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特許7486594ロック用構成要素を有する6軸位置決めシステム
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  • 特許-ロック用構成要素を有する6軸位置決めシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ロック用構成要素を有する6軸位置決めシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20240510BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B25J17/02 Z
B25J11/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022554628
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021056197
(87)【国際公開番号】W WO2021180853
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】102020106741.0
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505257752
【氏名又は名称】フィジック インストゥルメント(ピーアイ)ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザンデル,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,クリスティアン
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0016309(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第834383(EP,A1)
【文献】米国特許第5987726(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0294285(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004004313(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006011823(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第10255950(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第107538231(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6軸位置決めシステム(1)であって、基部(2)と、可動ユニット(3)と、6つの可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3;7.1,7.2,7.3)とを備え、各可変長アクチュエータの一端(8、12)は前記基部(2)に接続され、各可変長アクチュエータの他端(9、14)は前記可動ユニット(3)に接続され、少なくとも1つの追加の可変長構成要素(16)が設けられ、その一端(17)は前記基部(2)に接続され、その他端(18)は前記可動ユニット(3)に接続され、前記追加の可変長構成要素(16)は、前記6軸位置決めシステム(1)が前記追加の可変長構成要素(16)によって前記可動ユニット(3)の少なくとも特定の位置において解放可能にロックされ得るように設計され、前記追加の可変長構成要素(16)は解放可能なロック用ブレーキ(19)を有し、前記追加の可変長構成要素(16)は、これが6つの被駆動可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3;7.1,7.2,7.3)の運動によって受動的に可動であるように設計され、
6つの前記可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3;7.1,7.2,7.3)は、2つのグループ(4、6)に分割され、第1のグループ(4)の可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3)は、前記基部(2)上において第2のグループ(6)の可変長アクチュエータ(7.1,7.2,7.3)によって境界付けられる領域内において配置され、および前記可動ユニット(3)上において前記第2のグループ(6)の可変長アクチュエータ(7.1,7.2,7.3)によって境界付けられる領域内において配置され、これにより、前記第1のグループ(4)の可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3)は、前記第2のグループ(6)の可変長アクチュエータ(7.1,7.2,7.3)のさらに内側に配置され、少なくとも1つの前記追加の可変長構成要素(16)は、前記基部(2)上および前記可動ユニット(3)上において、前記第1のグループ(4)の可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3)のさらに外に配置されることを特徴とする、6軸位置決めシステム(1)。
