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特許7486591RFID電子物品監視システムにおける信頼性及び効率性向上のためのRFID装置の制御
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  • 特許-RFID電子物品監視システムにおける信頼性及び効率性向上のためのRFID装置の制御 図1
  • 特許-RFID電子物品監視システムにおける信頼性及び効率性向上のためのRFID装置の制御 図2A
  • 特許-RFID電子物品監視システムにおける信頼性及び効率性向上のためのRFID装置の制御 図2B
  • 特許-RFID電子物品監視システムにおける信頼性及び効率性向上のためのRFID装置の制御 図3
  • 特許-RFID電子物品監視システムにおける信頼性及び効率性向上のためのRFID装置の制御 図4
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  • 特許-RFID電子物品監視システムにおける信頼性及び効率性向上のためのRFID装置の制御 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】RFID電子物品監視システムにおける信頼性及び効率性向上のためのRFID装置の制御
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/16 20060101AFI20240510BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20240510BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240510BHJP
   G08B 13/22 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01Q9/16
G06K7/10 288
G06K19/077 280
G08B13/22
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2022548167
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 US2021016842
(87)【国際公開番号】W WO2021158931
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】62/970,913
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518000176
【氏名又は名称】エイヴェリー デニソン リテール インフォメーション サービシズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON RETAIL INFORMATION SERVICES LLC
【住所又は居所原語表記】8080 Norton Parkway, Mentor, Ohio 44060 Uni-ted States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】フォースター,イアン,ジェイ
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0200539(US,A1)
【文献】特開平11-340719(JP,A)
【文献】特表2015-511412(JP,A)
【文献】特表平10-512412(JP,A)
【文献】特表2008-519530(JP,A)
【文献】特表2009-511999(JP,A)
【文献】特開2005-258793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/16
G06K 7/10
G06K 19/077
G08B 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFID対応電子物品監視(EASシステム用のRFID装置の製造方法であって、
ンテナを用意するステップと、
ループ状の導電体である導電性ループに接続されたRFIDチップを用意するステップであって、前記RFIDチップおよび前記導電性ループは、前記アンテナから物理的に離隔されている、ステップと、
前記RFIDチップを前記アンテナに結合するステップであって、前記導電性ループは、前記アンテナの材料とは異なる材料で形成され、前記アンテナよりも高い抵抗を有するように構成され、それにより、前記アンテナは、相対的に低い無線周波数(RF)導電性を有し、前記RFID装置のピーク感度を減少させ、前記RFID装置の関連帯域幅を増加させるステップと、
を含む製造方法。
【請求項2】
