(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、モータ制御ユニット、及び車両
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240510BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 653A
H01L29/78 655D
H01L29/78 657D
H01L29/78 655G
(21)【出願番号】P 2022556190
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 CN2020079555
(87)【国際公開番号】W WO2021184172
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ホワーン,ボーニーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,チュエン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン,ウエンタオ
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-142537(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179379(WO,A1)
【文献】特開2016-149430(JP,A)
【文献】特開2010-251793(JP,A)
【文献】特開2006-344779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0153348(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0129930(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0114985(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102569354(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107768429(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ゲートバイポーラトランジスタであって、IGBTデバイス構造フィーチャ層と、SJデバイス構造フィーチャ層と、RC-IGBTデバイス構造フィーチャ層とを有し、
前記IGBTデバイス構造フィーチャ層と、前記SJデバイス構造フィーチャ層と、前記RC-IGBTデバイス構造フィーチャ層とが積層され、前記IGBTデバイス構造フィーチャ層及び前記RC-IGBTデバイス構造フィーチャ層が前記SJデバイス構造フィーチャ層の両側のそれぞれの側に配置され、
前記RC-IGBTデバイス構造フィーチャ層は、同じ層に配置されたコレクタ及びドレインを有し、
当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタは更に、前記コレクタと積層され且つ前記コレクタに電気的に接続された第1の金属電極と、前記ドレインと積層され且つ前記ドレインに電気的に接続された第2の金属電極とを有し、
前記第1の金属電極及び前記第2の金属電極の両方に電力を供給することと、前記第2の金属電極のみに電力を供給することとの間で切り替えることを可能にするために、前記第1の金属電極は
前記第2の金属電極から電気的に絶縁されている、
絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項2】
前記SJデバイス構造フィーチャ層は、積層された、ドリフト層と、スーパージャンクション構造層と、バッファ層とを有し、該スーパージャンクション構造層が該ドリフト層と該バッファ層との間に位置し、
前記ドリフト層が、前記IGBTデバイス構造フィーチャ層に接続され、
前記バッファ層が、前記コレクタと前記ドレインとに接続されている、
請求項1に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項3】
前記バッファ層はN型バッファ層である、請求項2に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項4】
前記ドリフト層はNドリフト層である、請求項2又は3に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項5】
前記スーパージャンクション構造層は、複数のNドリフト層と複数のPドリフト層とを有し、該複数のNドリフト層と該複数のPドリフト層とが第1方向に交互に配置され、該第1方向は第2方向に対して垂直であり、
前記第2方向は、前記IGBTデバイス構造フィーチャ層が前記SJデバイス構造フィーチャ層と積層される方向である、
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項6】
前記IGBTデバイス構造フィーチャ層は、
前記ドリフト層と積層されたPベース層、及び該Pベース層と積層されたフロントエミッタと、
