(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】燃料電池システム用の空気供給装置および燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04111 20160101AFI20240510BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20240510BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240510BHJP
F04D 25/16 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01M8/04111
H01M8/249
H01M8/04 J
F04D25/16
(21)【出願番号】P 2022568369
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2021062565
(87)【国際公開番号】W WO2021228908
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】102020206162.9
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ハオスマン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ハール
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミーン・ピーク
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0003258(US,A1)
【文献】国際公開第2021/228908(WO,A1)
【文献】特開2022-045809(JP,A)
【文献】特許第2745776(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧縮機と前記流体圧縮機用の電気駆動モータ(4)とを備えた燃料電池システム(2、3)用の空気供給装置(1)であって、前記流体圧縮機が2つの圧縮機ホイール(6、7)を有し、前記圧縮機ホイール(6、7)が実質的に対称に構成されており、それらの間に配置された前記電気駆動モータ(4)とともに共通の軸(5)に配置されている、空気供給装置(1)において、
前記2つの圧縮機ホイール(6、7)がその圧力側で、恒久的に空気接続されない2つのシステム(2、3、10、13)と接続されるものであ
り、
前記恒久的に空気接続されないシステムが、2つの燃料電池システム(2、3)であることを特徴とする、空気供給装置(1)。
【請求項2】
前記恒久的に空気接続されないシステム(2、3、10、13)が、弁(16)が設けられたバイパス管(15)を介して制御可能に接続されることを特徴とする、請求項
1に記載の空気供給装置(1)。
【請求項3】
圧縮空気流に液体を供給するための装置が設けられており、前記装置が特に、前記圧縮空気流に液体を噴霧するための少なくとも1つのノズルを有することを特徴とする、請求項1
または2に記載の空気供給装置(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの燃料電池(19)を備えた燃料電池システム(2、3)であって、前記燃料電池(19)の空気供給が、請求項1から
3のいずれか1項に記載の空気供給装置(1)からの空気の少なくとも一部を用いて行われる、燃料電池システム(2、3)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの燃料電池(19)のアノード側(20)およびカソード側(21)と、請求項
1から
3のいずれか1項に記載の空気供給装置(1)とをさらに備え、
前記カソード側(21)の出口が、環
境と制御可能に選択的または部分的に接続可能で
あることを特徴とする、請求項
4に記載の燃料電池システム(2、3)。
【請求項6】
少なくとも部分的に再循環送風機(31)を介して行われるアノード排ガスの再循環をさらに備え、
前記再循環送風機(31)が排気タービン(32)と結合されており、前記排気タービン(32)が、前記燃料電池(19)の排ガス、特にカソード排気によって駆動されることを特徴とする、請求項
5に記載の燃料電池システム(2、3)。
【請求項7】
前記排気タービン(32)と前記再循環送風機(31)との間の結合が磁気結合として形成されることを特徴とする、請求項
