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特許7486638液体金属の酸素濃度を測定するためのポテンショメトリック酸素センサ、SFR型原子炉の液体ナトリウム中の酸素の測定への適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】液体金属の酸素濃度を測定するためのポテンショメトリック酸素センサ、SFR型原子炉の液体ナトリウム中の酸素の測定への適用
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/411 20060101AFI20240510BHJP
   G21D 1/02 20060101ALI20240510BHJP
   G21C 17/025 20060101ALI20240510BHJP
   G21B 1/11 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G01N27/411
G21D1/02 A
G21C17/025
G21B1/11
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076292
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2021100868の分割
【原出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023090868
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】2006323
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ブリッソノー
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-158357(JP,U)
【文献】特開平11-118754(JP,A)
【文献】実開昭56-052257(JP,U)
【文献】芦塚 正博, 外,イットリア部分安定化ジルコニアの熱衝撃破壊,窯業協會誌,1986年,Vol.94, No.1090,p.577-582
【文献】toishi.info,鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数,オンライン,2013年,[online], [令和4年5月10日検索], インターネット <URL: https://www.toishi.info/metal/bouchou.html>
【文献】高橋一郎, 外,各種セラミツクス材料の硫酸下の腐食挙動,日本セラミックス協会学術論文誌,1995年,Vol.103, No.1203,p.1205-1207
【文献】toishi.info,金属のヤング率の一覧,オンライン,2015年,[online], [令和4年5月10日検索], インターネット <URL: https://www.toishi.info/metal/young_list.html>
【文献】近藤正聡, 外,液体金属環境下の溶存酸素濃度と酸化物被覆健全性のオンラインモニタリングに関する研究,動力・エネルギー技術の最前線講演論文集:シンポジウム,2016年,Vol.2016.21, No.B241,p.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/411
G21D 1/02
G21C 17/025
G21B 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1つのセンサ本体部を形成する金属管(1)、
- 液体金属と接触することを目的とする電解質(2)、及び前記電解質中に含まれる参照電極を備える電気化学的部分組立体であって、前記電解質(2)は、イットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたハフニア(HfO)、又はトリア(ThO )から作製され、前記参照電極は、センサの操作温度において少なくとも1つの金属及びその酸化物形態を含む、部分組立体;
- 周期律表の4族からの遷移金属又はその合金から作製された挿入部(4)であって、前記センサ本体部(1)と前記電解質(2)との間に配置され、前記挿入部は、センサ本体部と電解質との間の中間部として作用し、センサ本体部(1)に取り付けられ且つろう付け接合部(5)により電解質(2)にろう付けされ、挿入部(4)の熱膨張率は電解質(2)の熱膨張率に近く且つセンサ本体部(1)の熱膨張率より低い、挿入部を備える、液体金属の酸素濃度を測定するためのポテンショメトリック酸素センサ(10)。
【請求項2】
前記挿入部及び前記センサ本体部(1)の両方の周囲に配置された保持リング(6)も備え、前記保持リングが、ろう付け接合部(5)の製作中に、前記挿入部及び前記センサ本体部を支持するために適合されている、請求項1に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)。
【請求項3】
前記保持リング(6)が、その熱膨張率が、トリア又はハフニアの熱膨張率に近い材料から作製される、請求項2に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)。
【請求項4】
前記センサ本体部が2つの管状部(1、9)を備え、下部(1)は前記電解質に取り付けられた部分であり、上部(9)は液体金属の外側に突出することを目的とし、2つの管状部は金属接合コネクタ(8)により互いに組み立てられ、その雄部(80)は、センサ本体部の下部又は上部に一体に締結され、その雌部(81)は、それぞれセンサ本体部の上部又は下部に一体に締結されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)。
【請求項5】
前記電解質の周囲に配置された透かし金属シース(11)も備え、前記透かし金属シースが、液体金属が通過するのを可能にするように適合されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)。
【請求項6】
前記透かし金属シース(11)が、前保持リングに取り付けられている、請求項2または3と組み合わせた、請求項5に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)。
【請求項7】