前記Pベース層を貫通して前記ドリフト層に挿入された複数のゲート、各ゲートを包む絶縁ゲート膜、各ゲートを前記フロントエミッタから絶縁する層間絶縁膜、並びに前記Pベース層の表面に配置されたNエミッタ層及びP+コンタクト層と、
を有する、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項7】
前記第1の金属電極は前記コレクタとオーミック接触している、及び/又は
前記第2の金属電極は前記ドレインとオーミック接触している、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項8】
前記第1の金属電極は、前記第2の金属電極から所定の距離だけ離隔されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項9】
複数のコレクタ及び複数のドレインがあり、該複数のコレクタと該複数のドレインとが交互に配置されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項10】
複数の第1の金属電極が前記複数のコレクタと一対一に対応し、複数の第2の金属電極が前記複数のドレインと一対一に対応し、隣接する第1の金属電極と第2の金属電極とが互いに電気的に絶縁されている、請求項9に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項11】
パワーモジュールと、該パワーモジュールに接続された、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタと、を有するモータ制御ユニット。
【請求項12】
モータと、該モータに接続された、請求項11に記載のモータ制御ユニットと、を有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、電気技術の分野に関し、特に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、モータ制御ユニット、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のMCU(Motor Control Unit、モータ制御ユニット)は、通常、スイッチング素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いて、バッテリによって出力される直流(DC)を、モータを駆動するための交流(AC)に変換する。バッテリの使用時間を長くするためにインバータの変換効率をどのようにして向上させるかが、常に、インバータ及びパワー半導体デバイスの開発者が努力を為す方向である。
【0003】
IGBTは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)及びBJT(バイポーラ接合トランジスタ)を含んだ、複合的な完全制御の電圧駆動パワー半導体デバイスである。IGBTは、MOSFETの高入力インピーダンスとBJTの低い導通電圧降下との両方の利点を持ち、ミデアムパワー及びハイパワーの用途に適したパワー半導体デバイスである。電気自動車のインバータでは、IGBTをFRDと一緒に使用する必要がある。MCUの変換効率を向上させるべくスイッチング素子の全損失を低減させるために、デバイス設計者は、デバイスがより高い遮断速度及びより良いVcesat-Eoffトレードオフ関係を持つように、IGBT及びFRDについてチップインテグレーションを行い、RC-IGBT(Reverse-Conduction Insulated Gate Bipolar Transistor、逆導通IGBT)構造を提案している。しかしながら、電気自動車のMCUは、殆どの時間、軽負荷状態で動作する。スイッチング素子としてRC-IGBT又はSJ-RC-IGBTが使用されるかにかかわらず、制御チップがMCUの動作状態に基づいてスイッチング素子の動作モードを正確に制御することができず、MCUの変換効率の更なる向上に影響を及ぼしている。
【発明の概要】
【0004】
この出願は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタの制御効果を改善するための、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、モータ制御ユニット、及び車両を提供する。
【0005】
第1の態様によれば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタが提供される。当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタはモータ制御ユニットに適用される。当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタの積層多層構造は、例えば、IGBTデバイス構造フィーチャ層と、SJデバイス構造フィーチャ層と、RC-IGBTデバイス構造フィーチャ層とを含み、IGBTデバイス構造フィーチャ層及びRC-IGBTデバイス構造フィーチャ層がSJデバイス構造フィーチャ層の両側のそれぞれの側に配置される。RC-IGBTデバイス構造フィーチャ層は、同じ層に配置されたコレクタ及びドレインを含む。当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタは更に、コレクタと積層され且つコレクタに電気的に接続された第1の金属電極と、ドレインと積層され且つドレインに電気的に接続された第2の金属電極とを有し、第1の金属電極は第2の金属電極から電気的に絶縁される。上述のソリューションでは、第1の金属電極及び第2の金属電極をそれぞれコレクタ及びドレインに接続して、コレクタとドレインに別々に電力を供給することができ、それ故に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタの電力供給方式が追加され、それにより絶縁ゲートバイポーラトランジスタの制御方式を改善する。
