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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240510BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240510BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240510BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240510BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/38 110
G06Q50/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023184522
(22)【出願日】2023-10-27
【審査請求日】2023-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520307713
【氏名又は名称】関西電力送配電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 耕治
(72)【発明者】
【氏名】古謝 健子
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112862175(CN,A)
【文献】特開2021-184682(JP,A)
【文献】特開2023-032358(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116308445(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 3/38
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池から供出可能な電力を算出する装置であって、
電力取引市場における取引対象期間を構成可能な1つ以上の時間帯のうち所定の時間帯について、
当該所定の時間帯が始まる以前のタイミングの時刻において前記装置が取得した前記蓄電池のSOC関連情報と、当該時刻から前記所定の時間帯が始まるまでの期間における前記蓄電池の充放電量を示す情報と、前記蓄電池の上限容量情報と、前記蓄電池の充電効率と、前記蓄電池の放電効率と、前記所定の時間帯の長さを示す時間情報とに基づいて、前記蓄電池の前記所定の時間帯における充電電力の基準値を算出する手段と、
少なくとも、前記蓄電池の前記上限容量情報と、前記蓄電池の放電効率と、前記所定の時間帯の長さを示す時間情報と、前記期間の長さを示す時間情報とに基づいて、前記所定の時間帯における前記蓄電池の供出可能電力を算出する手段と、を備える、装置。
【請求項2】
蓄電池から供出可能な電力を算出する装置であって、
電力取引市場における取引対象期間を構成可能な1つ以上の時間帯のうち所定の時間帯について、
当該所定の時間帯が始まる以前のタイミングの時刻において前記装置が取得した前記蓄電池のSOC関連情報と、当該時刻から前記所定の時間帯が始まるまでの期間における前記蓄電池の充放電量を示す情報と、前記蓄電池の上限容量情報と、前記蓄電池の充電効率と、前記蓄電池の放電効率と、前記所定の時間帯の長さを示す時間情報とに基づいて、前記蓄電池の前記所定の時間帯における放電可能電力および充電電力の基準値を算出する手段と、
前記放電可能電力と前記充電電力の基準値に基づいて、前記所定の時間帯における前記蓄電池の供出可能電力を算出する手段と、を備える、装置。
【請求項3】
前記所定の時間帯における充電電力の基準値を算出する手段によって算出される前記充電電力の基準値は、前記蓄電池の定格出力以下の電力を示す、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記所定の時間帯における放電可能電力および充電電力の基準値を算出する手段によって算出される前記放電可能電力および前記充電電力の基準値は、それぞれ、前記蓄電池の定格出力以下の電力を示す、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記蓄電池の供出可能電力を算出する手段によって算出される当該供出可能電力は、前記蓄電池の定格出力以下の電力を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記電力取引市場は、調整力を取引する需給調整市場を含み、
前記期間における前記蓄電池の前記充放電量を示す情報は、当該期間を構成する1つ以上の前記時間帯それぞれについて約定された前記調整力を示す、請求項1または3に記載の装置。
【請求項7】
前記時刻は、前記所定の時間帯の開始前であって、且つ前記所定の時間帯について算出された前記充電電力の基準値を前記電力取引市場に登録する期限よりも前の時刻を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記蓄電池の充放電を制御する指令を出力する指令部を、さらに備え、
前記指令は、前記所定の時間帯において、当該所定の時間帯について算出された前記充電電力の基準値と、前記蓄電池の複数の目的に基づく充放電電力の合算値とを用いて、前記蓄電池の充放電を制御する指令を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記蓄電池の充放電を制御する指令を出力する指令部を、さらに備え、
前記指令は、
前記蓄電池と、送配電事業者によって管理される電力系統を含む送配電設備装置と、の間で電力を遣り取りするための前記充電電力の基準値と調整電力の合算値、およびアービトラージ向けの充放電電力の指令を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
プロセッサが実施する方法であって、
電力取引市場における取引対象期間を構成可能な1つ以上の時間帯のうち所定の時間帯について、
当該所定の時間帯が始まる以前のタイミングの時刻において取得された蓄電池のSOC関連情報と、当該時刻から前記所定の時間帯が始まるまでの期間における前記蓄電池の充放電量を示す情報と、前記蓄電池の上限容量情報と、前記蓄電池の充電効率と、前記蓄電池の放電効率と、前記所定の時間帯の長さを示す時間情報とに基づいて、前記蓄電池の前記所定の時間帯における充電電力の基準値を算出するステップと、
少なくとも、前記蓄電池の上限容量情報と、前記蓄電池の放電効率と、前記所定の時間帯の長さを示す時間情報と、前記期間の長さを示す時間情報とに基づいて、前記所定の時間帯における前記蓄電池の供出可能電力を算出するステップと、を備える、方法。
【請求項11】
プロセッサが実施する方法であって、
電力取引市場における取引対象期間を構成可能な1つ以上の時間帯のうち所定の時間帯について、
当該所定の時間帯が始まる以前のタイミングの時刻において取得された蓄電池のSOC関連情報と、当該時刻から前記所定の時間帯が始まるまでの期間における前記蓄電池の充放電量を示す情報と、前記蓄電池の上限容量情報と、前記蓄電池の充電効率と、前記蓄電池の放電効率と、前記所定の時間帯の長さを示す時間情報とに基づいて、前記蓄電池の前記所定の時間帯における放電可能電力および充電電力の基準値を算出するステップと、
前記放電可能電力と前記充電電力の基準値に基づいて、前記所定の時間帯における前記蓄電池の供出可能電力を算出するステップと、を備える、方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法をプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電池の電力を算出する技術に関し、特に、電力取引のために蓄電池から供出可能な電力を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-105755号公報(特許文献1)は、需給調整市場の売り入札者である調整力供出事業者の事務所等に備えられる売り入札者端末装置から、約定のために、需給調整力の供出可能量と需給調整力の供出可能時間帯を含む売り入札データが電力取引約定計算装置に転送されることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-105755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
需給調整市場等の電力取引市場に蓄電池の充放電を利用して需給調整力の電力量を供出する場合、事前に予測した所内負荷や充電計画を元に供出可能量を決定し電力市場に入札する。このような電力取引市場では、実際に需給が実施される時点である実需給断面に至らないと、約定した入札量の内、調整指令によって要求される供出電力量がどれくらいであるか分からないため、蓄電池の回復充電を可能にし、また連続的な入札を可能なようにするために、供出可能電力を含む入札量を低く抑えた入札しかできないとの課題があった。特許文献1は、事前に算出された供出可能量で需給調整市場に入札する方法を記載するが、当該課題を解消する技術は提案していない。
【0005】
本開示は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電池から電力取引市場へ供出可能な電力を増加させることが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示のある局面に係る、蓄電池から供出可能な電力を算出する装置は、電力取引市場における取引対象期間を構成可能な1つ以上の時間帯のうち所定の時間帯について、当該所定の時間帯が始まる以前のタイミングの時刻において装置が取得した蓄電池のSOC関連情報と、当該時刻から所定の時間帯が始まるまでの期間における蓄電池の充放電量を示す情報と、蓄電池の上限容量情報と、蓄電池の充電効率と、蓄電池の放電効率と、所定の時間帯の長さを示す時間情報とに基づいて、蓄電池の所定の時間帯における基準値を算出する手段と、少なくとも、蓄電池の上限容量情報と、蓄電池の放電効率と、所定の時間帯の長さを示す時間情報と、期間の長さを示す時間情報とに基づいて、所定の時間帯における蓄電池の供出可能電力を算出する手段と、を備える。
