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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61M25/00 532
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022534515
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2020026490
(87)【国際公開番号】W WO2022009287
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーンモントリー ナワポン
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-208425(JP,A)
【文献】特開2014-195556(JP,A)
【文献】特開2005-296078(JP,A)
【文献】特開2018-158008(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0118204(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
中空状のシャフトと、
前記シャフトの先端に接続される金属製の先端チップと、を有し、
前記先端チップは、前記先端チップの先端と、前記シャフトの先端との間において、前記シャフトの軸方向に垂直な方向の外径が最大となる拡径部を有し、
前記拡径部の前記外径は、前記シャフトの先端の外径よりも大きく、
前記先端チップは、前記拡径部と前記シャフトの先端との間の外形が、外側に凹状となるように形成されている、
カテーテル。
【請求項2】
前記先端チップは、前記拡径部を挟む先端側と基端側との間の外形を有し、前記外形は、前記カテーテルの縦断面における傾きが徐々に変化する曲面で形成されている
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記先端チップの前記拡径部よりも先端側の外周面には、スリットが形成されている
請求項1又は請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記先端チップの外周面には、らせん状に延び且つ径方向外側に突出する突出部が形成されている
請求項1又は請求項2に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、慢性完全閉塞(CTO:Choronic total occlusion)のような血管を閉塞する閉塞物を除去して血流を改善するカテーテルが知られている。
【0003】
このようなカテーテルにおいては、硬い病変部位を通過するために先端に金属製の先端チップが設けられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-519957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硬い病変部位を通過させるカテーテルにおいては、病変部位を通過しやすくすることや、病変部位を通過させる際におけるカテーテルへの損傷を防止することが要請されている。
【0006】
本発明は、以上の要請に基づいてなされたものであり、その目的は、硬い部位を通過させるのに適したカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、一観点に係るカテーテルは、中空状のシャフトと、前記シャフトの先端に接続される金属製の先端チップと、を有し、前記先端チップは、前記先端チップの先端と、前記シャフトの先端との間において、前記シャフトの軸方向に垂直な方向の外径が最大となる拡径部を有し、前記拡径部の前記外径は、前記シャフトの先端の外径よりも大きい。
【0008】
上記カテーテルにおいて、前記先端チップは、前記拡径部を挟む先端側と、基端側との間の外形が、傾きが徐々に変化する曲面で形成されていてもよい。また、上記カテーテルにおいて、前記先端チップは、前記拡径部と前記シャフトの先端との間の外形が、外側に凹状となるように形成されていてもよい。また、前記先端チップの前記拡径部よりも先端側の外周面には、スリットが形成されていてもよい。また、前記先端チップの外周面には、らせん状に延び且つ径方向外側に突出する突出部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、硬い部位を通過させるのに適したカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るカテーテルの構成図である。
図2図1に示すカテーテルの先端近傍の構成図である。
図3】第2実施形態に係るカテーテルの先端近傍の構成図である。
図4】第3実施形態に係るカテーテルの先端近傍の構成図である。
