(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】管状繊維複合材料構造体を接続装置に接続するための繊維複合材料接続部の使用
(51)【国際特許分類】
B29C 70/68 20060101AFI20240510BHJP
F17C 1/06 20060101ALI20240510BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20240510BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B29C70/68
F17C1/06
B29C70/16
B29C70/32
(21)【出願番号】P 2022566614
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(86)【国際出願番号】 DE2021100406
(87)【国際公開番号】W WO2021223810
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102020112179.2
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522424979
【氏名又は名称】イングエーエムプロ インジェニウアゲゼルシャフト フュア アンジェヴァント メカニク ウント プロトティーペンバウ エムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】522424980
【氏名又は名称】プファッフ トーマス
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】プファッフ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マギン ミヒャエル
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00082021(EP,A2)
【文献】国際公開第2005/036042(WO,A1)
【文献】特開2019-077128(JP,A)
【文献】特開2017-187153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00 - 70/88
F17C 1/00 - 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状繊維複合材料構造体を接続装置(260)に接続するための繊維複合材料接続部(210)の使用であって、前記繊維複合材料構造体は、長手方向糸よりも多くの周方向層を有し、接続部(210)は、その内部に少なくとも1つの繊維偏向要素(211、212、213)を有し、長繊維(201a、202a,203a)のコースが、繊維偏向要素(211、212、213)の繊維偏向部の形状に従い、その繊維方向が繊維偏向部で偏向されるようになっており、長繊維(201a、202a、203a)は、それらがそれぞれ関連する繊維偏向要素(211、212、213)の周りを完全にループせず、繊維偏向要素(211、212、213)は、繊維複合材料からなり、前記管状繊維複合材料構造体と前記接続装置(260)との間に
、接着剤を用いた接着結合による接続が存在せず、圧力タンク(1)用である、使用。
【請求項2】
前記繊維偏向要素(211、212、213)の前記繊維複合材料は、主に周方向層からなることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記接続装置(260)は、ドームキャップ(2)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記繊維複合材料構造体は、ライナーを備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記ライナーは、圧力方向に応じて、前記管状繊維複合材料構造体内側または外側に適用されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記ライナーは、前記管状繊維複合材料構造体の巻き付けのためのコアとして機能することを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
複数の管状繊維複合材料構造体は、前記接続装置(260)を介して相互接続されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
