(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】圧電素子アッセンブリ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 30/50 20230101AFI20240510BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20240510BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240510BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H10N30/50
H10N30/87
H10N30/20
H04R17/00
(21)【出願番号】P 2023531006
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035501
(87)【国際公開番号】W WO2023053160
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】高杉 知
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-051903(JP,A)
【文献】国際公開第2019/234854(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/152776(WO,A1)
【文献】特開2006-060281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/50
H10N 30/87
H10N 30/20
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面及び上面の間を貫通する複数の開口部が設けられた剛性の基板と、
前記複数の開口部を覆うように前記基板の上面に固着された可撓性樹脂膜と、
上面電極及び下面電極を有し、平面視において前記複数の開口部とそれぞれ重合するように
前記下面電極が前記可撓性樹脂膜と対向する状態で前記可撓性樹脂膜に固着された複数の積層型圧電素子と、
平面視において前記複数の開口部の全てを囲む大きさの中央開口を有し、前記中央開口が前記複数の開口部の全てを囲むように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された下側封止板と、
前記下側封止板の上面に固着された配線体とを備えた圧電素子アッセンブリであって、
前記圧電素子は、圧電材によって形成された圧電素子本体と、前記圧電素子本体の上面及び下面にそれぞれ設けられ
、外部電極を形成する
前記上面電極及び前記下面電極と、前記圧電素子本体を厚み方向に関し上下に区画す
る内部電極と、基端側が前記下面電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に下面電極側隙間が存する状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて下面電極端子を形成する下面電極用接続体と、基端側が前記内部電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に内部電極側隙間が存する状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて内部電極端子を形成する内部電極用接続体とを有し、
前記配線体は、前記圧電素子の前記外部電極及び前記内部電極にそれぞれ電気的に接続される第1及び第2配線と、前記第1及び第2配線を支持する絶縁性ベース層と、前記第1及び第2配線の少なくとも一部を前記ベース層とは反対側から覆う絶縁性カバー層とを有し、
前記ベース層及び前記カバー層は、前記複数の圧電素子のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数の圧電素子重合部位と、前記複数の圧電素子重合部位を一体的に保持する先端部位とを有し、
前記ベース層及び前記カバー層のうち前記圧電素子と対向する側に位置する圧電素子側絶縁層の圧電素子重合部位は、前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記上面電極のうち前記下面電極側隙間を介して前記下面電極端子と対向する下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に囲む領域と平面視において重合する外部電極タブ領域であって、外部電極接続開口が設けられた外部電極タブ領域と、前記内部電極端子の少なくとも一部と平面視において重合する内部電極タブ領域であって、内部電極接続開口が設けられた内部電極タブ領域とを有し、
前記第1配線は一部が前記外部電極接続開口を跨ぎ、前記第2配線は一部が前記内部電極接続開口を跨いでおり、
前記配線体は、前記外部電極接続開口が前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に含む領域と平面視において重合し且つ前記内部電極接続開口が前記内部電極端子の少なくとも一部と平面視において重合した状態で、前記下側封止板の上面に固着され、
前記第1配線は、前記外部電極接続開口を跨ぐ部分が第1導電性接合部材を介して前記下面電極端子及び前記上面電極に電気的に接続され、
前記第2配線は、前記内部電極接続開口を跨ぐ部分が第2導電性接合部材を介して前記内部電極端子に電気的に接続されており、
前記上面電極のうち前記内部電極側隙間を介して前記内部電極端子と対向する内部電極端子対向領域及び前記内部電極側隙間のうち前記内部電極端子対向領域に隣接する領域が絶縁性被膜によって一体的に覆われており、前記第2配線のうち前記内部電極接続開口を跨ぐ部分と前記上面電極との間には前記絶縁性被膜が介在されていることを特徴とする圧電素子アッセンブリ。
【請求項2】
前記第1導電性接合
部材は、前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記上面電極のうち前記下面電極側隙間を介して前記下面電極端子と対向する下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に覆うように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子アッセンブリ。
【請求項3】
前記ベース層及び前記カバー層のうち前記圧電素子から離間された側に位置する絶縁層の圧電素子重合部位は、前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に囲む領域と平面視において重合する外部電極タブ領域であって、第1アクセス開口が設けられた外部電極タブ領域と、前記内部電極端子の少なくとも一部と平面視において重合する内部電極タブ領域であって、第2アクセス開口が設けられた第2タブ領域とを有していることを特徴とする請求項
1又は2に記載の圧電素子アッセンブリ。
【請求項4】
下面及び上面の間を貫通する複数の開口部が設けられた剛性の基板と、前記複数の開口部を覆うように前記基板の上面に固着された可撓性樹脂膜と、
上面電極及び下面電極を有し、平面視において前記複数の開口部とそれぞれ重合するように