前記相対的に低いRF導電性でアンテナを構成するステップは、1dB以上のピーク感度の減少を引き起こす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記相対的に低いRF導電性でアンテナを構成するステップは、10%以上の帯域幅の増加を引き起こす、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記相対的に低いRF導電性でアンテナを構成するステップは、10%を超える帯域幅の増加と共に、1dBを超えるピーク感度の減少を引き起こす、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アンテナを用意するステップは、導電性箔材料よりも低い導電性を有する導電性インクを含む導電性材料でアンテナを形成するステップを含む、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記導電性インクの導電性は、前記箔材料の導電性よりも10%以上低い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性インクの導電性は、前記導電性インクと同じ厚さの前記箔材料導電性よりも10%以上低い、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アンテナを用意するステップは、ピーク感度を減少させ、前記RFID装置の帯域幅を増加させるために、相対的に薄い厚さで前記アンテナを用意するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アンテナの厚さは、0.1μm~10μmの範囲であり、前記RFID装置のピーク感度を3dB程減少させ、それに応じて前記RFID装置の帯域幅を10%程増加させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アンテナの厚さは、前記アンテナを形成する材料における1つの表皮深さ以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記アンテナを用意するステップは、導電性材料と非導電性材料との組み合わせで前記アンテナを形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アンテナを用意するステップは、前記アンテナに1つ以上の孔を形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記RFIDチップ及び前記アンテナとは別に、制御層を前記RFID装置に組み込むステップをさらに含み、前記制御層は、無線周波数エネルギーを吸収するように構成された材料で少なくとも部分的に形成される、請求項1~12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記導電性ループは、前記アンテナに使用される導電性箔材料よりも低い導電性を有する導電性インクで形成される、請求項1~13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
前記導電性インクの導電性は、前記箔材料の導電性よりも10%以上低い、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記導電性インクの導電性は、前記導電性インクと同じ厚さの前記箔材料導電性よりも10%以上低い、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
RFID対応電子物品監視システムであって、
アンテナと、前記アンテナに結合されたRFIDチップとを含む少なくとも1つのRFID装置と、
第1の読み取りゾーンと、
第2の読み取りゾーンと、
前記第1の読み取りゾーンと前記第2の読み取りゾーンとの間に位置する移行ゾーンとを含み、
前記少なくとも1つのRFID装置の前記アンテナは、前記少なくとも1つのRFID装置のピーク感度を減少させ、前記少なくとも1つのRFID装置の帯域幅を増加させ、前記少なくとも1つのRFID装置が前記第1の読み取りゾーンにある間は前記第1の読み取りゾーンでのみ読み取られ、前記第2の読み取りゾーンにある間は前記第2の読み取りゾーンでのみ読み取られるようにするために、減少した無線周波数(RF導電性を有するように構成されている、
RFID対応電子物品監視システム。
【請求項18】
前記減少したRF導電性で前記アンテナを構成することにより、1dB以上のピーク感度の減少を引き起こす、請求項17に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項19】
前記減少したRF導電性で前記アンテナを構成することにより、10%以上の帯域幅の増加を引き起こす、請求項17に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項20】
前記減少したRF導電性でアンテナを構成することにより、10%を超える帯域幅の増加と共に、1dBを超えるピーク感度の減少を引き起こす、請求項17に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項21】
