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特許7486721シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーおよび重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーおよび重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/28 20060101AFI20240513BHJP
   C07D 317/36 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
C08F220/28
C07D317/36 CSP
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021570629
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2020002241
(87)【国際公開番号】W WO2021144996
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2020004256
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 将啓
(72)【発明者】
【氏名】山田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】青野 竜也
(72)【発明者】
【氏名】小田 和裕
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-105265(JP,A)
【文献】特開昭56-018938(JP,A)
【文献】特開平02-000787(JP,A)
【文献】特開平03-002206(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102146071(CN,A)
【文献】国際公開第2019/238548(WO,A1)
【文献】特開2000-191604(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108299375(CN,A)
【文献】国際公開第2013/081157(WO,A1)
【文献】特開2016-074831(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第03937116(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0106044(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329666(US,A1)
【文献】特開2014-183833(JP,A)
【文献】米国特許第06627762(US,B1)
【文献】特開2019-196446(JP,A)
【文献】特開2011-032222(JP,A)
【文献】特開2014-051456(JP,A)
【文献】特開2020-019745(JP,A)
【文献】Buettner, Hendrik et al.,Synthesis of Cyclic Carbonates from Epoxides and Carbon Dioxide by Using Bifunctional One-Component Phosphorus-Based Organocatalysts,ChemSusChem,2015年,8(16),2655-2669
【文献】Werner, Thomas et al.,Hydroxyl-Functionalized Imidazoles: Highly Active Additives for the Potassium Iodide-Catalyzed Synthesis of 1,3-Dioxolan-2-one Derivatives from Epoxides and Carbon Dioxide,ChemCatChem,2014年,6(12),3493-3500
【文献】Aoyagi, Naoto et al.,Remarkably efficient catalysts of amidine hydroiodides for the synthesis of cyclic carbonates from carbon dioxide and epoxides under mild conditions,Chemistry Letters,2012年,41(3),240-241
【文献】Aoyagi, Naoto et al.,Effective synthesis of cyclic carbonates from carbon dioxide and epoxides by phosphonium iodides as catalysts in alcoholic solvents,Tetrahedron Letters,2013年,54(51),7031-7034
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー(A)と、モノマー(B)と、(メタ)アクリル酸エステルおよび芳香族ビニル化合物から選ばれた他のモノマー(C)とを含むモノマー混合物であって、前記モノマー(A)の含有量と前記モノマー(B)の含有量の合計に対する前記モノマー(B)の含有量の比率が0.3質量%以上、3質量%以下であり、前記モノマー混合物の合計質量を100質量%としたときの前記他のモノマー(C)の質量が20~95質量%であるモノマー混合物を前記モノマー混合物100質量%に対して10~60質量%の重合溶媒中で50℃~110℃でラジカル重合させることで重合体を得るのに際して、
前記モノマー(A)は、下記式(1)で表されるシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーであり、前記モノマー(B)は、下記式(2)で表されるジ(メタ)アクリレートモノマーであることを特徴とする、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含む重合体の製造方法。

【化1】

(式(1)中、
は、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数2~10のアルキル基を示し、
X=0または1である。)

【化2】

(式(2)中、