複数の管状繊維複合材料構造体が、サブアセンブリの形態で相互接続されて組み合わせられることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状繊維複合材料構造体を接続装置に接続するための繊維複合材料接続部の使用に関し、繊維複合材料構造体が長手方向糸よりも多くの周方向層を有し、接続部は、その内部に少なくとも1つの繊維偏向要素を有し、繊維複合材料構成要素からの長手方向糸のコースは、繊維偏向要素の繊維偏向部の形状に従い、その繊維方向が繊維偏向部で偏向されるようになっており、長繊維は、それぞれ関連する繊維偏向要素の周りを完全にループせず、繊維偏向要素は、繊維複合材料からなり、圧力タンク用である。
【背景技術】
【0002】
繊維複合材料を構成要素に接続するために、金属材料について知られている接続方法は、使用することができないか、または接続の強度が低下した状態でしか使用できないことが多い。特に、繊維複合材料と構成要素との間の接続の強度は、繊維複合材料の繊維の分離および破断によって低下する。そのような繊維の破断は、例えば、接続される構成要素を穿孔された穴から挿入するために、またはトリミングされた縁に接着するために、繊維複合材料を穿孔またはトリミングする際に発生する。
【0003】
従って、繊維複合材料構造体の長繊維を切断することなく、繊維複合材料構造体を接続装置に接続する繊維複合材料接続部が知られている。
【0004】
特許文献1には、繊維複合材料構造体を接続装置に接続するための繊維複合材料接続部が記載されている。その場合の接続部は、その内部に少なくとも1つの繊維偏向要素を有し、繊維複合材料構成要素からの第1の長繊維のコースは、第1の繊維偏向要素の形状に従い、その繊維方向が第1の繊維偏向部で偏向されるようになっている。繊維複合材料構造体からの第2の長繊維のコースは、その第2の部分または第2の繊維偏向要素に従い、その繊維方向が第2の繊維偏向部で偏向されるようになっている。2つの繊維偏向部は、互いに空間的に離れており、第1の固定突起と、第1の固定突起から空間的に離れた第2の固定突起とが、それぞれ接続部に形成され、接続部に力を伝達し、第1の固定突起は、第1の繊維偏向要素と第1の長繊維とによって形成され、第2の固定突起は、第2の繊維偏向要素と第2の長繊維とによって形成される。繊維複合材料構造体または繊維複合材料構成要素から固定部に至る長繊維は、分けられて複数の固定突起に分散している。これにより、長繊維に伝達された引張力および圧縮力を、別の構成要素に伝達することができる。この場合、繊維複合材料構成要素は、引張圧縮要素として棒状または管状に形成することができる。特に、棒状または管状の長手方向に繊維方向を有する繊維の大部分を設けることができる。
特許文献2には、繊維強化合成樹脂材製の壁またはスカートを有する、物体上の、リング、特に金属リング、の固定が記載されている。リングは、複数の外側溝を有する。スカートは、それぞれの溝について、続いて繊維強化樹脂材の第1および第2の層を含む。第1の層の繊維は、リングの軸に平行に実質的に配向し、スカートからそれぞれの溝に延びる。第2の層は、第1の層の上に位置し、その第2の層は、環状巻線で構成され、溝の方向にスカートから延びる。第2の層は、第1の層を溝に固定するために少なくとも部分的に溝に位置する。この層化は、それぞれの溝について繰り返され、最終的に、後続フープ巻きが製品全体に巻かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO 2016/008858 A1
【文献】EP0082021 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、非常に耐圧性の高い圧力タンクを作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的は、管状繊維複合材料構造体を接続装置に接続するための繊維複合材料接続部の使用によって達成され、繊維複合材料構造体は、長手方向糸よりも多くの周方向層を有し、接続部は、その内部に少なくとも1つの繊維偏向要素を有し、繊維複合材料構成要素からの長繊維のコースが、繊維偏向要素の繊維偏向部の形状に従い、その繊維方向が繊維偏向部で偏向されるようになっており、長繊維は、それぞれ関連する繊維偏向要素の周りで完全にループせず、繊維偏向要素は、繊維複合材料からなり、管状繊維複合材料構造体と接続装置との間に強固な接続が存在せず、圧力タンク用である。
【0008】
圧力タンクは、内側圧力タンクと外側圧力タンクとして構成することができる。この場合、圧力タンクは、管状繊維複合材料構造体からなり、この管状繊維複合材料構造体は、繊維複合材料接続部を介して接続装置に接続される。繊維複合材料構造体を接続装置に接続するために、繊維複合材料構造体からの長繊維は、繊維偏向要素の表面部分に沿って延びることができる。ここでは、長繊維が繊維偏向要素の周囲に巻き付く必要はない。表面部分は、少なくとも部分的に接続部の外面を形成する。表面部分は、接続部に向かって延びる長繊維の方向から、20°から60°、特に好ましくは45°、の角度で延びる。長繊維は、また、隣り合う繊維偏向要素上で部分が延び、隣り合う繊維偏向要素上の部分は、方向を変える。方向を変えた後、それは、繊維偏向要素の表面に沿って延びる。繊維の方向が変わることにより、繊維偏向要素の外面は、繊維のための繊維偏向部として理解することができる。長繊維に関しては、繊維が延びる曲面により、隣り合う繊維偏向要素もそれぞれ繊維偏向部の機能を果たす。