【0006】
特定の実装可能な一ソリューションにおいて、SJデバイス構造フィーチャ層は、積層された、ドリフト層と、スーパージャンクション構造層と、バッファ層とを含み、スーパージャンクション構造層がドリフト層とバッファ層との間に位置する。ドリフト層は、IGBTデバイス構造フィーチャ層に接続される。バッファ層は、コレクタとドレインとに接続される。
【0007】
特定の実装可能な一ソリューションにおいて、バッファ層はN型バッファ層である。
【0008】
特定の実装可能な一ソリューションにおいて、ドリフト層はNドリフト層である。
【0009】
特定の実装可能な一ソリューションにおいて、スーパージャンクション構造層は、複数のNドリフト層と複数のPドリフト層とを含み、該複数のNドリフト層と該複数のPドリフト層とが第1方向に交互に配置され、該第1方向は第2方向に対して垂直である。
【0010】
第2方向は、IGBTデバイス構造フィーチャ層がSJデバイス構造フィーチャ層と積層される方向である。
【0011】
特定の実装可能な一ソリューションにおいて、IGBTデバイス構造フィーチャ層は、
ドリフト層と積層されたPベース層、及び該Pベース層と積層されたフロントエミッタと、
Pベース層を貫通してドリフト層に挿入された複数のゲート、各ゲートを包む絶縁ゲート膜、各ゲートをフロントエミッタから絶縁する層間絶縁膜、並びにPベース層の表面に配置されたNエミッタ層及びP+コンタクト層と、
を含む。
【0012】
特定の実装可能な一ソリューションにおいて、第1の金属電極はコレクタとオーミック接触している、及び/又は
第2の金属電極はドレインとオーミック接触している。
【0013】
特定の実装可能な一ソリューションにおいて、第1の金属電極は、第2の金属電極から所定の距離だけ離隔される。
【0014】
特定の実装可能な一ソリューションにおいて、複数のコレクタ及び複数のドレインがあり、該複数のコレクタと該複数のドレインとが交互に配置される。
【0015】
特定の実装可能な一ソリューションにおいて、複数の第1の金属電極が複数のコレクタと一対一に対応し、複数の第2の金属電極が複数のドレインと一対一に対応し、隣接する第1の金属電極と第2の金属電極とが互いに電気的に絶縁される。
【0016】
第2の態様によれば、モータ制御ユニットが提供される。当該モータ制御ユニットは、パワーモジュールと、該パワーモジュールに接続された、上述のソリューションのうちのいずれか一に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタと、を含む。上述のソリューションでは、第1の金属電極及び第2の金属電極をそれぞれコレクタ及びドレインに接続して、コレクタとドレインに別々に電力を供給することができ、それ故に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタの電力供給方式が追加され、それにより絶縁ゲートバイポーラトランジスタの制御方式を改善する。
【0017】
第3の態様によれば、車両が提供される。当該車両は、モータと、該モータに接続された、上述のソリューションのうちのいずれか一に記載のモータ制御ユニットと、を含む。上述のソリューションでは、第1の金属電極及び第2の金属電極をそれぞれコレクタ及びドレインに接続して、コレクタとドレインに別々に電力を供給することができ、それ故に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタの電力供給方式が追加され、それにより絶縁ゲートバイポーラトランジスタの制御方式を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この出願の一実施形態に従った絶縁ゲートバイポーラトランジスタの断面図である。
【
図2】この出願の一実施形態に従った絶縁ゲートバイポーラトランジスタの動作モードに対応する駆動電圧である。
【
図4】この出願の一実施形態に従った絶縁ゲートバイポーラトランジスタの別の上面図である。
【
図5】この出願の一実施形態に従ったモータ制御ユニットの構成のブロック図である。
【
図6】この出願の一実施形態に従った車両におけるモータ制御の構成のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この出願の目的、技術的ソリューション、及び利点をいっそう明瞭にするため、以下にて更に、添付の図面を参照してこの出願を詳細に説明する。
【0020】