前記下面電極が前記可撓性樹脂膜と対向する状態で前記可撓性樹脂膜に固着された複数の積層型圧電素子と、平面視において前記複数の開口部の全てを囲む大きさの中央開口を有し、前記中央開口が前記複数の開口部の全てを囲むように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された下側封止板と、前記下側封止板の上面に固着された配線体とを備え、前記圧電素子は、圧電材によって形成された圧電素子本体と、前記圧電素子本体の上面及び下面にそれぞれ設けられ
、外部電極を形成する
前記上面電極及び前記下面電極と、前記圧電素子本体を厚み方向に関し上下に区画す
る内部電極と、基端側が前記下面電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に下面電極側隙間が存する状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて下面電極端子を形成する下面電極用接続体と、基端側が前記内部電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に内部電極側隙間が存する状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて内部電極端子を形成する内部電極用接続体とを有し、前記配線体は、前記圧電素子の前記外部電極及び前記内部電極にそれぞれ電気的に接続される第1及び第2配線と、前記第1及び第2配線を支持する絶縁性ベース層と、前記第1及び第2配線の少なくとも一部を前記ベース層とは反対側から覆う絶縁性カバー層とを有し、前記ベース層及び前記カバー層は、前記複数の圧電素子のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数の圧電素子重合部位と、前記複数の圧電素子重合部位を一体的に保持する先端部位とを有し、前記ベース層及び前記カバー層のうち前記圧電素子と対向する側に位置する圧電素子側絶縁層の圧電素子重合部位は、前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記上面電極のうち前記下面電極側隙間を介して前記下面電極端子と対向する下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に囲む領域と平面視において重合する外部電極タブ領域であって、外部電極接続開口が設けられた外部電極タブ領域と、前記内部電極端子の少なくとも一部と平面視において重合する内部電極タブ領域であって、内部電極接続開口が設けられた内部電極タブ領域とを有している圧電素子アッセンブリの製造方法であって、
前記上面電極のうち少なくとも前記内部電極側隙間を介して前記内部電極端子と対向する内部電極端子対向領域及び前記内部電極側隙間のうち前記内部電極端子対向領域に隣接する領域を絶縁性被膜で一体的に被覆する絶縁性被膜被覆工程と、
前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に覆うように第1導電性接合部材を設け、且つ、前記内部電極端子の少なくとも一部を覆うように第2導電性接合部材を設ける工程と、
前記第1配線のうち前記外
部電極接続開口を跨ぐ部分が前記第1導電性接合部材に接触し且つ前記第2配線のうち前記内
部電極接続開口を跨ぐ部分が前記第2導電性接合部材に接触するように、前記配線体を設置する工程と、
前記第1配線のうち前記外
部電極接続開口を跨ぐ部分及び前記第1導電性接合部材を固着させ且つ前記第2配線のうち前記内
部電極接続開口を跨ぐ部分及び前記第2導電性接合部材を固着させる固着工程とを備え、
前記第2配線のうち前記内部電極接続開口を跨ぐ部分と前記上面電極との間には前記絶縁性被膜が介在されていることを特徴とする圧電素子アッセンブリの製造方法。
【請求項5】
前記絶縁性被膜被覆工程は、前記絶縁性被膜によって被覆すべき領域に熱硬化型絶縁性樹脂を塗布し、その後に加熱するように構成されていることを特徴とする請求項
4に記載の圧電素子アッセンブリの製造方法。
【請求項6】
前記第1及び第2導電性接合
部材は熱硬化型導電性接着剤とされており、
前記固着工程は、熱硬化型導電性接着剤とされた前記第1及び第2導電性接合
部材を加熱硬化させるように構成されていることを特徴とする請求項
4又は
5に記載の圧電素子アッセンブリの製造方法。
【請求項7】
前記第1及び第2導電性接合
部材はクリームはんだとされており、
前記固着工程は、クリームはんだとされた前記第1及び第2導電性接合
部材を加熱溶融させた後に、降温させて固化させるように構成されていることを特徴とする請求項
4から
6の何れかに記載の圧電素子アッセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型圧電素子と前記圧電素子の外部電極及び内部電極にそれぞれ電気的に接続される第1及び第2配線を有する配線体とを備えた圧電素子アッセンブリ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型圧電素子として、圧電材によって形成された圧電素子本体と、前記圧電素子本体の上面及び下面にそれぞれ設けられた上面電極及び下面電極と、前記圧電素子本体を厚み方向に関し上方側の第1圧電部位及び下方側の第2圧電部位に区画する内部電極と、基端側が前記下面電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に下面電極側隙間を存した状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて下面電極端子を形成する下面電極用接続体と、基端側が前記内部電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に内部電極側隙間を存した状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて内部電極端子を形成する内部電極用接続体とを備えた圧電素子が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
斯かる構成の積層型圧電素子は、外部電極を形成する前記上面電極及び前記下面電極の双方、並びに、前記内部電極の全てに対して、厚み方向一方側の上面から対応する配線の電気接続を行うことができる点において、有用である。
【0004】
即ち、前記下面電極端子と前記上面電極のうち前記下面電極側隙間を介して前記下面電極端子に対向する下面電極端子対向領域との双方に跨るように第1導電性接着剤を設け、前記第1導電性接着剤に対応する第1配線を接合させることによって、前記上面電極及び前記下面電極の双方への前記第1配線の電気接続を前記圧電素子の上面で行うことができ、さらに、前記内部電極端子上に第2導電性接着剤を設け、前記第2導電性接着剤に対応する第2配線を接合させることによって、前記内部電極への前記第2配線の電気接続を前記圧電素子の上面で行うことができる。
【0005】
ところで、前記圧電素子は、前記外部電極及び前記内部電極間に印加された電圧をたわみ振動へ変換、又は、伝播される振動を前記第1及び第2電極間の電圧へ変換するものであるが、電圧及びたわみ振動の間の変換効率を向上させる為には、前記上面電極及び前記内部電極の間の対向面積、並びに、前記内部電極及び前記下面電極の間の対向面積を可及的に拡大させる必要がある。
