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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20240510BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20240510BHJP
【FI】
H01L31/04 440
H01L31/06 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023185271
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】202310072596.5
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523303633
【氏名又は名称】天合光能股分有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】523410595
【氏名又は名称】天合光能(宿遷)光電有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 成法
(72)【発明者】
【氏名】呉 暁鵬
(72)【発明者】
【氏名】張 雅倩
(72)【発明者】
【氏名】鄒 楊
(72)【発明者】
【氏名】陸 玉剛
(72)【発明者】
【氏名】張 帥
(72)【発明者】
【氏名】陳 紅
(72)【発明者】
【氏名】陳 達明
(72)【発明者】
【氏名】陳 奕峰
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0372183(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113809201(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115642202(CN,A)
【文献】特開2014-229851(JP,A)
【文献】国際公開第2011/155199(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/080348(WO,A1)
【文献】特開2012-151265(JP,A)
【文献】特開2013-222961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池であって、
第1表面及び第2表面を有するN型シリコン基体と、
前記第1表面に形成されたトンネルパッシベーション構造及び第1パッシベーション反射防止膜と、
前記第2表面に形成されたホウ素ドーピングエミッタ構造層と、
前記ホウ素ドーピングエミッタ構造層に形成された第2パッシベーション反射防止膜と、
第1電極と、
第2電極と、を備え、
前記ホウ素ドーピングエミッタ構造層は、第1エミッタ層及び第2エミッタ領域を含み、ここで、前記第1エミッタ層の接合深さは、前記第2エミッタ領域の接合深さよりも小さく、前記第1エミッタ層の最高ホウ素ドーピング濃度は、前記第2エミッタ領域の最高ホウ素ドーピング濃度よりも大きく、前記第1エミッタ層のホウ素の総ドーピング量は、前記第2エミッタ領域のホウ素の総ドーピング量よりも小さい、
前記第1電極は、前記第2エミッタ領域に電気的に接触するように配置され、
前記第2電極は、前記トンネルパッシベーション構造と電気的に接触するように配置され、
前記第1エミッタ層のECVドーピング曲線における第1エミッタ層表面からの深さが0.02~0.6μmの範囲において、前記第1エミッタ層における最高ホウ素ドーピング濃度と最低ホウ素ドーピング濃度との差異は1桁より大きく、
前記第2エミッタ領域のECVドーピング曲線における第2エミッタ領域表面からの深さが0.05~0.7μmの範囲において、前記第2エミッタ領域における最高ホウ素ドーピング濃度と最低ホウ素ドーピング濃度との差異は1桁未満である。
【請求項2】
前記トンネルパッシベーション構造は、トンネル酸化物層と、パッシベーション接触材料層とを含み、前記トンネル酸化物層は、前記N型シリコン基体と前記パッシベーション接触材料層との間に設けられている
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記パッシベーション接触材料層の構成材料は、ドーピングアモルファスシリコン、ドーピングド多結晶シリコン、炭化ケイ素から選択される1つ又は複数である
請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第2電極は、前記パッシベーション接触材料層と電気的に接触するように配置されている
請求項2に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1エミッタ層の接合深さは、0.7μm以下である
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第2エミッタ領域の接合深さは、0.8μm以上である