図5】第4実施形態に係るカテーテルの先端チップの構成図である。
図6】第5実施形態に係るカテーテルの先端チップの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの実施形態に係るカテーテルについて図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0012】
本明細書において、「先端側」及び「先端方向」とは、カテーテルの長手方向に沿った方向(中空のシャフトの軸方向に沿う方向)であって、中空のシャフトに対して先端チップが位置する側及び方向を意味する。また、「基端側」及び「基端方向」とは、カテーテルの長手方向に沿った方向に沿う側及び方向であって、先端側及び先端方向と反対の側及び方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るカテーテルの構成図である。カテーテル1は、シャフト10と、シャフト10の基端側に設けられたコネクタ20と、シャフト10の先端側に接続された先端チップ30とを含む。
【0014】
図2は、図1に示すカテーテルの先端近傍の構成を示し、特に、領域Rの断面の拡大図である。シャフト10は、中空状の部材であり、コイル体11と、外層12と、内層13とを含む。
【0015】
コイル体11は、シャフト10を補強する補強体の一例であり、金属の素線をらせん状に巻回することによって形成されている。コイル体11は、1本の素線をらせん状に巻回して構成されたもの(単線コイル)でもよいし、複数の素線をらせん状に巻回して構成されたもの(撚線コイル)でもよい。カテーテル1の回転力を考慮すると、コイル体11は、撚線コイルとすることが好ましい。コイル体11の素線の金属材料としては、ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)、金、白金、タングステン、プラチナ、ニッケル、これらの元素を含む合金などであってよい。
【0016】
外層12は、例えば、樹脂で形成された層であり、コイル体11の外周を覆うように設けられている。外層12を形成する樹脂材料は、特に限定されず、例えばポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリエステル、ポリウレタン等であってよい。
【0017】
内層13は、例えば、樹脂で形成された層であり、コイル体11の内周を覆うように設けられている。内層13を形成する樹脂材料は、特に限定されず、シャフト10の内部に挿入する器具(ガイドワイヤ等)との摺動性を考慮すると、PTFE(ポリテトラフルオロチレン)が好ましい。
【0018】
シャフト10の先端部14には、中空状の金属製の先端チップ30が接続されている。先端チップ30は、本体部31と、被覆層32とを含む。
【0019】
本体部31は、金属材料で構成されている。本体部31を構成する金属材料は、特に限定されず、ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)、金、白金、タングステン、プラチナ、ニッケル、これらの元素を含む合金等としてもよい。なお、放射線透視画像下でカテーテル1の先端の位置を把握できるように、先端チップ30を放射線不透過性の金属材料で形成してもよい。
【0020】
被覆層32は、例えば、樹脂で形成された層であり、本体部31の外周を覆うように設けられている。被覆層32を形成する樹脂材料は特に限定されず、例えばポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリエステル、ポリウレタン等であってよい。
【0021】
先端チップ30は、先端とシャフト10の先端部14との間において、シャフト10の軸方向(長手方向)に垂直な方向の外径が最大となる拡径部33を有する。拡径部33における外径DT1は、シャフト10の先端部14の外径DSよりも大きくなっている。なお、拡径部33における本体部31自体の外径もシャフト10の先端部14の外径DSよりも大きくなっている。
【0022】
先端チップ30は、拡径部33から先端に向けて外径が小さくなるテーパー形状となり、拡径部33からシャフト10の先端部14に向けて外径が小さくなるテーパー形状となるように形成されている。先端チップ30の後端は外径が外径D2と同じであり、その後端の外周縁はシャフト10の先端部14の外周縁と繋がっている。シャフト10と先端チップ30とは外周が連続するように接続されている。
【0023】
先端チップ30の後端面とシャフト10の先端面とは、それぞれの面の少なくとも一部が接触するように、先端チップ30及びシャフト10が形成されており、先端チップ30の後端面とシャフト10の先端面とが接合している。図2に示すように、コイル11と本体部31とは、金属材料が接触している面を溶接で接合してもよい。また、被覆層32と外層12とは、樹脂が接触している部位を熱溶着で接合してもよい。