【0006】
しかしながら、前記上面電極及び前記内部電極の間の対向面積の可及的な拡大を図る為には、前記上面電極自体の面積の可及的な拡大を図る必要があり、下記問題が生じる。
【0007】
即ち、前記上面電極の面積拡大は前記内部電極側隙間の狭小化を招くことになり、前記内部電極端子上に塗布する前記第2導電性接着剤の塗布量のばらつきや塗布位置のばらつきによって、前記第2導電性接着剤が前記上面電極に接触する危険性が増大する。これは、前記外部電極(前記上部電極)及び前記内部電極間の短絡による歩留まりの低下、又は、前記第2導電性接着剤の塗布作業の効率低下を招く。
【0008】
さらに、前記内部電極側隙間の狭小化は、前記第2導電性接着剤の塗布作業の際に当該第2導電性接着剤が前記上面電極に接触しなかったとしても、高温高湿等の前記圧電素子の使用環境条件下においては、イオンマイグレーションが発生して短絡不良を招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、積層型圧電素子と前記圧電素子に電気的に接続される配線を有する配線体とを備えた圧電素子アッセンブリであって、前記圧電素子の厚み方向一方側の上面において、上面電極及び下面電極を含む外部電極と対応する配線との電気接続、並びに、内部電極と対応する配線との電気接続を行うことができ、さらに、前記圧電素子における電圧及びたわみ振動の変換効率を向上させつつ、前記外部電極及び前記内部電極間の短絡を有効に防止し得る圧電素子アッセンブリ及びその製造方法の提供を目的とする。
【0011】
前記目的を達成する為には、本発明は、下面及び上面の間を貫通する複数の開口部が設けられた剛性の基板と、前記複数の開口部を覆うように前記基板の上面に固着された可撓性樹脂膜と、上面電極及び下面電極を有し、平面視において前記複数の開口部とそれぞれ重合するように前記下面電極が前記可撓性樹脂膜と対向する状態で前記可撓性樹脂膜に固着された複数の積層型圧電素子と、平面視において前記複数の開口部の全てを囲む大きさの中央開口を有し、前記中央開口が前記複数の開口部の全てを囲むように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された下側封止板と、前記圧電素子の外部電極及び内部電極にそれぞれ電気的に接続される第1及び第2配線を有する配線体とを備えた圧電素子アッセンブリであって、前記圧電素子は、圧電材によって形成された圧電素子本体と、前記圧電素子本体の上面及び下面にそれぞれ設けられ、外部電極を形成する前記上面電極及び前記下面電極と、前記圧電素子本体を厚み方向に関し上下に区画する内部電極と、基端側が前記下面電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に下面電極側隙間が存する状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて下面電極端子を形成する下面電極用接続体と、基端側が前記内部電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に内部電極側隙間が存する状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて内部電極端子を形成する内部電極用接続体とを有し、前記配線体は、前記圧電素子の前記外部電極及び前記内部電極にそれぞれ電気的に接続される第1及び第2配線と、前記第1及び第2配線を支持する絶縁性ベース層と、前記第1及び第2配線の少なくとも一部を前記ベース層とは反対側から覆う絶縁性カバー層とを有し、前記ベース層及び前記カバー層は、前記複数の圧電素子のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数の圧電素子重合部位と、前記複数の圧電素子重合部位を一体的に保持する先端部位とを有し、前記ベース層及び前記カバー層のうち前記圧電素子と対向する側に位置する圧電素子側絶縁層の圧電素子重合部位は、前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記上面電極のうち前記下面電極側隙間を介して前記下面電極端子と対向する下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に囲む領域と平面視において重合する外部電極タブ領域であって、外部電極接続開口が設けられた外部電極タブ領域と、前記内部電極端子の少なくとも一部と平面視において重合する内部電極タブ領域であって、内部電極接続開口が設けられた内部電極タブ領域とを有し、前記第1配線は一部が前記外部電極接続開口を跨ぎ、前記第2配線は一部が前記内部電極接続開口を跨いでおり、前記配線体は、前記外部電極接続開口が前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に含む領域と平面視において重合し且つ前記内部電極接続開口が前記内部電極端子の少なくとも一部と平面視において重合した状態で、前記下側封止板の上面に固着され、前記第1配線は、前記外部電極接続開口を跨ぐ部分が第1導電性接合部材を介して前記下面電極端子及び前記上面電極に電気的に接続され、前記第2配線は、前記内部電極接続開口を跨ぐ部分が第2導電性接合部材を介して前記内部電極端子に電気的に接続されており、前記上面電極のうち前記内部電極側隙間を介して前記内部電極端子と対向する内部電極端子対向領域及び前記内部電極側隙間のうち前記内部電極端子対向領域に隣接する領域が絶縁性被膜によって一体的に覆われており、前記第2配線のうち前記内部電極接続開口を跨ぐ部分と前記上面電極との間には前記絶縁性被膜が介在されている圧電素子アッセンブリを提供する。
【0012】
本発明に係る圧電素子アッセンブリによれば、圧電素子の厚み方向一方側の上面において、上面電極及び下面電極を含む外部電極と対応する配線との電気接続、並びに、内部電極と対応する配線との電気接続を行うことができ、さらに、前記上面電極の可及的な拡大による電圧及びたわみ振動の変換効率を向上させつつ、前記上面電極及び内部電極間の短絡を有効に防止することができる。
【0013】
好ましくは、前記第1導電性接合部材は、前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記上面電極のうち前記下面電極側隙間を介して前記下面電極端子と対向する下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に覆うように設けられる。
【0014】
好ましくは、前記ベース層及び前記カバー層のうち前記圧電素子から離間された側に位置する絶縁層の圧電素子重合部位は、前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に囲む領域と平面視において重合する外部電極タブ領域であって、第1アクセス開口が設けられた外部電極タブ領域と、前記内部電極端子の少なくとも一部と平面視において重合する内部電極タブ領域であって、第2アクセス開口が設けられた第2タブ領域とを有し得る。
【0015】