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第2エミッタ領域のホウ素ドーピング濃度は2×1019atm/cm3以下である
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第1エミッタ層のECVドーピング曲線における最高点は、第1エミッタ層の表面からの深さが0.05~0.5μmの内部位置にある
請求項7に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第1エミッタ層のシート抵抗は、前記第2エミッタ領域のシート抵抗より大きい
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第1エミッタ層のシート抵抗は150ohm/sq以上であり、前記第2エミッタ領域のシート抵抗は150ohm/sq以下である
請求項9に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第1電極の幅は、前記第2エミッタ領域の幅よりも小さい
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第1パッシベーション反射防止膜と前記第2パッシベーション反射防止膜の材料は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素から選ばれる1種又は複数種の組み合わせである、請求項1に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
TOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contact)太陽電池は、パッシベーション層構造として極薄酸化層を用いた太陽電池である。N型TOPCon電池は、2022年に大規模な量産を迎え、構築規模が40GWを超えており、徐々にp型の代わりに市場の主導を占めていく。現在、N型TOPCon電池は通常、ホウ素ドーピング方式を採用してエミッタ構造を形成し、エミッタは通常均一な接合を採用し、その金属接触再結合、短波応答及び再結合速度などは往々にして最適ではない。より低い金属接触再結合を実現するために、ホウ素ドーピングの接合深さは一般に0.7μm以上必要である。しかし、ホウ素原子自体が比較的ドーピングされにくいので、0.7μm以上の接合深さに達するには、970度以上の温度と3h以上の時間が必要で、電池製造の消費電力、設備損失がいずれも高く、且つ高温時間が長いことは、ウェハーへの品質要求もより高くなり、これらはいずれも1kWhあたりの発電コストを大幅に増加させる。この方法で製造されたホウ素エミッタの電気化学容量-電圧(ECV)ドーピング濃度-深さ曲線(ECVドーピング曲線)は図3に示される(図3における従来のホウ素エミッタはホウ素エミッタのECVドーピング曲線を表す)。よって、N型TOPCon電池の構造をさらに最適化する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本願の太陽電池は、
第1表面及び第2表面を有するN型シリコン基体と、
前記第1表面に形成されたトンネルパッシベーション構造及び第1パッシベーション反射防止膜と、
前記第2表面に形成されたホウ素ドーピングエミッタ構造層と、
前記エミッタ構造層に形成された第2パッシベーション反射防止膜と、
第1電極と、
第2電極と、を備え、
前記エミッタ構造層は、第1エミッタ層及び第2エミッタ領域を含み、ここで、前記第1エミッタ層の接合深さは、前記第2エミッタ領域の接合深さよりも小さく、前記第1エミッタ層のホウ素の総ドーピング量は、前記第2エミッタ領域のホウ素の総ドーピング量よりも小さく、
前記第1電極は、前記第2エミッタ領域に電気的に接触するように配置され、
前記第2電極は、前記トンネルパッシベーション構造と電気的に接触するように配置される。
【0004】
本願の太陽電池は、選択的なエミッタ構造を有し、金属接触領域の接合深さが大きいので、金属化の要求を満たすことができる。金属接触領域以外の領域の接合深さが浅いので、光学応答を向上させることができる。ともに、第1エミッタ層のホウ素の総ドーピング量が第2エミッタ領域のホウ素の総ドーピング量よりも小さいので、このような電池構造は、太陽電池の光電変換性能を満たすことができ、製造過程におけるホウ素拡散プロセスの高温時間を大幅に短縮させ、太陽電池の製造コストを低減することができる。
【0005】
一実施形態において、前記トンネルパッシベーション構造は、トンネル酸化物層と、パッシベーション接触材料層とを含み、前記トンネル酸化物層は、前記N型シリコン基体と前記パッシベーション接触材料層との間に設けられている。
【0006】
一実施形態において、前記パッシベーション接触材料層の構成材料は、ドーピングアモルファスシリコン、ドーピングド多結晶シリコン、炭化ケイ素から選択される1つ又は複数である。