先ず、この出願の一実施形態で提供される絶縁ゲートバイポーラトランジスタの一適用シナリオを説明する。この出願のこの実施形態で提供される絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、モータ制御ユニットに適用される。例えば、電気自動車のMCU(Motor Control Unit、モータ制御ユニット)は、通常、スイッチング素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いて、バッテリによって出力される直流(DC)を、モータを駆動するための交流(AC)に変換する。IGBTは、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)及びBJT(バイポーラ接合トランジスタ)を含んだ、複合的な完全制御の電圧駆動パワー半導体デバイスである。IGBTは、MOSFETの高入力インピーダンスとBJTの低い導通電圧降下との両方の利点を持ち、ミデアムパワー及びハイパワーの用途に適したパワー半導体デバイスである。電気自動車のインバータでは、IGBTをFRDと一緒に使用する必要がある。MCUの変換効率を向上させるべくスイッチング素子の全損失を低減させるために、デバイス設計者は、デバイスがより高い遮断速度及びより良いVcesat-Eoffトレードオフ関係を持つように、IGBT及びFRDについてチップインテグレーションを行い、RC-IGBT構造を提案している。しかしながら、従来技術においては、スイッチング素子としてRC-IGBT又はSJ-RC-IGBTが使用されるかにかかわらず、制御チップがMCUの動作状態に基づいてスイッチング素子の動作モードを正確に制御することができない。これに鑑み、この出願の一実施形態は絶縁ゲートバイポーラトランジスタを提供する。以下、具体的な添付図面を参照して当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタを説明する。
【0021】
図1は、この出願の一実施形態に従った絶縁ゲートバイポーラトランジスタの断面図である。
【0022】
この出願のこの実施形態で提供される絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、主に、IGBTデバイス構造フィーチャ層10と、SJデバイス構造フィーチャ層20と、RC-IGBTデバイス構造フィーチャ層30との3つの構造を含む。IGBTデバイス構造フィーチャ層10、SJデバイス構造フィーチャ層20、及びRC-IGBTデバイス構造フィーチャ層30は、
図1の縦方向に積層され、IGBTデバイス構造フィーチャ層10及びRC-IGBTデバイス構造フィーチャ層30が、SJデバイス構造フィーチャ層20の両側のそれぞれの側に配置される。
【0023】
説明を容易にするため、第1方向a及び第2方向bを定義する。第2方向bは、IGBTデバイス構造フィーチャ層10とSJデバイス構造フィーチャ層20とが積層される方向であり、第1方向aは、第2方向bに対して垂直である。
【0024】
なおも
図1を参照するに、SJデバイス構造フィーチャ層20は主に、積層された、ドリフト層3と、スーパージャンクション構造層と、バッファ層11とを含み、スーパージャンクション構造層がドリフト層3とバッファ層11との間に位置する。バッファ層11はN型バッファ層である。準備において、バッファ層11の第1表面上にスーパージャンクション構造及びドリフト層3が形成される。スーパージャンクション構造は、複数のNドリフト層1及び複数のPドリフト層2を含み、複数のNドリフト層1と複数のPドリフト層2とが第1方向aに交互に配置される。Nドリフト層1及びPドリフト層2は、注入、拡散、エピタキシャル成長のプロセスを用いて形成され、Nドリフト層1の厚さ及びPドリフト層2の厚さはどちらもL1に設定される。スーパージャンクション構造上のドリフト層3はNドリフト層であり、ドリフト層3は、バッファ層11に面しない側のスーパージャンクション構造の表面上に形成される。
【0025】
IGBTデバイス構造フィーチャ層10は、ドリフト層3に接続される。IGBTデバイス構造フィーチャ層10は、第1方向aにドリフト層3と積層されたPベース層4、及びPベース層4と積層されたフロントエミッタ10と、Pベース層4を貫通してNドリフト層3に挿入された複数のゲート8、各ゲート8を包む絶縁ゲート膜7、各ゲート8をフロントエミッタ10から絶縁する層間絶縁膜9、並びにPベース層4の表面に配置されたNエミッタ層5及びP+コンタクト層6と、を含む。特定の準備において、ドリフト層3上にPベース層4が形成され、Pベース層4の表面にNエミッタ層5及びP+コンタクト層6が形成される。また、Nエミッタ層5の表面からPベース層4を貫いてドリフト層3の中ほど近くまでトレンチが形成され、該トレンチ内にゲート8が、ゲート8と該トレンチとの間に絶縁ゲート膜7を介在させて形成される。絶縁ゲート膜7はゲート酸化物層であり、ゲート8として多結晶シリコンゲートが用いられ得る。P+コンタクト層6上にフロントエミッタ10が形成され、ゲート8は、層間絶縁膜9を用いることによってフロントエミッタ10から絶縁される。
【0026】
なおも
図1を参照するに、RC-IGBTデバイス構造フィーチャ層30は、同じ層に配置されたコレクタ12及びドレイン13を含む。特定の準備において、コレクタ12及びドレイン13は、
図1の第1方向aに、バッファ層11の第2表面上に形成される。コレクタ12及びドレイン13の裏面上に、第1の金属電極15及び第2の金属電極14が形成される。第1の金属電極15は、コレクタ12と積層され且つコレクタ12に電気的に接続され、第2の金属電極14は、ドレイン13と積層され且つドレイン13に電気的に接続され、第1の金属電極15は第2の金属電極14から電気的に絶縁される。
