分を有することができ、その中で、中心部分は、周辺部分よりも高い透過性を有する。このような膜は、より厚い周辺部分またはより透過性の低い材料から作られた周辺部分を有することによって製造することができる。このように、EC層内およびECデバイスの電極間に含まれるそのような膜は、VTLの中心においてVTLの周辺よりも実質的に異なる電気的特性を有する陽極/EC層/陰極可変透過率層(VTL)をもたらすであろう。
【0195】
図2は、本開示の態様に係る別のECデバイス、例えば、第1の光学的に透明な基板280、第2の光学的に透明な基板282、および第1と第2の導電性表面の間に配置されたエレクトロクロミック組成物284を含む、タイプIVのECデバイスをさらに示す。第1および第2の光学的に透明な基板およびエレクトロクロミック組成物は、光透過率のための光路(285)を画定する。1つの極性でバイアスを掛けられた第1の電極は、光学的に透明な基板のいずれかまたは両方に配置できる。この例では、陽極(286)は、EC組成物284に面する第1および第2の基板の内面に配置される。この第1の電極は、基板によって画定された光路内にあるので、第1の電極は、光学的に透明な電極である。しかしながら、タイプIVのデバイスでは、EC組成物間の光学的に透明な基板によって画定される光路の外側に第2の電極が配置される。この例では、タイプIVのデバイスは、光透過のための光路(285)の外側に第2の電極(例えば、陰極)(288)を含む。第2の電極288は、短絡を防ぐために、第1の電極の下方または上方に配置され、第1の電極から分離することができる。
図2に示す例では、第2の電極288は、光路285の外側であるがエレクトロクロミック組成物284にイオン接続された、補助容積290としてラベル付けされた第1および第2の基板の下部で第1の電極から分離されている。この構成により、エレクトロクロミック組成物は、第1の電極と第2の電極との間の入力信号に応答して、光透過を1つの状態(例えば、高光透過状態)から別の1つの状態(例えば、低光透過状態)に変化させるように構成される。
【0196】
タイプIVのECデバイスは、タイプI、タイプII、およびタイプIIIのECデバイスとは根本的に異なる。タイプIVのECデバイスでは、電極は、補助容積内に配置することができ、支持電解質のイオンを透過する膜で分離することができる。その後、デバイスは双安定になる。したがって、電極のうちの1つは透明である必要はなく、例えば、光路の外側に位置する第2の電極は、光学的に透明である必要はない(すなわち、10%未満の可視光を透過する)。また、第2の電極は、基板の形状を有する必要はない。したがって、電極(例えば。リチウム炭素)の広いスペクトルを第2の電極に使用することができる。タイプIVのデバイスの例では、陽極電極と陰極電極がEC層の厚さだけでなく、可変透過率層の直線サイズのオーダーの距離によって分離されているため、イオン移動速度が過渡プロセスに大きく寄与する。補助容積とEC層との間のイオン交換の唯一の経路は、それらを分離する膜である。したがって、電気化学プロセスが可変透明層の電極(複数可)上で実行されている場合、電荷補償イオンは、結合からのみ横方向に有限速度で伝播するため、電気化学反応の速度は結合に近いほど高くなる。したがって、そのようなデバイスの過渡プロセスは、可変透過率層上で透過率勾配を伴う。結合の形状を変えることで、過渡状態の必要な外観(例えば、デバイスの上部から下部まで)を得ることができる。
【0197】
上で説明したように、ECデバイスのエレクトロクロミック組成物は、例えば、制御システムまたはコントローラからの入力信号に応答して、光透過を1つの状態(例えば、高光透過状態)から別の1つの状態(例えば、低光透過状態)に変化させるように構成される。1つまたは複数の電極は、1つまたは複数のバスバーを使用することによってそのようなコントローラに電気的に接続することができる。
【0198】
特定の実施形態では、バスバーが導電性表面(例えば、OTE)を有する基板表面のエッジを越えて延在し、任意選択で、少なくとも部分的に、基板の反対側に続くことを可能にすることが有利であり得る。次に、基板の裏側に電気接続を行って、コントローラを電極に電気的に接続することができる。このような構造の利点は、製造の簡素化、デバイスの堅牢性の向上、および電気接続の簡素化と便利さにある。したがって、本開示の一態様は、基板上のOTEを電気的に接続し、基板のエッジを越えて基板の反対側に続くバスバーを含む。そのような構成は、間にエッジを有する第1および第2の主表面を有する光学的に透明な基板を含むことができ、基板の1つの主表面(例えば、第1の主表面)は、光学的に透明な電極と、光学的に透明な電極と直接接触し、基板のエッジを越えて第2の表面上に配置されたバスバー(例えば、導電性ストリップ)とを含む。
【0199】
バスバーの様々な構成が可能である。
図3は、光学的に透明な基板(310)(例えば、ガラス)上のオーバーザエッジバスバー314の一例を示している。基板310は、その上に光学的に透明で導電性のフィルム(312)(例えば、OTE)を有する第1の主表面310Aと、第2の主表面(例えば、反対側または裏面)(310B)と、第1と第2の主表面間のエッジ(310E)とを有する。バスバーを基板310の第2の主表面310Bまで延長する1つの方法は、基板310のエッジ310E上で折り畳まれ、OTE312がその上に片側に存在する基板310の機能面310Bと、非機能面310Aの両方に取り付ける導電性接着剤を備えた可撓性導電性テープを使用することである。
【0200】
オーバーザエッジバスバーを製造する別の方法は、基板310のエッジ310Eを、導電性インク335を含む浴330に浸漬することである。インク335は、エッジ310Eを濡らし、OTE312のすぐ上の機能面310Aと基板310の非機能面310B上に、ならびに基板310のエッジ310Eを覆って導電性ストリップを作製し、これにより基板310の機能面310A上のOTEを非機能面310Bと電気的に接続する。インク335は、通常、乾燥および/または焼成されなければならない。このようなインクの一例は、約500℃で焼成されるFerro Corporation製のCN33-805 Ag化合物である。
【0201】
バスバー314がエッジ310Eを越えて延長された後、基板310の非OTE面310B上のバー314の一部を電気接続に使用することができる。1つの選択肢(図示せず)は、基板310の裏面310B上のバスバー314の周辺部に沿った複数の場所に複数のワイヤーをはんだ付けすることである。別の選択肢は、高導電性(例えば、銅)ストリップ318などの単一の導電性要素を、周辺部に沿ってバスバー314の実質的に全長に取り付けることである。そのようなストリップ318の高い導電性は、周辺部の周囲に無視できるほどの損失で電位を分配する。したがって、許容できる品質の電位分布を備えたデバイスを作製するには、外部ワイヤー接続の数を減らすだけで十分であり、電極へのワイヤー接続は1つだけで十分であることが好ましい。電気接続の数が減ると、製造コストが削減され、信頼性が向上し、取り扱いが簡素化される。
【0202】
ストリップ318の高い導電率は、オーバーエッジバスバー314の導電率と比較され、ストリップ318の厚さおよびストリップ318のために選択された材料の固有の高い導電率によって達成される。高い導電率を達成し、オーム損失を最小限に抑えるために、ストリップ318の厚さは、特定のECデバイスの電極または基板間に配置されたEC組成物または層の厚さよりも厚くすることができる。このような場合、基板間の利用可能なスペースが限られているため、アセンブリの裏側への電気的なアクセスを有することが特に有利である。したがって、本開示の一態様では、エレクトロクロミックデバイスは、オーバーザエッジバスバーを有する光学的に透明な基板を含むことができる。そのようなデバイスは、別の光学的に透明な基板(バスバーあり、またはなし)および基板間のエレクトロクロミック層を含むことができ、エレクトロクロミック層は厚さを有し、第2の導電性要素は、エレクトロクロミック層の厚さよりも厚い厚さを有する。
【0203】
いくつかの用途では、特定のECデバイスの電極または基板間に配置されたEC組成物または層は、約50ミクロンよりも大きい、例えば、約100、150、200、250、300、500、700ミクロンよりも大きいか、または約1mmよりもさらに大きい、例えば、約2mm、3mm、4mmなど、およびそれらの間の値よりも大きい厚さを有することができる。他の実施形態では、EC組成物または層は、約10mm以下、または約8mm未満および5mm未満の厚さを有することができる。第2の導電性要素は、特定のECデバイスの電極または基板間に配置されたEC組成物または層の厚さよりも厚い厚さを有することができる。
【0204】
ストリップ318とバスバー314との間の取り付けは、例えば、導電性テープ316を使用することによって、導電性ストリップ318とバスバー314との間に電気的接触を有する。
【0205】
あるいはまた、ストリップ318は、オーバーザエッジバスバー314を形成する前に(図示せず)、基板310の裏側310Bに取り付けることができる。この場合、ストリップ318は、導電性ストリップを基板に接合するために適切な接合接着剤または他の方法を使用して基板310に取り付けられる。次に、基板は前のシーケンスと同じ浸漬/焼成シーケンスを経て、その結果、裏面310Bから前面310Aまでの導電性ストリップが、裏面ストリップの形態の低抵抗分配経路と共に形成される。
【0206】
オーバーエッジバスバー314が(追加の高導電率ストリップの有無にかかわらず)形成されると、腐食から保護し、ECデバイスの安全性を改善するためにバスバーを絶縁することが望ましい。バスバーの絶縁は、基板のエッジ310Eを、絶縁材料355の溶液を含む浴350に浸漬して、バスバーおよびそれに取り付けられた任意の高導電性ストリップの周りに絶縁材料のコーティングを形成することによって達成することができる。浴に適切な深さまで浸漬させた後、コーティングは、絶縁層322を形成するために、化学処理または乾燥またはUV曝露または温度処理によって硬化されなければならない場合がある。これらがコーティングの前に形成される場合、そのような絶縁ははんだ接合部に適用することができる。あるいはまた、はんだ接合部は、適切な絶縁化合物で覆うことにより、別のステップで絶縁することができる。
【0207】
図4は、バスバーの代替の一例を示している。ECデバイスが使用される特定の用途に応じて、基板のエッジ(例えば、ガラスエッジ)の適切な成形は、機械的応力を最小限に抑え、破壊の形成を防ぎ、取り扱いの安全性を確保するために有利である可能性がある。また、オーバーザエッジバスバーがアセンブリに追加される場合、基板のエッジ形状は、基板のエッジを越えたバスバーの導電性を損なう可能性のある鋭い角および不連続点がなく、滑らかであることが好ましい。基板のエッジは、角を避けるように成形されることが好ましい。このようなエッジの成形はガラス業界では一般的であり、一般的に「エッジング」と呼ばれる。結果として得られるエッジプロファイルは、丸みを帯びているか、楕円形、または基板の1つの主表面から基板の別の1つの主表面への鋭い遷移を回避する任意の他の形状とすることができる。
【0208】
エッジのそのような成形は、完全なアセンブリのその後のエッジシールにも有益である。シール化合物は、鋭い未処理のエッジと比較して、滑らかで丸みを帯びた表面への優れた接着性を有する。
図3のバスバー314を得るために使用される同様のプロセスはまた、滑らかで丸みを帯びた形状のエッジにバスバーを得るためにも使用することができる。一例として、
図4は、上に光学的に透明で導電性のフィルム(412)(例えば、OTE)を備えた第1の主表面410Aと、第2の主表面(例えば、反対側または裏面)(410B)と、第1および第2の主表面の間のエッジ(410E)であって、エッジ410Eは滑らかで丸みを帯びた形状をしており、エッジングによって達成することができる、エッジ410Eとを有する、光学的に透明な基板414上のオーバーザエッジバスバー414を示す。上記のバスバーは、本開示のエレクトロクロミックデバイスのいずれかに含めることができる。
【0209】
本開示のエレクトロクロミックデバイスは、デバイスの悪影響を最小限に抑えるためのシーリングシステムを含むことができる。電気化学的組成物または層の成分は、その動作に悪影響を与える可能性のある様々な要因に敏感である可能性がある。このような悪影響を軽減または排除するために、様々なバリアを実装できる。アセンブリの周辺部の略周囲にあるバリアは、「エッジシール」と呼ばれる。このようなエッジシールは、エッジを介した有害物質の侵入を防ぎ、その上、所定の容積内にEC組成物または層を含む。考えられる別のタイプのバリアは、アセンブリの平面に配置された保護層である。このようなバリア層は、ECデバイス平面にほぼ垂直な方向に作用する要因から保護する。バリアによって実行されるいくつかの機能があり、異なるまたは冗長な機能を実行する複数のバリアが存在する場合がある。
【0210】
また、エレクトロクロミックデバイスは、電極とシーリング要素との間に配置された不動態化層を採用することによって、シールへの有害な影響を最小限に抑えるシーリングシステムを含むことができる。構成は、不動態化層が電極、シーリング要素、およびエレクトロクロミック組成物に直接接触するように組み立てることができる。そのような一実施形態に係るシール構成の一例が
図5Aに示されている。この図では、シーリング要素520(例えば、一次エッジ)は、その上の表面上に第1の電極512aを有する第1の光学的に透明な基板510a(例えば、OTE)と第2の光学的に透明な基板510bとの間に配置される。この例では、第2の光学的に透明な基板510bは、その上に第2の電極(例えば、OTE)(512b)を有する。第1および第2の基板は両方とも、光学的に透明なガラスとすることができる。この例のシール構成はまた、第1の電極512aおよび第2の電極512bのすぐ上に、それらに電気的に接触したバスバー514aおよび514bをそれぞれ含み、シーリング要素520は、バスバー514a、514bに接触する。
【0211】
シーリング要素520は、エレクトロクロミック組成物(ECC)521を含むバリアであり、第1および第2の基板によって少なくとも部分的に画定される指定された容積の外側へのその拡散または漏れを防止する。このシールはECC521と直接接触しているため、ECC521に対して化学的に不活性である必要があり、さもなければ、ECC521とシール520の間の反応により、シールが損傷する、および/または、ECC521が汚染される、すなわち、どちらの要因もデバイスの動作と長期安定性に悪影響を及ぼす。この例で示されているように、このシールはまた、バスバー514aおよび514bをECCとの接触から保護する。
【0212】
一次エッジシールなどのシーリング要素に使用するのに適した材料には、例えば、フルオロポリマー(例えば、デュポン社のVitonや、PCTFE、PTFE、PFA、および他のフルオロポリマーをベースにした様々な製品)、シリコーン(例えば、NusilによるCV-1142)、アクリル化合物(例えば、Delo Industrial AdhesivesによるLP4115)などのエラストマー、および/またはエポキシ(例えば、Delo IndustrialAdhesivesによるLP655またはHenkelによるLoctite 1C)、および/または他の化合物を含むが、これらに限定されない。また、熱可塑性プラスチックを一次エッジシールに使用することができる。例えば、3Mの製品であるHot Melt 3789、Hot Melt 3779、または3797を使用できる。
【0213】
図5Aに示されるシーリング要素は、特定の位置で第1の電極(512a)およびエレクトロクロミック組成物(521)と同時に接触する。したがって、周辺部に沿って線があり、三重接触ゾーン530として
図5Aで識別されるすべての3つの物質(シール、OTE、およびECC)の三重接触がある。このような三重接触ゾーンは、特に電流および電気化学反応の存在下で、潜在的な腐食効果のために望ましくない可能性がある。潜在的な望ましくない腐食を回避する1つの方法は、シール、OTE、およびECC(530)間の三重接触を排除することである。
【0214】
本開示の一態様では、不動態化層を、第1および/または第2の電極上、およびシーリング要素の間に配置することができる。不動態化層は、電極(複数可)、シーリング要素、およびエレクトロクロミック組成物に直接接触するように構成することができ、したがって、シール、電極、およびエレクトロクロミック組成物の間の三重接触を防ぐことができる。
【0215】
図5Bは、シーリング要素が任意の一箇所で電極およびエレクトロクロミック層に同時に接触するのを防ぐことができる不動態化層を示している。
図5Bでは、シーリング要素550(例えば、一次エッジ)は、その上の表面(例えば、OTE)上に第1の電極512aを備えた第1の光学的に透明な基板510aと第2の光学的に透明な基板510bとの間に配置される。この例では、第2の光学的に透明な基板510bは、その上に第2の電極(例えば、OTE)(512b)を有する。また、第1の不動態化層540aは、第1の電極(512a)とシーリング要素(550)との間に配置され、第2の不動態化層540bは、第2の電極(512b)とシーリング要素(550)との間に配置される。そのような構成では、第1の不動態化層(540a)は、第1の電極(512a)、シーリング要素(550)、およびエレクトロクロミック組成物(521)に直接接触し、
図5Bの例に示されるように、第2の不動態化層(540b)は、第2の電極(512b)、シーリング要素(550)、およびエレクトロクロミック組成物(521)に直接接触する。したがって、
図5Bに示される不動態化層は、シーリング要素(550)が任意の一箇所で電極(512aまたは512b)およびエレクトロクロミック組成物(521)と同時に接触するのを防ぐ。
【0216】
シール、電極(複数可)、およびエレクトロクロミック組成物の間に三重接触を形成するシールの代わりに、不動態化層は三重接触を形成することができ、すなわち、不動態化層は電極(複数可)およびエレクトロクロミック層(560)に同時に接触する。しかしながら、不動態化層は、ECデバイス内の電極の機能を実行しないので、不動態化層は、電極とは異なる材料、好ましくは腐食に対してより耐性があるか、または望ましくない反応を引き起こす可能性がある材料で作ることができる。したがって、不動態化層は、三重接触ゾーン(560)での腐食の可能性に対して不活性でなければならない。例えば、不動態化層は、酸化ケイ素ベースのもの(例えば、SiO2)などの無機層を含むことができる。
【0217】
さらに、
図5Bに示されるように、不動態化層540aおよび540bは、それぞれバスバー514aおよび514bの上に延在することができ、例えば、バスバーは、それぞれ第1および第2の電極と直接および電気的に接触する導電性ストリップを含むことができる。不動態化層は、必ずしもバスバーの上に延在する必要はない。しかしながら、バスバーの上に不動態化層を延在させる利点は、バスバーをさらに絶縁することである。このような構造は、製造シーケンスでバスバーが形成された後に、堆積などによって不動態化層を追加することによって達成することができる。
【0218】
不動態化層は、
図5Bに示されるように、基板の周辺部に沿って堆積させることができる。不動態化層540aおよび540bは、基板のエッジに形成することができ、シーリング要素の位置よりも遠い距離で、電極の表面に沿って、エッジから基板の中心に向かって延在することができる。
【0219】
エッジシールなどのシーリング要素の別の機能は、基板間の機械的接続を提供することである。この機能が一次シールとは異なる追加の(二次)シールによって実行される場合、そのような二次シールはひずみ緩和を提供し、一次シールへの機械的ストレスを最小限に抑える。このような配置は、一次シールの動作の信頼性の向上をもたらし、その結果、ECデバイス全体の動作の信頼性の向上をもたらす。機械的機能を担うエッジシールは、温度による基板の潜在的な非対称膨張/収縮に起因するせん断荷重、設置および操作時に生じるクロスプレーン方向の応力またはひずみ、輸送時および設置時または他のシステム要素との統合時の衝撃および振動、およびデバイスの操作に起因するその他の機械的応力などの様々な機械的負荷に耐えるのに十分な堅牢性と可撓性を備えていることが望ましい。したがって、本開示のエレクトロクロミックデバイスは、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間、および/または第1および第2の基板の周辺部の少なくとも一部の周囲に二次シールを含むことができる。そのような二次シールは、デバイスの基板間のエレクトロクロミック組成物または層に接触しないであろう。
【0220】
ECCを含むデバイス容積への物質の侵入は、不可逆的な化学的または電気化学的サイドプロセスのためにデバイスの劣化を引き起こす可能性がある。高い湿度および/または温度での操作は、そのような劣化を促進する。一次エッジシールは、それ自体では腐食性物質からECCを保護できない場合がある。したがって、デバイスは、追加の二次シールを使用することにより、環境ガスおよび蒸気から保護されることが望ましい。
【0221】
二次シール材料の一例は、ポリサルファイドガラスシーラント、例えば、CRローレンスの製品N400G15またはN4005GLである。
【0222】
水はデバイスの動作に危険を及ぼす可能性がある。二次材料の1つの機能は、デバイスへの水の透過の可能性を排除することである。水の侵入(水蒸気透過率、WVTRとして定義される)は、通常、グラム/平方メートル/日(つまり、g/m2/d)の単位で測定される。通常、OLEDには10-6~10-5g/m2/dの範囲のWVTRが必要である。OPVの要件は、10-4~10-3g/m2/dの範囲内にある。有機ECCの要件は、これらの範囲の中間であり、約10-5~10-4g/m2/dである。
【0223】
水蒸気に対する感受性と同様に、ECCは酸素に対して感受性がある。通常、バリアの酸素透過率(OTR)はWVTRとよく相関している。ほとんどの場合、許容可能なWVTRを備えたバリアはまた、許容可能なOTRを有している。
