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  • 特許-固体電解質膜及びそれを含む全固体電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】固体電解質膜及びそれを含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20240510BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01B1/06 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023511653
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 KR2021011145
(87)【国際公開番号】W WO2022039564
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0104846
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】グイロン・ジン
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ジュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ウン-ビ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ヨン・キム
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-352859(JP,A)
【文献】特開2017-199678(JP,A)
【文献】特開2015-165462(JP,A)
【文献】特開2009-076399(JP,A)
【文献】特表2009-517806(JP,A)
【文献】特開2016-062895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01B1/00-1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合粒子及び高分子系固体電解質材料を含む全固体電池用の固体電解質膜であって、
前記複合粒子は、複数の気孔を有する多孔性粒子及び相変換物質を含み、
前記相変換物質は、常温またはそれ以下では固体状態で存在し、温度が増加するにつれて液状へ相変化する物質であり、
前記気孔は、全部または少なくとも一部が前記相変換物質で充填されており、
前記多孔性粒子は、金属有機構造体を含み、
前記相変換物質は、エチレンカーボネート、重量平均分子量が1,000以上であるポリエチレングリコール、コハク酸ニトリル及び環状ホスフェートより選択された一種以上を含む、全固体電池用の固体電解質膜。
【請求項2】
前記多孔性粒子は、気孔の直径が2nm~50nmである、請求項1に記載の全固体電池用の固体電解質膜。
【請求項3】
前記多孔性粒子は、直径が0.5μm~5μmである、請求項1または2に記載の全固体電池用の固体電解質膜。
【請求項4】
記金属有機構造体は、MIL-53、MIL-100、MIL-101、MOF-74、Cu-BTC、MIL-127より選択された一種以上を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の全固体電池用の固体電解質膜。
【請求項5】
前記高分子系固体電解質材料が、高分子樹脂とリチウム塩を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の全固体電池用の固体電解質膜。
【請求項6】
負極、正極及び固体電解質膜を含む全固体電池であって、
前記固体電解質膜は、前記請求項1からのいずれか一項に記載のものである、全固体電池。
【請求項7】
請求項1に記載の固体電解質膜の製造方法であって、
前記方法は、溶融拡散法を用いて前記多孔性粒子の気孔に相変換物質を充填して前記複合粒子を得る段階を含む、固体電解質膜の製造方法。
【請求項8】
前記複合粒子を得る段階は、
(S1)反応チャンバに相変換物質及び多孔性粒子を投入し、前記反応チャンバを密閉する段階と、
(S2)前記密閉された反応チャンバを常圧よりも低い圧力に調節し、前記反応チャンバの内部温度を相変換物質の融点以上に昇温する段階と、
(S3)前記密閉された反応チャンバの温度を低めて相変換物質を固化する段階と、を含む、請求項に記載の固体電解質膜の製造方法。
【請求項9】
前記(S2)段階の後、かつ前記(S3)段階の前に、前記反応チャンバを真空下で維持する段階をさらに含む、請求項に記載の固体電解質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池用の固体電解質膜及びそれを含む全固体電池に関する。
【0002】
本出願は、2020年8月20日出願の韓国特許出願第10-2020-0104846号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
液体電解質を使用するリチウムイオン電池は、分離膜によって負極と正極が区画される構造であることから、変形や外部衝撃によって分離膜が破損する場合、短絡が発生することがあり、それによって過熱または爆発などの危険につながり得る。したがって、リチウムイオン二次電池分野で安全性が確保可能な高分子電解質の開発は、非常に重要な課題であるといえる。
【0004】
