(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】グラフェン含浸外側コーティングを組み込んだ流体輸送管
(51)【国際特許分類】
F16L 9/147 20060101AFI20240510BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240510BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20240510BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240510BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240510BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240510BHJP
【FI】
F16L9/147
B32B15/08 E
B32B1/08 Z
C09D5/00 D
C09D201/00
C09D7/61
(21)【出願番号】P 2023514728
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 US2021048676
(87)【国際公開番号】W WO2022051370
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2024-01-22
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522013256
【氏名又は名称】マーティンリア インターナショナル ユーエス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】バナージ、 アニンディア
(72)【発明者】
【氏名】ドーブル、 コリー
(72)【発明者】
【氏名】アイヤー、 ガネシュ
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0041063(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111500171(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/147
B32B 15/08
B32B 1/08
C09D 5/00
C09D 201/00
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用流体輸送管として使用するための被覆金属管であって、
円形の断面形状に形成された管と、
前記管の上に塗布された溶剤ベースのプライマー層と、
靱性と硬度のバランスを提供するために前記プライマー層の上に塗布された、
耐衝撃性を有する非ポリアミドコポリマーとグラフェン又はグラフェン酸化物粉末を組み込んだ
ポリマーとの組み合わせを含む少なくとも1つの
最外層と
を備える被覆金属管。
【請求項2】
前記少なくとも1つ
のコポリマーの層は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー又は他の天然ポリマー又は合成ポリマーのいずれかをさらに備え、限定するものではないが、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6,12、ポリエチレン、テレフタレート、ポリブチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及びポリウレタンのいずれかから選択することができる、請求項1に記載の被覆金属管。
【請求項3】
前記管は、銅めっき低炭素鋼、低炭素鋼、ステンレス鋼、又は押出アルミニウムのいずれかをさらに備える、請求項1の被覆金属管。
【請求項4】
前記管の内径に塗布されたニッケルめっきをさらに備える、請求項3に記載の被覆金属管。
【請求項5】
前記管の上に直接塗布された、腐食
防止亜鉛/アルミニウム合金、電気めっき亜鉛又は溶融アルミニウムのいずれかをさらに備える、請求項1に記載の被覆金属管。
【請求項6】
クロムフリー化成皮膜、プライマー又はプライマー/接着剤コーティング、又は不動態化コーティングのいずれかをさらに備える、請求項1に記載の被覆金属管。
【請求項7】
前記ポリマーと0.1重量%から25重量%の範囲で混合されている前記グラフェン又はグラフェン酸化物粉末をさらに備える、請求項1に記載の被覆金属管。
【請求項8】
複数の層
又は単層混合物の一方として提供される
前記非ポリアミドコポリマーと前記ポリマーとをさらに含む、請求項1に記載の被覆金属管。
【請求項9】
自動車用流体輸送管として使用するための被覆金属管であって、
円形の断面形状に形成された銅めっき炭素鋼管と、
前記管の上に塗布された腐食
防止亜鉛/アルミニウム合金、電気めっき亜鉛又は溶融アルミニウムを含む少なくとも1つの中間層と、
