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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】車両用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/172 20060101AFI20240510BHJP
   F16D 66/00 20060101ALI20240510BHJP
   F16D 65/06 20060101ALI20240510BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20240510BHJP
   B60T 8/88 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B60T8/172 Z
F16D66/00 Z
F16D65/06 Z
B60T17/22 Z
B60T8/88
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023010445
(22)【出願日】2023-01-26
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】黒光 将
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016214133(DE,A1)
【文献】特開2016-060261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
F16D 49/00-71/04
B60T 15/00-17/22
B60T 8/32-8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が有し、前記車両の走行時に回転する被摩擦材に摩擦材を押し付ける押付力を発生させる駆動部と、
前記駆動部から入力された押付力を前記摩擦材に伝達する伝達部と、
前記伝達部を前記車両の車体に保持する保持部と、
前記保持部に設けられ、回転する前記被摩擦材に前記摩擦材が押し付けられ前記車両を制動する制動トルクが発生した際に前記保持部に発生する応力を検出する応力検出部と、
前記応力の検出結果に基づいて前記摩擦材と前記被摩擦材との間の摩擦係数及び前記車両の滑走の少なくとも一方を推定する推定部と、
を備える、車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記押付力を取得する押付力取得部をさらに備え、
前記推定部は前記応力検出部の検出結果と前記押付力とに基づいて前記摩擦係数を推定する、
請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記応力検出部の検出時点の前記車両の速度及び前記被摩擦材の回転速度の少なくとも一方を含む速度情報を取得する速度情報取得部をさらに備え、
前記推定部は前記応力検出部の検出結果と前記押付力と前記速度情報とに基づいて前記摩擦係数を推定する、
請求項2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
所定条件で前記摩擦材を前記被摩擦材に押し付けたときの押付力と、当該押付力で前記摩擦材を前記被摩擦材に押し付けたときの前記速度情報と、当該押付力で前記摩擦材を前記被摩擦材に押し付けたときの前記摩擦係数及び制動トルクの少なくとも一方との間の予め定められた対応関係によって示される対応情報を記憶している記憶部と、
前記推定部は前記応力検出部の検出結果と前記対応情報とに基づいて前記摩擦係数を推定する、
請求項3に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記推定部は、
前記応力検出部の検出結果に基づいて実際に前記被摩擦材に生じた制動トルクである実制動トルクを算出する実制動トルク算出部と、
前記対応情報と前記応力検出部の検出時点での前記押付力及び前記速度情報とに基づいて前記被摩擦材に生じたと想定される制動トルクである想定制動トルクを算出する想定制動トルク算出部と、
前記実制動トルクと前記想定制動トルクとの比較結果に基づいて前記摩擦係数を推定する比較部と、
を備える、
請求項4に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項6】
前記応力検出部の検出時点での前記車両が走行する軌道上の傾斜角度を取得する傾斜角度取得部を更に備え、
前記推定部は前記応力検出部の検出結果と前記押付力と前記傾斜角度とに基づいて前記摩擦係数を推定する、
請求項2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項7】
前記車両は軌道上を走行する鉄道車両であり、
前記応力検出部の検出時点での前記鉄道車両の走行位置を取得する走行位置取得部と、
前記推定部により推定された前記摩擦係数と前記応力検出部の検出時点における前記走行位置とを対応付けて外部装置に出力する出力部と、
をさらに備える、
請求項2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項8】
前記応力検出部の検出時点での前記車両の走行位置における天候、気温及び湿度の少なくとも1つを含む環境情報を取得する環境情報取得部をさらに備え、
前記推定部は前記応力検出部の検出結果と前記押付力と前記環境情報とに基づいて前記摩擦係数を推定する、
請求項2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項9】
前記応力検出部の検出時点での前記車両の走行位置における天候、気温及び湿度の少なくとも1つを含む環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記推定部により推定された前記摩擦係数と前記応力検出部の検出時点における前記天候、気温及び湿度の少なくとも1つとを対応付けて外部装置に出力する出力部と、
をさらに備える、
請求項2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項10】
前記被摩擦材は車輪であり、
前記車両に設けられた複数の車軸のうち、前記摩擦係数が推定された前記車輪の車軸を特定する車軸特定部と、
前記車両の走行方向を取得する走行方向取得部と、
前記応力検出部の検出結果と前記推定部により推定された前記摩擦係数とその摩擦係数が推定された前記車輪とを対応付けて外部装置に出力する出力部と、
をさらに備える、
請求項2に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項11】
前記推定部は、前記応力検出部の検出結果と基準値とを比較し、前記応力検出部の検出結果と基準値との比較結果に基づいて前記車両に滑走が生じているか否かを推定する滑走推定部を備える、
請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項12】
前記基準値は所定時間前の前記応力検出部の検出結果である、
請求項11に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項13】
車両が有し、前記車両の走行時に回転する被摩擦材に摩擦材を押し付ける押付力を発生させる駆動部と、