【0027】
特定の準備において、第1の金属電極15は、コレクタ12とオーミック接触して、第1の金属電極15とコレクタ12との間の電気的接続効果を確実にする。具体的には、第1の金属電極15とコレクタ12との間の電気的接続は、はんだ付けを通じて、又はコレクタ12上に直に第1の金属電極15を形成することによって実現され得る。第2の金属電極14は、ドレイン13とオーミック接触して、第2の金属電極14とドレイン13との間の電気的接続効果を確実にする。具体的には、第2の金属電極14とドレイン13との間の電気的接続は、はんだ付けを通じて、又はドレイン13上に直に第2の金属電極14を形成することによって実現され得る。
【0028】
第1の金属電極15と第2の金属電極14との間の電気的絶縁を確実にするため、第1の金属電極15と第2の金属電極14との間の絶縁度を確保するように、第1の金属電極15は第2の金属電極14から所定の距離だけ離隔される。
図1に示すように、所定の距離は、互いに近接する第1の金属電極15の端部と第2の金属電極14の端部との間の、第1方向aにおける水平距離L2を指す。L2の値は、実際の設計に基づいて決定されることができ、第1の金属電極15と第2の金属電極14との間の絶縁度を確保することができる限り、この出願で特に限定されるものではない。
【0029】
第1の金属電極15は具体的に、複数の異なるやり方で第2の金属電極14から絶縁され得る。例えば、第1の金属電極15が、コレクタ12の面積と等しい面積を有してコレクタ12を覆うとともに、第2の金属電極14が、ドレイン13の面積よりも小さい面積を有してドレイン13を覆い得る;第1の金属電極15が、コレクタ12の面積よりも小さい面積を有してコレクタ12を覆うとともに、第2の金属電極14が、ドレインの面積と等しい面積を有してドレイン13を覆い得る;あるいは、第1の金属電極15が、コレクタ12の面積よりも小さい面積を有してコレクタ12を覆うとともに、第2の金属電極14が、ドレイン13の面積よりも小さい面積を有してドレイン13を覆い得る。
【0030】
当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタの動作を説明する。閾値Vth以上の正電圧がゲート8に印加されると、Nエミッタ層5とNドリフト層3との間に位置するPベース層4の領域がN型に反転されて、Nエミッタ層5からドリフト層3に電子が注入され、当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタが順方向に導通されるようになる。導通状態において、コレクタ12とバッファ層11との間のPN接合に少なくとも順バイアス電圧を持たせるコレクタ12の電圧が第1の金属電極15及び第2の金属電極14に印加されると、第1の金属電極15からドリフト層3に正孔が注入されて伝導度変調を生じさせ、スーパージャンクション構造のNドリフト層1及びPドリフト層2の抵抗値が急激に減少し、当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタが十分な導通能力を持つようになる。
【0031】
また、ゲート8に負のバイアス電圧が印加され、且つフロントエミッタ10と金属電極(第1の金属電極15及び第2の金属電極14)との間に所定の電圧(フロントエミッタ10の電圧<背面コレクタ12の電圧)が印加されると、この実施形態の絶縁ゲートバイポーラトランジスタの空乏層(スーパージャンクション構造)が、表面のPベース層4からドリフト層3並びにNドリフト層1/Pドリフト層2へと延び、スーパージャンクション構造が完全に空乏化されることで耐圧を維持することができる。
【0032】
絶縁ゲートバイポーラトランジスタは主に、FRDモードと、MOSFETモードと、IGBTモードとの3つの動作モードを持つ。
図2及び
図3を参照して、絶縁ゲートバイポーラトランジスタのそれら3つの動作モードを説明する。
図2は、動作中の絶縁ゲートバイポーラトランジスタに対応する3つの動作モードを示し、
図3は、
図2中のAの部分拡大図であり、(1)はFRDモードを表し、(2)はMOSFETモードを表し、(3)はIGBTモードを表す。
図2及び
図3から見てとれることには、第1の金属電極15及び第2の金属電極14の両方に電力が供給されているとき、ゲートチャネルが開いた後、開始段階では絶縁ゲートバイポーラトランジスタの裏面側に正孔は注入されない。従って、絶縁ゲートバイポーラトランジスタは先ずMOSFETモードで動作する。電圧がV
SBに達した後、絶縁ゲートバイポーラトランジスタはMOSFETモードから迅速にIGBTモードに入る。ここで、絶縁ゲートバイポーラトランジスタがMOSFETモードにとどまるのは非常に短い時間である。MCUは殆どの時間、軽負荷状態で動作するので、MCUは、インバータのスイッチング素子(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が、より多くの時間、MOSFETモードで動作することを期待する。さらに、MCUがフル負荷にあるとき、MCUは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタが迅速にIGBTモードに切り替われることを期待する。従って、MCU効率を向上させる観点から、MCUは、スイッチング素子の動作モードをより正確に制御できることを期待する。