前記アンテナは、導電性箔材料よりも低い導電性を有する導電性インクで形成される、請求項1720の何れかに記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項22】
前記導電性インクの導電性は、前記箔材料の導電性よりも10%以上低い、請求項21に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項23】
前記導電性インクの導電性は、前記導電性インクと同じ厚さの前記箔材料導電性よりも10%以上低い、請求項22に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項24】
前記アンテナを用意するステップは、ピーク感度を減少させ、前記RFID装置の帯域幅を増加させるために、相対的に薄い厚さでアンテナを用意するステップを含む、請求項17に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項25】
前記アンテナは、0.1μm~10μmの範囲の厚さを有し、前記RFID装置のピーク感度を3dB程減少させ、それに応じて前記RFID装置の帯域幅を10%程増加させる、請求項24に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項26】
前記アンテナの厚さは、前記アンテナを形成する材料における1つの表皮深さ以下である、請求項24に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項27】
前記アンテナは、導電性材料と非導電性材料との組み合わせで形成される、請求項1726の何れかに記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項28】
少なくとも1つの孔が前記アンテナに規定されている、請求項17に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項29】
前記少なくとも1つのRFID装置は、前記RFIDチップ及び前記アンテナから分離された制御層を含み、前記制御層は、無線周波数エネルギーを吸収するように構成された材料で少なくとも部分的に形成される、請求項1718の何れかに記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項30】
前記少なくとも1つのRFID装置は、ループ状の導電体である導電性ループに接続されたRFIDチップを含み、前記RFIDチップおよび前記導電性ループは、前記アンテナから物理的に離隔している、請求項1729の何れかに記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項31】
前記導電性ループは、前記アンテナに使用される導電性箔材料よりも低い導電性を有する導電性インクで形成される、請求項30に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項32】
前記導電性ループは、前記アンテナよりも高い抵抗を有するように構成される、請求項30に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【請求項33】
前記導電性ループは、前記アンテナの材料と異なる材料で形成される、請求項32に記載のRFID対応電子物品監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月6日に出願された米国仮特許出願第62/970,913号の利益を主張し、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、無線周波数識別(「RFID」)装置に関する。より具体的に、本発明は、RFID装置を使用する電子物品監視(「EAS」)システムにおける信頼性及び効率性のためにRFID装置の読み取り範囲を制御することに関する。
【背景技術】
【0003】
小売店では、陳列及び/又は保管中の製品の正確な個数が重要である。更に、適所に効果的な盗難防止システムを備えることが重要である。これらの機能の全てを実行するために、RFIDタグ及びラベル(本明細書において、まとめて「RFID装置」と呼ぶ)が用いられている。
【0004】
RFID技術を使用するEASシステムは、図1に示すように、2つの主要な読み取りゾーン10、20を有し、これらは、それぞれ関連のRFIDリーダを含む。第1の読み取りゾーン10は、製品が消費者に提示される商店内の領域(本明細書において、「在庫ゾーン」と呼ぶ)であり、第2の読み取りゾーン20は、 それらを盗もうとしていることを示す一種の警報をトリガするよう、適切に解除されていないRFID装置を感知し得る、商店の出口領域(本明細書において、「感知ゾーン」と呼ぶ)である。顧客がアイテムを適切に購入した場合、レジ係はこれに関連するRFID装置を除去又は解除する。RFID装置が除去又は解除されていない場合、RFIDリーダは、装置を読み取り、感知ゾーン20で警報又はその他の警告をトリガする。
【0005】