また、本発明は、前記目的を達成する為に、下面及び上面の間を貫通する複数の開口部が設けられた剛性の基板と、前記複数の開口部を覆うように前記基板の上面に固着された可撓性樹脂膜と、上面電極及び下面電極を有し、平面視において前記複数の開口部とそれぞれ重合するように前記下面電極が前記可撓性樹脂膜と対向する状態で前記可撓性樹脂膜に固着された複数の積層型圧電素子と、平面視において前記複数の開口部の全てを囲む大きさの中央開口を有し、前記中央開口が前記複数の開口部の全てを囲むように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された下側封止板と、前記下側封止板の上面に固着された配線体とを備え、前記圧電素子は、圧電材によって形成された圧電素子本体と、前記圧電素子本体の上面及び下面にそれぞれ設けられ、外部電極を形成する前記上面電極及び前記下面電極と、前記圧電素子本体を厚み方向に関し上下に区画する内部電極と、基端側が前記下面電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に下面電極側隙間が存する状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて下面電極端子を形成する下面電極用接続体と、基端側が前記内部電極に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極との間に内部電極側隙間が存する状態で前記圧電素子本体の上面に設けられて内部電極端子を形成する内部電極用接続体とを有し、前記配線体は、前記圧電素子の前記外部電極及び前記内部電極にそれぞれ電気的に接続される第1及び第2配線と、前記第1及び第2配線を支持する絶縁性ベース層と、前記第1及び第2配線の少なくとも一部を前記ベース層とは反対側から覆う絶縁性カバー層とを有し、前記ベース層及び前記カバー層は、前記複数の圧電素子のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数の圧電素子重合部位と、前記複数の圧電素子重合部位を一体的に保持する先端部位とを有し、前記ベース層及び前記カバー層のうち前記圧電素子と対向する側に位置する圧電素子側絶縁層の圧電素子重合部位は、前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記上面電極のうち前記下面電極側隙間を介して前記下面電極端子と対向する下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に囲む領域と平面視において重合する外部電極タブ領域であって、外部電極接続開口が設けられた外部電極タブ領域と、前記内部電極端子の少なくとも一部と平面視において重合する内部電極タブ領域であって、内部電極接続開口が設けられた内部電極タブ領域とを有している圧電素子アッセンブリの製造方法であって、前記上面電極のうち少なくとも前記内部電極側隙間を介して前記内部電極端子と対向する内部電極端子対向領域及び前記内部電極側隙間のうち前記内部電極端子対向領域に隣接する領域を絶縁性被膜で一体的に被覆する絶縁性被膜被覆工程と、前記下面電極端子の少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域の少なくとも一部を一体的に覆うように第1導電性接合部材を設け、且つ、前記内部電極端子の少なくとも一部を覆うように第2導電性接合部材を設ける工程と、前記第1配線のうち前記外部電極接続開口を跨ぐ部分が前記第1導電性接合部材に接触し且つ前記第2配線のうち前記内部電極接続開口を跨ぐ部分が前記第2導電性接合部材に接触するように、前記配線体を設置する工程と、前記第1配線のうち前記外部電極接続開口を跨ぐ部分及び前記第1導電性接合部材を固着させ且つ前記第2配線のうち前記内部電極接続開口を跨ぐ部分及び前記第2導電性接合部材を固着させる固着工程とを備え、前記第2配線のうち前記内部電極接続開口を跨ぐ部分と前記上面電極との間には前記絶縁性被膜が介在されている圧電素子アッセンブリの製造方法を提供する。
【0016】
例えば、前記絶縁性被膜被覆工程は、前記絶縁性被膜によって被覆すべき領域に熱硬化型絶縁性樹脂を塗布し、その後に加熱するように構成される。
【0017】
一形態においては、前記第1及び第2導電性接合部材は熱硬化型導電性接着剤とされる。
この場合、前記固着工程は、熱硬化型導電性接着剤とされた前記第1及び第2導電性接合材を加熱硬化させるように構成される。
【0018】
他形態においては、前記第1及び第2導電性接合部材はクリームはんだとされる。
この場合、前記固着工程は、クリームはんだとされた前記第1及び第2導電性接合材を加熱溶融させた後に、降温させて固化させるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る圧電素子アッセンブリが適用された超音波トランスデューサーの平面図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるII-II線に沿った前記超音波トランスデューサーの部分縦断正面図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるIII-III部に沿った断面図である。
【
図5】
図5(a)~(d)は、それぞれ、前記超音波トランスデューサーの構成部材である、剛性基板、可撓性樹脂膜、複数の圧電素子及び下側封止板の平面図であり、
図2に示す状態において、
図5(a)~(d)の構成部材は下から上に順に積層されている。
【
図6】
図6(a)~(e)は、それぞれ、前記圧電素子アッセンブリの構成部材である配線体における、カバー層、第1及び第2配線、ベース層、前記第1配線における中間領域及び裏面側カバー層の平面図であり、
図2に示す状態において、
図6(a)~(e)の構成部材は下から上に順に積層されている。
【
図7】
図7(a)は、前記圧電素子アッセンブリの構成部材である圧電素子の平面図であり、
図7(b)は、
図7(a)におけるVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、前記配線体の平面図であり、一部の構成部材の図示を省略している。
【
図9】
図9は、前記配線体の底面図であり、一部の構成部材の図示を省略している。
【
図10】
図10(a)~(c)は、それぞれ、前記超音波トランスデューサーの構成部材である、上側封止板、吸音材及び補強板の平面図であり、
図2に示す状態において、
図10(a)~(c)の構成部材は下から上に順に積層されている。
【
図11】
図11は、前記圧電素子アッセンブリに適用可能な他の圧電素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る圧電素子アッセンブリの一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施の形態に係る圧電素子アッセンブリ200が適用された超音波トランスデューサー1の平面図を示す。
なお、
図1においては、理解容易化の為に、前記超音波トランスデューサー1における構成部材の一部の図示を省略している。
図2に、
図1におけるII-II線に沿った前記超音波トランスデューサー1の部分縦断正面図を示す。
さらに、
図3に、
図2におけるIII-III部に沿った断面図を、
図4に、
図3におけるIV部拡大図を、それぞれ示す。
【0021】
前記超音波トランスデューサー1は、