6に記載の燃料電池システム(2、3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による燃料電池システム用の空気供給装置、およびこの空気供給装置を介して供給される燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、従来技術からある程度知られている。燃料電池システムに空気を供給するために流体圧縮機がしばしば使用され、一部の流体圧縮機は電気的に駆動されている。非常に多くの場合、電動機の一方側にタービンが、他方側に圧縮機が配置されている。この電気ターボチャージャまたはモータ駆動ターボチャージャとも呼ばれる構成は、排ガスから残留エネルギーを回収することができるのでしばしば使用される。しかし、圧縮機の領域において作用する力とタービンの領域において作用する力とが部分的に大きく異なるため、この構成には、軸受に不均等な負荷がかかるという短所がある。その結果、スラスト軸受の領域における摩擦が増大する。したがって、かなり大がかりで高価なスラスト軸受が必要となるが、それらの領域では望ましくない高い出力損失をほとんど回避することができない。
【0003】
さらなる構成は、電動機および2つの圧縮機ホイールを同一の軸に備えた2段式の圧縮機として構成されていてもよい。これに関連して、特許文献1が例として挙げられ得る。ここでも、異なる圧力比および力が両側に存在するので、スラスト軸受の負荷が比較的大きい。言及した文献では、圧縮機ホイールのホイール後方部を介してこれらを相応に均一化することが試みられている。
【0004】
この分野に準じる特許文献2は、2つの対称な圧縮機ホイールが共通の軸に電気駆動モータとともに配置されることによってこの力の不均衡を解消している。これによって、軸力を大幅に低下させることができる。その結果、スラスト軸受を小型化するとともに、このスラスト軸受の領域における摩擦をはるかに少なくすることが可能になる。
【0005】
また、さらなる従来技術として、本出願人の特許文献3も挙げられ得、この文献には、いわゆるフリーホイール機構、すなわち一方側にタービンを、他方側に圧縮機を備えたフリーホイール・ターボチャージャを伴う電気駆動の流体圧縮機の組み合わせが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】DE10 2010 035 725 A1
【文献】WO 2019/096890 A2
【文献】DE 101 20 947 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、ここでの本発明の課題は、請求項1の前文による燃料電池システム用の改良された空気供給装置を提示し、その上、この空気供給装置を用いる改良された燃料電池システムを提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、請求項1、ここでは特に請求項1の特徴部分の特徴を備えた燃料電池システム用の空気供給装置によって解決される。空気供給装置の有利な形態および発展形態は、この請求項に従属する下位請求項から明らかになる。また、請求項7の特徴を備えた燃料電池システムが、この課題を解決する。燃料電池システムの有利な形態および発展形態は、この請求項に従属する下位請求項から明らかになる。
【0009】
燃料電池システム用の空気供給装置は、この分野に準じる従来技術において実施されているのと同様に、電気駆動モータによって駆動される流体圧縮機が利用可能であることを企図する。この場合、流体圧縮機は2つの圧縮機ホイールを有し、これらの圧縮機ホイールは、実質的に対称に構成されており、それらの間に配置された電気駆動モータとともに共通の軸に配置されている。本発明によれば、ここでは2つの圧縮機ホイールが恒久的に空気接続されない2つのシステムと接続される。
【0010】
2つの実質的に対称な圧縮機ホイールを備えた電気駆動の流体圧縮機をこの分野に準じる従来技術に記載されているような形式で利用することによって、スラスト軸受の負荷を大幅に軽減することが可能になり、それによって、このスラスト軸受の構造が簡素化され、摩擦が減少する。このように、車両分野における燃料電池の適用およびこの分野で一般的である出力において、2kWまで出力の損失が削減され得る。この場合、圧縮機ホイールの圧力側が、空気接続されない、または少なくとも恒久的に空気接続されない2つの異なるシステムと接続されている状態で、生成された空気流を使用することには、両方のシステムに熱の一部のみがもたらされるという決定的な利点があり、これに対して、これらの圧力側の空気管が構成部品に一緒に接続している場合、この一部の熱が共に存在することによって、燃料電池システムではすぐに構成部品の熱的過負荷に至り得る。
【0011】