【0007】
この開示の他の局面に係る、蓄電池から供出可能な電力を算出する装置は、電力取引市場における取引対象期間を構成可能な1つ以上の時間帯のうち所定の時間帯について、当該所定の時間帯が始まる以前のタイミングの時刻において装置が取得した蓄電池のSOC関連情報と、当該時刻から所定の時間帯が始まるまでの期間における蓄電池の充放電量を示す情報と、蓄電池の上限容量情報と、蓄電池の充電効率と、蓄電池の放電効率と、所定の時間帯の長さを示す時間情報とに基づいて、蓄電池の所定の時間帯における放電可能電力および基準値を算出する手段と、放電可能電力と基準値に基づいて、所定の時間帯における蓄電池の供出可能電力を算出する手段と、を備える。
【0008】
上述の開示において、所定の時間帯における基準値を算出する手段によって算出される基準値は、蓄電池の定格出力以下の電力を示す。
【0009】
上述の開示において、所定の時間帯における放電可能電力および基準値を算出する手段によって算出される放電可能電力および基準値は、それぞれ、蓄電池の定格出力以下の電力を示す。
【0010】
上述の開示において、蓄電池の供出可能電力を算出する手段によって算出される当該供出可能電力は、蓄電池の定格出力以下の電力を示す。
【0011】
上述の開示において、電力取引市場は、調整力を取引する需給調整市場を含み、期間における蓄電池の充放電量を示す情報は、当該期間を構成する1つ以上の時間帯それぞれについて約定された調整力を示す。
【0012】
上述の開示において、時刻は、所定の時間帯の開始前であって、且つ所定の時間帯について算出された基準値を電力取引市場に登録する期限よりも前の時刻を示す。
【0013】
上述の開示において、装置は、蓄電池の充放電を制御する指令を出力する指令部を、さらに備え、指令は、所定の時間帯において、当該所定の時間帯について算出された基準値と、蓄電池の複数の目的に基づく充放電電力の合算値とを用いて、蓄電池の充放電を制御する指令を含む。
【0014】
上述の開示において、装置は、蓄電池の充放電を制御する指令を出力する指令部を、さらに備え、この指令は、蓄電池と、送配電事業者によって管理される電力系統を含む送配電設備装置と、の間で電力を遣り取りするための基準値と調整電力の合算値、およびアービトラージ向けの充放電電力の指令を含む蓄電池と送配電事業者によって管理される電力系統を含む送配電設備装置との間で基準値と供出可能電力の電力を遣り取りするための指令を含む。
【0015】
本開示の他の局面に係る方法は、プロセッサが実施する方法であって、電力取引市場における取引対象期間を構成可能な1つ以上の時間帯のうち所定の時間帯について、当該所定の時間帯が始まる以前のタイミングの時刻において取得された蓄電池のSOC関連情報と、当該時刻から所定の時間帯が始まるまでの期間における蓄電池の充放電量を示す情報と、蓄電池の上限容量情報と、蓄電池の充電効率と、蓄電池の放電効率と、所定の時間帯の長さを示す時間情報とに基づいて、蓄電池の所定の時間帯における基準値を算出するステップと、少なくとも、蓄電池の上限容量情報と、蓄電池の放電効率と、所定の時間帯の長さを示す時間情報と、期間の長さを示す時間情報とに基づいて、所定の時間帯における蓄電池の供出可能電力を算出するステップと、を備える。
【0016】
本開示の他の局面に係る方法は、プロセッサが実施する方法であって、電力取引市場における取引対象期間を構成可能な1つ以上の時間帯のうち所定の時間帯について、当該所定の時間帯が始まる以前のタイミングの時刻において取得された蓄電池のSOC関連情報と、当該時刻から所定の時間帯が始まるまでの期間における蓄電池の充放電量を示す情報と、蓄電池の上限容量情報と、蓄電池の充電効率と、蓄電池の放電効率と、所定の時間帯の長さを示す時間情報とに基づいて、蓄電池の所定の時間帯における放電可能電力および基準値を算出するステップと、放電可能電力と基準値に基づいて、所定の時間帯における蓄電池の供出可能電力を算出するステップと、を備える。
【0017】
本開示の他の局面では上記に述べた方法をプロセッサに実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、蓄電池を利用した電力取引市場への供出可能電力を増加させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態に係る分散電源群の制御システム構成の一例を説明する図である。
図2】本実施の形態に係るネットワークシステムを模式的に示す図である。
図3】サーバ10のハードウェア構成を模式的に示す図である。
図4】上位制御装置30のハードウェア構成を模式的に示す図である。
図5】本実施の形態に係る機能構成を模式的に示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る取引情報195の一例を模式的に示す図である。
図7】本実施の形態による基準値と供出可能電力の算出の概念を模式的に示す図である。
図8図1の蓄電システムにおける充電効率と放電効率を説明する図である。
図9図7の放電可能電力An+4Refの算出を模式的に示す図である。
図10図7の充電可能電力Bn+4Refの算出を模式的に示す図である。
図11】本発明の実施の形態に係る供出可能電力の算出手順を模式的に示す図である。
図12】本発明の実施の形態に係る供出可能電力を解析的に導出する手順を模式的に示す図である。
図13】本発明の実施の形態に係る時間ΔTの変更を説明する図である。
図14】本発明の実施の形態に係る売り入札のパターンの一例を示す図である。
図15図14で示した入札パターンに対応した電力取引市場における処理フローを示す図である。
図16図14で示した入札パターンに対応した電力取引市場における処理フローを示す図である。
図17】本発明の実施の形態に係るアグリゲータにおける入札計画の一例を示す図である。
図18】本発明の実施の形態に係るアグリゲータにおける入札計画の一例を示す図である。
図19】本発明の実施の形態に係るアグリゲータにおける入札計画の一例を示す図である。
図20】本実施の形態に係る処理のフローチャートの一例を示す図である。
図21】本実施の形態に係る処理のフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
<用語>
本開示に用いられる主な用語について説明する。
【0022】
「調整力」は、送配電事業者が電力供給区域の需給バランス調整を行うために必要とする需給調整の能力であり、調整力は需給調整市場から調達される。
【0023】
そして市場から調達された調整力を実際に電力系統へ供出させるために発電所や蓄電所に指令を送る。この指令を「調整指令」と呼ぶ。つまり、調整指令は、送配電事業者が調整力を需給バランス調整のために利用するための指令である。
【0024】
「アグリゲーション」は、蓄電池等の調整力を提供可能な1つ以上のリソースを束ねて電力取引のために一括して制御することを指す。
【0025】
「アグリゲータ」は、アグリゲーションを実施する主体を指す。
【0026】
「ブロック」は、電力取引市場における取引対象期間を構成可能な単位時間帯である。ブロックは取引する際に管理される時間帯であって所定長さを有する。
【0027】
本実施の形態では、電力取引は、入札、落札および約定を含む。需給調整市場において、需要家または蓄電所は調整力(供出可能電力(W))の売り入札をし、送配電事業者等は調整力の買い入札をし、取引市場において両入札について落札されて両者間で約定がなされると、取引が成立する。このような取引において扱われる取引情報は、例えば、供出可能電力を超えない電力(W)を示す需要家または蓄電所からの入札量と、当該入札量が示す電力を超えない電力を示す落札量と、当該落札量が示す電力を超えない電力を示す約定量との情報を含む。取引情報は、入札量として、さらに、送配電事業者からの買い入札量も含まれるが、本開示では入札量として、主に、需要家または蓄電所からの売り入札量を示す。また、ブロックでは、蓄電池について、当該ブロックについて登録された基準値に従う充電と、調整指令に応じた放電とを行う実需給が実施される。
【0028】
「残容量」は、ある時間帯における蓄電池の放電可能容量(Wh:ワットアワー)を指す。
【0029】
「SOC(State Of Charge)」は、蓄電池の充電状態を表す指標である。当該指標は例えば“残容量”を含む。
【0030】
「GC(ゲートクローズ)」は、ブロックの実需給の開始前の時間であって当該ブロックの基準値を市場取引サーバに登録する期限に相当する。
【0031】
「供出可能電力」は、ある時間帯において蓄電池から需給調整市場に入札可能な放電可能電力(W)を指す。
【0032】
「SOC関連情報」は、蓄電池の充電状態を表す指標(SOC)の具体例をまとめたものである。SOC関連情報は、例えば、蓄電池の最大の放電可能容量(Wh)と、ある時点における放電可能容量(Wh)とから算出された算出値(%)、ある時点における放電可能容量(Wh)である残容量のみを示す値、少なくとも過去の充放電電力(W)と、充放電電流(A:アンペア)と、充放電電圧(V:ボルト)と、経過時間と、過去の充放電回数と、蓄電池の電池の劣化情報等の複数のパラメータのうちの2つ以上のパラメータまたは全てのパラメータを用いた所定演算により算出された値等を含む。
【0033】
「基準値」は、需給調整市場において調整力としての放電電力を計測する際の基準となる充電電力であり、ブロックまたは所定時間帯(例えば30分)において一定値(W)にしなければならない充電電力を示す。加えて、基準値にはエネルギーマネジメントによる充電電力等の他の使用用途による充電電力も含めることができる。なお、充電を全く行わない状況での基準値は0であり、基準値は0でも良い。
【0034】
「基準値計画」は、需給調整市場で取引対象となる期間(ブロック)における蓄電池の基準値に基づく充電計画値(W)または「計画出力値」(W)と同義である。
【0035】
「上限容量情報」は、蓄電池の最大の放電可能容量(Wh)を示す情報であって、放電可能な最大の残容量または定格容量(Wh)を示す情報を含む。これに限定されず、約定出力(W)×ブロック時間(hour)を示す情報を含んでもよい。
