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特許7486723微細藻類成長促進剤及び微細藻類成長促進剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】微細藻類成長促進剤及び微細藻類成長促進剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20240513BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20240513BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240513BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALN20240513BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20240513BHJP
【FI】
C12N1/00 S ZNA
C12N1/12 A
C12N1/00 C
C12N15/09 Z
C12Q1/6888 Z
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022517056
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2021016049
(87)【国際公開番号】W WO2021215439
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2020076809
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515021426
【氏名又は名称】環境大善株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人北海道国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小西 正朗
(72)【発明者】
【氏名】窪之内 誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇太
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-235766(JP,A)
【文献】花島 大,家畜排泄物処理における大腸菌の制御に関する研究,畜産草地研究所研究報告,2009年,9号,P. 71-111,https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030772341.pdf
【文献】ZHOU, J. et al.,Pretreatment of pig manure liquid digestate for microalgae cultivation via innovative flocculation-b,Science of the Total Environment,2019年,Vol. 694, 133720,P. 1-8,https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2019.133720
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜糞尿を原料とする微細藻類成長促進剤の製造方法であって、
家畜糞尿の液体成分を分離するステップと、
バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及びウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくともいずれか1つ以上を含むようになるまで、分離した前記液体成分を曝気させるステップと、
曝気させた前記液体成分から微生物を除去するステップと、
を含む微細藻類成長促進剤の製造方法。
【請求項2】
家畜の糞尿を原料とする微細藻類成長促進剤であって、バクテロイデス門に含まれる微生物を1.5%以上、クロロフレクサス門に含まれる微生物を1.5%以上、ゲンマティモナス門に含まれる微生物を0.5%以上、及びウェルコミクロビウム門に含まれる微生物を0.5%以上、含む、
微細藻類成長促進剤。
【請求項3】
5′-CCTACGGGNGGCWGCAG-3′(配列番号1)で示される塩基配列(該塩基配列中、NはA、T、G又はCであり、WはA又はTである)を含む第1プライマーと5′-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3′(配列番号2)で示される塩基配列(該塩基配列中、HはA、T又はCであり、VはA 、C又はGである)を含む第2プライマーとを用いて、該微細藻類成長促進剤中に含まれる微生物を検出したときに、バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及び、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくともいずれか1つ以上が検出される、
請求項2に記載の微細藻類成長促進剤。
【請求項4】
全炭素濃度が2,000mg/kg以下である、
請求項2または3に記載の微細藻類成長促進剤。
【請求項5】
ケルダール法で測定した全窒素濃度が500mg/kg以下である、
請求項2から4のいずれか一項に記載の微細藻類成長促進剤。
【請求項6】
全リン濃度が2,000mg/kg以下である、
請求項2から5のいずれか一項に記載の微細藻類成長促進剤。
【請求項7】
全カリウム濃度が5,000mg/kg以下である、
請求項2から6のいずれか一項に記載の微細藻類成長促進剤。
【請求項8】
前記微細藻類成長促進剤は、粉末、液体、固形又はスラリーの態様である、
請求項2から7のいずれか一項に記載の微細藻類成長促進剤。
【請求項9】
家畜の糞尿の液体成分を分離するステップと、
5′-CCTACGGGNGGCWGCAG-3′(配列番号1)の塩基配列を含む第1プライマーと5′-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3′(配列番号2)の塩基配列を含む第2プライマーとを用いて検出される微生物のうち、バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及び、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくとも1種以上を0.5%以上含むようになるまで、前記液体成分を曝気させるステップと、
曝気させた前記液体成分から微生物を除去するステップと、
を含む、
微細藻類成長促進剤の製造方法。
【請求項10】
前記曝気させるステップにおいて、F[m/s]を空気流量、V[m3]を処理液体積、HL[m]を処理液深度とした場合に、

[数1]
を満たす状態において前記液体成分を曝気させる、
請求項9に記載の微細藻類成長促進剤の製造方法。
【請求項11】
前記曝気させるステップにおいて、5′-CCTACGGGNGGCWGCAG-3′(配列番号1)の塩基配列を含む第1プライマーと5′-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3′(配列番号2)の塩基配列を含む第2プライマーとを用いて検出される微生物のうち、バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及び、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくとも1種以上を1.5%以上含むようになるまで、前記液体成分を曝気させる、
請求項9または10に記載の微細藻類成長促進剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜糞尿を原料とする微細藻類成長促進剤及びその製造方法に関する。