高分子電解質を用いたリチウム二次電池は、電池の安全性が増大し、電解液の漏液が防止可能であるので、電池の信頼性が向上し、薄型の電池製作が容易であるという長所がある。また、負極にリチウム金属が使用可能であるので、エネルギー密度を向上させることができ、これによって、小型二次電池と共に電気自動車用の高容量二次電池などへの応用が期待され、次世代電池として脚光を浴びている。
【0005】
しかし、高分子電解質を使用するリチウム二次電池は、固体電解質が液体電解質に比べてイオン伝導度が低い。また、固体電解質が液体電解質に比べて活物質との表面密着性が劣って界面抵抗が増加し、電極活物質と非接触状態で固体電解質に分布していることから、投入された導電材の量に比べて出力特性や容量特性が低下するという問題がある。これに対し、イオン伝導度や抵抗特性の改善のために多様な方法が試みされている。このような方便として、高分子系固体電解質材料を使用する固体電解質膜の場合、イオン伝導度の向上のために相変換物質を添加する。しかし、相変換物質の量が増加するほど、固体電解質膜の機械的強度が低下するという問題がある。また、相変換物質は、熱と電気化学的安定性が弱いという問題がある。一方、機械的強度低下の問題を解決するために、無機粒子などのフィラーを用いる方法が試みされた。しかし、無機粒子の導入によって固体電解質材料の量が低下し、イオン伝達経路が遮断される要因となり、イオン伝導度が低下することがある。そこで、新規な固体電解質膜の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、イオン伝導度及び機械的強度が改善された固体電解質膜及びそれを含む全固体電池を提供することを発明の目的とする。なお、本発明の他の目的及び長所は、特許請求の範囲に記載された手段または方法及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1面によれば、全固体電池用の固体電解質膜に関し、前記固体電解質膜は、複合粒子及び高分子系固体電解質材料を含み、前記複合粒子は、複数の気孔を有する多孔性粒子及び相変換物質を含み、前記相変換物質は、常温またはそれ以下では固体状態で存在し、温度が増加するにつれて液状へ相変化する物質であり、前記気孔は、全部または少なくとも一部が前記相変換物質で充填されている。
【0008】
本発明の第2面によれば、前記第1面において、前記多孔性粒子は、気孔の直径が2nm~50nmである。
【0009】
本発明の第3面によれば、前記第1面または第2面において、前記多孔性粒子は、直径が0.5μm~5μmである。
【0010】
本発明の第4面によれば、前記第1面から第3面のいずれか一面において、前記多孔性粒子は、金属有機構造体(metal organic framework)を含み、前記金属有機構造体は、MIL-53、MIL-100、MIL-101、MOF-74、Cu-BTC、MIL-127より選択された一種以上を含む。
【0011】
本発明の第5面によれば、前記第1面から第4面のいずれか一面において、前記相変換物質は、エチレンカーボネート、重量平均分子量が1,000以上であるポリエチレングリコール、コハク酸ニトリル及び環状ホスフェートより選択された一種以上を含む。
【0012】
本発明の第6面によれば、前記第1面から第4面のいずれか一面において、前記高分子系固体電解質材料は、溶媒化したリチウム塩に高分子樹脂が添加されたものである。
【0013】
本発明の第7面は、負極、正極及び固体電解質膜を含む全固体電池に関し、前記固体電解質膜は、前記第1面から第6面のいずれか一面に記載のものである。
【0014】
本発明の第8面によれば、固体電解質膜の製造方法であって、前記固体電解質膜は第1面によるものであり、前記方法は、溶融拡散法を用いて前記多孔性粒子の気孔に相変換物質を充填して前記複合粒子を得る段階を含む。
【0015】
本発明の第9面によれば、前記第8面において、前記複合粒子を得る段階が、
(S1)反応チャンバに相変換物質及び多孔性粒子を投入し、前記反応チャンバを密閉する段階と、
(S2)前記密閉された反応チャンバを常圧よりも低い圧力に調節し、前記反応チャンバの内部温度を相変換物質の融点以上に昇温する段階と、
(S3)前記密閉された反応チャンバの温度を低めて相変換物質を固化する段階と、を含む。
【0016】
本発明の第10面によれば、第9面において、前記(S2)段階の後、かつ前記(S3)段階の前に、前記反応チャンバを真空下で維持する段階をさらに含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の固体電解質膜は、多孔性粒子の気孔に相変換物質が充填されている複合粒子を固体電解質膜のフィラーとして使用することで、相変換物質の量を最小化すると共に、高いイオン伝導度及び機械的強度を有する固体電解質膜を得ることができる。
【0018】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。なお、本明細書に添付の図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などは、より明確な説明を強調するために誇張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施様態による固体電解質膜におけるイオン伝達経路を概略的に示した図である。
図2】比較例1による固体電解質膜におけるイオン伝達経路を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0021】