【0007】
一実施形態において、前記第2電極は、前記パッシベーション接触材料層と電気的に接触するように配置されている。
【0008】
一実施形態において、前記第1エミッタ層の接合深さは、0.7μm以下である。
【0009】
一実施形態において、前記第2エミッタ領域の接合深さは、0.8μm以上である。
【0010】
一実施形態において、前記第2エミッタ領域のホウ素ドーピング濃度は2×1019atm/cm以下である。
【0011】
一実施形態において、前記第1エミッタ層のECVドーピング曲線における最高点は、第1エミッタ層の表面からの深さが0.05~0.5μmの内部位置にある。
【0012】
一実施形態において、前記第1エミッタ層のECVドーピング曲線における第1エミッタ層表面からの深さが0.02~0.6μmの範囲において、前記第1エミッタ層における最高ホウ素ドーピング濃度と最低ホウ素ドーピング濃度との差異は1桁より大きい。
【0013】
一実施形態において、前記第2エミッタ領域のECVドーピング曲線における第2エミッタ領域表面からの深さが0.05~0.7μmの範囲において、前記第2エミッタ領域における最高ホウ素ドーピング濃度と最低ホウ素ドーピング濃度との差異は1桁未満である。
【0014】
一実施形態において、前記第1エミッタ層のシート抵抗は、前記第2エミッタ領域のシート抵抗より大きい。
【0015】
一実施形態において、前記第1エミッタ層のシート抵抗は150ohm/sq以上であり、前記第2エミッタ領域のシート抵抗は150ohm/sq以下である。
【0016】
一実施形態において、前記第1電極の幅は、前記第2エミッタ領域の幅よりも小さい。
【0017】
一実施形態において、前記パッシベーション反射防止膜の材料は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素から選ばれる1種又は複数種の組み合わせである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願の太陽電池の構造模式図である。
図2】本願の太陽電池を製造する方法のフローチャートである。
図3】実施例1の太陽電池の第1エミッタ層及び第2エミッタ領域におけるECVドーピング曲線及び従来のホウ素エミッタのECVドーピング濃度-深さ曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面と実施例により本願をさらに詳しく説明する。これらの説明により、本願の特徴及び利点は、より明確になる。
【0020】
ここで、用語「例示的」は、「例または実施例として使用される、あるいは説明的」ということを意味する。ここで、「例示的」として説明されるいずれかの実施例は、必ずしも他の実施例より優れていると解釈される必要はない。図面は実施例の種々の態様を示しているが、特に記載のない限り、図面は縮尺通りに描かれている必要はない。
【0021】
また、以下に説明する本願の異なる実施形態に係る技術的特徴は、互いに矛盾しない限り互いに結合することができる。
【0022】
図1に示すように、本願の太陽電池は、第1表面及び第2表面を有するN型シリコン基体1と、前記第1表面に形成されたトンネルパッシベーション構造2及び第1パッシベーション反射防止膜6と、前記第2表面に形成されたホウ素ドーピングエミッタ構造層と、前記エミッタ構造層に形成された第2パッシベーション反射防止膜5と、第1電極7と、第2電極8と、を備える。前記エミッタ構造層は、第1エミッタ層3及び第2エミッタ領域4を含む。前記第1エミッタ層3の接合深さは、前記第2エミッタ領域4の接合深さよりも小さい。第1エミッタ層3の最高ホウ素ドーピング濃度は、第2エミッタ領域4の最高ホウ素ドーピング濃度よりも大きい。第1エミッタ層3のホウ素の総ドーピング量は、第2エミッタ領域4のホウ素の総ドーピング量よりも小さい。第1電極7は、第2エミッタ領域4に電気的に接触するように配置され、第2電極8は、トンネルパッシベーション構造2と電気的に接触するように配置される。
【0023】
本願において、正面とは太陽光が入射する面であり、背面とは太陽光が入射する面に対向する面である。図1において、N型シリコン基体1の上側面が正面(第2表面)であり、下側面が背面(第1表面)である。
【0024】
以下、製造過程を参照して当該太陽電池の構造を説明する。図2に示すように、該太陽電池は以下のように製造することができる。
【0025】
S1において、N型シリコン基体を提供する。
【0026】
S2において、前記N型シリコン基体の第1表面にトンネルパッシベーション構造を堆積し、前記トンネルパッシベーション構造上にマスク層を堆積する。
【0027】
S3において、前記N型シリコン基体の第2表面を洗浄する。
【0028】
S4において、前記N型シリコン基体の第2表面に第1エミッタ層が形成され、前記トンネルパッシベーション構造が結晶化されるように、同一環境下で前記N型シリコン基体の洗浄後の第2表面にホウ素拡散処理を行い、前記トンネルパッシベーション構造に対しアニール処理を行う。