上述のシステムが広く普及しているが、一部欠点が存在する。EASシステム用のRFID装置/システムを用いる場合、1つの一般的な問題は、特定の状況におけるRFID装置の読み取り範囲が、在庫ゾーン10内のRFID装置が感知ゾーン20内で読み取られるほど十分に大きいか、その逆の場合も同様である。このようなリスクを減らすために、在庫ゾーン10と感知ゾーン20との間に移行ゾーン30が頻繁に備えられ、2つの読み取りゾーンを物理的に分離する。しかし、動作周波数でより高い感度を有する異なるRFID装置及び/又は関連のRFID装置の性能に異なる影響を与える異なる物品により、移行ゾーン30は相対的に大きい必要があり、結果として小売店は在庫を展示するために未使用空間の相当部分、即ち、縮小した在庫ゾーンを有している。従って、移行ゾーン30のサイズが減少するように構成されたRFID装置を提供することが有利である。
【発明の概要】
【0006】
以下に説明及び請求される装置、システム及び方法において、個別に又は共に実施し得る本主題の様々な態様がある。これらの態様は、単独で、又は本明細書に説明する主題の他の態様と組み合わせて使用され得、これらの態様を共に記載することは、これらの態様を個別に使用したり、又は本明細書に添付の請求範囲に明示されているように個別に若しくは異なる組合わせで請求することを排除するものではない。
【0007】
一態様において、RFID対応(enabled)電子物品監視システム(以下、「EASシステム」)用のRFID装置の製造方法が開示されている。一部の実施形態において、製造方法は、相対的に低いRF導電性を有するRFID装置を備えるステップを含む。RFID装置の製造方法は、RFIDチップ及びアンテナを備えるステップと、RFIDチップをアンテナに結合するステップとを含む。一部の実施形態において、RFID装置のアンテナは、RFID装置のピーク感度を減少させ、RFID装置の帯域幅を増加させるために、相対的に低いRF導電性で構成される。
【0008】
別の態様において、RFID対応EASシステムは、アンテナを有する少なくとも1つのRFID装置を含む。EASシステムは、第1の読み取りゾーンと第2の読み取りゾーンとを更に含み、その間に相対的に小さな移行ゾーンが位置している。移行ゾーンは、少なくとも1つのRFID装置のピーク感度を減少させ、少なくとも1つのRFID装置の帯域幅を増加させるために、少なくとも1つのRFID装置のアンテナのRF導電性を減少させることによって、第1及び第2の読み取りゾーンに比べて小さく規定される。少なくとも1つのRFID装置のピーク感度の減少は、RFID装置が第2の読み取りゾーンに物理的に存在している間は、第1の読み取りゾーンで読み取り/感知されず、第1の読み取りゾーンに物理的に存在している間は、第2の読み取りゾーンで読み取り/感知されないようにする。帯域幅の増加による少なくとも1つのRFID装置のピーク感度の減少は、EASシステムの第1及び第2の読み取りゾーン内の少なくとも1つのRFID装置の最適な性能を確保すると共に、第1の読み取りゾーン又は第2の読み取りゾーンの何れかにRFID装置の偶発的な読み取りがないようにする。従って、各々のRFIDアンテナの導電性は、第1の読み取りゾーン及び第2の読み取りゾーン内のアンテナの性能を損なうことなく、ピーク感度が減少するように選択される。RFID装置のピーク感度の減少もまた、EASシステムの移行ゾーンのサイズにも直接的な影響を与える。特に、少なくとも1つのRFID装置のピーク感度の減少は、少なくとも1つのRFID装置の偶発的な読み取りがないようにするので、自動的にEASシステムの移行ゾーンのサイズが減少する結果をもたらす。EASシステムの少なくとも1つのRFID装置の最適化した性能は、EASシステムの全般的な信頼線及び効率性を向上させると共に、EASシステムで移行ゾーンのサイズが減少するというさらなる利点を提供する。
【0009】
別の態様において、複数のRFID装置を含むRFID対応EASシステムの性能を最大化する方法が開示されている。この方法は、同じEASシステムによってモニタリングされるように構成された異なる物品にタグ付けするために、異なる構成を有するRFID装置を製造するステップを含む。例えば、第1のRFID装置は、第1のRFIDチップ及び第1のアンテナを含むように製造される。第1のアンテナは、第1のRFIDチップに結合されて、第1の物品と関連するように構成された第1のRFID装置を規定する。また、第2のRFIDチップ及び第2のアンテナを有する第2のRFID装置が備えられ、第2のRFIDチップは、第2のRFIDアンテナに結合される。第2のRFID装置は、第2の物品と関連するように構成される。2つの物品は、関連のRFID装置の性能に異なる影響を与えるように構成され、2つのアンテナは、予め定められた周波数で同様の読み取り範囲を有するように、第1及び第2の物品の特性に少なくとも部分的に基づいて異なって構成される。一実施形態において、第2のアンテナは、第1のアンテナよりも大きなサイズを有するように構成され、第2のアンテナは、第1のアンテナを形成する第1の材料よりも導電性が低い第2の材料で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】RFID装置を使用する従来の電子物品監視システムの例示的な図である。