本発明による空気供給は、ここでは特に、2つの互いから分離された燃料電池システムに共通の空気供給装置を介して空気を供給するために使用することができ、空気供給装置の非常に有利な一発展形態によればそのように企図されている。例えば、互いから分離された燃料電池システムは、例えば商用車に要求される駆動力を提供するためにモジュール式の構成の枠内で互いに組み合わせられる2つの同種のシステムであってもよい。燃料電池システムと任意の他の種類の空気を必要とするさらなるシステムとに共に供給することも同様に十分考えられるかもしれない。
【0012】
本発明による空気供給装置の極めて好都合な一発展形態によれば、2つの恒久的に互いに空気接続されないシステムは、フリーホイール・ターボチャージャの圧縮機側およびタービン側である。つまり、2つの対称な圧縮機ホイールを備えた空気供給装置は、1つの圧縮機ホイールを介してフリーホイール機構の圧縮機側に供給する一方、もう1つの圧縮機ホイールを介してそのタービンに対して流れが生じる。これによって、実質的に、電気駆動の流体圧縮機が例えば1.5から2.5バールの圧力レベルを提供するシーケンシャル・ターボ過給が成立する。この圧力は次に圧縮機ホイールからフリーホイール機構の圧縮機側に移動し、このフリーホイール機構が、燃料電池システムに供給するために圧力を例えば4.5バールまでさらに上昇させる。加えて、もう1つの圧縮機ホイールの体積流量がフリーホイール機構のタービン側に到達し、それによって圧縮機側の駆動および圧力の上昇に必要とされるエネルギーを提供する。この構成は極めてシンプルで有利である。特に、フリーホイール機構は、燃料電池システムに供給され得る燃料電池システム内の非常に湿ったガス中で、完全にまた凍結し得るように形成することができる。それにもかかわらず、ここでは、電気駆動の圧縮機ホイールを介してフリーホイール機構の圧縮機側を通り抜けるように空気を燃料電池システムに吹き付けることができ、この燃料電池システムを起動してその後に解凍するには少なくともそれで十分である。
【0013】
さらなる非常に有利な一形態によれば、恒久的に空気接続されないシステムが、弁が設けられたバイパス管を介して制御可能に接続されていてもよい。そうでなければ恒久的に接続されない2つのシステムをこのように制御可能に接続することによって、例えば、特に上述の変形実施形態による追加的なフリーホイール機構を備えた構成について、低い圧力において大きい体積流量を提供することができる。そうすれば、特にこの構成について、バイパス管を閉鎖してひいては対応して高い駆動力がフリーホイール機構のタービン側にある状態で、比較的高い圧力を対応してより小さい体積流量において実現することができる。バイパス管における弁がさらに開放されると、より多くの空気が圧縮機側に、より少ない空気がタービン側に到達する。したがって、より低い圧力でより高い体積流量を実現することができる。
【0014】
この場合、フリーホイール機構を備えた変形実施形態では、圧縮機または両方の圧縮段において加熱が生じる。この加熱は、一方では燃料電池システムに対応して負荷がかかるので望ましくない。他方では、乾燥を防ぐために燃料電池システムへの給気を湿らせておくことは望ましい。この理由から、発想の有利な一形態によれば、流れ方向において圧縮機側の前方および/または後方に圧縮空気流に液体を供給するための装置が設けられていることが企図され得る。このように、液体、特に、この発想の有利な一形態によれば液体を噴霧するためのノズルを介して行うことができる脱イオン水を加えることによって、一方では液体が圧縮空気流において対応して蒸発するので圧縮空気流の温度が低下し、他方ではこの圧縮空気流が加湿される。これによって、2つの決定的な利点が得られる。一方では、それにより、液体の供給が圧縮機側の前方で行われるときに圧縮機側の効率が向上し、他方では、両方の形態において、燃料電池への給気が加湿されるようになる。こうして、大がかりで、複雑で、燃料電池システム内で広い設置面積を必要とする給気を加湿するための装置を、場合によっては凝縮液を回収して再び使用することもできるシンプルな貯水器と圧縮空気流に水を供給するための対応する装置とによって実現することができる。このような構成は非常にシンプルで、費用効率が良く、場所を取らずに空気供給装置に組み込むことができる。
【0015】
本発明による空気供給装置の非常に好都合な一発展形態は、さらに、フリーホイール・ターボチャージャが流体力学的に支持されていることを企図し得る。このような流体力学的軸受は極めてシンプルで効率的にすることができ、高速回転するターボチャージャに生じる摩擦を低減することができる。この場合、水、例えば前述の形態においてシステムの加湿のためにそうでなくとも併せて供給される、またはシステムから回収される水が、フリーホイール・ターボチャージャの流体力学的支持を実現するために利用されれば特に好都合である。