前記挿入部の前記遷移金属が、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)又はチタン(Ti)である、請求項1から6のいずれか一項に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)。
【請求項8】
前記ろう付け接合部が、ニッケル(Ni)、銅(Cu)又はその合金(Ni-Cu)から作製される、請求項1から7のいずれか一項に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)。
【請求項9】
前記センサ本体部が、参照電極において電位差を測定し、また温度も測定するのに好適な測定ヘッド(7)を収容する、請求項1から8のいずれか一項に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)。
【請求項10】
前記センサ本体部(1、9)がステンレス鋼から作製され、前記挿入部(4)がジルコニアから作製され、前記電解質(2)がイットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたハフニア(HfO)又はイットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたトリア(ThO)から作製され、液体ナトリウム中又は鉛-リチウム(Pb-Li)共晶合金中の酸素濃度を測定するための、請求項1から9のいずれか一項に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)の使用。
【請求項11】
前記センサ本体部(1、9)がステンレス鋼から作製され、前記挿入部(4)がチタンから作製され、前記電解質(2)がジルコニアから作製され、液体鉛及び重金属を有するその合金中の酸素濃度を測定するための、請求項1から9のいずれか一項に記載のポテンショメトリック酸素センサ(10)の使用。
【請求項12】
液体金属(ナトリウム、鉛)で冷却され、請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポテンショメトリック酸素センサ(10)を備える、核分裂原子炉。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポテンショメトリック酸素センサ(10)を備える、核融合原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体金属の酸素濃度(含有量)を測定するためのポテンショメトリック酸素センサに関する。
【0002】
本発明に基づくセンサを目的とする主要用途は、液体ナトリウム等の液体金属で冷却される、SFR(ナトリウム高速炉)として公知の、第4世代原子炉の群の一部をなす高速中性子炉の一次ループにおける液体ナトリウムの酸素濃度の測定である。
【0003】
主要用途に関して記載したが、本発明に基づくポテンショメトリックセンサは、高温における媒体、及び/又は高還元性である媒体、及び/又は高圧にさらされる媒体、及び特に、ナトリウム-水反応(SWR)のリスクを検出するための余剰的な手段としての、SFR炉の二次ループにおけるナトリウム、又は鋼鉄の腐食が顕著な現象である鉛及びその合金等のナトリウム以外の液体金属である媒体における測定が必要とされるあらゆる用途に使用されうる。
【0004】
本発明に基づくポテンショメトリック酸素センサに対して想定されうる別の用途は、太陽光発電所の集中に関するものであり、典型的には約550℃における、制限されたままであるその操作温度に起因して酸素の測定が今日までは優勢ではないが、前記温度がより高かった場合に優勢となりえて、これは生産量向上の目的で現在研究下にある。
【背景技術】
【0005】
ナトリウム冷却型原子炉において、酸素含有量の信頼できる測定を実施できることが責務である。詳細には、原子炉に関するフランスの規定では、酸素含有量は原子炉が操作中の場合、一次ループにおいて3ppm未満であると明記されている。この要求の目的は、被覆金属の腐食動態を制限することであり、これは酸素含有量にある程度比例し、したがって、活性化された腐食生成物の液体ナトリウム回路への放出を制限することである。これらの現象は、例えば、刊行物[1]により詳細が記載されている。
【0006】
SFR炉におけるナトリウムの酸素含有量を測定するために、本質的に2つの技術が公知である。
【0007】
第1の技術は、「目詰まり」温度を決定する目詰まり表示器による純度測定からなる間接的技術であり、この温度より低くなると、酸化ナトリウム及び水素化物の結晶の沈殿が始まる。そのような目詰まり表示器は、例えば、特許FR 2 659 739 B1に記載されている。
【0008】
この間接的技術は、酸素含有量のみを測定することができず、ナトリウム中に存在する全ての不純物を測定するという大きな欠点を有する。したがって、ナトリウムが他の不純物を含まない場合、酸素含有量のみが表される。更に、この技術は、数時間の処理時間を必要とする。
【0009】
第2の技術は、ポテンショメトリック酸素センサを、SFR炉[2]の主要タンクに直接、又は明示されたループ[3]に、又は精製ループ上のいずれかで使用することで構成される。
【0010】
したがって、典型的には、センサの操作温度は350℃から450℃の間である。センサに期待される耐用年数は、少なくとも18か月程度でなければならない。
【0011】
この時間は、原子炉装置の燃料補給のための2回の長期停止の間の期間に相当する。したがって、長期停止中にセンサを取り替えることが想定され、これにより関係する装置の有効度を保持することが可能となる。
【0012】
ポテンショメトリックセンサは、酸素含有量のみを測定するという大きな利点を有する。したがって、間接的技術の目詰まり表示器の測定に対してこれは的確であり、余剰性及び独立性をもたらす。更にこれははるかに迅速であり、又は理論上実質的にリアルタイムでさえある。
【0013】
このようなセンサの構造及びその機能は、例えば、刊行物[4]に記載されている。特許出願JP2018025421は、溶融金属中の、詳細には液体銅中の気体、詳細には酸素の濃度を測定するためのセンサを記載している。
【0014】
したがって、ナトリウム中のポテンショメトリック酸素センサは、電解質により分離された2つの媒体における酸素活性の差に起因する電位差を測定するという原理の下に機能する。
【0015】
研究対象の媒体(ナトリウム)と参照媒体(確定された酸素活性を有する)との間の電位差は、以下のネルンスト則を介して2つの媒体における酸素活性と関連付けられる:
【0016】
【数1】
【0017】