図2の断面図を基準にして下から上に順に、剛性基板10、可撓性樹脂膜20、複数の圧電素子30、下側封止板40、配線体100、上側封止板60、吸音材70及び補強板75を備えている。
このうち、前記複数の圧電素子30及び前記配線体100が前記圧電素子アッセンブリ200を形成している。
【0022】
図5(a)~(d)に、それぞれ、前記剛性基板10、前記可撓性樹脂膜20、前記複数の圧電素子30及び前記下側封止板40の平面図を示す。
また、
図6(a)~(e)に、前記配線体100の構成部材毎の平面図を示す。
なお、
図5(a)~(d)及び
図6(a)~(e)において、各構成部材の相対位置関係の理解容易化の為に平面視同一位置に中心線を記載している。
【0023】
前記剛性基板10は、例えば、厚さ0.1mm~0.4mmのステンレス等の金属基板や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
図2及び
図5(a)に示すように、前記剛性基板10には、上面11及び下面12の間を貫通する複数の開口部15が設けられている。
【0024】
前記開口部15は、前記剛性基板10の上面11に開く空洞部16と、一端側が前記空洞部16の底面に開き且つ他端側が前記剛性基板10の下面12に開く導波路17とを有している。
【0025】
前記空洞部16は、平面視において前記圧電素子30と同一形状とされている。
本実施の形態においては、前記圧電素子30は平面視矩形状とされており、従って、前記空洞部16も平面視矩形状とされている。
【0026】
前記空洞部16の開口幅は、前記圧電素子30が前記可撓性樹脂膜20を介して載置された際に、平面視において前記圧電素子30の周縁が前記剛性基板10の上面11と重合するように設定されている。
【0027】
前記導波路17は、前記空洞部16よりも小さい開口幅を有している。
本実施の形態においては、前記導波路17は平面視円形状とされている。
【0028】
本実施の形態においては、
図5(a)に示すように、前記剛性基板10には3×3の9個の前記開口部15が設けられており、前記可撓性樹脂膜20を挟んだ状態で9個の前記開口部15とそれぞれ平面視において重合するように9個の前記圧電素子30が配列されている。
【0029】
即ち、前記超音波トランスデューサー1においては、それぞれが振動体として作用する9個の前記圧電素子30が3×3に配置されている。
例えば、前記超音波トランスデューサー1の放射音波の指向性を鋭くし、放射音波の強度を高めるためには 3×3 より多い振動体(圧電素子30)を配置させることができる。
【0030】
前記可撓性樹脂膜20は、前記複数の開口部15を覆うように前記基板10の上面11に固着される。
前記可撓性樹脂膜20は、例えば、厚さ20μm~100μmのポリイミド等の絶縁性樹脂によって形成される。
前記可撓性樹脂膜20は、接着剤又は熱圧着等の種々の方法によって前記剛性基板10に固着される。
【0031】
図7(a)に、前記圧電素子30の平面図を、
図7(b)に、
図7(a)におけるVII-VII線に沿った断面図を、それぞれ示す。
【0032】
前記圧電素子30は、平面視中央部分が対応する前記開口部15(前記空洞部16)に重合し且つ平面視周縁部が前記剛性基板10のうち対応する前記開口部15(前記空洞部16)を囲繞する部分に重合するように、前記可撓性樹脂膜20の上面に固着されている。
【0033】
前記圧電素子30は積層型とされている。
詳しくは、前記圧電素子30は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材によって形成される圧電素子本体32と、前記圧電素子本体32を厚み方向に関し上方側の第1圧電部位32a及び下方側の第2圧電部位32bに区画する内部電極34と、前記第1圧電部位32aの上面の一部に固着された上面電極36と、前記第2圧電部位32bの下面に固着された下面電極37と、基端側が前記内部電極34に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極36との間に内部電極側隙間34aが存する状態で前記圧電素子本体32の上面に設けられて内部電極端子34Tを形成する内部電極用接続体35と、基端側が前記下面電極37に電気的に接続され且つ先端側が前記上面電極36との間に下面電極側隙間37aが存する状態で前記圧電素子本体32の上面に設けられて下面電極端子37Tを形成する下面電極用接続体38とを有している。
【0034】
前記圧電素子30が空中超音波トランスデューサー1の振動体として用いられ、その際の駆動電圧の周波数が40kHzとされる場合には、前記圧電素子30は、共振周波数が70kHz程度とされ、平面視形状は1辺3.0mmの四角形状とされ得る。
この場合、前記第1及び第2圧電部位32a、32bの層厚は、0.1mm~0.2mmとされ得る。
【0035】
前記上面電極36、前記下面電極37及び前記内部電極34は、厚さ1μm~10μm程度のAu、AgPd、Pt当の金属膜によって形成され得る。
【0036】
前記圧電素子30においては、前記上面電極36及び前記下面電極37が外部電極を形成しており、前記外部電極及び前記内部電極34の間に電圧が印可されると伸縮するように構成されている。
【0037】
即ち、前記第1及び第2圧電部位32a、32bは、分極方向が厚み方向に関し同一とされており、これにより、前記外部電極(前記上面電極36及び前記下面電極37)と前記内部電極34との間に所定の電圧を所定周波数で印可することによって、前記第1及び第2圧電部位32a、32bには互いに対して逆方向の電界が加わるようになっている。
【0038】
なお、前記上面電極36及び前記下面電極37は互いに対して絶縁されており、従って、前記圧電素子30を作成する際には、前記上面電極36及び前記下面電極37の間に電圧を印可することによって、前記第1及び第2圧電部位32a、32bの分極方向を同一とすることができる。
【0039】
斯かる構成の前記圧電素子30においては、前記外部電極(前記上面電極36及び前記下面電極37)に接続されるべき配線(本実施の形態においては、前記配線体100における第1配線130a)の前記上面電極36及び前記下面電極37への電気的接続、並びに、前記内部電極34に接続されるべき配線(本実施の形態においては、前記配線体100における第2配線130b)の前記内部電極34への電気接続の全てを、前記圧電素子30における厚み方向一方側の上面において行うことができる。
【0040】
即ち、前記圧電素子30においては、前述の通り、前記下面電極端子37Tが前記下面電極側隙間37aを介して前記上面電極36から離間された状態で前記圧電素子本体32の上面に設けられ、且つ、前記内部電極端子34Tが前記内部電極側隙間34aを介して前記上面電極36から離間された状態で前記圧電素子本体32の上面に設けられている。
【0041】
従って、
図4に示すように、前記下面電極端子37Tの少なくとも一部及び前記上面電極36のうち前記下面電極側隙間37aを介して前記下面電極端子37Tと対向する下面電極端子対向領域361の少なくとも一部を一体的に覆うように第1導電性接合材190aを設け、前記外部電極に接続すべき配線(本実施の形態においては前記第1配線130a)を前記第1導電性接合材190aに固着させつつ、前記内部電極端子34Tの少なくとも一部を覆うように第2導電性接合材190bを設け、前記内部電極34に接続すべき配線(本実施の形態においては前記第2配線130b)を前記第2導電性接合材190bに固着させることにより、前記外部電極に接続すべき配線(本実施の形態においては前記第1配線130a)と前記外部電極との電気接続、及び、前記内部電極34に接続すべき配線(本実施の形態においては前記第2配線130b)と前記内部電極34との電気接続を、前記圧電素子30の厚み方向一方側の上面において行うことができる。