【0016】
この場合、フリーホイール・ターボチャージャは、この流体力学的軸受の実装に特に良く適している。軸受と排気またはまた圧縮空気との間の漏出が生じたとしても、このことは比較的重大ではない。というのは、この空気は、排気の場合にはそれ以上は使用されないので、湿気はここでは支障とならず、給気の場合にはいずれにしても続いて加湿されるので、湿気はここでも同様に支障とならず、むしろ有益でさえあるからである。これによって、例えば電気駆動の圧縮機との決定的な差異が存在する。水を介した流体力学的支持の場合、このような圧縮機は電気装置または電子機器の領域が密封されていなければ湿気を帯びることがあり得る。このことは、ここでは深刻な短絡のリスクにつながる可能性があり、重大な短所である。
【0017】
本発明によれば、少なくとも1つの燃料電池を備えた燃料電池システムは、燃料電池の空気供給が本発明による空気供給装置からの空気の少なくとも一部を用いて行われることを企図し得る。つまり、燃料電池システムは、空気供給装置を単独で、または他の燃料電池システムもしくはまたそれ以外のシステムと併せて利用することによって、その圧縮された、理想的な場合には既に加湿された給気を得ることができる。
【0018】
アノード側およびカソード側を有する少なくとも1つの燃料電池と、フリーホイール機構を備えた空気供給装置とを備えたこのような燃料電池システムの極めて好都合な一発展形態は、その上、カソード側の出口が、環境および/または再循環管と制御可能に選択的または部分的に接続可能であり、再循環管が圧縮機ホイールの1つとフリーホイール・ターボチャージャの圧縮機側との間に通じることを企図し得る。つまり、この燃料電池システムの形態では、フリーホイール・ターボチャージャがカソード排ガスを再循環するために利用され、このカソード排ガスは、その全体または特に一部が再循環されてフリーホイール機構の圧縮機側を通して循環される。これによって、カソード排ガスが燃料電池における反応の生成物として伴って導く湿気が同様に圧縮された給気中にもたらされる。その結果、大がかりな加湿器を不要とすることが可能になり、圧縮空気流への液体の噴射を削減する、または不要とすることさえ可能になる。さらに、カソード側からの酸素が欠乏した排気の再循環率を、例えば少ない負荷でカソードにおける酸素含有量を低下させるために利用することができる。その結果、過大なセル電圧ひいては燃料電池の単セルの損傷を防止することができる。
【0019】
燃料電池システムのさらなる非常に好都合な一形態は、これを補完するように、またはこの代替として、少なくとも部分的に再循環送風機を介して行われるアノード排ガスの再循環が行われることを企図し得る。これは、原則的には従来技術から知られている。この形態における燃料電池システムの本発明による変形形態は、その上、再循環送風機が排気タービンを有し、この排気タービンが燃料電池システムの排ガス、特にカソード排気によって駆動されていることを企図する。つまり、この発想の非常に有利な一発展形態によれば再循環送風機と磁気によって結合されているこのような排気タービンは、燃料電池の排ガス中の残留エネルギーを利用することによって再循環送風機を駆動する。それによって、取り込まれた空気エネルギーが理想的に利用される。特に排気タービンと再循環送風機との間が磁気結合される形態では、構成の水素供給側も空気供給側から、両側は確実に互いに対して封止され得、水素が排気中に制御不能に漏出することを懸念しなくてもよい程度まで、分離されたままである。
【0020】
本発明による空気供給装置および本発明による燃料電池システムの有利な形態および発展形態は、以下で図面を参照しながらより詳しく記載する実施例からも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の可能な実施形態における本発明による空気供給装置の図である。
【
図2】第2の可能な実施形態における本発明による空気供給装置の図である。
【
図3】代替的な一形態における
図2による本発明による空気供給装置の図である。
【
図4】
図2または
図3による空気供給装置を備えた燃料電池システムの可能な実施形態の図である。
【
図5】代替的な一発展形態における
図4の燃料電池システムに類似した燃料電池システムの図である。
【
図6】燃料電池システムの水を利用するための例示的なシステムを備えた
