(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】防水シート接合装置及び接合ユニット
(51)【国際特許分類】
E21D 11/38 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
E21D11/38 A
(21)【出願番号】P 2023144358
(22)【出願日】2023-09-06
【審査請求日】2023-10-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年2月7日に新聞で公開。令和5年2月7日に新聞で公開。令和5年2月14日に新聞で公開。令和5年3月1日に雑誌で公開。令和5年3月1日に雑誌で公開。令和5年7月5日に佐世保道路弓張トンネル工事で施工。令和5年2月3日にウェブサイトで公開。令和5年2月6日にウェブサイトで公開。令和5年2月6日にウェブサイトで公開。令和5年2月7日にウェブサイトで公開。令和5年2月7日にウェブサイトで公開。令和5年2月7日にウェブサイトで公開。令和5年2月7日にウェブサイトで公開。令和5年2月8日にウェブサイトで公開。令和5年2月14日にウェブサイトで公開。令和5年3月6日にウェブサイトで公開。令和5年9月4日にウェブサイトで公開。令和5年8月1日にウェブサイトで公開。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596007979
【氏名又は名称】大栄工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】前田 智之
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】森瀬 彬
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 猛彦
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203081468(CN,U)
【文献】特開平08-170498(JP,A)
【文献】特開平07-259496(JP,A)
【文献】特開2020-165096(JP,A)
【文献】特開2001-180096(JP,A)
【文献】特開平07-197793(JP,A)
【文献】特開2021-123946(JP,A)
【文献】特開平09-242491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
E21D 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル工事のシート防水工において、吹付けコンクリート面に敷設する、トンネル軸方向に隣り合う2枚の防水シートの縁部同士を、トンネル周方向に沿って接合する、防水シートの接合ユニットであって、
拝み合わせた前記2枚の防水シートの重合部を両面から押し付けて溶着可能な溶着機と、
アーチ状のガイドレールに沿って移動可能な移動ベースと、
前記溶着機を前記移動ベースに対し相対的に位置調整可能に接続する接続アームと、
前記移動ベースに対する前記溶着機の相対位置の変化に応じて前記移動ベースの移動速度を調整可能とする制御手段と、を備え、
前記接続アームが、前記溶着機を、前記移動ベースに対し
、トンネル半径方向
であるX軸を中心に回動可能な回動部を備え、
前記制御手段が、前記回動部の回動角度に応じて前記移動ベースの移動速度を調整することを特徴とする、
接合ユニット。
【請求項2】
トンネル工事のシート防水工において、吹付けコンクリート面に敷設する、トンネル軸方向に隣り合う2枚の防水シートの縁部同士を、トンネル周方向に沿って接合する、防水シートの接合ユニットであって、
拝み合わせた前記2枚の防水シートの重合部を両面から押し付けて溶着可能な溶着機と、
アーチ状のガイドレールに沿って移動可能な移動ベースと、
前記溶着機を前記移動ベースに対し相対的に位置調整可能に接続する接続アームと、
前記移動ベースに対する前記溶着機の相対位置の変化に応じて前記移動ベースの移動速度を調整可能とする制御手段と、を備え、
前記接続アームが、前記溶着機を、前記移動ベースに対し
、トンネル半径方向
であるX軸を中心に回動可能な回動部を備え、前記制御手段が、前記回動部の回動角度に応じて前記移動ベースの移動速度を調整し、
前記接続アームが、前記回動部より前記溶着機側に設けた俯仰部であって、前記溶着機を、前記移動ベースに対し、前記X軸と直交するY軸を中心に俯仰可能な俯仰部を備え、