図2A】従来のアンテナを有するRFID装置に対する周波数と読み取り範囲との関係を示すグラフである。
図2B】本開示の態様による低い導電性アンテナを有するRFID装置に対する周波数と読み取り範囲との関係を示すグラフである。
図3】異なる導電性レベルを備えたアンテナを有するRFID装置に対する周波数と読み取り範囲との関係を示すグラフである。
図4】本開示の態様による減少した導電性アンテナの例示的な実施形態の上面図である。
図5】本開示の態様による減少した導電性RFID装置の例示的な実施形態の正面図である。
図6】本開示の態様による減少した導電性RFID装置の他の例示的な実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態を本明細書に開示しているが、開示している実施形態は、多様な形態で実施し得る本発明の単なる例示に過ぎないことを理解すべきである。従って、本明細書で開示する特定の細部事項は限定されると解釈してはならず、単に特許請求の範囲の根拠として、かつ実質的に任意の適切な方法で本発明を多様に使用するように当業者に教示するための代表的な根拠として解釈しなければならない。
【0012】
EASシステムの在庫ゾーン10は、一般的に様々なRFID装置でタグ付けした様々な物品を含み、各々のRFID装置は異なって構成される。(関連のRFID装置の性能に異なる影響を与える)異なって構成された物品及びRFID装置自体の構成が異なるため、EASシステム内の一部のRFID装置は、EASシステムのRFIDリーダの動作周波数で特に高い感度を有する。この高い感度により、そのようなRFID装置が大きな読み取り範囲を有する結果となり、これはRFID装置が存在しない読み取りゾーンのRFIDリーダによってそのようなRFID装置が読み取られる可能性(即ち、誤警報)を増加させ得る。従って、本開示の一態様によると、RFID装置の構成は、その読み取り範囲を減少させるために従来の設計から変更され得る。
【0013】
RFID装置の性能特性に影響を与え得るいくつかの要因があり、RFID装置の性能及び読み取りの範囲を変えるために、(個別に又は組合わせて)RFID装置に様々な変更が行なわれ得る。最も基本的に、RFID装置は、アンテナに結合されたRFIDチップを含み、RFIDチップは様々な情報(例えば、固有識別子)を含み、アンテナはRFIDリーダから信号又はエネルギーを受信し、信号をRFIDリーダに返すように構成される。アンテナのサイズ及び材料の構成は、導電性に影響を与え、これは関連のRFID装置の読み取り範囲及び性能に影響を与える。一般的に言えば、大きなアンテナ(即ち、相対的に大きなフットプリント及び/又は厚さを有するもの)は、同じ材料で形成された小さなアンテナよりも高い導電性を有し、従って、大きな読み取り範囲を有する傾向がある。同様に、所定のアンテナのサイズにおいて、相対的に高い導電性を有する材料で形成されたアンテナは、低い導電性を有する材料で形成されたアンテナよりも大きな読み取り範囲を有し得る。
【0014】
図2A及び図2Bは、アンテナの導電性における変化が異なる製品タイプの読み取り範囲にどのような影響を与えるかを示している。図2A及び図2Bにおいて、(図2Aの40、図2Bの40’で示す)破線は、デニム製品に取り付けられたRFID装置を表し、(図2Aの50、図2Bの50’で示す)実線は、デニムよりもかなり異なる誘電特性を有する厚紙に取り付けられたRFID装置を表す。EASシステムのRFIDリーダの動作周波数は、線60で表される。図2AのRFID装置のアンテナは、従来の設計に従って提供されるので、相対的に高い導電性を有する。これは、高い導電性材料(例えば、アルミニウム箔)及び/又は略10μm(ミクロン)程度の厚さで提供される材料で構成される、そのようなRFID装置のアンテナを含み得る。対照的に、図2BのRFID装置の変更されたアンテナ(図2Aに表すアンテナと同じフットプリントを有し得る)は、本開示に従って提供され、相対的に低い導電性を有するアンテナ材料(例えば、アルミニウム箔と比較して低い導電性を有する導電性インク)及び/又は薄い厚さ(例えば、約0.1μm~10μmの範囲の厚さ)で提供された材料を使用することによって達成され得る。
【0015】
図2A及び図2Bを比較すると分かるように、図2Aの更に高い無線周波数(RF)導電性アンテナは、図2Bのアンテナよりも大きなピーク感度を有し、動作周波数60で更に高い感度及び高い読み取り範囲を有する。動作周波数で読み取り範囲を減少させることによって、本開示によるアンテナは誤警報をもたらす可能性が低い。また、本開示によるアンテナの短い読み取り範囲は、EASシステムの移行ゾーン30のサイズの減少を可能にし、更に大きな在庫ゾーン10を可能にする。
【0016】