前記駆動部から入力された押付力を前記摩擦材に伝達する伝達部と、
前記伝達部を前記車両の車体に保持する保持部と、
前記保持部に設けられ、回転する前記被摩擦材に前記摩擦材が押し付けられ前記車両を制動する制動トルクが発生した際に前記保持部に発生する応力を検出する応力検出部と、
前記応力検出部の検出結果と前記応力検出部の検出時点における前記摩擦材の押付力とに基づいて車両用ブレーキ装置に異常が発生しているか否かを推定する異常推定部と、
を備える、車両用ブレーキ装置。
【請求項14】
前記被摩擦材は車輪であり、
前記保持部は、前記車体に接続される取付部と、前記取付部及び前記伝達部のそれぞれに対して回動自在に接続されるリンク部と、を備え、
前記応力検出部は、前記制動トルクが発生した際に、前記リンク部に生じる長手方向の応力を検出する、
請求項1から13のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、制動時に鉄道車両のディスクブレーキ装置のブラケットに生じる圧縮力又は引張力による歪みを歪ゲージによって検出し、予め記憶した歪み量とブレーキトルクの関係と歪み量の検出結果とから制動トルクを得る制動トルク検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-267055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、検出した歪み量を鉄道車両のディスクブレーキ装置の制御処理に対するフィードバック用に使用しているだけであり、特許文献1では検出した歪み量の他の活用用途については検討されていない。
【0005】
本発明者らは、ブレーキ時のブレーキ装置の歪み量を効果的に活用する観点で、改善の余地があることを認識した。
【0006】
上記を鑑み、本発明の目的は、ブレーキ時のブレーキ装置の歪み量を効果的に活用可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ装置は、車両が有し、前記車両の走行時に回転する被摩擦材に摩擦材を押し付ける押付力を発生させる駆動部と、前記駆動部から入力された押付力を前記摩擦材に伝達する伝達部と、前記伝達部を前記車両の車体に保持する保持部と、前記保持部に設けられ、回転する前記被摩擦材に前記摩擦材が押し付けられ前記車両を制動する制動トルクが発生した際に前記保持部に発生する応力を検出する応力検出部と、前記応力の検出結果に基づいて前記摩擦材と前記被摩擦材との間の摩擦係数及び前記車両の滑走の少なくとも一方を推定する推定部と、を備える、車両用ブレーキ装置である。
【0008】
本発明のある態様のブレーキ装置は、車両が有し、前記車両の走行時に回転する被摩擦材に摩擦材を押し付ける押付力を発生させる駆動部と、前記駆動部から入力された押付力を前記摩擦材に伝達する伝達部と、前記伝達部を前記車両の車体に保持する保持部と、前記保持部に設けられ、回転する前記被摩擦材に前記摩擦材が押し付けられ前記車両を制動する制動トルクが発生した際に前記保持部に発生する応力を検出する応力検出部と、前記応力検出部の検出結果と前記応力検出部の検出時点における前記摩擦材の押付力とに基づいて車両用ブレーキ装置に異常が発生しているか否かを推定する異常推定部と、を備える、車両用ブレーキ装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブレーキ時のブレーキ装置の歪み量を効果的に活用可能な技術を提供できる。
【0010】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のブレーキ装置の一部断面を含む図である。
図2】第1実施形態のブレーキ装置における処理装置の機能ブロック図である。
図3図3(a)~図3(c)は各押付力におけるブレーキ時の初速Vと摩擦係数μとの関係を示す。
図4】第1実施形態の変形例のブレーキ装置における処理装置の機能ブロック図である。
図5】第1実施形態の他の変形例のブレーキ装置における処理装置の機能ブロック図である。
図6】第1実施形態の他の変形例のブレーキ装置における処理装置の機能ブロック図である。
図7】第2実施形態のブレーキ装置における処理装置の機能ブロック図である。
図8】第2実施形態の他の変形例のブレーキ装置における処理装置の機能ブロック図である
図9】第3実施形態のブレーキ装置における処理装置の機能ブロック図である。
図10】第3実施形態の処理装置の処理を示すフローチャートである。
図11】滑走が生じたときの応力検出部の検出結果及び車輪の軸速度の推移を示す。
図12】第4実施形態のブレーキ装置における処理装置の機能ブロック図である。
図13】第4実施形態の処理装置の処理を示すフローチャートである。
図14】第5実施形態のブレーキ装置の一部断面を含む図である。
図15】第5実施形態のブレーキ装置を分解して示す平面図である。
図16】第5実施形態のブレーキ装置の側面図である。
図17】第5実施形態のブレーキ装置を分解して示す側面図である。
図18】第5実施形態のアクチュエータを概略的に示す平面視の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0014】
本発明のブレーキ装置は、車両が有し、車両の走行時に回転する被摩擦材に摩擦材を押し付ける押付力を発生させる駆動部と、駆動部から入力された押付力を摩擦材に伝達する伝達部と、伝達部を車両の車体に保持する保持部と、保持部に設けられ、回転する被摩擦材に摩擦材が押し付けられ車両を制動する制動トルクが発生した際に保持部に発生する応力を検出する応力検出部と、を備える。本発明のある態様のブレーキ装置は、応力の検出結果に基づいて摩擦材と被摩擦材との間の摩擦係数及び車両の滑走の少なくとも一方を推定する推定部と、を備える。本発明の他の態様のブレーキ装置は、応力検出部の検出結果と応力検出部の検出時点における摩擦材の押付力とに基づいて車両用ブレーキ装置に異常が発生しているか否かを推定する異常推定部と、を備える。
【0015】
本構成によると、ブレーキ時のブレーキ装置の歪み量を効果的に活用することが可能となる。以下、ブレーキ時のブレーキ装置の歪み量を効果的に活用可能な各実施形態について説明する。
【0016】
第1実施形態
図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る車両用のブレーキ装置1の構成を説明する。一例として、ブレーキ装置1は、鉄道線路を走行する鉄道車両のブレーキ装置として好適に用いられる。図1は、第1実施形態に係るブレーキ装置1の一部断面を含む図である。
【0017】
先ず、ブレーキ装置1の全体構成を説明する。ブレーキ装置1は、応力検出部30と、ケーシング45と、ブレーキ機構60と、処理装置100と、を備える。本実施形態では、ケーシング45は、ブレーキ機構60を車体90に取り付けるためのベース部を例示する。以下、便宜的に、車輪92の径方向でブレーキ機構60から車輪92に向いた側を車輪側(図1中で左側)と、車輪側と反対側を反車輪側(図1中で右側)という。
【0018】