図5による描画からの一部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1の描画には、燃料電池システム2、3用の空気供給装置1が示されている。空気供給装置は、実質的に、共通の軸5に2つの圧縮機ホイール6、7とともに配置されている電気駆動モータ4からなる。圧縮機ホイール6、7は、軸5においてこれらの間の中央に配置された電気駆動モータ4によって駆動され、実質的に対称に形成されている。これによって、共通の軸5において軸方向に作用する力が最小化される。このことは、一方では摩擦による出力損失を低減する一助となり、他方ではスラスト軸受のシンプルで効率的な形態を可能にする。2つの別々の、または任意には、破線で描かれているように1つの共通の吸引路8を介して圧縮機ホイール6、7によって空気が吸引され、圧縮機ホイール6から燃料電池システム2に、圧縮機ホイール7から燃料電池システム3に提供される。
【0023】
この場合、燃料電池システム2、3は互いから独立して構成されており、例えば、商用車において駆動力を提供するために使用される同一に具現化された燃料電池システム2、3であってもよい。燃料電池システム2、3は、例えば、1つの燃料電池システムが単独で乗用車を駆動するものであり、したがって、あたかもこの燃料電池システムが商用車用に二重に使用され、同一の空気供給装置1を介して空気が供給されるような形式で形成されていてもよい。既に言及したように共通の吸引管8が設けられていてもよく、その場合、この吸引管8はここでは不図示の共通の空気フィルタで十分である。2つの別々の空気フィルタおよび吸引管8を設けることも同様に十分考えられるかもしれない。
【0024】
空気供給装置1の代替的な一形態は
図2の描画において認識することができる。空気供給装置1は実質的に、
図1に記載されているように構成されている。空気供給装置1は、電気駆動モータ4と2つの圧縮機ホイール6、7とを含む。これらの圧縮機ホイール6、7は、2つの別々の空気供給管8を介して環境と接続されており、ここではそれに対応して空気を吸引する。電気駆動モータ4によって駆動されて、両方の圧縮機ホイール6、7で空気が圧縮される。圧縮空気は、圧縮機ホイール6からシーケンシャル・ターボ過給管9を介して、フリーホイール機構11とも呼ばれるフリーホイール・ターボチャージャ11の圧縮機側10に到達する。このフリーホイール機構11では、共通の軸12が圧縮機側10をタービン側13と接続し、タービン側13は、空気供給装置1の圧縮機ホイール7の圧力側と接続し、したがって、空気流を介してこの圧縮機ホイール7によって駆動される。タービン側13またはそのタービンの後方では、予めタービン管14を介して圧縮機ホイール7からフリーホイール機構11のタービン側13に到達した膨張空気が再び流れ去る。
図2の描画において概略的に示唆されているように、フリーホイール機構11の圧縮機側10から、今ではさらに強く圧縮された給気が燃料電池システム2、3に到達する。この構成は、第1の圧縮段としての圧縮機ホイール6が生成する圧力を起点として、燃料電池システム2、3に必要とされる圧力をフリーホイール機構11の圧縮機側10で生成するために、フリーホイール機構11が使用されることを可能にする。これはつまり、一種のシーケンシャル・ターボ過給である。
【0025】
図3の描画には、実質的に
図2の描画に類似するものとして理解することができるさらなる一変形形態が示されている。追加的に、弁16が設けられたバイパス管15が設けられており、このバイパス管15によって、空気供給装置1の圧縮機ホイール7を介して圧縮された空気の一部をタービン管14からシーケンシャル・ターボ過給管9に導くことが可能になる。これによって、例えば弁16が完全に、または部分的に開放された状態で、燃料電池システム2、3への空気のより高い体積流量を実現することができる。同時に、フリーホイール機構11のタービン側13を通る空気流が対応して減少し、その結果、より高い体積流量ではあるもののより低い圧力が、燃料電池システム2、3には存在する。バイパス管15における弁16がさらに閉鎖されると、タービン側13の出力が高まり、ひいてはフリーホイール機構11の圧縮機側10の圧縮機能力も対応して高まり、一方では同時に体積流量がより小さくなる。これによって、より低い体積流量でより高い圧力を実現することができる。つまり、バイパス管15における弁16を介して空気供給を制御可能である。弁16を備えたバイパス管15が特に利点を有しているとしても、このバイパス管15はここでは純粋に任意なものとして理解することができ、
図2の描画において既に説明したように、原則的には省略されてもよい。
【0026】
このバイパス管15とは無関係に、ひいては