靱性と硬度のバランスを提供するために前記中間層の上に塗布され
た、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末
を組み込んだポリマー層と組み合わせた、耐衝撃性を有する非ポリアミドコポリマー層と
を含む被覆金属管。
【請求項10】
前記
コポリマー層は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー又は他の天然ポリマー又は合成ポリマーのいずれかをさらに備え、限定するものではないが、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6,12、ポリエチレン、テレフタレート、ポリブチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及びポリウレタンのいずれかから選択することができる、請求項9に記載の被覆金属管。
【請求項11】
前記管の内径に塗布されたニッケルめっきをさらに備える、請求項9に記載の被覆金属管。
【請求項12】
前
記管は
、銅めっき低炭素鋼、低炭素鋼、ステンレス鋼、又はアルミニウムのいずれかをさらに備える、請求項9に記載の被覆金属管。
【請求項13】
クロムフリー化成皮膜、プライマー又はプライマー/接着剤コーティング、又は不動態化コーティングのいずれかをさらに備える、請求項9に記載の被覆金属管。
【請求項14】
前
記コポリマーと0.1重量%から25重量%の範囲で混合されている前記グラフェン又はグラフェン酸化物粉末をさらに備える、請求項9に記載の被覆金属管。
【請求項15】
複数の層
又は単層混合物の一方として提供される
前記非ポリアミドコポリマーと前記ポリマーとをさらに備える、請求項9に記載の被覆金属管。
【請求項16】
クロムフリー化成皮膜、プライマー又はプライマー/接着剤コーティング、又は不動態化コーティング銅コーティングから成る群から選択される前記中間層をさらに備える、請求項9に記載の被覆金属管。
【請求項17】
自動車用流体輸送管として使用するための被覆金属管を製造する方法であって、
銅めっき炭素鋼を円形の断面形状を示す管に形成するステップと、
前記管の上に塗布された腐食防止亜鉛/アルミニウム合金、電気めっき亜鉛又は溶融アルミニウムを含む少なくとも1つのプライマー中間層を形成するステップと、
靱性と硬度のバランスを提供するために前記中間層の上に塗布された、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末を組み込んだポリマー層と組み合わせた、耐衝撃性を有する非ポリアミドコポリマーの外側層を形成するステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記管の内径にニッケルめっきを塗布するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記中間層をクロムフリー化成皮膜、プライマー又はプライマー/接着剤コーティング、又は不動態化コーティング銅コーティングから成る群から選択するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのコポリマーの層は、前記コポリマーの層を熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー又は他の天然ポリマー又は合成ポリマーのいずれかから成る群から選択するステップをさらに含み、限定するものではないが、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6,12、ポリエチレン、テレフタレート、ポリブチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及びポリウレタンのいずれかから選択することができる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
二重壁ろう付け構造又は単一壁管溶接構造のいずれかによって前記銅めっき炭素鋼管を
形成するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月4日に出願された米国特許出願第63/074,641号及び2021年8月31日に出願された米国特許出願第17/462,518号の優先権を主張する。
【0002】