【請求項2】
前記追加の可変長構成要素(16)は、前記6軸位置決めシステムが前記6軸位置決めシステム(1)の作業空間全体において解放可能にロックされ得るように設計されることを特徴とする、請求項1に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項3】
前記解放可能なロック用ブレーキ(19)はピエゾブレーキであることを特徴とする、請求項1または2に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項4】
前記解放可能なロック用ブレーキ(19)は吸引空気ブレーキ(真空ブレーキ)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項5】
前記追加の可変長構成要素(16)のうちの少なくとも2つが、前記6軸位置決めシステム(1)をロックするために提供されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項6】
3つの追加の可変長構成要素(16)が、前記6軸位置決めシステム(1)をロックするために提供されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項7】
前記追加の可変長構成要素(16)は、ロックされた状態において前記6軸位置決めシステム(1)の剛性および固有振動数を増大させるように設計されることを特徴とする、請求項5または6に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項8】
前記追加の可変長構成要素(16)が、垂直線または前記基部(2)によって広がる平面に対する垂線に関して最大±45°の角度範囲で可動に配置されるよう、前記追加の可変長構成要素(16)は、長さが可変であり、前記基部(2)および前記可動ユニット(3)に枢動可能に接続されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの追加の可変長構成要素(16)は、前記基部(2)上および前記可動ユニット(3)上において、前記第1のグループ(4)の可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3)のさらに外に、前記第1のグループ(4)の可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3;7.1,7.2,7.3)と前記第2のグループ(6)の可変長アクチュエータ(7.1,7.2,7.3)との間の領域に配置されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項10】
前記第1のグループ(4)の3つの可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3)の各々が垂直線または前記基部(2)によって広がる平面に対する垂線に関して最大±30°の角度範囲で可動に配置されるように、前記第1のグループ(4)の3つの前記可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3)は前記基部(2)および前記可動ユニット(3)に長さ可変かつ枢動可能に接続されることと、前記第2のグループ(6)の3つの可変長アクチュエータ(7.1,7.2,7.3)の各々が水平線または前記基部(2)によって広がる平面に対する平行線に関して、0°以上最大45°までの角度範囲において可動に配置されるように、前記第2のグループ(6)の3つの前記可変長アクチュエータ(7.1,7.2,7.3)は前記基部(2)および前記可動ユニット(3)に長さ可変かつ枢動可能に接続されることとを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項11】
前記第1のグループ(4)の3つの可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3)の各々が垂直線または前記基部(2)によって広がる平面に対する垂線に関して最大±15°の角度範囲で可動に配置されるように、前記第1のグループ(4)の3つの前記可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3)は前記基部(2)および前記可動ユニット(3)に長さ可変かつ枢動可能に接続されることと、前記第2のグループ(6)の3つの可変長アクチュエータ(7.1,7.2,7.3)の各々が水平線または前記基部(2)によって広がる平面に対する平行線に関して、0°以上最大30°までの角度範囲において可動に配置されるように、前記第2のグループ(6)の3つの前記可変長アクチュエータ(7.1,7.2,7.3)は前記基部(2)および前記可動ユニット(3)に長さ可変かつ枢動可能に接続されることとを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【請求項12】