ブレーキ機構60は、アクチュエータ40と、ブレーキ出力部61と、ロッド部62と、ブレーキ梃子64と、保持部73とを主に備える。ブレーキ出力部61は、制輪子72と、制輪子72を保持する制輪子保持部71とを含む。ブレーキ機構60は、鉄道車両の有する車輪92の踏面に制輪子72を押し付けることにより制動力を発生させる踏面ブレーキである。本実施形態の制輪子72は摩擦材の一例であり、本実施形態の車輪92の踏面部分は被摩擦材の一例である。本実施形態のブレーキ出力部61、ロッド部62及びブレーキ梃子64は、アクチュエータ40(駆動部)から入力された押付力を制輪子72に伝達する伝達部の一例である。
【0019】
ブレーキ機構60では、アクチュエータ40が作動することで、ブレーキ梃子64のアーム部65が支点部64aを中心として揺動する。これにより、アーム部65の先端側に設けられた球面軸受66、及びロッド部62を介して、ブレーキ出力部61が駆動される。
【0020】
ケーシング45は、車体90に取付けられ、アクチュエータ40、ブレーキ出力部61および応力検出部30を支持するベース部として機能する。ケーシング45は、ロッド部62、ブレーキ梃子64、応力検出部30等を収容する外殻として機能する。
【0021】
アクチュエータ40を説明する。アクチュエータ40は、シリンダ43と、流体ブレーキ部44と、押棒46と、を主に備える。アクチュエータ40は、流体ブレーキ部44に圧力流体として圧縮空気の供給及び排出が行われることで押棒46を進退させる。本実施形態のアクチュエータ40は、車両の走行時に回転する車輪92に制輪子72を押し付ける押付力を発生させる駆動部の一例である。
【0022】
シリンダ43は、複数の部材が互いに組み合わせられることにより略有底筒状に形成される。シリンダ43の開口部には、ケーシング45が取り付けられる。シリンダ43には、流体ブレーキ部44、押棒46等が収容される。流体ブレーキ部44は、鉄道車両の運転時のブレーキ動作のために用いられる常用ブレーキ機構として機能する。流体ブレーキ部44は、圧縮室49と、ピストン51と、バネ52と、を主に備える。
【0023】
圧縮室49は、シリンダ43の底部43aとピストン51とによって区画される。バネ52は、一端側がピストン51における圧縮室49と反対側の部分に当接し、他端側がシリンダ43の底部43aと反対側の壁43bに当接する。壁43bの中央にはシリンダ43の開口が設けられる。ピストン51は、バネ52によって、ブレーキ作動方向と反対方向へ付勢される。ピストン51は、シリンダ43の筒軸方向に沿って進退可能に、シリンダ43に収容される。
【0024】
押棒46は、ブレーキ作動方向に沿って延びるように配置される略棒状の部材である。押棒46は、一端部がピストン51に固定され、他端部46bがブレーキ梃子64のアーム部65の一端部65bに連結される。アーム部65は、一端部65bを中心に、押棒46の他端部46bに対して揺動自在に連結される。アーム部65の一端部65bはブレーキ梃子64の入力部64bである。入力部64bは、ブレーキ梃子64の力点に対応する。
【0025】
ピストン51は、圧縮室49に圧縮空気が供給されることで、ブレーキ作動方向すなわち反車輪側へ移動し、押棒46は反車輪側へ突出する。押棒46が突出すると、押棒46に連結されたアーム部65の入力部64bも反車輪側に移動する。入力部64bが反車輪側に移動すると、アーム部65の入力部64bと反対側に設けられた球面軸受66が車輪側に移動し、ブレーキ出力部61が制輪子72を車輪92に押し付け、これらの間に制動力が発生する。
【0026】
圧縮室49への圧縮空気の供給が減ると、ピストン51は、バネ52の付勢力によって車輪側へ移動し、押棒46は車輪側へ後退する。押棒46が後退すると、入力部64bが車輪側に移動し、球面軸受66が反車輪側に移動し、制輪子72の押付力が減少し、制動力が減少する。
【0027】
保持部73は、制輪子72を含むブレーキ出力部61を吊り下げ、これを所定の軌跡に沿って回動自在に保持する。保持部73は、ブレーキ出力部61を吊り下げる吊り下げ部74と、吊り下げ部74を車体90に取り付ける取付部75と、を含む。
【0028】
吊り下げ部74は、上端側に設けられる支点部74bと、下端側に設けられる支持部74cとを有するレバー状の部材である。吊り下げ部74の支点部74bは、取付部75の支点部75cに回動自在に接続される。吊り下げ部74の支持部74cは、ブレーキ出力部61に回動自在に接続され、ブレーキ出力部61を支持する。本実施形態の吊り下げ部74は、リンク部の一例である。
【0029】
取付部75は、支点部75cと、基端部75dとを有する。本実施形態の取付部75は、反車輪側から車輪側に延びるレバー状の部材である。支点部75cは、吊り下げ部74の支点部74bに接続ピン74pを介して接続される。支点部75cは、取付部75の車輪側に配置され、ケーシング45から外部に突出する。基端部75dは、取付部75の反車輪側に配置され、ケーシング45に取り付けられる。本実施形態の取付部75は、ケーシング45を介して間接的に車体90に接続されるが、車体90に直接的に接続されてもよい。保持部73は、ブレーキハンガと称されることがある。
【0030】
応力検出部30は、保持部73に設けられ、回転する車輪92に制輪子72が押し付けられ車両を制動する制動トルクが発生した際に保持部73に発生する応力を検出する。本実施形態の応力検出部30は、吊り下げ部74に設けられ、制動トルクが発生した際に吊り下げ部74に発生する吊り下げ部74の長手方向の応力を検出する。この例では、応力検出部30は入力荷重を電気信号に変換するロードセルである。
【0031】
図1に示すブレーキ機構60において、例えば、反時計回りに回転する車輪92に制動力を与えると、制輪子72が回転する車輪92に引き摺られて引っ張られ、制輪子72には下向きのトルクが加わる。このとき、制輪子保持部71を介して保持部73に下向きの荷重(応力)が入力される。応力検出部30は、この保持部73に入力された荷重を検出し、処理装置100に供給する。
【0032】
ここで、仮にブレーキ出力部61、ロッド部62又はブレーキ梃子64(すなわち伝達部)に応力検出部30を設けた構成を想定する。この構成では、伝達部には回転方向のトルクに基づく応力(以下、「回転方向応力」という)に、回転方向に交差する方向の応力(以下、「交差方向応力」という)が加わる。つまり、応力検出部30の検出結果に交差方向応力が誤差として重畳されるので、測定精度が低下する。交差方向応力は、アクチュエータ40の駆動力の分力や、制輪子72と車輪92の接触面の傾斜によって生じることがある。
【0033】
一方、本実施形態の構成によると、保持部73は、回転方向の応力を効率的に伝達し、回転方向に交差する方向の応力は殆ど伝達しないので、制動時に制輪子72にかかる車輪92の回転方向のトルクを精度よく検出することが可能となる。
【0034】
図2は、第1実施形態のブレーキ装置1における処理装置100の機能ブロック図である。図2および以下の各図に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。処理装置100は、取得部101と、推定部102と、出力部103と、記憶部104と、を含む。
【0035】
取得部101は、応力取得部111と、押付力取得部112と、速度情報取得部113と、を備える。応力取得部111は、応力検出部30の検出結果を取得する。押付力取得部112は、アクチュエータ40から入力される押付力を取得する。押付力取得部112は、例えば、ブレーキシリンダ装置の空気圧に基づいて押付力を取得することができる。速度情報取得部113は、その鉄道車両の速度(以下、車速という)を含む速度情報を取得する。車速は、例えば、鉄道車両に設けられたGPS(不図示)の位置情報に基づいて取得されてもよいし、鉄道車両に設けられた車速センサ(不図示)の検出結果に基づいて取得されてもよい。取得部101は、取得した情報を推定部102及び記憶部104に供給する。