は、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数2~10のアルキル基を示し、
X=0または1である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロカーボネート基を含有する(メタ)アクリレートモノマーに関するものであり、経時的な増粘が抑制され、安定的に長期間、塗料などの用途で使用可能なシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーおよびこれを含む重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロカーボネート基は、一般的に高極性、高誘電率かつ高分子に対する溶解性が高いなどの特徴を有しており、その特徴的な構造から様々な用途に応用可能である。特に、シクロカーボネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物の場合には、他のモノマー、オリゴマー類と重合させることにより、シクロカーボネート基を導入したポリマーを得ることができる。このようなシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを用いて得られるポリマーは、例えばフィルム・成形材料、封止剤、塗料、接着剤、各種バインダーなどとして用いることができる。
【0003】
シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーは、通常、エポキシ化合物に対して二酸化炭素を作用させて得ることができ、特許文献1、2には、当該モノマーを高収率で得る方法について報告されている。これらの先行文献で挙げられているシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーは、ポリマー合成に用いることができ、シクロカーボネート基を側鎖に有するポリマーを得ることができる。こうしたポリマーは、例えば、特許文献3に報告されているように、透明性、粘度などの各種物性に優れ、問題無く使用できるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-202022
【文献】特開2011-32222
【文献】特開2014-105265
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、特に塗料やインク用途では、高画質化や高速化といった印刷技術の向上や複雑な形状の対象物への対応や多種の色彩のブレンドといった高い意匠性が求められることに伴って、塗料やインクの粘度を極めて精密に制御することが必要となっている。しかし、これらの用途では、特許文献1~3に記載のような従来の方法によるシクロカーボネート基を側鎖に有するポリマーを用いると、厳しい環境下での使用時や長期にわたる保管時にわずかに粘度上昇する場合があり、場合によっては印刷時にかすれを生じたりする虞があった。
【0006】
このため、高収率で得られうるシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを用いたポリマーにおいても、印刷時にかすれが生じるなどの不具合が生じる懸念のない、経時的に粘度変化の小さい特性が求められる。
【0007】
本発明の課題は、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーをポリマーとして塗料などに用いたとき、経時的な増粘が抑制され、安定的に長期間使用可能なシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー、およびこれを含む重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、従来知られたシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーに関する報告では、そのモノマーの原料である各種の(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ化合物については言及されている場合があるものの、副生物として一定量含まれる、ジ(メタ)アクリレートモノマーの含有量については検討されていなかった。
【0009】
そこで、ジ(メタ)アクリレートモノマーの含有量に着目して検討を行った結果、重合してポリマーとして塗料などの用途に用いたとき、経時的な増粘が抑制され、安定的に長期間、塗料などの用途で使用可能であることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の(1)に係るものである。
(1) モノマー(A)と、モノマー(B)と、(メタ)アクリル酸エステルおよび芳香族ビニル化合物から選ばれた他のモノマー(C)とを含むモノマー混合物であって、前記モノマー(A)の含有量と前記モノマー(B)の含有量の合計に対する前記モノマー(B)の含有量の比率が0.3質量%以上、3質量%以下であり、前記モノマー混合物の合計質量を100質量%としたときの前記他のモノマー(C)の質量が20~95質量%であるモノマー混合物を前記モノマー混合物100質量%に対して10~60質量%の重合溶媒中で50℃~110℃でラジカル重合させることで重合体を得るのに際して、
前記モノマー(A)は、下記式(1)で表されるシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーであり、前記モノマー(B)は、下記式(2)で表されるジ(メタ)アクリレートモノマーであることを特徴とする、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含む重合体の製造方法。
【0011】
【化1】

(式(1)中、
は、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数2~10のアルキル基を示し、
X=0または1である。)

【化2】

(式(2)中、
は、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数2~10のアルキル基を示し、