前記俯仰部が、一端付近で前記溶着機を支持し、他端でカウンターウェイトを支持するシーソーアームを備え、
前記回動部が、前記シーソーアームの中央部を前記Y軸方向に軸支し、
前記俯仰部が、前記カウンターウェイトを用いて前記溶着機の位置を調整することを特徴とする、
接合ユニット。
【請求項3】
トンネル工事のシート防水工において、吹付けコンクリート面に敷設する、トンネル軸方向に隣り合う2枚の防水シートの縁部同士を、トンネル周方向に沿って接合する、防水シートの接合ユニットであって、
拝み合わせた前記2枚の防水シートの重合部を両面から押し付けて溶着可能な溶着機と、
アーチ状のガイドレールに沿って移動可能な移動ベースと、
前記溶着機を前記移動ベースに対し相対的に位置調整可能に接続する接続アームと、
前記移動ベースに対する前記溶着機の相対位置の変化に応じて前記移動ベースの移動速度を調整可能とする制御手段と、を備え、
前記接続アームが、前記溶着機を、前記移動ベースに対し
、トンネル半径方向
であるX軸を中心に回動可能な回動部を備え、前記制御手段が、前記回動部の回動角度に応じて前記移動ベースの移動速度を調整し、
前記接続アームが、前記回動部より前記溶着機側に設けた俯仰部であって、前記溶着機を、前記移動ベースに対し、前記X軸と直交するY軸を中心に俯仰可能な俯仰部を備え、
前記接続アームが、前記溶着機を、前記移動ベースに対し、前記移動ベースの移動方向と水平方向に直交する方向に摺動可能な摺動部を備え、
前記回動部が、前記摺動部から上方に突起するシャフトユニットを備え、前記シャフトユニットが、基端ブロックと、先端ブロックと、を有し、前記先端ブロックが、前記基端ブロックに対し前記X軸を中心に回動可能であり、
前記回動部が、前記先端ブロックと連結し、前記溶着機と同期して前記X軸周方向に回動可能なバランスアームを備えることを特徴とする、
接合ユニット。
【請求項4】
前記俯仰部が、さらに一端が前記溶着機を前記Y軸方向に軸支し、他端が前記回動部に前記Y軸方向に軸支されるリンクバーを備え、
前記シーソーアームが先端付近で前記溶着機を前記Y軸方向に軸支し、前記シーソーアーム、前記溶着機、前記リンクバー、及び前記回動部によって、4点リンク構造を構成したことを特徴とする、
請求項2に記載の接合ユニット。
【請求項5】
トンネル工事のシート防水工において、吹付けコンクリート面に敷設する、トンネル軸方向に隣り合う2枚の防水シートの縁部同士を、トンネル周方向に沿って接合する、防水シート接合装置であって、
アーチ形状を呈するガイドレールと、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の接合ユニットと、を備えることを特徴とする、
防水シート接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防水シート接合装置及び接合ユニットに関し、特に防水シートの接合工程における施工品質を向上でき、作業員の肉体的負担を軽減可能な防水シート接合装置及び接合ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事では、トンネルの防水性を確保するため、吹付けコンクリート面に防水シートを敷設するシート防水工が多用されている。
シート防水工では、トンネル軸方向に隣り合う防水シートの縁部を熱溶着機を使って接合する。
引用文献1~3には、2枚の防水シートの縁部を重ねて拝み合わせ、その重合部を熱溶着機の加熱コテで加熱しつつ一対のローラで両面から押圧し、作業員が作業台車を昇降しながら熱溶着機をトンネル周方向に走らせることで、防水シートを連続して溶着する技術が開示されている(
図11)。
ローラの進行速度が速すぎると加熱不足による溶着不良が生じる反面、ローラの進行速度が遅すぎるとシートを溶かすおそれがある。これらはいずれもトンネルの水密性を損なうため、熟練工による作業が必要となる。
引用文献4には、いわゆるI-CONSTRUCTIONの取り組みの一環として、アーチ状のガイドレールに沿ってトンネル周方向に自走しながら、防水シートを連続して溶着する防水シート接合装置が開示されている。
この技術によれば、本体を吹付コンクリート面に沿って円弧状に自走させつつ、本体上に支持した溶着機の位置を微調整することによって、比較的容易に防水シートを接合できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-86688号公報
【文献】特開2014-214423号公報
【文献】特開2001-280096号公報
【文献】特開2021-123946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3の従来技術には以下の課題がある。