【0029】
S5において、第1エミッタ層に対してレーザーパターニング処理を行い、第2エミッタ領域を形成する。
【0030】
S6において、パッシベーション反射防止膜を堆積する。
【0031】
S7において、前記第2エミッタ領域に電気的に接触するように配置された第1電極と、前記トンネルパッシベーション構造に電気的に接触するように配置された第2電極とを形成する。
【0032】
製造に先立って、次工程の進行のために、N型シリコン基体を洗浄、研磨処理してもよい。
【0033】
その後、図1に示すように、前記N型シリコン基体1の第1表面(背面)にトンネルパッシベーション構造2を堆積する。トンネルパッシベーション構造2は、TOPCon電池で使用できるさまざまなトンネルパッシベーション構造であってもよい。例えば、トンネル酸化物層21と、パッシベーション接触材料層22とを含み、トンネル酸化物層21は、N型シリコン基体1とパッシベーション接触材料層22との間に配置される。一実施形態において、トンネル酸化物層21の構成材料は、酸化シリコンなどの材質であってもよい。一実施形態において、前記パッシベーション接触材料層22の構成材料は、ドーピングアモルファスシリコン、ドーピングド多結晶シリコン、炭化ケイ素材料SiCxから選択される1種又は複数種であり、例えば、リンドーピング多結晶シリコン層、炭化ケイ素材料などである。
【0034】
その後、N型シリコン基体1の第2表面(正面)に対して、当該表面のラップアラウンド(wrap-around)により生じた不要な材料層、例えば多結晶シリコン層等を除去する洗浄工程を行う。洗浄後に、表面面積を増加させ、表面反射率を低下させ、不純物等を除去するように、テクスチャリング工程を行うことにより、テクスチャリングを形成することもできる。
【0035】
その後、前記N型シリコン基体1の第2表面に第1エミッタ層3を形成し、前記トンネルパッシベーション構造2を結晶化するように、同一環境下で前記N型シリコン基体1の洗浄後の第2表面にホウ素拡散処理を行い、前記トンネルパッシベーション構造2に対しアニール処理を行う。N型シリコン基体1の第2表面(正面)にホウ素拡散を行い、p型シリコン層である第1エミッタ層3を形成する。当該同一環境で処理を行う場合、N型シリコン基体1の第2表面(正面)にホウ素拡散を行い、p型シリコン層(第1エミッタ層3)を形成するほか、予め形成されたトンネルパッシベーション構造2に対してアニール処理を同時に行うことにより、ホウ素拡散高温過程において、パッシベーション接触材料層22の材料の結晶化及びドーピング元素の再分布を完了させ、これにより、パッシベーション接触構造のパッシベーション能力を向上させることができる。これにより、トンネルパッシベーション構造2に対して単独でアニール処理する工程を必要とせず、アニール処理の高温がシリコンウェハー及びその上の各層に及ぼす悪影響を回避する。一実施形態において、ホウ素拡散処理に用いられるホウ素源は、BCl、BBrなどである。本願において、ホウ素拡散処理の温度が低く、時間が短く、且つ形成されたp型シリコン層(第1エミッタ層3)の接合深さが比較的浅く、第1エミッタ層3の接合深さが0.7μm以下になり、光学応答を向上させることができる。一つの実施形態において、該同一環境の温度は300~970℃であり、且つ800~970℃での処理時間は3時間未満である。一実施形態において、第1エミッタ層3のシート抵抗は150ohm/sq以上である。
【0036】
一実施形態において、第1エミッタ層3の接合深さは0.7μm以下であってもよく、これにより光学応答を向上させることができる。図1は、第1エミッタ層3の厚さに相当する第1エミッタ層3の接合深さh1を示しており、第1エミッタ層3の厚さは、表面から第1エミッタ層3が存在するところまでの距離を意味する。
【0037】
その後、第1エミッタ層3に対してレーザーパターニング処理を行い、第2エミッタ領域4を形成する。レーザーパターニング処理は、紫外光、緑光又は赤外光等の1種又は2種以上の波長のレーザー光を採用し、レーザー光のパルス幅がナノ秒、ピコ秒又はフェムト秒であり、平均パワーが5~200Wであり、例えば、レーザーパワーが30Wであり、波長532nmの緑光ナノ秒レーザーを使用できる。図1に示すように、レーザーパターニング処理により、ホウ素ドーピングを進め、第1エミッタ層3とは異なる接合深さ、ドーピング濃度及びシート抵抗を有する第2エミッタ領域4を形成することができる。本願において、第1エミッタ層3の接合深さh1は、第2エミッタ領域4の接合深さh2よりも小さい。図1は、第2エミッタ領域4の厚さに相当する第2エミッタ領域4の接合深さh2を示しており、第2エミッタ領域4の厚さは、表面から第2エミッタ領域4が存在するところまでの距離を意味する。一実施形態において、第2エミッタ領域4の接合深さh2は、0.8μm以上である。ただし、第2エミッタ領域4の接合深さh2は一般的に5μmを超えることもない。後述するように、第2エミッタ領域4は第1電極7と電気的に接触し、以上の接合深さh2は、金属化要求を満たすことができる。第1エミッタ層3と第2エミッタ領域4は、共にエミッタ構造層を構成する。