【0036】
「上限出力情報」は、蓄電池の最大の放電可能電力(W)、または蓄電池の最大の充電可能電力(W)を示す情報であって、放電可能な最大の電力や充電可能な最大の電力、または定格出力を示す情報を含むが、これに限定されず、ブロックについて約定出力(W)を示す情報を含んでもよい。
【0037】
<開示の技術>
蓄電池等の電源を用いて需給調整市場等の電力取引市場で電力を充放電する場合は、蓄電池の充電計画等を元に、供出可能電力が事前に算出されて電力市場等に入札される。需給調整市場においては、事前に基準値計画(エネマネ計画や充電計画)を需給調整市場のシステムに登録する必要があるが、実需給に至る直前のGCまでにこの基準値計画の値は変更することができる。
【0038】
このような取引の背景のもと、本開示では、実需給の1時間以上前の直前の断面において基準値計画を変更することを前提として、需給調整市場への入札量(供出可能電力)を計算する方法を示す。また、変更後の基準値に基づき蓄電池等の電源の充電を制御する。その結果、事前に予測した(又は想定した)基準値計画に基づいた入札を行うよりも、想定の範囲内で変更する基準値に基づき蓄電池等の電源を制御することに基づいた入札を行う方が可能な入札量を増やすことができる。
【0039】
このように、実需給に至る直前に基準値計画等を変更することを前提として電力市場に入札できる量を増やす仕組みを以下に説明する。
【0040】
また、以下では、本開示が適用される電力取引市場として、需給調整市場と卸電力市場を示すが、これら電力取引市場に限定されず容量市場等様々な市場に適用してもよい。このような電力取引市場で約定される調整力には、例えば、需給調整市場における、一次調整力、二次調整力(1)、二次調整力(2)、三次調整力(1)、三次調整力(2)、及びこれらの複合商品や、余力活用電源契約での余力活用分の調整力、容量市場における、発動指令電力 、卸電力市場における買電電力(=アービトラージ充電、基準値)、売電電力(=アービトラージ放電)、などがある。
【0041】
<システム>
図1は、本実施の形態に係る分散電源群の制御システム構成の一例を説明する図である。図1に示すシステムは、VPP(Virtual Power Plant)システムである。VPPシステムは、多数のエネルギーリソースを束ね、これらエネルギーリソースを制御することによって1つの発電所のように機能させる仕組みである。本実施の形態では、需要家または蓄電所の設備40に備えられた充放電可能な蓄電池50は、需給調整市場に調整力を提供する「電力調整リソース」を構成する。需要家または蓄電所の設備40を、以下では、需要家設備40と呼ぶ。
【0042】
需要家設備40は、下位制御装置20と、蓄電池50およびPCS(Power Conditioning System)23を有する蓄電システム27と、計測器22と、分電盤25と、負荷や他電源等の設備24と、上位制御装置30等と通信するためのゲートウェイ21とを備える。分電盤25には、蓄電システム27および計測器22を介して蓄電池50が接続されるとともに、設備24が接続される。また、分電盤25には、需要家設備40の外部にある計測器26を介して送配電事業者が管理する送配電のための電力系統100が接続される。計測器22と26は、電力を計測するスマートメータ等で構成される。計測器26は、需要家設備40と電力系統100との間で遣り取りする電力を計測し、蓄電システム27の直上に接続された計測器22は、蓄電池50の入出力電力を計測する。下位制御装置20は、計測器22および26からの計測値に基づき電力量を導出する等の各種処理を実施する。
【0043】
蓄電システム27のPCS23は、下位制御装置20からの指令に従って蓄電池50の充電の開始/終了及び充電電力と放電の開始/終了及び放電電力とを制御する。充電において、PCS23は、電力系統100から計測器26、分電盤25および計測器22を介して供給された交流電力を直流電力に変換する。放電において、PCS23は、蓄電池50から供給された直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力は計測器22、分電盤25および計測器26を介して電力系統100に出力される。
【0044】
需要家設備40は、SOC関連情報を取得する。ここでは、SOC関連情報として、典型的には、蓄電池50の残容量が用いられる。蓄電池50の電圧または電流は、蓄電池50の残容量と相関関係を有することに着目し、図示しない検出回路は蓄電池50の電圧または電流を測定し、測定された電圧または電流の累積情報と上記の相関関係とに基づき残容量を検出する。なお、残容量の検出方法はこれに限定されない。
【0045】
図1のシステムは、市場取引サーバ10Aと、送配電事業者側の中給サーバ10B(「中給」は“中央給電指令所”の略)および指令サーバ10Cと、上位制御装置30と、下位制御装置20を有した複数の需要家設備40を備える。なお、これら装置は、例えば、専用線や閉域網、インターネットを含む有線または無線の通信ネットワークを介して互いに通信する。システムが備える需要家設備40は複数台に限定されず1台以上であればよい。また、システムでは、複数の需要家設備40は電力調整リソースを互いに束ねられたアグリゲーションを構成する。これら複数の需要家設備40のうちの代表の下位制御装置20または上位制御装置30がアグリゲーションの調整力を管理するアグリゲータを担う。または、各需要家設備40の下位制御装置20が自己の調整力リソース(蓄電池50)を管理するアグリゲータとして動作してもよい。本実施の形態では、例えば、上位制御装置30が各需要家設備40の下位制御装置20と通信することにより、複数の需要家設備40は電力調整リソースが互いに束ねられたアグリゲーションのアグリゲータを担う。
【0046】
中給サーバ10Bおよび指令サーバ10Cを備える事業者は、送配電事業者であるが、上位制御装置30を備える事業者は、発電事業者または小売電気事業者等であってもよく、これらを兼ねた事業者であってもよい。これら上位制御装置30を備える事業者は、需要家設備40を有する需要家等とVPPのサービス契約を締結する。そして、各需要家設備40の下位制御装置20は、上位制御装置30を介して、蓄電池50の充放電を制御する。
【0047】
電力市場の取引では、取引対象となる所定長さを有した単位時間帯であるブロックについて、市場で扱う商品の取引を行う。各市場サーバ10Dは、需給調整市場のサーバおよび卸電力市場のサーバ等の各種市場向けのサーバを含む。各市場サーバ10Dは、例えば、買い入札(例えば、送配電事業者からの買い入札)と、アグリゲータが保有する市場取引サーバ10Aからの売り入札(例えば、アグリゲータが契約した需要家からの調整力供出量を背景とした売り入札や、発電所からの売り入札)とを受信し、両者を合致させて約定を成立させる。送配電事業者の中給サーバ10Bおよび指令サーバ10Cは、ブロックにおいて需給バランスをとるために、当該ブロックについて約定された供出可能電力に従った調整力の調整指令を発電所や、アグリゲータの上位制御装置30へ送信する。
【0048】
需給調整市場のサーバは、後述する一次調整力、二次調整力(1)、二次調整力(2)、三次調整力(1)、三次調整力(2)等に適用することができる。なお、二次調整力(1)、二次調整力(2)、三次調整力(1)および三次調整力(2)の名称は需給調整市場の運用メニューの正式名称に対応し、これらにおける(1)および(2)は、当該正式名称ではそれぞれ、丸付き数字1および丸付き数字2で表記されるが、本明細書では丸付き数字を用いずに(1)と(2)で示す。
【0049】
卸電力市場のサーバは、アービトラージ(Arbitrage)取引向けのスポット市場(=1日前市場と同義)や、時間前市場を構成する。時間前市場では、実需給の直前まで、電力売電、買電、基準値向けの電力買電の取引を実施することができる。
【0050】
上位制御装置30は、各種サーバと通信するための通信回路を有したI/F(Interfaceの略)と、需要家設備40の下位制御装置20と通信するための通信回路を有したI/Fを含む。上位制御装置30は、中給サーバ10Bまたは指令サーバ10Cから受信した調整指令に基づき、各需要家設備40の下位制御装置20に制御指令を生成し送信する。下位制御装置20は、制御指令に従って蓄電池50の放電を制御する。このような蓄電池50からの放電による電力は、需給調整市場の調整力として電力系統100に供給される。これにより、送配電事業者は需給調整市場を介した調整力の約定を背景として発電所や需要家から調整力を調達でき、その結果、需給バランスを維持することができる。
【0051】
図1中の実線の矢印線は、有線または無線の通信線(通信ネットワーク)を示し、破線の矢印線は電力線を示す。太い矢印線は、電力取引における市場取引サーバ10A、上位制御装置30および需要家設備40(需要家設備40内の装置)の間の情報の主な伝送ルートを示す。
【0052】
<ネットワーク構成と装置構成>
図2は、本実施の形態に係るネットワークシステムを模式的に示す図である。図2の(A)は、電力市場における取引情報を通信するためのネットワークシステムを模式的に例示し、図2の(B)は、調整指令を含む需給調整のための情報を通信するためのネットワークシステムを模式的に例示する。
【0053】
図2の(A)の取引情報の通信ネットワークシステムでは、取引のためのサーバ(市場取引サーバ10Aおよび各市場サーバ10D)と、上位制御装置30とは有線または無線のネットワーク1Aに接続される。ネットワーク1Aに接続された上位制御装置30は、各需要家設備40の下位制御装置20と通信するとともに、ネットワーク1Aを介し取引のためのサーバと通信する。これら装置間では、取引情報は、例えばCSV(Comma Separated Values)ファイルの形式で転送される。このような取引情報は、各市場サーバ10DのHDD(Hard Disk Drive)154に格納される各電力取引市場についての電力取引に関する情報であって、需要家に提供可能なサービス情報164を含む。
【0054】
図2の(B)の需給調整のための調整指令を含む情報の通信ネットワークシステムでは、調整指令を送信するサーバ(中給サーバ10Bまたは指令サーバ10C)と、上位制御装置30とは専用回線であるネットワーク1Bに接続される。ネットワーク1Bに接続された上位制御装置30は、各需要家設備40の下位制御装置20と通信するとともに、ネットワーク1Bを介し調整指令のサーバと通信する。