<1>作業員が熱溶着機を持って、防水シートの重合部に沿って移動する必要がある。重合部は概ねトンネルの吹付コンクリート面に対応したトンネル横断面の円弧状となるが、この軌道を、作業台車上を昇降しながらローラの進行速度に合わせてなぞる作業は非常に難度が高い。このため作業に熟練を要し、施工品質の維持が難しい。
<2>トンネル側面では、作業台車の上段と下段とで作業員が熱溶着機を受け渡して作業する。これは狭小な足場上での高所作業であり、苦渋作業である。また、上下受け渡し用に複数の作業員が必要となるため人件費が嵩む。
<3>施工品質が作業員の技能や経験に大きく依存するため、施工品質にばらつきが生じやすい。
<4>熱溶着機は小型でも5kg前後の重量がある。これを吹付コンクリート面から所定の距離を保ちつつ移動させる作業は、作業員の腕や肩へ大きな負担となる。また、特に天端付近では狭い空間で上方を見上げながらの作業となるため、不自然な姿勢を強いられ、作業員の肉体的負担が非常に大きい。
<5>ローラの位置合わせに集中しながら作業台車上を昇降するため、足元や周囲に注意が届きにくく、安全上の懸念がある。
【0005】
特許文献4の従来技術には以下の課題がある。
<1>防水シートは吹付けコンクリート面の凹凸に合わせ、たるみを持って展張されていることから、防水シートの重合部は三次元的に波打っている。このため、防水シートのたるみが多い個所では、本体の移動距離に対して溶着機による溶着量が多く、本体の移動速度と溶着機の移動速度を同期させることができない。溶着機が本体から大幅に遅れると、溶着機が本体に引っ張られてローラに負荷がかかることで、溶着にムラが生じ、防水シートの水密性を損なうおそれがある。
<2>本体の移動速度と溶着機の移動速度を同期させるために、常時作業員が付き添って本体の移動速度を微調整する必要がある。このため、特にトンネル側面において、作業員が狭小な足場空間内を上下に移動する必要があり、作業性が十分でない。
【0006】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決可能な防水シート接合装置及び接合ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の接合ユニットは、拝み合わせた2枚の防水シートの重合部を両面から押し付けて溶着可能な溶着機と、アーチ状のガイドレールに沿って移動可能な移動ベースと、溶着機を移動ベースに対し相対的に位置調整可能に接続する接続アームと、移動ベースに対する溶着機の相対位置の変化に応じて移動ベースの移動速度を調整可能とする制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の接合ユニットは、接続アームが、溶着機を、移動ベースに対し、移動ベースの移動方向に対し垂直方向となるX軸を中心に回動可能な回動部を備え、制御手段が、回動部の回動角度に応じて移動ベースの移動速度を調整してもよい。
【0009】
本発明の接合ユニットは、接続アームが、溶着機を、移動ベースに対し、X軸と直交するY軸を中心に俯仰可能な俯仰部を備えていてもよい。
【0010】
本発明の接合ユニットは、接続アームが、溶着機を、移動ベースに対し、移動ベースの移動方向と水平方向に直交する方向に摺動可能な摺動部を備えていてもよい。
【0011】
本発明の接合ユニットは、回動部が、摺動部から上方に突起するシャフトユニットを備え、シャフトユニットが、基端ブロックと、先端ブロックと、を有し、先端ブロックが、基端ブロックに対しX軸を中心に回動可能であってもよい。
【0012】
本発明の接合ユニットは、回動部が、先端ブロックと連結し、溶着機と同期してX軸周方向に回動可能なバランスアームを備えていてもよい。
【0013】
本発明の接合ユニットは、俯仰部が、一端付近で溶着機を支持し、他端でカウンターウェイトを支持するシーソーアームを備え、回動部が、シーソーアームの中央部をY軸方向に軸支し、俯仰部が、カウンターウェイトを用いて溶接機の位置調整してもよい。
【0014】
本発明の接合ユニットは、俯仰部が、さらに一端が溶着機をY軸方向に軸支し、他端が回動部をY軸方向に軸支するリンクバーを備え、シーソーアームが先端付近を溶着機をY軸方向に軸支され、シーソーアーム、溶着機、リンクバー、及び回動部によって、4点リンク構造を構成していてもよい。
【0015】
本発明の防水シート接合装置は、アーチ形状を呈するガイドレールと、接合ユニットと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成より、本発明の防水シート接合装置及び接合ユニットは次の効果の少なくともひとつを備える。