X=0または1である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の化合物は、ジ(メタ)アクリレートモノマーの含有量が従来よりも少ないことを特徴とする、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーである。このシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを重合してポリマーとして塗料などに用いたとき、経時的な増粘が抑制され、安定的に長期間、塗料などの用途で使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、さらに詳しく記述する。
〔(A)シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー〕
本発明のシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)は、下記式(1)で示される。
【化1】
【0014】
本発明のシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)とは、1分子中に一つのシクロカーボネート基と、一つの(メタ)アクリロイル基を有することを特徴とするモノマーである。
【0015】
一般式(1)において、Rは炭素数2~10のアルキル基を表す。Rが炭素数2~10のアルキル基であることにより、ポリマー合成における反応性が良好であり、モノマー残分の少ないポリマーを得ることができる。その中でも、Rの炭素数が2~4であることが好ましく、Rの炭素数が2であることが特に好ましい。
【0016】
式(1)において、Xの値は0または1である。その中でも、X=0であることが好ましい。Xが0または1であることにより、ポリマー合成における反応性が良好であり、モノマー残分の少ないポリマーを得ることができる。
【0017】
〔ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)〕
ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)は、下記式(2)で示される。
【化2】

(式(2)中、
は、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数2~10のアルキル基を示し、
X=0または1である。)
【0018】
ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)は、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)に、副生成物として含まれるものである。なお、ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の構造は、出発原料のモノマーとして何を選定するかにより変わる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレートを原料とした場合には、グリセリンジ(メタ)アクリレートが生じる。このようにして生じるジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の構造やその含有量は、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴など、好適な方法により同定することが可能である。
【0019】
ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)は、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)の製造に伴い、副生成物として生じるものであることから、Rは炭素数2~10のアルキル基を表す。その中でも、Rの炭素数は2~4であることが好ましく、2であることが特に好ましい。
【0020】
式(2)において、Xの値は0または1である。その中でも、X=0であることが好ましい。Xがこの値であることにより、ポリマー合成における反応性が良好であり、モノマー残分の少ないポリマーを得ることができる。
【0021】
(ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有率)
式(1)で表されるシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)の量を100質量%としたとき、モノマー(A)中に含まれる、式(2)で表されるジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量を3質量%以下とするが、1.5質量%以下とすることが更に好ましく、1.0質量%以下とすることが最も好ましい。これが3質量%よりも多く含まれていると、本発明のシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを用いてポリマー合成を行った際に、保管時に高分子量化、粘度上昇、ゲル化反応が生じる。
【0022】
また、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)の量を100質量%としたとき、モノマー(A)に含まれるジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量の下限は特になく、0質量%であってよい。しかし、経時的な増粘抑制と硬化膜の物性の観点からは、モノマー(A)中に含まれるジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量を0.1質量%以上とすることが好ましく、0.3質量%以上とすることが更に好ましく、0.5質量%以上とすることが特に好ましい。
【0023】
〔シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーの製造方法〕
シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)は、各種の(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ化合物を出発物質とし、0.05~0.3MPa程度で二酸化炭素を吹き込んで反応させることにより、得ることができる。このとき、(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ化合物としては、各種のモノマーを用いることができる。しかし、低粘度であり、反応にかかる時間が短く、得られるシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)の色相が低く透明性の良好なモノマーを得られることから、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルを用いることが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートを用いることがさらに好ましい。