【0002】
微細藻類は、例えば、天然物由来の赤色を呈するカロチノイド色素の一種であるアスタキサンチン等の有用物質の工業生産に利用されている。微細藻類から有用物質を抽出し、食品、医薬品、飼料、肥料等の原材料とすることが行われている。最近では、微細藻類が細胞内に蓄積する糖質や脂質を有用物質として利用して、石油やバイオエタノールを生産することが注目されている。また、微細藻類の一つであるユーグレナはそれ自体が食品原料として工業生産されている。微細藻類は、光合成能力により二酸化炭素を固定することが可能である。このため、温暖化対策として微細藻類を培養することも有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-509188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微細藻類の増殖速度は一般的な従属栄養微生物と比べ低い。例えば、特許文献1には、微細藻類を用いた有用物質等の生産の経済性を向上させるため、窒素及びリン等の栄養素のレベルを増大させることにより、微細藻類の増殖速度を上昇させることが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、微細藻類の増殖速度を十分に高くすることができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、微細藻類の成長を促進することができる微細藻類成長促進剤又はその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[13]である。
[1]家畜糞尿を原料とする微細藻類成長促進剤であって、
家畜糞尿の液体成分を分離するステップと、
バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及びウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくともいずれか1つ以上を含むようになるまで、分離した前記液体成分を曝気させるステップと、
を含む方法により製造された微細藻類成長促進剤。
[2]前記方法が、曝気させた前記液体成分から微生物を除去するステップを含む、[1]の微細藻類成長促進剤。
[3]家畜の糞尿を原料とする微細藻類成長促進剤であって、バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及びウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくともいずれか1つ以上を含む、
微細藻類成長促進剤。
[4]5′-CCTACGGGNGGCWGCAG-3′(配列番号1)で示される塩基配列(該塩基配列中、NはA、T、G又はCであり、WはA又はTである)を含む第1プライマーと5′-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3′(配列番号2)で示される塩基配列(該塩基配列中、HはA、T又はCであり、VはA、C又はGである)を含む第2プライマーとを用いて、該微細藻類成長促進剤中に含まれる微生物を検出したときに、バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及び、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくともいずれか1つ以上が検出される、[3]の微細藻類成長促進剤。
[5]全炭素濃度が2,000mg/kg以下である、[1]から[4]のいずれかの微細藻類成長促進剤。
[6]ケルダール法で測定した全窒素濃度が500mg/kg以下である、[1]から[5]の微細藻類成長促進剤。
[7]全リン濃度が2,000mg/kg以下である、[1]から[6]のいずれかの微細藻類成長促進剤。
[8]全カリウム濃度が5,000mg/kg以下である、[1]から[7]のいずれかの微細藻類成長促進剤。
[9]前記微細藻類成長促進剤は、粉末、液体、固形又はスラリーの態様である、[1]から[8]のいずれかの微細藻類成長促進剤。
[10]家畜の糞尿の液体成分を分離するステップと、
5′-CCTACGGGNGGCWGCAG-3′(配列番号1)の塩基配列を含む第1プライマーと5′-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3′(配列番号2)の塩基配列を含む第2プライマーとを用いて検出される微生物のうち、バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及び、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくとも1種以上を0.5%以上含むようになるまで、前記液体成分を曝気させるステップと、を含む、
微細藻類成長促進剤の製造方法。
[11]さらに、曝気させた前記液体成分から微生物を除去するステップを含む、[10]の微細藻類成長促進剤の製造方法。
[12]前記曝気させるステップにおいて、F[m/s]を空気流量、V[m3]を処理液体積、HL[m]を処理液深度とした場合に、
【数1】
を満たす状態において前記液体成分を曝気させる、[10]または[11]の微細藻類成長促進剤の製造方法。
[13]前記曝気させるステップにおいて、5′-CCTACGGGNGGCWGCAG-3′(配列番号1)の塩基配列を含む第1プライマーと5′-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3′(配列番号2)の塩基配列を含む第2プライマーとを用いて検出される微生物のうち、バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及び、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくとも1種以上を1.5%以上含むようになるまで、前記液体成分を曝気させる、[10]から[12]のいずれかに記載の微細藻類成長促進剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微細藻類の成長を促進するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】微細藻類成長促進剤中の微生物を次世代シーケンサーで定量した際の解析結果を示す。
図2】微細藻類成長促進剤を製造するための製造装置の一例を示す。
図3】微細藻類の培養に用いた複数の培地に含まれる一般的な栄養成分の量を示す図である。
図4】培養開始後7日目のラン藻シネココッカス・エロンゲイタスの増殖量の測定結果を示す図である。
図5】ABC型トランスポーターに関与する遺伝子の発現量の変化を示す。
図6】窒素代謝に関与する遺伝子の発現量変化を示す。
図7】窒素代謝に関与する遺伝子の発現量変化を示す。
図8】二酸化炭素同化に関わるカルビンベンソン回路関連の代謝酵素の遺伝子の発現量を示す図である。
図9】二酸化炭素同化に関わるカルビンベンソン回路関連の代謝酵素の遺伝子の発現量を示す図である。
図10】二酸化炭素同化に関わるカルビンベンソン回路関連の代謝酵素の遺伝子の発現量を示す図である。
図11】二酸化炭素同化に関わるカルビンベンソン回路関連の代謝酵素の遺伝子の発現量を示す図である。
図12】二酸化炭素同化に関わるカルビンベンソン回路関連の代謝酵素の遺伝子の発現量を示す図である。
図13】二酸化炭素同化に関わるカルビンベンソン回路関連の代謝酵素の遺伝子の発現量を示す図である。
図14】二酸化炭素同化に関わるカルビンベンソン回路関連の代謝酵素の遺伝子の発現量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[微細藻類]
本発明者らは、鋭意研究の結果、本実施形態に係る家畜の糞尿の液体成分を原料とする微細藻類成長促進剤が特定の微生物群由来の代謝成分を含むことにより、安定的な微細藻類成長効果をもたらすことを見出した。微細藻類は、光合成可能な生物のうち、個体の識別に顕微鏡を要するものである。