【0055】
本実施の形態では、上位制御装置30は、例えばクラウドベースのサーバに実装されるが、実装形式はこれに限定されない。また、図2では、市場取引サーバ10A、下位制御装置20および上位制御装置30は、デスクトップ型のPC(Personal Computer)に実装される形式で示されるが、これら装置の実装形式はデスクトップ型PCに限定されない。例えば、下位制御装置20は、携帯型の情報処理端末(例えば、ラップトップ型のPC、タブレット端末、またはスマートフォン等)であってもよい。以下の説明では、市場取引サーバ10A、中給サーバ10B、指令サーバ10C、および各市場サーバ10Dについて共通する説明では、サーバ10と総称する。
【0056】
図3は、サーバ10のハードウェア構成を模式的に示す図である。図3に示されるように、サーバ10は、主たる構成要素として、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ151と、データを不揮発的に格納するROM(Read Only Memory)152と、プロセッサ151によるプログラムの実行時の作業領域を含むとともに、プログラム実行により生成されたデータ、又は入力されたデータを揮発的に格納する領域等を含むRAM(Random Access Memory)153と、プログラムおよびデータを不揮発的に格納するHDD(Hard Disk Drive)154と、通信IF(Interface)155と、サーバ10に対する操作を受付ける入力装置156と、情報を表示するディスプレイ157と、電源回路158と、タイマ162と、外部デバイスを通信可能に接続するためのI/O(Input/Output)部163と、記憶媒体161についてデータの読み書きするR/W(Read/Write)部160を含む。これら構成要素はデータバスによって相互に接続されている。
【0057】
入力装置156とディスプレイ157は、一体化されてタッチパネル159のようなデバイスとして提供されてもよい。通信IF155は、ネットワークとサーバ10の間における通信を制御するためのインターフェイス回路を含む。
【0058】
サーバ10における処理は、各ハードウェアおよびプロセッサ151により実行されるソフトウェア(プログラム)によって実現される。このようなソフトウェアは、HDD154に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、記憶媒体161に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。また、ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供される場合もある。このようなソフトウェアは、R/W部160により記憶媒体161から読取られて、あるいは、通信IF155を介してダウンロードされた後、HDD154に一旦格納される。そのソフトウェアは、プロセッサ151によってHDD154から読出され、RAM153に実行可能なプログラムの形式で格納される。プロセッサ151は、そのプログラムを実行する。
【0059】
図4は、上位制御装置30のハードウェア構成を模式的に示す図である。図4に示されるように、上位制御装置30は、主たる構成要素として、プログラムを実行するCPU等のプロセッサ171と、データを不揮発的に格納するROM172と、プロセッサ171によるプログラムの実行時の作業領域を含むとともに、プログラム実行により生成されたデータ、又は入力されたデータを揮発的に格納する領域等を含むRAM173と、プログラムおよびデータを不揮発的に格納するHDD174と、通信IF175と、上位制御装置30に対する操作を受付ける入力装置176と、情報を表示するディスプレイ177と、電源回路178と、タイマ182と、記憶媒体181についてデータの読み書きするR/W部180を含む。これら構成要素はデータバスによって相互に接続されている。
【0060】
入力装置176とディスプレイ177は、一体化されてタッチパネル179のようなデバイスとして提供されてもよい。通信IF175は、上位制御装置30とGWの間における通信を制御するためのインターフェイス回路を含む。なお、上位制御装置30は、入力装置176とディスプレイ177を備えない構成であってもよい。そのような構成の場合、上位制御装置30は、外部装置に通信IF175を介して情報を転送して外部装置に情報を表示させる。このような表示のための情報は、後述するGUI部65からの表示制御データを含む。また、上位制御装置30は、当該装置に対する操作情報を外部装置から通信IF175を介して受信する。このような外部装置は、下位制御装置20を含み得る。
【0061】
上位制御装置30における処理は、各ハードウェアおよびプロセッサ171により実行されるソフトウェア(プログラム)によって実現される。このようなソフトウェアは、HDD174に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、記憶媒体181に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。また、ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供される場合もある。このようなソフトウェアは、R/W部180により記憶媒体181から読取られて、あるいは、通信IF175を介してダウンロードされた後、HDD174に一旦格納される。そのソフトウェアは、プロセッサ171によってHDD174から読出され、RAM173に実行可能なプログラムの形式で格納される。プロセッサ171は、そのプログラムを実行する。
【0062】
HDD174は、OS(Operating System)等のシステムプログラム190と、システムプログラム190の下で実行されるアプリケーションプログラム197と、蓄電池50の属性および充放電に関する属性を含む属性情報194と、電力取引に関する取引情報195とを含む。アプリケーションプログラム197は、電力取引のための取引プログラムおよび蓄電池50の充放電を制御するための制御プログラム等を含む。
【0063】
属性情報194は、蓄電池50の上限容量情報、劣化情報、定格容量および定格出力等を含む。属性情報194は、さらに、後述するAD変換効率ηおよびDA効率ηdを含む。
【0064】
取引情報195は、未約定のブロック、入札したブロックおよび約定したブロックを識別する情報を含む。また、取引情報195は、入札したブロックについての供出可能電力と入札量(=入札電力)の情報、および約定したブロックについての落札量(=約定量、約定電力)の情報を含む。取引情報195は、さらに、各ブロックについて基準値および基準値計画の情報、蓄電池50の充放電の状態(後述する「Arb放電」(W)、「Arb充電」(W)、「調整力供出」(W)等)の情報を含む。この充放電の状態は、充放電量を示す情報と関連しており、充放電の状態には、蓄電池50が充放電を停止している状態(すなわち、充電も放電(調整力供出)のいずれも実施していない状態)も含まれ得る。本実施の形態では、説明を簡単にするために、蓄電池50の充放電の状態は「Arb放電」、「Arb充電」および「調整力供出」のいずれかであるとする。
【0065】
各市場サーバ10DのHDD154のサービス情報164の少なくとも一部が上位制御装置30に送信されることによって、HDD174に取引情報195が格納(更新)される。
【0066】
図3図4に示されるサーバ10と上位制御装置30を構成する各構成要素は、一般的な情報処理装置として提供され得る。したがって、本発明の本質的な部分は、RAM153(173)、HDD154(174)、記憶媒体161(181)に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、下位制御装置20のハードウェア構成は、図4に示す上位制御装置30のハードウェア構成に類似するから、ここでは説明は繰り返さない。
【0067】
図3の記憶媒体161および図4の記憶媒体181は、揮発性記憶媒体または不揮発性記憶媒体を含み、例えば、CF(登録商標、Compact Flash)、SD(登録商標、Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、またはフレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記憶媒体、またはCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)等の光学記憶媒体を含む。
【0068】
<機能構成>
図5は、本実施の形態に係る機能構成を模式的に示す図である。図6は、本発明の実施の形態に係る取引情報195の一例を模式的に示す図である。図5には、上位制御装置30がアプリケーションプログラム197を実行することによって実現される主な機能を示す。これら機能は、下位制御装置20または市場取引サーバ10Aにおいて実装されてもよい。
【0069】
図5を参照して上位制御装置30は、残容量取得部51と、供出可能電力を決定する決定部52と、制御指令を出力して蓄電池50の充放電を制御する制御指令部60と、I/Fを介した通信を制御する通信制御部61と、属性情報194を管理する属性管理部62と、取引情報195の格納または更新等を管理する取引管理部63と、スケジュール管理部64と、上位制御装置30に外部とのインターフェイスを提供するGUI(Graphical User Interface)部65とを含む。GUI部65は、取引情報195を含む各種情報を可視化するための表示制御データを生成する。表示制御データに従ってディスプレイ157が制御されることにより、情報は視覚可能に出力される。
【0070】