式中、Fはファラデー定数であり、Rは理想気体定数であり、Tはケルビン度における温度であり、
【0018】
【数2】
【0019】
は酸素濃度に比例するナトリウム中の酸素活性であり、及び
【0020】
【数3】
【0021】
は参照媒体中の酸素活性である。
【0022】
ポテンショメトリックセンサ中で使用される電解質は、酸素イオンの純粋なイオン伝導体で且つナトリウム及び参照媒体の両方による腐食に対して耐性でなければならない。実用的見地から、ナトリウムによる腐食に対して耐性であるイオン伝導性酸化物は僅少であり:これらはドープされたトリウム又はハフニウムの酸化物である。刊行物[5]において強調されているように、イットリウムをドープしたトリアは最も一般的に使用されてきた電解質であり、イットリウムは、酸素空孔を生み出すことによりイオン伝導性を増加させることによって、トリアをドープするために使用される。
【0023】
ポテンショメトリックセンサを作製するために遭遇する難題の1つは、ナトリウムに関して、センサのセラミック電解質部とナトリウム回路の配管との間の耐漏洩性を達成することにある。詳細には、200℃を越える温度がもたらされるセラミック電解質に対して、従来のシステムを使用することは不可能である。
【0024】
1つの単純な方法は、センサに沿って温度勾配を生み出すことにより、固化したナトリウム接合部を作製することで構成される。次に、対象物と外部との間の封着は、100℃未満の温度で、従来の接合を使用することにより達成される。それは長いセラミック管を高温勾配にさらすという欠点を有し、前記材料はこの制約下で電解質としてのその機能に必要とされる薄い厚さのために、徐々に脆弱となる。
【0025】
代替法は、金属センサ本体部上に小電解質をろう付けすることで構成される。次に、封着は、高温に耐性がある金属フランジにより達成されうる。パイプに対するセンサの使用により、はるかに可撓性となり、この配置は、特に熱衝撃中の破損のリスクを制限する。しかしながら、難題は、ロバスト性を持ち且つナトリウムによる腐食に対して耐性でなければならないろう付け領域に移行される。
【0026】
特許FR 2 325 928 B1は、ポテンショメトリック酸素センサを記載しており、酸化イットリウムでドープされたそのトリア(ThO)電解質は、ステンレス鋼又はニッケル製の金属管内部のその表面にろう付けされている。上述の特許FR 2 325 928 B1の発明者の名前で刊行物[6]において、制御された熱膨張率を有するFe-Co-Ni合金製のろう付け中間部を使用することにより、イットリウムをドープしたトリアとステンレス鋼との間の膨張率における差という問題を解決することが提案された。この刊行物[6]及び上述の特許FR 2 325 928 B1において、発明者によると、ろう付けそれ自体を達成するために、モリブデンMo金属化を実施することを可能にするために、選択されたろう付けはFe-Co-Ni合金をベースとする。特許出願WO 2015/092317 A1は、Ti又はZrを添加したFe-Ni合金を使用する反応性ろう付け組立プロセスを開示している。しかしながら、イットリウムをドープしたハフニア電解質(トリアをシミュレーション)又はイットリウムをドープしたトリアをベースとしたものに関して、本プロセスにより得られたセンサに関して実施された試験は、セラミックの亀裂の可能性を示した。
【0027】
一般に、刊行物[5]の3頁の表に列記されるように、トリアをベースとした電解質を有する既存のセンサに対して、詳細には電解質/金属合金の結合境界面において、多数の欠陥が観察された。
【0028】
これらの欠陥により、極端な使用条件下でのポテンショメトリック酸素センサの持続的使用を想定することが可能ではなくなる。
【0029】
特許出願DE 230485 A1は、特に溶融金属中の酸素含有量を測定するためのポテンショメトリック酸素センサを記載しており(5段落を参照)、そのセラミック電解質は、ろう付け接合部を有する挿入部により金属管にろう付けされ、それは、刊行物[6]及び上述の特許FR 2 325 928 B1のようにFe-Co-Ni合金として選択されている。好ましい実施例では、選択されたろう付け接合部はNi-Cu合金製であり、その可鍛性のために、すなわち、それを用いて組み立てられる構成要素間をろう付けが容易に浸透する。選択された挿入部材料では、共晶体溶融を達成することは可能ではない。その結果として、DE 230485 A1に基づく解決策は、第1に、非常に高温でろう付けを溶融させること、第2に、制限されたままであり典型的には最大で600℃までの低温範囲においてのみセラミック電解質に続く膨張率を有する挿入部材料を有するという大きな欠点を有する。しかしながら、この問題の状況で、ろう付けが1100℃における温度で実施されるということが起こりうる。前記文書に基づくセンサは、したがって、上述の既存のセンサと同じ関連の失敗のリスクを伴う同じ弱点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【文献】仏国特許第2659739号明細書
【文献】特開第2018-025421号公報
【文献】仏国特許第2325928号明細書
【文献】国際公開第2015/092317号
【文献】独国特許出願公開第230485号明細書
【非特許文献】
【0031】
【文献】L. Brissonneau、「New considerations on the kinetics of mass transfer in sodium fast reactors:An attempt to consider irradiation effects and low temperature corrosion」、Journal of Nuclear Materials、423 (2012)、67~78頁
【文献】Mason、L.、N.S. Morrison、and C.M. Robertson. 「The monitoring of oxygen, hydrogen and carbon in the sodium circuits of the PFR. in Liquid Metal Engineering and Technology.」1984. Oxford.
【文献】Osterhout、M.M. 「Operating experience with on-line meters at experimental breeder reactor II (EBR II). in LIMET Liquid Metal Technology.」 1980. Richland、USA、J.M. Dahlke.