【0010】
微細藻類は、例えば、シアノバクテリア門、不等毛植物門、ユーグレナ植物門、クリプト植物門、ハプト植物門、ケルコゾア門、灰色植物門、紅色植物門、緑藻植物門又はストレプト植物門に属する生物種である。
【0011】
微細藻類は、例えば、シアノバクテリア門のクロオコッカス目、ユレモ目、ネンジュモ目、スティゴネマ目に属する生物種が挙げられ、具体的には、クロオコッカス(Chroococcus sp.)、ミクロキスチス(Microcystis aeruginosa)、ユレモ(Oscillataria sp.)、ミクロコレウス(Microcoleus sp.)、ネンジュモ(Nostoc sp.)、キリンドロスペルムム(Cylindrospermum)、スティゴネマ(Stigonema)又はシネココッカス・エロンゲイタス(Synecochoccus elongatus)が挙げられる。
【0012】
微細藻類は、例えば、不等毛植物門の黄金色藻綱のオクロモナス目又はマロモナス目に属する生物種であってもよく、具体的には、ニセクスダマヒゲムシ(Uroglenopsis americana)、ウログレナ(Uroglena volvox)、マロモナス(Mallomonas)又はシヌラ(Synura sp.)が挙げられる。微細藻類は、例えば、不等毛植物門の珪藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、コアミケイソウ(Coscinodiscus sp.)又はディアトマ(Diatoma)が挙げられる。微細藻類は、例えば、不等毛植物門の黄緑色綱に属する生物種であってもよく、具体的には、シュードスタウラスツルム(Pseudostaurastrum sp.)又はカラキオプシス(Characiopsis sp.)が挙げられる。微細藻類は、例えば、不等毛植物門のディクチオカ藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、ディクチオカ(Dictyocha sp.)が挙げられる。微細藻類は、例えば、不等毛植物門の渦鞭毛藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、ウズオビムシ(Peridinium sp.)又はマルスズオビムシ(Scrippsiella trochoidea)が挙げられる。
【0013】
微細藻類は、例えば、ユーグレナ植物門のユーグレナ藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、ユーグレナ(Euglena sp.)又はウチワヒゲムシ(Phacus sp.)が挙げられる。微細藻類は、例えば、クリプト植物門のクリプト藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、クリプトモナス(Cryptomonas sp.)又はロドモナス(Rhodomonas sp.)が挙げられる。
【0014】
微細藻類は、例えば、ハプト植物門のハプト藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、コロノスファエラ(Coronosphaera sp.)又はゲフィロカプサ(Gephyrocapsa sp.)が挙げられる。微細藻類は、例えば、ケルコゾア門の有殻糸状根足虫綱に属する生物種であってもよく、具体的には、パウリネラ クロマトフォラ(Paulinella chromatophora)が挙げられる。微細藻類は、例えば、灰色植物門の灰色藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、グラウコキスチス(Glaucocystis sp.)が挙げられる。
【0015】
微細藻類は、例えば、紅色植物門の紅藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、イデユコゴメ(Cyanidium sp.)又はガルディエリア(Galdieria sp.)が挙げられる。微細藻類は、例えば、緑藻植物門の緑藻綱のヨコワミドロ目、ボルボックス目又はヨツメモ目に属する生物種であってもよく、具体的には、フタヅノクンショウモ(Pediastrum duplex)、ボルボックス(Volvox sp.)、クラミドモナス(Chlamydomonas sp.)又はアステロコックス(Asterococcus sp.)が挙げられる。
【0016】
微細藻類は、例えば、ストレプト植物門のメソスティグマ藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、メソスティグマ(Mesostigma sp.)が挙げられる。微細藻類は、例えば、ストレプト植物門の接合藻綱に属する生物種であってもよく、具体的には、ホシミドロ(Zygnema sp.)が挙げられる。微細藻類は、一例としては、いわゆるラン藻の一種であるシアノバクテリア門のシネココッカス・エロンゲイタス(Synecochoccus elongatus)が挙げられる。
【0017】
[微細藻類成長促進剤の成分]
本発明の微細藻類成長促進剤は、少なくともその製造工程において、バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、及びウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくともいずれか1つ以上の微生物を含む。例えば、本発明の微細藻類成長促進剤は、これらの微生物からなる群のうち、少なくとも1種以上を0.5%以上(後述する方法により本発明の微細藻類成長促進剤から検出される微生物全体に対する割合。以下、微生物の含有割合については同様である。)含む。また、本発明の微細藻類成長促進剤は、そのまま用いてもよいが、使用前に微生物を除去してもよい。微生物を除去する方法としては特に制限されず、例えば、フィルターによる除去、遠心分離による除去、オートクレーブによる滅菌、紫外線照射による滅菌が挙げられる。
【0018】
[バクテロイデス門]
バクテロイデス門は、グラム陰性細菌のグループであってもよく、腸内細菌として知られている微生物が含まれる。下位分類(綱)として、バクテロイデス綱、フラボバクテリア綱、スフィンゴバクテリア綱、キティノファガ綱、キトファガ綱、サプロスピラ綱を含む。バクテロイデス門に含まれる微生物としては、例えば、Bacteroides plebeius、Bacteroides fragilisが挙げられる。
【0019】
本発明の微細藻類成長促進剤の製造工程では、バクテロイデス門の微生物の微細生藻類成長促進剤中の含有割合は、1.5%以上となることが好ましく、5~12%となることがより好ましい。
【0020】
[クロロフレクサス門]
クロロフレクサス門は、緑色滑走細菌門とも呼ばれ、下位分類(綱)として、クロロフレクサス綱、アナエロリネア綱、アルデンティカテナ綱、カルディリネア綱、クテドノバクテル綱、テルモフレクスス綱、テルモミクロビウム綱を含む。クロロフレクサス門に含まれる微生物としては、例えば、Thermomicrobium roseum、Sphaerobacter thermophilus、Caldilinea aerophila、Caldilinea tarbellica、Ktedonobacter、Thermosporothrix、Thermogemmatispora onikobensis、Thermogemmatispora foliorumが挙げられる。本発明の微細藻類成長促進剤の製造工程では、クロロフレクサス門の微生物の微細藻類成長促進剤中の含有割合は、1.5%以上となることが好ましく、2~15%となることがより好ましい。
【0021】
[ゲンマティモナス門]