【0024】
本発明では、エポキシ基に対して二酸化炭素を作用させ、シクロカーボネート基とする。二酸化炭素を反応系中に導入する方法としては、加圧下において各種の吹き込み方法を選択することができる。このとき、圧力、温度を一定の範囲内でコントロールすることにより、目的物の収率を高め、副生物の含有率を低く抑えることができる。その場合の圧力としては、0.05~0.3MPaGであり、0.1~0.2MPaGであることが好ましい。0.3MPaGを超えて圧力を高く設定しても、シクロカーボネート体の収率は上がらず、副反応が進行しやすくなるために、副生成物として生成するジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が3質量%よりも大きくなる。
【0025】
合成時の反応温度は、圧力や触媒の条件にもよるが、40~70℃の範囲であり、50~60℃の範囲が好ましい。40℃未満であると、反応にかかる時間が長くなり過ぎる上に、未反応の原料が残存しやすくなる。また、着色が起こりやすくなる。一方、70℃を超えると、ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)が多く含有されてしまい、ポリマー化に際してゲル化などの不具合も起こりやすくなる。また、着色が起こりやすくなる。
【0026】
〔(C)他のモノマー)〕
本発明の重合体は、前述したモノマー(B)の質量が3質量%以下のモノマー(A)を重合させることにより、得ることができる。しかし、本発明の重合体は、他のモノマー(C)をも含んでいてよい。モノマー(C)は、1種または2種以上含んでも良いが、(メタ)アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル化合物が好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などを挙げられ、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルがより好ましい。
【0028】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、o-エチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ヒドロキシスチレン、t-ブトキシスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
【0029】
本発明の重合体は、前述したモノマー(B)の質量が3質量%以下のモノマー(A)を重合させた重合体であってよい。あるいは、本発明の重合体は、前述したモノマー(B)の質量が3質量%以下のモノマー(A)を、その他のモノマー(C)と共重合させた重合体であってよい。
【0030】
好適な実施形態においては、重合体を構成する構造単位に占める、モノマー(A)に由来する構造単位の共重合割合は、重合前のモノマーの合計質量を100質量%としたとき、1~100質量%であり、5~80質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましく、15~40質量%が特に好ましい。
【0031】
また、本発明の重合体を構成する構造単位に占める、その他のモノマー(C)に由来する構造単位の共重合割合は、重合前のモノマーの合計質量を100質量%としたとき、20~95質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましく、60~85質量%が特に好ましい。
【0032】
〔重合体〕
本発明の重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができ、好ましくは3,000~1,000,000が、更に好ましくは10,000~800,000、より好ましくは50,000~300,000である。重合体の重量平均分子量が低すぎると、塗料とした際の膜強度の低下を招くおそれがあり、重量平均分子量が高すぎると、溶媒溶解性や溶液粘度高くなりすぎるため作業性の低下が生じるおそれがある。
【0033】
具体的には、本発明のシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを用いてポリマーを合成したとき、ポリマーの合成直後の粘度(c)に対する40℃で1カ月保管した後の粘度(d)の比率(d/c)は、1.00以上であるが、1.20以下であることが好ましく、1.15以下であることが更に好ましく、1.05以下であることが特に好ましく、1.02以下であることが最も好ましい。
【0034】
〔重合体の製造方法〕
次に、本発明の重合体を製造する方法について説明する。
本発明における重合体は、モノマー(B)を含んでいてもよいモノマー(A)を少なくとも含有し、必要に応じてモノマー(C)を更に含有するモノマー混合物をラジカル重合させることにより得ることができる。重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられるが、共重合体の重量平均分子量を上記範囲内に調整しやすいという面で、溶液重合や懸濁重合が好ましい。
【0035】
重合開始剤は、公知のものを使用することができる。例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
重合開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。
なお、重合開始剤を投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしてもよいし、一部を一括仕込みして残りを滴下してもよく、あるいは全量を滴下してもよい。また、前記モノマーとともに重合開始剤を滴下すると、反応の制御が容易となるので好ましく、さらにモノマー滴下後も重合開始剤を添加すると、残存モノマーを低減できるので好ましい。
【0037】
溶液重合の際に使用する重合溶媒としては、モノマーと重合開始剤が溶解するものを使用することができ、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。
【0038】