【文献】Fouletier、J. and V. Ghetta、「Potentiometric sensors for high temperature liquids、in Materials Issues for Generation IV Systems」、V. Ghetta、Editor. 2008、Springer Science. 445~459頁
【文献】Jayaraman、V.、Gnanasekaran、T.、2016. 「Review-Evolution of the Development of In-Sodium Oxygen Sensor and Its Present Status」 J. Electrochem. Soc. 163、B395-B402
【文献】Roy、J.C. and B.E. Bugbee、「Electrochemical oxygen sensor for measurement of oxygen in liquid sodium」. Nuclear Technology 1978. 39:216~218頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
したがって、特に、非常に長期間にわたり、SFR原子炉構成における液体ナトリウムの温度及び圧力の条件下で、信頼できる測定値を得ることができるように、既存のポテンショメトリック酸素センサを改善することが一般的に必要である。
【0033】
本発明の目的は、この必要性を少なくとも部分的に満足することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
これを行うために、本発明は、その態様の1つにおいて、
- 少なくとも1つのセンサ本体部を形成する金属管;
- 液体金属と接触することを目的とする電解質、及び電解質中に含まれる参照電極を備える電気化学的部分組立体であって、電解質は、イットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたハフニア、又は任意選択でイットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたトリア、又はイットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたジルコニアから作製され、参照電極は、センサの操作温度において少なくとも1つの金属及びその酸化物形態を含む、部分組立体;
- 周期律表の4族からの遷移金属又はその合金から作製された挿入部であって、センサ本体部と電解質との間に配置され、挿入部は、センサ本体部に取り付けられ且つろう付け接合部により電解質にろう付けされ、挿入部の熱膨張率は電解質の熱膨張率に近く且つセンサ本体部の熱膨張率より低く、挿入部の剛性は、センサ本体部の剛性より高い、挿入部
を備える、液体金属、特に原子炉中の溶融金属の酸素濃度を測定するためのポテンショメトリック酸素センサに関する。
【0035】
したがって、本発明は、センサ本体部と電解質との間の中間部として作用する挿入部を配置することから本質的になり、挿入部材料は、センサ本体部及び電解質のセラミック材料の両方の金属材料と関連して慎重に選択され、先行技術に基づくポテンショメトリック酸素センサにおいて実施されるものと比較して、ろう付けフィラー金属の性質を逆転することを可能にする。
【0036】
したがって、本発明は、特に機械的応力を吸収し、殊に広い温度範囲にわたり膨張率における差が低いことに起因して機械的応力を低減する挿入部に起因して良好な機械的特性を有し、且つ亀裂のない挿入部/電解質境界面を有する、センサ本体部と電解質との間の耐漏洩性組立を可能にする。
【0037】
言い換えれば、本発明は、先行技術に基づくセンサのセラミック/金属結合に関して観察されてきた多くの亀裂欠陥を解決することを可能にする。
【0038】
この欠陥がないことを保証することにより、液体ナトリウムで冷却される原子炉内で遭遇する極端な温度及び圧力の条件下においてさえも、信頼でき且つ持続的な酸素含有量測定を想定することが可能である。
【0039】
本発明者は、広くいきわたった先入観に対抗した。詳細には、今日まで、当業者は、溶融金属浴等の極めて危険な環境で使用されることを目的とする困難な組立を実施するためには、前文に引用した特許出願DE 230485 A1のように、Fe-Co-Ni型の合金を使用することが不可避であると常に考えた。これは、これらの合金が、特許出願DE 230485 A1の実施例に言及されたように、多くはガラスのような壊れやすい材料と共に金属化され且つろう付けすることができるという事実により説明される。
【0040】
言い換えれば、当業者は、ポテンショメトリック酸素センサの状況で、他のFe-Co-Ni合金を用いた試験を実施することを想定さえしなかった。
【0041】
用語「イットリウムをドープしたハフニア」とは、少なくとも50質量%のHfO-Y、好ましくは少なくとも90質量%のHfO-Y、更により優先的には少なくとも95%のHfO-Yで構成される材料を意味する。
【0042】
用語「カルシウムをドープしたハフニア」とは、HfOに対して33質量%以下のCaOを含有する、少なくとも50質量%のHfO-CaO、好ましくは少なくとも90質量%のHfO-CaO、更により優先的には少なくとも95%のHfO-CaOで構成される材料を意味する。
【0043】
用語「イットリウムをドープしたトリア」とは、HfOに対して33質量%以下のYを含有する、少なくとも50質量%のThO-Y、好ましくは少なくとも90質量%のThO-Y、更により優先的には少なくとも95%のThO-Yで構成される材料を意味する。