【0033】
これに鑑み、この出願のこの実施形態で提供される絶縁ゲートバイポーラトランジスタは更に、第1の金属電極15又は第2の金属電極14のみに電力を供給するという別の電力供給モードを提供する。当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタの上述の構造から分かることには、第1の金属電極15がコレクタ12のみに電気的に接続され、第2の金属電極14がドレイン13のみに電気的に接続され、且つ第1の金属電極15が第2の金属電極14から電気的に絶縁されている構造が用いられる場合、絶縁ゲートバイポーラトランジスタの裏面が、第1の金属電極15と第2の金属電極14との間の電気的絶縁を介して、IGBT領域とMOSFET領域との2つの領域に分割される。使用時に、IGBT領域とMOSFET領域とに別々に電力を供給して絶縁ゲートバイポーラトランジスタを制御し得る。例えば、第1の金属電極15のみに電力が供給されるとき、コレクタ12のみが導通され、ドレイン13は導通されない。この場合、当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタはIGBTモード及びMOSFETモードを実装することができる。第2の金属電極14のみに電力が供給されるとき、ドレイン13のみが導通され、コレクタ12は導通されない。この場合、当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタはFRDモード及びMOSFETモードを実装することができる。MCUが軽負荷にあるとき、第2の金属電極14のみに電力を供給し得る。この場合、MCUは長い時間にわたってMOSFETモードで動作することができる。MCUが重負荷にあるとき、第1の金属電極15及び第2の金属電極14の両方に電力を供給し得る。この場合、MCUは、MOSFETモードとIGBTモードとの間で切り替わることができる。上述の説明から分かることには、MCUは、ゲート8と共に背面の2つの金属電極を使用することにより、デバイスの動作モードを正確に制御することができる。MCUの電力出力要求に基づいて、当該絶縁ゲートバイポーラトランジスタがMOSFETモードで動作するのか、それともIGBTモードで動作するのかが決定され得る。従って、モータをいっそう正確に制御することができる。
【0034】
オプションの一実装として、コレクタ12から容易に電子ホールを注入することができるよう、コレクタ12の幅がドレイン13の幅よりも大きくされる。従って、低い高速リカバリ電圧及び低い導通抵抗を実現することができる。高速リカバリ電圧を低くする条件として、高速リカバリピーク電圧での電流密度で、
図1の水平方向においてNバッファ層11に、コレクタ12の中間点とドレイン13との間の電位差が0.5V以上、好ましくは0.7V以上、になるように電圧降下を生じさせる必要がある。上述の条件を満たすために、第1の金属電極15から容易に正孔を注入することができるように、(
図1の第1方向aにおいて)より大きい幅のコレクタ12が得られる。従って、比較的低い高速リカバリ電圧及び比較的低い導通抵抗というMOSFET特性が実現される。また、比較的大きいMOSFET動作範囲を得ることができる。
【0035】
さらに、コレクタ12とドレイン13との繰り返し間隔を大きくすることは、高速リカバリ電圧を低くすることを可能にする。好ましくは、コレクタ12とドレイン13との繰り返し間隔は、Nドリフト層1とPドリフト層2との繰り返し間隔の5倍以上であり、且つNドリフト層1とPドリフト層2との繰り返し間隔の2万倍未満である。
【0036】
一変形実施形態として、上述のトレンチゲート構造に加えて、この出願のこの実施形態で提供される絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、IGBTのデバイス特性を実現することができる限りにおいて、プレーナゲート構造のものであってもよい。
【0037】
図4は、別の絶縁ゲートバイポーラトランジスタを示している。複数のコレクタ及び複数のドレインがあり、該複数のコレクタと該複数のドレインとが交互に配置される。これに対応して、第1の金属電極15がコレクタ12と一対一に対応し、第2の金属電極
14がドレインと一対一に対応し、そして、隣接する第1の金属電極15と第2の金属電極
14とが互いに電気的に絶縁される。
図4に示すように、第1の金属電極15と第2の金属電極
14とが第1方向aに交互に配置される。
【0038】