重合溶媒に対するモノマー(合計量)の濃度は、10~60質量%が好ましく、特に好ましくは20~50質量%である。モノマー混合物の濃度が低すぎると、モノマーが残存しやすく、得られる共重合体の分子量が低下するおそれがあり、モノマーの濃度が高すぎると、発熱を制御し難くなるおそれがある。
【0039】
モノマーを投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、あるいは全量を滴下しても良い。発熱の制御しやすさから、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、または全量を滴下するのが好ましい。
【0040】
重合温度は、重合溶媒の種類などに依存し、例えば、50℃~110℃である。重合時間は、重合開始剤の種類と重合温度に依存し、例えば、重合開始剤としてジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを使用した場合、重合温度を70℃として重合すると、重合時間は6時間程度が適している。
以上の重合反応を行なうことにより、本発明の重合体が得られる。得られた重合体は、そのまま用いてもよいし、重合反応後の反応液に、ろ取や精製を施して単離してもよい。
【実施例
【0041】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0042】
(実験1)
〔評価方法〕
(成分定量分析)
ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、以下の条件によりシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)、ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の成分定量分析を行った。(A)のピークの面積と(B)のピークの面積との面積比より、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)、ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の各収率を計算した。(A)の収率を(A)の含有量(質量%)とし、(B)の収率を(B)の含有量(質量%)とした。

(モノマー(A)に含まれるモノマー(B)の質量比率(質量%)=
モノマー(B)の収率(含有量:質量%)/(モノマー(A)の収率(含有量:質量%)+モノマー(B)の収率(含有量:質量%))=
モノマー(B)のピークの面積/(モノマー(A)のピークの面積+モノマー(B)のピークの面積)

また、下記式にて、転化率を算出した。
転化率(%)=
「(シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)の面積)/(全ピークの面積の総計)」×100
【0043】
(GCの条件)
装置: GC-2014(島津製作所製)
カラム: DB-1
インジェクション温度: 200℃
ディテクター温度: 250℃
昇温プロファイル: 40℃で10分間保持→10℃/分で昇温→250℃まで昇温して保持
注入量: 1μL
検出器: FID レンジ1
キャリアガス: ヘリウム 70kPa
スプリット比: 1/50
定量方法: 内部標準法(ビフェニルを使用)
【0044】
(ポリマー化試験)
得られた重合性組成物を用いて、下記条件でポリマー化を行った。
配合組成: 重合性組成物 50g
メタクリル酸メチル 50g
開始剤: 2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))0.4g
溶剤: イソプロパノール 150g
反応温度: 75℃
反応時間: 3時間
【0045】
(粘度評価)
得られたポリマー溶液について、粘度評価を行った。具体的には、ポリマー溶液を合成した直後の粘度(c)、および40℃の恒温槽で1ヶ月間保管した後の粘度(d)を測定した。それらの粘度の比を「保管後の粘度/合成直後の粘度(d/c)」で表し、以下の基準で評価した。

○: 粘度比(d/c)が1.0以上~1.1未満
△: 粘度比(d/c)が1.1以上~1.3未満
×: 粘度比(d/c)が1.3以上、または測定不可
【0046】
各例のシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを以下のようにして合成した。
<実施例1-1>
二酸化炭素導入管、攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、出発原料としてブレンマーGH(グリシジルメタクリレート)1,000部、ヨウ化ナトリウム50部、メトキシハイドロキノン0.5部を仕込んだ。系内を50℃に温調しながら、炭酸ガスボンベより、系内を0.2MPaに保ちながら二酸化炭素を断続的に吹き込み続け、8時間攪拌しながら反応させた。室温まで冷却した後、イオン交換水300部を仕込んでよく攪拌し、しばらく静置して有機相と水相を分液させ、水相を除去した。この操作を計4回繰り返し、ヨウ化ナトリウムを取り除いた。その後、有機相を70℃、減圧下で2時間かけて脱水し、目的のモノマーを得た。
【0047】
<実施例1-2>
二酸化炭素導入管、攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、ブレンマーGH(グリシジルメタクリレート)1,000部、臭化リチウム50部、ジアザビシクロウンデセン53.5部、メトキシハイドロキノン0.5部を仕込んだ。系内を60℃に温調しながら、炭酸ガスボンベより、系内を0.05MPaに保ちながら二酸化炭素を断続的に吹き込み続け、8時間攪拌しながら反応させた。室温まで冷却した後、イオン交換水300部を仕込んでよく攪拌し、しばらく静置して有機相と水相を分液させ、水相を除去した。この操作を計4回繰り返し、ヨウ化ナトリウムを取り除いた。その後、有機相を70℃、減圧下で2時間かけて脱水し、目的のモノマーを得た。
【0048】
<実施例1-3>
二酸化炭素導入管、攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、ブレンマーGH(グリシジルメタクリレート)1,000部、臭化リチウム50部、ジアザビシクロウンデセン53.5部、メトキシハイドロキノン0.5部、ジメチルホルムアミド500部を仕込んだ。ブロー弁を開けた状態で、系内を50℃に温調しながら、炭酸ガスボンベより、系内を0.05MPaに保ちながら二酸化炭素を断続的に吹き込み続け、8時間攪拌しながら反応させた。室温まで冷却した後、イオン交換水300部を仕込んでよく攪拌し、しばらく静置して有機相と水相を分液させ、水相を除去した。この操作を計4回繰り返し、ヨウ化ナトリウムを取り除いた。その後、有機相を70℃、減圧下で2時間かけて脱水し、目的のモノマーを得た。