決定部52は、蓄電池50による基準値とともに供出可能電力を取得する供出可能電力取得部54と、これら取得された基準値と供出可能電力を格納または取引のために送信する出力部55とを含む。供出可能電力取得部54は、蓄電池50について放電可能電力を算出する放電可能電力算出部541と、蓄電池50について充電可能出電力を算出する充電可能電力算出部542と、蓄電池50について供出可能電力を算出する供出可能電力算出部543とを含む。充電可能電力算出部542が算出する充電可能電力は基準値に相当する。
【0071】
制御指令部60は、蓄電池50と送配電事業者によって管理される電力系統100を含む送配電設備装置との間で各ブロックについて基準値の電力と調整電力、及びアービトラージ向けの充電電力や放電電力を遣り取りするための制御指令を下位制御装置20に出力し、当該下位制御装置20に制御指令に従って蓄電池50の充放電を実施させる。
【0072】
スケジュール管理部64は、各ブロックについて、取引に関するスケジュールを管理する。スケジュールは、各ブロックについて、入札期限を含む入札に関するスケジュールと、GCを含むスケジュールとを含む。取引に関するスケジュールは、取引情報195とともに管理されてもよい。
【0073】
ここで、本実施の形態では、需要家は、需給調整市場と卸電力市場の両方において電力取引も実施することができる。卸電力市場では、市場価格に合わせて蓄電池50を充電または放電するアービトラージ取引が実施される。このようなアービトラージ取引では、蓄電池50の状態は放電状態(Arb放電)、充電状態(Arb充電)、Arb充電およびArb放電のいずれも実施しない状態を含み得る。図6に示す取引情報195は、各ブロックBn(n=1,2,3・・・)について、当該ブロックにおける蓄電池50の充放電の状態を含む。蓄電池50の状態は、Arb放電、Arb充電および調整力供出の3種類の状態を含むが、状態の種類はこれに限定されない。例えば、状態の種類には、蓄電池50が充放電を実施しない状態が含まれてもよい。
【0074】
通信制御部61は、市場取引サーバ10A等の取引装置が属するネットワーク1Aを介し、取引情報を通信する。この通信において、通信制御部61は、取引対象の所定ブロックBについて決定された基準値の情報を、所定ブロックBの時間帯が開始する前の予め定められた時刻(GC)迄に取引装置に送信する機能と、ブロックBについての入札期限の前に算出された供出可能電力に基づいた入札量(=入札電力)を含む入札情報を入札期限までに取引装置に送信する機能と、ブロックBの開始までに当該入札情報が示す入札量に応じた落札量(=約定量、約定電力)を示す約定情報を取引装置から受信する機能等を有する。
【0075】
また、通信制御部61は、中給サーバ10Bと指令サーバ10Cが属するネットワーク1Bを介し、需給調整市場の約定情報に従った調整指令を受信する機能と、蓄電池50の充放電を制御する指令を下位制御装置20に送信する機能とを有する。この制御指令は、受信した調整指令に基づく制御指令を含む。また、通信制御部61は、各市場サーバ10D、市場取引サーバ10Aが属するネットワーク1Aを介し、卸電力市場の約定情報に従った買電電力、売電電力に関する情報を受信する機能と、この売買電力情報に基づいて算出された、蓄電池50の充放電を制御する指令を下位制御装置20に送信する機能とを有する。
【0076】
<基準値と供出可能電力の算出の概念>
本実施の形態では、上位制御装置30は、アグリゲータとして動作して、複数の下位制御装置20の蓄電池50を1つの調整力リソースとして扱い、当該調整力リソースについて、充放電によるブロック毎の基準値と供出可能電力を算出する。また、上位制御装置30は、各下位制御装置20の蓄電池50を、個別の調整力リソースとして扱い、各蓄電池50についてブロック毎の基準値と供出可能電力を算出するとしてもよい。
【0077】
以下に説明する概念は、需給調整市場で運用され得る一次調整力、二次調整力(1)、二次調整力(2)、三次調整力(1)、三次調整力(2)等に適用することができる。なお、二次調整力(1)、二次調整力(2)、三次調整力(1)および三次調整力(2)の名称は需給調整市場の運用メニューの正式名称に対応し、これらにおける(1)および(2)は、当該正式名称ではそれぞれ、丸付き数字1および丸付き数字2で表記されるが、本明細書では丸付き数字を用いずに(1)と(2)で示す。
【0078】
(基準値と供出可能電力を算出する時期)
需給調整市場における入札の対象となる所定ブロック(目標ブロック)について供出可能電力を算出するケースを説明する。本実施の形態では、所定ブロックの需給調整市場への入札電力は供出可能電力を超えないように決定されるので、所定ブロックの供出可能電力は、入札期限の前に算出される。入札電力は算出された供出可能電力以下の値を示す。入札電力を上限として需給調整市場側で決定する落札電力が増えるほど需要家側の収入が増えるため、所定ブロックにおいて蓄電池50からの放電電力について需給調整市場取引とは異なる他の用途がない場合は、所定ブロックの入札電力=所定ブロックの供出可能電力となる。
【0079】
所定ブロックの基準値を算出する時刻を時刻T1とする(厳密には、基準値を算出するために必要なSOC情報等の値の確定時刻がT1であり、基準値そのものを算出する時刻は、T1より後の時刻になる)。時刻T1は、所定ブロックの実需給開始前の時刻であって、所定ブロックの基準値の登録期限であるGCよりも前の時刻を示す。時刻T1を含む時間帯のブロックは、所定ブロックよりも先行するブロックである。時刻T1のブロックから所定ブロック開始までの各ブロックについて、蓄電池50の状態を示す情報(蓄電池の充放電量を示す情報と関連)は、各市場サーバ10Dから上位制御装置30に転送されて取引情報195としてHDD174に格納される。
【0080】
このような前提において、所定ブロックの供出可能電力は、所定ブロックのGCの前の時刻T1よりも前の時間において算出される。この前の時間は、運用される調整力の種類毎の入札期限よりも前の任意の時間である。より具体的には、三次調整力(2)の場合は前日入札のため所定ブロック開始日の前日の14時よりも前のタイミング、および一次調整力~三次調整力(1)の場合は週間取引のため所定ブロックの1週間前のタイミングが、それぞれ、入札期限となる。このような入札期限よりも前の任意の時間において所定ブロックの供出可能電力が算出される。
【0081】
このように、上位制御装置30は、入札の対象となる所定ブロックについて、まず、供出可能電力を算出し、その後の入札期限までに、市場取引サーバ10Aを介して、市場サーバ10Dに入札し、その後、時刻T1において所定ブロックについて基準値を算出し、その後のGC迄に当該基準値を市場取引サーバ10Aを介して、市場サーバ10Dに登録(送信)する。
【0082】
図7は、本実施の形態による基準値と供出可能電力の算出の概念を模式的に示す図である。図7では、時系列に連続したブロックB(n=1,2,3,・・・)の各ブロックの時間帯の長さの時間tと、ブロックBの基準値の更新周期Tが示される。図7では、更新周期Tは時間tに一致するケースを表しているが、Tとtは必ずしも一致するわけではない。
【0083】
時間tは、計画出力値(基準値)が一定となる最小時間単位であって、例えばt=30分とする。なお、更新周期T=3時間および時間t=30分の場合、計算の簡単のためには(t=30分×6個のブロック)に相当する時間3時間の間は、計画出力値(基準値)は変わらないとする方が基準値を算出しやすいが、理論的にはt毎に基準値の値を変えても良い。各ブロックBのGCはブロックの時間帯開始(実需給開始)の1時間前であり、このGCよりも前において、各ブロックBの基準値ならびに供出可能電力が算出される。但し、T毎にしか基準値は更新できないことに注意が必要である。時系列で連続したブロックBでは、nの値が小さいほど先行するブロックを示し、nの値が大きいほど後行するブロックを示す。
【0084】
基準値が一定となる最小時間単位tは任意の長さの時間であって30分に限定されず、例えば15分、10分、5分等に変更されても、本概念を適用できる。
【0085】
図7では、入札の対象となる所定ブロックとしてブロックBn+4が示される。図7の時刻T1は、ブロックBn+4実需給開始から所定長さの時間ΔTだけ遡った時刻を示す。時刻T1における蓄電池50のSOC関連情報である残容量Bn-1SOCが示される。時間ΔTは2時間(ブロックの4個の長さの時間)である。時間ΔTは変更可能であり、これに伴い、時間ΔT内のブロックの個数が変わる。なお、時刻T1は、時間における一点を指すが、所定長さの比較的短い時間の概念も含み得る。
【0086】
図7では、ブロックBn+4実需給開始前の時刻T1~T1+tの時刻の間の任意の時間(図7における黒丸の時刻)において、ブロックBn+4について供出可能電力Bn+4Bidの予測値を算出する。より具体的には、ブロックBn+4について、当該ブロックBn+4の基準値Bn+4Refを算出し、GC前に変更することを前提に、ブロックBn+4についてGCより前の任意の時間(例えば、図7における黒丸の時刻)において、供出可能電力Bn+4Bidの予測値を算出する。図7では、時刻T1は例えばブロックBの開始時刻にあたる。図7では、ブロックBn-1~ブロックBn+3の各ブロックは、既に何らか需給調整市場の商品や卸電力市場の商品等落札済み、又は何も約定されていないブロックである。
【0087】
本実施の形態では、所定ブロックの供出可能電力の更新タイミングは時間ΔTで決定されるから、誤差71は時間ΔTの期間が長いほど、または、時間ΔTにおける約定出力(ブロックBの供出可能電力BBid)が大きいほど大きくなる。誤差71は、時間ΔTにおける調整指令の回数が多いほど、または、調整指令が要求する調整力が大きいほど、大きくなる。図7の時間ΔTにおける右上がりのグラフは、時間ΔTにおいて、調整指令が全く出力されず、且つ各ブロックBで計画された基準値BRefの充電が実施されてSOCが増加する、いわゆるSOC上昇シナリオを示す。対照的に右下がりのグラフは、時間ΔTにおいて、調整指令によって約定分の最大電力が供出されて、且つ各ブロックBで計画された基準値BRefの充電が実施されてSOCが減少する、いわゆるSOC下降シナリオを示す。
【0088】