【0038】
第1エミッタ層3について、ECVドーピング濃度-深さ曲線(ECVドーピング曲線)における最高点は、シリコンウェハー表面にあるのではなく、第1エミッタ層表面からの深さが約0.02~0.5μmの内部位置にある。また、第1エミッタ層3のドーピング曲線は、相対的に変化幅が大きく、ドーピング濃度が0.02~0.6μmの深さ範囲内で大きく変化し、最高ホウ素ドーピング濃度と最低ドーピング濃度との差異が1桁より大きく、例えば、第1エミッタ層3におけるホウ素ドーピング濃度が2×1019~1×1018atm/cm、または3×1019~5×1017atm/cmなどである。第1エミッタ層3の急峻な拡散接合型は、比較的短いホウ素拡散時間で実現でき、製造コストを低減することができる。
【0039】
第2エミッタ領域4については、第2エミッタ領域4におけるECVドーピング濃度-深さ曲線(ECVドーピング曲線)がより平坦であり、ドーピング濃度が0.05~0.7μmの深さ範囲においてほぼ変化せず、最高ホウ素ドーピング濃度と最低ホウ素ドーピング濃度との差異が1桁未満であり、例えば、第2エミッタ領域4におけるホウ素ドーピング濃度が1×1019~1×1018atm/cm、5×1018~5×1019atm/cm、または1×1019~1×1020atm/cmである。第2エミッタ領域4のより緩やかなドーピング接合型は、良好な金属接触を形成し、接触抵抗率を低下させると同時に、金属領域の再結合電流密度を低下させ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【0040】
一実施形態において、第1エミッタ層3は第2エミッタ領域4よりシート抵抗が大きい。一実施形態において、第1エミッタ層3のシート抵抗は150ohm/sq以上であり、第2エミッタ領域4のシート抵抗は150ohm/sq以下である。
【0041】
その後、シリコンウェハー表面を洗浄する。該洗浄工程は、背面の前記トンネルパッシベーション構造上のマスク層、及び正面の酸化層などを洗浄することができる。洗浄工程は、アルカリ洗浄及び/又は酸洗の方式を採用することができ、アルカリ洗浄は、例えば、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液等を洗浄剤として採用することができ、酸洗は、HF溶液、HCl溶液等を洗浄剤として採用することができる。
【0042】
その後、シリコンウェハーの両面にパッシベーション反射防止膜を堆積する。パッシベーション反射防止膜を堆積する方法は、当技術分野で知られている各種の方法を用いることができ、パッシベーション反射防止膜の材料は、よく使われる各種パッシベーション反射防止膜材料、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の材質のうちの1種又は複数種の組み合わせであってもよい。パッシベーション反射防止膜は、単層材料で構成されていてもよいし、多層構造であって多層材料で構成されていてもよい。図1に示すように、第2パッシベーション反射防止膜5は正面に位置し、第1パッシベーション反射防止膜6は背面に位置する。
【0043】
その後、金属電極部分を堆積する。図1に示すように、金属電極部分は、正面に位置し、前記第2エミッタ領域4と電気的に接触するように配置された第1電極7と、第2電極8とを含む。第2電極8は、背面に位置し、前記トンネルパッシベーション構造2、特にパッシベーション接触材料層22と電気的に接触するように配置される。金属電極の堆積は、スクリーン印刷等の常法により行うことができる。
【0044】
一実施形態では、図1に示すように、第1電極7の幅は、第2エミッタ領域4の幅よりも小さい。図1において、第1電極7の幅w1と第2エミッタ領域4の幅w2は、第1電極7と第2エミッタ領域4のそれぞれのx方向の縁の間の距離である。このようにすれば、第1電極領域を第2エミッタ領域4に完全に覆わせることができ、第1電極領域での金属再結合を効果的に低減し、再結合電流密度を低下させ、電池開放電圧を向上させることができるという利点がある。
【実施例1】
【0045】
n型シリコンウェハーに対してウェット化学洗浄を行って表面損傷及び不純物を除去し、アルカリ溶液により表面を研磨し、反射率が30%より大きく、平坦性が高い表面を形成し、より好適に背面パッシベーション接触構造によるパッシベーション効果を実現する。
【0046】
PECVD方法により、シリコンウェハーの背面にトンネル酸化シリコン層及びドーピング多結晶シリコン層を堆積し、ここで、トンネル酸化シリコン層の厚さは0.9~2nmであり、ドーピングト多結晶シリコン層の厚さは75~150nmである。その後、さらに外層に厚さが10~50nmである酸化シリコン層マスクを堆積する。
【0047】