【0049】
<実施例1-4>
二酸化炭素導入管、攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル1,000部、ヨウ化ナトリウム50部、メトキシハイドロキノン0.5部を仕込んだ。系内を50℃に温調しながら、炭酸ガスボンベより、系内を0.08MPaに保ちながら二酸化炭素を断続的に吹き込み続け、8時間攪拌しながら反応させた。室温まで冷却した後、イオン交換水300部を仕込んでよく攪拌し、しばらく静置して有機相と水相を分液させ、水相を除去した。この操作を計4回繰り返し、ヨウ化ナトリウムを取り除いた。その後、有機相を70℃、減圧下で2時間かけて脱水し、目的のモノマーを得た。
【0050】
<実施例1-5>
二酸化炭素導入管、攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル1,000部、ヨウ化ナトリウム50部、メトキシハイドロキノン0.5部を仕込んだ。系内を50℃に温調しながら、炭酸ガスボンベより、系内を0.2MPaに保ちながら二酸化炭素を断続的に吹き込み続け、8時間攪拌しながら反応させた。室温まで冷却した後、イオン交換水300部を仕込んでよく攪拌し、しばらく静置して有機相と水相を分液させ、水相を除去した。この操作を計4回繰り返し、ヨウ化ナトリウムを取り除いた。その後、有機相を70℃、減圧下で2時間かけて脱水し、目的のモノマーを得た。
【0051】
<比較例1-1>
二酸化炭素導入管、攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、ブレンマーGH(グリシジルメタクリレート)1,000部、ヨウ化ナトリウム50部、メトキシハイドロキノン0.5部を仕込んだ。系内を75℃に温調しながら、炭酸ガスを充填したバルーンより、二酸化炭素を断続的に吹き込み続け、15時間攪拌しながら反応させた。室温まで冷却した後、イオン交換水300部を仕込んでよく攪拌し、しばらく静置して有機相と水相を分液させ、水相を除去した。この操作を計4回繰り返し、ヨウ化ナトリウムを取り除いた。その後、有機相を70℃、減圧下で2時間かけて脱水し、目的のモノマーを得た。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す結果より、本発明に係る実施例1-1~1-5は、いずれの物性においても優れたモノマーが得られた。
【0054】
一方、比較例1-1においては、ジメタクリレートの含有量が本発明の範囲を超えているために、合成直後のポリマーの粘度が比較的高く、さらに長期保管時にゲル化が生じたため、粘度比の測定が不可能であった。
【0055】
(実験2)
〔モノマー(A)の分析〕
(成分定量分析)
ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、以下の条件によりシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)、ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の成分定量分析を行った。(A)のピークの面積と(B)のピークの面積との面積比より、シクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)、ジ(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量を計算した。
GCの条件
装置: GC-2014(島津製作所製)
カラム: DB-1
インジェクション温度: 200℃
ディテクター温度: 250℃
昇温プロファイル: 40℃で10分間保持→10℃/分で昇温→250℃まで昇温して保持
注入量: 1μL
検出器: FID レンジ1
キャリアガス: ヘリウム 70kPa
スプリット比: 1/50
【0056】
〔合成例〕
各例のシクロカーボネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを以下のようにして合成した。
(モノマーA1の合成)
二酸化炭素導入管、攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、ブレンマーGH(グリシジルメタクリレート)1,000部、臭化リチウム50部、ジアザビシクロウンデセン53.5部、メトキシハイドロキノン0.5部、ジメチルホルムアミド500部を仕込んだ。ブロー弁を開けた状態で、系内を50℃に温調しながら、炭酸ガスボンベより、系内を0.05MPaに保ちながら二酸化炭素を断続的に吹き込み続け、8時間攪拌しながら反応させた。室温まで冷却した後、イオン交換水300部を仕込んでよく攪拌し、しばらく静置して有機相と水相を分液させ、水相を除去した。この操作を計4回繰り返し、ヨウ化ナトリウムを取り除いた。その後、有機相を70℃、減圧下で2時間かけて脱水し、目的のモノマーA1を得た。得られたモノマーA1の純度は99.2質量%であり、ジ(メタ)アクリレートモノマー量は0.8質量%であった。
【0057】
(モノマーA2の合成)
二酸化炭素導入管、攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル1,000部、ヨウ化ナトリウム50部、メトキシハイドロキノン0.5部を仕込んだ。系内を50℃に温調しながら、炭酸ガスボンベより、系内を0.08MPaに保ちながら二酸化炭素を断続的に吹き込み続け、8時間攪拌しながら反応させた。室温まで冷却した後、イオン交換水300部を仕込んでよく攪拌し、しばらく静置して有機相と水相を分液させ、水相を除去した。この操作を計4回繰り返し、ヨウ化ナトリウムを取り除いた。その後、有機相を70℃、減圧下で2時間かけて脱水し、目的のモノマーA2を得た。得られたモノマーA2の純度は99.6質量%であり、ジ(メタ)アクリレートモノマー量は0.4質量%であった。
【0058】
(モノマーA3の合成))
二酸化炭素導入管、攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、ブレンマーGH(グリシジルメタクリレート)1,000部、ヨウ化ナトリウム50部、メトキシハイドロキノン0.5部を仕込んだ。系内を90℃に温調しながら、炭酸ガスを充填したバルーンより、二酸化炭素を断続的に吹き込み続け、8時間攪拌しながら反応させた。室温まで冷却した後、イオン交換水300部を仕込んでよく攪拌し、しばらく静置して有機相と水相を分液させ、水相を除去した。この操作を計4回繰り返し、ヨウ化ナトリウムを取り除いた。その後、有機相を70℃、減圧下で2時間かけて脱水し、目的のモノマーA3を得た。得られたモノマーA3の純度は93.8質量%であり、ジ(メタ)アクリレートモノマー量は6.2質量%であった。