以下の説明に関して、本発明は、自動車用の流体輸送管及び関連する製造方法に関するものであり、それらを開示している。以下で説明する非限定的な実施形態によれば、流体輸送管はCuめっき低炭素鋼で構成され、亜鉛/アルミニウム、電気めっき亜鉛又は溶融アルミニウム中間層のいずれにも限定されない腐食を抑制する中間層を含む。追加の層は、不動態化のためのクロムフリー化成皮膜、電気めっき亜鉛又は溶融アルミニウムのいずれかを、溶剤ベースのプライマー層と共に、グラフェン粉末を組み込んだ材料の最外被覆と共に含むことができる。最外被覆は、単一又は複数のサブセット(多重)層のいずれかを含むことができ、限定するものではないが、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された任意の押出ポリマー又はコポリマーから構成することができる。グラフェン配合ポリマー又はコポリマーの機械的特性は、グラフェンの添加量によって決まり、グラフェンの添加量が多いほど強度が高くなる。使用されるポリマー又はコポリマーは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー又は他の天然ポリマー又は合成ポリマーのいずれかであることができ、限定するものではないが、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6,12、ポリエチレン、テレフタレート、ポリブチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及びポリウレタンのいずれかから選択することができる。
【背景技術】
【0003】
車両の流体輸送管は、車両運転中に燃料、ブレーキ液、及びトランスミッションオイル冷却剤を運ぶという重要な機能を果たす。特に燃料ラインチューブに注意を向けると、これらは通常、成形性が容易で原材料コストが低いため、単一壁炉溶接低炭素鋼で構成される。ブレーキラインチューブは通常、二重壁のろう付け管として構成され、必要に応じて流体をより高い圧力に維持するように構成される。低炭素鋼管の故障の要因は、自動車の安全な運転を損なう可能性がある摩耗、腐食、又は石の衝突のいずれかによる可能性がある。
【0004】
腐食に対する脆弱性を軽減するために、亜鉛アルミニウム合金、電気めっき亜鉛、又は溶融アルミニウムを鋼管に直接塗布することができる。この腐食抑制層を過酷な環境条件や石の衝突から保護するために、通常、熱可塑性ポリマー層がトップコートとして押出成形される。使用中、熱可塑性ポリマー層は、管の位置に応じて、壊れたクリップ、露出した配線、又はプラスチックのコンボリュートにさらされる可能性があり、周期的又は連続的な接触条件下では、熱可塑性ポリマー層の破壊につながる。この熱可塑性ポリマー層をさらに保護するために、通常は何倍もの厚さの別のポリマー層が、熱収縮ポリマー又は別の押出成形層の形で追加される。前述の管構造は、自動車産業で一般に普及しているが、管全体の重量を増加させるだけでなく、追加の製造ステップ及び関連コストを伴うため、効率的な設計ではない。
【0005】
同様に知られるように、グラフェンはハニカム格子に充填されたsp2結合炭素原子から成る二次元平面ナノ材料である。高い引張強度、高い熱及び電気伝導率などの、グラフェンを有利にする材料特性の多くは、平面グラフェンの独特な結合構造に由来する。しかしながら、自動車産業のような用途への巨視的なスケールでのグラフェンの利用は、依然として課題である。
【0006】
上記の背景説明を考慮すると、Kerin,Jrらの特許文献1は、自動車の流体輸送管として使用するための、円形の断面形状に形成された単一壁管又は二重壁管のいずれかを含む被覆金属管を教示している。管の上に中間プライマー層が塗布される。中間層の上にグラフェン粉末を組み込んだポリアミドがさらに塗布される。
【0007】
先行技術のさらなる例がPiccoらの特許文献2の自動車用流体管によって示されており、この流体管は、ガソリン/ディーゼル燃料又は作動液のいずれかを運ぶように構成され、アルミニウムのコーティングを施した金属で構成され、その上にポリアミド12の層を押出コーティングされ、流体管の耐摩耗性及び耐食性を改善する。
【0008】
Bergerらの特許文献3は、ポリマー又は金属表面に塗布した後に反応してポリマーを形成する二成分系で金属表面をコーティングする、金属製品のコーティング方法を教示している。この組成物は、より強い接着性と耐食性の向上につながる70~2700ミリグラム当量/kgのオレフィン二重結合を含む。
【0009】
川合らの特許文献4は、金属管に塗布され、金属管の外周面を覆う多層被膜を教示している。被膜は、酸化ジルコニウム及び/又は水酸化ジルコニウムを含む化学処理層を含む。プライマー層が、ポリアミドイミド及び/又はエポキシ樹脂を含む。
同じく川合の特許文献5は、多層被膜が、化学処理層及びプライマー層を含み、プライマー層が、ポリアミドイミドと、ポリアミド、フッ素樹脂、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の添加成分とをさらに含む、被覆金属管を教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第10,625,487号明細書
【文献】米国特許第6,915,820号明細書