図2による構成でも使用可能であるように、ここではさらに貯水器17が示されており、この貯水器17は、1つまたは任意に2つの水管18、18’を介して燃料電池システム2、3への圧縮給気流と接続する。こうして、水管18および/または18’の端部における液体水を供給するための適切な装置を介して、液体水が圧縮された体積流量に取り込まれ、好適にはその中で噴霧され得る。これによって、圧縮機ホイール6または圧縮機側10の後方の相応に熱い圧縮空気の体積流量は、一方では冷却され、他方では加湿される。この両方が燃料電池システム2、3の運用にとって利点であり、なぜなら、温度が実質的に約70℃を超えない給気が燃料電池システム2、3に流れるのが望ましいからであり、この給気が可能な限り湿潤となるべきであるからである。水の供給によるこの加湿がこの箇所で達成されれば、大がかりな加湿器、例えばこれまで一般的であったガス/ガス加湿器を不要とすることができ、または少なくともこの加湿器のサイズを小さくすることができる。その結果、大型で大がかりな構成要素を使用せずに済み、このことは、コストおよびシステムの複雑さの観点からも必要な設置面積の観点からも非常に決定的な利点である。貯水器17に集められた水のさらなる使用は、後ほどさらに記載する
図6の描画からも明らかになる。
【0027】
図4の描画では、燃料電池システム2、3がここではそのいくつかの構成部品とともに例示的により詳しく描かれている。空気供給装置1およびフリーホイール機構11の構成は実質的に
図3に基づく構成に対応する。燃料電池システム2、3は、通常は単セルの積層体である燃料電池19を含む。この燃料電池積層体またはスタック19の周囲には、例示的にアノード側20およびカソード側21が示されている。ここでカソード側21には、空気供給装置1およびフリーホイール機構11を介して、給気管22を通して空気が供給される。排気は排気管23を介して24が付された弁装置に到達し、この弁装置は排ガス戻し弁24とも呼ばれ得るかもしれない。選択的または部分的にこの弁装置24を介して排気管23からの排気は全体的または部分的に排気戻し管25を通してシーケンシャル・ターボ過給管9に戻すように、または23’が付された排気管23の部分を通して環境に導かれ得る。
【0028】
アノード側20には圧力ガス貯蔵装置26からの水素が供給される。この水素は、圧力制御および注入装置27ならびに任意的のガス噴射ポンプ28を介してアノード側20に到達する。アノード側20からの排ガスは、水分離器30を配置していてもよい29が付された再循環管を介して、ガス噴射ポンプ28が存在する限りこのガス噴射ポンプ28に戻る。再循環管29には、ガス噴射ポンプ28の代替として、またはこれを補完するように、再循環送風機31をそれ自体は既知の方法で配置していてもよい。この場合、水分離器30に、または代替的に再循環管29の別の領域に、いわゆる吐出弁またはパージ弁が配置されており、この弁を介して、例えば時間に応じて、再循環管29の水素濃度に応じて、またはまた他のパラメータに応じて、場合によっては水分離器30からの水とともに再循環管29からガスが排出される。このガスは排気管23に到達し、ここでは選択的に排気管の領域23’に到達するか、または任意的に示唆されているように、排気の流れ方向において排ガス戻し弁24の前方の排気管23の領域にも到達するかのいずれかである。
【0029】
燃料電池システム2、3のこの構成では、排気戻し管25を介して、弁装置24が対応する位置にある状態で、排気を全体的または部分的に戻すことが可能になるので、燃料電池19のカソード側21への給気管22内の給気の加湿が支援される。このことは、
図3の描画において示唆されているような貯水器17の使用の代替として、または特にこれを補完するように、従来の加湿器を完全に、または部分的に不要とし得ることに貢献することができる。ここでは確かにフリーホイール機構11の領域に湿気が到達するリスクが生じる。凍結点を下回る温度でシステムが停止する場合、その結果としてフリーホイール機構11が凍結する可能性がある。しかし、燃料電池システム2、3の起動にとっては、圧縮機ホイール6を介して、場合によってはバイパス弁16が開放されたときに圧縮機ホイール7を介して送られ、フリーホイール機構の圧縮機側10を通して給気管22に吹き込まれる空気で十分足りるため、空気供給装置1の凍結とは異なり、このことは比較的重大ではない。したがって、フリーホイール機構11が十分に解凍されたときに、再び動作を開始すれば充分である。このように、空気供給装置1とフリーホイール機構11との組み合わせを備えた構成によって、供給される空気の圧力および体積流量の制御性が高い最適な運用が可能となり、その他、この構成によって、温度が凍結点を下回った場合に空気供給装置1全体が凍結するリスクを伴わずに排ガスを戻すことができるので、加湿器を不要とすることができる。
【0030】
燃料電池システム2、3の圧力エネルギーが弱められて例えば空気供給装置1の駆動を支援するために追加的に使用される従来の電気ターボチャージャの場合とは異なり、