ゲンマティモナス門は、グラム陰性細菌の門である。下位分類(綱)として、ゲンマティモナス綱、ロンギミクロビウム綱が含まれる。ゲンマティモナス門に含まれる微生物としては、例えば、Gemmatimonas aurantiaca、Gemmatimonas phototrophica、Longimicrobium terrae、Gemmatirosa kalamazoonesisが挙げられる。本発明の微細藻類成長促進剤の製造工程では、ゲンマティモナス門の微生物の微細生藻類成長促進剤中の含有割合は、1.5%以上となることが好ましく、2%~5%となることがより好ましい。
【0022】
[ウェルコミクロビウム門]
ウェルコミクロビウム門は、グラム陰性細菌の門である。下位分類(綱)として、ウェルコミクロビウム綱、オピトゥトゥス綱を含む。ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物としては、例えば、Verrucomicrobium Haloferula、Verrucomicrobium Luteolibacter、Verrucomicrobium Persicirhabdus、Verrucomicrobium Prosthecobacter、Verrucomicrobium Roseibacillus、Verrucomicrobium Roseimicrobium、Prosthecobacterdejongeii、Chthoniobacter flavus、Ellin514株、Puniceicoccus Cerasicoccusが挙げられる。本発明の微細藻類成長促進剤の製造工程では、ウェルコミクロビウム門の微生物の含有割合は、1.5%以上となることが好ましく、2%~5%となることがより好ましい。
【0023】
本発明の微細藻類成長促進剤の製造工程では、アシドバクテリア門に含まれる微生物、クロロビウム門に属する微生物、及びプロテオバクテリア門に属する微生物からなる群から選ばれる一種以上の微生物の微細藻類成長促進剤中の含有割合が1.5%以上となることが好ましい。
【0024】
[リアルタイムPCRとシーケンスによる微生物の検出]
微細藻類成長促進剤の製造過程において微細藻類成長促進剤中の16S rRNAをターゲットとする第1プライマー及び第2プライマーを用いたリアルタイムPCRを行うことにより微細藻類成長促進剤に含まれる微生物群を特定することができる。リアルタイムPCRでは、PCR増幅産物の増加をリアルタイムに解析することにより、鋳型DNAを定量する。16S rRNAは、どの微生物においても配列の相動性が高い。このため、16S rRNAは、微生物の定量の指標として用いることができる。
【0025】
第1プライマー及び第2プライマーは、リアルタイムPCRにおいてDNAポリメラーゼによる鋳型DNAの複製の開始起点となるオリゴヌクレオチドである。第1プライマーとして、配列番号1:
5′-CCTACGGGNGGCWGCAG-3′(配列番号1)
で示される塩基配列を含むDNA分子を用い、第2プライマーとして、配列番号2:
5′-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3′(配列番号2)
で示される塩基配列を含むDNA分子を用いることができる。
【0026】
配列番号1で示される塩基配列中、NはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)又はC(シトシン)であり、WはA又はTである。配列番号2で示される塩基配列中、HはA、T又はCであり、VはA、C又はGである。
【0027】
第1プライマーは、配列番号1で示される塩基配列の5’側又は3’側に追加的な塩基配列を含んでもよい。このようなプライマーの例としては、5’側に追加的な塩基配列を含む配列番号3:
5 ′ -TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG-3′のDNA分子が挙げられる。同様に、第2プライマーは、配列番号2で示される塩基配列の5’側又は3’側に追加的な塩基配列を含んでもよい。このようなプライマーの例としては、5 ’ 側に追加的な塩基配列を含む配列番号4 : 5 ′ -
GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC-3′のDNA分子が挙げられる。
【0028】
リアルタイムPCRにより増幅されたDNA分子の配列を解読することにより、微生物群の種をそれぞれ特定することができる。解読されたDNA配列と既知の種のDNA配列との相同性が97%以上である場合に、解読されたDNA配列がこの既知の種由来の16S rRNAの鋳型DNA配列又は鋳型DNAの相補鎖のDNA配列であると判定することができる。
【0029】
図1は、本発明の実施例に係る微細藻類成長促進剤A中の微生物を次世代シーケンサーで定量した際の解析結果を示す。図1には、次世代シーケンサーにより検出された代表的な微生物のリード数を門ごとに示す。リード数は、DNA分子の塩基配列を解読した結果、図1に示す門に属する微生物由来であると判定されたDNA分子の数である。図1の全リード数に対する割合は、塩基配列を解読したDNA分子の総数(全リード数)に対するリード数の割合の百分率である。なお、図1に示す結果を得るための解析方法の詳細については後述する。
【0030】
微細藻類成長促進剤Aの次世代シーケンサーによる解析結果では、図1に示すように、全リード数に対するそれぞれの門に属する微生物のリード数の割合は、アシドバクテリア門に含まれる微生物が14.88%、バクテロイデス門に含まれる微生物が6.804%、クロロビウム門に含まれる微生物が8.619%、クロロフレクサス門に含まれる微生物が8.952%、ゲンマティモナス門に含まれる微生物が3.12%、未培養門OD1に含まれる微生物が2.929%、プロテオバクテリア門に含まれる微生物が36.792%、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物が2.83%であった。
【0031】
微細藻類成長促進剤Aに含まれる微生物の割合は、微細藻類成長促進剤Aの製造場所の地理的条件等により多少ばらつくことがあるが、図1に示す基準値は、このばらつきによらずに検出可能な微生物の割合である。この基準値は、図1に示す全リード数に対する割合と同様に、それぞれの門に含まれる微生物が微細藻類成長促進剤Aの次世代シーケンサーにおいて検出されるリード数の全リード数に対する百分率を示す。図1の基準値の欄に示すように、微細藻類成長促進剤Aは、アシドバクテリア門に含まれる微生物を3.5%以上、バクテロイデス門に含まれる微生物を1.5%以上、クロロビウム門に含まれる微生物を1.5%以上、クロロフレクサス門に含まれる微生物を1.5%以上、ゲンマティモナス門に含まれる微生物を0.5%以上、未培養門OD1に含まれる微生物を0.5%以上、プロテオバクテリア門に含まれる微生物を8%以上、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物を0.5%以上少なくとも含むことが好ましい。
【0032】
本発明の微細藻類成長促進剤は、家畜の糞尿由来であり、炭素分(有機物)を含有していてもよい。ただし、微細藻類の肥料として有機物を加えることは推奨されていないため、本発明の微細藻類成長促進剤は、炭素分が少ない方が好ましく、全炭素濃度が2,000mg/kg以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の微細藻類成長促進剤は、窒素分を含有していてもよい。窒素分は微細藻類成長促進効果を補強することができる。後述するように、窒素分は、本発明の微細藻類成長促進剤の主要な有効成分ではないと考えられる。本発明の微細藻類成長促進剤は、好ましくは、ケルダール法で測定した全窒素濃度が500mg/kg以下である。
【0034】
本発明の微細藻類成長促進剤は、リン分を含有していてもよい。リン分は微細藻類成長促進効果を補強することができる。後述するように、リン分は、本発明の微細藻類成長促進剤の主要な有効成分ではないと考えられる。本発明の微細藻類成長促進剤は、好ましくは、全リン濃度が2,000mg/kg以下である。