なお、明細書の全体にかけて、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0022】
本明細書の全体にかけて使われる用語、「約」、「実質的に」などは、言及された意味に、固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使われる。
【0023】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」の記載は、「AまたはB、もしくはこれら全部」を意味する。
【0024】
本発明は、固体電解質膜に関する。前記固体電解質膜は、電気化学素子の正極と負極との間に介在されてイオン伝達体として機能する共に、正極と負極を電気的に絶縁する役割を果たす。本発明において、前記電気化学素子は、電解質材料として酸化物、硫化物及び高分子樹脂などの固体電解質材料を使用する全固体電池であり得る。前記全固体電池の具体的な例には、全種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシター素子のようなキャパシタなどが挙げられる。特に、前記二次電池のうちでリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池であり得る。
【0025】
本発明において、前記固体電解質膜は、固体電解質材料及び複合粒子を含み、前記固体電解質材料と複合粒子の混合物が所定の厚さを有するシート状に形成されたものであり得る。本発明の一実施様態において、前記固体電解質膜は、例えば、1μm~100μmの厚さ範囲を有し得る。しかし、前記固体電解質膜の厚さは前記範囲に限定されず、当該分離膜が適用される電池の特性に応じて適切な範囲に調節され得る。前記複合粒子は、固体電解質膜中に分散しているものであって、多孔性粒子及び相変換物質を含み、前記多孔性粒子の気孔の全部及び少なくとも一部が前記相変換物質で充填されている。
【0026】
本発明の一実施様態において、前記固体電解質材料は、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうち一つ以上を含み得る。本発明の固体高分子電解質は、電極内でリチウムイオンを伝達する役割を果たすため、当該固体電解質膜が適用される電池の駆動に必要なイオン伝導度が確保可能な程度を示すものであれば、いずれも使用可能であり、特定の種類に限定されない。本発明の一実施様態において、前記固体高分子電解質は、イオン伝導度の高い素材、例えば、10-4s/cm以上のものであれば、いずれも使用可能である。
【0027】
本発明において、前記固体電解質材料は、高分子系固体電解質材料を含むことが望ましい。本発明の一実施様態において、前記高分子系固体電解質は、リチウム塩と高分子樹脂が含むものであり得る。前記高分子系固体電解質の具体的な様態として、溶媒化したリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成されたもの、有機リチウム塩を含有した有機電解液、イオン性液体、モノマーまたはオリゴマーなどを高分子樹脂に含有させた高分子ゲル電解質などが挙げられる。本発明の具体的な一実施様態において、前記高分子系固体電解質は、高分子樹脂として、例えば、ポリエーテル系高分子、ポリカーボネート系高分子、アクリレート系高分子、ポリシロキシサン系高分子、ホスファゼン系高分子、ポリエチレ誘導体、ポリエチレンオキシド(Polyethyleyeoxide,PEO)またはポリプロピレンオキシド(Polypropyleneoxide) などのポリアルキレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリジン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを含み得る。そして、前記高分子固体電解質は、高分子樹脂として、PEO主鎖に、PMMA、ポリカーボネート、ポリシロキシサン(pdms)及び/またはホスファゼンのような無定形高分子を共単量体で共重合した分枝状共重合体、くし型高分子樹脂(comb-like polymer)、架橋高分子樹脂などが含まれ、前記高分子の混合物を含み得る。
【0028】
また、前記高分子ゲル電解質は、リチウム塩を含む有機電解液と高分子樹脂を含むものであって、前記有機電解液は、高分子樹脂の重量に対して60~400重量部を含む。ゲル電解質に適用される高分子は、特定の成分に限定されないが、例えば、ポリエーテル系、PVC系、PMMA系、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile,PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)などが含まれ得る。そして、前記高分子の混合物であり得る。
【0029】
本発明の一実施様態において、前記リチウム塩は、Liで表すことができる。本発明の具体的な一実施様態において、前記リチウム塩は、陽イオンとしてLiを含み、陰イオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、AlO 、AlCl 、PF 、SbF 、AsF 、F 、BC 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN及び(CFCFSOからなる群より選択された少なくともいずれか一つを含み得る。
【0030】