【0009】
繊維偏向要素は、接続装置の方向に突出した先端部をそれぞれ有することができる。長繊維は、ここで、この先端部に最大限に到達し、長繊維が繊維偏向要素の周囲に完全に巻き付かないようになっている。長繊維は、繊維偏向要素で偏向された後、再び大きく方向を変えることはない。長繊維が沿って延びる繊維偏向要素の表面は、少なくとも先端部の近傍への部分で平面的であり、好ましくは90°の偏向後に、それぞれさらなる表面に合流し、前記のさらなる表面は、先端部から接続部分の内部の方向に延びる。この表面の端部にそれぞれ切り欠きがあり、その後、最後の繊維偏向要素でない限り、接続部分の外面は、次の繊維偏向要素に続く。先端部で接触する2つの表面は、好ましくは、正三角形の脚を形成する。それらは、接続装置のV字型の窪みを形成する。長繊維は、好ましくは、別の繊維層にそれぞれ属する。長繊維は、ここで繊維偏向要素の外面に埋め込むことができる。
【0010】
有利には、管状繊維複合材料構造体の使用は、従来の金属、また従来の巻かれている繊維複合材料圧力タンク(タイプ4)と比較して、重量およびコストの削減を達成する。この重量およびコストの削減は、自動車、船舶、航空機、宇宙旅行などのモバイル用途のH2高圧タンクの分野で特に有利である。
【0011】
繊維偏向要素は、独立した繊維偏向要素として構成することができる。あるいは、繊維偏向要素は、らせん状の相互に関連する繊維偏向要素として構成することができる。
【0012】
有利には、本発明では、圧力タンク用の管状繊維複合材料構造体のより小さい直径を達成することができる。このようにして、圧力タンクは、直径<100mmを有することができる。例えば、従来の方法で巻き付け工程で製造されていたH2高圧タンクの場合、最小直径は、ボス部によって決定される。これが100mmであれば、巻き付け工程で製造される圧力タンクは、過圧による長手方向の力を吸収するために繊維を巻いたボス部分を必要とするので、圧力タンクの外径は、約130mm未満にすることができない。このため、ボス部は、安全弁を収容するために設けられた内ねじ付き円筒部に加えて、最終的に巻き付け時の回転領域として機能し、さらに内圧による長手方向の力を吸収する、より大きい直径の顕著な板状部を有していなければならない。円筒形複合材料領域からしばしば金属ドーム領域への荷重の移行時に長手方向の力を吸収するこの機能は、本発明によって、はるかにコンパクトな方法で、より低い応力集中で達成される。
【0013】
有利には、接続装置を有する管状繊維複合材料構造体は、従来の方法で巻かれた内圧タンクと比較して、内圧および外圧の両方によって負荷され得る。これは、接続装置を有するこれらの管状繊維複合材料構造体は、入れ子式高圧タンクとしての使用にも適していることを意味し、内側タンクは、外側タンクよりも低い内圧を有することもでき、従って外圧によって負荷されるタンクを実質的に表す。一般に、これらの高圧タンクは、約1575barの最小破裂圧力を有する。
【0014】
有利には、繊維複合材料構造体と接続装置とは、接着結合なしで接続することができる。引張力および圧縮力の力伝達は、接続装置と繊維複合材料構造体の偏向要素および長繊維との間の形状嵌合(form fit)によって行われる。これは、温度変化の際にも張力が発生しないことを意味する。有利には、接続装置を固定するために繊維が破断されることはない。そのような繊維の破断は、繊維複合材料構造体の強度に悪影響を及ぼす可能性がある。ボルトやネジなどの接続要素による貫通がないため、応力腐食も発生しない。異なる温度膨張係数を有する異なる材料の使用は、接着剤のような固定的な接続がないので、大きな温度差の結果としてさえも、管状繊維複合材料構造体と接続装置との間の力の導入に張力をもたらさない。このため、圧力タンクは、極低温用途、例えば極低温高圧貯蔵にも適している。例えば、圧力タンクは、例えば液体H2用の、極低温内側タンク、および外側タンク内に気体H2を有する二重壁タンクとして構成することができる。極低温タンクは、通常、非常に複雑な真空断熱層によって、極低温内容物の加熱から保護される。極低温内容物、例えばH2、が20Kより高温になった場合、残りの内容物を冷却するために、内容物の一部がブローオフされなければならない。このブローオフは、二重壁の外圧/内圧タンクの場合、内側タンクから外側タンクへと伝わり、気体のH2としてそこで利用され続けることができる。