【0024】
カテーテル1を、硬い病変部(例えば石灰化した病変部)に対して進めた場合に、先端チップ30の拡径部33が通過した部分をシャフト10が通過することとなる。カテーテル1では、シャフト10の先端部14の外径は、拡径部33の外径よりも小さいので、病変部位とシャフト10とが接触する面積が低減する。接触面積の低減分、シャフト10が病変部に引っかかることや、病変部により損傷されることを適切に低減することができる。また、接触面積の低減分、カテーテル1を進める場合のシャフト10による接触抵抗を低減することができ、カテーテル1の押込み力(プッシュアビリティー)を向上させることができる。
【0025】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係るカテーテルの先端近傍の構成図であり、図2で示したようなカテーテルの先端の断面を示してある。第2実施形態に係るカテーテル1Aは、カテーテル1とは、先端チップの形状が異なっている。前述の実施形態と同様な部分については、同一符号を付し、重複する説明を省略する。第2実施形態に係る先端チップ40は、本体部41と、被覆層42とを含む。本体部41及び被覆層42は、形状が異なること以外は、本体部31及び被覆層32と同様である。
【0026】
先端チップ40は、先端とシャフト10の先端部14との間において、外径が最大となる拡径部43を有する。拡径部43における外径DT2は、シャフト10の先端部14の外径DSよりも大きくなっている。なお、拡径部43における本体部41自体の外径もシャフト10の先端部14の外径DSよりも大きくなっている。先端チップ40は、拡径部43よりも先端側から拡径部43を経てシャフト10の先端部14に至る外周面44を有する。図3に示すように、外周面44は、カテーテル1Aの縦断面における傾きが徐々に変化する外側に凸状の曲面、すなわち、なだらかな曲面で形成されている。傾きは、縦断面における外周面44の、カテーテル1Aの軸方向における長さに対する、カテーテル1Aの径方向における変化量を意味する。
【0027】
本実施形態に係るカテーテル1Aによると、第1実施形態の効果に加えて、カテーテル1Aを先端側に対して進めた場合に、先端チップ40の拡径部43や、拡径部43よりも基端側の外周面と接触する正常な血管への損傷の発生を適切に防止することができる。
【0028】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態に係るカテーテルの先端近傍の構成図であり、図2で示したようなカテーテルの先端の断面を示してある。第3実施形態に係るカテーテル1Bは、カテーテル1とは、先端チップの形状が異なっている。前述の実施形態と同様な部分については、同一符号を付し、重複する説明を省略する。第3実施形態に係る先端チップ50は、本体部51と、被覆層52とを含む。本体部51及び被覆層52は、形状が異なること以外は、本体部31及び被覆層32と同様である。
【0029】
先端チップ50は、先端とシャフト10の先端部14との間において、外径が最大となる拡径部53を有する。拡径部53における外径DT3は、シャフト10の先端部14の外径DSよりも大きくなっている。なお、拡径部53における本体部51自体の外径もシャフト10の先端部14の外径DSよりも大きくなっている。先端チップ50は、拡径部53よりもシャフト10の先端部14の外周面54が、外側に凹状の曲面で形成されている。
【0030】
カテーテル1Bを、硬い病変部(例えば石灰化した病変部)に対して進めた場合に、先端チップ50の拡径部53が通過した部分において、拡径部53よりも基端側の外周面54が、病変部と接触することをより効果的に低減することができる。これにより、外周面54が病変部に引っかかることを適切に低減することができる。また、先端チップ50の拡径部53が病変部と接触することを低減できるので、カテーテル1Bを進める場合の接触抵抗を低減することができ、カテーテル1Bの押込み力(プッシュアビリティー)を向上することができる。また、カテーテル1Bを、先端側に対して進めた場合に、先端チップ50の外周面54が正常な血管と接触することを低減でき、血管への損傷の発生を適切に防止することができる。
【0031】
[第4実施形態]
図5は、第4実施形態に係るカテーテルの先端チップの構成図であり、(A)は、先端チップの断面図であり、(B)は、先端チップの側面図である。第4実施形態に係る先端チップ60は、第1実施形態に係る先端チップ30に対して、スリット64を形成したものである。先端チップ60は、本体部61と、被覆層62とを含む。本体部61は、スリット64が形成されている以外は、本体部31と同様である。被覆層62は、スリット64内に入り込んでいる以外は、被覆層32と同様である。
【0032】