図5に示すように、この出願の一実施形態は更にモータ制御ユニットを提供する。当該モータ制御ユニットは、パワーモジュール200と、該パワーモジュール200に接続された、上述の実施形態のうちのいずれか一に記載の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100と、を含む。当該モータ制御ユニットは、モータを動作させるべく制御するように構成され得る。MCUは殆どの時間、軽負荷状態で動作するので、MCUは、インバータのスイッチング素子(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100)が、より多くの時間、MOSFETモードで動作することを期待する。さらに、MCUがフル負荷にあるとき、MCUは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100が迅速にIGBTモードに切り替われることを期待する。従って、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100の裏面が、第1の金属電極と第2の金属電極との間の電気的絶縁を介して、IGBT領域とMOSFET領域との2つの領域に分割される。使用時に、IGBT領域とMOSFET領域とに別々に電力を供給して絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100を制御し得る。例えば、第1の金属電極のみに電力が供給されるとき、コレクタのみが導通され、ドレインは導通されない。この場合、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100はIGBTモード及びMOSFETモードを実装することができる。第2の金属電極のみに電力が供給されるとき、ドレインのみが導通され、コレクタは導通されない。この場合、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100はFRDモード及びMOSFETモードを実装することができる。MCUが軽負荷にあるとき、第2の金属電極のみに電力を供給し得る。この場合、MCUは長い時間にわたってMOSFETモードで動作することができる。MCUが重負荷にあるとき、第1の金属電極及び第2の金属電極の両方に電力を供給し得る。この場合、MCUは、MOSFETモードとIGBTモードとの間で切り替わることができる。上述の説明から分かることには、MCUは、ゲートと共に背面の2つの金属電極を使用することにより、デバイスの動作モードを正確に制御することができる。MCUの電力出力要求に基づいて、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100がMOSFETモードで動作するのか、それともIGBTモードで動作するのかが決定され得る。従って、モータをいっそう正確に制御することができる。
【0039】
図6に示すように、この出願の一実施形態は車両を提供する。
図6中の同じ参照符号については、
図5における説明を参照されたい。当該車両は、モータ400と、モータ400に接続された、上述の実施形態のうちのいずれか一に記載のモータ制御ユニット300と、を含む。モータ制御ユニット300は、モータ400を動作させるべく制御するように構成され得る。MCUは殆どの時間、軽負荷状態で動作するので、MCUは、インバータのスイッチング素子(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100)が、より多くの時間、MOSFETモードで動作することを期待する。さらに、MCUがフル負荷にあるとき、MCUは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100が迅速にIGBTモードに切り替われることを期待する。従って、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100の裏面が、第1の金属電極と第2の金属電極との間の電気的絶縁を介して、IGBT領域とMOSFET領域との2つの領域に分割される。使用時に、IGBT領域とMOSFET領域とに別々に電力を供給して絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100を制御し得る。例えば、第1の金属電極のみに電力が供給されるとき、コレクタのみが導通され、ドレインは導通されない。この場合、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100はIGBTモード及びMOSFETモードを実装することができる。第2の金属電極のみに電力が供給されるとき、ドレインのみが導通され、コレクタは導通されない。この場合、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100はFRDモード及びMOSFETモードを実装することができる。MCUが軽負荷にあるとき、第2の金属電極のみに電力を供給し得る。この場合、MCUは長い時間にわたってMOSFETモードで動作することができる。MCUが重負荷にあるとき、第1の金属電極及び第2の金属電極の両方に電力を供給し得る。この場合、MCUは、MOSFETモードとIGBTモードとの間で切り替わることができる。上述の説明から分かることには、MCUは、ゲートと共に背面の2つの金属電極を使用することにより、デバイスの動作モードを正確に制御することができる。MCUの電力出力要求に基づいて、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ100がMOSFETモードで動作するのか、それともIGBTモードで動作するのかが決定され得る。従って、モータ400をいっそう正確に制御することができる。
【0040】
明らかなことには、当業者は、この出願の精神及び範囲から逸脱することなく、この出願に様々な変更及び変形を為すことができる。この出願は、この出願のそれら変更及び変形を、以下の請求項及びそれらの均等技術によって定められる保護の範囲に入る限りにおいてカバーすることを意図している。