【0036】
本実施形態の推定部102は、保持部73に発生する応力の検出結果に基づいて制輪子72と車輪92との間に生じる摩擦係数を推定する。本実施形態の推定部102は、実制動トルク算出部121と、想定制動トルク算出部122と、比較部123と、を備える。推定部102における摩擦係数の推定手法の詳細については後述する。
【0037】
出力部103は、推定部102によって推定された摩擦係数を外部装置(不図示)に出力する。外部装置は、例えば、その鉄道車両の運転台や鉄道車両の運行を管理する管理センタに設けられた端末装置であり、推定された摩擦係数を受け取ることにより、そのディスプレイにおいて摩擦係数の推定結果を表示することができる。
【0038】
記憶部104は、取得した情報や各種処理によって生成された中間処理情報を時系列的に記憶する。記憶部104は、本発明の各種処理を実行するためのプログラムを記憶している。本実施形態の記憶部104は、対応情報を記憶している。対応情報については後述する。
【0039】
推定部102における摩擦係数の推定手法について説明する。まず、実制動トルク算出部121は、取得した応力検出部30の検出結果に基づいて実際に車輪92に生じた制動トルクである実制動トルクを算出する。応力検出部30の検出結果に基づいて実制動トルクを算出する手法としては、公知の手法が用いられる。例えば、実制動トルク算出部121は、応力検出部30の検出結果をロゼット解析して、保持部73に入力された荷重から車輪の回転方向のトルク成分だけを取り出すことで、実制動トルクを算出する。
【0040】
次に、想定制動トルク算出部122は、対応情報と応力検出部30の検出時点での押付力及び速度情報とに基づいて、車輪92に生じたと想定される制動トルクである想定制動トルクを算出する。
【0041】
ここで、図3(a)及び図3(b)を用いて対応情報について説明する。図3(a)はF1[kN]の押付力におけるブレーキ時の初速Vと摩擦係数μとの関係を示し、図3(b)はF2[kN]の押付力におけるブレーキ時の初速Vと摩擦係数μとの関係を示す。図3(a)及び図3(b)では、ブレーキ機構60と同じ構成を有するブレーキ機構A~Dについてのデータが示されている。ここでの摩擦係数μは、ブレーキを作動させてから所定時間経過するまでの間の摩擦係数の平均値である。対応情報は、例えば、ブレーキダイナモ試験等を用いて、各押付力及び初速でブレーキ機構A~Dの摩擦材の摩擦係数を測定することにより、予め作成される。したがって、様々な押付力及び初速についての対応情報が記憶部104に予め蓄積されている。
【0042】
本実施形態の想定制動トルク算出部122は、対応情報と応力検出部30の検出時点での押付力及び車速とを比較して、応力検出部30の検出時点での押付力及び車速のときの摩擦係数(想定摩擦係数)を対応情報から取り出す。この取り出した想定摩擦係数と検出時点での押付力に基づいて、下記の式(1)を用いて想定制動トルクを算出する。
(想定制動トルク)=(押付力)×(摩擦係数) 式(1)
【0043】
比較部123は、実制動トルクと想定制動トルクとの比較結果に基づいて、制輪子72と車輪92との間に生じる摩擦係数を推定する。例えば、比較部123は、実制動トルクに対する想定制動トルクの差分に基づいて、想定摩擦係数を増減させ、その増減後の摩擦係数を推定結果とする。例えば、比較部123は、上記差分が大きいほど、想定摩擦係数を大きく増加させる。これに限定されず、比較部123は、例えば、実制動トルクと想定制動トルクとの差分や比率などの乖離度合いに基づいて、摩擦係数を推定してもよい。
【0044】
ここで、鉄道車両の減速度の限界である限界減速度βmaxは、下記の式(2)に示すように、粘着係数μの値によって決まる。減速度が限界減速度βmaxを上回ると車両が滑走する。粘着係数μは、車輪92の踏面と軌道との間に作用する静止摩擦係数である。
βmax=g×μ 式(2)
【0045】
粘着係数が悪化する条件(軌道の湿潤状態等)を含め、実際の車両を使用して各種条件において粘着係数μを測定し、減速度が限界減速度βmaxを上回らないように粘着係数の実測データの下限値μmin付近を採用して下記の式(3)に基づいて設定減速度βを決定する。
β=g×μmin 式(3)
【0046】
この設定減速度βに基づいて、ブレーキ装置におけるブレーキの際に必要なブレーキ力、その必要なブレーキ力を得るために必要な押付力及びブレーキ圧力が求められる。
【0047】
一方、路面状態は常に変化しているが、ブレーキ力や力行トルクに用いる計算においては、粘着係数μは常に安全側の一定値(例えば、下限値μmin付近)を採用しているため、実際の粘着係数との間で乖離がある。そのため、実際には滑走を生じさせないためにより減速度を大きくできる余地があるため、より適切な減速度を使用する点で改善の余地があった。
【0048】
本実施形態では、推定部102は、応力の検出結果に基づいて制輪子72と車輪92との間の摩擦係数を推定する。制輪子72と車輪92との間の摩擦力と車輪92と軌道との間の粘着力はほぼ等しいと想定できるため、摩擦係数を把握することにより、実際の粘着係数を把握することができる。その結果、把握した実際の粘着係数を力行側の空転制御に活かすことができるため、輸送効率を向上させることができる。例えば、実際の粘着係数が大きい場合には、より大きい減速度でブレーキを作用させることができるため、で停止距離の短縮を図れる。また、より大きい減速度を使用できることからより大きい速度での運行が可能となるため、駅間または目的地までの運行時間の短縮を図ることが可能となる。実際の粘着係数が低い場合は、予めATO(自動列車運転装置)またはTASC(定位置停止装置)の制御を変更し、効率的な運行が可能となる。さらに、粘着係数を把握できることから、車輪フラットや車輪92の空転を未然に抑制できる。
【0049】
本実施形態では、推定部102は、応力検出部30の検出結果に基づいて実制動トルクを算出する実制動トルク算出部121と、対応情報と応力検出部30の検出時点での押付力及び速度情報とに基づいて想定制動トルクを算出する想定制動トルク算出部122と、実制動トルクと想定制動トルクとの比較結果に基づいて、摩擦係数を推定する比較部123と、を備える。本構成によると、実制動トルクと対応情報を用いて求めた想定制動トルクとの比較結果を用いることにより、制輪子72と車輪92との間の摩擦係数をより正確に把握できる。
【0050】
以下、変形例について説明する。
【0051】
実施形態の応力検出部30は、吊り下げ部74に設けられ、制動トルクが発生した際に吊り下げ部74に発生する応力を検出するが、これに限定されない。応力検出部30は、例えば、取付部75に設けられてもよい。取付部75には、吊り下げ部74に入力された応力が伝達されるため、この伝達された応力を応力検出部30が検出することによっても、制輪子72と車輪92との間に生じる摩擦係数を推定可能である。
【0052】
実施形態では、ブレーキ装置1は、鉄道車両に用いられたが、これに限定されず、例えば、自動車などの車両に用いられてもよい。
【0053】