【0044】
用語「カルシウムをドープしたトリア」とは、ThOに対して33質量%以下のCaOを含有する、少なくとも50質量%のThO-CaO、好ましくは少なくとも90質量%のThO-CaO、更により優先的には少なくとも95%のThO-CaOで構成される材料を意味する。
【0045】
用語「イットリウムをドープしたジルコニア」とは、少なくとも50質量%のZrO-Y、好ましくは少なくとも90質量%のZrO-Y、更により優先的には少なくとも95%のZrO-Yで構成される材料を意味する。
【0046】
これらの各材料において、上述された質量百分率に対する残りの百分率は、電解質の組成中に含まれる1つ又は複数の他の酸化物に相当しうる。これらの要素は、電解質の特性(イオン伝導性、機械的強度等)を修正することを可能にする。電解質はまた、例えばAl繊維のような他の材料の粒子で補強されてよい。
【0047】
イットリウムをドープしたハフニアは、0.5質量%~30質量%の酸化イットリウムを含むことが好ましい。
【0048】
イットリウムをドープしたジルコニアは、0.5質量%~20質量%の酸化イットリウムを含むことが好ましい。
【0049】
イットリウムをドープしたトリアは、0.5質量%~30質量%の酸化イットリウムを含むことが好ましい。
【0050】
カルシウムをドープしたトリアは、0.5質量%~20質量%の酸化カルシウムを含むことが好ましい。
【0051】
カルシウムをドープしたジルコニアは、0.5質量%~20質量%の酸化カルシウムを含むことが好ましい。
【0052】
カルシウムをドープしたハフニアは、0.5質量%~20質量%の酸化カルシウムを含むことが好ましい。
【0053】
例示的な目的で、以下の表に、様々な材料に関する、20℃から900℃の間の熱膨張率を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
セラミックの熱膨張率は、ステンレス鋼(詳細にはオーステナイト系鋼)又はニッケルベースの熱膨張率より著しく低い。遷移金属、詳細にはジルコニウムの膨張率は、セラミックの膨張率に近い。
【0056】
有利な実施形態に基づいて、センサはまた、挿入部及びセンサ本体部の両方の周囲に配置された保持リングも備え、リングは、ろう付け接合部の製作中に、前期対象物を支持するために適合されている。このリングの第1の機能は、ろう付け中に挿入部及び下部センサ本体部を保持することである。
【0057】
保持リングは、その熱膨張率が、トリア又はハフニア、好ましくは鉄-ニッケル(Fe-Ni)合金の熱膨張率に近い材料から作製されることが好ましい。
【0058】
有利な実施形態の変形に基づいて、センサ本体部は2つの管状部を備え、下部は電解質に取り付けられた部分であり、上部は液体金属の外側に突出することを目的とし、2つの管状部は金属接合コネクタにより互いに組み立てられ、その雄部は、センサ本体部の下部又は上部に一体に締結され、その雌部は、それぞれセンサ本体部の上部又は下部に一体に締結されている。
【0059】
別の有利な実施形態に基づいて、センサはまた、電解質の周囲に配置された透かし金属シースを備え、透かしシースは、液体金属が通過するのを可能にするように適合されている。この透かしシースの存在により、センサの取り扱い中の電解質の保護が可能となり、破損時における液体金属中の破片の分散を妨げる。
【0060】
有利には、透かしシースは、好ましくはリングにねじ込んで取り付けられている。
【0061】
挿入部は、有利には、例えばニッケル製の金属コーティングでコーティングすることにより腐食から保護されうる。
【0062】
有利には、挿入部及び電解質は、30%以下、好ましくは20%以下で変化する熱膨張率を有する。
【0063】
金属センサ本体部は、有利には、検討中の媒体において耐腐食特性を有する。センサ本体部は、有利には、溶融金属中及び/又は還元性媒体中、特に液体ナトリウム中で使用されるように適合されている。
【0064】
有利には、センサ本体部並びに、適切な場合、透かしシース及びセンサ固定フランジは、ステンレス鋼、好ましくはフェライト系鋼若しくはオーステナイト系鋼、又はニッケルベース合金から作製される。用語「ニッケルベース」とは、ニッケルが主要な要素であり、例えば、50質量%~80質量%の範囲でありうることを意味する。これらの材料は、検討中の媒体による腐食に対して、応力下でさえも高度に耐性である。ニッケルベース合金及びオーステナイト系ステンレス鋼は、液体ナトリウムNa中で検討中の温度における腐食に対して高度に耐性である。典型的には、センサ本体部並びに、適切な場合、透かしシース及びセンサ固定フランジは、304L又は316L型のステンレス鋼から作製される。
【0065】
有利には、挿入部の遷移金属は、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)又はチタン(Ti)である。
【0066】
ろう付け接合部は、少なくとも50質量%のニッケルを含有するか又は少なくとも50質量%の銅を含有する、ニッケル-銅合金としてニッケル(Ni)又は銅(Cu)から作製されうる。接合部がニッケルから作製される場合、ろう付けは、有利には、980℃~1060℃、好ましくは1000℃~1040℃の範囲の温度で実施される。ろう付け接合部が銅から作製される場合、ろう付けは、有利には、930℃~990℃、好ましくは950℃~970℃の範囲の温度で実施される。
【0067】
有利には、参照電極の材料は、センサの操作温度にて優先的には液体形態でなくてはならず、その酸化物形態(In)と平衡状態にあるインジウム(In)、又はその酸化物形態(Bi)と平衡状態にあるビスマス(Bi)、又はその酸化物形態(Ga)と平衡状態にあるガリウム(Ga)又はその酸化物形態(NaO)と平衡状態にあるナトリウムから作製される。