【0059】
(実施例2-1)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル350gを仕込み、フラスコ内を窒素置換して、窒素雰囲気下にした。ノルマルブチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)80.0gとスチレン(NSスチレンモノマー(株)製)80.0g、モノマーA1 40.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60gを混合したモノマー溶液、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル50gと2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))2.0gを混合した重合開始剤溶液をそれぞれ調製した。
【0060】
反応容器内を75℃まで昇温し、モノマー溶液及び重合開始剤溶液を同時にそれぞれ3時間かけて滴下した。その後、75℃で3時間反応させ共重合体P1のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は30.1%であった。
【0061】
(実施例2-2)
モノマー溶液をノルマルブチルメタクリレート50.0gとスチレン60.0g、モノマーA1 90.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60gに、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)量を4.0gに変更した以外は実施例1-1と同様の手法で共重合体P2を得た。得られた溶液の固形分濃度は30.3%であった。
【0062】
(実施例2-3)
モノマー溶液をノルマルブチルメタクリレート70.0g、モノマーA1 130.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60gに、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)量を8.0gに変更した以外は実施例1-1と同様の手法で共重合体P3を得た。得られた溶液の固形分濃度は29.9%であった。
【0063】
(実施例2-4)
モノマー溶液をノルマルブチルメタクリレート80.0gとスチレン30.0g、モノマーA2 90.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60gに、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)量を4.0gに変更した以外は実施例1-1と同様の手法で共重合体P2を得た。得られた溶液の固形分濃度は30.4%であった。
【0064】
(比較例2-1)
モノマー溶液をノルマルブチルメタクリレート80.0gとスチレン80.0g、モノマーA3 40.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60gに変更した以外は実施例1-1と同様の手法で共重合体P5を得た。得られた溶液の固形分濃度は30.2%であった。
【0065】
(比較例2-2)
モノマー溶液をノルマルブチルメタクリレート80.0gとスチレン20.0g、モノマーA3 100.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル60gに変更した以外は実施例1-1と同様の手法で共重合体P6を合成したが、重合途中でゲル化が生じた。
【0066】
〔共重合体の分析〕
(重合体の重量平均分子量(Mw))
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、下記条件で求めた。
GPC装置:東ソー(株)製、HLC-8220
カラム:昭和電工(株)製、Shodex KF-805L
溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
【0067】
(重合体溶液の固形分濃度)
ポリマー溶液をアルミパンに1g秤量し、真空乾燥機にて120℃で30分乾燥した。乾燥前後の重量から固形分濃度を算出した。
【0068】
〔評価方法〕
(粘度評価)
得られたポリマー溶液について、粘度評価を行った。具体的には、ポリマー溶液を合成した直後の粘度(c)、および40℃の恒温槽で1ヶ月間保管した後の粘度(d)を測定した。それらの粘度の比を「保管後の粘度/合成直後の粘度(d/c)」で表し、以下の基準で評価した。

◎: 粘度比(d/c)が1.0以上、1.02未満
○: 粘度比(d/c)が1.02以上、1.1未満
△: 粘度比(d/c)が1.1以上、1.3未満
×: 粘度比(d/c)が1.3以上、または測定不可
【0069】
(硬化膜硬度の評価)
ポリマー溶液10gに、ポリマー中のシクロカーボネート基と等モルのアミノ基量となるように3,3´-ビピペリジンを加え、均一な溶液とした。これをガラス基板に塗布し、真空乾燥により溶剤を除去した。これを80℃の恒温槽に入れ、3時間加熱し、膜厚5μmの硬化膜を得た。
得られた硬化膜に対して、鉛筆硬度をJIS K5600に準拠し評価した。
【0070】
(硬化膜の密着性の評価)
ポリマー溶液10gに、ポリマー中のシクロカーボネート基と等モルのアミノ基量となるように3,3´-ビピペリジンを加え、均一な溶液とした。これをガラス基板に塗布し、真空乾燥により溶剤を除去した。これを80℃の恒温槽に入れ、3時間加熱し、膜厚5μmの硬化膜を得た。
得られた硬化膜に100マスの切り込みを入れ、セロテープ(登録商標)(ニチバン製)を貼り付け、セロテープ(登録商標)を剥離し、マス数および外観で密着性を評価した。剥離したマスが無いものを「○」、剥離したマスが無いが、カケがみられるものを「△」、剥離したマスがあるものを「×」とした。
【0071】
【表2】
【0072】
表2から分かるように、本発明の重合体は、経時的な増粘が抑制され、硬化膜の硬度および密着性が高い。
これに対して、比較例2-1の重合体は、経時的な増粘が大きく、鉛筆硬度も低い。更に、比較例2-2の重合体は、ゲル化し、硬化膜を形成できなかった。