実施形態では、車両の速度が速度情報として用いられたが、これに限定されない。例えば、速度情報は、車輪92の回転速度を含んでもよい。したがって、速度情報は、速度情報は、車速及び車輪の回転速度の少なくとも一方を含んでもよい。車輪の回転速度は、例えば、車輪92の車軸に回転速度センサを取り付けることで、この回転速度センサからの検出結果に基づいて取得されればよい。
【0054】
実施形態では、伝達部として、アクチュエータ40が発生させた駆動力をブレーキ梃子64によって増力させて制輪子72に伝達する構成を示したが、これに限定されず、アクチュエータ40が発生させた駆動力を増力せずにそのまま制輪子72に伝達する構成であってもよい。
【0055】
実施形態では、ブレーキシリンダ装置の空気圧によって押付力を発生させたが、これに限定されない。例えば、電動モータを用いて押付力を発生させてもよい。例えば、この場合、電動モータへの電流値や押付力を検出するための圧力センサの検出結果に基づいて押付力が検出されればよい。
【0056】
実施形態では、対応情報は、押付力と車速と摩擦係数との間の予め定められた対応関係を示したが、これに限定されず、例えば、押付力と車速と制動トルクとの間の予め定められた対応関係を示してもよい。したがって、対応情報は、所定条件で制輪子72を車輪92に押し付けたときの押付力と、当該押付力で制輪子72を車輪92に押し付けたときの速度情報と、当該押付力で制輪子72を車輪92に押し付けたときの摩擦係数及び制動トルクの少なくとも一方との間の予め定められた対応関係によって示されてもよい。
【0057】
実施形態では、推定部102は、実制動トルクと想定制動トルクとの比較結果に基づいて摩擦係数を推定したが、これに限定されず、応力検出部30の検出結果と対応情報とに基づいて、摩擦係数を推定してもよい。本構成によると、制輪子72と車輪92との間の摩擦係数をより正確に把握できる。例えば、応力検出部30の検出結果と対応情報とに基づく機械学習を実行することにより応力検出部30の検出結果から摩擦係数を算出するための学習モデルを予め作成しておく、作成した学習モデルに応力検出部30の検出結果、押付力、速度情報を入力することにより、その出力結果から摩擦係数が推定されてもよい。
【0058】
推定部102は、応力検出部30の検出結果と押付力に基づいて摩擦係数を推定してもよい。本構成によると、制輪子72と車輪92との間の摩擦係数をより正確に把握できる。例えば、上記と同様に、応力検出部30の検出結果と押付力と摩擦係数とに基づく機械学習を実行することにより応力検出部30の検出結果と押付力と入力とし摩擦係数を出力とする学習モデルを予め作成しておく。作成した学習モデルに応力検出部30の検出結果と押付力とを入力することにより、その出力結果から摩擦係数が推定されてもよい。また、応力検出部30の検出結果及び押付力から摩擦係数を算出する演算式を予め作成しておき、その演算式を用いて摩擦係数が推定されてもよい。同様に、推定部102は、応力検出部30の検出結果と押付力と速度情報とに基づいて摩擦係数を推定してもよい。
【0059】
図4は、第1実施形態の変形例のブレーキ装置1における処理装置100の機能ブロック図である。図4の取得部101は、応力検出部30の検出時点での鉄道車両が走行する軌道上の傾斜角度を取得する傾斜角度取得部114をさらに備える。本変形例の推定部は、応力検出部30の検出結果と押付力と傾斜角度とに基づいて、摩擦係数を推定する。ここで、制輪子72と車輪92との間の摩擦係数は、車両が走行する軌道上の傾斜角度によって変化する。この傾斜角度は、鉄道車両やその走行する軌道に設けられた各種センサから取得される。例えば、応力検出部30の検出結果と押付力と傾斜角度と摩擦係数とに基づく機械学習を実行することにより、応力検出部30の検出結果と押付力と傾斜角度と入力とし摩擦係数を出力とする学習モデルを予め作成しておく。作成した学習モデルに応力検出部30の検出結果と押付力と傾斜角度とを入力することにより、その出力結果から摩擦係数が推定されてもよい。本構成によると、傾斜角度を考慮して、より精度良く摩擦係数を推定することが可能となる。
【0060】
図5は、第1実施形態の他の変形例のブレーキ装置1における処理装置100の機能ブロック図である。図5の取得部101は、応力検出部30の検出時点での鉄道車両の走行位置における天候、気温及び湿度の少なくとも1つを含む環境情報を取得する環境情報取得部115をさらに備える。本変形例の推定部102は、応力検出部30の検出結果と押付力と環境情報とに基づいて、摩擦係数を推定する。ここで、制輪子72と車輪92との間の摩擦係数は、天候、気温及び湿度によって変化する。例えば、この鉄道車両の走行位置における気温及び湿度は鉄道車両やその走行する軌道に設けられた各種センサから取得され、走行位置における天候は車両外部の気象データサーバから取得される。例えば、図3(c)は、天候が雨天で制輪子72と車輪92との接触界面が湿潤状態の場合でのF1[kN]の押付力におけるブレーキ時の初速Vと摩擦係数μとの関係を示す。図3(c)に示すような雨天の場合の摩擦係数等を対応情報として記憶部104に予め蓄積しておき、この雨天に関する対応情報に基づいて摩擦係数が推定されればよい。また、同様に、気温や湿度毎に対応情報を記憶部104に予め蓄積しておき、この対応情報に基づいて摩擦係数が推定されればよい。また、応力検出部30の検出結果と押付力と環境情報と摩擦係数とに基づく機械学習を実行することにより学習モデルを予め作成し、作成した学習モデルに応力検出部30の検出結果と押付力と環境情報とを入力することにより、その出力結果から摩擦係数が推定されてもよい。本構成によると、環境情報を考慮して、より精度良く摩擦係数を推定することが可能となる。
【0061】
図6は、第1実施形態の他の変形例のブレーキ装置1における処理装置100の機能ブロック図である。図6の処理装置100は、取得部101と、推定部102と、記憶部104と、減速度決定部105と、ブレーキ制御部106と、を備える。減速度決定部は、推定した摩擦係数に基づいて実際の粘着係数μ1を推定し、推定した粘着係数に基づいて設定減速度βを決定する。例えば、減速度決定部105は、推定部102が推定した摩擦係数をそのまま粘着係数μ1として用い、以下の式(4)に基づいて設定減速度を決定する。
β=g×μ1 式(4)
ブレーキ制御部106は、式(4)に基づいて決定された設定減速度βを用いて、ブレーキを制御する。本構成によると、設定減速度βを適切に決定できるため、停止距離の短縮や運行時間の短縮を図ることが可能となる。なお、図6の処理装置100は、出力部103を備えてもよい。
【0062】
第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0063】
図7は、第2実施形態のブレーキ装置1における処理装置100の機能ブロック図である。第2実施形態の取得部101は、走行位置取得部116をさらに備える。
【0064】
走行位置取得部116は、応力検出部30の検出時点での鉄道車両の走行位置を取得する。例えば、走行位置取得部116は、鉄道車両に設けられたGPSの検出結果や鉄道の起点からのキロ程(距離)を表した標識に基づいて走行位置を取得する。
【0065】
第2実施形態の出力部103は、推定部102により推定された摩擦係数と応力検出部30の検出時点における走行位置とを対応付けて外部装置に出力する。
【0066】