【0042】
前記第1及び第2導電性接合材190a、190bとしては、例えば、導電性接着剤又はクリームはんだを用いることができる。
【0043】
ここで、本実施の形態においては、
図4及び
図7等に示すように、前記上面電極36のうち少なくとも前記内部電極側隙間34aを介して前記内部電極端子34Tと対向する内部電極端子対向領域362が絶縁性被膜300によって覆われている。
【0044】
前記絶縁性被膜300は、例えば、厚さ数μm~数十μmの、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、セラミックス等の絶縁体とされ得る。
【0045】
斯かる構成によれば、前記圧電素子30における電圧及びたわみ振動の間の変換効率の可及的な向上を図りつつ、前記外部電極(前記上面電極36)及び前記内部電極34間の短絡を有効に防止することができる。
【0046】
即ち、前記圧電素子30の電圧及びたわみ振動の間の変換効率を向上させる為には、前記外部電極及び前記内部電極34の対向面積、即ち、前記上面電極36及び前記内部電極34の対向面積、並びに、前記内部電極34及び前記下面電極37の対向面積を可及的に拡大させる必要があり、前記上面電極36の面積の可及的な拡大を図れば、前記上面電極36及び前記内部電極34の対向面積の拡大を実現できる。
【0047】
しかしながら、前記上面電極36の面積拡大は前記内部電極側隙間34aの狭小化を招くことになり、前記内部電極端子34T上に設ける前記第2導電性接合材190bの設置量のばらつきや設置位置のばらつきによって、前記第2導電性接合材190bが前記上面電極36に接触する危険性が増大する。これは、前記外部電極(前記上部電極36)及び前記内部電極34間の短絡による歩留まりの低下、又は、前記第2導電性接合材190bの設置作業の効率低下を招く。
【0048】
この点に関し、本実施の形態においては、前述の通り、前記上面電極36における前記内部電極端子対向領域362が前記絶縁性被膜300によって覆われている。
従って、前記圧電素子30の変換効率向上を図るべく前記上面電極36の面積を拡大させ、これにより、前記内部電極側隙間34aが狭くなったとしても、前記第2導電性接合材190bが前記上面電極36に接触して、前記上部電極36(即ち、前記外部電極)及び前記内部電極34間が短絡することを有効に防止することができる。
【0049】
また、前記内部電極側隙間34aの狭小化は、前記第2導電性接合材190bの設置作業の際に当該第2導電性接合材190bが前記上面電極36に接触しなかったとしても、高温高湿等の前記圧電素子30の使用環境条件下においては、イオンマイグレーションが発生して短絡不良を招く恐れがあるが、本実施の形態においては、斯かる事態も有効に防止することができる。
【0050】
図7(a)に示すように、本実施の形態においては、前記絶縁性被膜300は、前記内部電極端子対向領域362に加えて、前記内部電極側隙間34aのうち前記内部電極端子対向領域362に隣接する領域を覆っており、これにより、前記第2導電性接合材190bが前記上面電極36に接することを確実に防止している。
【0051】
前記絶縁性被膜300は、前記内部電極端子対向領域362を越えて前記上面電極36を覆うように構成され得るが、少なくとも前記下面電極端子対向領域361は覆わないように構成される。
これは、前記第1導電性接合材190aによる、前記下面電極端子37T及び前記上面電極36(前記下面電極端子対向領域361)と前記第1配線130aとの電気接続を可能とする為である。
【0052】
前記配線体100は、外部から供給される印可電圧を前記複数の圧電素子30へ伝達するように構成されている。
【0053】
図8及び
図9、それぞれ、前記配線体100の平面図(前記圧電素子30とは反対側から視た図)及び底面図(前記圧電素子30の側から視た図)を示す。
なお、理解容易化の為に、
図8及び
図9においては下記カバー層150の図示を省略している。
【0054】
図6、
図8及び
図9等に示すように、前記配線体100は、絶縁性ベース層110と、前記ベース層110に固着された前記第1及び第2配線130a、130bを含む導体層120と、導体層120の少なくとも一部を前記ベース層110とは反対側から覆う絶縁性カバー層150とを有している。
【0055】
前記ベース層110及び前記カバー層150は、例えば、ポリイミド等の絶縁性樹脂によって形成される。
【0056】
図8に示すように、前記ベース層110は、前記複数の圧電素子30のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数のベース側圧電素子重合部位111と、前記複数のベース側圧電素子重合部位111を一体的に保持するベース側先端部位116とを有している。
【0057】
前述の通り、前記超音波トランスデューサー1は、第1~第9の9個の圧電素子30を有している。従って、前記ベース層110は、9個の前記圧電素子30にそれぞれ対応する9個の前記ベース側圧電素子重合部位111を有している。
【0058】
同様に、
図6(a)に示すように、前記カバー層150は、前記複数の圧電素子30のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数のカバー側圧電素子重合部位151と、前記複数のカバー側圧電素子重合部位151を一体的に保持するカバー側先端部位156とを有している。
【0059】
前記カバー側圧電素子重合部位151も、前記複数の圧電素子の個数に対応した個数だけ設けられている。
【0060】
前記ベース層110及び前記カバー層150のうち前記圧電素子と対向する側に位置する圧電素子側の絶縁層(本実施の形態においては、前記カバー層150(
図2参照))の前記圧電素子重合部位151は、前記下面電極端子37Tの少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域361の少なくとも一部を一体的に囲む領域と平面視において重合する外部電極タブ領域152aと、前記内部電極端子34Tの少なくとも一部を囲む領域と平面視において重合する内部電極タブ領域152bとを有している。
【0061】
図2、
図4及び
図6に示すように、前記外部電極タブ領域152a及び前記内部電極タブ領域152bには、それぞれ、外部電極接続開口155a及び内部電極接続開口155bが設けられている。
【0062】
前記第1及び第2配線130a、130bは、例えば、Cu等の導電性金属によって形成される。
前記第1及び第2配線130a、130bは、前記ベース層110上に積層された厚さ12~25μm程度のCu箔に対して不要部分をエッチング除去することによって形成可能である。
好ましくは、前記第1及び第2配線130a、130bを形成するCuの露出部分にNi/Auメッキを施すことができる。
【0063】