本発明の一実施様態において、前記電解質層が高分子樹脂とリチウム塩を含む場合、リチウム塩と高分子樹脂は、モル比を基準にして1:5~1:30の割合で含まれ得る。例えば、高分子樹脂がポリエチレンオキシドである場合、[EO]:[Li]がモル比で5:1~30:1の範囲を有し得る。
【0031】
一方、本発明の一実施様態において、前記固体電解質膜は、固体電解質材料として前述した高分子電解質材料の他に、選択的に酸化物系固体電解質材料及び/または硫化物系固体電解質材料をさらに含み得る。前記酸化物系固体電解質材料は、酸素Oを含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有する。この非制限的な例には、LLTO系化合物、LiLaCaTa12、LiLaANb12(Aは、CaまたはSr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、LAGP系化合物、LATP系化合物、Li1+xTi2-xAlSi(PO3-y(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1)、LiAlZr2-x(PO(ここで、0≦x≦1)、LiTiZr2-x(PO(ここで、0≦x≦1)、LISICON系化合物、LIPON系化合物、ペロブスカイト系化合物、ナシコン系化合物及びLLZO系化合物のうち選択された一種以上を含み得る。しかし、これらに特に限定されない。
【0032】
前記硫化物系固体電解質材料は、硫黄(S)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものであって、Li-P-S系ガラスやLi-P-S系ガラスセラミックを含み得る。このような硫化物系固体電解質の非制限的な例には、LiS-P、LiS-LiI-P、LiS-LiI-LiO-P、LiS-LiBr-P、LiS-LiO-P、LiS-LiPO-P、LiS-P-P、LiS-P-SiS、LiS-P-SnS、LiS-P-Al、LiS-GeS、LiS-GeS-ZnSなどが挙げられ、このうち一つ以上を含み得る。しかし、これらに特に限定されない。
【0033】
前記複合粒子は、本体に複数の気孔を有する多孔性粒子及び前記粒子の気孔を充填している相変換物質を含む。
【0034】
前記多孔性粒子は、本体(body)内に一つ以上の気孔を有する。本発明の一実施様態において、前記気孔は、外部から相変換物質が流入して充填される構造を有することが望ましい。前記気孔は、粒子を貫通する開放型気孔(open pore)及び/または気孔の入口がある一方のみに開放された半開放型気孔を含むことが望ましい。本発明において、望ましくは、前記多孔性粒子は、粒子のいずれか一端から他端まで貫通している開放型気孔及び/または外部から気体や流体が流入するように一方のみに開放された半開放型気孔を含む。本発明の一実施様態において、前記気孔直径が2nm~50nmの範囲を有し得る。本発明の一実施様態において、前記多孔性粒子は、10vol%~90vol%の範囲内で適切な気孔度の範囲を有し得るが、特定の範囲に限定されない。前記気孔度とは、多孔性粒子の全体積に対して気孔が占める体積を意味する。
【0035】
本発明の一実施様態において、前記多孔性粒子は、本体に気孔が形成されているものであって、電池の充放電などの電気化学反応に対して酸化または還元されない安定的なものであれば、特に限定されない。例えば、有機粒子、無機粒子、金属粒子及び金属有機構造体(metal-organic framework)のうち選択されたいずれか一つを含み得る。本発明の一実施様態において、前記多孔性粒子は金属有機構造体を含み得る。
【0036】
金属有機構造体は、一般的に、「多孔性配位高分子(porous coordination polymer)」ともいい、または「多孔性有無機混成体」ともいう。前記金属有機構造体は、分子配位結合と材料科学の組合せによって最近に新しく発展しつつあり、前記金属有機構造体は、高表面積と分子サイズまたはナノサイズの細孔を有していることから、吸着剤、気体保存物質、センサー、メンブレン、機能性薄膜、薬物伝達物質、触媒及び触媒担体などに使用されるだけでなく、細孔サイズよりも小さいゲスト分子を捕集するか、または細孔を用いて分子の大きさによって分子を分離するのに使用可能であるので、最近研究が盛んに行われている。
【0037】
金属有機構造体は、中心金属イオンが有機リガンドと結合して形成された多孔性の結晶性有無機高分子化合物である。金属有機構造体は、結晶性構造内に有機物と無機物を共に含み、例えば、結晶性構造に極性の金属イオン及びカルボン酸酸素陰イオンを含む共に、非極性の芳香族化合物グループが共存しているため、親水性と疎水性を共に有し得る。このような金属有機構造体の代表的な例には、MIL-53、MIL-100、MIL-101、MOF-74、Cu-BTC、MIL-127などがある。
【0038】
本発明の一実施様態において、前記気孔の直径は、窒素などの吸着気体を用いてBEL JAPAN社のBELSORP(BET装備)を用いて測定するか、または水銀圧入法(Mercury intrusion porosimetry)またはキャピラリーフローポロメトリー法(capillary flow porosimetry)のような方法で測定することができる。例えば、キャピラリーフローポロメトリー法の場合、被測定物の中に液体を満たした後、不活性気体を通過させることで、乾燥された被測定物と濡れた被測定物に対して気体圧力と流れを測定して気孔の大きさを計算する原理である。
【0039】