ウェット化学洗浄を採用して表面のラップアラウンドによる多結晶シリコン層を除去し、その後、表面にアルカリ性テクスチャリングを行い、シリコンウェハーの正面にピラミッド構造を形成し、背面はマスクの保護で元の構造を保持する。
【0048】
シリコンウェハーを管状拡散炉の管内に入れ、800℃以上の温度条件下でBClと酸素ガスを導入し、シリコンウェハーの表面に反応してホウ素原子を形成し、ホウ素が拡散してシリコンウェハーの内部に進入し、第1エミッタを形成する。また、表面にホウ素原子を多く含む酸化ケイ素層、即ち、ホウケイ酸ガラスBSGを生成する。ホウ素拡散の条件は、堆積ステップでは、BClの流量が300sccm、酸素ガスの流量が200sccm、温度が850℃、時間が15minである。その後、昇温して接合を形成するステップでは、温度が930℃であり、時間が30minである。第1エミッタのシート抵抗は150~250ohm/sqであり、第1エミッタの接合深さは0.5μmであり、BSGの厚さは10~150nmである。同時に、ホウ素拡散の高い温度及び時間において、背面のドーピングド多結晶シリコン層には、結晶化及びドーピング元素の再分布が完成し、パッシベーション接触構造のパッシベーション能力を向上させる。
【0049】
長パルスレーザー又は短パルスで高オーバーラップ率のレーザーを用いて正面のホウケイ酸ガラスに対してパターニング処理を行い、ここで、レーザーパワーは30Wで、スポットの幅は60~200μmで、スポットの形状は円形、楕円形又は矩形である。レーザー処理後のシート抵抗が150ohm/sq以下に低下し、拡散した第2エミッタの接合深さが0.7μm以上に深くなり、表面ドーピング濃度が1×1019cm-3に低下する。
【0050】
シリコンウェハーの表面をウェット化学洗浄し、正面のBSG層、レーザー損傷層、及び背面のマスクを除去する。
【0051】
シリコンウェハーの正面にALD方式で厚さが2~20nmの酸化アルミニウムを堆積し、その後、PECVD方式で正面に50~200nmの酸窒化ケイ素、酸化ケイ素のうちの1種又は複数種以上の組み合わせを堆積することにより、第2パッシベーション反射防止膜を構成する。
【0052】
シリコンウェハーの背面にPECVD法により背面に厚さが30~200nmの酸窒化ケイ素、酸化ケイ素のうちの1種又は複数種以上の組み合わせを堆積することにより、第1パッシベーション反射防止膜を構成する。
【0053】
背面では、スクリーン印刷によってフィンガー電極及びバスバー電極を印刷し、正面では、レーザー加工領域の第2エミッタの上方にスクリーン印刷によってフィンガー電極を印刷し、正面電極の幅は50μmより小さい。その後、高温焼結を経て、金属電極とエミッタ電極とをオーミック接触させる。
【0054】
図3は、実施例1で得られた太陽電池の第1エミッタ層及び第2エミッタ領域におけるECVドーピング曲線(図3において、第1エミッタ層は第1エミッタ層のECVドーピング曲線を示し、第2エミッタ領域は第2エミッタ領域のECVドーピング曲線を示す)を示し、ここで、第1エミッタ層は急峻な拡散接合型を有し、第2エミッタ領域はより緩やかなドーピング接合型を有する。
【0055】
CN110299422Aの実施例1で製造された太陽電池に対して、本願の実施例1で得られた太陽電池は、第1エミッタの深さがより浅く、接合深さが0.7μm未満であり、電池の短波応答がより良く、短絡電流密度がより高く、40.3mA/cmから40.6mA/cmに向上した。
【0056】
CN110299422Aの実施例1で製造された太陽電池に対して、本願の実施例1で得られた太陽電池のレーザドーピング後の第2エミッタの深さは、0.7μmより深く、電極接触抵抗がより低く、1.5ohm/cmから0.9ohm/cmに下がった。
【0057】
本願の説明において、「上」、「下」、「内」、「外」、「前」、「後」、「左」、「右」等の用語によって示される方位又は位置関係は、本願の作動状態における方位又は位置関係に基づくものであり、本願の説明及び説明を簡略化するためのものに過ぎず、言及された装置又は部品が特定の方位を有し、特定の方位で構造及び操作されなければならないことを指示又は暗示するものではないので、本願に対する制限と理解できない。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【要約】      (修正有)
【課題】光学応答を向上させることができる太陽電池を提供する。
【解決手段】太陽電池は、第1表面及び第2表面を有するN型シリコン基体1と、第1表面に形成されたトンネルパッシベーション構造2及び第1パッシベーション反射防止膜6と、第2表面に形成されたホウ素ドーピングエミッタ構造層と、エミッタ構造層に形成された第2パッシベーション反射防止膜5と、第1電極7と、第2電極8とを備え、エミッタ構造層は、第1エミッタ層3及び第2エミッタ領域4を含む。第1電極7は、第2エミッタ領域4に電気的に接触するように配置され、第2電極8は、トンネルパッシベーション構造2と電気的に接触するように配置される。
【選択図】図1
図1
図2
図3