前記第1のグループ(4)の前記可変長アクチュエータ(5.1,5.2,5.3)は、前記第2のグループ(6)の前記可変長アクチュエータ(7.1,7.2,7.3)よりも高い荷重容量を有する重荷重アクチュエータとして構成されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の6軸位置決めシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基部と、可動ユニットと、6つの可変長アクチュエータとを備え、各アクチュエータの一端は基部に接続され、各アクチュエータの他端は可動ユニットに接続される、6軸位置決めシステムに関する。少なくとも1つの追加の可変長構成要素が提供され、その一端は基部に接続され、その他端は可動ユニットに接続される。追加の構成要素は、6軸位置決めシステムが追加の構成要素によって可動ユニットの少なくとも特定の位置において解放可能にロックされ得るように、設計される。
【背景技術】
【0002】
このような6軸位置決めシステムはヘキサポッドとも呼ばれ、コンパクトな空間で6つの自由度の運動を提供する。可動ユニットは、通常、アクチュエータの上端に接続されたプラットフォーム(可動ユニット)からなり、その上に、位置決めされるべき要素またはアタッチメントが配置される。6軸位置決めシステムは、様々なサイズで、広範囲の用途に利用可能である。産業生産プロセスにおける構成要素として、ヘキサポッドは、サブマイクロメートル精度で高荷重を位置決めすることができる。産業用途では、絶対測定位置センサと、好適なソフトウェアと、複雑なモーションプロファイルでさえ都合よく実行されることを可能にするモーションコントローラとの組み合わせがある。アクチュエータの好ましい駆動装置は、ブレーキを備えたブラシレスDCモータである。このような6軸位置決めシステムの作業空間は、アクチュエータの展開(「入れ子式伸縮」)の長さに大きく依存する。特に、重荷重6軸位置決めシステムの場合、必要な剛性を提供するために非常に大きなアクチュエータが使用される。これに伴い、設置スペースが増大し、コストが増大する。
【0003】
ある汎用位置決めシステムが、DE 10 2004 004 313 A1から公知である。その中で、とりわけ、6つの入れ子式に長さが調整可能なロッド要素と、3つの追加のロッド形状補剛要素とを有する構成が記載されている。すべての要素は、基部要素から作業要素まで延在する。補剛または補強は、主に作業位置において達成され、一方、補剛または補強効果は、初期位置と作業位置との間の遷移位置においては低減されることがさらに説明される。補強を行う詳細な方法は詳細には説明しない。しかしながら、概して、補剛要素は、それらの長さを、制御可能または調節可能な態様で調整することができる、と主張される。これは、液圧式、空気圧式、機械的、または電気的に作動させることができる。補剛要素の代わりに、または補剛要素に加えて、プレストレス付与要素も挙げられる。
【0004】
DE 10 2006 011 823 A1は、基部プレートおよびツールプレートを有する位置決め装置を扱い、基部プレートおよびツールプレートは、6つの支材によって互いに接続される。支材は、支材対に組み合わされ、支材対は、少なくとも基部プレートに、共通のリンク機構、共通の駆動部、および共通の制動機構も有することができる。
【0005】
DE 102 55 950 A1は、それぞれのタスクに特化した2つの部分的駆動部を有するロボット駆動部を扱う。これは、力生成のための部分的駆動部および位置決め生成のための部分的駆動部である。特定の場合(図1および図2参照)では、ロボットアームに、ギアボックスおよび開放歯付きベルトを伴う電気モータからなる動力駆動部が設けられる。歯付きベルトは、引張ばねによって予張力がかけられる。加えて、角度エンコーダおよび高減速ギアを伴う従来のDCマイクロモータからなる位置決め駆動部が提供される。ある連結が、2つの部分的駆動部間に適切な連結を提供する。ロック用ブレーキ、例えば圧電作動ブレーキも言及され、これは位置決め駆動部に割り当てられる。
【0006】