【0015】
管状繊維複合材料構造体の周方向層の数が多いため、これらに、より高い内圧および外圧を負荷することができる。有利には、内圧または外圧によってタンクの円筒部分に生じる力は、特に周方向層によって吸収される。その結果、例えば1575barの破裂圧力を有する高圧タンクを、管状繊維複合材料構造体で製造することができる。管状繊維複合材料構造体の積層体全体は、特に好ましくは、長手方向糸の2倍の周方向層を有する。
【0016】
ここで、繊維偏向要素の繊維複合材料は、主に周方向層で構成されていることが好都合である。
【0017】
好ましくは、接続装置のV字型窪みは、繊維複合材料の周方向層で充填される。好ましくは、周方向層は、圧力タンクとして使用する場合、接続装置全体にわたって巻き付けられ、より具体的には、好ましくは、全壁厚に関して約2/3(周方向層)対1/3(長手方向層)の比で巻き付けられる。周方向層の巻き付けにより、管状繊維複合材料構造体の長繊維が接続装置に固定される。
【0018】
繊維偏向要素の繊維が周方向に配向していることにより、繊維複合材料構造体の長繊維を介して繊維偏向要素に伝達される引張力、圧縮力、およびねじり力が、接続部上の繊維偏向要素の繊維の周方向力に変換される。これにより、繊維偏向要素への力の導入が有利に行われる。
【0019】
本発明の別の実施形態は、接続装置がドームキャップを備える。
【0020】
ドームキャップは、管状繊維複合材料構造体の耐圧クロージャを形成する。そのようなドームキャップを有する管状繊維複合材料構造体は、圧力タンクとして有利に適している。内圧または外圧によって繊維複合材料構造体に作用する力は、長繊維および繊維偏向要素を介して、ドームキャップを有する接続装置に伝達されることができる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、繊維複合材料構造体は、ライナーを備える。
【0022】
管状繊維複合材料構造体で作られた圧力タンクの、外部からの媒体、例えばH2、の漏れや侵入に対する気密性を確保するために、管状繊維複合材料構造体および接続装置にライナーを設けることができる。このライナーは、圧力の方向に応じて、管状繊維複合材料構造体の内側または外側に適用することができる。ライナーは、熱可塑性ライナー、例えばHDPEまたはPAとすることができる。それはまた、ガラス、シリコーン、または金属で作ることもできる。有利には、ライナーは、繊維複合材料構造体に中間繊維破断が生じたとしても、繊維複合材料構造体の媒体気密性を保証する。
【0023】
ドームキャップと組み合わせたインナーライナーは、内圧タンク製造のためのブランクを形成することができる。このようにして、製造時に追加のコアが回避される。後にドームキャップに媒体密な方法で接続されるライナーは、製造過程で加圧されることができ、管状繊維複合材料構造体の巻き付けのためのコアとして機能する。圧力のレベルは、ここで、関連する要件に適合させることができる。製造中のブランク(ライナーおよびドームキャップ)のさらなる安定化は、タンクの織物構造体が安定するまで、ライナーを安定化媒体(ポリスチレン、砂、中空球体など)にフラッディング(flooding)することによって達成することができる。
【0024】
本発明の別の実施形態は、複数の管状繊維複合材料構造体が、接続装置を介して相互に接続される。
【0025】
この結果、複数の圧力タンクを有する構造体が得られる。接続装置は、ここで、圧力タンク間のコネクタとして形成することができる。モジュラータンクユニットから形成された構造体は、例えば車両組立におけるH2圧力タンクにおいて、設置スペースをより有効に活用するために使用することができる。モジュール式圧力タンクは、ここでは様々な配置で配向することができる。例えば、複数の圧力タンクを互いに隣接して並列に配置することができる。あるいは、例えば、気体H2を有する圧力タンクの中に、液体H2を有する複数の圧力タンクを配置することもできる。
本発明の別の実施形態によると、ライナーは、圧力方向に応じて、管状繊維複合材料構造体内側または外側に適用される。
本発明の一実施形態は、ライナーが、管状繊維複合材料構造体の巻き付けのためのコアとして機能するようになっている。
【0026】
最後に、複数の管状繊維複合材料構造体が、サブアセンブリの形態で相互接続されて組み合わせられることは、本発明の範囲内である。
【0027】
以下では、本発明による使用のための装置の実施形態について、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による使用のための繊維複合材料接続部を断面で示す。
【
図2】本発明による使用のためのさらなる繊維複合材料接続部を断面で示す。
【
図3】
図2に示す本発明による使用のための繊維複合材料接続部のさらなる断面を示す。
【