【0068】
有利な変形に基づいて、センサ本体部は、参照電極において電位差を測定し、また温度も測定するのに好適な測定ヘッドを収容する。有利には、測定ヘッドは、少なくとも1つの熱電対を組み入れてよい。
【0069】
好ましくは、参照電極における電位差の電気測定に好適な測定ヘッドは、モリブデン(Mo)から作製されるか又は好ましくは電気的絶縁材料、好ましくはアルミナ(Al)から作製されたシースによりセンサ本体部から電気的絶縁された電線からなる。
【0070】
本発明の主題はまた、センサ本体部がステンレス鋼から作製され、挿入部がジルコニアから作製され、電解質がイットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたハフニア (HfO)又はイットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたトリア(ThO)から作製され、好ましくは250℃から450℃の間の操作温度において、液体ナトリウム中又は鉛-リチウム(Pb-Li)共晶合金中の酸素濃度を測定するための、既に記載したポテンショメトリック酸素センサである。
【0071】
本発明の主題はまた、センサ本体部がステンレス鋼から作製され、挿入部がチタンから作製され、電解質がジルコニアから作製され、液体鉛及び重金属(Pb-Bi等)を有するその合金中の酸素の濃度を測定するための、既に記載したポテンショメトリック酸素センサである。
【0072】
本発明の主題は、液体金属(ナトリウム、鉛、又は鉛-ビスマス等のその合金)、鉛-リチウムで冷却され、既に記載した少なくとも1つのポテンショメトリック酸素センサを備える、核分裂原子炉である。
【0073】
最終的に、本発明の主題は、既に記載した少なくとも1つのポテンショメトリック酸素センサを備える核融合原子炉である。
【0074】
それは、Pb-Liで冷却されたトリチウム生成カバーにより、熱の取り出し及びトリチウムの製造がなされる核融合原子炉でありうる。
【0075】
本発明の他の利点及び特色は、以下の図式を参照して、非限定的な例示として与えられる本発明の実施例の詳細な説明を読むことにより、より分かりやすく明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】ポテンショメトリック酸素センサの縦方向断面における概略図であって、センサが酸素濃度を測定することを目的とする、液体金属を含有するパイプ上に位置し取り付けられているセンサを示す図である。
図2】本発明に基づくセンサを製作するための、ろう付け工程中の時間の関数としての温度の曲線を表すグラフである。
図3】本発明に基づくセンサのニッケル合金製のろう付け接合部と、イットリウムをドープしたハフニア製の電解質との境界面にて、走査電子顕微鏡により得られた画像である。
図4】本発明に基づくセンサのニッケル合金製のろう付け接合部と、イットリウムをドープしたハフニア製の電解質との境界面にて、前図に対して拡大された、走査電子顕微鏡により得られた画像でもある。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本特許出願の全体を通して、用語「下部」、「上部」、「上」、「下」、「内側」、「外側」、「内在する」及び「外在する」は、その縦の対称軸Xに沿った縦断面図において垂直方向に固定された操作構成における、本発明に基づくポテンショメトリックセンサを参照して理解されるべきであることをここで指摘する。
【0078】
図1は、中心軸Xについて線対称形の、本発明に基づくポテンショメトリック酸素センサ10を示す。
【0079】
図に示すように、このセンサ10は、SFR炉の一次ループで遭遇する温度及び圧力の条件下で、その酸素含有量を測定することが所望される、液体金属(L)、典型的には液体ナトリウムを含有するパイプの壁面20に取り付けられる。
【0080】
本センサ10は、第1に管状センサ本体部を備え、その下部管1は、機能中に液体金属に浸漬されることを目的とし、その上部管9は、液体金属(L)の外側に突出することを目的とする。センサ本体部の管1、9は、例えば、304L又は316L型のステンレス鋼から作製される。
【0081】
センサ1の下端部は、イットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたハフニア(HfO)、又は任意選択でイットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたトリア(ThO)、又はイットリウムをドープ若しくはカルシウムをドープしたジルコニア(ZrO)から作製される電解質を構成するコンテナ2を備える。図に示すように、電解質2は好ましくはポケットの形態で構成される。
【0082】
電解質は、参照電極を形成する材料3を含有する。この材料3は、センサの操作温度にて優先的には液体でなくてはならず、インジウム(In)及びその酸化物形態(In)、又はビスマス(Bi)及びその酸化物形態(Bi)、又はガリウム(Ga)及びその酸化物形態(Ga)又はナトリウム及びその酸化物形態(NaO)から作製される。
【0083】
本発明に基づいて、センサ10は、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)又はチタン(Ti)から作製され、センサ本体部の下部管1と電解質2との間に配置される挿入部4を備える。この挿入部4は、一方では管1に取り付けられ、他方ではろう付け接合部5により電解質2にろう付けされる。