CN 107538231 A1は、下部プラットフォームと、上部プラットフォームと、6つの斜めに配置されたアクチュエータと、中央に配置された3つの支持柱とを備える多軸位置決め装置に関する。荷重は主に支持柱によって吸収される。支持柱は、線形ガイドを備え、線形ガイドの上端は、上部プラットフォームに接続されたヒンジ装置である。リニアベアリングは、圧力ばねによって基部上に支持される。基部は、下部プラットフォーム上に位置し固定され、支持柱の上部は、下部プラットフォームに対して自由に動くことができる。6つのアクチュエータは、正確な制御を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、特に目標位置において、単純化されたロックを、高い精度で、たとえ荷重が増加しても提供する、上記で特定されたタイプの6軸位置決めシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する6軸位置決めシステムと、請求項12に記載の対応する方法とによって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
一般的な6軸位置決めシステムでは、追加の構成要素は、この目的のために解放可能なロック用ブレーキを有し、追加の構成要素は、6つの被駆動アクチュエータの運動によって長さが受動的に可変であるように設計される。追加の構成要素は、6軸位置決めシステムが追加の構成要素によって可動ユニットの少なくとも特定の位置において解放可能にロックされ得るように設計される。追加の可変長構成要素によって理解されるのは、6つのアクチュエータに加えて、要素、アセンブリなどである。したがって、少なくとも1つの追加の可変長構成要素は、6つのアクチュエータ上におそらく存在し得る任意のロック用装置またはブレーキを(加えて)補足して、6軸位置決めシステム上に存在しなければならないものである。追加の構成要素はまた、アクチュエータとは異なる場所に配置することができるという利点をもたらし、したがって、少なくとも1つの追加の構成要素のグループ化、中心からの距離などにより、ロックによって引き起こされるシステム全体の補剛に大きな影響を及ぼすことができる。したがって、このような構成は、原則として大型の重荷重アクチュエータが使用されなければならないので、重荷重6軸位置決めシステムにも特に適している。これは、とりわけ、追加の単純な手段によって、より高い剛性により、より費用効果の高い手段によって、目標位置に対する適合を達成することができるという利点をもたらす。追加の構成要素は、可動ユニットの位置決めに積極的には関与しないが、したがって、ロック用ブレーキによって所定の目標位置にロックすることを確実にする。その結果、追加の構成要素は、可動ユニットが動かされるときに受動的に挙動し、なぜならば、追加の構成要素は、アクチュエータによって一緒に引っ張られるかまたは一緒に動かされるからである。したがって、可変長の追加の構成要素は、それ自体の駆動部を有さず、それは、コストの低減に影響を及ぼす。純粋に受動的に構成された可変長の追加の構成要素におけるロック用ブレーキの提供はまた、6軸位置決めシステム全体の精度が大幅に改善されるという利点も有する。ロック用ブレーキによる発熱は、6つの可変長アクチュエータのため駆動部に悪影響を有さず、非常に高い精度を達成可能にする。したがって、ロック用ブレーキは、6つのアクチュエータ内における駆動部から大きく熱的に切り離すことができる。したがって、熱膨張が位置決め精度に与える影響は、より小さい。
【0010】
有利なことに、追加の構成要素は、6軸位置決めシステムが6軸位置決めシステムの作業空間全体において解放可能にロックされ得るように設計される。したがって、少なくとも1つの追加の構成要素は、作業空間内の可動ユニットの移動に追従し、次いで、可動ユニットを所望の目標位置にロックすることができる。したがって、利益は作業空間全体で提供される。
【0011】
一実施形態によれば、解放可能なロック用ブレーキはピエゾブレーキである。これは、制動プロセス自体が目標位置に影響を及ぼさないように、非常に精密に制御することができる。
【0012】
さらなる実施形態によると、解放可能なロック用ブレーキは、吸引空気ブレーキ(真空ブレーキ)であってもよい。これは、少ない労力で非常に安価に提供される。
【0013】
特に対称性の理由から、一実施形態によれば、6軸位置決めシステムをロックするために、少なくとも2つ、好ましくは3つの追加の可変長構成要素が設けられると有利である。1つの追加の構成要素が2つのアクチュエータの各々に割り当てられる変形例は、特に有利である。均一な分布は、それぞれの作業空間において均一な補剛を達成することも可能にする。
【0014】
したがって、追加の構成要素は、ロックされた状態において6軸位置決めシステムの剛性および固有振動数を増加させるように設計され得る。特に、重荷重6軸位置決めシステムでは、これは特に有利であり、なぜならば、高荷重でも、より好適な6軸位置決めシステムを用いて、非常に高い位置精度で配置できるからである。
【0015】