<1>接合ユニットを吹付コンクリート面に沿って設けられたアーチ形状のガイドレール上を自走させることで、半自動的に防水シートを接合できる。このため、施工効率が非常に高い。
<2>作業員が一名で遠隔操作できるため、施工コストを低減することができる。
<3>熟練工である作業員を必要としないため、担当作業員の選定が容易で、かつ施工品質の均一化を図ることができる。
<4>接合ユニットが溶着機を支持して自走するため、作業員が溶着機を取り廻す必要がない。このため、作業員の肉体的負担がない。
<5>作業員が地上から一名で遠隔操作でき、足場内を移動や昇降する必要がないため、作業の安全性が高い。
<6>移動ベースと溶着機の相対位置に応じて移動ベースの移動速度を自動的に調整し、溶着機の移動速度と同期させることができる。これによって、溶着機のローラに負荷をかけず一定速度で溶着することで高い施工品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の防水シート接合装置及び接合ユニットについて詳細に説明する。
なお、本明細書等における「上」「下」とは、ガイドレール上に接合ユニットを配置した状態における接合ユニット側を上とした「上」「下」を、「前」「後」とは、ガイドレール上における接合ユニットの進行方向を前方とした「前」「後」を、「左」「右」とは、接合ユニットの平面視において進行方向に対する「左」「右」を、それぞれ意味する。
【実施例1】
【0019】
[防水シート接合装置]
<1>全体の構成(
図1)
本発明の防水シート接合装置Aは、トンネルの吹付コンクリート面に敷設する防水シートSにおいて、トンネル軸方向に隣接する2枚の防水シートSの縁部をトンネル径方向に沿って連続して接合する装置である。
防水シート接合装置Aは、作業台車Bに搭載するガイドレールA1と、ガイドレールA1上を移動する接合ユニット1と、を少なくとも備える。本例では更にガイドレールに沿って配置したリード材A2を備える。
本例では、作業員がトンネル床面から接合ユニット1の進行を監視し、必要に応じて接合ユニット1を遠隔操作(駆動・停止・速度調整等)する。ただしこれに限らず、完全に自動化してもよい。
【0020】
<2>ガイドレール(
図1)
ガイドレールA1は、接合ユニット1を円弧状の軌道に沿って移動させるレール材である。
ガイドレールA1は、吹付コンクリート面の曲率に対応したアーチ形状を呈する。
本例ではガイドレールA1として、アーチ状に湾曲させた断面H形状の形鋼を採用する。ガイドレールA1の内側には、必要に応じて作業台車B上に設置するための支柱や台座を付設する。
ただし、ガイドレールA1の構造は上記に限らず、強化プラスチック等の素材からなってもよく、3Dプリンターを用いて製作してもよい。また、ガイドレールA1は、作業台車Bの構造の一部として構成してもよい。
【0021】
<3>接合ユニット(
図2)
接合ユニット1は、ガイドレール上10上を移動しながら防水シートSの縁部を接合する装置である。
接合ユニット1は、防水シートSの縁部を接合する溶着機10と、ガイドレールA1上を移動する移動ベース20と、溶着機10を移動ベース20に連結する接続アーム30と、接合ユニット1の移動速度を制御する制御手段40と、を少なくとも備える。
本発明の接合ユニット1は、制御手段40が、移動ベース20に対する溶着機10の相対位置の変化に応じて移動ベース20の移動速度を調整可能に構成した点に一つの特徴を有する。
【0022】
<3.1>溶着機(
図3)
溶着機10は、防水シートSの重合部を接合する熱溶着機である。
溶着機10は、ハウジング11と、2本一対の押圧ローラ12と、発熱体13と、を少なくとも備える。本例では更にハウジング11に付設したガイド材14を備える。
溶着機10は、ハウジング11に内蔵した制御装置によって、押圧ローラ12の回転/停止、押圧ローラ12の回転速度、押圧ローラ12の回転方向、発熱体13の加熱/停止、発熱体13の温度、等を制御することができる。
溶着機10の電源は、バッテリー式であっても外部電源式であってもよい。
【0023】
<3.1.1>押圧ローラ(
図3)
押圧ローラ12は、防水シートSの重合部を挟み付けて溶着接合する部材である。
押圧ローラ12は、略円筒形状を呈し、外周には連続する1本または複数本の非溶着部形成用の溝を有する。
押圧ローラ12は、ハウジング11の上面から2本平行に突出する。
2本の押圧ローラ12の間は、2枚の防水シートSの重合部を前方から後方へ送り出しつつ、両側から挟み付けて溶着可能な程度の間隔を設ける。