【0084】
以下で述べるように、ろう付け接合部5は、ニッケル、銅又はその合金(Ni-Cu)から作製されるろう付けフィラーにより、細片若しくは少なくともワイヤ又はろう付けに前もって挿入部4の内径上に塗布された被膜の形態で製作される。
【0085】
挿入部4をセンサ本体部の下部管1に確実に取り付けるために、これらの2つの部品1、4の周囲に配置された保持リング6をもたらす。このリング6はまた、ろう付け接合部5の製作中にこれらの部品を保持することを可能にする。優先的には、このリング6は、挿入部4及び電解質2の膨張率に近い膨張率を有するFe-Ni又はFeNi-Coの合金から作製される。
【0086】
センサの測定ヘッド7は、センサ本体部1、9の内部に収容され、参照電極を形成する材料3と接触することになる。この測定ヘッド7は、したがって、参照電極3における電位差を測定することを可能にする。有利には、測定ヘッド7が温度を測定することも想定されうる。測定ヘッドの感知素子は、モリブデン又は電線から作製される。この(これらの)感知素子は、センサ本体部の金属管1、9との電気的絶縁を確実にするために、アルミナシース等のセラミックシース内に収容されることが好ましい。
【0087】
センサ本体部の2つの管1、9は、金属接合コネクタ8により互いに組み立てられる。図に示すように、この金属接合コネクタ8は、液体金属(L)中に配置されることが想定される。好ましくはステンレス鋼製のこのコネクタは、金属接合部8と共に、好ましくは銅又はニッケル製であり、有利にはろう付け耐漏洩性試験を実施することを可能にする。この試験は、例えば、コネクタにヘリウム漏洩検出器を接続することにより実施される。検出ポンプによりセンサ本体部内が真空とされて、次にヘリウムがセンサ外部に注入される。漏洩時には、ヘリウムはセンサ本体部内に浸透し、検出カウンタに吸入される。擬似漏洩が発生しないように、センサ本体部への接続にて非常に良好な耐漏洩性を有するように、明らかに注意が払われる。
【0088】
例示された実施例では、コネクタ8の雄部80は、センサ本体部の下部管1の上端部に溶接され、雌部81は上部管9の下端部に溶接されている。当然のことながら、逆の配置が想定されうる。
【0089】
透かし金属シース11は、液体金属が通過するのを可能にする端部キャップの形態で、保持リング6がねじ込まれ、電解質2の周囲に配置される。この透かしシース11により、一方では、センサの取り扱い中の電解質2の保護が可能となり、他方では、可能性のある破損時には液体金属中での破片の分散を妨げる。透かしシース11は、例えば、304L又は316L型のステンレス鋼から作製される。
【0090】
機能中に、パイプ20へのセンサの耐漏洩性の取り付けを確実にするために、センサ本体部の管9の上端部に溶接された固定フランジ12は、パイプ20の固定フランジ22にねじ込んで取り付けられる。耐漏洩性を確実にするために、金属Oリング22が、パイプの固定フランジ21に配置される。固定フランジ12、22は、例えば、304L又は316L型のステンレス鋼から作製される。
【0091】
金属コネクタ13は、電気測定ワイヤが高インピーダンス電圧計の電気的接続につながっている測定ヘッド7のコネクタ14へのねじ込みにより保持するためにも、固定フランジ12の最上部にねじ込まれている。
【0092】
ここに記載してきた本発明に基づくポテンショメトリックセンサ10の製造方法の様々な連続的工程を、ここに記載する。
工程a/:ろう付けフィラー5を、挿入部4の内部に接触させて配置する。ろう付けフィラー5は、挿入部4上の被膜として既に存在するのではない場合、ニッケル、銅又はその合金(Ni-Cu)から作製される細片及び/又は少なくともワイヤの形態で作製される。
工程b/:電解質2を形成するコンテナの、挿入部4内へのはめ込みを実施する。
工程c/:挿入部4及びセンサ本体部の下部管1を、保持リング6により共に取り付ける。
工程d/:次に、以下のプロセスに基づいて、電解質2と挿入部4との間でろう付けを実施する。
【0093】
挿入部4材料及びろう付けフィラー5からなる系の最低融点の共晶体の融点を超える熱処理を、ろう付けフィラー5を融解させるために最初に実施し、冷却後、ろう付け接合部5を形成する。
【0094】
ろう付け熱サイクルには、温度上昇、ろう付け温度における定常段階(「高」段階)及びろう付けの融点より低い温度までの冷却下降が連続して含まれる。冷却は室温まで下げて実施されることが好ましい。用語「室温」とは、20~25℃程度の温度を意味する。
【0095】
ろう付け温度における定常段階は、例えば、約10分程度(例えば10分~30分)である。
【0096】
ろう付け温度は、組み立てられる材料の融点より低い。より詳細には、ろう付け温度は、最低融点の共晶体の理論的温度より高い(挿入部4-ろう付けフィラーの遷移金属)。このため、遷移金属との境界面に存在する液体を豊富にすることが可能となる。
【0097】
有利には、ろう付けは、組立サイクル後の冷却に起因する熱機械的応力を制限するのに適度な温度で実施される。製作された組立体は、900℃程度の温度まで使用されうる。
【0098】
有利には、定常段階温度は、共晶体形成温度より少なくとも40℃高いことが好ましい。例えば、純ニッケル製のろう付けフィラーに対しては、約1000℃における定常段階が選択され、銅製のろう付けフィラーに対しては、約930℃の定常段階温度が選択される。
【0099】
ろう付けは、好ましくは無酸素環境で、例えば二次真空下で(例えば全圧10-5mbarにおいて)又は酸素-浄化中性ガス下でのろう付けにより実施される。
【0100】