特に、重荷重6軸位置決めシステムでは、概して、非常に大きな力が鉛直方向に作用する。したがって、追加の構成要素が、垂直線または基部によって広がる平面に対する垂線に関して最大±45°、好ましくは最大±30°の角度範囲で可動に配置されるよう、追加の構成要素が、長さが可変であり、基部および可動ユニットに枢動可能に接続される場合、有利である。基本位置では、基部、および可動ユニットも、垂直線に対する角度基準が得られるように、概してそれぞれ水平に配置される。しかしながら、原則として、6軸位置決めシステムは、それ自体、異なる角度位置をとることができ、すなわち、例えば、基部を水平から外れて傾けることができ、そのため、鉛直への参照が、その場合、有利である。基部によって広がる平面は、例えば、追加の構成要素の継手またはアクチュエータの継手の中心を含む平面によって与えられる。このように構成された追加の構成要素は、特に主に鉛直に導入される力に関して、補剛効果を有する。
【0016】
別の有利な実施形態では、6つのアクチュエータが2つのグループに分割され、第1のグループのアクチュエータが、基部上において、第2のグループのアクチュエータによって画定される領域内において、および可動ユニット上において、配置される。好ましくは、異なるグループのアクチュエータも、異なるように構成される。その結果、可動ユニットを、拡張された作業空間で、可動ユニットに取り付けられた第1のグループのアクチュエータの端部の周りで、動かすことができる。このように、第1のグループのこれら3つのアクチュエータを第2のグループの3つのアクチュエータよりも短く構成することができ、必要に応じて、それらに、より多くの持ち上げ力を与えることができる。したがって、第1のグループのアクチュエータと第2のグループのアクチュエータとの間の一種の作業の分割が可能であり、全体的に、作業空間が拡張された、よりコンパクトな、特により平坦な設計をもたらす。加えて、追加の構成要素は、所望の目標位置がとられるときに補剛を支持する。
【0017】
好都合には、少なくとも1つの追加の構成要素は、基部および可動ユニット上において、第1のグループのアクチュエータのさらに外に、好ましくは第1のグループのアクチュエータと第2のグループのアクチュエータとの間の領域に配置される。これにより、特に、第1のグループの3つのアクチュエータによって支持される範囲外で開始される傾斜力が、少なくとも1つの構成要素によって追加的に支持される。第1のグループのアクチュエータの配置によって達成される、より大きい枢動能力にもかかわらず、安定した位置決めが依然として達成される。
【0018】
さらなる実施形態では、第1のグループの3つのアクチュエータの各々が垂直線または基部によって広がる平面に対する垂線に関して最大±30°、好ましくは最大±15°の角度範囲で可動に配置されるように、第1のグループのアクチュエータは基部および可動ユニットに長さ可変かつ枢動可能に接続され、 第2のグループの3つのアクチュエータの各々が水平線または基部によって広がる平面に対する平行線に関して、0°以上最大45°まで、好ましくは0°以上最大30°までの角度範囲において可動に配置されるように、第2のグループの3つのアクチュエータは基部および可動ユニットに長さ可変かつ枢動可能に接続される。この構成により、荷重の大部分を第1のグループの3つのアクチュエータによって受けることができ、一方、第2のグループの3つのアクチュエータは主に位置決めに使用される。アクチュエータの長さの対応する変化により、比率が次いでシフトし、主なリフト荷重は依然として第1のグループの3つのアクチュエータによって担持される。次いで、少なくとも1つの追加の構成要素が、それぞれの目標位置で安定する。第2のグループの3つのアクチュエータは、概して、角度仕様のため、第1のグループの3つのアクチュエータよりもはるかに平坦に構成される。
【0019】
したがって、その最端では、第2のグループの3つのアクチュエータは、最小ストローク位置では平坦または水平に、最大ストローク位置では鋭角に位置決めすることができる。全体として、これは非常に平坦でコンパクトな設計をもたらす。そのような構成では、第2のグループの3つのアクチュエータは、より高い位置決め経路を必要とする。これは、これらの3つのアクチュエータが第1のグループの3つのアクチュエータを通過して横方向に動かされる場合にのみ可能である。また、少なくとも1つの追加の構成要素を通過する通路があってもよく、または少なくとも1つの追加の構成要素を配置するために、第2のグループの3つのアクチュエータ間に空間が残っていてもよい。
【0020】
好ましくは、第1のグループの3つのアクチュエータは、第2のグループの3つのアクチュエータよりも大きい荷重容量を有する重荷重アクチュエータとして構成することができる。標準的であり、同一でもある部品を使用することもできるが、第1のグループの3つのアクチュエータと第2のグループの3つのアクチュエータとが異なるように構成されれば、好ましい。第1のグループの3つのアクチュエータは、第2グループのアクチュエータの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、荷重に強い可能性がある。
【0021】
さらに、本発明は、基部および可動ユニットと、6つの可変長アクチュエータとを備える6軸位置決めシステムを提供する方法に関する。各アクチュエータの一端は基部に接続され、各アクチュエータの他端は可動ユニットに接続され、本方法は、