本発明の一実施様態において、前記多孔性粒子は、直径が0.5μm~5μmであることが望ましい。前記粒子直径は、粒度分布(Particle size distribution;PSD)によって確認し得る。前記PSDは、 ふるい分級によって測定される粒度分布を意味する。前記PSDは、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって行われ得る。
【0040】
前記相変換物質は、常温またはそれ以下では固体状態で存在し、温度が増加するにつれて液状に相変化する物質を意味する。本発明の一実施様態において、前記常温は、約18℃~28℃の温度範囲である。前記相変換物質が液状に相変化する温度は、例えば、30℃以上、40℃以上、50℃以上または70℃以上であり得る。本明細書において、常温は24℃~26℃を意味する。本発明の具体的な一実施様態において、前記相変換物質は、常温以下の温度では固体状態を維持するが、電池のエイジング段階や電池駆動中に内部温度が上昇して特定の温度条件以上になると、融融して液状に変化する。例えば、電池を組み立てた後、約60℃で約10秒間エイジングが行われる場合、前記相変換物質が液化し得る。このように多孔性粒子内に相変換物質が充填されている場合、多孔性粒子の表面に沿って効果的にイオン伝達経路が形成され得る。例えば、相変換物質が液化する場合、前記液化した相変換物質の一部が複合粒子の外部へ流出され、複合粒子周辺の高分子固体電解質材料と前記液化した相変換物質が接触し得る。前記相変換物質は、ほとんどが高分子材料の可塑剤に用いられる成分であることで、液化した相変換物質と高分子固体電解質材料が接触するようになると、高分子固体電解質材料が可塑剤成分によって軟化し、その結果、自由体積が増加し、分節運動が促進され、これによってイオン伝導度が改善される。一方、相変換物質は、揮発しやすいか、または電池素子を劣化させるなど、電気化学的特性がよくない。そこで、このような相変換物質を多孔性粒子内に充填して閉じ込めておくことで電池の固体電解質膜の耐熱性及び電気化学的特性を改善することができる。
【0041】
本発明の具体的な一実施様態において、前記相変換物質が液体状態に変わる場合、電池駆動温度が必ずしも相変換物質の融点異常である必要はない。
【0042】
本発明の具体的な一実施様態において、前記相変換物質は、エチレンカーボネート(Ethylene Carbonate)、重量平均分子量が1,000以上であるポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)、コハク酸ニトリル(Succinonitrile)または環状ホスフェート(Cyclic phosphate)などが挙げられ、このうち一つ以上の混合物を含み得る。本発明において、エチレンカーボネートは約37℃の融点を有し、ポリエチレングリコール(Mw1,000以上)は約35℃、コハク酸ニトリルは約57℃、環状ホスフェートは約65℃の融点を有する。
【0043】
一方、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、重量平均分子量が1,000未満、望ましくは600以下であるポリエチレングリコール(poly ethylene glycol;PEG)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(poly ethylene glycol dimethyl ether;PEGDME)及びジエチルフタレート(diethyl phthalate;DEP)などは、液体電解質用の有機溶媒として使用される物質であるが、常温で液体状態で存在するので、本発明の相変換物質に適用されない。
【0044】
本発明の具体的な一実施様態において、前記分子量は、通常、末端基分析(end group analysis)、束一的性質(colligative property)利用法、光散乱法(light scattering method)、超遠心法(ultracentrifugal method)、粘度測定法(viscometry)またはゲル浸透クロマトグラフィー法(gel permeation chromatography;GPC)がよく使用されている。具体的には、前記分子量は、検出器として示差屈折計を備えたHPLCシステムにGPCコラムを接続し、溶離液としてNaCl水溶液とアセトニトリルの混合溶液を使用し、標準物質としてプルランを用いた検量線から算出し得る。
【0045】
本発明の具体的な一実施様態において、前記相変換物質は、エチレンカーボネートであり得る。前記エチレンカーボネートは、融点が約37℃であって、常温で固体状態で存在する。エチレンカーボネートは、融点以上の温度条件で液状化し、液化したエチレンカーボネートは、周辺の固体リチウム塩を溶解して液体電解質として機能でき、不純物の混入が少ないという長所がある。特に、このようなエチレンカーボネートは、非水電解液中におけるイオン伝導性及び酸化反応性(6.2V)が高いので、SEI被膜を形成した以後に電池性能を向上させるのに役に立つ。
【0046】
本発明の一実施様態において、前記複合粒子は、例えば、溶融拡散法(melt-diffusion)によって前記相変換物質を前記多孔性粒子の気孔内に充填する方法で得られうる。
【0047】