【0224】
化学的性質のバリエーションに加えて、シール材料は製造アプローチのタイプによって異なる。所定の位置にシールを作製する1つの方法は、デバイスの周辺部に沿ってシール材のビードを堆積することであり、このようなビードは、基板をブリッジし、不要な物質の面内侵入に対するバリアを作製する。その後、特定の硬化剤との化学反応、水分、温度、UVへの曝露、またはこれらの要因の組み合わせの結果として、ビードはさらに硬化する。
【0225】
シーリング要素を作製する別の方法は、ECデバイスとは別にスタンドアロンのガスケットを形成し、それをECデバイスに追加することである。そのようなガスケットは、例えば、Vitonなどの適切な材料から作られたコードとすることができる。このようなコードは、組み立てられたECデバイスの周辺部に配置され、適切な接着剤で所定の位置に固定されるか、または、それを自己接着性とすることができる。ガスケットの目的で所定の位置に形成されたシーリング要素とスタンドアロンのシーリング要素のどちらを選択するかは、幾何学的要因と製造可能性の考慮事項によって決まる。幾何学的な観点から、1つの要因は、ECデバイスの厚さであり、その結果、シールする必要のあるギャップの幅である。より小さいギャップ(例えば、1mm以下)は、所定の位置に形成されたビードによってシールされるのにより適している。より大きなギャップの場合、スタンドアロンのガスケットのアプローチが好ましい場合がある。
【0226】
本開示のECデバイスを有害物質のエッジ侵入から保護することに加えて、クロスプレーン方向に作用する要因からECデバイスを保護するために追加の注意を払う必要がある。このような保護を達成するために、様々なバリア層を使用できる。個々のバリアは、機能(例えば、酸素透過に対する保護)のみを達成している場合があるか、または複数の要因に対して効率的である(例えば、水蒸気とUVに対する保護を組み合わせている)場合がある。
【0227】
EC層の酸素および水の感受性は、エッジシーリングの文脈で本明細書の他の箇所で説明されている。両方の基板がガラスでできている場合、そのような基板を介した酸素と水蒸気の透過は事実上ないため、追加の保護は必要ない。しかしながら、PETフィルムなどのプラスチック製の基板の場合、クロスプレーン保護のタスクは現実的である。一部のポリマー基板は、酸素と水蒸気の両方に対して不十分なバリア特性をもっている可能性があるため、追加の保護アクションが実装されていない場合、ECデバイスは劣化する。この場合、酸素と水蒸気の取り込みを減らすために、1つまたは複数のバリア層を追加する必要がある。例えば、ガス/蒸気バリアは薄いフレキシブルガラスで作製され得る。別の選択肢は、OLEDおよびOPV産業のニーズに合わせて開発された多層バリアコーティングであり、例えば、Vitriflexによって製造された金属酸化物層のスタック、またはVitexと3Mによって開発された有機/無機層の交互のスタックである。
【0228】
ECデバイスはUV光の影響を強く受ける可能性があり、化学的/電気化学的プロセスの逸脱と光分解の両方を引き起こす可能性がある。紫外線放射を遮断する方法は複数ある。これを実現する1つの方法は、マルチペインガラスアセンブリの一部としてECデバイスを使用することである。ガラスの外側のペイン(複数可)はUVフィルタリングを保証するため、EC層に到達するスペクトルの残りの部分にはUVは含まれない。
【0229】
UV放射を抑制する別の方法は、接着剤層でガラス(または別の基板)に取り付けられたUV遮断フィルムを使用することである。さらに別の方法は、適切な堆積方法(例えば、スプレー堆積、スロットダイコーティング、真空蒸着、溶液からの成長、または他の業界標準の方法)によって、UV遮断層を基板上に堆積させることである。
【0230】
化学的バリアに関するセクションで議論したように、シーリング要素は、化学的バリアと光学的バリアの二重の機能を備えている場合がある。例えば、DELO Industrial Adhesives製のLPシリーズのシーリング要素材料の中には、水蒸気の透過とUV放射の両方を抑制するものがある。
【0231】
あるいはまた、UV遮断添加剤(例えば、効果的なUVB吸収剤として作用するシンナメート)をECCに直接添加することができる。
【0232】
あるいはまた、UV遮断添加剤を有するラミネート層を使用して、ECCを追加のガラス層と融合させることができる。例えば、ポリビニルブチラール(PVB)は、今日のガラス業界で最も一般的なラミネーション中間層である。UV遮断添加剤は、PVBフィルム組成物の一部であることがよくある。例えば、クラレ(PVBのメーカー)による製品資料には、「従来の窓ガラスは、320nm未満の紫外線を透過しません。」と記載されている。ガラスプライ間のPVBフィルムは、さらにUV光をフィルタリング除去する。Trosifol(登録商標)UV Extra Protectは、偶発的なUV放射を完全に遮断するPVBフィルムである。
【0233】
また、特定の用途では、物質によるIR放射の吸収によって引き起こされる熱放出を減らすために、赤外線(IR)放射を減らす、またはECCを通過しないようにする必要がある。したがって、温暖な気候では、建物のエネルギー効率を改善するために、IR放射を建物への侵入からそらすことが好ましい。また、IR放射は、ECデバイスの動作温度レジームを悪化させ、濃い色のEC層に吸収される可能性がある。高温での動作は、電気化学的/化学的挙動に影響を及ぼし、ECデバイスの寿命を縮める可能性があるため、ECデバイス内での熱放出を最小限に抑える必要がある。
【0234】
建物内では、IR透過率は通常、ガラス表面に塗布される特殊な層(一般的にlow-e層(low-eガラス)として知られている)によって調整される。Low-eコーティングは、マルチペインガラスアセンブリの最も外側のペインに適用されると、NIRと長波長IRを反射し、温暖な気候での建物の熱負荷を最小限に抑える。同じコーティングにより、EC層に到達するIRの量が最小限に抑えられるため、ECデバイスの温度が低下する。
【0235】
IR制御メカニズムとしてlow-eガラスを使用する代わりは、同様の機能を実行するようにECDのOTEを構成することである。一部のOTEは、透明な導電性酸化物と金属または金属合金を交互にしたスタックとして作製される。このようなOTEの例には、Sheldahl Corp.によって製造されたITO-金属-ITOフィルムまたはTDKによって製造されたITO-銀合金フィルムが含まれる。このようなOTEには金属の薄層(通常は銀または金)が含まれているため、IRリフレクターとして機能する場合がある。したがって、このようなOTEをECデバイスのスタック内で使用すると、OTEとアセンブリのlow-e要素の二重機能を実行できる。したがって、本開示の一態様では、エレクトロクロミックデバイスは、少なくとも部分的にIR放射を反射するように構成されたOTEを含むことができる。
【0236】
本開示に係るECデバイスは、フィルムまたはより厚い要素の形態の1つまたは複数のプラスチック層を含むことができる。そのような層は、別々に製造され、その後、例えば、キャリアリールから巻き戻され、接着剤によって、または加熱または加圧下で、またはこれらの組み合わせで取り付けられるフィルムとしてデバイスに追加することができる。あるいはまた、層は、適切な堆積および硬化方法によって適所に製造することができる。そのようなプラスチック層は、1つまたは多くのバリア機能、例えば、光フィルタリング機能とガス遮断機能を組み合わせることを実行できる。
【0237】
合わせガラス内のポリマー中間層は、割れたガラスの破片が落下/飛散するのを防ぐ一般的な安全対策である。その代わりに、そのような破片は中間層に付着したままである。中間層の追加の利点は防音である-音波はガラス/中間層の界面と中間層自体の内部で散乱される。ゲルベースのEC層は、通常の非EC中間層と同様に、安全機能と防音の機能を備えている。標準の中間層ポリマーであるPVBまたはEVAがECゲルのマトリックスに含まれている場合、安全機能は容易に実装される。しかしながら、他のポリマーは、安全要件に対して良好に機能する場合がある。
【0238】
OTEを使用した曇り止めと凍結防止は、電気化学を防ぐためにDC(または両側にOTEを備えたガラスを使用したDC)ではなく拡散時定数よりも高い周波数でACを使用する。
【0239】
アセンブリ
堅牢で費用効果の高いアセンブリを保証するために、様々なプロセスと方法を使用して、デバイスのコンポーネントを調製し、それらを組み合わせることができる。これらのデバイスは合わせガラスに非常に似ているため(光制御機能を有する中間層を備えているが)、アセンブリ方法は合わせガラス業界で使用されている方法と似ている。
【0240】
現場打ち
ECCをECデバイスに統合する1つの方法は、EC組成物を、その上に電極を有する2つの光学的に透明な基板の間の予め形成された容積内に配置し、続いて組成物を硬化させることである。この方法は、可撓性がない光学的に透明な基板で好ましいが、それに限定されない。この方法は、ガラスの現場打ち液体ラミネートを作製するために使用される、例えば、(UV硬化ポリマーを使用する)AllnexによるUvekolまたは(熱硬化を使用する)GlasslamによるPolylamによるアプローチに似ている。具体的には、このようなアプローチには、次のステップが含まれ得る。(i)両方の基板を洗浄して汚染を除去する。(ii)任意選択で、一方または両方の基板を処理して、それらの表面を活性化する。この文脈での活性化は、ECCによる濡れ性の改善を意味する。活性化は、基板またはその上の電極の表面をコロナ放電にさらすプラズマ処理(大気または不活性ガスプラズマ)、または他の適切な手段によって達成することができる。(iii)モノマー(複数可)および開始剤(複数可)などのポリマー形成成分を含むEC組成物を、2つの基板間に事前に形成された容積内に導入して、基板間にEC組成物を配置する。(iv)2つの基板間に事前に形成された容積内のEC組成物を硬化させる。
【0241】
図6は、本開示の一実施形態に係るECデバイスを組み立てる方法を示している。そのような方法では、第1の光学的に透明な基板(612)(例えば、下部基板)が、その表面613上の基板612の周辺部の実質的周囲にスペーサ/バリア614を配置することによって調製される。第1の光学的に透明な基板は、表面613上にOTE(例示の便宜のために図示せず)を含むことができる。スペーサ614は、基板612に塗布されたECCの漏れを防ぐために基板612に確実に接着することができるガスケットなどの適切な構造とすることができる。スペーサの厚さは、基板612上に形成されるEC層の厚さを画定する。スペーサ614は、ロールから広げられ、ストリップとしてまたはフレームとして加えられ得る。スペーサ614は、典型的には、例えば、0.1~2mmの間(例えば、0.25~0.75mmの間など)の厚さを有する。スペーサ614の他の厚さは、特定の用途に望まれるEC層の所望の厚さに応じて使用することができる。
【0242】
次に、第2の光学的に透明な基板(616)(例えば、上部基板)が、スペーサ614および下部基板612上に配置され、結合が、上部基板616とスペーサ614との間に作製される。第2の光学的に透明な基板は、第1の光学的に透明な基板(615)に面する基板の表面上にOTE(例示の便宜のために図示せず)を含むことができる。組み立てられると、基板612/616およびスペーサ614は、EC組成物621を内部に配置することができる空洞(620)を画定する。この特定のECアセンブリプロセスでは、スペーサガスケット614は、充填ポート618として使用される少なくとも1つの開口部を含むべきである。この開口部は、EC組成物を導入した後、後でシールされるであろう。スペーサガスケット614は、空洞からガスを排出するための少なくとも1つの第2の開口部(図示せず)をさらに含むことができ、これは、EC組成物中の気泡の捕捉を最小限に抑え、回避するのに役立つ。EC組成物を導入する前に、空洞は、EC組成物が空気に過度に曝されるのを防ぐために、任意選択でパージする、および/または不活性ガスで満たすことができる。
【0243】
いくつかの実施形態では、基板612/616およびスペーサ614アセンブリは、空洞内へのECCの流れを助けるために、空洞内へのECCの充填中に0度および90度を超える角度で傾斜される。具体的な最適角度は、ECC粘度、表面の濡れ性、部品取り扱いの利便性を含む要素の組み合わせに依存する。
【0244】
次に、充填ノズル624が充填ポート618に挿入され、ECC供給源(図示せず)に接続される。次に、ノズル624を介してECCを空洞内に分注することにより、空洞が充填される。業界で一般的な様々な分注メカニズムを、例えば、GracoによるSealant Supply Systemとして使用できる。空洞の中心部分から膨らみ、その結果、層の厚さが不均一になる可能性のある過度の静水圧を回避するように注意する必要がある。
【0245】
次に、充填ポート618および任意選択の通気ポートを差し込んで、上部基板と下部基板との間のECCをシールする。傾けると、アセンブリを水平位置に調整できる。あるいはまた、アセンブリを傾けたままにすることもできる。次に、空洞内のEC組成物は、適切な方法(例えば、時間、温度、UV曝露、またはそれらの組み合わせ)によって硬化される。このようにして、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間に配置されたエレクトロクロミック層を形成することができる。基板はまた、他の箇所で説明されているように、電極(複数可)、バスバー(複数可)、不動態化層(複数可)などを含むことができる。
【0246】
現場打ちアプローチの1つの特徴は、2つの基板とスペーサによって形成される空間空洞の充填である。あるいはまた、ECCは、(その表面上にOTEを有するまたは有する)第1の光学的に透明な基板上に配置され、例えば、ECCは、単一の(下部)基板上に分注され、続いて、第1の基板上に配置されたECC上に(その表面にOTEを有するまたは有する)第2の光学的に透明な基板を配置することができる。
図6を参照して上で説明したように、スペーサ/バリアは、組み立てられたときに第1の基板と第2の基板との間の厚さを画定するために、第1の光学的に透明な基板の周辺部の実質的周囲に配置することができる。スペーサ/バリアなどは、第1基板と第2基板の両方に接着し、組み立てられたときに基板間のECCの漏れを防ぐことができる。第1の基板上に配置されたECC上に第2の光学的に透明な基板を配置する前、後、またはその間に、EC組成物を適切な方法(例えば、時間、温度、UV曝露、またはそれらの組み合わせ)によって硬化させることができる。このようにして、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間に配置されたエレクトロクロミック層を形成することができる。基板はまた、他の箇所で説明されているように、電極(複数可)、バスバー(複数可)、不動態化層(複数可)などを含むことができる。
【0247】
(その表面にOTEを有するまたは有さない)第1の光学的に透明な基板上にエレクトロクロミック組成物を配置するために、様々な方法を使用することができる。1つのアプローチは、基板の形をしたシルクスクリーンを使用することである。ECCは、スクリーンの開口部を通して基板に送られる。ECCは、十分に粘性があり、流動しない場合は、スクリーンを取り外して上部基板をその上に配置した後も、ECCは所定の位置に留まるであろう。
【0248】
別の方法は、ECCが分注されているときに、下部基板の領域全体にラスターされる、インクジェットまたは分注ノズルなどの局所的な分注を使用することである。
【0249】
さらに別の代替案は、蒸着業界で一般的なドクターブレードまたはスロットダイ蒸着技術を使用することである。例えばステンレス鋼で作られたステンシルを使用して、そのような堆積を支援し、表面に残るECCの量を制御することができる。
【0250】
ECCが低粘度であり、下部基板を容易に濡らす場合、堆積の1つの方法は、それを下部基板に注ぐことによるものとすることができる。
図7Aは、ECデバイスを製造するために光学的に透明な基板上にECCを配置する1つの方法を示している。この場合、計量された量のECC721は、(その上の表面上に第1の電極を有する、または有さない)第1の光学的に透明な基板716(例えば、下部基板)上に分注ノズル712を使用して分注される。基板716は、水平位置に維持することができる。ECC721は、ダム714または濡れ性が低下した領域715によって作製されたバリアによって制限される下部基板上の領域を覆うように流れる。
【0251】
ダム714は、第1の光学的に透明な基板の周辺部の実質的周囲に配置することができ、基板上に分注されたEC組成物の漏れを防ぐ。このようなダムは、「現場打ち」法についてのセクションで説明されているスペーサ形成の方法と同様に形成することができる。あるいはまた、ダムは、周辺部の周囲に分配され、別のステップでその場で固化/硬化される液体材料からその場で作製することができる。ダム材料は、ダムとして機能するのにちょうど十分に硬化することができ、例えば、基板上に分注されたEC組成物の漏れを防ぐことができる。それでもある程度のコンプライアンスを保持できるため、(その上の表面上にOTEを有するまたは有さない)第2の光学的に透明な基板が分注されたECC上に配置されると、ダムの材料が第2の基板(例えば、上部基板)に付着する。次に、ダム材料を硬化させて、基板間にさらに完全なシールを形成することができる。
【0252】
所望の領域内の第1の基板上に分注されたECCを含む別の方法は、第1の基板の周辺部を修飾することである。
図7Bは、そのような構造を示している。図示されるように、第1の基板(716)の周辺部(715)は、所望の領域内に分注されたECC(721)を含むことができる。周辺部715は、ECCによって濡れないように修飾されることによって、分注されたECCを含有することができる。この場合、ECCを含有するための高架ダムはないが、この機能を実行する表面エネルギーの差がある。
【0253】
所望の量のECCが分注された後、(その上の表面上に第1の電極を有する、または有さない)第2の光学的に透明な基板を分注されたECC上に配置して、第1および第2の基板の間に配置されたエレクトロクロミック組成物を形成することができる。次に、このアセンブリを基板間のECCの硬化にかけることができる。このようにして、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間に配置されたエレクトロクロミック層を形成することができる。基板はまた、他の箇所で説明されているように、電極(複数可)、バスバー(複数可)、不動態化層(複数可)などを含むことができる。
【0254】
光学的に透明な基板間にEC層を形成する別の代替方法は、第1の基板上に最初に分注されたECCを第1の基板上に強制的に広げることによって、第1および第2の光学的に透明な基板と、任意選択でシールとによって画定される空洞を満たすように広がるエレクトロクロミック組成物を分注することを含む。本開示の一態様では、第1と第2の光学的に透明な基板間に配置されたエレクトロクロミック層は、第1の光学的に透明な基板上にある面積を有する計量された量のエレクトロクロミック組成物を分注し、第2の光学的に透明な基板をエレクトロクロミック組成物上に配置し、エレクトロクロミック組成物を第1の光学的に透明な基板上に強制的に広げて、分注されたエレクトロクロミック組成物の面積よりも著しく大きい面積を有するエレクトロクロミック層を形成することによって形成することができる。例えば、EC層は、分注されたEC組成物の面積よりも少なくとも5%、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%など、大きな面積を有することができる。
図8は、そのような方法を示している。
図8に示されるように、(その上の分注された表面上にOTEを有することができる)第1の光学的に透明な基板816上に計量された量のEC組成物(821)を分注するように、ノズル812は構成される。ダムはまた、基板816上にあることができる(図示せず)。この例では、最初に分注されたECC821は、基板816の全領域を覆わない。<0898 >代わりに、エレクトロクロミック組成物が制御された方法で分注されて、例えば、
図8の上面図に示されるように、事前に較正された形状821Pを作製する。分注された形状は、基板816の面積よりも著しく小さい面積を有する。しかしながら、この形状の厚さは、結果として得られるEC層の厚さよりも厚くなる。次に、得られたEC層の所望の被覆率および厚さは、制御された方法で分注されたEC組成物上に第2の光学的に透明な基板(例えば、上部基板)(図示せず)を配置することによって得られる。上部基板の重量、および上部基板と下部基板を結合するために任意選択でクランプによって印加される力(または別のメカニズムによって印加される力)、ならびに分注されたEC組成物の濡れと形状の詳細は、分注されたECCを基板間で均一に広げ、好ましくは空間を満たし、2つの基板によって画定される空洞内に気泡を残さない。このようにして、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間に配置されたエレクトロクロミック層は、分注されたエレクトロクロミック組成物の面積よりも著しく大きい面積を有するように形成することができる。基板はまた、他の箇所で説明されているように、電極(複数可)、バスバー(複数可)、不動態化層(複数可)などを含むことができる。
【0255】