【文献】米国特許第9,556,358号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0045357号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0119871号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、円形の断面形状に形成された単一壁管又は二重壁管のいずれかを含む自動車用の流体輸送管を開示する。流体輸送管は、Cuめっき低炭素鋼で構成され、亜鉛/アルミニウム、電気めっき亜鉛又は溶融アルミニウム中間層のいずれにも限定されない腐食を抑制する中間層を含む。追加の層は、任意選択の不動態化のためのクロムフリー化成皮膜、電気めっき亜鉛又は溶融アルミニウムのいずれかを、溶剤ベースのプライマー層及びグラフェン粉末を組み込んだ材料の最外被覆と共に含むことができる。
【0012】
最外被覆は、単層又は複数層を含むことができ、限定するものではないが、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された任意の押出ポリマー又はコポリマーから構成することができる。グラフェン配合ポリマー又はコポリマーの機械的特性は、グラフェンの添加量によって決まり、グラフェンの添加量が多いほど強度が高くなる。使用されるポリマーは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー又は他の天然ポリマー又は合成ポリマーのいずれかであることができ、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6,12、ポリエチレン、テレフタレート、ポリブチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及びポリウレタンのいずれかから選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下の詳細な説明と組み合わせて読む際には、添付の図面を参照する。ここで、同様の符号は、いくつかの図の全体にわたって同様の部分を指す。
【0014】
【
図1】第1の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図であり、銅めっき低炭素鋼のロール成形及びろう付けされた二重壁管の第1層と、溶融めっき亜鉛/アルミニウム合金の第2層と、任意選択のクロムフリー化成皮膜の第3層と、溶剤ベースのプライマーコーティングの第4層と、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマーの第5層とを示している。
【0015】
【
図2】第2の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図であり、ろう付けされた二重壁管を備えた銅めっき低炭素鋼の第1層と、腐食を抑制する電気めっき亜鉛の第2層と、任意選択の不動態化のための化成皮膜と、溶剤ベースのプライマー層と、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマーのトップコート保護層とを示している。
【0016】
【
図3】第3の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図であり、ニッケルめっきされ得る、接点溶着による低炭素鋼ロール成形単一壁管の第1層と、腐食保護のための亜鉛/アルミニウム合金の第2層と、任意選択のクロムフリー化成皮膜と、第4層の溶剤ベースのプライマー層と、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマーの第5の外側保護層とを示している。
【0017】
【
図4】第4の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図であり、ニッケルめっきされ得る、ロール成形及び溶接された低炭素鋼製の単一壁管の第1層と、腐食保護のための電気めっき亜鉛の第2層と、任意選択の不動態化のための化成皮膜と、溶剤ベースのプライマー層と、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマーのトップコートとを示している。
【0018】
【
図5】第5の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図であり、溶接単一壁又は二重壁ろう付け管を備えた低炭素鋼の第1層と、腐食保護のための溶融アルミニウムの第2層と、任意選択の不動態化のための化成皮膜と、溶剤ベースのプライマー層と、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマーのトップコートとを示している。
【0019】
【
図6】第6の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図であり、溶接単一壁又は二重壁ろう付け管を備えた低炭素鋼の第1層と、腐食保護のための亜鉛/アルミニウム合金、電気めっき亜鉛、又は溶融アルミニウムの第2層と、任意選択の不動態化のための化成皮膜と、溶剤ベースのプライマー層と、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出コポリマーのトップコートとを示している。