【0024】
<3.1.2>発熱体(
図3)
発熱体13は、防水シートSの重合部を加熱して溶融させる部材である。
発熱体13は、熱コテと、熱コテを覆うクサビ状の有孔カバーの組み合わせからなる。
発熱体13は、ハウジング11から上方に向けて付設する。
発熱体13は、一対の押圧ローラ12の前方、すなわち防水シートSの取り込み側に、有孔カバーのクサビ先端側を前方に向けて配置する。
【0025】
<3.1.3>ガイド材(
図3)
ガイド材14は、2枚の防水シートSを重ねて取り込む部材である。
本例ではガイド材14として、ガイドベース14aと、2本のガイドアーム14bと、ガイドアーム14b1本に付き2枚ずつ設けた計4枚のガイド板14cと、ガイド板14c1枚に付き1つずつ設けた計4つの引込ローラ14dと、の組合せを採用する。
ガイドベース14aは、ハウジング11から前方に延出するように連結する。
2本のガイドアーム14bは、ガイドベース14a上に、前方に向かって5~15度程度幅方向に開拡するように延出する。
4枚のガイド板14cは、各ガイドアーム14bの先端側に2枚ずつ設け、ガイドアーム14bの延出方向に防水シートSの通路を確保するように、僅かな間隔を空けて平行配置する。
4つの引込ローラ14dは、各ガイド板14cの内面に上下方向に軸支される。
一対の引込ローラ14dが、小型モータ(不図示)によって後方向に回転することで、2枚のガイド板14c間に防水シートSを引込むことができる。
ガイド材14は、発熱体13の前方、すなわち防水シートSの取り込み側に向けて配置する。
【0026】
<3.2>移動ベース(
図4)
移動ベース20は、ガイドレールA1上を自走する機構である。
移動ベース20は、ベース本体21と、移動装置22と、を少なくとも備える。
本例ではベース本体21が、ガイドレールA1のフランジを両面から挟み込み、ガイドレールA1上から脱落しないように移動をガイドする4対8個のガイドローラ21aを備える。
【0027】
<3.2.1>移動装置(
図4)
本例では移動装置22が、モータ22aと、スプロケット22bと、を備える。
モータ22aは、ベース本体21に固定される。
本例ではモータ22aとして、サーボモータを採用する。
モータ22aの電源は、バッテリー式であっても外部電源式であってもよい。また溶着機10と電源を共用してもよい。
スプロケット22bは、ベース本体21に前後方向に軸支され、モータ22aの駆動に連動して回転する。スプロケット22bの外周には、後述するリード材A2と噛み合わせるための突起を形成する。
【0028】
<3.3>接続アーム(
図5)
接続アーム30は、溶着機10を移動ベース20に対して相対的に位置調整可能に接続する部材である。
接続アーム30は、複数部材の組合せによる多関節構造からなり、少なくとも回動部32を備える。
本例では更に、摺動部31と、俯仰部33と、を備える。
詳細には、ベース本体21の上部に摺動部31を設置し、摺動部31上に回動部32を設置し、回動部32の先端に俯仰部33を設置し、俯仰部33によって溶着機10を支持する。
ただし、接続アーム30の構造は上記に限らない。
【0029】
<3.3.1>摺動部(
図5)
摺動部31は、溶着機10を移動ベース20に対して摺動するように調整する機構である。
摺動部31は、溶着機10を、少なくとも移動ベース20の幅方向に摺動可能な構成とする。
本例では摺動部31として、ベース本体21上に設けた2本のスライドレール31aと、2本のスライドレール31a上に配置したスライドベース31bと、の組合せを採用する。
2本のスライドレール31aは、ベース本体21の上面において、ベース本体21の幅方向である左右方向に平行に配置する。スライドベース31bは、底面にスライドレール31aを収容する2本の平行溝を備える。
2本のスライドレール31aにスライドベース31bの平行溝を係合することで、スライドベース31bをスライドレール31aに沿って摺動して、溶着機10の位置を左右の方向に移動させることができる。
ただし、摺動部31の構造は上記に限らず、例えばスライドレール31aの数は1本または3本以上であってもよい。またスライドベース31bを2本のスライドレール31a間に摺動自在に挟持する構造等であってもよい。
【0030】
<3.3.2>回動部(
図5)
回動部32は、溶着機10を移動ベース20に対して回動するように調整し、防水シートSの溶接ラインへの追従機能を発揮する機構である。
回動部32は、溶着機10を、少なくとも移動ベース20の移動方向に対し垂直方向となるX軸を中心に回動可能な構成とする。ここで「移動方向に対し垂直方向」とは、接合ユニット1を水平面上に設置した状態における鉛直方向を意味する。