このように時間ΔTにおいて上記の2つのシナリオが想定されるので、時間ΔTの終了時(すなわち所定ブロックBn+4の開始時)ではSOCについて誤差71が生じ、この誤差71を蓄電池50の定格容量Xから差し引いた分がブロックBn+4における供出可能量(調整力として供出可能な電力量)となる。ブロックBn+4における供出可能電力(調整力)は、式(4)に示すように、放電可能電力(An+4Ref)の絶対値と基準値(Bn+4Ref)に基づいて(例えば、放電可能電力(An+4Ref)の絶対値を基準値(Bn+4Ref)に加算して)算出される。
【0089】
本実施の形態では、後述するAD変換効率(=充電効率)ηcおよびDA変換効率(=放電効率)ηdを用いて、蓄電池50内部におけるSOCを扱い、また、ブロックBnの放電可能電力ARef(負値)と充電可能電力(または基準値)BRef(正値)を扱う。
【0090】
(充放電効率)
図8は、図1の蓄電システムにおける充電効率と放電効率を説明する図である。図8では、充電効率および放電効率としてAD変換効率ηcおよびDA変換効率ηdが示される。
【0091】
蓄電システム27は、PCS(PCS:Power conditioning system)23と蓄電池50とを含む。蓄電システム27は複数の蓄電池50を含んでもよい。蓄電池50は、直流電力を充放電する二次電池であり、蓄電池の種類は限定されない。例えば、蓄電池としては、リチウムイオン電池またはナトリウム硫黄電池等を含む。蓄電池は、単体の二次電池に限定されず、複数の二次電池からなるセットであってもよい。
【0092】
PCS23は、電力系統100と接続するノードを含むAC端と、蓄電池50と接続するノードを含むDC端とを含む。PCS23はAC(交流)電力とDC(直流)電力を相互に変換し出力する変換器231を含む。変換器231は、電力系統100からAC端が受けたAC電力をDC電力に変換し、変換後のDC電力を、DC端を介して蓄電池50に出力する。蓄電池50は、PCS23からのDC電力によって充電される。変換器231は、DC端が受けた蓄電池50からのDC電力をAC電力に変換し、変換後のAC電力を、AC端を介して電力系統100に出力する。AC端が受けるAC電力は例えば家庭用の200V(ボルト)およびDC端が受ける電力は蓄電池50の仕様に応じた、例えば数V~数十Vである。
【0093】
変換器231に固有の属性である出力電力/入力電力で算出される変換効率(0%<変換効率≦100%)は、AC電力をDC電力に変換する場合のAD変換効率ηcと、DC電力をAC電力に変換する場合のDA変換効率ηdとを含む。
【0094】
(放電可能電力An+4Refの算出)
図9は、図7の放電可能電力An+4Refの算出を模式的に示す図である。図9では、時刻T1においてブロックBn+4の放電可能電力An+4Refは、時間ΔT内の各ブロックBの時間tにおける、DC端の蓄電残量(SOC)の増減量を用いて算出する。より具体的には、各ブロックBにおける蓄電池50の状態(Arb放電、Arb充電、調整力供出のいずれか)に応じて、最もSOCが減少する状況を想定し、放電可能電力An+4Refは図9に示す手順で導出される。
【0095】
より具体的には、放電可能電力算出部541は、取引情報195から、時間ΔT内の各ブロックBについて蓄電池50の状態(Arb放電、Arb充電、調整力供出のいずれかの状態と、対応する約定電力)を取得し、各ブロックBについて当該ブロックの状態に基づきSOCの増減量を算出する。SOCの増減量は、ブロックBの状態がArb放電であれば図9の式91に従い算出され、Arb充電であれば図9の式92に従い算出され、調整力供出であれば図9の式93に従い算出される。なお、放電可能電力ARefは負値であるから式91に従う算出値も負値となる。また、式93の(BBid-BRef)の項は正値を想定する(この値を正値にするために、約定電力BBidは、BRefよりも大きくなるよう約定することが必要である点に注意。)。図9のブロックBについてのβn項は、式91、92および93のいずれかで定義される。
【0096】
放電可能電力算出部541は、AC端の出力(放電可能電力)をAn+4Refの絶対値として、蓄電池50内のSOC変化を算出する方程式を図9の式94として導出する。式94の右辺の第2項は、ΔT時間における蓄電池50の充放電量を示す情報であって、当該ΔT時間を構成する1つ以上のブロックBnそれぞれについて約定された調整力、Arb放電またはArb充電の電力を示す。なお未約定のブロックが混在する場合は、当該ブロックではSOC変化が無いとすればよい。
【0097】
放電可能電力算出部541は、式94から放電可能電力(An+4Refの絶対値)を算出する式(1)を導出する。式(1)に従う算出値(An+4Refの絶対値)は定格出力を超えるケースが想定され得るので、放電可能電力算出部541は、式(1)に従う算出値(An+4Refの絶対値)を蓄電池50の定格出力と比較し、比較結果に基づき、小さい方を放電可能電力An+4Refと決定(算出)する。
【0098】
(充電可能電力Bn+4Refの算出)
図10は、図7の充電可能電力Bn+4Refの算出を模式的に示す図である。図10では、時刻T1においてブロックBn+4の充電可能電力Bn+4Refは、時間ΔT内の各ブロックBの時間tにおける、DC端の蓄電残量(SOC)の増減量を用いて算出する。より具体的には、各ブロックBにおける蓄電池50の状態(Arb放電、Arb充電、調整力供出のいずれか)に応じて、最もSOCが増大する状況を想定し、充電可能電力Bn+4Refは図10に示す手順で導出される。充電可能電力Bn+4Refは、ブロックBn+4の基準値に相当する。
【0099】
より具体的には、充電可能電力算出部542は、取引情報195から、時間ΔT内の各ブロックBについて蓄電池50の状態(Arb放電、Arb充電、調整力供出のいずれかの状態と、対応する約定電力)を取得し、各ブロックBについて当該ブロックの状態に基づきSOCの増減量を算出する。SOCの増減量は、ブロックBの状態がArb放電であれば図10の式91に従い算出され、Arb充電または調整力供出であれば図10の式92に従い算出される。なお、放電可能電力ARefは負値であるから式91に従う算出値も負値となる。また、最もSOCが増大することを想定するため、調整力供出の状態ではBBid=0とする。したがって、調整力供出時は、SOCの増減量は充電可能電力BRefのみを扱う式92に従い算出することができる。図10のブロックBについてのαn項は、式91および92のいずれかで定義される。
【0100】
充電可能電力算出部542は、AC端の出力(充電可能電力)をBn+4Refとして、蓄電池50内のSOC変化を算出する方程式を図10の式95として導出する。式95の右辺の括弧内の第2項は、ΔT時間における蓄電池50の充放電量を示す情報であって、当該ΔT時間を構成する1つ以上のブロックBnそれぞれについて約定された調整力、Arb放電またはArb充電の電力を示す。なお未約定のブロックが混在する場合は、当該ブロックではSOC変化が無いとすればよい。
【0101】
充電可能電力算出部542は、式95から充電可能電力(Bn+4Ref)を算出する式(2)を導出する。式(2)に従う算出値(Bn+4Ref)は定格出力を超えるケースが想定され得るので、充電可能電力算出部542は、式(2)に従う算出値(Bn+4Ref)を蓄電池50の定格出力と比較し、比較結果に基づき、小さい方を充電可能電力Bn+4Refと決定(算出)する。
【0102】
(供出可能電力Bn+4Bidの決定)
図11は、本発明の実施の形態に係る供出可能電力の算出手順を模式的に示す図である。図11の(A)は、図7に示したSOCの変化について、上昇シナリオと下降シナリオを示し(B)は算出手順を示す。ブロックBn+4の供出可能電力は、供出可能電力Bn+4Bidとして示される。
【0103】
ブロックBn+4の調整力の供出可能電力は、ブロックBn+4の開始時点における充電可能電力Bn+4Refを当該ブロックBn+4において計画出力値(基準値)として充電しながら調整力を供出する、として算出する。したがって、供出可能電力算出部543は、図11の式(4)に示すように、充電可能電力Bn+4Refに放電可能電力An+4Refの絶対値を足した量を算出し、この算出値と定格出力の両者を比較し、比較の結果両者のうちの小さい方を、ブロックBn+4の調整力の供出可能電力Bn+4Bidと決定する。供出可能電力Bn+4Bidは、所定ブロックBn+4の約定出力に対応し得る。
【0104】
(供出可能電力の解析的な算出)
上記に述べた手順では、所定ブロックBn+4についての充電可能電力BRefと放電可能電力ARefとを算出(確定)できる時刻を、所定ブロックBn+4の時間ΔT前のブロックBの時刻T1としている。なぜなら、算出に用いるSOCは時刻T1において確定(取得)できるからである。発明者らは、このような時期的な制限がなく、所定ブロックの供出可能電力を算出(確定)できるとの知見を得た。この算出の手順を図12に示す。
【0105】
図12は、本発明の実施の形態に係る供出可能電力を解析的に導出する手順を模式的に示す図である。このような解析導出においては、各ブロックBついて、全ブロックで調整力を約定している、すなわち各ブロックBの充放電の状態は「調整力供出」を示す。したがって、放電可能電力ARefを算出するためのβn項は、図12の式121((-1/ηd)(BBid-BRef)×t))で示されて、充電可能電力BRefを算出するためのα項は、図12の式122(ηcBRef×t)で示される。なお、式121の約定された調整力の(BBid-BRef)は、ブロックBについての供出可能電力と基準値の電力との差に相当する正値である。
【0106】
所定ブロックBn+4についての供出可能電力Bn+4Bidを算出する図12の式123の右辺におけるβn項およびαn項に、それぞれ、式121および式122を代入する。このような代入後の式123から解(供出可能電力Bn+4Bid)を算出する。算出においては、ブロックBについて変数nがどのような値を示すとしても(いずれのブロックBについても)同じ供出可能電力BBidになるものとして解を求める、すなわち供出可能電力BBidの収束値を算出する。例えば、Bn+4Bid=Bn+3Bid=Bn+2Bid=Bn+1Bid=BBid=Sとして式123を解くと、値Sは、図12の式124で示される。
【0107】