EC層を作製するためのさらに別の方法は、ECプリフォーム層などのスタンドアロンのプリフォーム層としてEC層を製造することである。ECプリフォーム層は、大気圧(1気圧)および室温(すなわち、20℃)での定常状態下で効果的に流れを示さないゲルの形態とすることができる。次に、このような事前に形成されたEC層を他のコンポーネントと統合して、ECデバイスを形成できる。事前に形成されたEC層は、プラスチック業界で一般的なロールツーロール(R2R)製造技術を使用して製造できる。プリフォームEC層は、合わせガラスアセンブリを製造する現在の業界標準と同様のアプローチでガラス基板と統合できる。合わせガラスは通常、2枚のガラスと中間層をスタックとして組み合わせて製造される。中間層は、押し出しまたは他の適切なプロセスによって製造される。スタックはスタンドアロンのコンポーネントから組み立てられ、温度および/または圧力で処理されて、構造的に健全なアセンブリを作製する。ガラス産業で一般的に使用される中間層は、ポリビニルブチル(PVB)またはエチレン酢酸ビニル(EVA)のファミリーに属している。本開示のEC層およびECデバイスは、ECプリフォーム層を使用して同様の方法で形成することができる。
【0256】
ECプリフォームを調製する1つの選択肢は、EC組成物を、ガラス中間層として通常使用されるポリマー(例えば、PVBまたはEVA)と組み合わせて、ガラス中間層とEC組成物の特性を組み合わせた実質的に均質な材料を作製することである。プリフォームは、ポリマーを有するマトリックスを含むEC組成物およびガラス中間層として通常使用されるポリマーの押し出しまたは共押し出しによって調製することができる。ガラス中間層ポリマーは、その後、EC層のゲルマトリックスの一部になることができる。それは、マトリックスの主要なポリマーとすることができるか、またはマトリックスを構成するポリマーブレンドの一部とすることができる。
【0257】
EC層を作製するための別の代替アプローチは、それを多層プリフォーム複合材料として製造することである。そのような多層化された複合材料は、EC層と、1つまたは複数の中間層ポリマーなどの1つまたは複数のポリマーとを同時形成(例えば、共押出し)して、下部フィルム上に配置されたEC層と、任意選択で下部に配置されたプリフォームEC層の上の第2のフィルムとを含む複合材料を調製することによって、調製することができる。形成(例えば、押出し)中に多層プリフォームを均質化する代わりに、均質化ステップを、多層化されたプリフォームが光学的に透明な基板間に配置されるときなど、別個のプロセスステップに延期することができる。このアプローチでは、多層化されたプリフォームの断面は、プリフォーム複合材料の層に応じて、機能および化学組成によって異なる特徴的な領域を有する。例えば、EC機能を担当する領域が少なくとも1つあり、別の領域は、合わせガラスに使用される従来の中間層ポリマーとして多かれ少なかれ機能することができる。プリフォームは、その上に1つまたは複数のポリマー層を備えたEC層を有する多層化された構造とすることができる。例えば、EC層は2つの中間層の間に配置することができる。この配置の利点は、保存可能期間中および組み立て作業中の湿気および酸素からのEC層の保護である。
【0258】
多層化されたECプリフォームの特徴的な領域は、温度および/または圧力に曝されると、ラミネーションプロセス中に実質的に均質化することができる。例えば、多層化されたECプリフォーム複合材料の層がEVA層である場合、ラミネーションは真空中のある温度で起こるが、追加の圧力はかからない(オートクレーブまたは機械式プレスは含まれない)。
【0259】
多層化されたECプリフォーム複合材料の1つの特徴的な機能は、保管および組み立て作業中に役立ち、その後、ラミネーションプロセス中に均質化することができる、多層化されたECプリフォームの外部領域(例えば、ポリマー層)によって酸素と水の保護を利用できることである。
【0260】
OTEを使用したフレキシブル基板上へのR2Rの堆積。ECデバイスを製造するための別のアプローチは、堆積されたEC層に面するOTEを有するフレキシブル基板上に連続的にEC層を堆積することである。このような堆積は、プラスチックフィルム業界で一般的に使用されているR2R機器を使用して実行できる。堆積は、スロットダイ押出機または流体状態からキャスティングする他の適切な手段を使用することによって実施することができる。このようなR2R法を使用して完全なECデバイスを作製するには、複数の方法があり、R2R機で作製されるフィルムの構造によって区別できる。
【0261】
図9は、OTEが堆積されたEC層に面している光学的に透明な基板上に連続的にEC層を堆積することを概略的に示している。
図9に示されるように、EC層921は、分注ヘッド914を使用して、堆積されたEC層に面するOTE(図示せず)を有する第1の光学的に透明な基板912上に堆積される。その上にOTEを有する基板912は、フィルムの形態の可撓性の光学的に透明な基板とすることができる。基板912は、ローラー918aおよび918bによって前進される。そのようなプロセスによって、フィルム上に配置された層としてエレクトロクロミック組成物を含む複合体を連続的に形成することができる。この方法はまた、フィルム上にOTEなしのフィルム上に配置された層としてエレクトロクロミック組成物の複合体を調製するために使用することができる。このような複合材料は、ECデバイスの製造におけるスタンドアロンコンポーネントとして使用できる。
【0262】
次に、EC層に面するOTEを有する光学的に透明な基板上に配置されたEC層を含む複合体を使用して、ECデバイス用の可変透過率層を形成することができる。
図10Aに示されるように、ECデバイス用の可変透過率層10200Aは、OTE層とEC層を有する2つの光学的に透明な基板を組み合わせることによって調製することができる。
図10Aに示されるように、その上の表面上にOTE層10120Aを有する第1の光学的に透明な基板10100AおよびOTE層10120A上のEC層10210Aは、その上の表面上にOTE層10120Bを有する第2の光学的に透明な基板10100BおよびOTE層10120B上のEC層10210Bと組み合わせることができる。第1および第2の基板およびそれらの上の層は、ラミネートする、共に圧延するなどによって組み合わせることができる。この場合、基板、OTE、およびEC層は、同じで対称的であり、したがって、結果として得られる可変透過率層10200AのEC層10210ABは、第1の基板上のEC層10210Aの厚さまたは第2の基板上のEC層10210Bの厚さのいずれかの2倍である厚さを有する。
【0263】
別の可能性として、
図10Bは、ECデバイス用の可変透過率層10200Bの構成を示している。このような可変透過率層は、その上の表面上にOTE層10120とOTE層1012上にEC層10210とを有する第1の光学的に透明な基板10100と、その上にOTE層10320を有する第2の光学的に透明な基板10300とを組み合わせて作製することができる。第1および第2の基板およびそれらの上の層は、ラミネートする、共に圧延するなどによって組み合わせることができる。
【0264】
図10Aおよび
図10Bは、可撓性フィルムなどの光学的に透明なフィルムとすることができる基板を示している。しかしながら、基板はガラスなどの高剛性の基板とすることができる。
図10Aに示される可変透過率層の形成のさらに別の可能性は、第1の基板とは異なる第2の基板、または第1の基板のOTEとは異なる第2のOTEを使用することである。例えば、第1の基板はプラスチック材料とすることができ、一方、第2の基板は異なるプラスチック材料、またはより厚いプラスチック材料またはガラスとすることができる。このような構成により、特定の用途に役立つ可能性のある非対称ECデバイスが作製される。
【0265】
上記のように、特定の用途では、前述のようにECプリフォーム層の形態のスタンドアロンEC層を作製することが有益な場合がある。このようなECプリフォーム層は、例えば、R2R機で製造されたロールの形態で製造することができる。このようなECプリフォーム層をどのように保管し、取り扱い、デバイスに組み立てる必要があるかについては、ある特定の考慮事項がある。
【0266】
ECCの一部の変数は、湿気および/または酸素に敏感である。したがって、保管と取り扱いは、好ましくは湿気および空気のない環境で行う必要がある。EC層を保護する1つの方法は、EC層を、例えば、シリコーン処理された薄いPETフィルムのような保護ライナー上に押し出すことである。このようなライナーは、湿気とガスのバリアを提供することと、ロールに巻かれている間にEC層がそれ自体に付着するのを防ぐことの2つの目的を果たすことができる。次に、ロールは、空気および湿気に対して実質的に不透過性であるバッグ内にシールすることができる。シールする前に、バッグをパージし、不活性ガス、例えばアルゴンで満たすことができる。あるいはまた、バッグを排気してシールすることもできる。
【0267】
本開示の一態様では、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間に配置されたエレクトロクロミック層は、ECデバイスを製造するためのECプリフォーム層を使用して調製することができる。組み立て中、フィルム上(例えば、ライナー上)のECプリフォーム層は、ロールから巻き戻され、ガラス、厚いプラスチック、またはフィルムとすることができる第1の光学的に透明な基板上に配置することができる。ECプリフォーム層の粘着性は、ECプリフォーム層の基板への初期接着を提供する。その後、ライナーをECプリフォーム層から取り外すことができる。次に、第2の光学的に透明な基板を、第1の基板上に配置されたECプリフォーム層上に配置することができる。このようにして、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間に配置されたエレクトロクロミック層を形成することができる。基板はまた、他の箇所で説明されているように、電極(複数可)、バスバー(複数可)、不動態化層(複数可)などを含むことができる。次に、ECプリフォーム層および基板アセンブリは、必要に応じて、時間、温度、圧力、UV曝露、または他の化学的または物理的薬剤のいずれか1つまたは複数によって硬化させることができる。特定の硬化レシピは、ECプリフォーム層で使用される化学物質のタイプに依存する。組み立て作業中のECプリフォーム層の空気への曝露を最小限に抑えるために、不活性雰囲気で組み立て作業を行うことが好ましい。例えば、基板がECプリフォーム層と組み合わされる領域は、N2またはArによる連続的なパージ下にあるとよい。
【0268】
基板/ECプリフォーム層/基板のスタックを組み立てる典型的な手順は、ECプリフォーム層を下部の光学的に透明な基板上に配置することを含む。この基板は、その上に配置されたECプリフォーム層に面する表面上に、OTEおよび1つまたは複数のバスバーをすでに有することができる。ECプリフォーム層のフットプリントを基板のフットプリント以上にすると、より便利になる可能性がある。この場合、第2の基板がスタックに追加された後、ECプリフォーム層の横方向の過剰部分は、スタックの周辺部の周囲でトリミングすることができる。結果として生じるECプリフォーム層のフットプリントは、バスバーを含むOTEを備えた基板のフットプリントを実質的にカバーする必要がある。さらに、導電性ECプリフォーム層から電気的に絶縁されたバスバーを有することが好ましい。そうでなければ、バスバーが適切に絶縁されていない場合、
図5Aおよび
図5Bを参照して説明したように、バスバーからEC層を介して電気的短絡が発生する可能性、および/またはEC層によるバスバーの腐食が発生する可能性がある。
【0269】
エレクトロクロミックデバイスは、電極間のエレクトロクロミック層または可変透過率層上の着色の分布が、外部回路接続の最も近い点からの距離に応じて特定の法則に従って均一から逸脱する、ハローまたはアイリス効果を示すことが知られている。対称接続の場合、デバイスのEC層の中心は、EC層の周辺部と比較して、異なる色付けまたは色消しのダイナミクス(例えば、EC層の中心領域は、1つの光透過状態から別の1つの状態への遷移に遅れをとる)を有する可能性がある。アイリス効果は通常、EC層の面積が大きいほど、平均電流経路が長くなるため、顕著になる。アイリス効果は顧客の観点からは望ましくなく、通常、メーカーはそれを最小化または排除しようと努めている。
【0270】
アイリス効果の起源は、電流経路に沿ったオーム降下によって引き起こされる表面導電層の電位の横方向の分布によって引き起こされると考えられている。電気化学反応の速度は、EC層と電極の間の界面の異なる点で異なり、より高い過電圧のゾーンでより高くなる。電極の外部回路への接続の幾何学的形状は、電位分布にとって重要である。アイリス効果は、より集中的な動作モードでより顕著になる。全領域にわたる試薬との律速界面の枯渇に対応する最も集中的な動作モードは、可変透明層全体にわたる電流密度が等しいことによる放物線状(またはそれに近い)電位分布によって特徴付けられる。これは、デバイスで使用されるOTEの表面導電率に対して電流密度が高すぎる場合、周辺部と中心部の着色強度の差がECデバイスのダイナミックレンジ全体に達する可能性があることを意味する。中間動作モードでは、電流が低いため、アイリス効果はそれほど顕著ではない。
【0271】
本開示の一態様では、アイリス効果を軽減する1つの方法は、横方向に異方性の電気的特性を有する可変透過率層(VTL)を使用することである。そのような異方性電気特性は、横方向に異方性電気特性を有するVTLの1つまたは複数の電極、および/またはVTLを画定する第1の電極と第2の電極との間の横方向に異方性電気特性を有するEC層の結果であり得る。
【0272】
例えば、アイリス効果を軽減する1つの方法は、ECデバイスのVTLのEC組成物または層と接触している1つまたは複数の電極(例えば、OTE)のシート抵抗を空間的に調節することである。例えば、VTLは、OTEが、OTEの周辺部の周囲でより高く、OTEの中心領域に向かってより低いシート抵抗を有するなど、空間的に不均一な抵抗を有するOTEを含むことができる。
【0273】
アイリス効果を軽減するさらに別の方法は、ECデバイスのEC層の平面内の電気化学的に活性なEC材料の電気抵抗率および/または濃度を空間的に調節することである。
図10Cは、そのようなEC層を示している。図に示すように、EC層は、層の異なる領域で実質的に異なる電気的特性を有する。特に、EC層は、周辺領域10112よりも相対的に高い導電率10110を有する中心領域を有する。このような異方性は、低い試薬濃度によって引き起こされる活量の低下によって、高い過電圧のゾーンでの反応速度の増加を補償する。具体的には、EC層の中心領域の濃度が周辺部よりも高い場合、中心領域の反応速度は周辺部分とは異なり、より速くなるであろう。周辺領域と中心領域との間の濃度勾配を調整することで、アイリス効果を抑制または排除することができる。横方向のこのような濃度勾配は、分注のプロセス中にEC層の化学組成を変えることによって作製することができる。あるいはまた、複数の分注ノズルを使用して、基板の異なる領域に異なる組成のECCを分注して、横方向に異なる濃度ゾーンを有するEC層を形成することができる。抵抗率および/または濃度の空間的調節は、少なくとも2つの異なる領域を用いて段階的に達成することができ、デバイスの周辺部に近いと導電率が低く、中心に向かうと導電率が高くなる。あるいはまた、そのような変化は、導電率が周辺部から中心に向かって多かれ少なかれ連続的に上昇する漸進的な形態で実施してもよい。
【0274】
このような方法が長期的な動作で最も効果的であるためには、EC材料の横方向の拡散を最小限に抑えて、濃度の平衡化とアイリス緩和能力の消失を回避する必要があり得る。このような拡散は、ポリマーマトリックス内の細孔を介して、ゲルの形態のEC層の液相で発生する可能性がある。横方向の拡散を最小化または防止する1つの方法は、マトリックスで非多孔質の横方向のバリアを作製することである。拡散はさらに、EC層のいずれかの側の基板の平面に垂直な方向に発生する可能性があるが、EC材料の濃度が高い領域と低い領域では、混合が実質的に妨げられることはない。このアプローチは、異方性拡散特性を備えた-法線方向への拡散が相対的に妨げられず、横方向への拡散が抑制されるゲルを展開することによって一般化することができる。また、異方性ゲルにより、法線方向への全体的な拡散が増加し、デバイスのスイッチング速度が向上する可能性がある。
【0275】
このような異方性は、異方性アセンブリプロセスを使用する(例えば、圧力方向を使用するか、または基板間のEC層の硬化中に静電界または磁界を追加するか、またはこれらの要素を組み合わせ、このような要素に応答するポリマーマトリックスを実装する)ことで作製できる。
【0276】
アイリス効果を抑制するために使用できるもう1つの方法は、イオン伝導度が比較的低い、いわゆる弱く支持されたマトリックスを使用することである。電気化学反応の速度が、表面電位分布よりもマトリックスのイオン伝導度(この場合は均一で電位に依存しない)に依存しているため、この効果が得られる。したがって、電気化学反応の速度は、Frumkin効果のために負のフィードバックを有する、つまり、駆動過電圧は、OHPでの反応生成物濃度の増加とともに減少する。この方法の欠点は、そのようなデバイスのPTR値が、マトリックスが強力に支持されている同様のデバイスよりも大幅に低くなる可能性があることである。
【0277】
不均一なOTEを利用するいくつかの方法を使用して、アイリス効果を軽減することができる。電極は、異なる表面抵抗、電荷キャリアの濃度、仕事関数、キャリア移動度などを有するゾーンを形成するために、製造または処理(照射、オゾン/コロナ、化学/溶液、熱など)することができる。例えば、陽極に関しては、高い仕事関数ゾーンは、特定のエレクトロクロミック材料が使用されている場合、低い仕事関数のものよりも速い反応速度を示す。表面抵抗のプロファイリングは、過渡電流の急激な変化を滑らかにする可能性があるが、定常状態の動作にはほとんど影響しない。
【0278】
ゲル電解質が使用されるほとんどの場合、イオン移動速度制限は、律速でない電極上で維持されるため、電極電流密度の分布は、律速電極の分布に従い、より広いデバイスでより顕著になる。これは、電極の変更が一般的なケースで考慮される場合、律速電極の変更で十分である可能性があることを意味する。
【0279】
タイプI-IIIのデバイスの場合、律速電極は、マトリックス特性および/または電気化学的に活性な試薬の濃度の変更によって切り替えることができる。
【0280】
電気化学反応の横方向の異方性を作製する別の方法は、タイプIIIデバイスにおいてセパレータ膜の使用を活用することである。膜の透過性がECデバイスの領域全体で均一でない場合、そのような膜は異方性光透過プロセスを引き起こす可能性がある。このような膜の透過性が高い領域では、他のすべてのパラメータは同じであるならば、透過性の低い領域よりもプロセスがより速く起こる(つまり、スイッチング速度が速くなる)。この効果は、電圧の横方向の勾配によって駆動されるアイリス効果を最小限に抑えるために利用できる。具体的には、膜が、膜の周辺部またはエッジに近い領域と比較して中心領域でより高い透過性を有する場合、色種の空間勾配は減少するか、または排除さえされるであろう。
【0281】
ECデバイスのEC層を横切る透過性の変化は、漸進的とすることができるか、または2つ以上の段階を伴う段階的とすることができる。例えば、EC層は、膜の横方向にわたって異なる透過性を有する膜を含むことができる。そのような膜は、透過性の同心パターンで事前に製造することができ、膜の周辺領域と比較して中心領域においてより高い透過性を有する。このような事前に製造された不均一な膜は、組み立て中にデバイスの中心領域と位置合わせする必要がある。このような事前に製造された膜のアプローチの利点は、デバイスアセンブリのプロセスを膜を不均一にするプロセスから切り離すことである。そのような事前製造アプローチの欠点は、異なるサイズのデバイスが異なるサイズの、そして異なるパターンの膜を必要とするという事実である。
【0282】
あるいはまた、膜のパターン化をデバイスごとに特別に作製してもよい。例えば、膜の透過性は、処理ステップによって、例えば、UV、またはIRへの曝露、または別の外部効果、またはそのような効果の組み合わせによって変化し得る。曝露が膜の領域全体で変動する場合、結果として生じる透過性の不均一性は、処理ステップの空間的不均一性の痕跡を有するであろう。例えば、処理ステップにUV光が含まれ、露光量が多い領域で膜の透過性が高い場合は、膜の中心領域に向かって露光量を増やし、エッジに近い方の露光量を少なくする必要がある。そのような不均一な露光は、静止した不均一な光源を使用することによって、または膜を横切って光源をラスタライズし、デバイスの領域全体で露光時間および/または強度を変化させることによって達成することができる。膜のこのような処理は、スタンドアロンの膜上で実行することができるか、または処理ステップがデバイスの他の部分に悪影響を与えない場合に限り、膜をデバイス上に配置した後に実行することもできる。
【0283】
あるいはまた、透過性は、膜の異なる領域で異なる厚さの膜を使用することによって調節することができる。厚さの変化は、漸進的(例えば、同心状)または段階的とすることができる。段階的な変化は、デバイスの中心領域に特定の透過性を備えた単層膜と、エッジに近い二重層膜(厚さを2倍にして透過性を低下させる)を使用することによって達成できる。
【0284】
デバイスとシステムの動作
ECデバイスの制御方法は、可変透過率層の全領域にわたって透過率特性を効率的かつ安全に制御することを目的としている。制御アルゴリズムは、定常状態と過渡状態の両方で、可変透過率層の全領域にわたって十分に均一な透過率特性を提供する必要がある。異なるタイプのECデバイスに対する制御アルゴリズムは根本的に異なる。
【0285】
物理的原理
ECデバイスの動作状態を変更するプロセスは、電極と電解質の界面で電気的バイアスを変化させることによって開始される。界面にバイアスを掛けて平衡から遠ざけると、電極と電解質の間で電子移動が起こり、電解質の酸化還元フェルミ準位が変化する。電極のフェルミ準位は平衡状態で電解質レドックスフェルミ準位に近づくため、ECデバイスの状態は、同じEC層と接触させた2つの異なる電極(陽極/陰極または陽極/リファレンスまたは陰極/リファレンス)のフェルミ準位の差を測定する)、つまり、ECデバイスの開回路電圧(Voc)を測定することによって決定できる。