【0020】
【
図7】第7の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図であり、溶接単一壁管又は二重壁ろう付け管を備えた銅めっき低炭素鋼の第1層と、腐食保護のための亜鉛/アルミニウム合金、電気めっき亜鉛、又は溶融アルミニウムの第2層と、任意選択の不動態化のための化成皮膜と、溶剤ベースのプライマー層と、1つ以上の層がグラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化され得る押出ポリマー又はコポリマーの多層トップコートとを示している。
【0021】
【
図8】第8の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図であり、押出アルミニウム管の第1又はベース層と、第2の溶剤ベースのプライマー層と、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマー又はコポリマーの外側又はトップコートとを示している。
【0022】
【
図9】
図1~
図7の関連する変形例を代表する自動車用流体輸送管の端部断面図である。
【0023】
【
図10】
図8の変形例に対応する自動車用流体輸送管の端部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を非限定的に参照すると、本発明は、それぞれが耐食性、耐摩耗性及び耐衝撃性の多層又は単層コーティングシステムで被覆された、様々な組成の自動車用流体輸送管を教示する。本発明はまた、本システム、製品又はアセンブリの下でカバーされるあらゆる管を製造する関連する方法を教示する。
【0025】
開示されたそれぞれの変形例において、管は、高い耐摩耗性及び優れた絶縁特性を提供する、グラフェン粉末を組み込んだ押出ポリマー又はコポリマー材料の最外被覆(単層及び多層を含む)を含む。本発明の目的のために、本明細書で続いて記載されるコーティング厚さの様々な範囲は好ましいが非限定的な実施形態を表すものと理解され、別段の指示がない限り他の範囲を使用できることが想定される。
【0026】
最初に
図1を参照すると、第1の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図が全体として10で示されている。
図1の変形例10は複数の5つの層を含み、銅めっき低炭素鋼のロール成形及びろう付けされた二重壁管の第1層12を示している。限定するものではないが、第1層は、その内径をさらにニッケルコーティングすることができる。例えば、非限定的な例で5~12マイクロメートル(メートルの100万分の1)の厚さで塗布されるような、溶融亜鉛/アルミニウム(ガルファン)合金の第2層14が第1層12の上に塗布される。任意選択のクロムフリー化成皮膜の第3層16(0.2~0.4マイクロメートルの非限定的な厚さ範囲で塗布されるような)が、不活性層でコーティングすることによって金属の不動態化を提供するために第3層の上に塗布される。
【0027】
次に、溶剤ベースのプライマーコーティングの第4層18(例えば、限定するものではないが、3マイクロメートルなど)が化成皮膜16の上に塗布される。溶剤ベースのコーティングは、水性コーティングと比較して高レベルの有機化合物を含み、耐久性のあるフィルムの塗布、乾燥及び形成を容易にすると理解されている。最後に、押出グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化されるような押出ポリマー又はコポリマートップコートの第5層20がプライマーコーティングの上に塗布される。知られているように、グラフェンは六角形の繰り返しパターンで互いに結合した炭素原子で構成される材料であるのに対し、グラフェン酸化物は酸素含有基が混入したグラフェンを酸化したものである。
【0028】
関連する変形例のいずれかに示されるグラフェン配合ポリマーの機械的性質はグラフェンの添加量によって決まり、グラフェンの添加量が多いほど強度が高くなる。いかなる特定の添加量にも限定するものではないが、1つの非限定的な例は、所望のポリマー/コポリマーマトリックスを用いて0.1重量%から最大25重量%までの範囲のグラフェン又はグラフェン酸化物を添加することができる。
【0029】
トップコート又は層20に使用されるポリマーの範囲はさらに、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー又は他の天然ポリマー又は合成ポリマーのいずれかを含むことができ、限定するものではないが、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6,12、ポリエチレン、テレフタレート、ポリブチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及びポリウレタンのいずれかから選択することができる。さらに、この範囲の材料は、後で説明する関連する変形例の