式124の右辺の(ηη-1)は負値であるので、式124の右辺の第2項は負値となる。ここで、右辺のBn-1SOCが(Bn-1SOC=X)であるとき、当該第2項は、当該第2項が取り得る値のうち、その絶対値が最も大きな負値となるので、値S(供出可能電力S)は、値Sが取り得る値のうち最も小さい値となる。この関係に基づき、式124のBn-1SOCにXを代入して式124を解くと、図12の式(5)が導出される。
【0108】
式(5)はブロックBについてのSOC情報、BRef、ARef、BBidの変数は含まず、式(5)における変数(周期T、定格容量Xおよび変換効率ηd)はブロックBによらず固定値である。よって、式(5)で算出される値S(供出可能電力S)は、時間ΔTの値の変化のみに依存して、すなわち時刻T1のみに依存して変化する。例えば、時刻T1が所定ブロックBn+4の開始時間に近いほど(時間ΔTが小さいほど)供出可能電力Sは大きくなる。
【0109】
このように式(5)から算出される値Sによって、時刻T1はSOCが確定している時刻であるとの制限を受けることなく、所定ブロックについて市場に入札できる調整力(供出可能電力)が示される。供出可能電力算出部543は、所定ブロックBn+4の供出可能電力Bn+4Bidを式(5)に従って算出することができる。なお、Sの値は、Xの容量の大小によっても左右されることが、式(5)を見て明らかであるが、蓄電池の定格容量Xが大きい場合、Sの値が定格出力よりも大きくなる場合も想定される。その場合は、供出可能電力は定格出力にすればよい。例えば、式(5)の算出値が定格出力と比較され、比較の結果に基づき、小さい方が最終的に値S(供出可能電力S)に設定される。このように、値S(供出可能電力S)は定格出力以下の電力を示すよう設定される。
【0110】
また、発明者らは、供出可能電力についての次の知見も得た。より具体的には、ブロックBn-1、B、Bn+1、Bn+2およびBn+3の各ブロッの状態はArb充電またはArb放電である場合は、ブロックBn+4の開始時刻でのSOC値は、より正確に推定可能(確定可能)であり、ブロックBn+4だけなら確実に定格容量X分の電力を供出可能になる。しかし、ブロックBn+4において、調整指令の回数または調整指令で要求される実際の調整力が不明であるから、ブロックBn+5以降では供出可能電力は大幅に減少し、その減少の程度が不明になる。したがって、所定ブロックの供出可能電力は、式(5)で算出される値Sとすることが望ましい。
【0111】
(時間ΔTの変更)
図13は、本発明の実施の形態に係る時間ΔT及びブロックの単位時間Tの変更を説明する図である。上記に述べた処理では、所定ブロック(目標ブロック)の基準値を更新する時期である時間ΔTを、図13のパターン1に示すようなデフォルト値(2時間)として、所定ブロックBn+4をターゲットに値が算出される。
【0112】
現在、市場取引システムの入札または落札の処理性能は向上し、例えば処理は自動化されてGCの直前まで処理を実施できる。したがって、時間ΔTは、このような処理性能の向上に伴って可変のパラメータとして扱うことができる。例えば、時間ΔTは、1時間前~n時間前まで、30分刻みで変更可能である。時間ΔTの変更に応じて、時間tを積算する範囲(期間の長さ)は変更される。
【0113】
調整力の供出可能電力Sを大きくするには、式(5)によれば、時間ΔTは短い方が良い。つまり、時間ΔTが長くなればなるほど調整力の供出可能電力Sは小さくなる。例えば、図13のパターン2は時間ΔTが1.5時間を示し、パターン1のΔT=2時間に比べて短くなっている。もし目標とするブロックの調整力供出時間T(=基準値を更新できる周期)が、パターン1と同じ30分ならば(図13では3時間だが)、調整力の供出可能電力Sを大きくすることができる。
【0114】
また、目標とする所定ブロックにおける調整力供出の時間T(=基準値を更新できる周期)も、市場の要件に応じて、変化するパラメータである。時間Tが長い時間であるほど、式(5)に従って算出される調整力の供出可能電力Sは小さくなる。図13のパターン2は、時間Tは3時間を示し、パターン1の30分に比べて非常に長くなっており、ΔTはパターン1に比べて短い1.5時間だが、パターン2の調整力の供出可能電力Sは、トータルではパターン1に比べて小さくなる。
【0115】
(入札のパターン)
図14は、本発明の実施の形態に係る売り入札のパターンの一例を示す図である。図14では、需要家または蓄電所は、ブロックB~B56を入札対象期間として売り入札を実施する。1ブロックあたりの時間T=3時間、即ち基準値を更新できる周期は3時間である。図15図16は、図14で示した入札パターンに対応した電力取引市場における処理フローを示す図である。
【0116】
図14において、1週間前の入札では、市場価格予測で価格が高いと考えられる商品(一次、二次(1)と(2)、三次(1)のいずれかをブロック毎に決定)と該当ブロックの組合わせに対して、需要家または蓄電所は、式(5)で算出された供出可能電力S以下での入札を実施する(図15のステップT1)。入札に対して約定されると、当該ブロックの商品が確定する。図14の約定済ブロック141は、このような確定したブロックを示す。約定済ブロック141は、例えば、ブロックB~B10、ブロックB13~B27およびブロックB34~B44を示す。
【0117】
次に、前日の入札では、需要家または蓄電所は、上記週間前の入札で未約定のブロック142に対して、三次(2)の市場価格予測を行い、価格が高いと考えられるブロックに対して、式(5)で算出された供出可能電力S以下での入札を行う(図15のステップT2)。そして時間前の入札のブロック143で基準値分を買電、価格に魅力があれば、式(1)または式(2)を用いて算出した充電量または放電量でアービトラージの充放電の入札を実施し(図16のステップT4)、式(3)を用いて算出した基準値で入札を行う(図16のステップT6)。図16のステップT3とT5では、上位制御装置30は、下位制御装置20から30分毎に蓄電池50のSOC情報を受信する。なお、SOC情報を受信する間隔は、30分に限定されず、30分よりも短い時間であってもよい。
【0118】
(アグリゲータにおける入札計画)
図17図19は、本発明の実施の形態に係るアグリゲータにおける入札計画の一例を示す図である。図17では、前日10時より前の卸電力市場のスポット市場へ入札可能な時刻断面では入札は困難である。より具体的には、図17のブロック1が週間商品で約定されている場合、ブロック3の開始時点でのSOCは不明であり、同様にブロック5と6についても売買電可能な電力量の値(wh)が不明であるので、入札可能な電力量を確定することができないからである。なお、前日14時より前の三次(2)へ入札可能な時刻断面では、卸電力市場の時間前市場への基準値の買電を、実施の形態で算出される供出可能電力を前提に入札する場合、ブロック3、5および6について三次(2)への入札が可能である。当日の実需給よりΔT時間前の卸電力市場の時間前市場への入札可能な時刻断面では、式(1)で算出される放電可能電力に基づいた売電入札、および式(2)で算出される充電可能電力に基づいた買電入札が可能である。
【0119】
図18では、本実施の形態で示した手順で算出される充放電量を用いて、前日10時より前のスポット市場での入札も想定した入札計画が示される。より具体的には、スポット市場入札を可能にするために、入札ブロックの前の時間帯において、時間前市場で式(1)の放電可能電力または式(2)の充電可能電力に基づく売買電の実施(SOC制御のため:売電微調整、買電微調整)を計画する。この想定により、前日のスポット市場における価格が高い時間帯、安い時間帯で集中的に「買電」または「売電」することが可能となる。
【0120】
図19では、一次調整力での調整力(供出可能電力)の供出は、ブロック開始前とブロック終了後とで、SOCの値はほぼ同じという前提で、スポット市場への入札が実施される。より具体的には、図19のスポット市場での「買電」の時間帯では、SOCは例えば10%→90%に上昇させておく。また、図19のスポット市場での「売電」の時間帯では、SOCは90%→10%に減少させておく。ただし、実際は、このような一次調整力の想定(=一次調整力の供出開始前と開始後でSOCがほぼ一定になるという想定)はできず、ブロック開始前後でSOCの値は不明であり、更に、蓄電池50には充放電損失もあり、SOCは小さくなる傾向がある。
【0121】
<制御指令部>
上位制御装置30の制御指令部60は、蓄電池50の充放電を制御する制御指令を出力する。制御指令部60は、例えば、蓄電池50について検出される残容量を下位制御装置20から受信し、受信した残容量を目標値(=目標とする蓄電池の残容量)と比較し、それらを一致させるような制御量(充放電電力)を決定し、決定した制御量で充放電を指示する制御指令を出力する。このような制御量は、例えばフィードバック制御を利用して決定される。
【0122】
また、制御指令部60は、所定ブロックが始まる以前の時間帯において、蓄電池50の複数の目的(=需給調整市場における、一次調整力、二次調整力(1)、二次調整力(2)、三次調整力(1)、三次調整力(2)、及びこれらの複合商品等各種市場商品)に基づく充放電電力の合算値を算出し、算出した合算値を用いて、蓄電池50が枯渇または満充電とならないよう充放電を制御する制御指令を出力する。
【0123】
また、制御指令部60は、所定ブロックにおいて、当該所定ブロックについて算出された基準値と蓄電池50の複数の目的に基づく充放電電力の合算値とを用いて、蓄電池50が枯渇または満充電とならないよう充放電を制御する制御指令を出力する。
【0124】
上記に述べた複数の目的は、蓄電池50の利用目的であって、例えば蓄電池50の充放電を図1の負荷や他電源等の設備24との間の電力として遣り取りする目的(=ピークカットやピークシフト、再生可能エネルギー発電の余剰電力の吸収、発電出力の平準化等、エネルギーマネジメントの目的)を含む。さらなる利用目的としては、需給調整市場以外の卸電力市場(例:買電電力(=アービトラージ充電)、売電電力(=アービトラージ放電))や相対契約等各種契約に向けた電力の遣り取りを含む。例えば、卸電力市場の売電で約定した場合、容量市場の発動指令電源として落札された場合、および余力活用に関する契約を属地一般送配電事業者と締結した場合等では、蓄電池50を放電させて電力を提供する、もしくは、充電量を減らす等して蓄電池50が利用される。複数の目的には、これらに限定されず、他の目的が含まれてもよい。