図4】本発明による使用のための別の繊維複合材料接続部を断面で示す。
【
図5】本発明による使用のためのさらなる繊維複合材料接続部を断面で示す。
【
図6】本発明による使用のためのさらなる繊維複合材料接続部を断面で示す。
【
図7】本発明による使用のためのさらなる繊維複合材料接続部を透視断面で示す。
【
図8】本発明による繊維複合材料接続部を有する圧力タンクの配置の透視図を示す。
【
図9】本発明による繊維複合材料接続部を有する圧力タンクのさらなる配置の透視図を示す。
【
図10】本発明による繊維複合材料接続部を有する圧力タンクのさらなる配置の透視断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、適合する接続装置260と係合している接続部210の実施形態の一部を通る断面図である。接続部は、特に管状である場合、同じ断面平面内に別の部分を有することができる。好ましくは、この実施形態および以下で説明される実施形態は、管状接続部210で使用される。この実施形態では、長繊維201a、202aおよび203aは、それぞれ、関連する繊維偏向要素211、212および213の周りを完全にループしない。むしろ、長繊維201a、202aおよび203aは、繊維偏向要素211、212および213のそれぞれの表面部分221、222および223に沿って延び、表面部分221、222および223は、それぞれ少なくとも部分的に接続部210の外面を形成する。表面部分221、222および223は、接続部210に向かって延びる長繊維201a、202aおよび203aの部分の方向から、約45°の角度で、20°から60°の間の変化で、それぞれ延びている。これらの部分は、
図1において接続部210の左側に示されている。長繊維201aおよび202aは、それぞれ、隣り合う繊維偏向要素212および213で一部がさらに延び、長繊維201および202の一部が、それぞれ、繊維偏向要素212および213で方向を変える。方向転換後、それらは、それぞれ、繊維偏向要素211および212の表面221および222に沿って延びる。繊維方向の転換により、繊維偏向要素211、212および213の外面221、222および223は、それぞれ、繊維のための繊維偏向部として理解することができる。長繊維201aおよび202aに関して、繊維201aおよび202aが延びる曲面により、隣り合う繊維偏向要素212および213も、繊維偏向部の機能を果たす。好ましくは、図示の断面において、接続部210は、3つの繊維偏向要素211、212および213からなる。これらは、多くの場合において十分な力の伝達を提供するからである。しかしながら、その数は異なっていてもよい。
【0030】
長繊維201a、202aおよび203aならびに対応して長繊維201、202および203の一部は、1/3の長手方向の糸と2/3の周方向の層とで構成されている。
【0031】
繊維偏向要素211、212および213は、それぞれ接続装置260の方向に突出した先端部231、232および233を有している。この実施形態では、長繊維201a、202aおよび203aは、それぞれ、先端部231、232および233まで最大に延びている。長繊維201a、202a、203aは、それぞれ、繊維偏向要素211、212および213上で偏向された後、再び大きく方向転換することはない。長繊維201a、202aおよび203aが延びる繊維偏向要素211、212または213の表面221、222または223は、それぞれ、少なくとも先端部231、232および233の近傍に達する部分において少なくともほぼ平面的である。これらの平面的な表面221、222および223は、先端部231、232および233それぞれの他の側で、好ましくは90°の偏向後に、先端部231、232および233それぞれから接続部210の内部に向かって延びるさらなる表面241、242および243それぞれに、それぞれ合流する。これらの表面241、242、243のそれぞれの端部には、ノッチ251、252、253それぞれがあり、その後、最後の繊維偏向要素211でない限り、接続部210の外面は、次の繊維偏向要素に続いている。先端部231、232または233で接触する2つの表面は、