基部に対する6つの可変長アクチュエータの相互作用によって可動ユニットを所定の目標位置まで移動させるステップと、
アクチュエータに加えて基部と可動ユニットとの間において可変長な態様で配置される少なくとも1つの追加の構成要素によって目標位置において6軸位置決めシステムの剛性および固有振動数を増加させるために6軸位置決めシステムをロックするステップとを含む。
【0022】
したがって、6つのアクチュエータは、それら自体が、指定された目標位置においてシステムの必要な剛性および固有振動数を提供するように構成される必要はないが、アクチュエータは、使用される少なくとも1つの追加の構成要素に関して、そのように適合され得、なぜならば、少なくとも1つの追加の構成要素によって目標位置における剛性および固有振動数の増加が起こるからである。したがって、より複雑に構成されたアクチュエータは、作業空間内で目標位置において必要な剛性および固有振動数を損なうことなく、より安価であるか、またはより通常でないグループ化で、使用することができる。
【0023】
好ましくは、追加の構成要素は、可動ユニットが6つの可変長アクチュエータの相互作用によって移動する際に、可動ユニットと共に受動的に動かされることができる。したがって、可動ユニットの移動が6つの可変長アクチュエータに制限されるので、引きずりまたは入れ子式伸縮が、著しい抵抗または支持なしに達成される。それにもかかわらず、少なくとも1つの可動ユニットが減衰を与えるというさらなる可能性が存在する。しかしながら、可動ユニットの主な目的は、それを目標位置にロックし、システムの剛性および固有振動数を増大させることである。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】唯一の図は、本発明による6軸位置決めシステムの実施形態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図に示す6軸位置決めシステム1の第1の実施形態は、三角形のプラットフォームの形態の基部2と、同じく三角形のプラットフォームの形態の可動ユニット3と、これらの間に配置されるアクチュエータとを有し、これらはより詳細に説明される。基部2および可動ユニット3は、各々、厚みが実質的に均一なプレート、好ましくは鋼等の金属により形成されている。基部2と可動ユニット3との間に配置されたアクチュエータは、アクチュエータ5.1,5.2および5.3を備える第1のグループ4と、アクチュエータ7.1,7.2および7.3を備える第2のグループ6とにグループ化される。アクチュエータ5.1,5.2および5.3は、機能および構成においてアクチュエータ7.1,7.2および7.3とは異なるが、それぞれのグループ4または6のアクチュエータは同じ構成を有する。第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2および5.3は、それらの下端8が基部2上にあり、それらの上端9が可動ユニット3上にある状態で、枢動可能に構成される。枢動可能な構成は、例えば、自在継手(カルダン継手)の形態であり、したがって、2つの軸の周りの枢動運動が可能である。よりコンパクトな構成のために、基部2は、アクチュエータ5.1,5.2,および5.3の各々の下端8を取り付けるための窓凹部10を有し、自在継手の軸が窓凹部10内に取り付けられる。同様に、可動ユニット3には、アクチュエータ5.1,5.2および5.3の上端9を枢動可能に配置するための3つの窓凹部11が設けられている。ここでも、対応する自在継手の軸は、窓凹部11内に固定される。
【0027】
アクチュエータ7.1,7.2および7.3の下端は、基部2上に配置されたそれぞれの軸受ブロック13上に枢動可能に配置される。枢動可能な構成のために、自在継手が、ここでも、好ましくは、2つの軸の周りで枢動するために使用される。同様に、アクチュエータ7.1,7.2および7.3の上端14は、可動ユニット3に取り付けられた軸受ブロック15によって配置される。また、上端14において、枢動可能な構成は、好ましくは、2つの軸の周りを枢動するための自在継手による。
【0028】
選択された配置により、第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2および5.3は、第2のグループ6のアクチュエータ7.1,7.2および7.3よりも直立して配置される。窓凹部10および11ならびに2つの軸受ブロック13および15も、このような配置に役立つ。窓凹部10および11の各々は、それぞれ、対応する軸受ブロック13または15と比較して、基部2または可動ユニット3のさらに内側に位置する。これにより、第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2,5.3は、基部2または可動ユニット3上において第2グループ6のアクチュエータ7.1,7.2,7.3によって囲まれた領域内に配置される。