図2~
図10のいずれかによる外側押出層に適用可能であることが理解される。
【0030】
限定するものではないが、外側層20は、グラフェン又はカーボンナノチューブの配置などの炭素の二次元同素体でさらに強化することができる。剥離技術によって製造されるような粉末状の多層グラフェンは、任意の範囲又は重量パーセントの添加によって外側層と混合される。いずれの場合も、最終的な目標は、製造されたポリマー材料の外側層に優れた特性を提供して、外側層が改善された機械的特性、優れた耐摩耗性、及び強化されたバリア性(極端な高温/低温の管内部を保護し、疎水性を確立するなど)、ならびに下層の鋼管に対する耐衝撃性の向上を示すようにすることである。
【0031】
また知られているように、グラフェンは、1原子層分の厚さの炭素原子で作られた原子スケールの六方格子である。さらに知られているように、グラフェンはハニカム結晶格子に密に充填されたsp2結合炭素原子の1原子の厚さの平面シートである。グラフェンは炭素原子とそれらの結合で作られた原子スケールの金網と見なすことができる。名前はGRAPHITE+-ENEに由来し、グラファイト自体は互いに積み重ねられた多数のグラフェンシートで構成される。
【0032】
グラフェンの炭素間結合長は約0.142nmである。グラフェンは、グラファイト、カーボンナノチューブ及びフラーレンを含むいくつかの炭素同素体の基本構造要素である。また、グラフェンは、無限大の芳香族分子と見なすこともでき、これはグラフェンと呼ばれる平らな多環芳香族炭化水素のファミリーの限定的なケースである。グラフェンは鋼鉄の200倍の破壊強度を有し、これまでに試験された材料の中で最も強い材料であることが測定で示されている。したがって、本明細書によって裏付けられるように、グラフェン粉末を様々な外側コーティング押出ポリマー材料と組み合わせることで、優れた耐食性、耐摩耗性、耐衝撃性を提供する環境保護の外側又はトップコート被覆が提供される。
【0033】
図2を参照すると、第2の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図が全体として30で示され、ろう付けされた二重壁管を備えた銅めっき低炭素鋼の第1層32を示している。電気めっき亜鉛34の第2層が、溶融めっきなどによって鋼管に対する腐食保護のために塗布される。任意選択のクロムフリー不動態化誘導化成皮膜の第3層36が、第4の溶剤ベース又はプライマーコーティング38と、上部保護層として提供されるグラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマー又はコポリマー層の第5層40と共に、電気めっき亜鉛コーティング34の上に塗布される。
【0034】
図1の例(符号20)と同様に、第5(外側)層40はグラフェン、グラフェン酸化物又はカーボンナノチューブの配置などの炭素の二次元同素体でさらに強化することができる。剥離技術によって製造されるような粉末状の多層グラフェンは、任意の重量パーセントの添加でポリアミドと混合される。いずれの場合も、最終的な目標は先と同様に、押出された外側のポリマー又はコポリマー(層20に関連して提示されたリストのいずれかから選択できるものなど)に優れた特性を提供し、外側のポリマー又はコポリマーが改善された機械的特性、優れた耐摩耗性、ならびに強化されたバリア性及び鋼管に対する耐衝撃性を示すようにすることである。
【0035】
図3に進むと、第3の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図が全体として50で示され、ニッケルめっきされ得る、接点溶着単一壁管を備えた低炭素鋼の第1層52を示している。亜鉛アルミニウム合金の第2層54が、腐食を抑制するために鋼管の上に塗布される。任意選択のクロムフリー化成皮膜56(
図3)が亜鉛/アルミニウム合金54の上に塗布され、その上に任意の所望の厚さに従って第4の溶剤ベースのプライマーコーティング58が塗布される。
【0036】
上部保護層としてグラフェン粉末と組み合わせて強化された押出ポリマー又はコポリマーの第5層60。第5層60は、
図1の20及び
図2の40で説明されたものと同様の特性及び特徴を示し、一例において50から150マイクロメートル以上の範囲内にあることを含むがこれに限定されない、任意の厚さに従って塗布することができる。
【0037】
図4に進むと、第4の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図が全体として70で示され、ニッケルめっきを有しても有していなくてもよい、ロール成形及び溶接された低炭素銅めっき鋼製の単一壁管の第1層72を示している。第2の電気めっき亜鉛層74(1つの非限定的な変形例では厚さ3マイクロメートルなど)が、腐食保護のためにベースの鋼管72の上に塗布される。