ここで、制輪子72と車輪92との間の摩擦係数は、鉄道車両の走行位置によって変化する。例えば、落ち葉、海水や砂等の異物の散乱度合い、軌道の傾斜角度や劣化状態等は、位置によって異なるためである。第2実施形態によると、摩擦係数及びそのときの走行位置を対応付けて外部装置に蓄積することが可能となるため、例えば路線マップ上に位置毎の摩擦係数を反映させて表示することが可能となる。その結果、その位置を走行する際の摩擦係数を正確に把握できるため、例えば、その位置を次回走行する際の適切な減速度を予測でき、走行計画のより正確な立案に貢献できる。例えば、当該位置での砂まきによる摩擦係数の改善を必要に応じて的確に実施できる。
【0067】
第2実施形態の変形例について説明する。再び図5を参照する。本変形例の出力部103は、推定部102により推定された摩擦係数と応力検出部30の検出時点における環境情報とを対応付けて外部装置に出力する。本構成によると、摩擦係数及びそのときの環境情報を対応付けて外部装置に蓄積することが可能となるため、環境情報毎の摩擦係数を正確に把握できる。その結果、例えば、外部装置から走行時の環境情報に対応する摩擦係数を得ることが可能となるため、環境情報に応じて適切な減速度を設定でき、走行計画のより正確な立案に貢献できる。
【0068】
第2実施形態の他の変形例について説明する。図8は、第2実施形態の他の変形例のブレーキ装置1における処理装置100の機能ブロック図である。図8の取得部101は、鉄道車両の走行方向を取得する走行方向取得部117を備える。この走行方向は、例えば、GPSの検出結果から取得される。図8の処理装置100は、車両に設けられた複数の車軸のうち、摩擦係数が推定された車輪の車軸を特定する車軸特定部107をさらに備える。本変形例では、応力検出部30毎に識別番号が割り当てられているとともに、記憶部104には各識別番号に対応する応力検出部30が取り付けられたブレーキ装置1がブレーキ力を付与する車輪92の車軸が記憶されている。応力取得部111は応力の検出結果とともにその識別番号を取得する。車軸特定部107は、応力取得部111を介してその識別番号を取得し、記憶部104からその識別番号に対応する車軸を読み出すことにより、摩擦係数が推定された車輪の車軸を特定する。本変形例の出力部は、応力検出部30の検出結果と推定部102により推定された摩擦係数とその摩擦係数が推定された車輪と応力検出部30の検出時点における走行方向を対応付けて外部装置に出力する。ここで、車輪と軌道との間の粘着係数は、車軸毎に異なる。例えば、その走行方向の後方に位置する車輪はその走行方向の前方に位置する車輪が走行することによってゴミや水が取り除かれた状態の軌道上を走行するため滑りにくく、その摩擦係数はその走行方向の前方に位置する車輪の摩擦係数よりも大きいと想定される。本構成によると、車軸の位置及び走行方向を考慮して、車輪毎により正確に摩擦係数を把握できるため、車輪毎により適切な減速度を設定でき、走行計画のより正確な立案に貢献できる。
【0069】
第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0070】
図9は、第3実施形態のブレーキ装置1における処理装置100の機能ブロック図である。第3実施形態の取得部101は、応力取得部111を備える。第3実施形態の推定部102は、滑走推定部124を備える。滑走推定部124は、応力検出部30の検出結果と基準値とを比較し、比較結果に基づいて鉄道車両に滑走が生じているか否かを推定する。第3実施形態の出力部103は、鉄道車両に滑走が生じている場合にその旨を外部装置に出力する。
【0071】
図10は、第3実施形態の処理装置100の処理S100を示すフローチャートである。処理S100は、所定の時間間隔(例えば、数ミリ秒)で実行される。
【0072】
ステップS101で、応力取得部111は、応力検出部30の検出結果を取得する。応力取得部111は、取得した検出結果を記憶部104に供給する。ステップS101の後、処理S100はステップS102に進む。
【0073】
ステップS102で、記憶部104は、応力の検出結果を記憶する。これにより、記憶部104において応力の検出結果が時系列に蓄積される。ステップS102の後、処理S100はステップS103に進む。
【0074】
ステップS103で、滑走推定部124は、記憶部104に記憶された応力の検出結果の推移に基づいて、鉄道車両に滑走が発生しているか否かを判断する。図11を用いて、滑走推定部124における滑走の判断方法を説明する。図11は、走行中にブレーキを作用させた結果、滑走が生じたときの応力検出部30の検出結果及び車輪92の軸速度の推移を示す。
【0075】
鉄道車両が走行している状態において、時刻t1でブレーキをかけると、車輪92の軸速度が徐々に低下するとともに、応力検出部30が検出する応力が上昇する。その後、時刻t2で滑走が生じると、滑走により図11中で点線で示される健全軸速度よりも軸速度(図11中、実軸速度)が急激に落ち込む。ここで、健全軸速度とは、滑走が生じないと仮定したときに想定される軸速度である。その後、車輪92と軌道が再粘着して、健全軸速度と実軸速度が一致するようになる。
【0076】
一方、時刻t2で滑走が生じると、滑走により応力(図11中、実応力)も同様に図11中で一点鎖線で示される健全応力よりも急減に落ち込む。滑走により軸速度が低下する結果、応力も低下するためである。ここで、健全応力とは、滑走が生じないと仮定したときに想定される応力である。その後、車輪92と軌道が再粘着して、健全応力と実応力が一致するようになる。
【0077】
滑走推定部124は、この応力の急激な落ち込みを検出することにより、滑走が生じているか否かを判断する。例えば、滑走推定部は、その応力の検出時点から所定時間前からの応力の変化量(基準値に対する応力の最小値の差分)が滑走閾値よりも大きい場合に、滑走が生じていると判断する。ここでの基準値は、例えば、その応力の検出時点から所定時間前の応力検出部30の検出結果である。
【0078】
滑走が発生している場合(ステップS103のY)、処理S100はステップS104に進む。滑走が発生していない場合(ステップS103のN)、処理S100は終了する。
【0079】
ステップS104で、出力部103は、鉄道車両に滑走が生じている旨を外部装置に出力する。これにより、外部装置により滑走が生じている旨が通知され、滑走が生じていると把握することが可能となる。
【0080】
ステップS104の後、処理S100は終了する。
【0081】
ここで、従来、各車両の車軸毎(車両1両当たり4台)に取り付けられた4軸分の軸速度センサの検出結果を比較し、その比較結果(例えば速度差)に基づいて鉄道車両の滑走が検出されている。この従来の手法によると、4軸分のデータを集めて比較する必要があるため演算の負荷が大きく、また各車輪の滑走の検出の判断が他の車軸に取り付けられた速度センサの検出結果に依存してしまい、滑走の検出精度の面で改善の余地があるという問題があった。また、通常、機関車等でけん引される貨車及び客車等には、力行時の空転防止制御が不要であるため、軸速度センサ等が設置されていない。滑走の検出精度をより高めるために、これら貨車及び客車等の車両の車軸にも軸速度センサ等を設置することも想定されるが、その設置には高いコストを要する。そのため、軸速度センサ等が設置されていない車両について、より低コストで滑走を検出できる技術が求められている。