【0286】
反対にバイアスを掛けられた光学的に透明な電極を備えた平面セルの場合、ECデバイスの動作状態を変更する制御信号は、電極スタックの表面導電層に直接、または可変透明層アセンブリの境界/エッジで1つまたは複数の補助層(はんだ、導電性接着剤など)を介して印加される。可変透明層の電極(複数可)の1つの機能を備えたECデバイスの場合、制御信号は、電極スタックの表面導電層と分離された対電極との間に印加される。
【0287】
ECデバイスの特徴的な特性は、ヒステリシスである。特定の電気刺激が印加された後、種の活量の分布、電流密度、電位分布、およびその他のパラメータは、すぐに安定した値をとることはないが、過渡的な振る舞いを示す。値と分布は時間とともに変化し、ある時点で定常状態の値に達し、定常状態の値は、ゼロに等しい第1導関数値をもち、界面の電気的条件に固有のものとして特徴付けられる。
【0288】
単安定デバイス(タイプI)
ヒステリシスがあるため、タイプIのECデバイスが定常状態に到達する経路は、遷移中に電圧がどのように印加されるかに大きく依存する。電気化学反応速度論の法則(最も単純なモデルとしてのButler-Volmer/Frumkin方程式)によれば、速度は反応物の界面濃度に依存する。電子移動の反応速度は、一般的に物質移動速度よりもはるかに速いため、プロセス全体が物質移動制御されていると見なされる。タイプIのデバイスは主に非流体ゲル電解質を利用するため、対流は無視でき、プロセスは拡散/泳動制御される。デバイス動作の2つの名目上のレジームを区別することは有用である。第1のレジームは、所望の定常状態への経路に沿ったすべての瞬間で、活量プロファイルが定常状態に近づくのに十分に速いと想定している(第1の時間微分値≒0)。第2のレジームでは、拡散は遅く、活量プロファイルは定常状態に近くない、つまり、第1の時間微分値は、定常状態に達するまでゼロとは大きく異なる。
【0289】
ECデバイスのI-V曲線の形状は、イオン伝導体と電子伝導体の両方で、電荷移動シーケンス全体の中で最も遅いステップによって決定される。したがって、拡散支配が想定される場合、I-V曲線の形状は、対応する電極への試薬の最も遅い物質移動の速度によって決定される。したがって、1つの電極-電解質界面のみが動作中に律速となる。
【0290】
2つのレドックス対を備えた理想的な(電極にオーム降下がない)タイプIのECデバイスの定常状態レジームのI-V曲線は、律速界面特性の曲線に従い、「双曲線接線」形状を有する。この曲線は、偶発的に3つの領域:ゼロ電流の領域、線形I-V依存性の領域、およびセル電流が一定であり、印加される電圧に依存しない空乏領域に細分化される場合がある。ゼロ電流の領域内では、過電圧が低いため、印加される電圧は測定可能な電気化学反応速度を生成するには不十分であるが、線形領域内では、律速ステップの試薬の活量の界面定常状態勾配がそうであるため、電流はほぼ線形に印加される電圧に依存する。枯渇領域内での動作には、試薬種の(律速界面での)ほぼゼロの界面の定常状態濃度(試薬枯渇)が伴うため、過電圧が増加しても反応速度とセル電流は増加できない。
【0291】
非定常状態の動作が実行される場合、物質移動の速度が比較的遅いと、試薬の界面濃度(または一般的な場合は活量)が急速に低下し、その界面勾配が増加する。枯渇が発生すると、界面勾配が最も高くなり、この点を超えると、定常状態に達するまで減少する。この挙動により、I-V曲線に電流ピークの出現をもたらす。過渡状態の間、試薬の活量勾配は定常状態(枯渇時)で可能な最高値よりも高いため、ピーク電流は定常状態レジームよりも高くなる。
【0292】
有限サイズの可変透明層を考慮すると、表面導電層にオーム降下が発生する。したがって、可変透明層の任意の点での電極の過電圧は、印加されるセル電圧だけでなく、電流経路に沿った積分オーム降下にも依存する。したがって、電気化学反応の速度は、可変透明層の異なる点で異なる可能性がある。正味の陰極電流と陽極電流のみが等しくなければならないため、可変透明層の電極の各々にわたる電流分布が異なり、透過率の不均一性を引き起こす陽極および陰極反応の生成物の不均一な分布につながる可能性がある。制御アルゴリズムの目標は、そのダイナミックレンジ内で可変透明層の透過率特性を調整できるようにし、可変透明層の全領域にわたって必要な程度の光学特性の均一性を提供することである。本明細書の他の箇所で論じられるように、有限サイズの可変透過率層の小さな領域の可視光透過率(VLT)は、EC層内の光伝搬経路に沿った着色溶質の積分濃度に依存する。
【0293】
第2の非制限電極での反応速度の分布は、Frumkin効果のために制限電極に従う。実際、非制限電極上で反応する種の拡散速度はより高く、追加の速度制御が存在しない場合、非制限電極上の電流の分布は、オーム降下が最小になるようになるであろう。これは、外部回路接続点に最も近い点から漏れる電流が可能な限り高くなることを意味する。電流は拡散速度によって制限されるため、最大比定常電流は界面の枯渇によって制限される。したがって、空乏状態で動作することができる界面の部分は、そのように動作し、第2の電極電流の不均一な分布を引き起こす。しかしながら、この場合、律速電極全体に電流が分布するため、イオン移動経路が長すぎる。ゲル電解質の実際のイオン移動速度を仮定すると、このような状況では、対イオン流束が不十分であり、過剰な電荷が第2の界面の活性部分に現れ、したがってOHP電位値は、対応するイオン移動速度に対する電流密度が最小になるような値に増加する(負のフィードバック)。したがって、非制限界面の速度制御の特性は、イオン移動制御として説明することができる。
【0294】
したがって、さらなる議論では、律速界面の動作モードはレジームを決定するものと見なされ、有限サイズのEC層領域全体を、内部にオーム降下が存在しない直列-並列接続された別個の異なる小さいサイズのECデバイスに偶発的に細分化することができる。アルゴリズムの説明は、主にこの仮定に基づいている。明確にするために、I-V曲線は、印加電圧に関してさらに考慮されるが、律速界面の過電圧に関しては考慮されない。
【0295】
簡単にするために、以下の説明では長方形のデバイスを想定している。ECデバイス接続の最も効率的な方法は、両方の電極の周辺部に電位を印加することを意味する。このようなデバイスでは、オーム降下は長方形の長辺に沿って高くなるため、印加される電圧、したがってデバイスの状態の効率的な推定は、短辺に沿った方向で行われる。システムを実質的に一次元に平坦化するために、駆動電圧はECデバイスの長辺にのみ印加されると考えることができる。この対称的な接続は、電圧と電流の鏡面化された分布を示し、両方の電極が片側に接続されている2つの鏡面化されたハーフデバイスとして分析できる。
【0296】
もう1つは、対角接続も考えられる。各々の電極は、片側のみで接続されていることを前提としている。例えば、上の方は左側で接続され、下の方は右側で接続されている。この接続は、より高いオーム降下を示すため、エネルギー効率が良くない。
【0297】
本明細書の他の箇所で論じられるように、界面の定常I-V特性は、界面の領域が3つのモードで動作し得ることを示すため、特定の可変透明層は、層の厚さに沿って異なるモードで同時に動作する領域を含むことができる。次の組み合わせが可能である。
【0298】
枯渇モード
枯渇モードおよび線形モード
すべての線形モード
枯渇モード、線形モード、およびゼロ電流モード
線形モードおよびゼロ電流モード
すべてゼロ電流モード
【0299】
一部がゼロ電流モード、一部が枯渇モードであるが、線形モードはないという実際的な状況はない。言い換えると、線形I-Vモードの層の一部は、常にゼロ電流モードと枯渇モードを分離する。
【0300】
第1の動作モードは、可能な最大の定常セル電流と、各々の電極の全領域にわたる界面電荷移動速度の同等性に対応する。これは、電気化学反応の速度が可変透明層のすべての領域にわたって一定であり、したがって電気化学反応生成物の分布が、電極から等距離にあるEC層内の各々の平面にわたって均一であることを意味する。これにより、ECデバイスの観察者によって知覚される色およびVLTもまた、光の入射角および観察の角度の各々の対に対して均一である。しかしながら、この動作モードでは、OTEおよびその他のシステム要素のオーム降下と、バスバーから最も離れた点でも空乏ゾーンにある律速電極の過電圧が必要なため、すべての場所での過電圧は、最も遠い点の過電圧よりも高くなるだろう。定常状態の電流密度と表面導電層のシート抵抗に応じて、印加される制御電圧の最小値が非常に高くなる可能性があるため、可変透明層の一部の領域の過電圧は、様々な致命的なプロセスが発生するのに十分であり、ECデバイスの誤動作および/または破壊につながる。したがって、このモードで動作するには、すべての枯渇モードで動作する可変透明層のすべての点で過電圧が安全値を超えないように、可変透明層が界面電流密度と一致する表面導電層を備えている必要がある。すべての枯渇モードでの動作は、陽極と陰極の表面導電層の間に定電圧を印加することによって実現することができる。
【0301】
最後の、すべてゼロ電流モードは、EC層内に電流と溶質フラックスがないことを特徴としている。前述のように、単安定デバイスでは、このモードは最大透過率の状態に対応する。
【0302】
定常動作の組み合わせモードについて共に説明する。前に述べたように、EC層、陽極、陰極を含む可変透明層の小片では、定常状態でのVLT値は、着色された溶質の形成と消費の速度に依存し、これらは濃度勾配によって相互依存している。したがって、電流(したがって、着色された溶質の形成速度)が空乏値よりも低い場合、透過率は増加する。したがって、可変透明層のオーム降下が一部の領域で過電圧が枯渇に必要な値よりも低くなる場合、そのような領域のVLTは最小値よりも高くなるだろう。可変透明層のどこかで過電圧がゼロ電流ゾーンにある場合、この領域はオフ状態に対応する最大VLT値を有するだろう。
【0303】
前述のように、定常状態の動作モードでは、完全に透明または完全に暗くなった状態でのみ透過率の空間的均一性が可能になる。すべての中間定常状態は、透過率の不均一性を示すが、中間状態では総電流とオーム降下が非ゼロ電流の定常状態よりも低いため、観察者には気付かない場合がある。
【0304】
定常モードで動作している場合、印加電圧と合計電流は、ECデバイスの状態を推測するために使用できる十分なパラメータである。
【0305】
過渡モード動作
ECデバイスを状態間で切り替える場合は、印加される制御信号も変更される。電圧変動の速度が定常状態の限界を超える場合(界面の挙動に関しては、ECデバイス動作の定常モードと混同しないこと)、ヒステリシス効果が発生する。実際の用途では、臨界電圧変動速度が非常に低いため、非定常レジームの使用を回避することは不可能である。したがって、有限サイズの可変透明層に印加される制御信号の電圧変動の速度が臨界値を超えると、非定常電流-電圧特性に従って高い突入電流が漏れる。最も高い過電圧は、制御信号の印加点に隣接するゾーン、つまり電極スタックの境界/エッジに近いゾーンで発生する。これらのゾーンでの高い界面電流は、表面導電層でのオーム降下の増加を引き起こし、したがって、制御信号の印加点からより離れたゾーンでの過電圧を(定常状態と比較して)低下させる。それにより、印加された制御信号の電圧変化の速度が速すぎる場合、過渡時に可変透明層の透過率の激しい不均一性が発生する可能性がある。しかしながら、このような過渡現象は定常状態で終了するため、説明されている不均一性は一時的なものである。
【0306】
インターバル(多相)動作
低速ではあるがかなり均一な定常レジームと高速であるが不均一な過渡レジームの切り替えの間のトレードオフは、ECデバイスの実際の透過率、人間の目の感度、および周囲照度に応じたレジームの漸進的な変化である。完全に透明な定常状態から完全に暗くなった状態まで、ダイナミックレンジ全体を切り替えることを考える。開始時には、透過光による照度が最も高く、人間の目の感度は、透過率の不均一性が低い場合でも十分に認識できる。一方、完全に放電されたECデバイスはインピーダンスが最小であるため、突入電流が相対的に高くなり、アイリス効果が増加するだろう。したがって、初期ステップでは、人間の目がそれほど敏感でなく、起こりうる突入電流がそれほど高くない値に透過率が達するまで、電圧変動の速度は定常レジームに近くなる。それにもかかわらず、中間状態では、定常モードでさえ、特定の最小の透過率の(上記の)不均一性がある。ECデバイスが透過率の中間レベルで動作し、不均一性が最小限に抑えられるようにするために、開回路挙動の機能が使用される。
【0307】
ECデバイスが中間レベルの透過率で定常モードにおいて動作し、その後開回路になった場合、横方向の物質移動と電極上(上記を参照)の電位調整のプロセスにより、不均一性が減少する。したがって、ECデバイスは、透過率の変動が弱いという条件で、一連のアクティブなフェーズおよび開回路(緩和)フェーズによって制御され、アイリスなどの透過不均一性アーチファクトを可能にすることができる。緩和状態のもう1つの重要な機能は、Vocを測定できるため、ECデバイスの実際の固有状態を判定できることである。緩和フェーズの終わりにVocを測定すると、可変透明層全体の透明状態を画定するために使用できる平均値が得られる。Voc値は、光学特性を観察することなくECデバイスの透明状態を明確に判定できるため、自動透過率制御システムのフィードバック信号として使用できる。
【0308】
図11は、本開示の一実施形態に係る、ECデバイスを制御するための制御アルゴリズムを示すフローチャートである。アルゴリズムの非限定的な目標は、Vocを所望の値に保つことである。この目的のためにPIDコントローラが使用される。フィードバック値は開回路状態でのみ取得可能であり、同時に充電信号を印加することはできないため、アルゴリズムは少なくとも2つの周期的なスイッチングフェーズ(充電とフィードバック)を意味する必要がある。
【0309】
PIDサイクルは、初期フィードバック値が存在する場合にのみ開始できる。開回路状態で発生するプロセスは、電極全体の電位分布を調整するため、Voc(PV)のすべての測定は、S122で制御されるECデバイスのすべての形状および化学組成に対して具体的に計算された、S102での特定のタイムアウト後、S104で実行される。設定値SVは、S132での所望の動作モードに従って自動的に計算される。SVは現在のPVと比較され、S106で誤差値が取得され、次にPID係数S124と以前に取得されたデータを使用してS108でP、I、およびD値が計算される。P、I、およびDの値が計算された後、アルゴリズムはS110での充電曲線の形状を生成する。このステップは、アイリス効果を減らし、現在の状態から所望の状態への最良のルートを適応的に計算するために必要である。充電シーケンスには、過電圧制御による定電流(定電流)、過電流制御による定電圧(定電位)、電流関数(I(t、…))、および電圧関数(V(t、…))のステップが含まれ得る。電流制御ステップ中に、印加された電圧を測定し、上記の物理化学的定数と比較して、デバイスが定常状態にどれだけ近いかを見出すことができる。この動作モードでは、緩和が必要ない場合(例えば、できるだけ早く完全に暗くなった状態に切り替える場合)、タイムアウト期間をゼロに設定できる。遷移中の主な目標は、所望の遷移を実行するために可能な限り最小限の時間をかけて、アイリス効果につながる突入電流を抑制することである。例えば、完全に放電された状態から完全に暗くなった状態への遷移が望まれる場合、アルゴリズムは、最初は非常に低いが増加する電流から開始し、次に定電圧に切り替え、これは、デバイスをすべて枯渇モードに維持するための最も便利な方法である。逆に、中間の色合いの状態が必要な場合、中間の定常状態の透過率が不均一であるため、アルゴリズムは、充電電圧曲線の特定の形状とタイムアウト期間の組み合わせを使用して、透過率の不均一性が感知できないデバイスの動的挙動を得る。
【0310】
一般的に、制御アルゴリズムの目標は、用途と展開の詳細に応じて異なる。人々が内部空間を占める用途(例えば、建物、車両、飛行機)では、2つの明確に異なる目標は次の通りである。
(a)空間占有者に対する照明の快適さを改善する。(b)建物の熱負荷を最適化して、HVAC CAPEXと運用コストを削減する。
【0311】
地理の関数としての化学
占有者の照明の快適さは、建物の地理的な場所とはほとんど関係なく、主に人間の生理機能によって決まる。しかしながら、熱負荷の最適化は、建物の場所の関数として大きく変動する。
【0312】
暑い気候では、建物の熱負荷を最小限に抑え、それによって建物の冷房システムへの負荷を減らすことが有益である。したがって、スペクトルのIR部分の透過を制限するEC化学物質が推奨される。
【0313】
寒い気候では、熱負荷を最大化し、それによって建物の暖房システムへの負荷を減らすことが好ましい。このような用途では、IRに熱エネルギーのかなりの部分が含まれているため、IR透過に影響を与えないEC化学物質が推奨される。
【0314】
地理的条件の関数としての化学的性質の変化に加えて、窓アセンブリの他の要素は、場所の関数として熱負荷を最適化するために調整する必要がある。このような要素には、ガラス上のlow-eコーティングの有無、スペクトル透過率を修飾する特殊フィルムの追加、または他のスペクトル制御機能の実装が含まれる。
【0315】
エネルギー効率対照明制御
システムがエネルギー効率モードで動作している場合、主要な最適化パラメータは、建物(または車両)の合計エネルギー消費量である。制御システムは、窓の光の透過制御、HVAC、および室内照明に使用されるエネルギーを含む、建物の総エネルギー消費量を監視する。次に、システムはこれら3つの要素の動作を最適化して、建物内の最小限の許容条件(例えば、内部温度が特定の境界を上回る、または下回ることを許容しない)を維持しながら、総エネルギーを最小化する。
【0316】
システムが照明制御モードで動作している場合、主要な最適化パラメータは内部空間の照明の品質である。このパラメータは、占有空間に配置された輝度センサ(複数可)から導出できる。統合制御パラメータを提供する単一のセンサが存在する場合もあれば、空間全体に分散されてローカライズされた制御パラメータを生成する複数のセンサが存在する場合もある。このようなローカライズされた制御点のパフォーマンスは、個々のユーザーが照明制御の設定を調整することでさらにパーソナライズできる。
【0317】
制御システムとそれによって制御されるEC窓の挙動は、エネルギー効率モードと照明制御モードの間で大幅に異なる可能性があることに注意することが重要である。例えば、温暖な気候の晴れた日にエネルギー効率モードで動作している建物の内部は、占有者にとって暗すぎたり暖かすぎたりする可能性がある。
【0318】
建物
本明細書の他の箇所で説明されているように、制御目標によって区別される建物に対して、エネルギー効率と照明制御という2つの明確に異なるモードが存在する可能性がある。カレンダーの観点から、建物は日時に応じてこれらのモードのいずれかで動作する。例えば、勤務時間中、例えば午前8時から午後6時の間、建物は照明制御モードになるだろう。その日の残りの時間、週末と休日には、建物はエネルギー効率モードに切り替わるだろう。使用者は、建物の制御モードを無効化する選択肢を利用できる。
【0319】
車両
車両の電化を促進することで、建物と同様に光と熱の条件を最適化できる。車両に窓および/または屋根用のECデバイスが装備されている場合、透明度を動的に調整できる。車両が占有されている場合、通常、使用者は、内部の状態の制御を有するだろう。車両が駐車しているとき、自動制御モードが有効になっている可能性がある。例えば、晴れた寒い冬の日には、温室の温暖化を最大化することで車の温暖化を最大化するために、車両のECデバイスを高透過率のクリア状態に遷移できる。あるいはまた、暑い夏の日には、熱負荷を最小限に抑える必要があり、ECデバイスは低透過状態(例えば、VLTが低い暗状態)に遷移できる。太陽熱による室内温度の低下は、ACが燃料節約の改善に携わり、CO2排出量の削減に取り組むと、キャビンの冷却により少ないエネルギーが費やされるため、より速い時間で快適になる。この熱負荷の低減により、暖かい日に車両が太陽の下に駐車されたときに、ECデバイスを自動的に暗いモードに切り替える必要がある。ECデバイスの暗状態を維持すると、エネルギーが消費され、バッテリーが消耗する可能性がある。したがって、車両がグリッド接続されている場合、車両のECデバイスの動的調整が有利に制御される。
【0320】
EC組成物および層
EC組成物または層の光吸収成分は、可視、UV、および/またはNIR領域で電磁放射束の調整可能な減衰を提供できるため、(1)ECデバイスを通して見ている人間に対して、および/またはそれが設置されている領域に対して、望ましい視覚感覚を生成し、(2)ECデバイスに、可視、UV、および/またはNIR領域で入射する電磁放射エネルギーの量を調整する機能を提供する。
【0321】
本開示のエレクトロクロミック組成物は、1つまたは複数のエレクトロクロミック材料を含む。そのような組成物はまた、溶媒、高分子材料、補助化合物、修飾剤、追加の要素、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数を含むことができる。このような組成物は、特定のECデバイスで使用するための層に形成することができる。特定の態様では、EC層は通常、マトリックスを含む。
【0322】
本開示のEC組成物および層は、実質的または完全に透明、無色または着色、非混濁、非濁りとすることができる。本開示のエレクトロクロミック組成物および層は、入力信号(例えば、印加電圧、電流、電場など)に応答して、光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させることができる。光透過の変化は、可視、UV、および/またはIR波長で起こり得る。光透過率の変化は、高光透過率状態(例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%などの透過率)から低光透過率状態(1%未満、例えば、約0.8%未満、0.6%、0.4%、0.2%、さらには0.1%未満の透過率)まで起こり得る。これらの高および低透過状態は、可視、UV、および/またはIR波長で起こり得るが、特定の用途では、高光透過の変化は可視スペクトルで発生する。特定の態様では、エレクトロクロミック層は、1つまたは複数の入力信号に応答して、光透過を1つの状態から1つまたは複数の他の状態に連続的に変化させることができる。