【0038】
任意選択の化成皮膜の第3の層76が不動態化のためにこの場合も提供され、第4の溶剤ベースのプライマー層78が続き、グラフェン粉末で強化された押出ポリマー又はコポリマーのトップコート層80がプライマーコーティング上に押し出され、上部保護層として機能する。前の実施形態の層20、40及び60と同様に、押し出されたグラフェン又はグラフェン酸化物粉末を含む外側ポリマー又はコポリマー層は、被覆金属管に、従来技術のコーティングよりも強化された機械的特性、(環境)バリア性、及び耐衝撃性を提供する。
【0039】
図5は、第5の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の全体として80で示される縦断面図であり、銅めっき低炭素鋼の第1層82を、所定の壁厚の溶接された単一壁管又は二重壁ろう付け管のいずれかと共に示している。第2の溶融アルミニウム層84が腐食保護のために鋼管の上に塗布され、任意選択の不動態化のための化成皮膜86と、それに続く溶剤ベースのプライマー層88が続く。グラフェン又はグラフェン酸化物粉末を混入した押出ポリマー又はコポリマー90のトップコート層は、溶剤ベース層88の上に塗布される上部保護層として機能する。
【0040】
図6に進むと、第6の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図が全体として100で示され、溶接された単一壁管又は二重壁のろう付け管を備えた銅めっき低炭素鋼の第1層102と、腐食保護のための亜鉛/アルミニウム合金、電気めっき亜鉛、又は溶融アルミニウムの第2層104と、任意選択の不動態化のための化成皮膜106と、溶剤ベースのプライマー層108と、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマー又はコポリマー110のトップコートとを示している。
【0041】
図7は、第7の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の全体として110で示される縦断面図であり、溶接された単一壁管又は二重壁のろう付け管を備えた銅めっき低炭素鋼の第1層112と、亜鉛/アルミニウム合金の第2層114と、腐食保護のための電気めっき亜鉛、又は溶融アルミニウムと、任意選択の不動態化のための化成皮膜116と、及び溶剤ベースのプライマー層118とを示している。
【0042】
グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマー又はコポリマーが、第1のトップコート120及び第2のトップコート122として提供される。限定するものではないが、任意の数の多層又はサブセット層を外側のポリマー及びコポリマーで被覆された金属管に組み込むことができ、個々のコーティングはそれぞれが、前述のように、この場合も先と同様に、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー又は他の天然ポリマー又は合成ポリマーのいずれにも限定されない、任意のタイプのコポリマーを含む材料の任意の組み合わせ又はサブコンビネーションを含み、限定するものではないが、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6、12、ポリエチレン、テレフタレート、ポリブチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及びポリウレタンのいずれかから選択することができる。
【0043】
本発明はさらに、特定の組成に対応する様々な厚さに従って、また所定の用途で使用される管の所望の材料特性を最適化するために提供することができる、任意の複数の押出ポリマートップコートを想定している。これはさらに、限定するものではないが、中間の押出ポリマー層120又は最上部の押出ポリマー層122のいずれかに、混入したグラフェン又はグラフェン酸化物粉末の使用を分離することを含むことができる。限定するものではないが、本発明は、単数又は複数のポリマー又はコポリマー層のいずれかの使用を想定しており、これらは、任意の均一配置又は交互配置で提供される。
【0044】
図8に進むと、一般に、第8の非限定的な実施形態による自動車用流体輸送管の壁部分の縦断面図が全体として124で示され、押出アルミニウム管126の第1又はベース層と、第2の溶剤ベースのプライマー層128と、グラフェン又はグラフェン酸化物粉末で強化された押出ポリマー又はコポリマーの外側又はトップコート130とを示している。
【0045】
図9は、
図1~
図7の関連する変形例を代表する自動車用流体輸送管の端部断面図であり、例示的な表現により、
図7に記載された層112、114、116、118、120及び122を示している。
図10は、
図8の変形例に対応し、前述の層126、128及び130を繰り返す自動車用流体輸送管の端部断面図である。
【0046】