本例では回動部32として、スライドベース31b上からX軸方向に突起するシャフトユニット32aを採用する。
シャフトユニット32aは、基端ブロック32bと、先端ブロック32cと、バランスアーム32dと、を少なくとも備える。
基端ブロック32bは、スライドベース31bの上面から上方に突起する。
先端ブロック32cは、基端ブロック32bの先端に、X軸周方向に回動自在に軸支される。
【0031】
<3.3.2.1>バランスアーム(
図5)
バランスアーム32dは、溶着機10との釣り合いを取る部材である。
バランスアーム32dは、一端が先端ブロック32cと連結し、他端がX軸と直交する方向へ延在する。このため、溶着機10と同期して、基端ブロック32bに対しX軸周方向に回動する。
バランスアーム32dの形状と重さは、溶着機10との釣り合いを考慮して適宜設定する。本例ではバランスアーム32dの先端に複数のウェイトを着脱可能に装着している。なお、バランスアーム32dの先端をネジ形状とし、中央の孔内に溝を有するウェイトを用い、当該ウェイトの位置をネジ上で調整し固定するようにしてもよい。
接合ユニット1は、溶着機10を、シャフトユニット32aの支軸からX軸直交方向へ片持ち状に支持する構造であるため、トンネルのスプリングライン(S.L.)より下方において、接合ユニット1がガイドレールA1上を鉛直方向に進行する姿勢では、溶着機10の荷重により先端ブロック32cにX軸周りの回転トルクがかかる。
回動部32にバランスアーム32dを設けることで、バランスアーム32dが溶着機10の荷重と吊り合い、溶着機10が自重によってトンネル床面方向に傾くのを防ぐことができる。
ただし、バランスアーム32dは必須の構成要素ではなく、例えば回動部32内に配置したトーションスプリングや油圧シリンダ等の付勢手段によって溶着機10の傾きを制御してもよい。
【0032】
<3.3.3>俯仰部(
図5)
俯仰部33は、溶着機10を移動ベース20に対して俯仰するように調整する機構である。
俯仰部33は、溶着機10を、X軸と直交するY軸に沿って俯仰可能な構成とする。
本例では俯仰部33として、シーソーアーム33aと、カウンターウェイト33bと、リンクバー33cと、の組合せを採用する。
シーソーアーム33aは、長手方向がY軸方向となるように中央部を先端ブロック32cにより軸支され、先端ブロック32cに対しY軸周りに回動する。
シーソーアーム33aは、一端を溶着機10のハウジング11にY軸方向に軸支し、他端にカウンターウェイト33bを装着する。
カウンターウェイト33bの重さは、溶着機10との釣り合いを考慮して適宜設定する。
リンクバー33cは、シーソーアーム33aの下方に、シーソーアーム33aと略平行に配置する。
本発明の接合ユニット1は、バランスアーム32dとシーソーアーム33aの組合せからなるバランサー機構によって、接合ユニット1の姿勢に関わらず、溶着機10を無重力状態に保持することができる。このため、溶着機10の自重の影響を受けず、防水シートSの接合ラインに追従して溶着することが可能である。
【0033】
<3.3.3.1>リンクバー(
図5)
リンクバー33cは、俯仰部33に4点リンク構造を構成する部材である。
リンクバー33cは、シーソーアーム33aの下方において、一端を溶着機10のハウジング11にY軸方向に軸支し、他端を先端ブロック32cにY軸方向に軸支する。これによって、シーソーアーム33a、ハウジング11、リンクバー33c、及び先端ブロック32cによる4点リンク構造を構成する。
4点リンク構造によって、シーソーアーム33aの仰角・俯角に関わらず先端ブロック32cとハウジング11が平行となるから、溶着機10の押圧ローラ12を常にX軸と平行に維持することができる(
図6)。これによって、防水シートSの溶着の精度を高めることができる。
なお、4点リンク構造は、平行リンクであることが望ましいが、厳密に平行である必要はない。
【0034】
<3.4>制御手段(
図7)
制御手段40は、移動ベース20の移動速度をフィードバック制御する手段である。
本例では制御手段40が、測角センサ41と、制御回路42と、サーボ装置43と、を備える。
本例では制御手段40の内、測角センサ41を回動部32内に、制御回路42とサーボ装置43を移動ベース20にそれぞれ配置する。なお、図面上は各要素間を接続する配線を省略している。
測角センサ41は、回動部32及び制御回路42と電気的に接続し、回動部32の回動角度(回動方向を含む)を検知して、センサ信号として制御回路42へ送信する。