本発明の一実施様態において、前記溶融拡散法による複合粒子は、次のような方法によって得ることができる。反応チャンバを準備し、ここに多孔性粒子及び相変換物質を投入する。前記多孔性粒子と相変換物質の投入量の割合は、特定の範囲に限定されず、多孔性粒子の気孔体積を考慮して相変換物質の量を適切に調節し得る。望ましくは、前記相変換物質の量(体積)は、前記多孔性粒子の気孔体積を超過し得る。次に、前記チャンバを密閉し、常圧よりも低い圧力になるように、望ましくは、真空になるように圧力を調節する。また、前記チャンバの内部温度を、望ましくは相変換物質の融点以上に昇温して前記相変換物質が溶融されるようにする。相変換物質が溶融されると、真空下で適切な時間維持した後、温度を低めて相変換物質をさらに固化させる。このような方法で相変換物質が多孔性粒子の気孔内へ流入及び充填され得る。
【0048】
一方、本発明による前記固体電解質膜は、前記複合粒子を含み、かつシート状薄膜に製造可能な方法であれば、製造方法は特に限定されない。本発明の一実施様態において、前記固体電解質膜は、同じ方法で作られ得る。まず、適切な溶媒に固体電解質材料を投入して固体電解質材料を溶解または分散させ、ここに準備された複合粒子を投入して固体電解質膜形成用のスラリーを準備する。前記スラリーをポリエチレンテレフタレートのような離型紙に所定の厚さで塗布して乾燥した後、離型紙を除去して固体電解質膜を得ることができる。
【0049】
図1は、本発明の一実施様態による複合粒子及び前記複合粒子を含む固体電解質膜並びにそれを含む電極組立体の断面を概略的に示した図である。前記電極組立体内で前記固体電解質膜30は、負極10と正極20との間に介在され得る。図面を参照すると、本発明の固体電解質膜30は、高分子固体電解質材料31内に複合粒子32がランダムで分布しており、前記複合粒子は、多孔性粒子32aが相変換物質32bで充填されている。電池の充放電によって電池の内部温度が上昇して複合粒子中の相変換物質が液化して固体電解質膜のイオン伝導度の上昇に影響を及ぼす作用を概略的に示している。図1によれば、相変換物質32bで充填された複合粒子が固体電解質膜中に分布している。これによると、相変換物質が液化して複合粒子の表面に溶出し、複合粒子の周辺部の固体電解質材料が軟化し、複合粒子の表面に沿ってイオン伝達経路33が形成され、これによって伝導度が促進され得る。図1において、点線で示した矢印は、イオン伝達経路を示す。図2は、相変換物質32bが多孔性粒子32a内に充填されず、固体電解質膜30の中に高分子固体電解質材料31と単に混合された様子を示す。この場合には、相変換物質によって固体電解質膜が軟化してもイオン伝達経路33が連続的に形成されにくいため、本発明に比べてイオン伝導度の改善効果が少ない。
【0050】
また、本発明は、本発明による固体電解質膜を含む全固体電池を提供する。前記全固体電池は、正極、負極及び前記正極と負極との間に前記固体電解質膜が介在されたものである。
【0051】
本発明において、正極は、正極集電体及び前記集電体の少なくとも一側表面に、正極活物質、導電材及び固体電解質を含む正極活物質層を備える。前記正極活物質は、必要に応じてバインダー樹脂をさらに含み得る。前記正極活物質は、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn、LiMnOなど)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や一つまたはそれ以上の遷移金属で置き換えられた化合物;化学式Li1+xMn2-x(ここで、xは、0~0.33である。)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO); LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNiCoMn(ここで、x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1)、化学式LiNi1-x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である。)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である。)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置き換えられたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOのうち一種または二種以上の混合物を含み得る。
【0052】
本発明において、前記負極は、負極集電体及び前記集電体の少なくとも一側表面に、負極活物質、導電材及び固体電解質を含む負極活物質層を備える。前記負極活物質層は、必要に応じてバインダー樹脂をさらに含み得る。前記負極は、負極活物質として、リチウム金属酸化物、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;すず系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi及びBiなどの金属酸化物;ポリアセンチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物のうち選択された一種または二種以上の混合物を含み得る。
【0053】