荷重は可動ユニット3を介して上方から加えられるので、主荷重はアクチュエータ5.1,5.2,5.3によって吸収されることも可能である。したがって、これらは、第2のグループ6の3つのアクチュエータ7.1,7.2,7.3よりもはるかに高い荷重容量を有する重荷重アクチュエータとして構成される。6つのアクチュエータはすべて、長さが調整可能であり(入れ子式)、ブラシレスDCモータによって駆動される。6軸位置決めシステムの基本的な動作および制御は、そのようなものとして公知であり、したがって、本明細書ではより詳細に論じない。いずれにせよ、可動ユニット3は、基部2に対して上昇、下降、または移動し、3つの空間軸のすべての周りで傾斜することができる。アクチュエータ5.1,5.2,5.3および7.1,7.2,7.3の調整性ならびに配置は、可能な作業空間を決定する。使用される駆動技術のおかげで、重い荷重の現在の領域においても、非常に精密な制御および位置決めが可能である。
【0029】
アクチュエータ5.1,5.2,5.3および7.1,7.2,7.3を補足して、入れ子式ユニットの形態の3つの追加の可変長構成要素16が設けられる。アクチュエータ5.1,5.2,5.3および7.1,7.2,7.3と同様に、構成要素16は、基部2および可動ユニット3の両方上に均等または対称に配置される。構成要素16の下端17は、基部2に、枢動するよう取り付けられ、上端18は、可動ユニット3に、枢動するよう取り付けられる。これは、第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2,5.3と同様に、例えば自在継手(カルダン継手)の態様で生じ、したがって、2つの軸の周りの枢動運動が可能である。追加の構成要素16は、ロック用ブレーキ19(例えば、ピエゾブレーキまたは真空ブレーキ)を備え、それによって、いつでもロックまたはロック解除されることができる。そうでなければ、ロック用ブレーキ19が開いているとき、追加の構成要素16は、著しい抵抗なしに長さを自由に変更することができ、長さの変更は、アクチュエータ5.1,5.2,5.3および7.1,7.2,7.3による作動のため、受動的である。
【0030】
図に示す6軸位置決めシステム1の基本位置では、基部2および可動ユニット3は互いに平行に整列されており、すなわち、第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2および5.3は同じ長さを有し、第2のグループ6のアクチュエータ7.1,7.2および7.3は、は同じ長さを有する。さらに、アクチュエータ5.1,5.2,および5.3は、それらの完全引込位置にあり、そのため、アクチュエータ7.1,7.2,および7.3もまた、それらの枢動位置を可能な限り下にとる。この基本位置では、アクチュエータ5.1,5.2および5.3は、それらの主軸と正確に垂直に整列され、すなわち、それらは、基部2によって広がる平面に垂直である。この位置において、アクチュエータ7.1,7.2および7.3は、水平面または基部2によって広がる平面に平行な平面に対して約0°の角度を有する。
【0031】
構成要素16は、この位置では垂直からわずかに外れて傾斜しており、それらの上端18と第1のグループ4の次のアクチュエータ5.1,5.2,5.3の各々の上端9とは、下端17と第1のグループ4の次のアクチュエータ5.1,5.2および5.3の各々の下端8とよりも近くなるように、配置されている。垂直に対する傾斜角度は約10°である。さらに、追加の構成要素16は、第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2,5.3に関して、基部2および可動ユニット3の両方のさらに外側に配置される。しかしながら、これらのアクチュエータ5.1,5.2,5.3の各々は、隣接するパートナー(構成要素16)を割り当てられる。この配置は、ほぼ、第2のグループ6のうちの2つのアクチュエータ7.1,7.2,7.3の間の空間内にある。第2のグループ6のアクチュエータ7.1,7.2,7.3の軸が三角形を形成するように延ばされる場合、第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2,5.3および追加の構成要素16も、この三角形内に配置される。これは、コンパクトなグループ化、すなわち、とりわけ、アクチュエータ5.1,5.2および5.3の小さなストロークでも比較的大きな枢動が起こり得ることを保証するグループ化をもたらす。それにもかかわらず、アクチュエータ5.1,5.2,5.3および7.1,7.2,7.3の相互作用において、正確な位置決めが可能である。
【0032】
図に示すアクチュエータ5.1,5.2および5.3の完全引込位置では、第2のグループ6のアクチュエータ7.1,7.2および7.3は、第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2および5.3よりもかなり長い。したがって、第2のグループ6のアクチュエータ7.1,7.2および7.3の最大調整経路は、第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2および5.3の最大調整経路よりも実質的に大きい。