【0125】
下位制御装置20は蓄電池50の複数の利用目的のそれぞれについて、蓄電池50の放電や充電の電力を計測し、計測電力の情報を上位制御装置30に転送する。上位制御装置30は、下位制御装置20から受信する各利用目的の電力から、複数の目的に基づく充放電電力の合算値を算出できる。例えば、制御指令部60は、合算値(kWh)と定格容量Xの差を算出し、差が一定(目標)になるように、例えばフィードバック制御によって充放電の電力(kW)を決定し、決定した電力の充放電の指令を出力する。
【0126】
<フローチャート>
図20図21は、本実施の形態に係る処理のフローチャートの一例を示す図である。このフローチャートに従う処理は、上位制御装置30のプロセッサ171がアプリケーションプログラム197を実行することにより実現される。フローチャートを参照して、図7または図11の(A)で示した所定ブロックに入札するケースを説明する。
【0127】
図20において、プロセッサ171は、連続したブロックのうち入札対象の所定ブロックについて供出可能電力を算出する時間、すなわち時刻T1になったかを判定する(ステップS20)。時刻T1は、例えば取引情報195が示す入札のスケジュールから取得される。プロセッサ171は、時刻T1をタイマ182が計時する時間と比較し、比較結果に基づき、タイマ182が時刻T1を計時したか否かを判定する。
【0128】
プロセッサ171は、時刻T1に至っていないと判定すると(ステップS20でNO)、ステップS20を繰り返すが、時刻T1に至ったと判定すると(ステップS20でYES)、時間情報を取得する(ステップS21)。この時間情報は、取引情報195から取得される時間ΔT、時間tおよび周期Tを含む。プロセッサ171は、時刻T1が属するブロックBとして、ブロックBから所定ブロック(目標ブロック)Bn+4までの各ブロックのブロック番号を取得する(ステップS22)。ブロックの番号は、時間ΔTおよび時間tに基づき取得される。例えば、ブロックB、Bn+1、Bn+2、Bn+3、Bn+4が取得される。ブロックBn-1~ブロックBn+3の各ブロックは落札済み(約定済み)または無約定のブロックである。
【0129】
プロセッサ171は、取引情報195から、各ブロックB、Bn+1、Bn+2、Bn+3について、状態に応じた充放電量(Arb放電量、Arb充電量、調整力供出量、無約定の場合は充放電量=0)を取得する(ステップS24)。また、プロセッサ171は、属性情報194から、充放電に関する属性(定格容量X、定格出力、AD変換効率ηおよびDA変換効率ηd)を取得する(ステップS25)。
【0130】
プロセッサ171は、供出可能電力取得部54として、所定ブロックBn+4の供出可能電力Bn+4Bidを取得する(ステップS26)。より具体的には、プロセッサ171は、放電可能電力算出部541として、所定ブロックBn+4の放電可能電力An+4Refを算出し(ステップS27)、充電可能電力算出部542として、所定ブロックBn+4の充電可能電力Bn+4Refを決定(算出)する(ステップS30)。
【0131】
ステップS27では、より具体的には、放電可能電力算出部541は、各ブロックB、Bn+1、Bn+2、Bn+3についての充放電電力量のβn項を算出し(ステップS28)、βn項を用いて、所定ブロックBn+4について放電可能電力An+4Refを(式1、式上は絶対値だが簡単のため省略)に従い算出する(ステップS29)。放電可能電力算出部541は、(式1)で算出した放電可能電力を定格出力と比較し、小さい方を最終的に放電可能電力An+4Refに設定する(ステップS29a)。
【0132】
ステップS30では、より具体的には、充電可能電力算出部542は、各ブロックB、Bn+1、Bn+2、Bn+3についての充放電電力量のα項を算出し(ステップS31)、α項を用いて、所定ブロックBn+4について充電可能電力Bn+4Ref(または基準値)を(式2)(または(式3))に従い算出する(ステップS32)。充電可能電力算出部542は、充電可能電力(または基準値)を定格出力と比較し、小さい方を最終的に充電可能電力Bn+4Refに設定する(ステップS33)。
【0133】
供出可能電力取得部54は、放電可能電力An+4Refの絶対値と充電可能電力Bn+4Refの和を算出し、算出した値と定格出力とを比較し、比較結果に基づき、小さい方を供出可能電力Bn+4Bidに設定する(ステップS34)。
【0134】
このように、放電可能電力An+4Refの絶対値、充電可能電力Bn+4Refおよび供出可能電力Bn+4Bidは、それぞれ、対応の算出値が定格出力を超える場合は、定格出力以下の電力を示すよう設定される。
【0135】
図21では、供出可能電力として、解析的に導出される供出可能電力Sを用いる処理が示される。図21では、プロセッサ171は、供出可能電力Sを算出するべき予め定められた時刻(例:市場取引サーバ10Aの市場入札に使用するため、供出可能電力Sの値を送信する時刻)に至っているか否かを判定し(ステップS40)、予め定められた時刻に至っていない場合は(ステップS40でNO)、ステップS40を繰り返す。プロセッサ171は、予め定められた時刻に至ったと判定すると(ステップS40でYES)、時間情報(時間ΔTおよび周期T)と属性(定格容量XおよびDA変換効率ηd、これらXやηdの値は経年劣化や蓄電システムの状態に応じて変動する可能性があり固定値ではなく変動値となる)の情報を取得し(ステップS41)、取得された情報が示す値を式(5)に設定し、式5に従って供出可能電力Sを算出する(ステップS42)。
【0136】
本実施の形態で示された上位制御装置30の機能は、下位制御装置20または市場取引サーバ10Aに搭載されて、下位制御装置20または市場取引サーバ10Aによって、上位制御装置30の処理が実施されてもよい。
【0137】
この実施の形態では、定格出力は、蓄電システム27の状態(周囲温度を含む環境や劣化等の条件)に応じて変化する可能性がある。つまり固定値ではない。よって、その時々に蓄電池50について計測(検出)される上限出力情報を用いても良い。また、SOC関連情報や充放電効率については、必ず誤差を含むため、この誤差は、供出可能電力の算出誤差につながる。充放電効率は、充電や放電の実施コンディション(SOCのどの値のときの充放電か、等)によっても変化する。また、SOCは、充放電を繰り返すうちに計測誤差が大きくなる。よって、充放電効率は平均値を算出できるようにして、その値を使う等、SOC関連情報は、SOC値の蓄積誤差をリセットする蓄電システム27の運用を適用する等、これら誤差を考慮した上で、より誤差を低減する仕組みを適用して、これらパラメータ値を利用する必要がある。
【0138】
<利点>
従来は、電源(蓄電池等)を用いて、需給調整市場等の電力市場の各商品に対する約定を前提に、電力を充放電する場合には、SOC関連情報の予測を用いた基準値計画に基づき入札量を決定する技術が提案されていた。
【0139】
これに対して、本実施の形態では、所定ブロックBn+4の実需給開始前のGCより前の時刻T1において、実需給直前の放電可能電力ARefと充電可能電力BRef(基準値Bn+4Ref)が算出される。この放電可能電力ARefと充電可能電力BRefは、時刻T1~所定ブロックBn+4が開始するまでのΔT時間内の1つ以上のブロックBのそれぞれについての商品の約定に従う充放電状態(Arb放電、Arb充電、調整力供出)の充放電量(項β、項α)に基づき算出される。また、放電可能電力ARefと充電可能電力BRefは定格出力を超えない最大値として導出される。よって、ΔT時間内における基準値や約定調整力の供出余力(誤差71に相当)を確保したうえで、所定ブロックBn+4の供出可能電力Sを、できるだけ大きく確保されるように、所定ブロックBn+4における基準値Bn+4Refを計画して、GCにおいて登録または再登録することができる。
【0140】
これにより、従来のようなSOC関連情報の予測を用いた基準値計画に基づき入札量を決定する方法に比べて、所定ブロックへの入札量(供出可能電力)を増やすことが可能となる。また、予測が不要で事前に供出可能電力Sを算出することができるため、週間市場や前日市場において、連続したブロックの各ブロックへの入札が可能となる。
【0141】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0142】
1A,1B ネットワーク、10 サーバ、10A 市場取引サーバ、10B 中給サーバ、10C 指令サーバ、10D 市場サーバ、20 下位制御装置、21 ゲートウェイ、22,26 計測器、24 設備、25 分電盤、27 蓄電システム、30 上位制御装置、40 需要家設備、50 蓄電池、51 残容量取得部、52 決定部、54 供出可能電力取得部、55 出力部、60 制御指令部、61 通信制御部、541 放電可能電力算出部、542 充電可能電力算出部、543 供出可能電力算出部、100 電力系統、151,171 プロセッサ、153,173 RAM、156,176 入力装置、157,177 ディスプレイ、158,178 電源回路、159,179 タッチパネル、161,181 記憶媒体、162,182 タイマ、172 ROM、194 属性情報、195 取引情報、197 アプリケーションプログラム、ηc AD変換効率、ηd DA変換効率。
【要約】
【課題】蓄電池を利用した電力取引市場への供出可能電力を増加させる。
【解決手段】装置は、所定の時間帯が始まる以前のタイミングの時刻において取得されたSOC関連情報と、当該時刻から所定の時間帯が始まるまでの期間における蓄電池の充放電量を示す情報と、蓄電池の上限容量情報と、蓄電池の充電効率と、蓄電池の放電効率と、当該所定の時間帯の長さを示す時間情報とに基づいて、当該所定の時間帯における基準値を算出し、上限容量情報と、蓄電池の放電効率と、時間帯および期間それぞれの長さを示す時間情報とに基づいて、所定の時間帯における蓄電池の供出可能電力を算出する。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21