本発明の具体的な一実施様態において、前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維または金属繊維、金属粉末、導電性ウィスカー、導電性金属酸化物、活性炭(activated carbon)及びポリフェニレン誘導体からなる群より選択されたいずれか一つまたはこれらの二種以上の導電性材料の混合物であり得る。より具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、スーパーP(super-p)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、デンカ(denka)ブラック、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム及び酸化チタンからなる群より選択された一種またはこれらの二種以上の導電性材料の混合物であり得る。
【0054】
前記集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、ステンレススチール、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。
【0055】
前記バインダー樹脂としては、当業界で電極に通常使用される高分子を使い得る。このようなバインダー樹脂の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-cotrichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyetylexyl acrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetatepropionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース (cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
前記正極や負極に含まれる固体電解質は、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質のうち選択された一種以上を含み得る。前記固体電解質膜について説明した内容を参照し得る。
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらによって限定されることではない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるのである。
【0058】
実施例1
相変換物質としてコハク酸ニトリル(Succinonitrile;SN)をMIL-53(metal-organic framework)(Sigma-aldrich)に溶融拡散法を用いて充填した。SNとMIL-53(粒子直径1~3μm、気孔直径約4nm)を1:1の体積比で真空チャンバに入れて100℃以上加熱した。次に、真空及び100℃条件で12時間維持した後、徐々に常温まで温度を低めた。このような方法で微細気孔にSNが充填された複合粒子を得た。次に、ポリエチレンオキシド(Polyethyleneoxide;PEO)とLiTFSIを[EO]/[Li]=8/1(モル比)でアセトニトリル(Acetonitrile)に溶解すると共に、前記複合粒子をPEO:複合粒子の体積比で6:4の割合で混合してスラリー形態に製造した。前記スラリーを離型フィルム(PETフィルム)の上にドクターブレード方法で薄く塗布して常温で自然乾燥した。その後、離型フィルムを除去して固体電解質膜を得た。前記固体電解質膜の製造はいずれもドライルームで行われた。
【0059】
実施例2
相変換物質としてコハク酸ニトリル(SN)の代わりにエチレンカーボネート(Ethylene carbonate)を使用すること及びチャンバ温度を60℃まで昇温して維持することの他には、実施例1と同様の方法で固体電解質膜を製造した。
【0060】
比較例1
充填されていないMIL-53を使用することを除いては、実施例1と同様の方法で固体電解質膜を得た。
【0061】
比較例2
ポリエチレン素材の多孔性シート(気孔度50vol%)を実施例1と同様に溶融拡散法を用いてコハク酸ニトリル(SN)で含浸した。このような方法で微細気孔にSNが充填された膜構造体を得た。前記膜構造体で多孔性シートとSNは、体積比で1:1の割合を有する。次に、ポリエチレンオキシド(PEO)とLiTFSIを[EO]/[Li]=8/1(モル比)でアセトニトリルに溶解してスラリー形態に製造した。前記スラリーを離型フィルム(PETフィルム)の上にドクターブレード方法で薄く塗布して常温で自然乾燥した。その後、離型フィルムを除去して固体電解質フィルムを得た。次に、前記SNで充填されたシート構造体と前記電解質フィルムを積層して電解質膜を得た。一方、前記シート構造体と固体電解質フィルムの製造はいずれもドライルームで行われた。
【0062】
イオン伝導度の測定
コインセルを用いて前記実施例及び比較例から得た固体電解質膜のイオン伝導度を測定した。前記イオン伝導度は、EIS方法を用いて常温で測定された。前記EISは、10mV、100kHz~1Hzの条件で測定された。測定されたイオン伝導度は、下記の表1に示した。実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で使用された相変換物質の量は同一であった。下記の表1のように、本発明による複合粒子が含まれた実施例の固体電解質膜のイオン伝導度が、比較例の固体電解質膜よりも優秀なイオン伝導度を示すことを確認することができた。即ち、相変換物質を同量使用する場合、本発明による構造的特徴を有する電解質膜で高いイオン伝導度を確保できることが確認された。
【0063】
【表1】
【符号の説明】
【0064】
10 負極
20 正極
30 固体電解質膜
31 固体電解質材料
32 複合粒子
32a 多孔性粒子
32b 相変換物質
33 イオン伝達経路
図1
図2