【0082】
一方、第3実施形態では、滑走推定部124は、応力検出部30の検出結果と基準値とを比較し、比較結果に基づいて鉄道車両に滑走が生じているか否かを推定する。本構成によると、滑走の検出において他の車軸における応力の検出結果との比較を要しないため、演算の負荷を低減することが可能となるとともに、滑走検出の独立性を向上できるため、滑走の検出精度をより向上できる。また、軸速度センサ等が設置されていない車両について、より低コストで滑走を検出できる。さらに、車軸1軸に対し、ブレーキ装置1は2つ設置される。そのため、車軸1軸につき2つの応力の検出結果を用いて滑走が判断できるため、相互監視により滑走の検出精度の向上や誤検出の抑制を図ることができる。
【0083】
第3実施形態では、応力の検出結果と基準値とが比較されたが、これに限定されず、応力の検出結果から実制動トルクを算出し、この算出した実制動トルクと制動トルクの基準値との比較に基づいて滑走が判断されてもよい。
【0084】
第3実施形態では、出力部103は、鉄道車両に滑走が生じている旨を外部装置に出力したが、これに限定されず、鉄道車両に滑走が生じていると推定された場合にブレーキ装置1に滑走を抑制するためのブレーキ制御を実行させるための指令を出力してもよい。
【0085】
第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0086】
図12は、第4実施形態のブレーキ装置1における処理装置100の機能ブロック図である。第4実施形態の取得部101は、応力取得部111と、押付力取得部112と、を備える。第4実施形態の推定部102は、応力検出部30の検出結果と応力検出部30の検出時点における押付力とに基づいてブレーキ装置1に異常が発生しているか否かを推定する異常推定部125を備える。第4実施形態の出力部103は、ブレーキ装置1に異常が発生している場合にその旨を外部装置に出力する。
【0087】
図13は、第4実施形態の処理装置100の処理S200を示すフローチャートである。処理S200は、所定の時間間隔(例えば、数ミリ秒)で実行される。
【0088】
ステップS201で、応力取得部111は、応力検出部30の検出結果を取得する。応力取得部111は、取得した検出結果を異常推定部125に供給する。ステップS201の後、処理S200はステップS202に進む。
【0089】
ステップS202で、押付力取得部112は、押付力を取得する。押付力取得部112は、取得した押付力を異常推定部125に供給する。ステップS202の後、処理S200はステップS203に進む。
【0090】
ステップS203で、異常推定部125は、所定以上の押付力でブレーキを作用させたか否かを判断する。所定以上の押付力でブレーキを作用させた場合(ステップS203のY)、処理S200はステップS204に進む。所定以上の押付力でブレーキを作用させていない場合(ステップS203のN)、処理S200は終了する。
【0091】
ステップS204で、異常推定部125は、所定以上の押付力で制輪子72を車輪92に押し付けたときの応力検出部30の検出結果が所定の応力閾値以下であるか否かを判断する。検出結果が所定の応力閾値以下である場合(ステップS204のY)、異常推定部125はブレーキ装置1に異常が発生していると判断し、処理S200はステップS205に進む。検出結果が所定の応力閾値以下ではない場合(ステップS204のN)、異常推定部125はブレーキ装置1に異常が発生していないと判断し、処理S200は終了する。
【0092】
ステップS205で、出力部103は、ブレーキ装置1に異常が発生している旨を外部装置に出力する。これにより、例えば、ブレーキ装置1に異常が発生している旨が外部装置によって通知される。
【0093】
ステップS205の後、処理S200は終了する。
【0094】
ところで、鉄道車両が雪等の異物を巻き上げるにことにより制輪子14と車輪92との間に異物が噛み込むことがある。その結果、制輪子14と車輪92との間の摩擦係数が低下し、ブレーキを作用させるように押付力を発生させているにもかかわらず、制動トルクが十分に発生しないことが考えられる。
【0095】
第4実施形態では、異常推定部125は、応力検出部30の検出結果と応力検出部30の検出時点における押付力とに基づいてブレーキ装置1に異常が発生しているか否かを推定する。本構成によると、制輪子72と車輪92との間に雪などの異物が介在して制輪子72を車輪92に押し付けているが制動トルクが十分に発生していないといった状態を把握できるため、例えば、耐雪ブレーキ等の使用可否の判断を容易にすることが可能となる。
【0096】
第5実施形態
以下、本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0097】
図14は、第5実施形態に係るブレーキ装置2の一部断面を含む図である。第5実施形態のブレーキ装置2は、ブレーキ機構10と、保持部28と、ベース部36と、応力検出部30とを備える。
【0098】
本実施形態では、ブレーキ機構10はキャリパボディ12を含む。ベース部36は、車体90にブレーキ機構10を取付けるためのベースとして機能する。ベース部36は、後述するアクチュエータ20と一体的に設けられる。
【0099】
保持部28は、ベース部36に接続される被接続部と、キャリパボディ12に接続される梃子接続部とを有し、応力検出部30に応力を伝達する。応力検出部30は、保持部28を介して、制動時に制輪子に加わる車輪92の回転方向の応力を検知する。
【0100】
以下、車輪92の車軸94の延伸方向を「車軸方向」といい、その中心軸線Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、車軸方向で一方の車輪92から車軸94の車軸方向中心に向かう側を内側といい、その反対側を外側という。
【0101】
図15は、第5実施形態のブレーキ装置2を分解して示す平面図である。図16は、第5実施形態のブレーキ装置2の側面図である。図17は、第5実施形態のブレーキ装置2を分解して示す側面図である。図15および図17は、主要な構成要素を示し、説明に重要でない部材を省略している。本実施形態のブレーキ機構10は、キャリパボディ12と、一対の制輪子14と、一対のバックプレート15と、アクチュエータ20とを含むディスクブレーキである。一対の制輪子14は、車輪92のブレーキディスク(不図示)を挟んで配置され、車輪92に押し付けられることにより制動力を発生させるブレーキバッドとして機能する。バックプレート15は、制輪子14を保持する制輪子保持部として機能する。本実施形態の車輪92のブレーキディスクは、被摩擦材の一例である。
【0102】
キャリパボディ12は、一対のキャリパ梃子16と、一対のキャリパ梃子16の支点部16fを離隔した位置で支持する梃子連結部材18とを備える。キャリパ梃子16は、互いに連結された上アーム16hと、上アーム16hの下側に配置される下アーム16jとを含む。上アーム16hおよび下アーム16jは、それぞれ反車輪側の端に設けられた力点部16bと、車輪側の端に設けられた出力部16pとを有する。力点部16bは、アクチュエータ20のシリンダ出力部にシリンダピン20pを介して取り付けられる。本実施形態の制輪子14、一対のバックプレート15及びキャリパ梃子16は、アクチュエータ40(駆動部)から入力された押付力を制輪子72に伝達する伝達部の一例である。