【0323】
エレクトロクロミック組成物または層は、可視光透過の1つの状態において所定の色を有することができる。窓には、特定の色(例えば、青、緑、灰色など)が好ましい。EC組成物または層の色は、組成物または層に適切なエレクトロクロミック材料を選択することによって設定することができる。また、複数のエレクトロクロミック材料を、個々の材料のスペクトル吸光度または反射率を一致させて(例えば、グレースケール可視光を透過または反射するように一致させて)所定の色を生成する組成物に含めることができる。これは、CIELABマッチングによって行うことができる。つまり、可視光吸収化合物のペアが組成物または層に存在する場合、人間が知覚する結果の色は、それらのL*値に従って重み付けされた同じ濃度の単一成分のa*値とb*値の合計で表される。例えば、エレクトロクロミック組成物は、エレクトロクロミック組成物を通過するまたはエレクトロクロミック組成物からの透過光または反射光の色偏差がCIELAB色空間のa*およびb*軸の10単位未満、例えば5単位未満である場合など、エレクトロクロミック組成物を通過するまたはエレクトロクロミック組成物からの透過光または反射光の実質的にグレースケールの色を生成するようにスペクトル的に適合されたエレクトロクロミック材料を含むことができる。
【0324】
そのような所定の色は、標準的な分光光度計を使用して決定することができる。本開示の色の決定は、D65照明源を使用し、10度の標準オブザーバで操作されるHunterLab UltraScan PRO分光光度計で参照される必要がある。
【0325】
さらに、本開示のエレクトロクロミック組成物および層は、高い透過状態で低いヘイズを有することができる。人間の目は通常、約4%以上の値のヘイズを検出できる。したがって、特定の用途では、エレクトロクロミック組成物または層が、高透過状態で約10%未満(例えば、8%、6%、4%、3%、2%、および1%未満)のヘイズを有することが好ましい。ECデバイスにおいて、EC層以外の構成要素(例えば、光学的に透明な基板およびその上のコーティング(OTEなどの導電性コーティングを含む))は、ヘイズに寄与する可能性がある。したがって、本開示の一態様では、ECデバイスの光路から見たときのヘイズもまた、本開示のEC層のヘイズについて記載されたものと同じかそれよりも低いヘイズ(例えば、高透過状態で約10%未満(例えば、8%、6%、4%、3%、2%、1%未満)のヘイズ)を有する必要がある。
【0326】
曇りまたは「ヘイズ」は、標準のヘイズメーターで測定でき、ヘイズメーターは、透明な素材を通過するときに拡散または散乱する光の量を測定する。通過するときに入射ビームから平均2.5度を超えて逸脱する光の割合が、ヘイズとして定義される。例えば、ASTM D1003のセクション8 手順B 分光光度計(Section 8. Procedure B Spectrophotometer)に準拠したヘイズ適合性を参照。
【0327】
また、本開示のエレクトロクロミック組成物および層は、有利には、光透過を1つの状態から別の1つの状態に(例えば、1つの可視光状態から別の1つの可視光状態に)、迅速に(例えば、約30秒未満で)、均一に変化させることができる。本開示の一態様では、EC組成物および層は、光透過を1つの状態から別の1つの状態に数秒で均一に変化させることができる。本明細書で使用される場合、光透過率の均一性は、光透過率の変動性として定義され、例えば、20%未満のVLT、つまり、表面の任意の点に対して、VLTの変動は同時に20%未満である。
【0328】
さらに、エレクトロクロミック層は、所定の電気的特性または動作特性を有することができる。例えば、本開示のエレクトロクロミック層は、導電率、約1.5V未満(例えば、約1.3V、1.2V未満)の動作電圧範囲、電流範囲、および定常状態および過渡状態における電力消費(例えば、0.25W/m2未満、好ましくは0.1W/m2未満、最も好ましくは0.05W/m2未満の低光透過状態(例えば、暗状態)での連続電力消費)などの1つまたは複数の電気的特性に対して1つまたは複数の所定の値を有することができる。
【0329】
本開示の特定の態様では、エレクトロクロミックデバイスは、着色状態および/または透明状態のエレクトロクロミックデバイスに特定の太陽熱取得係数値を提供するように構成されたエレクトロクロミック組成物を含むことができる。特定の太陽熱取得係数(SHGC)は、窓を通して入る入射太陽放射の割合であり、直接透過されるものと、吸収された後に内側へ放出されるものの両方である。SHGCは、0~1の間の数値として表される。太陽熱取得係数の値が低いほど、エレクトロクロミックデバイスを透過する太陽熱は少なくなる。本開示のいくつかの態様では、エレクトロクロミックデバイスに含まれるエレクトロクロミック組成物は、着色された状態および/または透明な状態において、エレクトロクロミックデバイスに対して、1未満(例えば、0.9未満など)である特定の太陽熱取得係数値を提供するように構成される。
【0330】
本開示のエレクトロクロミック組成物または層に含めることができるエレクトロクロミック材料の例には、4,4’-ビピリジニウム塩(例えば、ビオロゲン)、2,2’-ビピリジニウム塩、第三級アミン、フェロシアニド、複素環式化合物(例えば、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、キノキサリンなど)、導電性ポリマー(例えば、PEDOT-PSS、PANI、PT、ポリアセチレンなど)、キノン、有機金属化合物、またはそれらの組み合わせ、およびpH指示薬、CT錯体(例えば、ヒドロキノン/キンヒドロン、金属錯体)、またはそれらの組み合わせなどの光吸収化合物としてのルイス/ブレンステッド酸および塩基が含まれるが、これらに限定されない。ビピリジニウム塩は、好ましくは、支持電解質の塩のように、弱く配位する陰イオンを含む。
【0331】
本開示の特定の態様では、エレクトロクロミック材料は、式(I)の1つまたは複数の化合物を含むことができる。
【化1】
ここで、R
1とR
2は、同じまたは異なっており、置換または非置換のアルキル基、ベンジル基、置換または非置換のフェニル基を個別に表し、X
-は陰イオンを表す。
【0332】
本開示の特定の態様において、R1およびR2は、アルキル基(例えば、C1-7のアルキル基(例えば、非置換、またはフェニル基、ハロゲン原子(例えば、1つまたは複数のフッ素)のうちの1つまたは複数で置換された、メチル基、ブチル基、t-ブチル基)(例えば、パーフルオロメチル基))、それ自体アルキル基(例えば、C1-7のアルキル基(例えば、メチル基、ブチル基、t-ブチル基))で置換することができる4,4’-ビピリジニウム;ベンジル基(-CH2-Ph);フェニル基、またはアルキル基(例えば、C1-7のアルキル基(例えば、メチル基、ブチル基、t-ブチル基、ハロアルキル基(例えば、パーフルオロC1-4))、ハロゲン原子(例えば、1つまたは複数のフッ素)のうちの1つまたは複数で置換されたフェニル基;アルコキシ基(例えば、C1-4のアルコキシ基、メトキシ基、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、C1-4のパーフルオロアルコキシ基、パーフルオロメトキシ基));ペンタフルオロスルファニル基、シアノ基、NR’2(ここで、R’はアルキル基または置換アルキル基)などを個別に表す。X-は、アニオン(例えば、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、パークロレート)、または有機アニオン(例えば、トリフルオロメタンスルホニルイミド(CF3SO2)2N-)を個別に表す。
【0333】
いくつかの実施形態では、R
1およびR
2は、置換基が以下に示される番号付けを有するフェニル環の様々な位置に配置することができる置換フェニル基を個別に表す。
【化2】
【0334】
例えば、R1およびR2は、フェニル基の3、4、および/または5位に1つまたは複数の置換基(例えば、フェニル基の3、4、および/または5位に1つ、2つ、または3つのC1-7のアルキル置換基)を有する置換フェニル基(例えば、トリル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,4-ジアルキルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジアルキルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル置換フェニル基)を個別に表す。
【0335】
他の実施形態では、R1はC1-7のアルキル基を表し、R2はフェニル基、またはフェニル基の3、4、および/または5位に1つまたは複数の置換基を有するフェニル基を表す。
【0336】
図12は、本開示のエレクトロクロミック組成物、層、およびデバイスに含めることができるエレクトロクロミック材料として有用な特定のビオロゲンを示している。そのようなビオロゲンには、例えば、1-メチル-1’-フェニル-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物19)、1-メチル-1’-(4-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物21)、1-メチル-1’-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物48)、1-ベンジル-1’-フェニル-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物20)、1-メチル-1’-(4-フルオロフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物22)、1-メチル-1’-(3,4-ジメチルフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物29)、1-メチル-1’-(3,5-ジメチルフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物31)、1-メチル-1’-(3,4,5-トリメチルフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物33)、1,1’-ジメチル-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物5)、1,1’-ジヘプチル-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物8)、1,1’-ビス(4-フルオロフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物12)、1,1’-ビス(4-ブチルフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物13)、1,1’-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物14)、1,1’-ビス(4-トリフルオロメトキシフェニル)-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)(化合物25)のうちの1つまたは複数が含まれる。
【0337】
本開示の他の態様では、エレクトロクロミック組成物または層は、電気還元感受性材料(例えば、式(I)の1つまたは複数の化合物を含む陰極材料)、電気酸化感受性材料(例えば、陽極材料(例えば、フェロセン、5,10-ジヒドロフェナジン、ポリアリールアミン、トリトリルアミン、フェノチアジン、メチル-フェニル-チアジン、またはベンジジン))、および溶媒、および任意選択で高分子材料、または任意選択で高分子材料を形成する成分を含むことができる。
【0338】
補助化合物は、初期の電気化学的プロセスから光吸収種の形成または消費に至る反応シーケンスを支援し、例えば、レドックスシャトル(電極触媒)、ルイス/ブレンステッド酸/塩基シャトル(例:H+)、pH調整剤(pHバッファー)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0339】
修飾剤は、エレクトロクロミック層の雑多な耐久性および製造特性を調整するために導入される微量化合物であり、例えば、放射線フィルタ(酸化チタン粒子などのUV遮断剤)、スカベンジャー(例:O2、水用のスカベンジャー)、抗酸化剤、界面活性剤(例えば、分散安定剤、消泡剤、湿潤促進剤)、レオロジー調整剤、またはそれらの組み合わせなどの化合物を含む。特定の実施形態では、1つまたは複数の溶媒、放射線フィルタ、添加剤、補助化合物、修飾剤、または電解質は、有機材料を含むか、または有機材料だけである。
【0340】
ポリマー材料は、ネットワーク化されたポリマー(例えば、架橋された)またはネットワークのないポリマーとすることができる。本開示に有用なポリマーには、アクリル、アルキルアクリル酸、およびそれらの塩、アクリル酸エステル(例えば、メタクリレート)、アクリルアミドおよびそれらの塩;ビニルアルコール、酢酸塩(例えば、エチレン酢酸ビニル)、およびアセタール;アクリロニトリル;アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、アミレン、ノルボルネン、イソブチレン);ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ミルセンなど);ハロアルケン(例えば、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロエチレン/プロピレンなど);ハロジエン(例、クロロプレン);シロキサン、シラン;炭水化物;またはそれらの組み合わせのホモおよびコポリマー(通常のコポリマーまたはブロックコポリマー)が含まれるが、これらに限定されない。特に適切なポリマーには、メタクリレートポリマーまたはそのコポリマー、あるいはポリアクリロニトリル、標準的な中間層ポリマー(例えば、PVBまたはEVA)が含まれる。エレクトロクロミック組成物内で有用なポリマーは、EC組成物に添加するか、またはモノマーまたはオリゴマー前駆体(特定の開始剤で熱的または光化学的に開始される)からの硬化プロセス中にインサイチューで形成することができる。EC組成物に含まれるポリマーは、好ましくは、化学的および電気化学的に不活性であるか、またはEC組成物の他の成分とのそれらの反応は可逆的である必要がある。
【0341】
例えば、EC組成物に溶解しない相などの追加の要素は、組成物に含まれてもよく、例えば、スペーサ;イオン選択性または多孔質膜(マトリックスと一致する屈折率);基準電極(例:Ag、Ptワイヤー);補助電極(例えば、Li陽極および陰極);またはそれらの組み合わせとして作用し得る。
【0342】
溶媒は、EC組成物または層の液相を含むことができ、以下:非プロトン性溶媒、すなわち、ジアルキルアミド(例えば、DMF、DMAc、NMP、テトラメチル尿素、DMPU、DMI)、ラクトン(例えば、GBL、GVL)、炭酸エステル(例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)など)、エーテル、エステル、グリコール、末端ポリ(エチレングリコール)、リン酸塩(PO(OR)3)、ニトリル(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、3-アルコキシプロピオニトリル)、ホスホアミド(例えば、ヘキサメチルホスホルアミドHMPA))、シリコーン;イオン液体(すなわち、支持電解質);非プロトン性溶媒:水、アルコール、ポリ(エチレングリコール)、アミド;または深共晶溶媒(補助化合物および/または支持電解質として機能する場合がある)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0343】
溶媒組成物は、製造時および最終的な組み立て状態の両方で、EC組成物または層のレオロジーに寄与するが、製造修飾共溶媒の除去または化学的変換のために製造中に変化する可能性がある。共溶媒の例には、希釈剤(例えば、粘度調整剤、溶解度向上剤)、または、製造中に重合する可能性のあるモノマー/オリゴマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0344】
溶媒組成物の粘度は、EC組成物または層の物質移動特性に影響を与える可能性があり、それにより、極性および誘電透過性は、界面電荷移動に影響を与える。
【0345】
イオン移動速度(イオン伝導度として表される)がFrumkin効果の強度を決定し、したがって動作電圧を最適化するように調整する必要があるため、「アイリス」効果の重大度、スイッチング速度、電力消費、色特性、したがってECデバイス、EC組成物、または層の全体的な特性は、支持電解質として1つまたは複数の可溶性の(使用される電位の範囲内で)電気化学的に不活性な塩を含むことができる。このような支持電解質には、アルカリまたはアルカリ土類金属の塩、アンモニウム(例えば、NR4
+、emim+、bmim+、ブチルメチルピロリドン、ピリジニウム)、ホスホニウム(例えば、PR4
+、PAr4
+)、アルソニウム(AsR4
+、AsAr4
+)、スルホニウム(SR3
+、SAr3
+)とAcO-、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、PFn(CxF2x+1)5-n、B(Ar)4
-、B(ArF)4
-、Al(OR)4
-、Al(ORF)4
-、複雑なホウ酸塩(例えば、シアノ-、オキサラト-など)、ジシアナミド、アルキル-、アリール-、プレフルオロアリールスルホネート(例えば、OTf-、OMs-、OTs-)および/または対称/非対称スルホンイミド(例えば、FTFSI-、TFSI-、FSI-)アニオンが含まれるが、これらに限定されない。有機溶媒では、弱く配位する陰イオンの塩が好ましいが、それでも、EC組成物または層の微量イオン成分のイオン会合特性および溶解度を最適化するように組成物を選択する必要がある。また、水中では、無機酸(例えば、硫酸、過塩素酸塩)、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物も使用することができる。ECデバイスの動作条件で液体である塩またはより複雑なイオン系(深共晶溶媒など)であるイオン液体は、溶媒のように機能する可能性があるため、電解質の唯一の液体成分になる。電解質のイオン強度は、製造時のEC層のレオロジーを決定し、粘度、ポットライフなどに影響を与える可能性がある。
【0346】
拡散、対流/移流、および泳動を含むEC組成物または層の物質移動パラメータは、EC組成物または層のレオロジーに依存する。ポリマー化合物をEC組成物または層(液相)に導入すると、液相のゲル化(すなわち、増粘)によって流動性および物質移動速度が低下する可能性がある。さらに、電極と電解質の界面接着も、導入されたポリマーの影響を受ける可能性がある。
【0347】
ECゲル
本開示のエレクトロクロミック組成物および層は、ゲルの形態とすることができる。そのようなゲルは、固相(例えば、流体(例えば、液相)によってその全体積全体にわたって拡張される非流体コロイドネットワークまたはポリマーネットワーク)を含む。ゲルは、入力信号に応答して光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させることを含む、上記のエレクトロクロミック組成物または層のすべての光学的および電気的属性を有することができる。
【0348】
また、ネットワーク度(例えば、ポリマー材料の架橋度)は、ゲルにその構造および機械的特性を与え、したがって、ポリマーおよびネットワーク度の選択は、所定の機械的特性を備えたゲルの形態のエレクトロクロミック組成物または層を提供することができる。本開示の一態様では、ゲルの形態のエレクトロクロミック組成物または層は、1つまたは複数の機械的特性について1つまたは複数の所定の値を有することができる。本開示の特定のゲルは、1気圧および20℃での定常状態下で効果的に流れを示さない。本開示の一態様では、ゲルの形態のエレクトロクロミック組成物または層は、支持基板の曲面などの曲面に容易に倣うように十分に柔軟である。
【0349】
ゲルの形態のエレクトロクロミック層は、液相内にポリマーネットワーク相を形成することによって製造することができる。液相または固相ネットワーク相は、入力信号に応答して光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させることができる1つまたは複数のEC材料を含む。また、エレクトロクロミック組成物または層について説明したように、液相は、溶媒、補助化合物、修飾剤、電解質、追加の要素、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数を含むことができる。固体ネットワーク相は、EC組成物または層について記載されたものなどのポリマーを含むか、またはそれから形成することができる。本開示の一態様では、固体ネットワーク相は、EC組成物または層について記載されたポリマーなどの架橋ポリマーを形成する成分を含む組成物を架橋することによってインサイチューで形成される。例えば、固体ネットワーク相は、UVまたは熱硬化性有機化合物および/または前駆体エレクトロクロミック組成物の硬化性アルコキシシラン成分から形成されて、ゲルを形成することができる。エレクトロクロミック組成物中の前駆体成分を使用してゲルを形成することにより、前駆体EC組成物の層をフレキシブル基板上に堆積させ、組成物を硬化させて、ECゲルおよび基板からなる複合体を形成することにより、フレキシブル基板、例えば、プラスチックからなるフィルムなどのフィルム上にゲルを形成することができる。このような複合材料は、ECデバイスの製造におけるスタンドアロンコンポーネントとして使用できる。