図1に示すように、V字型の窪みを形成する。好ましくは、2つの表面は、正三角形の脚を形成する。長繊維201a、202aおよび203aは、好ましくは、繊維偏向要素211、212および213それぞれの外面に埋め込まれている。繊維偏向要素211、212および213は、それぞれ繊維複合材料からなり、繊維偏向要素211、212および213の繊維は、観察面に対して少なくともほぼ直角に延びる。接続部が管状である場合、接続部にかかる引張力または圧縮力は、繊維偏向要素211、212または213の繊維の周方向の力に変換され、長手方向応力として吸収される。このように、導入された力を良好に吸収することができる。これは、長繊維201a、202aおよび203aの張力に関して、長繊維201a、202a、203aを有する表面221、222および223が、接続部210への力の導入方向に対して斜めに配置されているという事実によって可能となる。圧力が接続部210に導入される際に、接続装置260に押し付けられる先端部231、232および233それぞれの反対側の表面に関して、表面241、242および243もそれぞれ同様である。圧力は、また、表面241、242および243それぞれの斜めの配置によって周方向の力に変換され、繊維偏向要素211、212および213それぞれによって引張力として吸収される。この効果は、表面221、222、223、241、242または243が、前述のように力の導入方向に対して斜めに配置されている場合に、特によく達成される。繊維偏向要素211、212および213は、好ましくは、同じ断面を有する。繊維偏向要素211、212および213は、独立した繊維偏向要素211、212および213として具現化することができる。あるいは、繊維偏向要素211、212および213は、螺旋状の密着した(coherent)繊維偏向要素218として具現化することができる。接続部は、管状である。この場合、表面221、222、223、241、242および243、ならびに先端部231、232および233は、接続部210の糸状の外面または内面をもたらす。繊維偏向要素211、212および213は、
図1に示す断面において、直線に沿って前後に配置される。
【0032】
接続装置260は、キャリア構造261を備え、そのキャリア構造261には、接続装置260に面する外面に相補的な形状の係合部262が固定されている。接続部210の平面的な表面221、222、223、241、242および243に面する係合部262の部分も平面的であり、力が導入される方向に対して同じ傾斜で具現化される。このようにして、接続部210が接続装置260に固定された状態において、形状嵌合(form fit)が実現する。接続装置260は、その自由端に向かってテーパ状になっている。接続部210から離れる方を向くキャリア構造261の側は、ここではテーパを形成するように面取りされている。
【0033】
好ましくは、接続部210および接続装置260は、一体的に結合された接続を伴わない別個の要素として具現化される。しかしながら、ねじり力の伝達の場合、接続部210を接続装置260に接着結合することが好都合であり得る。好ましくは、接続部210に対する少なくとも1つの繊維層は、+45°層として具現化される。繊維偏向要素218が螺旋状であり、接続部210と接続装置260との間にねじ状の接続がある場合、接着結合を必要とせずに、ねじ止めに対する位置でねじの締め付け方向にトルクを伝達することができる。
【0034】
図2および
図3は、第2の実施形態を断面図で示している。第2の実施形態は、ほとんどの部分が第1の実施形態に対応する。同一の特徴には同一の参照符号が付されている。以下では、第1実施形態と第2実施形態との相違点のみを説明する。
【0035】
第2の実施形態は、長繊維201a、202aおよび203aが、先端部231、232、233それぞれを超えて延び、傾斜した平面的な表面241、242および243それぞれに続いている点で、第1の実施形態と異なる。それらは、これらの表面241、242および243それぞれに埋め込まれている。それらは、表面241、242および243それぞれの端部で、ノッチ251、252および253それぞれの方向に、またはその近傍で終わる。第1の実施形態と比較して、長繊維201a、202aおよび203aが繊維偏向要素211、212および213それぞれに、より強固に接続されるという追加の利点が存在する。さらに、追加の繊維によって、表面241、242または243は、より強くなり、より高い圧縮力を接続装置260に伝達することができる。
【0036】
図3の詳細から分かるように、長繊維201a、202aおよび203a、ならびに対応して長繊維201、202および203の部分は、1/3の長手方向糸および2/3の周方向層から構成されている。周方向層は、ここでは、それぞれ先端部231、232、233を越えて延びてもいる。接続部210の管状構成では、周方向層は、接続装置260の管状部分の周囲に完全に延在している。
【0037】
図4は、接続部210および接続装置260の第3の実施形態を断面図で示す。第3の実施形態は、大部分が第2の実施形態に対応する。同一の特徴には同一の参照符号が付されている。以下では、第2の実施形態と第3の実施形態との相違点のみを説明する。
【0038】
第3の実施形態は、長繊維201a、202aおよび203aを備え、対応して、長繊維201、202および203の部分は、全体が長手方向糸構成されている点で、第2実施形態とは異なる。接続部210の外面に配置された、長繊維201a、202aおよび203aを完全に包む長繊維204aがある。この長繊維204aは、全体が周方向層で構成されている。このようにして、周方向層は、長手方向層から分離される。