図4に示すように、前記第1配線130aは一部が前記外部電極接続開口155aを跨ぎ、前記第2配線130bは一部が前記内部電極接続開口155bを跨いでいる。
【0064】
前記配線体100は、前記外部電極接続開口155aが前記下面電極端子37Tの少なくとも一部及び前記下面電極対向領域361の少なくとも一部を一体的に含む領域と平面視において重合し且つ前記内部電極接続開口155bが前記内部電極端子34Tの少なくとも一部と平面視において重合した状態で、前記下側封止板40の上面に固着され、前記第1配線130aのうち前記外部電極接続開口155aを跨ぐ部分が前記第1導電性接合材190aに接合され、且つ、前記第2配線130bのうち前記内部電極接続開口155bを跨ぐ部分が前記第2導電性接合材190bに接合されている。
【0065】
本実施の形態においては、前記ベース層110及び前記カバー層150のうち前記圧電素子30から離間された側に位置する絶縁層(本実施の形態においては、前記ベース層110(
図2参照))の前記圧電素子重合部位111も、前記圧電素子側絶縁層(本実施の形態においては、前記カバー層150)におけると同様に、前記下面電極端子37Tの少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域361の少なくとも一部を一体的に囲む領域と平面視において重合する外部電極タブ領域112aと、前記内部電極端子34Tの少なくとも一部と平面視において重合する内部電極タブ領域112bとを有している。
【0066】
前記外部電極タブ領域112a及び前記内部電極タブ領域112bには、それぞれ、第1及び第2アクセス開口115a、115bが設けられている。
【0067】
なお、本実施の形態においては、前記第1配線130aは、前記複数の圧電素子30の外部電極に一体的に電気接続される共通配線とされており、前記第2配線130bは、前記複数の圧電素子30の内部電極34のそれぞれに個別的に電気接続される個別配線とされている。
【0068】
前記第1配線130aは、前記複数の圧電素子30の外部電極に電気的に接続される先端側136a及び外部との接続端子を形成する基端側138aにおいては、前記ベース層110における圧電素子側の面上に配置され、且つ、先端側136a及び基端側138aを連結する中間部分137aにおいては前記ベース層110における圧電素子30とは反対側の面上に配置されている。
【0069】
前記第1配線130aの先端側136a及び中間部分137aは、前記ベース層110に形成された貫通孔109を介して電気的に接続されており、前記第1配線130aの中間部分137a及び基端側138aは、前記ベース層110に形成された貫通孔108を介して電気的に接続されている。
【0070】
前記第1配線130aのうち前記ベース層110における圧電素子30とは反対側の面上に配置された部分は、裏面側カバー層160(
図6(e)参照)によって覆われている。
【0071】
前記第2配線130bは、全域に亘って前記ベース層110における圧電素子側の面上に配置されている。
【0072】
前述の通り、前記超音波トランスデューサー1においては、
図2に示すように、前記配線体100は、前記カバー層150が前記圧電素子30と対向し且つ前記ベース層110が前記導体層120よりも前記圧電素子30とは反対側に位置する状態で、前記下側封止体40に固着されている。
【0073】
図2及び
図5(d)に示すように、前記下側封止板40は、前記剛性基板10における前記複数(本実施の形態においては9個)の開口部15を一体的に囲む大きさの中央開口42を有しており、平面視において前記中央開口42が前記複数の開口部15を一体的に囲むように前記可撓性樹脂膜20の上面に固着されている。
【0074】
前記下側封止板40は、
図2に示すように、前記圧電素子30と略同一の厚さを有しており、接着剤又は熱圧着等によって前記可撓性樹脂膜20の上面に固着される。
【0075】
前記下側封止板40は、好ましくは、ステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0076】
前記下側封止板40は、前記複数の圧電素子30からなる圧電素子群の側方を封止するとともに、前記配線体100が固着される基台として作用する。
【0077】
本実施の形態においては、
図2に示すように、前記下側封止板40の中央開口42によって囲まれる空間のうち、前記複数の圧電素子30のそれぞれの側方部分には柔軟性樹脂50が充填されている。
前記柔軟性樹脂50は、例えば、シリコーンとされる。
【0078】
前記柔軟性樹脂50を備えることにより、前記複数の圧電素子30に対する外部からの影響を効果的に遮断することができる。
また、前記圧電素子30の振動減衰を大きくすることができ、前記複数の圧電素子30によってバースト状に発生した音波の残響を抑制して、反射波による物体の距離検知可能範囲を可及的に広げることができる。
【0079】
図10(a)~(c)に、それぞれ、前記上側封止板60、前記吸音材70及び前記補強板75の平面図を示す。
なお、
図10(a)~(c)において、各構成部材の相対位置関係の理解容易化の為に、
図5(a)~(d)及び
図6(a)~(e)におけると平面視同一位置に中心線を記載している。
【0080】
図2に示すように、前記上側封止板60は、前記下側封止板40及び前記配線アッセンブリ100の上面に柔軟性樹脂55を介して固着されている。
図2及び
図10(a)に示すように、前記上側封止板60は、前記複数の圧電素子30のそれぞれに対応した複数(本実施の形態においては9個)の開口部65を有している。
【0081】
前記上側封止板60を備えることにより、前記振動体のたわみ振動動作への影響を可及的に防止しつつ、前記配線体100の支持安定化を図ることができる。
【0082】
前記上側封止板60は、例えば、厚さ0.1mm~0.3mmのステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0083】
前記吸音材70は、前記上側封止板60の複数の開口部65を覆うように前記上側封止板60の上面に接着等によって固着されている。
【0084】
前記吸音材70は、例えば、厚さ0.3mm~1.5mm程度のシリコーン樹脂又は他の発泡性樹脂によって形成される。
【0085】
前記吸音材70を備えることにより、前記圧電素子30によって生成される音波が放射されるべき側(
図2において下側)とは反対側へ放射されることを有効に抑制することができる。
【0086】
前記補強板75は、前記吸音材70の上面に接着等によって固着されている。
【0087】
前記補強板75は、例えば、厚さ0.2mm~0.5mm程度のステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0088】
前記補強板75を備えることにより、外力が前記基板10及び前記圧電素子30に影響を与えることを可及的に防止することができる。
【0089】
以下、前記超音波トランスデューサー1の製造方法について説明する。
前記製造方法は、
・剛性板材にエッチングによって、前記複数の開口部15を有する前記剛性基板10を形成する剛性基板形成工程と、
・前記複数の開口部15を覆うように前記可撓性樹脂膜20を接着剤又は熱圧着によって前記剛性基板10の上面に固着する可撓性樹脂膜固着工程と、