さらに、図2Aの従来のアンテナは、比較的狭い帯域幅を有し、アンテナの感度(及び読み取り範囲)がピーク感度から急激に低下することが分かる。この狭い帯域幅の結果として、異なる周波数で異なる物品に関連付けられる2つのアンテナの感度と読み取り範囲との間に相対的に大きな差がある可能性が更に高い。例えば、動作周波数60における感度と読み取り範囲との差は、図2Aの「A」に表される。本開示による低い導電性アンテナは、大きな帯域幅を有し、ピーク感度から離れたアンテナの感度と読み取り範囲が徐々に減少する。帯域幅を大きくする(そして感度と読み取り範囲の可変性を小さくする)ことによって、図2Bの「B」に表すように、動作周波数60を含む異なる周波数で異なる物品に関連付けられたアンテナの感度と読み取り範囲とが似る可能性が更に高い。アンテナの性能を更に安定させることによって(動作周波数60における感度範囲を小さくすることを含む)、誤警報を避けるために、特定の物品を感知ゾーン20から離れて配置する必要が少なくなるので、在庫ゾーン10への物品の配置により柔軟性がある。例えば、少なくとも部分的にその特性に基づいて、綿のシャツに比べて相対的に厚いアンテナを有するRFID装置でタグ付けしたデニムは、第1の読み取りゾーンで更に遠く配置され得る。
【0017】
図2Bは、従来のRFID装置のアンテナに比べて減少したRF導電性を有するアンテナを表し、結果として、ピーク感度が減少し、帯域幅が増加する。図2Bに表すアンテナは、「中間」又は「中級」の導電性を有すると見なされ得るが、これは本開示の態様を使用することによってさらに減少し得る。図3は、アンテナのRF導電性が減少した時の周波数に対する読み取り範囲の変化を表し、実線70は(図2Aのように)従来のRFID装置の高い導電性アンテナを表し、破線80は(図2Bのように)「中間」のアンテナの導電性を有するRFID装置を表し、点線90は低いアンテナの導電性を有するRFID装置を表す。図3に示すように、減少したアンテナのRF導電性は、減少した読み取り範囲及び増加した帯域幅の両方に関連性があり得、十分に「低い」導電性アンテナは、非常に広い周波数範囲で実質的に均一な読み取り範囲をもたらす。
【0018】
一部の実施形態において、相対的に低いRF導電性でアンテナを構成することにより、1dB、1.5dB、2.0dB、2.5dB、3.0dB、3.5dB、4.0dB、4.5dB、5.0dB以上のピーク感度の減少を引き起こす。
【0019】
他の実施形態において、相対的に低いRF導電性でアンテナを構成することにより、5%、6%、7%、8%、9%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%以上の帯域幅の増加を引き起こす。
【0020】
また他の実施形態において、相対的に低いRF導電性でアンテナを構成することにより、上述の帯域幅の増加と共に、上述のピーク感度の減少を引き起こす。
【0021】
従って、本開示による技術は、EASシステムのRFID装置の性能を安定させるために使用され得るということを理解すべきである。例えば、本開示による技術は、2つのRFID装置がかなり異なって構成されたアンテナ(例えば、他のものよりもはるかに大きなアスペクト比を有するもの)を有しており、かなり異なる物品に関連していても、EASシステムの動作周波数で2つのRFID装置の読み取り範囲を同一、又は少なくとも実質的に同一にするために使用され得る。使用される特定の技術及び本開示によるRFID装置のアンテナの特定の構成は、様々な要因に依存し得る。これらの要因は、EASシステムのRFIDリーダの動作周波数、臨界の読み取り範囲、RFID装置に関連付けられる物品、RFID装置が関連する物品とペアリングされる方式、関連する物品上のRFID装置の位置、RFID装置の任意の必要な構造的特徴(例えば、アンテナの材料構成及び/又はサイズ)、及びこれらの組み合わせを含むが、これに限定されない。特定の構成が所望の性能特性をもたらすか否かを決定するために、異なるアンテナの構成が(例えば、電磁界シミュレーションによって)テストできる。
【0022】
上述の通り、導電性インクを使用すること及び/又はアンテナの厚さを減少させることは、アンテナの導電性を減少させるための可能なアプローチである。導電性インクを使用する場合、インク中の導電性材料の量を調節することによって(例えば、インク中の非導電性材料に対する導電性材料の比率を調節することによって)、特定のサイズを有するアンテナの導電性を変えることができる。非導電性材料に対する導電性材料の比率が減少するにつれて(即ち、導電性インクに低い導電性材料が含まれるときに)、アンテナの導電性は、図3に示す関係に従って減少し得る。
【0023】
一実施形態において、導電性インクの相対導電性は、アンテナに使用される箔材料の導電性よりも5%、6%、7%、8%、9%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%又は15%以上低い。
【0024】
他の実施形態において、導電性インクの相対導電性は、同じ厚さの箔材料に対する箔材料の導電性よりも5%、6%、7%、8%、9%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%又は15%以上低い。
【0025】