【0035】
本発明の微細藻類成長促進剤は、カリウム(塩であってもよい)を含有していてもよい。カリウムは微細藻類成長促進効果を補強することができる。後述するように、カリウムは、本発明の微細藻類成長促進剤の主要な有効成分ではないと考えられる。本発明の微細藻類成長促進剤は、好ましくは、全カリウム濃度が5,000mg/kg以下である。
【0036】
本発明の微細藻類成長促進剤は、剤型は限定されず、液体、粉末、固形又はスラリー等のいずれであってもよいが、液体であることが好ましい。また、本発明の微細藻類成長促進剤は、剤型に応じた副成分、例えば、希釈剤、安定剤、増粘剤、造粒剤などを含んでいてもよい。
【0037】
本発明の微細藻類成長促進剤の好適な態様として、全窒素濃度が500mg/kg以下であり、全リン濃度が2,000mg/kg以下であり、全カリウム濃度が5,000mg/kg以下であり、アンモニア性窒素の濃度が200mg/L以下であり、水溶性リン酸の五酸化リン酸換算の濃度が5質量%以下であり、且つ、水溶性カリウムの二酸化カリウム換算の濃度が5質量%以下である微細藻類成長促進剤が挙げられる。微細藻類成長促進剤における窒素、リン及び水溶性カリウムの濃度は、一般的な肥料における窒素、リン及び水溶性カリウムの濃度より低い。本発明の微細藻類成長促進剤は、窒素等の濃度が低いにもかかわらず、後述の実施例において確認されているように微細藻類成長促進効果がある。このことから、微細藻類成長促進剤には上記微生物の代謝成分が含まれていると推定される。
【0038】
[微細藻類成長促進剤の好適な製造方法の例]
本発明の微細藻類成長促進剤は、例えば、家畜、好ましくは牛や豚の糞尿を数日間以上曝気させることにより得ることができる。糞尿を曝気させることにより、上記した微生物が増殖し、本発明の微細藻類成長促進剤が得られる。曝気させる期間は、好ましくは、1ヶ月以上であり、より好ましくは、10ヶ月以上であり、さらに好ましくは12ヶ月以上であり、特に好ましくは、13ヶ月~18ヶ月である。
【0039】
[微細藻類成長促進剤の好適な製造方法]
本発明の微細藻類成長促進剤の好適な製造方法を説明する。本発明の微細藻類成長促進剤は、好ましくは、以下の(1)~(2)のステップを含む方法により製造される。
(1)家畜の糞尿の液体成分を分離するステップ
(2)液体成分を曝気させるステップ
(1)のステップでは、家畜の糞尿を蓄積し、蓄積した糞尿の液体成分を分離する。例えば、家畜の糞尿の上澄み液を液体成分として分離する。
【0040】
(2)のステップでは、家畜の糞尿の液体成分を曝気処理槽において曝気する。曝気処理槽においては、糞尿の液体成分中へ空気を送り込み、送り込んだ空気に液体を触れさせることにより、糞尿の液体成分を曝気させることができる。曝気処理槽のサイズに特に制限は設けないが、例えば、1L~100kLの間である。曝気処理槽のサイズは、望ましくは10L~10kL、更に望ましくは500L~5kLである。処理液の供給形態は制限されるものではないが、曝気処理槽に連続的又は半連続的に家畜の糞尿又はその液体成分が供給されることが望ましい。また、上記方法によって得られた微細藻類成長促進剤は、そのまま用いてもよいが、微細藻類成長促進剤の製造方法として、(2)のステップの後に微生物を除去するステップを備えてもよい。微生物を除去する方法としては特に制限されず、例えば、フィルターによる除去、遠心分離による除去、オートクレーブによる滅菌、紫外線照射による滅菌が挙げられる。
【0041】
図2は、微細藻類成長促進剤Aを製造するための製造装置100の一例を示す。製造装置100は、糞尿貯め10と、供給部20と、第1曝気処理槽30a~第4曝気処理槽30dと、コンプレッサ40a~コンプレッサ40dと、回収部50とを備える。糞尿貯め10は、牛舎中の牛の糞尿を貯える。供給部20は、糞尿貯め10と第1曝気処理槽30aとの間に接続されたパイプを介して、糞尿貯め10に貯えられた糞尿をポンプにより第1曝気処理槽30aへ供給する。供給部20は、自動的且つ断続的に糞尿を供給し、例えば、1ヵ月に1回のペースで糞尿を供給する。
【0042】
第1曝気処理槽30a~第4曝気処理槽30dは、槽内に貯えている家畜の糞尿の液体成分を曝気させる。図2は、製造装置100が4つの槽を有する例を示すが、製造装置100は1槽のみを有してもよく、直列に配置された2~8槽を有してもよい。第1曝気処理槽30aのサイズは、一例としては縦3m、横3m、深さ2.5mであり、第2曝気処理槽30b~第4曝気処理槽30dは、第1曝気処理槽30aと同じサイズであってもよい。
【0043】
第1曝気処理槽30a~第4曝気処理槽30dは、糞尿を固体成分と液体成分とに分離する。第1曝気処理槽30a~第4曝気処理槽30dは、槽内の糞尿の固体成分を沈降させる。一方、第1曝気処理槽30aからあふれた糞尿の液体成分は、、第2曝気処理槽30bへ移動する。液体成分が、第3曝気処理槽30c、第4曝気処理槽30dへ順次移動し、それぞれの曝気処理層において糞尿の固体成分が沈降することにより、糞尿の固体成分がほぼ除去される。
【0044】
コンプレッサ40a~コンプレッサ40dは、空気を圧縮して、第1曝気処理槽30a~第4曝気処理槽30d内において糞尿の液体成分中に圧縮した空気を送り込むための装置である。第1曝気処理槽30a~第4曝気処理槽30dでは、コンプレッサ40a~コンプレッサ40dにより送り込まれた空気に液体成分が触れるので、液体成分を曝気させることができる。第1曝気処理槽30a~第4曝気処理槽30dは、コンプレッサ40a~コンプレッサ40dを用いて液体成分内の微生物の増殖に要する酸素を供給することにより、微生物の増殖を促進させることができる。微生物の増殖を促進させることで、糞尿の液体成分に含まれる微生物の代謝成分を増加させることができる。
【0045】
(2)のステップでは、F[m/s]を空気流量、V[m3]を処理液体積、HL[m]を処理液深度とした場合に、
【数2】
を満たす状態において家畜の糞尿の液体成分を曝気させる。この式(a)は通気塔の酸素移動容量係数と操作条件との関係を示すものとして知られている。酸素移動容量係数は、槽内の酸素供給能を示す指標であり、式(a)の数値kに比例することが知られている(吉敏臣著「バイオテクノロジー教科書シリーズ 培養工学」コロナ社、1998年12月18日発行、p.45-51)。
【0046】
曝気が行われている間の糞尿の液体成分の温度は、0℃~40℃の範囲である。曝気が行われている間の糞尿の液体成分のpHは、6.0~8.0の間が好適である。
【0047】
曝気時間は、糞尿の液体成分の植物発芽阻害成分が十分に除去できるまでの時間であり、好ましくは、1ヶ月以上、さらに好ましくは12カ月以上である。
【0048】
図2の回収部50は、例えばポンプを用いて、第4曝気処理槽30dに接続されたパイプを介して、曝気された後の液体成分を回収する。回収された液体成分中では、(2)のステップの処理を実行することにより、含有する微生物が増殖しており、第1プライマー及び第2プライマーを用いて検出される微生物のうち、バクテロイデス門に含まれる微生物を1.5%以上、クロロフレクサス門に含まれる微生物を1.5%以上、ゲンマティモナス門に含まれる微生物を0.5%以上、又は、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物を0.5%以上含む。
【0049】
なお、糞尿の液体成分の曝気時間を短縮したい場合には、第1プライマー及び第2プライマーを用いて検出される微生物のうち、バクテロイデス門に含まれる微生物、クロロフレクサス門に含まれる微生物、ゲンマティモナス門に含まれる微生物、又は、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物からなる群のうち少なくとも1種以上を0.5%以上含むようになるまで、液体成分を曝気させるものとする。
【0050】