ハフニア及びトリアは、Al又はZrO等の他のセラミックと比較して、還元するのが非常に困難である特に安定なセラミックである。特に、予期しなかったことだが、ジルコニウムがこれらのセラミックを還元し、この還元から得られた酸素がろう付け5に溶解し、また場合により少し挿入部4に溶解することが観察された。
【0101】
ジルコニウムは、昇温時にセラミックを部分的に還元することができる活性元素であるだけでなく、例えば、ニッケル、銅及び鉄の共晶体を1000℃未満で形成することができるろう付け組成物を得ることも可能にする。
【0102】
電解質2との境界面において、4族遷移金属の酸化物層が存在しないことは、ろう付け要素5へのこの金属の十分な希釈により、且つろう付けサイクル中にこの層を形成するのに時間が不十分なことより確認される。したがって、従来の反応性ろう付けプロセスに対して、ろう付けフィラーが電解質2と直接接触することはなく、且つ挿入部の存在のために酸素が多量の接合部フィラーに溶解するという事実に起因して、この層は形成されない。
【0103】
本工程d/に基づくろう付けを例証するために、イットリウムをドープしたハフニア製の電解質2を製作し、ジルコニウム製の挿入部4とろう付けする。
【0104】
イットリウムをドープしたハフニア製の電解質2は、10mmの外径を有する管状部を伴うポケットである。
【0105】
ジルコニウム挿入部4は、12.5mmの外径を有する管状部を有する。
【0106】
ろう付けフィラーは、直径0.45mm及び長さ7mmのワイヤの形態で導入される。それはNi201ワイヤである。
【0107】
ろう付けフィラーは、ろう付け区間の2つの端部に配置される(各端部における1巻きのワイヤ、溝に導入される)。
【0108】
ろう付けのために実施される熱サイクルは、図2に例示されるグラフで示される。本サイクルでは、温度上昇は、共晶温度(Te)よりわずかに低く、定常段階で停止され、例えば30分間900℃で温度を均一化する。典型的には、均一化温度T1は、Te-20℃未満であってよい。定常段階は、Te+40℃に等しいろう付け温度T2であり、10~30分間であってよい。
【0109】
図3及び図4は、得られたろう付け接合部5と電解質2との間で得られる境界面を示す。
【0110】
この結合区間の構造の観察により、境界面亀裂がないことが示される。イットリウムをドープしたハフニア製の内管電解質2、ろう付け接合部5及びジルコニウム製の外挿入部4が、図3では右から左へ、図4では左から右へ見られる。
【0111】
純ジルコニウムの強力な保持が境界面近くで観察される。定常段階中に高温で形成するろう付け中のジルコニウム管の十分な希釈、またニッケルより大きいジルコニウムの酸素に対する吸引力がこの配置をもたらし、ろう付け/電解質境界面において亀裂がないために好ましいことが証明された。
工程e/:ろう付けが終了すると、電解質2は、わずかに酸化性のガス、例えばアルゴン中1%未満の酸素を500から800℃の間の温度で循環することにより再酸化を経る。
工程f/:透かしシース11を、保持リング6にねじ込んで取り付ける。
工程g/:センサ組立体の耐漏洩性を確認するために、ヘリウム漏洩試験を実施する。
工程h/:漏洩試験に合格すると、参照電極を形成している材料3、すなわち、金属及びその酸化物形態を、センサ本体部の下部管1内部にそれを通過させることによりポケット2の底部に導入する。
工程i/:固定フランジ12を、次に、センサ本体部の上部管9上に溶接する。
工程j/:上部管9を、コネクタによりセンサ本体部の下部管1と組み立て、耐漏洩性はコネクタ8の金属接合部により達成される。
工程k/:最後に、測定ヘッド7をセンサ本体部1、9に導入し、耐漏洩性は、センサ本体部の上部管9の端部にねじ込まれたコネクタ13により達成される。
【0112】
ここに記載してきた本発明に基づくポテンショメトリックセンサ10の設置及び機能化は以下の通りに実施される。
工程1/:センサ10を、空のパイプ20、すなわち、液体金属を含有しないパイプに導入し、耐漏洩性は、パイプのフランジ12、21において、接合部22により達成される。
工程2/:パイプ20の温度を、液体金属の融点を越えて上昇させる。
工程3/:この融点を越えると、パイプ20を液体金属(L)で満たす。
工程4/:次に、液体金属を所望の温度まで上昇させる。
工程5/:電位測定を、測定ヘッド7とセンサ本体部の上部管9の突出部の間で、高インピーダンス電位差計を用いて行い、温度測定を、測定ヘッド7の熱電対で行う。
工程6/:液体金属(L)における酸素活性は、次に、前文で想起されたネルンスト則から推定することができる。
【0113】
しかしながら、他の変形及び改善は、本発明の範囲から逸脱することなく適用されうる。
【0114】
本発明に基づくポテンショメトリック酸素センサは、ナトリウム(Na)若しくはナトリウム-カリウム(Na-K)合金、又は鉛(Pb)、又は鉛-ビスマス(Pb-Bi)合金若しくは鉛-リチウム(Pb-Li)合金でありうる液体金属の酸素含有量を測定するために使用されうる。
【0115】
本発明は、ここに記載してきた実施例に限定されることはなく;例示的な実施例の特色は、特に、例示されていない変形内で共に組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 下部管;金属管;センサ本体部
2 電解質;コンテナ
3 参照電極
4 挿入部
5 ろう付け接合部
6 保持リング
7 測定ヘッド
8 金属接合コネクタ
9 上部管
10 ポテンショメトリック酸素センサ
11 透かし金属シース
12 固定フランジ
13 金属コネクタ
20 パイプ
22 パイプの固定フランジ;金属Oリング
図1
図2
図3
図4