制御回路42は、サーボ装置43と電気的に接続し、測角センサ41からセンサ信号を受信し、サーボ装置43からフィードバックしたモータ22aの回転速度との比較において、センサ信号の測定値に応じた制御信号をサーボ装置43へ送信する。
サーボ装置43は、モータ22aと電気的に接続し、制御回路42から制御信号を受信し、制御信号に従ってモータ22aに流れる電流を制御して、モータ22aの回転速度を調整する。これによって移動ベース20の移動速度を制御することができる。
ただし、制御手段40の構成は上記に限らず、例えばサーボ装置43をインバータ装置としてもよい。また、回動部32の回動角度ではなく、摺動部31の摺動量、又は俯仰部33の俯仰角度に応じて移動ベース20の移動速度を制御してもよい。
移動速度の制御方法の詳細については後述する。
【0035】
<4>リード材(
図2)
リード材A2は、接合ユニット1の移動時にスプロケット22bを噛合わせる線状の部材である。
リード材A2は、接合ユニット1の移動ベース20内を経由させ、ガイドレールA1の長手方向の一端から他端へガイドレールA1のウエイブに沿って上フランジ面に配設される。
本例ではリード材A2として、移動ベース20内でスプロケット22bに噛合させたローラチェーンを採用する。
移動ベース20のスプロケット22bを回転させると、リード材A2がスプロケット22bの突起に噛み込まれ、移動ベース20の一方から他方へと送り出されることで、これを反力として移動ベース20が移動する。
なお、リード材A2はローラチェーンに限らず、移動ベース20の構造と係合しつつ送り出し可能な構造であれば、ローラチェーン以外の伝動用チェーンやワイヤロープ等を採用してもよい。
【0036】
<5>使用方法(
図8)
防水シート接合装置Aの使用方法について以下に説明する。
本例では、先の工程でトンネルの吹付コンクリート面に、トンネル軸方向に隣接して2枚の防水シートS,Sを固定した後、その縁部を接合する場合について説明する。
なお、防水シートS,Sは全面が吹付コンクリート面に展開・固定されている必要はなく、少なくとも接合する縁部付近が吹付コンクリート面に固定されていればよい。
【0037】
<5.1>ガイドレールのセット
ガイドレールA1のアーチが作業台車Bを幅方向に跨ぐように、ガイドレールA1を作業台車B上に搭載する。
作業台車Bを移動して、ガイドレールA1が2枚の防水シートS,Sの接合ラインに沿う位置に設置する。
接合ユニット1をガイドレールA1の一方の基部に、接合ユニット1の前方をトンネルの天端に向けて配置する。
【0038】
<5.2>防水シートの溶着
接続アーム30の回動、俯仰、及び摺動によって溶着機10の三次元位置を調整し、溶着機10を防水シートS,Sの縁部に近接させる。
2枚の防水シートS,Sの縁部を、2本のガイドアーム14bにおける2枚のガイド板14cの間に通し、発熱体13を挟んで2本の押圧ローラ12の間にセットする。
発熱体13を加熱し、防水シートSを温める。
防水シートSが溶融し始めたら、押圧ローラ12を回転させ、防水シートSを押圧ローラ12で両側から挟んで重合させながら後方へ送り出す。
防水シートS,Sの重合部は、発熱体13によって溶融した状態で押圧ローラ12に両側から押し付けられることによって、押圧ローラ12の軌道に沿って連続して融着する。同時に、押圧ローラ12に周設した溝によって、防水シートS,Sの重合部内に連続した非溶着部が形成される。
【0039】
<5.3>移動ベースの駆動
押圧ローラ12による防水シートSの引き込み/溶着の進行と同時に、移動ベース20を駆動させ、接合ユニット1をガイドレールA1に沿って移動させる。
移動に伴い、防水シートSの溶着ラインとガイドレールA1の軌道とにずれが生じた場合、摺動部31によるスライドベース31bの左右移動、回動部32による先端ブロック32cの回動、及び俯仰部33によるシーソーアーム33aの俯仰によって、溶着機10の三次元位置が溶着ラインと一致するように自動調整される。
【0040】
<5.4>移動速度の制御
防水シートのたるみ等によって、溶着機10の移動速度と移動ベース20の移動速度にずれが生じる場合、制御手段40が移動ベース20の移動速度を自動制御する。詳細には以下のように制御する。
【0041】
<5.4.1>溶着が走行に遅れる場合(
図9)
防水シートSのヨレやたわみが多い個所では、移動ベース20の移動距離に対する溶着機10による溶着量が多くなるため、移動ベース20の移動速度V
20に対する溶着機10の進行速度V
10(V
10/V
20)が通常箇所に比べて遅くなる。
このため、移動ベース20上に片持状に支持した溶着機10は、回動部32を中心にX軸周方向(例:平面視時計回り)へ回動する(