図4による構成の場合、ここでこの圧力が失われる。まさにこれを防止するために、
図5の描画において行われているように構成を発展させることが可能である。この構成はここでは実質的に
図4の構成に対応している。簡略化のため、この描画では水分離器30およびアノード排ガスの排出が省略されている。いずれにしても任意にすぎなかったガス噴射ポンプ28は
図5の描画ではもはや存在しない。通常設けられているような再循環送風機31の電気駆動部の代わりに、ここでは今度は、燃料電池19のカソード側21からの排気が排気管23に配置された排気タービン32を介して流れるようになっている。この排気タービン32は、出力を伝達するように再循環送風機31と結合されており、それがここでは共通の軸33の形で示唆されている。このようにして、燃料電池19のカソード側21の排気に含まれるエネルギーを介して再循環送風機31を駆動することによって、このエネルギーを再び回収し、ひいてはシステム全体のエネルギー効率をさらに高めることが可能になる。この場合、排気タービン32と再循環送風機31との間の結合が磁気によって行われれば特に好都合である。それによって、一方では水素または水素を含むガスが、他方では空気を導く両方の体積が、互いに対して容易に密封され得る。
【0031】
当然ながら、全ての記載した変形実施形態はその際互いに組み合わせることができる。したがって、
図3、
図4、および
図5の変形実施形態においてもバイパス管15が省略され得、またはそれに対応して
図2、
図4および
図5の変形実施形態において水管18、18’を備えた貯水器17が追加的に設けられ得る。
図2以降の描画において描かれているような構成は、特に個々の燃料電池システム2、3に空気を供給するのに適している。複数の燃料電池システムを使用する場合には、
図1に基づく構成がより適しているかもしれない、または、また燃料電池システム2、3自体と同様に、
図2以降に描かれた構成がそれに対応して複数存在しなければならない可能性がある。
【0032】
既に述べた貯水器17は、例えばシステムから回収される水で満たされてもよい。燃料電池システム2、3は通常、
図4の描画において認識されるように、水分離器を例えば再循環管29に所持し、必要に応じてまたさらなる水分離器を排気管23の領域に所持する。既に言及したように、この水分離器は貯水器17に水を供給することができる。ここでこの貯水器17は、好都合な一形態によれば、断熱された水タンク170の形で構成されていても、または、描かれているようにそのような水タンク170と接続されていてもよい。この水タンク170は
図6の描画では破線で記入されている。この場合、この水タンク170に接続する水システムの全体が破線で描かれている。水タンク170では水が加熱される。この加熱は、例えば電気加熱によって行われ得る。または、補完的または代替的に燃料電池システム2、3の廃熱を加熱に利用することができる。特にフリーホイール・ターボチャージャ11のタービン13の排気中に存在する廃熱を、水タンク170を相応に加熱するのに利用することができる。水タンク170に貯蔵された水の温度は理想的な場合に約80℃であり、水タンク170は断熱材171を所持する。水タンク170からの水は、この場合、水ポンプ172を介して、例えばいわゆるコモン・レールの形式である圧力水分配器173に導かれる。その際この対応する圧力下に置かれたシステムから、個々の水管が分岐する。ここでは再び、
図3から既に知られている水管18、18’が加湿器34、35に通じ、これらの加湿器では、例えば一元または二元物質ノズルを介してシーケンシャル・ターボ過給管9および/または給気管22における体積流量を対応して加湿され得る。これらの加湿器34、35は電気作動可能であってもよい。
【0033】
2つのさらなる水管174および175を介してフリーホイール・ターボチャージャ11の2つの流体力学的軸受36、37に水が供給されるので、このフリーホイール・ターボチャージャ11はいわば水によって支持されている。この場合、燃料電池システム2、3において、通常は給気流の加湿もフリーホイール・ターボチャージャ11の支持も達成するのに十分な排水が生じるので、外部から水を導入することなくシステム内で水を供給することができる。この場合、この構成では、水タンク170と水ポンプ172の両方において、および、加湿器34、35において、従来の車両の分野、ここでは特に燃焼機関技術の分野から既に知られており、特にガソリン噴霧を伴う燃焼機関において有害物質および消費を最小化するために一般的にその分野で使用される構成部品を使用することができる。そのため、この種の構成部品は、シンプルで十分に実証されており、市場で安価に入手可能である。