(3)のステップでは、回収された液体成分から微生物を除去する。例えば、(3)のステップでは、ボトルトップフィルタで液体成分をろ過することにより、微生物を除去する。また、液体成分をオートクレーブにより加熱除去してもよい。このようにして、微細藻類の培養液に微細藻類成長促進剤を加えるときに微生物が混入することを抑制することができる。
【実施例
【0051】
[実施例1]
[微細藻類成長促進剤Aの製造]
図2に示した製造装置100を用いて微細藻類成長促進剤Aを製造した。微細藻類成長促進剤Aの原材料として牛舎中の牛の糞尿を用いた。図2の第4曝気処理槽30dの貯留液から1ヶ月に1回約6トンの微細藻類成長促進剤Aを取り出した。第1曝気処理槽30a~第4曝気処理槽30dの体積はそれぞれ20kLとした。曝気量は各曝気処理槽で約3.75m/分とした。F[m/s]を空気流量、V[m]を処理液体積、H[m]を処理液深度とした場合に、以下の式(a):
【数3】
において数値kは、0.011〔m2/3/s〕であり、式(a)の不等式の条件を満たした。
【0052】
[微細藻類成長促進剤Aの組成分析]
簡易CODメーターHC-607を用いて化学的酸素要求量(COD)を測定した。水素イオン濃度pHは、JIS K0102 17.1にしたがい、ガラス電極法を用いて測定した。全炭素濃度は、全有機炭素計(TOC-V,SSM-5000A,島津製作所)を用いて測定した。全窒素濃度の測定では、ケルダール法により変換されたアンモニア態窒素をインドフェノール青法で測定した。全リン濃度の測定では、微細藻類成長促進剤A中のリンにモリブデン酸アンモニウムを加えて錯体が形成され、錯体がアスコルビン酸により還元され、還元反応による生成物の710nmの吸収が測定された。全カリウム濃度は、原子吸光法により測定された。無機窒素の測定では、試料4.0gが1.0 M KCl 40mLに溶解し、遠心分離後の上清が測定に用いられた。
【0053】
アンモニア態窒素の濃度の測定では、アンモニア態窒素の抽出液1.0mLにフェノールニトロプルシッド溶液400μLを混合し、この混合液に次亜塩素酸ナトリウム溶液600μLを加えてから撹拌した。撹拌してから45分後に、635nmの光の吸光度を分光光度計でアンモニア態窒素の濃度を測定した。
【0054】
また、亜硝酸態窒素の濃度の測定では、まず、亜硝酸態窒素の1.0mLの抽出液に100μLのスルファニルアミド溶液を加えてから撹拌し、3分間放置した。その後、放置した溶液に、ナフチルエチレンジアミン溶液100μLを加えてから撹拌し、20分間放置した。その後、540nmの光の吸光度を分光光度計で測定することにより亜硝酸態窒素の濃度を測定した。
【0055】
硝酸態窒素の測定では、硝酸態窒素の抽出液200μLにブルシン・4-アミノベンゼンスルホン酸溶液100μLを加えた。その後、溶液に、硫酸(水:濃硫酸=3:20)1.0mLを加えてから撹拌し、冷暗所で10分間反応させた。溶液に、さらに水1.0mLを加えた後に、410nmの光の吸光度を分光光度計で測定した。
【0056】
微細藻類成長促進剤AのpHは8.82、化学的酸素要求量(COD)は749.3±33.4mg/L(試行回数3回、±以下の数値は標準偏差)であった。全炭素濃度は1,100 mg/kg、全窒素濃度は290mg-N/kg、全リン濃度は、26mg/kg、全カリウム濃度は2,700mg/kgであった。水溶性硝酸態窒素濃度は380mg-N/kg、アンモニア性窒素は不検出、水溶性リン酸濃度は五酸化リン酸換算で64mg-P/kg、水溶性カリウム濃度は酸化カリウム換算で3,254mg-KO/kgであった。
【0057】
北海道施肥ガイド2015(北海道ホームページ、 http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/shs/clean/sehiguide2015.htm、2020年4月14日閲覧)によると、一般的な牛糞堆肥の全炭素量は72,000mg/kg、全窒素量は6,000mg-N/kg、水溶性リン酸は4,000mg-P/kg、水溶性カリウムは5,000mg-KO/kg程度である。したがって、微細藻類成長促進剤Aの中に含まれる肥料成分は、一般的な牛糞堆肥に比べて極めて希薄であることがわかる。以下の[実施例2]及び[実施例3]に微細藻類成長促進剤Aを用いる前に、フィルター孔径0.2μmのボトルトップフィルタで微細藻類成長促進剤Aをろ過することにより、微細藻類成長促進剤Aから微生物を除去した。
【0058】
[実施例2]
図3は、微細藻類の培養に用いた複数の培地に含まれる一般的な栄養成分の量を示す図である。図3には、それぞれの培地に含まれる窒素量(図3中のN)、リン量(図3中のP)、カリウム量(図3中のK)をppmで示す。
【0059】
以下、図3に示す培地の製造方法を説明する。図3の下から2段目に示す「BG11+1/2微細藻類成長促進剤A」の培地は、200ml容量の三角フラスコに2倍濃度のBG(Blue-Green)11培地(pH7.5)10mlを入れた培地である。この培地に、フィルター孔径0.2μmのボトルトップフィルタで微生物を除去した微細藻類成長促進剤A10mlを添加した。図3の最下段に示す「BG11+1/10微細藻類成長促進剤A」の培地では、微細藻類成長促進剤A10mlを添加する代わりに、微細藻類成長促進剤A2 mlと、脱イオン水8mlと、を添加した。対象実験として、図3の上から1段目の「BG11」の培地では、微細藻類成長促進剤A10mlを添加する代わりに、脱イオン水10mlを添加した。
【0060】
図3の上から2段目の「2倍BG11」の培地は、BG11培地20mlを三角フラスコに入れ、微細藻類成長促進剤Aを添加しない培地である。図3の上から3段目の「BG11+N」の培地は、微細藻類成長促進剤Aを添加する代わりに、NaNOを添加し、「BG11+1/2微細藻類成長促進剤A」の培地に含まれる無機窒素成分とほぼ一致するように、窒素量を389.3ppmとした培地である。図3中の括弧内の数値は、微細藻類成長促進剤Aの代わりに添加した栄養成分の量を示す。「BG11+N」の培地の窒素量の括弧内の数値である142.0ppmは、NaNOとして添加した窒素量を示す。
【0061】
図3の上から4段目の「BG11+P」の培地は、微細藻類成長促進剤Aを添加する代わりに、KHPOを添加し、「BG11+1/2微細藻類成長促進剤A」の培地に含まれるリン成分とほぼ一致するように、リン量を18.4ppmとした培地である。
【0062】
図3の上から4段目の「BG11+K」の培地は、微細藻類成長促進剤Aを添加する代わりに、KClを添加し、「BG11+1/2微細藻類成長促進剤A」の培地に含まれるカリウム成分とほぼ一致するように、カリウム量を1360.3ppmとした培地である。図3の上から6段目の「BG11+N+P+K」の培地は、微細藻類成長促進剤Aを添加する代わりに、NaNO、KHPO及びKClを添加し、「BG11+1/2微細藻類成長促進剤A」の培地に含まれる窒素成分、リン成分及びカリウム成分とほぼ一致するように、窒素量、リン量及びカリウム量をそれぞれ389.3ppm、18.4ppm及び1360.3ppmとした培地である。調整後の試料をそれぞれオートクレーブ滅菌(121℃、15分間)した。
【0063】
BG11培地で維持培養しているラン藻シネココッカス・エロンゲイタスPCC7942株の培養液1mlを調整後の試料に播種し、室温(約25℃)、LED照明下(光量子密度150μmol/m/s,照度:9000lux)明期12時間・暗期12時間、120rpmで旋回攪拌しながら培養した。培養7日目にクリーンベンチ内で0.1 mlの培地を採取し、脱イオン水で希釈後、分光光度計を用いて、730nmの波長を用いて簡易濁度を測定し、増殖量の指標とした。
【0064】
図4は、培養開始後7日目のラン藻シネココッカス・エロンゲイタスの増殖量の測定結果を示す図である。縦軸は、シネココッカス・エロンゲイタスの増殖量を示す。増殖量は、730nmの波長を用いた簡易濁度の測定により求められ、BG11培地の増殖量を1とする相対量で示された。図4に示すように、微細藻類成長促進剤Aを添加した「BG11+1/2微細藻類成長促進剤A」では、シネココッカス・エロンゲイタスの増殖量が約4割増加することが確認された。「BG11+1/10微細藻類成長促進剤A」の培地では、シネココッカス・エロンゲイタスの増殖量が約3割増加することが確認された。一方、BG11培地を2倍濃度で作成した「2倍BG11」の培地では、有意な増殖量の増加はみられなかった。