【0350】
ゲルの形態のEC組成物または層は、ECデバイスの隣接する構成要素に物理的に接続することができる。ゲルは自然に粘着性があり、隣接する表面との結合を作製する。また、この結合を強化するために、ゲルの形態のエレクトロクロミック組成物または層とECデバイスの隣接する構成要素との間の界面を、組成物または層と隣接する構成要素との間に化学結合を作製することによって強化することができる。すなわち、ゲルの形態のエレクトロクロミック層のネットワーク相は、電極表面と反応してゲルを表面に付着させることができる基を含むことができる。
【0351】
本開示の一態様では、エレクトロクロミックデバイスは、ECデバイスの第1および第2の光学的に透明な基板の間に配置されたエレクトロクロミック層を含むことができ、エレクトロクロミック層は、第1または第2の基板のいずれかまたは両方に結合(例えば、化学結合)される。本開示の一態様では、EC層内のポリマーは、基板上の任意の電極および/または界面層を含み、EC層と直接接触しているECデバイスの1つまたは複数の基板と化学結合を作製するように設計することができる。例えば、1つの変形例は、アルコキシシランで修飾されたポリマーを表し、これは、ヒドロキシシラン基に加水分解された後、エーテル結合の形成を通じて基板の表面またはその機能表面(電極、界面層など)に共有結合する。ポリマーは、UVまたは熱硬化性モノマー(例えば、アクリレート、アクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレンなど)から形成することができ、これは、1つまたは複数のアルコキシシラン(例えば、アルケニルトリアルコキシシラン)を組み込んでおり、ここで、アルケニルは、C2-C6のアルケニル基とすることができ、アルコキシ基は、低級(C1-C4)アルコキシから構成することができる。別の変形例は、トリアルコキシシランペンダント基を含むアクリレートで修飾されたUVまたは熱硬化性ポリマー(例えば、アルコキシシランとして1つまたは複数のアクリルトリアルコキシシランを組み込んだUVまたは熱硬化性モノマーから形成されたポリマー)を表す。ポリマーに組み込まれるそのようなアルコキシシランは、その後の電極表面への結合に適している。代替的に、または組み合わせて、基板(またはその上の機能層)の表面を、官能化シラン(例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン)との接触によって予備修飾して、電極表面上に官能化シランの単分子層を形成することができる。そのような官能化シランの活性基(例えば、アミノ基)は、例えば、ニトリル基、エーテル基、またはエステル基を含むポリマーなどのポリマーとの結合に適している。したがって、EC組成物または層は、EC組成物または層と接触する官能基で修飾された基板によって、および/またはEC組成物または層の構成要素として官能基で修飾されたポリマーによって、ECデバイス(光学的に透明な基板またはその機能面(電極、界面層))に化学的に結合することができる。
【0352】
ECデバイスに含まれる場合、ゲルの形態などのエレクトロクロミック層は、長期間安定して動作することができる。本明細書で使用される場合、ゲルの形態などの安定なエレクトロクロミック層は、1000サイクルにわたって620nmでの可視光の透過の減衰の10%未満で、高遷移状態から低遷移状態に循環することができるものである。特定の態様では、本開示のエレクトロクロミック層および/またはゲルは、-40℃~110℃の温度範囲内で動作可能とすることができる。
【0353】
ゲルの形態のエレクトロクロミック層を含むECデバイスは、デバイスを通過する音を有利に減衰させることができる。これは、建物または輸送車両(例えば、車、バス、電車など)の窓として使用されるECデバイスに役立つ可能性がある。例えば、道路交通は80デシベル(dB)以上の騒音レベルを引き起こす可能性がある。ECデバイスの基板は、ECデバイスを通過する可能性のあるノイズの一部を軽減する。しかしながら、ゲルの形態でEC層を含めると、非ゲルEC層を備えた同じデバイスと比較して、音を少なくとも10、20、30、40、50%以上減衰させることができる。
【0354】
図6~
図10および他の箇所を参照して説明したように、本開示のエレクトロクロミック組成物は、様々な方法で電極界面層に適用することができる。そのようなエレクトロクロミック組成物は、以下のように、組成物に面する表面上にOTEを有する第1の光学的に透明な基板上に、または互いに対向する表面上にOTEを有するまたは有さない第1および第2の光学的に透明な基板によって画定される空洞間に調製され配置することができる。
【0355】
(a)複数の重合性基を有するモノマーを含む1つまたは複数のタイプのモノマー、および熱ラジカル開始剤を含む溶液。少なくとも1つのエレクトロクロミック化合物、および少なくとも1つのポリマー形成モノマーおよび熱ラジカル開始剤を、任意の順序で溶媒に溶解して、溶液を形成する。溶液はまた、1つまたは複数の支持電解質、修飾剤、補助化合物などを含むことができる。得られた溶液は、好ましくは、2つの電極スタック間の空洞を満たす。熱処理すると、開始剤は分解してラジカルを生成し、モノマーのラジカル重合を開始する。重合は、相互貫入ポリマーネットワークの形成およびEC層のゲル化をもたらす可能性がある。
【0356】
(b)複数の重合性基を有するモノマーを含む1つまたは複数のタイプのモノマー、および光化学ラジカル開始剤を含む溶液。電気活性化合物、支持電解質、修飾剤(例えば、UVフィルタ、酸化防止剤、熱安定剤、界面活性剤など)、モノマー、および光化学ラジカル開始剤は、任意の順序で溶媒に溶解することができる。得られた溶液は、2つの電極スタック間の空洞に分注することができる(別名「現場打ち」アプローチ)。照射すると、ラジカル開始剤が分解してラジカルを生成し、モノマー(複数可)のラジカル重合を開始する。モノマーの重合は、相互貫入ポリマーネットワークの形成およびEC層のゲル化をもたらす可能性がある。
【0357】
(c)カチオン性重合の影響を受けやすい複数の重合性基を有するモノマーを含む1つまたは複数のタイプのモノマー、および光化学的カチオン開始剤を含む溶液。電気活性化合物、支持電解質、修飾剤(例えば、UVフィルタ、酸化防止剤、熱安定剤、界面活性剤など)、モノマー(複数可)、および光化学カチオン開始剤は、任意の順序で溶媒に溶解することができる。成分の溶解は、溶媒の沸点まで、室温またはその他で熱を用いて行うことができる。得られた溶液は、2つの電極スタック間の空洞内に分注することができる。照射すると、開始剤のイオン化が起こり、反応性カチオンが生成され、モノマーのカチオン重合が開始される。モノマーの重合は、相互貫入ポリマーネットワークの形成およびEC層のゲル化をもたらす可能性がある。
【0358】
(d)追加の揮発性共溶媒を含む液体溶液。電気活性化合物、支持電解質、修飾剤(例えば、UVフィルタ、酸化防止剤、熱安定剤、界面活性剤など)、ポリマー増粘剤は、一次高沸点溶媒に溶解することができる。成分の溶解は、室温で、または溶媒の沸点まで熱によって行うことができる。それ以外の場合は、電気活性化合物、支持電解質、修飾剤(UVフィルタ、酸化防止剤、熱安定剤、界面活性剤など)を一次高沸点溶媒に任意の順序で溶解する。成分の溶解は、室温で、または溶媒の沸点までの熱によって行うことができる。ポリマー増粘剤は、室温で、または共溶媒の沸点までの熱によって揮発性共溶媒に溶解される。2つのソリューションは、最終的な作業ソリューションの形成と組み合わされる。他の変形例は、高沸点一次溶媒または揮発性共溶媒への成分の溶解を任意の組み合わせで実行できるシステムを表す。得られた溶液は、いずれかの塗布方法によって、一方の電極(すなわち、陽極または陰極)の表面または両方の電極の表面に塗布することができる。塗布方法は、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ブレードコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、またはボウルの充填を表す。揮発性共溶媒の蒸発後、EC層が電極表面に形成される。
【0359】
(d.1)上記の手順(d)の一例として、アセトン中に5重量%のポリメチルメタクリレート粉末(d99=25μm)を、インペラで速く激しく混合しながら溶解することによってエレクトロクロミック溶液を作製した。炭酸プロピレン中のモル濃度0.1Mの1,1’-ジメチル-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの形態の陰極材料と、モル濃度0.1Mのフェロセンの形態の陽極材料との溶液を調製して、アセトン中のポリマーの溶液で混合した。最終溶液をポリマーフィルムキャリアに塗布し、乾燥させて、ポリマーフィルム上にECプリフォーム層を形成した。
【0360】
(e)ポリマーゾルの形態の液体コロイド系は、電気活性化合物(複数可)、架橋剤(複数可)、および開始剤(複数可)の溶液中にポリマーマトリックスのコロイドを含むように形成することができる。
【0361】
(e.1)上記の手順(e)の一例として、粘性のあるポリマーゾルの形成を伴うエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合物中のエレクトロクロミック化合物、支持電解質、架橋剤、および開始剤の溶液中に、13重量%のポリメチルメタクリレート粉末(d99=25μm)を溶解することによってエレクトロクロミックゾルを作製した。前述の溶液は、モル濃度0.1Mの1,1’-ジメチル-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの形態の陰極材料と、モル濃度0.1Mのフェロセンの形態の陽極材料と、モル濃度0.3Mの1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの形態の支持電解質と、10重量%のエチレングリコールジメタクリレートと、0.5重量%の量のジベンゾイルペルオキシドの形態の開始剤とを、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの1:1混合物中に溶解することによって調製した。得られたゾルは、陽極スタックと陰極スタックの間の空間にキャストされ、120℃で15分間加熱することによって固化された。
【0362】
(f)粗いポリマー粒子の液体分散。エレクトロクロミック化合物、支持電解質、修飾剤、少なくとも1つのモノマー、および熱ラジカル開始剤を、任意の順序で溶媒に溶解した。調製した溶液にポリマー増粘剤を導入し、超音波または機械式ホモジナイザーで攪拌しながら完全に分散させた。得られた分散液は、ECデバイスの内部に配置され、加熱時に溶媒中で膨潤するポリマーによってシールおよびゲル化され、したがって、EC層を形成することができる。ポリマーの膨潤速度は、処理温度によって調整できるため、分散粘度を制御できる。
【0363】
(f.1)上記の手順(f)の一例として、エレクトロクロミック分散液は、ローターステーター高速ホモジナイザーによってエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合物中のエレクトロクロミック化合物と支持電解質の溶液中に18重量%のポリアクリロニトリル粉末(d99=100μm)を集中的に分散させることによって作製された。前述の溶液は、モル濃度0.03Mの1-メチル-1’-フェニル-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの形態の陰極材料、モル濃度0.03Mの10-メチルフェノチアジンの形態の陽極材料、およびエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの2.45:1混合物中のモル濃度0.65Mの1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの形態の支持電解質を溶解することによって調製された。得られた分散液をECデバイスの内部に充填し、120℃で15分間加熱して固化した。
【0364】
(f.2)上記の手順(f)の別の一例として、エレクトロクロミック分散液は、ローターステーター高速ホモジナイザーによってエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合物中のエレクトロクロミック化合物と支持電解質の溶液中に18重量%のポリアクリロニトリル粉末(d99=100μm)を集中的に分散させることによって作製された。前述の溶液は、モル濃度0.03Mの1-メチル-1’-フェニル-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの形態の陰極材料、モル濃度0.03Mの10-メチルフェノチアジンの形態の陽極材料、およびエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの1:1混合物中のモル濃度0.3Mの1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの形態の支持電解質を溶解することによって調製された。得られた分散液を、2つの加熱ロールを使用して2つの100μmPETフィルムの間にラミネートした。ロール間のギャップは700μmに調整され、500μmの厚さが固定された均一なECプリフォーム層が形成された。
【0365】
(f.3)上記の手順(f)の別の一例として、エレクトロクロミック分散液は、ローターステーター高速ホモジナイザーによってエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合物中のエレクトロクロミック化合物と支持電解質の溶液中に18重量%のポリアクリロニトリル粉末(d99=100μm)を集中的に分散させることによって作製された。前述の溶液は、モル濃度0.03Mの1-メチル-1’-フェニル-4,4’-ビピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの形態の陰極材料、モル濃度0.03Mの10-メチルフェノチアジンの形態の陽極材料、およびエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの1:1混合物中のモル濃度0.3Mの1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの形態の支持電解質を溶解することによって調製された。得られた分散液を、ドクターブレードコーティング技術を使用して前処理された(コロナ処理された)PETフィルムにキャストして、均一な分散層を形成した。分散層が塗布されたPETフィルムを対流式オーブンで加熱して、さらなるラミネーションに適したECプリフォーム層の膨潤と形成を促進した。
【0366】
エレクトロクロミック組成物の例
サンプル1(青)
マトリックス:PMMA-co-PMAA 30~45重量%、炭酸プロピレン
希釈剤:クロロホルム、塩化メチレン
光吸収化合物前駆体:フェロセン、ジベンジルビオロゲン/ジメチルビオロゲン過塩素酸塩/テトラフルオロボレート、0.05M
支持電解質:なし
製造:ローリング、カレンダリング
添加要素:スペーサとしてのガラスミクロスフェア
修飾剤:なし
【0367】
サンプル2(紫)
マトリックス:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸カルシウム塩共重合体(VITAN-OS) 40~45重量%、炭酸プロピレン
希釈剤:アセトン、二塩化メチレン、クロロホルム
光吸収化合物前駆体:フェロセン 0.1M、C4-ビスビオロゲンテトラフルオロボレート、0.025M、ジメチルビオロゲンテトラフルオロボレート 0.05M
支持電解質:なし
製造:ローリング
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0368】
サンプル3(茶)
マトリックス:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸カルシウム塩共重合体(VITAN-OS) 40~45重量%、炭酸プロピレン
希釈剤:アセトン、二塩化メチレン、クロロホルム
光吸収化合物前駆体:5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン 0.1M、C4-ビスビオロゲンテトラフルオロボレート 0.05M
支持電解質:なし
製造:ローリング
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0369】
サンプル4(黒)
マトリックス:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸カルシウム塩共重合体(VITAN-OS) 40~45重量%、炭酸プロピレン
希釈剤:アセトン、二塩化メチレン、クロロホルム
光吸収化合物前駆体:5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン 0.1M、C4-ビスビオロゲンテトラフルオロボレート 0.025M、ジメチルビオロゲンテトラフルオロボレート 0.05M
支持電解質:なし
製造:ローリング
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0370】
サンプル5(緑)
マトリックス:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸カルシウム塩共重合体(VITAN-OS) 40~45重量%、炭酸プロピレン
希釈剤:アセトン、二塩化メチレン、クロロホルム
光吸収化合物前駆体:5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン 0.1M、ジメチルビオロゲンテトラフルオロボレート 0.05M
支持電解質:なし
製造:ローリング
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0371】
サンプル6(青)
マトリックス:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸カルシウム塩共重合体(VITAN-OS) 40~45重量%、炭酸プロピレン
希釈剤:アセトン、二塩化メチレン、クロロホルム
光吸収化合物前駆体:フェロセン、ジメチルビオロゲンテトラフルオロボレート 0.05M
支持電解質:なし
製造:ローリング
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0372】
サンプル7(青)
マトリックス:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸カルシウム塩共重合体(VITAN-OS) 35重量%、炭酸プロピレン、ポリ(エチレングリコール)-400
希釈剤:アセトン
光吸収化合物前駆体:フェロセン、ジメチルビオロゲンテトラフルオロボレート0.05M
支持電解質:なし
製造:PET/金属メッシュ/CNT電極へのスロットダイコーティング、熱風乾燥、ラミネーション
添加要素:なし
修飾剤:Agidol-1(酸化防止剤)、Milestab 9(UV安定剤)
【0373】
サンプル8(青)
マトリックス:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸カルシウム塩共重合体(VITAN-OS) 30重量%、炭酸プロピレン、ポリ(エチレングリコール)-400
希釈剤:アセトン
光吸収化合物前駆体:フェロセン、ジメチルビオロゲン-TFSI 0.09M
支持電解質:なし
製造:PET/金属メッシュ/CNT電極へのスロットダイコーティング、熱風乾燥、希釈剤蒸発、ラミネーション
添加要素:なし
修飾剤:Agidol-1(酸化防止剤)、Milestab 9(UV安定剤)
【0374】
サンプル9(青)
マトリックス:メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸カルシウム塩共重合体(VITAN-OS) 23重量%、炭酸プロピレン、ポリ(エチレングリコール)-400
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:フェロセン、ジメチルビオロゲン-TFSI 0.08M
支持電解質:なし
製造:PET/金属メッシュ/CNT電極へのドクターブレードポリマー分散コーティング、熱風乾燥、ラミネーション
添加要素:なし
修飾剤:Agidol-1(酸化防止剤)、Milestab 9(UV安定剤)
【0375】
サンプル10(青)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、35重量%、分類、<15μm画分、炭酸プロピレン
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:フェロセン、ジメチルビオロゲン-TFSI 0.03M
支持電解質:emimTFSI 0.1M
製造:PET/金属メッシュ/CNT電極へのドクターブレードポリマー分散コーティング、熱風乾燥、ラミネーション
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0376】
サンプル11(黒)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、35重量%、分類、<15μm画分、炭酸プロピレン
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:C4-ビスビオロゲン-TFSI 0.013M、ジメチルビオロゲン-TFSI 0.025M、5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジン 0.054M
支持電解質:なし
製造:PET/金属メッシュ/CNT電極へのドクターブレードポリマー分散コーティング、熱風乾燥、ラミネーション