本体部61では、図5(B)に示すように、スリット64がらせん状に形成されている。スリット64は、本体部61を肉抜きすることによって、その柔軟性を向上させるために設けられている。本実施形態では、スリット64がらせん状に形成されているので、先端チップ60が何れの方向に対しても同等の曲がり易さで曲がることができるようになっている。また、スリット64のピッチが先端に向かって小さくなるように形成されており、先端チップ60の先端領域が特に柔軟となっている。このため、先端チップ60によって血管を穿孔する危険性を低減させることができる。
【0033】
先端チップ60においては、図5(A)に示すように、被覆層62の樹脂が本体部61のスリット64の内部まで入り込むように構成されている。
【0034】
先端チップ60は、スリット64が設けられているので、先端チップ60の硬さを維持しつつ、曲がり易くすることができる。また、先端チップ60の外周面が被覆層62で覆われているので、先端チップ60の表面を平滑化することができる。この結果、先端チップ60を備えるカテーテルを、硬い病変部を通過させ易く、末梢血管のような曲がりくねった血管にも良好な追従性を示すようにすることができる。
【0035】
また、先端チップ60では、被覆層62の樹脂がスリット64の内部に入り込むようにしているので、被覆層62を本体部61に強固に固定することができる。したがって、外部との摩擦によって被覆層62が本体部61から剥離することを適切に防止できる。これにより、硬い病変部に先端チップ60を通過させた場合でも、先端チップ60の外周面の平滑性を維持することができる。
【0036】
[第5実施形態]
図6は、第5実施形態に係るカテーテルの先端チップの構成図であり、(A)は、先端チップの側面図であり、(B)は、(A)に示す形態から変形した変形例に係る先端チップの側面図である。
【0037】
先端チップ70は、本体部71を含む。本体部71は、形状が異なること以外は、本体部31と同様である。先端チップ70は、先端とシャフト10の先端部14との間において、外径が最大となる拡径部72を有する。拡径部72は、シャフト10の軸方向に対して所定の幅を有している。拡径部72における外径は、シャフト10の先端部14の外径DSよりも大きくなっている。先端チップ70の本体部71の表面(外周面)には、らせん状に延び且つ本体部71の径方向外側に突出する突出部73が設けられている。突出部73は、拡径部72の範囲のみに設けられている。この先端チップ70によると、突出部73が設けられているので、硬い病変部位への貫通性を向上することができる。
【0038】
また、先端チップを、図6(B)に示す先端チップ80としてもよい。先端チップ80は本体部81を含む。本体部81は、形状が異なること以外は、本体部31と同様である。先端チップ80は、先端とシャフト10の先端部14との間において、外径が最大となる拡径部82を有する。拡径部82は、シャフト10の軸方向に対して所定の幅を有している。拡径部82における外径は、シャフト10の先端部14の外径DSよりも大きくなっている。先端チップ80の本体部81の表面には、らせん状に延び且つ本体部81の径方向外側に突出する突出部83が設けられている。突出部83は、拡径部82よりも先端側から拡径部82の後端までの範囲に設けられている。この先端チップ80によると、突出部83が拡径部82よりも先端側から設けられているので、硬い病変部位への貫通性を更に向上することができる。
【0039】
本明細書で開示している技術は、上述の実施形態及び変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0040】
前述の実施形態では、シャフト10は、その補強体の一例としてコイル体11を有しているが、本発明は、この形態に限定されるわけではなく、補強体に、例えば、ブレードを採用してもよい。補強体にブレードを用いる場合には、ブレードと先端チップ30,40,50とを溶接によって接合してもよい。
【0041】
例えば、上述の第4実施形態では、第1実施形態に係る先端チップ30に対してスリットを設けるようにしていた。また、上述の第5実施形態では、第1実施形態に係る先端チップ30に対して、突出部を設けるようにしていた。しかし、本発明はこれに限られず、例えば、先端チップ40,50に、スリットを形成するようにしてもよいし、突出部を形成するようにしてもよい。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1,1A,1B カテーテル
10 シャフト
11 コイル体(補強体)
12 外層
13 内層
14 先端部
20 コネクタ
30,40,50,60,70,80 先端チップ
31,41,51,61,71,81 本体部
32,42,52,62 被覆層
33,43,53,63,72,82 拡径部
44,54 外周面
64 スリット
73,83 突出部
R 領域
DT1,DT2,DT3,DT4 拡径部の外径
DS 先端部の外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6