【0065】
微細藻類の成長を促進する効果をもたらす微細藻類成長促進剤Aの有効成分は現在のところ特定されていない。微細藻類成長促進剤Aに含まれる窒素成分、リン成分又はカリウム成分が微細藻類の成長促進効果に寄与しているか否かを確認するため、図3の「BG11+N」、「BG11+P」、「BG11+K」及び「BG11+N+P+K」の培地を用いて、微細藻類成長促進効果を調べた。
【0066】
図4に示すように、「BG11+N」の培地では、シネココッカス・エロンゲイタスの増殖量の有意な増加はみられなかった。同様に、「BG11+K」、「BG11+P」、「BG11+N+P+K」の培地では、シネココッカス・エロンゲイタスの増殖量の有意な増加はいずれもみられなかった。したがって、微細藻類成長促進剤A中の窒素、リン、カリウム以外の成分がシネココッカス・エロンゲイタスの増殖促進効果をもたらすことが明らかになった。
【0067】
[実施例3]
微細藻類成長促進剤Aによる微細藻類の成長促進効果のメカニズムを解明するため、微細藻類成長促進剤Aを添加した場合のシネココッカス・エロンゲイタスの遺伝子発現量の変化を調べた。
【0068】
[培養後の菌体からのRNA抽出]
培養7日目の10ml微細藻類成長促進剤A(フィルターによる滅菌済み)を加えた培養液ならびにBG11培地で培養した培養液10mLからシネココッカス・エロンゲイタス菌体を遠心分離で分画した。得られた菌体を液体窒素で瞬間冷凍し、菌体の生体反応を停止させた。1mlのTrizol試薬(Thermo Fisher Science社)を添加し、再懸濁した後、直径0.2mmのガラスビーズを入れたスクリューキャップチューブに入れ、4200rpm、1分間のビーズビーティングにより細胞を破砕した。
【0069】
スクリューキャップチューブを20,000×gで5分間遠心分離し、500μLの上清を回収し、新しいマイクロチューブに移した。マイクロチューブに200μLのクロロホルムを添加し3分間ローテ―ターで緩やかに攪拌した。20,000×g、4℃で、液体を10分間遠心分離し、上層の水相を400μL取り出し、新しいマイクロチューブに入れた。400μLのイソプロパノールを液体に添加し、軽く攪拌した後、室温で10分放置し、20,000×g、4℃で10分間遠心分離した。沈殿したRNAペレットを風乾し、RNAフリー水44μLで溶かした。その後、DNaseI(ニッポンジーン)で液体を処理し、フェノールクロロホルム抽出・エタノール沈殿を行いそれぞれのRNAサンプルを得た。それぞれのサンプルにつき、3回反復して処理を行った。
【0070】
rRNA Depletion Kit (Bacteria)(New England BioLabs)によりリボソームRNAを除去した後、Illumina TruSeq Stranded mRNA sample prep kit (Illumina社)を用いてライブラリーを作成した。Illumina HiSeq2500シーケンサーを用いて、2×150bp,3Gbのペアエンドシークエンスにより、サンプルあたり約120万リードのシークエンスデータが得られた。Cutadaptを用いてアダプタ配列を除去した後、FastQCを用いて低品質リード(Q<30)を除去した。シネココッカス・エロンゲイタスPCC7942のリファレンスゲノムに対して、TopHat2マッピングソフトウエアを用いてシークエンスデータをマッピングした。Cufflinksソフトウエアを用いて、マッピングされたリード数を転写産物の長さで補正したFPKM(Fragment Per Kilobese of exon permillion reads Mapped)を算出し、発現量の指標とした。
【0071】
[ABC型トランスポーター関連遺伝子発現の変化]
図5は、ABC(ATP-Binding Cassette)型トランスポーターに関与する遺伝子の発現量の変化を示す。ABC型トランスポーターは、アデノシン三リン酸(ATP)のエネルギーを用いて、物質を能動的に細胞膜内へ取込む。図5の縦軸は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞の発現量(FPKM)を、BG11のみで培養された細胞の発現量で除した値を倍変化として対数軸で示す。
【0072】
図5中に示すように、ABC型ニトレート/スルフォネート/バイカルボネートトランスポーターシステムに関与する遺伝子ID:Synpcc7942_2105(タンパク質名:ニトレートトランスポートATP結合サブユニットC及びD)、遺伝子ID:Synpcc7942_2106(タンパク質名:ニトレートトランスポートパーミアーゼ)、遺伝子ID:Synpcc7942_2107(タンパク質名:ABC型ニトレート/スルフォネート/バイカルボネートトランスポートシステムペリプラズムコンポーネント様タンパク質)、遺伝子ID:Synpcc7942_1236(タンパク質名:ニトレートトランスポートATP結合サブユニットC及びD)、遺伝子ID:Synpcc7942_1237(タンパク質名:ニトレートトランスポートATP結合サブユニットC及びD)、遺伝子ID:Synpcc7942_1238(タンパク質名:ニトレートトランスポートパーミアーゼ)、及び、遺伝子ID:Synpcc7942_1239(タンパク質名:ABC型ニトレート/ニトライトトランスポートシステム基質結合タンパク質)の各遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加した細胞では、微細藻類成長促進剤Aを添加しない場合に比べていずれも増加し、最大約30倍になった。
【0073】
図5中の遺伝子IDは、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes、Minoru Kanehisa、https://www.genome.jp/dbget-bin/www_bfind_sub?mode=bfind&max_hit=1000&locale=en&serv=kegg&dbkey=kegg&keywords=Synpcc7942_2296&page=1、2020年4月20日閲覧)の遺伝子データベースにおいてそれぞれの遺伝子に割り当てられたものを示す。共通のタンパク質名に対応する複数の遺伝子は、互いにアイソザイムの関係にあるタンパク質をコードしている。この結果から、微細藻類成長促進剤Aの添加により、窒素源である硝酸や炭素源である炭酸の取り込みが効率化したことが示唆された。
【0074】
ABC型鉄(III)イオントランスポーターシステムに関与する2つの遺伝子、遺伝子ID:Synpcc7942_1407(タンパク質名:鉄(III)ABC型トランスポーターパーミアーゼ)及び遺伝子ID:Synpcc7942_1409(タンパク質名:鉄トランスポートシステム基質結合タンパク質)の遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加した細胞では、微細藻類成長促進剤Aを添加しない場合に比べてわずかに増加を示した。
【0075】
一方、ABC型スルフェートトランスポーターシステムに関与する6つの遺伝子、遺伝子ID:Synpcc7942_1682(タンパク質名:スルフェートトランスポートシステムパーミアーゼタンパク質2)、遺伝子ID:Synpcc7942_1685(タンパク質名:スルフェートトランスポートシステムパーミアーゼタンパク質2)、遺伝子ID:Synpcc7942_1686(タンパク質名:チオスルフェート結合タンパク質)、遺伝子ID:Synpcc7942_1687(タンパク質名:スルフェートABCトランスポーター,パーミアーゼタンパク質CysT)、遺伝子ID:Synpcc7942_1688(タンパク質名:スルフェートABCトランスポーター,パーミアーゼタンパク質CysW)、遺伝子ID:Synpcc7942_1722(タンパク質名:チオスルフェート結合タンパク質)の遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加しない場合に比べて顕著に異なることはなかった。