本発明を説明してきたが、他の及び追加の好ましい実施形態が、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、関係する分野の当業者には明らかとなるであろう。これにはさらに、限定するものではないが、管が、銅めっき低炭素鋼、低炭素鋼、ステンレス鋼、又はアルミニウムのいずれかで構成されることを含むことができる。本発明はさらに、外側ポリマー層を管に塗布するために押し出し以外の他の塗布プロセスを想定している。
【0047】
関連する変形例の中で、これには、押出に限定されず、内側の金属管の周りに外側のポリアミド/グラフェン粉末層を形成するための他の射出成形技術を含む、任意の適切な成形プロセスの使用、及び中間腐食抑制層の所望の組み合わせが含まれ得る。
【0048】
本発明を説明してきたが、他の及び追加の好ましい実施形態が、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、関係する分野の当業者には明らかとなるであろう。詳細な説明及び図面は開示を支持するものであるとさらに理解され、その範囲は特許請求の範囲によって定義される。特許請求の範囲の教示を実行するための最良のモード及び他の実施形態のいくつかを詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義される開示を実行するための様々な代替的な設計及び実施形態が存在する。
【0049】
前述の開示は、本開示を開示された正確な形態又は特定の使用分野に限定することを意図していないものとしてさらに理解される。このため、本開示に対する様々な代替的な実施形態及び/又は修正が、本明細書に明示的に記載されているか暗示されているかにかかわらず、本開示に照らして可能であると考えられる。このように本開示の実施形態を説明してきたが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に変更を加えることができることを認識するであろう。したがって、本開示はクレームによってのみ限定される。
【0050】
前述の明細書において、本開示は特定の実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、当業者が理解するように、本明細書に開示された様々な実施形態は、本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく、様々な他の方法で修正又は実施することができる。したがって、この説明は例示と見なされるべきであり、本開示の様々な実施形態を作成及び使用する方法を当業者に教示することを目的としている。本明細書に図示及び説明された本開示の形態は、代表的な実施形態として解釈されるべきであることが理解されるべきである。同等の要素、材料、プロセス又はステップは、本明細書に代表的に図示及び説明されたものの代わりにすることができる。さらに、本開示の特定の特徴は他の特徴の使用とは無関係に利用することができ、すべてが本開示のこの説明の利益を得た後に当業者に明らかになるであろう。本開示を説明及び特許請求するために使用される「含む」、「備える」、「組み込む」、「から成る」、「有する」、「である」などの表現は非排他的に解釈されること、すなわち、明示的に記載されていない項目、構成要素又は要素も存在することを可能にすることを意図している。単数形への言及も複数形に関連すると解釈されるべきである。
【0051】
さらに、本明細書に開示される様々な実施形態は、例示及び説明の意味で解釈されるべきであり、決して本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての結合の指示(例えば、取り付けられる、固定される、連結される、接続されるなど)は、本開示の読者の理解を助けるためにのみ使用され、特に本明細書に開示されたシステム及び/又は方法の位置、向き又は使用に関して制限を設けるものではない。したがって、結合の指示がある場合は広く解釈されるべきである。さらに、このような結合の指示は、必ずしも2つの要素が互いに直接接続されていることを暗示するものではない。
【0052】
また、「第1」、「第2」、「第3」、「1次」、「2次」、「主」又は他の通常の用語及び/又は数値用語などであるがこれらに限定されないすべての数値用語も、本開示の様々な要素、実施形態、変形及び/又は修正についての読者の理解を助けるための識別子としてのみ解釈されるべきであり、特に別の要素、実施形態、変形及び/又は修正に対するいかなる要素、実施形態、変形及び/又は修正の順序又は優先度に関していかなる制限も設けることはできない。
【0053】
また、図面/図に示される要素の1つ以上が、特定の用途に応じて有用であるようにより分離又は統合された方法で実装することも、特定の場合には削除又は動作不可能とすることさえできることが理解されるであろう。さらに、特に明記しない限り、図面/図の信号ハッチは例示としてのみ考慮されるべきであり、限定ではないと見なされるべきである。