図9(a))。
回動による溶着機10の移動ベース20の走行軌道との幅方向のずれは、摺動部31の摺動によって自律的に吸収される。
この場合、制御手段40の測角センサ41が、先端ブロック32cの基端ブロック32bに対する回動角度(+X°)を検知し、センサ信号として制御回路42へ送信する。
制御回路42は、センサ信号の回動角度に応じた制御信号を生成し、サーボ装置43へ送信する。詳細には、制御回路42は、回動角度+X°が正値(+)であることから移動ベース20を「減速」させる必要があると判断し、またX°の数値が大きいほど移動ベース20の移動速度V
20を大きく減速させ、X°の数値が小さくなるように制御信号を設定する。
サーボ装置43は、制御信号に従ってモータ22aに流れる電流を抑制して、モータ22aの回転速度を減速させる。これによって移動ベース20の移動速度V
20と溶着機10の進行速度V
10が対応する(
図9(b))。
【0042】
<5.4.2>溶着が走行に先立つ場合(
図10)
移動ベース20の移動距離に対する溶着機10による溶着量が少ない場合、移動ベース20の移動速度V
20に対する溶着機10の進行速度V
10(V
10/V
20)が通常箇所に比べて早くなる。
このため、移動ベース20上に片持状に支持した溶着機10は、回動部32を中心にX軸の前項の反対方向(例:平面視反時計回り)へ回動する(
図10(a))。
この場合、制御手段40の測角センサ41が、先端ブロック32cの基端ブロック32bに対する回動角度(-X°)を検知し、センサ信号として制御回路42へ送信する。
制御回路42は、回動角度-X°が負値(-)であることから移動ベース20を「加速」させる必要があると判断し、また-X°の数値が大きいほど移動ベース20の移動速度V
20を大きく加速させ-X°の数値が小さくなるように制御信号を設定し、サーボ装置43へ送信する。
サーボ装置43は、制御信号に従ってモータ22aに流れる電流を増加して、モータ22aの回転速度を加速させる。これによって移動ベース20の移動速度V
20と溶着機10の進行速度V
10が対応する(
図10(b))。
【0043】
<5.5>接合の完了
以上の手順により、防水シートS、Sの縁部をトンネル周方向全長にわたって接合する。
接合後、防水シートSの非溶着部に検査針を挿入して圧縮空気を注入し、溶着漏れがないかの加圧検査を行う。
【実施例2】
【0044】
[他の移動方法の例]
接合ユニット1の移動方法はリード材A2を用いる方法に限られない。
例えば、移動ベース20がモータ22aによって回転するタイヤやクローラを備え、ガイドローラ21aによってタイヤやクローラをガイドレールA1の表面に押しつけながら自走してもよい。
要は、接合ユニット1をガイドレールA1に沿って移動させることができればいかなる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
A 防水シート接合装置
A1 ガイドレール
A2 リード材
B 作業台車
S 防水シート
X X軸
Y Y軸
1 接合ユニット
10 溶着機
11 ハウジング
12 押圧ローラ
13 発熱体
14 ガイド材
14a ガイドベース
14b ガイドアーム
14c ガイド板
14d 引込ローラ
20 移動ベース
21 ベース本体
21a ガイドローラ
22 移動装置
22a モータ
22b スプロケット
30 接続アーム
31 摺動部
31a スライドレール
31b スライドベース
32 回動部
32a シャフトユニット
32b 基端ブロック
32c 先端ブロック
32d バランスアーム
33 俯仰部
33a シーソーアーム
33b カウンターウェイト
33c リンクバー
40 制御手段
41 測角センサ
42 制御回路
43 サーボ装置
【要約】
【課題】防水シートの接合工程における施工品質を向上できるとともに作業員の肉体的負担を軽減可能な防水シート接合装置及び接合ユニットを提供すること。
【解決手段】本発明の防水シート接合装置Aは、アーチ形状を呈するガイドレールA1と、接合ユニット1と、を備えることを特徴とする。本発明の接合ユニット1は、拝み合わせた2枚の防水シートSの重合部を両面から押し付けて溶着可能な溶着機10と、アーチ状のガイドレールA2に沿って移動可能な移動ベース20と、溶着機10を移動ベース20に対し相対的に位置調整可能に接続する接続アーム30と、移動ベース20に対する溶着機10の相対位置の変化に応じて移動ベースの20移動速度を調整可能とする制御手段40と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2