【0033】
追加の構成要素16は、可動ユニット3が制御された目標位置をとると、これらの構成要素が第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2,5.3および第2のグループ6のアクチュエータ7.1,7.2,7.3によってロック用ブレーキ19を作動させ、したがって、6軸位置決めシステム1全体をロックする態様で補剛するよう構成される。これは、システム1の全体的な剛性およびその固有振動数を増加させ、したがって、非常に正確かつ堅い位置決めが、重荷重動作でも行うことができる。
【0034】
以下において、示される実施形態の作用および動作のモードがより詳細に説明される。
アクチュエータ5.1,5.2および5.3ならびに7.1,7.2および7.3の駆動部の目標とされる制御は、基部2に対する可動ユニット3の目標とされる位置決めをもたらす。所与の作業空間内での所望の6軸位置決めが可能である。主荷重は、昇降中に第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2および5.3によって担持される。したがって、これらは、相当な荷重を移動できるように、対応する重荷重アクチュエータとして構成される。第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2および5.3は、垂直線または基部2によって広がる平面に対する垂線に対して限定された角度範囲だけ枢動する(最大±30°、好ましくは最大±15°)。アクチュエータ7.1,7.2および7.3も、水平線または基部2によって広がる平面に対する平行線Pに対して限定された角度範囲(0°以上最大45°まで)だけ枢動するように適合される。
【0035】
例えば、第2のグループ6のアクチュエータ7.1,7.2および7.3を短くする、または入れ子式に縮め、それに対応して第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2および5.3を枢動および伸長させることによって、可動ユニット3は、基部2に対して、距離を必ずしも変化させなくても、回転させることができる。全体として、アクチュエータ7.1,7.2および7.3の必要とされる経路は、アクチュエータ5.1,5.2および5.3の経路よりも大きい。
【0036】
可変長の追加の構成要素16は、これらの位置決め動作中に受動的に動かされる。これは、運動の方向に応じて、一緒に動くか、または入れ子式に伸縮することによって、行われる。第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2,5.3および第2のグループ6の7.1,7.2,7.3によって所望の目標位置がとられるとすぐに、ロック用ブレーキ19がセットされ、6軸位置決めシステム1が目標位置においてロックされる。構成要素16は、目標位置において6軸位置決めシステム1の剛性および固有振動数を著しく増加させるように構成される。これは特に必要であり、なぜならば、図示の実施形態では、第1のグループ4のアクチュエータ5.1,5.2および5.3は、より中央にあり、したがって可動ユニット3の運動はあまり堅くは生じないかもしれないからである。ここで、構成要素16は適切な補償を提供し、したがって、重荷重システムであってもそれらの目標位置の高い精度および制御で動作させることができる。さらなる運動が生じるとすぐに、ロック用ブレーキ19は再び解放され、構成要素16は一緒に受動的に動かされる。ロック用ブレーキ19の領域で発生する熱は、第1のグループのアクチュエータ5.1,5.2,5.3および第2のグループのアクチュエータ7.1,7.2,7.3の駆動部に直接影響を与えない。このようにして、精度が改善される。
【0037】
全体として、結果として、コンパクトであり、特に平坦であり、必要な剛性で高い荷重に耐えることができる6軸位置決めシステム1が得られる。これは、2つのアクチュエータグループ4、6の適切なグループ化および機能的分割、ならびにロック可能な構成要素16の支援によって達成される。明確にするために、電気的接続および任意の他の接続の提示ならびにセンサシステムの提示は、図では省略されていることにも留意されたい。本明細書に示される6軸位置決めシステム1は、このタイプの公知のシステム(ヘキサポッド)のための最良の公知の手順に従って制御および調節される。
【符号の説明】
【0038】
参照符号のリスト
1 6軸位置決めシステム
2 基部
3 可動ユニット
4 第1のグループ
5.1,5.2,5.3 アクチュエータ
6 第2のグループ
7.1,7.2,7.3 アクチュエータ
8 下端
9 上端
10 窓凹部
11 窓凹部
12 下端
13 軸受ブロック
14 上端
15 軸受ブロック
16 構成要素
17 下端
18 上端
19 ロック用ブレーキ
図1