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0377】
サンプル12(青)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、22重量%、分類、<15μm画分、炭酸プロピレン:エチレンカーボネート 1:2.45(mol)
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:フェロセン、ジメチルビオロゲン-TFSI 0.04M
支持電解質:emimTFSI 0.5M
製造:PET/金属メッシュ/CNT電極へのドクターブレードポリマー分散コーティング、熱風乾燥、ラミネーション
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0378】
サンプル13(黒)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、22重量%、分類、<15μm画分、炭酸プロピレン:エチレンカーボネート 1:2.45(mol)
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:ジフェニルビオロゲン-TFSI 0.003M、ジメチルビオロゲン-TFSI 0.015M、10-メチルフェノチアジン 0.03M
支持電解質:emimTFSI 0.4M
製造:現場打ちIGU充填(FTO/ITOガラス)
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0379】
サンプル14(黒)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、22重量%、未分類、<100μm画分、炭酸プロピレン:エチレンカーボネート 1:2.45(mol)
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:ジメチルビオロゲン-TFSI 0.009M、トリトリルアミン 0.006M、N、N’-ビス(4-メトキシ-2-メチルフェニル)-N、N’-ジフェニルベンジジン 0.003M
支持電解質:emimTFSI 0.4M
製造:現場打ちIGU充填(FTO/ITOガラス)
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0380】
サンプル15(青)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、22重量%、未分類、<100μm画分、炭酸プロピレン:エチレンカーボネート 1:2.45(mol)
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:ジメチルビオロゲン-TFSI 0.005M、トリトリルアミン 0.005M
支持電解質:emimTFSI 0.4M
製造:現場打ちIGU充填(FTO/ITOガラス)
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0381】
サンプル16(黒)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、18重量%、未分類、<100μm画分、炭酸プロピレン:エチレンカーボネート 35:65(mol)
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:メチルフェニルビオロゲン-TFSI 0.03M、10-メチルフェノチアジン 0.03M
支持電解質:emimTFSI 0.65M
製造:現場打ちIGU充填(FTO/ITOガラス)
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0382】
サンプル17(紫)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、18重量%、未分類、<100μm画分、炭酸プロピレン:エチレンカーボネート 35:65(mol)
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:ジメチルビオロゲン-TFSI 0.03M、10-メチルフェノチアジン 0.03M
支持電解質:emimTFSI 0.65M
製造:現場打ちIGU充填(FTO/ITOガラス)
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0383】
サンプル18(青緑)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、18重量%、未分類、<100μm画分、炭酸プロピレン:エチレンカーボネート 35:65(mol)
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:N、N、N’、N’-テトラフェニルフェニレンジアミン 0.005M、ジメチルビオロゲン-TFSI 0.005M
支持電解質:emimTFSI 0.4M
製造:現場打ちIGU充填(FTO/ITOガラス)
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0384】
サンプル19(茶)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、18重量%、未分類、<100μm画分、炭酸プロピレン:エチレンカーボネート 35:65(mol)
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:ジメチルビオロゲン-TFSI 0.004M、N、N’-ビス(4-メトキシ-2-メチルフェニル)-N、N’-ジフェニルベンジジン 0.004M
支持電解質:emimTFSI 0.4M
製造:現場打ちIGU充填(FTO/ITOガラス)
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0385】
サンプル20(赤)
マトリックス:ポリアクリロニトリル(PAN)、Mw=150k、18重量%、未分類、<100μm画分、炭酸プロピレン:エチレンカーボネート 35:65(mol)
希釈剤:なし
光吸収化合物前駆体:C4-ビスビオロゲン-TFSI 0.015M、10-メチルフェノチアジン 0.015M
支持電解質:emimTFSI 0.65M
製造:現場打ちIGU充填(FTO/ITOガラス)
添加要素:なし
修飾剤:なし
【0386】
エレクトロクロミック組成サンプルは、D65照明源を有するHunterLab UltraScan PRO分光光度計を使用し、10度の標準オブザーバで操作して、色とヘイズを定量的に分析した。以下の表に結果が提供される。
【0387】
【表1】
エレクトロクロミックデバイス、その構成要素、およびエレクトロクロミックデバイスを制御するためのシステムおよび方法、ならびに前述のエレクトロクロミック材料、組成物、層、ゲル、および製造が記載されている。以下に提供されるのは、本開示の特定の態様であり、以下を含む。
【0388】
A.第1の電極、第2の電極(例えば、陽極と陰極)、および1つまたは複数のエレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック組成物を含み、1つまたは複数のエレクトロクロミック材料の少なくとも1つは、第1の電極または第2の電極のいずれかでのみ電子交換を受ける、エレクトロクロミックデバイス。第1の電極または第2の電極のいずれかまたは両方は、エレクトロクロミック組成物との界面に半導体材料を含む。さらに、第1の電極は、第2の電極の材料とは異なる材料を含む。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミック組成物は、第1の電極と第2の電極との間にそれらに接触して配置され、電極間の入力信号に応答して、光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させる、例えば、入力信号に応答して、可視光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成される。第1の電極、第2の電極、およびエレクトロクロミック組成物は、可変透過率層(VTL)を画定することができ、VTLは、VTLの中心部分において、VTLの周辺部とは異なる電気特性を有することができる。他の実施形態では、エレクトロクロミック組成物は、1つまたは複数のエレクトロクロミック材料として陰極化合物および陽極化合物を含み、第1の電極または第2の電極のいずれかまたは両方は、陽極化合物の還元および酸化を実質的に禁止しながら、実質的に陰極化合物および/またはその還元形態のみを還元および酸化することを選択的に可能にする。さらなる実施形態では、エレクトロクロミック組成物は、1つまたは複数のエレクトロクロミック材料として陰極化合物および陽極化合物を含み、第1の電極または第2の電極のいずれかまたは両方は、陰極化合物の還元および酸化を実質的に禁止しながら、実質的に陽極化合物および/またはその酸化形態のみを還元および酸化することを選択的に可能にする。
【0389】
B.第1の電極、第2の電極、それらの間のエレクトロクロミック組成物(例えば、陰極、陽極、およびそれらの間のエレクトロクロミック組成物)、およびエレクトロクロミック組成物内で2つの電極の間に配置された選択的透過性膜を含む、エレクトロクロミックデバイス。膜は、小分子、例えば、小さなイオンの透過を実質的に可能にすることができるが、大分子、例えば、大きなイオンの透過を実質的に禁止する。例えば、膜は、プロトンの透過を実質的に可能にすることができるが、プロトンよりも大きいイオンの透過を実質的に禁止する。いくつかの実施形態では、膜は、中心部分および周辺部分を有することができ、中心部分は、周辺部分よりも高い透過性を有する。他の実施形態では、陰極電極、陽極電極、エレクトロクロミック組成物は、可変透過率層(VTL)を画定し、VTLは、VTLの中心部においてVTLの周辺部とは実質的に異なる電気的特性を有する。
【0390】
C.第1の光学的に透明な基板と、第2の光学的に透明な基板と、第1および第2の光学的に透明な基板の間に配置されたエレクトロクロミック組成物であって、第1の光学的に透明な基板、第2の光学的に透明な基板、およびそれらの間のエレクトロクロミック組成物は、光透過率のための光路を画定し、第1の電極は、第1または第2の光学的に透明な基板のいずれかまたは両方上にあり、第2の電極は、光路の外側に配置された、エレクトロクロミック組成物とを含み、エレクトロクロミック組成物は、第1の電極と第2の電極との間の入力信号に応答して、光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成される、エレクトロクロミックデバイス。第1の電極は陽極電極とすることができ、第2の電極は陰極電極とすることができる、および/または第1の電極は、第1および第2の光学的に透明な基板の両方の上にあることができる。および/または第1の電極は、光学的に透明な電極とすることができる。および/または第2の電極は光学的に透明ではない。
【0391】
D.エッジを含み、エッジは不活性雰囲気に曝される、エレクトロクロミックデバイス。エレクトロクロミックデバイスは、不活性雰囲気に曝されるエッジを有する基板と、不活性雰囲気に曝されない第2のエッジを有する第2の光学的に透明な基板とをさらに含むことができる、および/またはエレクトロクロミックデバイスは、第1の光学的に透明な電極がその上に配置され、エッジが不活性雰囲気に曝される、第1の光学的に透明な基板と、第2の光学的に透明な電極がその上に配置された第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置されたエレクトロクロミック組成物とをさらに含むことができる、および/または第1の光学的に透明な基板は、可撓性フィルムの形態とすることができる。エッジを含むエレクトロクロミックデバイスは、断熱ガラスユニット(IGU)の一部とすることができる。そのような断熱ガラスユニットは、間に容積を画定し、その容積が、不活性雰囲気と、エッジを含むエレクトロクロミックデバイスとを含むことができる、第1のガラス基板および第2のガラス基板を含み、第1のガラス基板または第2のガラス基板の少なくとも1つは、エレクトロクロミックデバイスと電気的に連通していない。IGUは、第2のガラス基板から離間され、第2の容積を画定する第3のガラス基板をさらに含むことができる。
【0392】
E.光学的に透明な電極を備えた第1の主表面と、第2の主表面と、第1と第2の主表面の間のエッジと、光学的に透明な電極と電気的に接触し、エッジの上に配置された導電性ストリップとを含む、光学的に透明な基板。いくつかの実施形態では、導電性ストリップは、光学的に透明な電極と電気的に接触しており、基板のエッジを越えて第2の表面上に配置されている。光学的に透明な基板は、基板の第2の表面上の導電性ストリップと電気的に接触している第2の導電性要素、および/または導電性ストリップと電気的に接触し、任意選択で基板の第2の表面上にある第2の導電性要素をさらに含むことができる。第2の導電性要素は、金属、例えば、銅または銅合金またはアルミニウムまたはアルミニウム合金を含むことができる。絶縁層は、導電性ストリップ、エッジ、および/または第2の導電性要素の上に配置することができる。第2の導電性要素は、50ミクロンを超える厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、エッジは、滑らかで、丸みを帯びた形をとることができる。態様Eの光学的に透明な基板は、本開示のECデバイスのいずれかなどのECデバイス内に光学的に透明な基板として含めることができる。いくつかの実施形態では、態様Eの光学的に透明な基板を有するエレクトロクロミックデバイスは、第2の光学的に透明な基板と、光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間にエレクトロクロミック層とをさらに含むことができる。そのようなエレクトロクロミック層は、ある厚さを有することができ、第2の導電性要素は、エレクトロクロミック層の厚さよりも厚い厚さを有することができる。
【0393】
F.エレクトロクロミックデバイスは、その上の表面上に第1の電極を備えた第1の光学的に透明な基板と、第2の光学的に透明な基板と、第1および第2の基板の間に第1の電極と接触して配置され、入力信号に応答して光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成されたエレクトロクロミック組成物と、第1および第2の基板間のエレクトロクロミック組成物をシールするためのシーリング要素と、第1の電極とシーリング要素との間に配置された不動態化層とを含み、不動態化層は、第1の電極とシーリング要素に直接接触する。いくつかの実施形態では、不動態化層は、第1の電極、シーリング要素、およびエレクトロクロミック組成物に直接接触する。不動態化層は、シーリング要素が任意の1つの位置で第1の電極およびエレクトロクロミック組成物と同時に接触するのを防ぐことができる。第2の光学的に透明な基板は、その上の表面上に第2の電極を有することができ、エレクトロクロミックデバイスは、第2の電極とシーリング要素との間に配置された第2の不動態化層をさらに含むことができ、第2の不動態化層は、第2の電極およびシーリング要素、ならびに任意選択でエレクトロクロミック組成物に直接接触することができる。第2の不動態化層は、シーリング要素が任意の1つの位置で第2の電極およびエレクトロクロミック組成物と同時に接触するのを防ぐことができる。デバイスは、第1および/または第2の電極と直接および電気的に接触している導電性ストリップをさらに含むことができ、不動態化層は、導電性ストリップの上に延在することができる。第1の光学的に透明な基板は、第1の電極を有する表面と反対の表面を有することができ、表面と導電性ストリップとの間のエッジは、エッジを越えて、任意選択で第1の基板の第2の表面上に配置することができる。第2の光学的に透明な基板は、第2の電極を有する表面と反対の表面を有することができ、表面と第2の導電性ストリップとの間のエッジは、エッジを越えて、任意選択で第2の基板の第2の表面上に配置することができる。不動態化層は、酸化ケイ素を含むことができる。シーリング要素は、エラストマー、フルオロポリマー、シリコーン、ポリアミド、ブチルゴム、ポリサルファイド、エポキシ、またはそれらの組み合わせを含む。デバイスは、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間に、および/または第1および第2の基板の周辺部の少なくとも一部の周囲に配置された、二次シールを含むことができ、二次シールはエレクトロクロミック組成物と接触しない。
【0394】
G.第1の電極を有する第1の基板と、第2の電極を有する第2の基板と、第1と第2の基板の間に配置されたエレクトロクロミック組成物とを含むエレクトロクロミックデバイスを制御するためのシステムであって、システムは、エレクトロクロミックデバイスの第1および第2の電極に操作可能に接続されたコントローラと、第1および第2の基板の各々の上に配置され、コントローラに操作可能に接続された電圧読み出し端子とを含む。コントローラは、フィードバックアルゴリズムを使用して電極に印加される電気信号を決定するように構成されたプロセッサをさらに含むことができ、そのようなアルゴリズムは、電圧読み出し端子間の所望の開回路電圧と、制御変数として電圧読み出し端子で測定された開回路電圧との差を用いる。いくつかの実施形態では、フィードバックアルゴリズムは比例積分微分(PID)フィードバックアルゴリズムであり、PIDアルゴリズムで使用される比例(P)、積分(I)および微分(D)の係数値は、エレクトロクロミック組成物の物理的および化学的特性に依存する。他の実施形態では、フィードバックアルゴリズムは比例積分微分(PID)フィードバックアルゴリズムであり、PIDアルゴリズムで使用される比例(P)、積分(I)および微分(D)の係数値は、第1および第2の電極の物理的および化学的特性に依存する。電気信号は、定電流、定電圧、電流関数、電圧関数、またはそれらの組み合わせの中から選択することができる。所望の開回路電圧は、エレクトロクロミック組成物の所望の光学状態に基づいて決定することができる。所望の開回路電圧は、光スペクトル内の選択された波長帯域に基づいて決定することができる。例えば、エレクトロクロミック組成物の所望の光学状態は、赤外スペクトル内の所望の波長帯域に基づいて決定することができる。さらに別の実施形態では、そのようなシステムは、エレクトロクロミックデバイスが内部に配置されている構造のエネルギー消費を測定するように構成されたセンサをさらに含むことができ、プロセッサは、測定されたエネルギー消費に基づいて所望の開回路電圧を決定するようにさらに構成される。代替的に、または組み合わせて、そのようなシステムは、エレクトロクロミックデバイスが内部に配置されている構造の内部空間の輝度を測定するように構成されたセンサをさらに含むことができ、プロセッサは、測定された輝度に基づいて所望の開回路電圧を決定するようにさらに構成される。他の実施形態では、所望の開回路電圧は、エレクトロクロミックデバイスが存在する地理的位置での周囲光の輝度または周囲温度に基づいて決定することができる。さらに、電気信号は、過電圧制御を伴う定電流、過電流制御を伴う定電圧、電流関数、および電圧関数から選択されるものを含む充電シーケンスを含むことができる。
【0395】
H.第1の電極を有する第1の基板と、第2の電極を有する第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置されたエレクトロクロミック組成物とを含むエレクトロクロミックデバイスを制御する方法であって、方法は、第1および第2の電極を使用してエレクトロクロミック組成物を横切って電気信号を印加するステップと、エレクトロクロミック組成物を横切る開回路電圧を測定するステップと、測定された開回路電圧と所望の開回路電圧との間の差に基づいてエラー信号を決定するステップであって、所望の開回路電圧は、エレクトロクロミック組成物の所望の光学状態に基づいて事前に決定されるステップと、フィードバックアルゴリズムを使用して、エラー信号がしきい値に達するまで、エラー信号に基づいてエレクトロクロミック組成物を横切って印加される補正された電気信号を決定するステップとを含む、方法。開回路電圧は、第1および第2の基板の各々の上に配置された電圧読み出し端子で測定することができ、例えば、電圧読み出し端子は、コントローラに操作可能に接続されている。フィードバックアルゴリズムは、比例-積分-微分(PID)フィードバックアルゴリズムを含むことができ、PIDアルゴリズムで使用される比例(P)、積分(I)、および微分(D)の係数値は、エレクトロクロミック組成物の物理的および化学的特性に依存する。代替的に、または組み合わせて、フィードバックアルゴリズムは、比例-積分-微分(PID)フィードバックアルゴリズムとすることができ、PIDアルゴリズムで使用される比例(P)、積分(I)、および微分(D)の係数値は、第1および第2の電極の物理的および化学的特性に依存する。フィードバックアルゴリズムの設定点は、例えば、エレクトロクロミック組成物の所望の光学状態、またはエレクトロクロミック組成物の光学または赤外スペクトル内の選択された波長帯域に基づいて決定することができる。あるいはまた、フィードバックアルゴリズムの設定点は、エレクトロクロミックデバイスが存在する地理的位置での周囲光の輝度または周囲温度に基づいて決定することができる。電気信号は、過電圧制御を伴う定電流、過電流制御を伴う定電圧、電流関数、および電圧関数から選択されるものを含む充電シーケンスを含むことができる。別の一実施形態では、フィードバックアルゴリズムの設定点は、エレクトロクロミックデバイスが内部に配置されている構造の測定されたエネルギー消費に基づいて決定することができる。さらに別の一実施形態では、フィードバックアルゴリズムの設定点は、エレクトロクロミックデバイスが内部に配置されている構造の内部空間内の測定された輝度に基づいて決定することができる。さらに別の一実施形態では、エレクトロクロミック組成物は、電気信号に応答して、可視光および/または赤外光の透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成される。