アンテナの厚さに関しては、所定の材料タイプ(例えば、アルミニウム箔又は導電性インク)に対して、所望の導電性及び装置性能に達するためにアンテナの厚さが減少し得る。一実施形態において、RFID装置のピーク感度を3dB程減少させ、それに応じてRFID装置の帯域幅を10%程増加させるために、アンテナの厚さは0.1μm~10μmの範囲にある。アンテナの厚さもまた、動作周波数でアンテナを形成する材料における1つの表皮深さ以下であり得る。
【0026】
アンテナの材料組成及び/又は厚さを変えることが、その導電性を変える唯一の方法ではないことを理解すべきである。例えば、材料は、図4に示すように、省略されたりアンテナの内部から除去され得る。図4の実施形態において、アンテナ100は、その外周120内に規定された複数の開口又は孔110が備えられる。同じ材料で形成され、同じサイズ及び外周を有するアンテナと比較すると、図4のアンテナ100は、孔110がアンテナ100に抵抗を効果的に導入するため、低い導電性を有し得る。孔110は、任意の適切なアプローチ(例えば、導電性インクを特定のパターンで印刷したり、従来のアンテナを形成してから、選択された位置で材料を除去して孔を規定すること)によって形成することができ、孔の数、位置、及び構成は、本開示の範囲から逸脱することなく採用され得ることを理解すべきである。一般的に、孔のサイズ及び/又は数が増加するほど、RFID装置の読み取り範囲と共にアンテナの導電性が減少する。
【0027】
図5は、RFID装置の帯域幅及び性能を制御するための別の可能なアプローチを示す。図5のRFID装置130において、RFIDチップ140及びアンテナ150は、(例えば、紙又はプラスチック材料で形成される)非導電性基板160の一面に関連している。制御層170は、基板160の反対面に関連し、制御層170は導電性インク、薄い蒸着金属、又は他の無線周波数吸収材料で形成される。制御層170は、基板160の後面上の積層及び/又はサーマル若しくはインクジェットプリンタによる印刷を含み、当業界で公知の任意の方式で適用され得るが、これに限定されない。制御層170は、基板160の関連の表面全体にわたって延在するか、その一部のみを覆うことができる。
【0028】
制御層170は、本開示の態様に従って、アンテナ150によって受信されるRFエネルギーの一部を吸収して、アンテナ150の読み取り範囲を効果的に減少させ得る。アンテナと同様に、制御層170の構成(そのサイズ、厚さ及び材料組成を含む)は、その導電性を調節するために変えることができ、制御層170の導電性が増加することによって、(例えば、図3に示す関係によって)関連アンテナ150の導電性を効果的に減少させる。制御層170の使用は、アンテナの読み取り範囲及び帯域幅を変更する場合に有利であり得るが、アンテナ自体を変更し得る範囲には制限がある。
【0029】
図6は、関連アンテナの性能を変更するために、二次構造が使用され得る他の例示的なRFID装置180を示す。図6の実施形態において、RFID装置180は、図5の実施形態のように、RFIDチップ190及びアンテナ200を含む。しかし、(例えば、従来の設計によるパッドを使用して)RFIDチップ190がアンテナ200と物理的に接続されるのではなく、図5のように、RFIDチップ190はアンテナ200に物理的に離隔している(ただし、まだ結合されている)反応性ストラップ220を規定するように、導電性ループ210の代わりに接続される。図5の制御層170と同様に、導電性ループ210は、本開示の態様に従って、アンテナ200によって受信されないRFエネルギーの一部を吸収して、アンテナ200の読み取り範囲を効果的に減少させる。アンテナ又は制御層に関して上述したように、導電性ループ210の構成(サイズ、厚さ及び材料組成を含む)は、その導電性を調節するために変えることができ、(例えば、図3に示す関係によって)導電性ループ210の導電性が増加することによって、関連アンテナ200の導電性を効果的に減少すると共に、関連アンテナ200の感度を減少させる。一部の実施形態において、導電性ループ210は、アンテナ200に使用されるものと異なる導電性材料で製造される。例えば、アンテナ200が銅で作られる場合、導電性ループはアルミニウムで作られ得る。別の実施形態において、導電性ループは、アンテナに使用される導電性箔材料よりも低い導電性を有する導電性インクで形成される。従って、導電性ループ210は、アンテナに比べて更に大きな抵抗を有するように構成され得る。
【0030】
上述の実施形態は、本発明の原理における適用例の一部を例示するものであることを理解するであろう。本明細書で個別に開示又は請求する特徴の組み合わせを含む、請求する本発明の思想や範囲を外れることなく、当業者によって多数の変更が行われ得る。かかる理由で、本明細書の範囲は上記説明に制限されないが、以下の請求範囲に記載されており、請求範囲は、本明細書で個別に開示又は請求する特徴の組み合わせを含む、本明細書の特徴に関するものであることが理解される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6