・平面視において前記複数の開口部15とそれぞれ重合するように前記複数の圧電素子30を前記可撓性樹脂膜20の上面に絶縁性接着剤によって固着する圧電素子固着工程と、
・平面視において前記中央開口42が前記複数の開口部15を一体的に囲むように前記下側封止板40を接着剤によって前記可撓性樹脂20の上面に固着する下側封止板設置工程と、
・前記配線体100を用意する配線体用意工程と、
・前記外部電極接続開口155aが前記下面電極端子37Tの少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域361の少なくとも一部を一体的に含む領域と平面視において重合し且つ前記内部電極接続開口155bが前記内部電極端子34Tの少なくとも一部と平面視において重合するように、前記配線体100を絶縁性接着剤によって前記下側封止板40の上面に固着させる配線体固着工程と、
・前記第1配線130aのうち前記外部電極接続開口155aを跨ぐ部分を前記下面電極端子37T及び前記上面電極36に電気的に接続し、且つ、前記第2配線130bのうち前記内部電極接続開口155bを跨ぐ部分を前記内部電極端子34Tに電気的に接続する電気接続工程と
を備えている。
【0090】
好ましくは、前記製造方法は、前記配線体固着工程及び前記電気接続工程を一括して同時に行う接合工程を備えることができる。
【0091】
前記接合工程は、前記下側封止板40の上面の所定部分に熱硬化型絶縁性接着剤を塗布する処理と、前記下面電極端子37Tの少なくとも一部及び前記下面電極対向領域361の少なくとも一部に跨るように熱硬化型導電性接着剤又はクリームはんだからなる前記第1導電性接合材190aをディスペンサー、スクリーン印刷又は転写等によって塗布する処理と、前記内部電極端子34Tの少なくとも一部に熱硬化型導電性接着剤又はクリームはんだからなる前記第2導電性接合材190bをディスペンサー、スクリーン印刷又は転写等によって塗布する処理と、前記配線体100を前記下側封止板40の上面の所定位置に配置させてプリアッセンブリを形成する処理と、前記プリアッセンブリを加熱処理して熱硬化型絶縁性接着剤並びに第1及び第2導電性接合材190a、190bを硬化させる処理とを含むものとされる。
【0092】
加熱温度は、前記第1及び第2導電性接合材190a、190bが熱硬化型導電性接着剤である場合には、120℃~150℃程度とされ、クリームはんだの場合には230℃~260℃とされ得る。なお、クリームはんだの場合には、加熱によって溶融し、溶融状態から降温させることによって固化される。
【0093】
前記接合工程を備えることにより、前記配線体100及び前記下側封止板40の固着と、前記配線体100及び前記圧電素子30の電気接続を同時に行うことができ、効率化を図ることができる。
【0094】
前記配線体固着工程を先に実行し、その後に、前記電気接続工程を行う場合には、前記電気接続工程は、前記第1導電性接合材190aが前記下面電極端子37Tの少なくとも一部及び前記下面電極端子対向領域361の少なくとも一部を一体的に覆うように、前記第1アクセス開口115a及び前記外部電極接続開口155aを介して前記第1導電性接合材190aを設置する処理と、前記第2導電性接合材190bが前記内部電極端子34Tの少なくとも一部を覆うように、前記第2アクセス開口115b及び前記内部電極接続開口155bを介して前記第2導電性接合材190bを設置する処理と、前記第1及び第2導電性接合材190a、190bを硬化させる処理とを含むものとされる。
【0095】
前記製造方法において、前記第2導電性接合材190bを設置する処理より前の任意タイミングで、前記圧電素子30に前記絶縁性被膜300が設けられる。
【0096】
前記絶縁性被膜300は、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂を用いる場合には、モノマーをディスペンサー又はスクリーン印刷等によって塗布し、その後に、例えば、100℃~150℃程度で加熱硬化させることによって、作成される。
【0097】
前記製造方法は、さらに、前記下側封止板設置工程の後で且つ前記配線体固着工程の前に、前記下側封止板40の中央開口42によって画される空間のうち前記複数の圧電素子30の側方部分に液状のシリコーン樹脂等の熱硬化型封止樹脂を流し込み、例えば、100℃~150℃程度で数十分間、加熱処理して硬化させる封止樹脂設置工程を備えている。
【0098】
前記製造方法は、さらに、前記電気接続工程の後に、前記上側封止板60を設置する上側封止板設置工程を備えている。
【0099】
前記上側封止板設置工程は、前記配線体100の上面にシリコーン樹脂等の熱硬化型の柔軟性樹脂を塗布する処理と、前記柔軟性樹脂の上に前記上側封止板60を配置する処理と、例えば、100℃~150℃程度で数十分間、加熱により前記柔軟性樹脂を硬化させる処理とを含む。
【0100】
前記製造方法は、さらに、前記上側封止板設置工程の後に、吸音材設置工程及び補強板設置工程を備えている。
【0101】
前記吸音材設置工程は、前記上側封止板60の上面に熱硬化型絶縁性接着剤を塗布する処理と、前記熱硬化型絶縁性接着剤の上にシリコーン樹脂又は他の発泡性樹脂等の前記吸音材70を配置する処理と、例えば、120℃~150℃程度で数十分間、加熱により前記熱硬化型絶縁性接着剤を硬化させる処理とを含む。
【0102】
前記補強板設置工程は、前記吸音材70の上面に熱硬化型絶縁性接着剤を塗布する処理と、前記熱硬化型絶縁性接着剤の上に前記補強板75を配置する処理と、例えば、120℃~150℃程度で数十分間、加熱により前記熱硬化型絶縁性接着剤を硬化させる処理とを含む。
【0103】
なお、本実施の形態においては、
図7(a)に示すように、前記圧電素子30は、平面視における外形を形成する一辺及び他辺の中途部にそれぞれ前記下面電極端子37T及び前記内部電極端子34Tが配置されているが、当然ながら、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
【0104】
図11に、本発明に適用可能な他の圧電素子30Bの平面図を示す。
前記圧電素子30Bは、平面視矩形状の角部に、前記下面電極端子37T及び前記内部電極端子34Tが配置されている。
【符号の説明】
【0105】
10 基板
15 開口部
20 可撓性樹脂膜
30 圧電素子
32 圧電素子本体
34 内部電極
34a 内部電極側隙間
34T 内部電極端子
35 内部電極用接続体
36 上面電極(外部電極)
37 下面電極(外部電極)
37a 下面電極側隙間
37T 下面電極端子
38 下面電極用接続体
40 下側封止板
42 中央開口
100 配線体
110 絶縁性ベース層
111 ベース側圧電素子重合部位
112a ベース層の外部電極タブ領域
112b ベース層の内部電極タブ領域
115a 第1アクセス開口
115b 第2アクセス開口
116 ベース側先端部位
130a 第1配線
130b 第2配線
150 絶縁性カバー層
151 カバー側圧電素子重合部位
152a カバー層の外部電極タブ領域
152b カバー層の内部電極タブ領域
155a 外部電極接続開口
155b 内部電極接続開口
156 カバー側先端部位
190a 第1導電性接合材
190b 第2導電性接合材
300 絶縁性被膜
361 下面電極端子対向領域
362 内部電極端子対向領域