【0396】
I.式(I)の化合物を含むエレクトロクロミック材料:
【化3】
ここで、R
1とR
2は同じであり、C
1-7のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、または1つまたは複数の置換基を有するフェニル基を表し、1つまたは複数の置換基は、C
1-4のアルキル基、C
1-4のパーフルオロアルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、またはハロゲン原子であり、X
-は有機アニオンを表す。いくつかの実施形態では、R
1およびR
2は、C
1-7のアルキル基を表す。他の実施形態では、R
1およびR
2は、フェニル基の3、4、および/または5位に1つまたは複数の置換基を有するフェニル基を表す。例えば、R
1およびR
2は、フェニル基の3、4、および/または5位に2つ以上の置換基(例えば、2つ以上のC
1-7のアルキル置換基)を有するフェニル基を表すことができ、R
1およびR
2は、フェニル基の4位に置換基を有するフェニル基を表すことができ、例えば、R
1およびR
2は、C
1-4のアルキル基、C
1-4のパーフルオロアルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、またはハロゲン原子置換基をフェニル基の4位に有するフェニル基を表すことができる。X
-は(CF
3SO
2)
2N
-の有機アニオンであるか、それを含むことができる。そのようなエレクトロクロミック材料は、エレクトロクロミックデバイス内に含めることができる。
【0397】
J.式(I)の化合物を含むエレクトロクロミック材料
【化4】
ここで、R
1とR
2は異なり、非置換の、またはフェニル基、ハロゲン原子のうちの1つまたは複数で置換されたアルキル基、アルキル基で置換された4,4’-ビピリジニウム、ベンジル基、フェニル基、または、アルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子のうちの1つまたは複数で置換されたフェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、またはシアノ基を個別に表し、X
-はアニオンを表す。いくつかの実施形態では、R
1は、C
1-7のアルキル基を表すことができ、R
2は、フェニル基、またはアルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、またはシアノ基のうちの1つまたは複数で置換されたフェニル基を表す。他の実施形態では、R1は、C
1-7のアルキル基を表すことができ、R
2は、フェニル基、またはフェニル基の3、4、および/または5位に1つまたは複数の置換基を有するフェニル基を表すことができる。例えば、R
2は、フェニル基の3、4、および/または5位に2つ以上の置換基を有するフェニル基を表すことができ、R
2は、フェニル基の3位と5位に2つの置換基(例えば、2つのC
1-7のアルキル置換基)を有するフェニル基を表すことができ、R
2は、フェニル基の4位に置換基を有するフェニル基を表すことができる。そのようなエレクトロクロミック材料は、エレクトロクロミックデバイス内に含めることができる。
【0398】
K.式(I)の1つまたは複数の化合物を含む陰極材料を含むエレクトロクロミック組成物。
【化5】
ここで、R
1とR
2は、同じまたは異なっており、置換または非置換のアルキル基、ベンジル基、置換または非置換のフェニル基を個別に表し、X
-は、アニオン、溶媒、および任意選択で高分子材料を表す。陰極材料は、グレースケールの可視光を生成するように適合された2つ以上の化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、R
1は、C
1-7のアルキルを表すことができ、R
2は、フェニル基、または、アルキル基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、またはシアノ基のうちの1つまたは複数で置換されたフェニル基を表す。他の実施形態では、R1は、C
1-7のアルキル基を表すことができ、R
2は、フェニル基、または、フェニル基の3、4、および/または5位に1つまたは複数の置換基を有するフェニル基を表すことができる。例えば、R
2は、フェニル基の3、4、および/または5位に2つ以上の置換基を有するフェニル基を表すことができ、R
2は、フェニル基の3位と5位に2つの置換基(例えば、2つのC
1-7のアルキル置換基)を有するフェニル基を表すことができ、R
2は、フェニル基の4位に置換基を持有するフェニル基を表すことができる。X
-は、トリフルオロメタンスルホニルイミド(CF
3SO
2)
2N
-を表すことができる。組成物は、フェロセン、5,10-ジヒドロフェナジン、ポリアリールアミン、トリトリルアミン、フェノチアジン、メチル-フェニル-チアジン、またはベンジジンのうちの1つまたは複数を含む陽極材料をさらに含むことができる。そのようなエレクトロクロミック組成物は、エレクトロクロミックデバイス内に含めることができる。
L.固体ネットワーク相および液相を含むゲルの形態のエレクトロクロミック組成物であって、エレクトロクロミック組成物は、入力信号に応答して、光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させることができる。ゲルは、曲面に容易に一致するように十分に柔軟にすることができる。特定の態様において、ゲルは、1大気圧および20℃での定常状態下で効果的に流れを示さない。いくつかの実施形態では、ゲルは、可視スペクトルにわたって、一方の状態で1%未満の透過率を有し、他方の状態で少なくとも50%の透過率を有することができる。他の実施形態では、エレクトロクロミック組成物は、1つまたは複数の入力信号に応答して、光透過を1つの状態から1つまたは複数の他の状態に連続的に変化させることができる。さらなる実施形態では、光透過率の変化は、UVおよび/またはIR波長で発生する。さらに別の実施形態では、エレクトロクロミック組成物は、入力信号に応答して光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させることができる1つまたは複数の構成要素、および放射線フィルタ、添加剤要素、支持電解質のうちの1つまたは複数、またはそれらの組み合わせを含むことができる。特定の点において、1つまたは複数の放射線フィルタ、添加剤、または電解質は、有機材料を含む。他の実施形態では、ゲルは、-40℃~110℃の温度範囲内で作動可能とすることができるか、または、UVまたはIR波長の約50%以上を吸収できるか、または、音を少なくとも50%減衰させることができるか、または、低いヘイズを有することができる。
【0399】
ゲルは、所定の値に設定された電気的特性を有することができる。例えば、ゲルは、約50μA/cm2未満の電流消費、または約0.25W/m2未満の電力消費で、光透過率を1つの状態から別の1つの状態に変化させる。他の実施形態では、ゲルは、約1.5V未満の電圧としての入力信号に応答して、光透過率を1つの状態から別の1つの状態に変化させることができる。ゲルは、実質的に双安定とすることができる。ゲルは、1つの状態から別の1つの状態への遷移中に、所定の値を下回る1つまたは複数の電流、電圧、または電力値での入力信号に応答して、光透過率を1つの状態から別の1つの状態に変化させることができる。
【0400】
他の実施形態では、エレクトロクロミック組成物は、30秒以下で光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させることができる。いくつかの実施形態では、固体ネットワーク相は、電極表面と反応してゲルを表面に付着させることができる基を含む。他の実施形態では、固体ネットワーク相は、電極表面と反応してゲルを表面に付着させることができる基を含むことができる。さらに別の実施形態では、ゲルは、液相および前駆体を含む組成物から形成されて、固体ネットワーク相を形成する。特定の態様では、前駆体は、UVまたは熱硬化性有機化合物または硬化性アルコキシシランを含むことができる。ゲルは、1つまたは複数のフィルム(例えば、光学的に透明なフィルム)上に配置された、および/または2つ以上のフィルム間に配置されたゲルの形態のEC層などのECプリフォーム層とすることができる。そのようなエレクトロクロミックゲルは、エレクトロクロミックデバイス内に含めることができる。
【0401】
M.エレクトロクロミックゲルを作製するためのプロセスであって、プロセスは、液相内に固体ネットワーク相を形成することを含み、液相または固体ネットワーク相は、入力信号に応答して光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させることができる1つまたは複数の成分を含む、方法。固体ネットワーク相を形成することは、固体ネットワーク相を形成するための成分を含む組成物を架橋することを含むことができる。このような成分には、UVまたは熱硬化性有機化合物または硬化性アルコキシシランが含まれ得る。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゲルは、層の異なる領域において実質的に異なる電気的特性を有する層内に形成することができる。例えば、形成された層は、層の周辺領域よりも中心領域において実質的に高い電気的特性を有することができる。中心領域から周辺領域までの電気伝導率の変化は、急激または連続的とすることができる。追加の実施形態は、プリフォーム層としてゲルを形成すること、例えば、溶媒中にポリマーネットワーク形成成分を含むエレクトロクロミック組成物を1つまたは複数のフレキシブル基板上に導入して、フレキシブル基板上または複数のフレキシブル基板間にプリフォーム層を形成することを含む。プリフォーム層は、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間に配置することができる。他の実施形態では、プリフォーム層は、時間、温度、圧力、UV曝露、化学的または物理的薬剤への曝露など、またはそれらの組み合わせのうちのいずれか1つまたは複数にプリフォームを曝すことなどによって、ゲルを形成するように硬化させることができる。
【0402】
N.第1の電極を備えた第1の光学的に透明な基板と、第2の光学的に透明な基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置され、入力信号に応答して光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成されたゲルまたは層の形態のエレクトロクロミック組成物とを含む、エレクトロクロミックデバイス。エレクトロクロミック組成物は、態様I、J、および/またはKについて記載された構成要素および構成を任意の組み合わせで含むことができる。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミック組成物は、ゲルの形態とすることができる。ゲルまたは層は、態様Lのすべての要素および構成を任意の組み合わせで含むことができる。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゲルまたは層は、第1または第2の基板のいずれかまたは両方に化学的に結合することができる。他の実施形態では、少なくとも第1の基板または第2の基板のいずれかを化学的に官能化して、エレクトロクロミックゲルまたは層のそれへの結合を促進することができる。さらに別の実施形態では、エレクトロクロミックゲルまたは層は、化学的に官能化されて、少なくとも第1の基板または第2の基板のいずれかへの結合を促進することができる。さらに、エレクトロクロミックデバイス内のゲルまたは層の形態のエレクトロクロミック組成物は、ゲルまたは層の横方向のゲルまたは層の異なる領域で異なる組成特性(例えば、電気伝導率)を有することができる。組成特性(例えば、電気伝導率)は、異なる領域で段階的に変化することができる、および/または異なる領域で連続的に変化することができる。また、エレクトロクロミック組成物は、エレクトロクロミック組成物を通過するか、またはエレクトロクロミック組成物からの透過光または反射光の色偏差がCIELAB色空間のa*およびb*軸の10単位未満、例えば5単位未満である場合など、エレクトロクロミック組成物を通過するか、またはエレクトロクロミック組成物からの透過光または反射光の実質的にグレースケールの色を生成するようにスペクトル的に適合されたエレクトロクロミック材料を含むことができる。
【0403】
O.エレクトロクロミックデバイスを製造する方法であって、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間にエレクトロクロミック層を配置するステップであって、エレクトロクロミック層は、入力信号に応答して光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成される、ステップと、エレクトロクロミック層を第1または第2の基板のいずれかまたは両方に結合するステップとを含む、方法。エレクトロクロミック組成物は、態様I、J、および/またはKについて記載された構成要素および構成を任意の組み合わせで含むことができる。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミック組成物は、ゲルの形態とすることができる。ゲルまたは層は、態様Lのすべての要素および構成を任意の組み合わせで含むことができる。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゲルまたは層は、第1または第2の基板のいずれかまたは両方に化学的に結合することができる。他の実施形態では、少なくとも第1の基板または第2の基板のいずれかを化学的に官能化して、エレクトロクロミックゲルまたは層のそれへの結合を促進することができる。さらに別の実施形態では、エレクトロクロミックゲルまたは層は、化学的に官能化されて、少なくとも第1の基板または第2の基板のいずれかへの結合を促進することができる。他の実施形態では、第1および第2の光学的に透明な基板の間にエレクトロクロミック層を配置することは、その周辺部の実質的周囲にその上にダムを含む第1の光学的に透明な基板上に計量された量のエレクトロクロミック組成物を分注することと、第2の光学的に透明な基板をエレクトロクロミック組成物上に配置することと、エレクトロクロミック組成物を硬化させてエレクトロクロミック層を形成することとを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1および第2の光学的に透明な基板の間にエレクトロクロミック層を配置することは、第1の光学的に透明な基板上にある面積を有する計量された量のエレクトロクロミック組成物を分注することと、第2の光学的に透明な基板をエレクトロクロミック組成物上に配置することと、エレクトロクロミック組成物を第1の光学的に透明な基板上に強制的に広げて、分注されたエレクトロクロミック組成物の面積よりも著しく大きい面積を有するエレクトロクロミック層を形成することとを含むことができる。さらに別の実施形態では、第1の光学的に透明な基板と第2の光学的に透明な基板との間にエレクトロクロミック層を配置することは、ECプリフォーム層を第1の光学的に透明な基板上に配置することと、第2の光学的に透明な基板をECプリフォーム層上に配置することとを含むことができる。
【0404】
上記の態様の各々は、以下の追加要素の1つまたは複数を任意の組み合わせで含むことができる。
【0405】
要素1:第1または第2の電極のいずれかまたは両方、例えば、陰極または陽極電極は、エレクトロクロミック組成物との界面に半導体材料を含む。要素2:1つまたは複数のエレクトロクロミック材料は、第1の電極または第2の電極のいずれかでのみ電子交換を受ける。要素3:エレクトロクロミック組成物は、第1の電極と第2の電極との間に、および/またはそれらと接触して配置することができる。要素4:エレクトロクロミック組成物は、入力信号に応答して、可視光および/または赤外光の透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるように構成される。要素5:ECデバイスは、エレクトロクロミック組成物内で、第1の電極と第2の電極との間、例えば、陰極電極と陽極電極との間に配置された、選択的透過性膜を含むことができる。要素6:膜は、小分子、例えば、小さなイオンの透過を実質的に可能にするが、大きな分子、例えばイオンの透過を実質的に禁止する。要素7:膜は、プロトンの透過を実質的に可能にするが、プロトンよりも大きいイオンの透過を実質的に禁止する。要素8:膜は、中心部分および周辺部分を有し、中心部分は、周辺部分よりも高い透過性を有する。要素9:エレクトロクロミック層またはゲルは、層またはゲルの中心領域において層またはゲルの周辺領域とは実質的に異なる電気的特性を有する。特定の態様では、電気伝導率の変化は、急激とすることができ、例えば、段階的に変化するか、または連続的とすることができる。このようなエレクトロクロミック層またはゲルは、ECデバイスに含めることができる。要素10:ECデバイスは、可変透過率層(VTL)を画定するために、第1および第2の電極、例えば、陰極電極、陽極電極と、エレクトロクロミック組成物、層、またはゲルとを含み、VTLは、VTLの中心部においてVTLの周辺部とは実質的に異なる電気的特性を有する。特定の態様では、VTLの電気伝導率の変化は、急激とすることができ、例えば、段階的に変化するか、または連続的とすることができる。
【0406】
要素11:エレクトロクロミック組成物は、層および/またはゲルの形態にある。この要素はまた、態様I、J、K、Lに対して設定されたすべての構成要素および構成を含むことができる、および/またはECデバイスに含めることもできる。要素12:1つまたは複数の光学的に透明な電極は、100オーム/平方未満、例えば、約50オーム/平方未満および約20オーム/平方未満、例えば、約5オーム/平方未満のシート抵抗を有する。要素13:第1または第2の光学的に透明な基板、またはエレクトロクロミック組成物、層、またはゲルは、低いヘイズを有する。要素14:、エレクトロクロミックデバイスは、基板を曇り除去するための加熱要素をさらに含む。要素15:エレクトロクロミックデバイスは、入力信号を印加してエレクトロクロミック組成物に光透過を1つの状態から別の1つの状態に変化させるためのコントローラをさらに含む。コントローラは、分散型多点電気接続によってECデバイスの電極に電気的に接続して、電極間のオーム降下を最小限に抑えることができる、および/または、コントローラは、エレクトロクロミック組成物のイオン移動制限条件で両方の電極を動作させるように構成できる。要素16:第1および/または第2の光学的に透明な基板は、可撓性フィルムの形態とすることができる。要素17:第1および/または第2の光学的に透明な基板は、第1の焼き戻しまたは熱処理されたガラス板の山を第2の焼き戻しまたは熱処理されたガラス板の谷に対してほぼ一致させて、第2の焼き戻しまたは熱処理されたガラス板にラミネートされた第1の焼き戻しまたは熱処理されたガラス板を含む。要素18:第1および/または第2の光学的に透明な基板は、光を偏光するか、またはその上に光を偏光する層を含む。要素19:ECデバイス内のエレクトロクロミック層の厚さは、50ミクロンよりも大きい。
【0407】
要素20:コントローラは、試薬の物質移動制限モードで動作するように構成される。要素21:第1および/または第2の電極は、多層配置を有する。要素22:第1および/または第2の光学的に透明な電極は、IR放射を反射するように構成される。要素23:第1または第2の基板は、オーバーザエッジバスバー、例えば、光学的に透明な電極と電気的に接触し、エッジを越えて、任意選択で基板の第2の表面上に配置された導電性ストリップを含む。要素24:入力信号は、例えば、エレクトロクロミック層の光透過を1つの状態(例えば、高光透過状態)から別の状態(例えば、低光透過状態)へ変化させるように、例えば、約1.5V未満、好ましくは約1.3V未満、より好ましくは約1.2V未満の特定の電圧を含むことができる。要素25:エレクトロクロミック組成物は、着色状態または透明状態でエレクトロクロミックデバイスに対する特定の太陽熱取得係数値を提供するように構成される。要素26:エレクトロクロミック組成物は、エレクトロクロミック組成物を通過する、またはエレクトロクロミック組成物からの、透過光または反射光の色偏差が、CIELAB色空間のa*軸とb*軸の10単位未満、例えば5単位未満である場合など、エレクトロクロミック組成物を通過する、またはエレクトロクロミック組成物からの、透過光または反射光の実質的にグレースケールの色を生成するようにスペクトル的に一致するエレクトロクロミック材料を含むことができる。要素27:エレクトロクロミックデバイスは、態様A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、および/またはOの構成要素および構成を任意の組み合わせでさらに含む。
【0408】
本発明の好ましい実施形態およびその多様性の例のみが、本開示において示され、説明される。本発明は、他の様々な組み合わせおよび環境で使用することができ、本明細書で表現されるような本発明の概念の範囲内で変更または修正することができることを理解すべきである。したがって、例えば、当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載の特定の物質、手順、および配置の多数の均等物を認識するか、または確認することができる。そのような均等物は、本発明の範囲内であると見なされ、以下の特許請求の範囲によって網羅される。