【0103】
出力部16pには、制輪子14とバックプレート15とがプレートピン15pを介して取り付けられる。プレートピン15pは、バックプレート15の取付孔15hと、後述する出力側接続部16nの中空部16qとを上下に貫通して先端にナット15nが螺合される。
【0104】
上アーム16hおよび下アーム16jは、力点部16bと出力部16pの間に設けられた支点部16fを有する。力点部16bは力点に対応し、出力部16pは作用点に対応し、支点部16fは支点に対応する。
【0105】
上アーム16hおよび下アーム16jは、中間接続部16mと、出力側接続部16nとにより互いに接続される。中間接続部16mは、上下の力点部16bと出力部16pの中間において上下に延びる部分である。出力側接続部16nは、上下の出力部16pの間において上下に延びる中空部16qを囲む筒状の部分である。
【0106】
上アーム16hおよび下アーム16jは一体的に運動する。したがって、以下の説明において、力点部16b、支点部16f、出力部16pは、上下の力点部16b、上下の支点部16f、上下の出力部16pを意味する。
【0107】
支点部16fは、支点ピン18pを介して梃子連結部材18の両端部に連結される。梃子連結部材18は、車軸方向に延在する腕状の部材で、その両端に車軸方向内側の支点部16fと車軸方向外側の支点部16fとが取り付けられ、内外の支点部16fの離隔距離を一定に保つ。このように構成されたキャリパボディ12は、力点部16bにアクチュエータ20から駆動力が入力されると、出力部16pはバックプレート15を介して制輪子14を車輪92に押し付け、車輪92に制動力を生じさせる。
【0108】
ブレーキ機構10は、ベース部36を介して車体90に取付けられる。本実施形態では、ベース部36は、図示しないボルト等の締結具により車体90に取付けられ、ブレーキ機構10は、ベース部36と一体的に設けられたアクチュエータ20によって支持される。ベース部36は、後述する保持部28の被接続部28e、28fを取付けるためのベース接続部36eを有する。本実施形態のベース接続部36eは、ベース部36の側面から車軸方向で内側に突出する部分であり、上下に貫通するベース孔36hを有する。
【0109】
加工を容易にする観点から、保持部28は単純な形状であることが望ましい。このため、本実施形態の被接続部28e、28fは、ベース部36から突出するベース接続部36eに接続される。この場合、保持部28の本体部28bを平坦に近づけることができる。
【0110】
アクチュエータ20を説明する。図18は、第5実施形態のアクチュエータ20を概略的に示す平面視の模式図である。アクチュエータ20は、公知の様々なブレーキアクチュエータであってもよい。本実施形態のアクチュエータ20は、作動流体の圧力を用いて走行中の車両に制動力を作用させる機能を有する。アクチュエータ20は、例えば付勢部材の付勢力を用いて駐車中の車両に制動力を作用させる機能を有してもよい。本実施形態のアクチュエータ20は、本体部20bと、本体部20bから車軸方向に進退する押棒20cと、押棒20cを進退させる駆動機構20dとを有する。アクチュエータ20はブレーキシリンダ装置と称されることがある。本実施形態のアクチュエータ20は、駆動部の一例である。
【0111】
押棒20cの先端にシリンダ出力部20hが設けられ、本体部20bのシリンダ出力部20hとは反対側の面にシリンダ出力部20jが設けられる。シリンダ出力部20h、20jには、シリンダピン20pを介してキャリパ梃子16の力点部16bが取り付けられる。つまり、押棒20cは、キャリパ梃子16にアクチュエータ20の駆動力を伝達するための部材として機能する。駆動機構20dは、図示しない供給源から供給される作動流体(例えば、空気)の圧力状態により、押棒20cを進退させ、2つのシリンダ出力部20h、20j間の車軸方向の離隔距離を変化させる。この例では、圧縮空気の空圧状態により押棒20cを進退させる。
【0112】
第1の空圧状態では、図18の破線で示すように、押棒20cは突出してシリンダ出力部20h、20jの離隔距離が大きくなる。離隔距離が大きくなると、一対の力点部16bが開き、出力部16pが閉じ、制輪子14が車輪92に押し付けられ、制動力が発生する。第2の空圧状態では、図18の実線で示すように、押棒20cは後退して出力部20h、20jの離隔距離が小さくなる。離隔距離が小さくなると、一対の力点部16bが閉じ、出力部16pが開き、制動力が解除される。例えば、第1の空圧状態は第2の空圧状態より高圧の状態であってもよい。
【0113】
シリンダ出力部20hは、保持部28との干渉を回避できる位置に配置されることが望ましい。このため、本実施形態のアクチュエータ20は、押棒20cの軸線を延長する線が後述する保持部28の開口部28dを通過するように配置される。
【0114】
本実施形態のブレーキ装置2は、キャリパボディ12とキャリパボディ12を車体90に取付けるためのベース部36とに接続される保持部28と、保持部28によって伝達される応力を検知する応力検出部30とを含む。この構成によれば、保持部28の一方がベース部36に接続されるので、キャリパ梃子16の交差方向応力による歪みの影響を殆ど受けない。このため、応力検出部30に対する交差方向応力の影響を低減して、測定精度の向上を図れる。
【0115】
このように構成された第5実施形態のブレーキ装置2は、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。第5実施形態の処理装置100は、第2~第4実施形態で上述した処理を実行してもよい。この場合も、第2~第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0116】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素やの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。上述した各実施形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0117】
1、2 ブレーキ装置、 10、60 ブレーキ機構、 20、40 アクチュエータ、 28、73 保持部、 30 応力検出部、 72 制輪子、 92 車輪、 100 処理装置、 101 取得部、 102 推定部、 103 出力部、 104 記憶部、 105 減速度決定部、 106 ブレーキ制御部、 107 車軸特定部。
【要約】
【課題】本発明の目的の一つは、ブレーキ時のブレーキ装置の歪み量を効果的に活用可能な技術を提供することにある。
【解決手段】本発明のある態様の車両用ブレーキ装置は、車両が有し、車両の走行時に回転する被摩擦材に摩擦材を押し付ける押付力を発生させる駆動部と、駆動部から入力された押付力を摩擦材に伝達する伝達部と、伝達部を車両の車体に保持する保持部と、保持部に設けられ、回転する被摩擦材に摩擦材が押し付けられ前記車両を制動する制動トルクが発生した際に保持部に発生する応力を検出する応力検出部と、応力の検出結果に基づいて摩擦材と被摩擦材との間の摩擦係数及び車両の滑走の少なくとも一方を推定する推定部102と、を備える。
【選択図】図2
図1
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図18