【0039】
図6は、接続部210および接続装置260の第4の実施形態を断面図で示す。第4の実施形態は、大部分が第2の実施形態に対応する。同一の特徴には同一の参照符号が付されている。以下では、第2の実施形態と第3の実施形態との相違点のみを説明する。
【0040】
第4の実施形態は、接続部210上の追加のさらなる繊維偏向要素214によって、第2の実施形態とは異なる。前記の追加のさらなる繊維偏向要素は、接続部210の自由端から離れる方向に繊維偏向要素211、212および213の列に連続して配置されている。しかしながら、他の繊維偏向要素211、212および213とは、例えば、明示的に示されていない構成要素に、接続部210が接続される長繊維201a、202aおよび203aをそこに埋め込んでいない点で異なる。しかしながら、接続部210が管状である場合、繊維偏向要素214に周方向に繊維が埋め込まれ、長繊維203aのたわみによる力を繊維偏向要素214がより吸収することができる。長繊維からの力は、リング形状によって周方向の力に変換される。これにより、接続部の強度が向上する。
【0041】
別の相違点は、第4の実施形態では、接続装置260が、その自由端の方向に細長くなっていることである。キャリア構造体261が延びるキャリア延長部261aは、キャリア構造体261の自由端で
図1および
図2に示されるテーパを継続する。キャリア延長部261aは、接続部分210の方向に、追加の繊維偏向要素214のための係合部262の同様に追加の当接部262aに当接する。追加の当接部262aは、傾斜した平面的な表面を有し、固定された状態において、追加の繊維偏向要素214の同様に傾斜した平面に当接する。これは、接続部210の力伝達面221、241、222、242、223、243と形状が相補的な接続装置の表面と同様である。接続装置260の伸長、その継続するテーパ、および接続部への力の導入のための埋め込まれた長繊維がない追加の繊維偏向要素214は、力導入長繊維201a、202aおよび203aと力伝達残りの接続部210との間の支持的であるがいくらか降伏する移行を生じさせる。これにより、長繊維203aにかかる負荷が均質化される。
【0042】
図6は、接続部の第5の実施形態を断面図で示す。第5の実施形態は、大部分が第4の実施形態に対応する。同一の特徴には同一の参照文字が付されている。以下では、第5の実施形態と第4の実施形態との相違点のみを説明する。
【0043】
第5の実施形態は、接続部210が、繊維偏向要素214と繊維層203aとの間に支持層215を追加的に有する点で、第4の実施形態とは異なる。この支持層215は、追加の繊維偏向要素214を越えて接続部210の自由端から離れるように延びる。支持層215は、接続部210の張力をさらに均質化し、前記の接続部が、支持層215の材料コストがわずかに高いだけで、より大きな耐荷重能力を有するようになっている。
【0044】
さらに、第5の実施形態は、
図1に示す第1の実施形態のように、長繊維201a、202aおよび203aが、先端部231、232および233それぞれを越えて第2傾斜面241、242、243に続いていない点で、第4の実施形態とは異なる。しかしながら、第4の実施形態の代替として、
図2に関して上述したように、この相違点の利点を提供する第6の実施形態において
図7に示すように、長繊維201a、202aおよび203aは、表面241、242および243それぞれに続くこともできる。
【0045】
図7は、管状構成を有する接続部210の第6実施形態を透視断面図で示す。同じ特徴の参照符号は、他の図の参照符号と同一である。
【0046】
図8は、3つの圧力タンク1の配置を示す。圧力タンク1は、一端が接続装置で接続され、他端でドームキャップ2を有する、管状繊維複合材料構造体である。
【0047】
図9は、33個の圧力タンク1の配置を示す。圧力タンク1は、一端で接続装置によって接続され、他端でドームキャップ2を有する、管状繊維複合材料構造体である。圧力タンク1は、それぞれ3つの圧力タンク1のサブアセンブリにグループ化されている。これらのサブアセンブリのそれぞれは、他のサブアセンブリに接続されている。
【0048】
図10は、極低温用圧力タンク1を示す。圧力タンク1は、例えば、外側タンク3内の液体H
2および気体H
2のための7つの極低温内側タンク4を有する二重壁タンクとして構成される。極低温内容物、例えばH
2、が20Kより暖かくなった場合、残りの内容物を冷却するために、内容物の一部をブローオフする必要がある。このブローオフは、内側タンク4から外側タンク3に行われ、そこで気体H
2として利用可能となり続けることができる。