【0076】
ABC型ホスフェートトランスポーターシステムに関与する5つの遺伝子、遺伝子ID:Synpcc7942_2441(タンパク質名:ホスフェートトランスポートシステムパーミアーゼタンパク質1)、遺伝子ID:Synpcc7942_2442(タンパク質名:ホスフェートトランスポートシステムパーミアーゼタンパク質2)、遺伝子ID:Synpcc7942_2443(タンパク質名:ホスフェートABCトランスポーター,パーミアーゼタンパク質PstC)、遺伝子ID:Synpcc7942_2444(タンパク質名:ホスフェート結合タンパク質)、遺伝子ID:Synpcc7942_2445(タンパク質名:ホスフェート結合タンパク質)の遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加した細胞では、微細藻類成長促進剤Aを添加しない場合に比べて減少した。
【0077】
[窒素代謝に関与する遺伝子の発現量の変化]
図6及び図7は、窒素代謝に関与する遺伝子の発現量変化を示す。図6及び図7には、窒素代謝の各反応が進む向きを矢印で示し、窒素代謝の各反応に関与する酵素の遺伝子の発現量を棒グラフで示す。図6及び図7中のC1~C3は、BG11のみで培養された細胞であることを示す。S1~S3は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞であることを示す。グラフの縦軸は、各試料における酵素の遺伝子の発現量(FPKM)を示す。図6及び図7中の英字(a)~(e)は、窒素代謝に関連する化合物を示し、異なる図においても同じ化合物には共通の英字を付して示す。
【0078】
微細藻類の細胞内では、図6(a)に示す硝酸から図6(b)に示す亜硝酸が合成され、亜硝酸から図6(c)に示すアンモニアが生合成される。フェレドキシン-硝酸還元酵素は、硝酸から亜硝酸を合成する反応に関与する。図6左のグラフは、フェレドキシン-硝酸還元酵素の遺伝子の発現量を示す。フェレドキシン-硝酸還元酵素の遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて顕著に異なることはなかった。
【0079】
同化型亜硝酸還元酵素(フェレドキシン)前駆体及びフェレドキシン-亜硝酸還元酵素は、亜硝酸からアンモニアを合成する反応に関与する。図6右上のグラフは、同化型亜硝酸還元酵素前駆体の遺伝子の発現量を示す。同化型亜硝酸還元酵素前駆体の遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3の約18倍になった。図6の右下には、フェレドキシン-亜硝酸還元酵素の遺伝子の発現量を示す。フェレドキシン-亜硝酸還元酵素の遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて顕著に異なることはなかった。
【0080】
微細藻類の細胞内では、図7(d)に示すニトリルから図7(c)に示すアンモニアが合成され、アンモニアから図7(e)に示すL-グルタミンが合成させる。ニトリラーゼは、ニトリルからアンモニアを合成する反応に関与する。図7左上のグラフに示すニトリラーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて約10倍になった。
【0081】
グルタミンシンターゼタイプIIIは、アンモニアからL-グルタミンを合成する反応に関与する。図7左下のグラフに示すグルタミンシンターゼタイプIIIの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて約4倍になった。
【0082】
L-グルタミンシンターゼ(遺伝子ID:Synpcc7942_2156)と、L-グルタミンシンターゼの別アイソザイム(遺伝子ID:Synpcc7942_2296)とは、アンモニアからL-グルタミンを合成する反応に関与する。図7の中央下のグラフに示すL-グルタミンシンターゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて顕著に異なることはなかった。図7右下のグラフに示すL-グルタミンシンターゼの別アイソザイムの遺伝子の発現量も同様だった。以上の結果から、微細藻類成長促進剤Aの添加により、微細藻類の細胞内において窒素同化に関わる代謝が促進されていると推察することができる。
【0083】
[カルビンベンソン回路の関連遺伝子の発現量の変化]
図8図14は、二酸化炭素の同化を担うカルビンベンソン回路に関連する代謝酵素の遺伝子の発現量を示す図である。図8図14中の英字(a)~(r)は、カルビンベンソン回路に関連する化合物を示し、異なる図においても同じ化合物には共通の英字を付して示す。
【0084】
図8(a)に示すホスホエノールピルベートから図8(b)に示すグリセリン酸-2-ホスフェートが可逆的に合成され、グリセリン酸-2-ホスフェートから図8(c)に示すグリセリン酸-3-ホスフェートが可逆的に合成される。また、図8(a)に示すホスホエノールピルベートに二酸化炭素を反応させることにより、図8(d)に示すオキサロアセタートが合成される。
【0085】
ホスホエノールピルベートと、グリセリン酸-2-ホスフェートとの間の可逆反応に関与するエノラーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加傾向を示した。ホスホエノールピルベートからオキサロアセタートを合成する反応に関与するホスホエノールピルベートカルボキシナーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加傾向を示した。
【0086】
微細藻類の細胞内では、図9(a)に示すリブロース-1,5-ビスホスフェートに二酸化炭素及び水を反応させることにより図9(c)に示すグリセリン酸-3-ホスフェートが合成される。グリセリン酸-3-ホスフェートから図9(e)に示す1,3-ビスホスホグリセリン酸が合成される。リブロース-1,5-ビスホスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase、RubisCO)は、リブロース-1,5-ビスホスフェートからグリセリン酸-3-ホスフェートを合成する反応に関与する。リブロース-1,5-ビスホスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼは、ラージユニット及びスモールユニットが会合して一つの酵素を構成する。
【0087】
リブロース-1,5-ビスホスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼのラージサブユニットの遺伝子の発現量は、図9の左上のグラフに示すように、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加した。一方、リブロース-1,5-ビスホスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼのスモールユニットの遺伝子の発現量は、図9の左下のグラフに示すように、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて顕著に異なることはなかった。
【0088】
ホスホグリセリン酸キナーゼは、グリセリン酸-3-ホスフェートと、1,3-ビスホスホグリセリン酸との間の可逆反応に関与する。ホスホグリセリン酸キナーゼの遺伝子の発現量は、図9の右上のグラフに示すように、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて減少した。
【0089】
微細藻類の細胞内では、図10(e)に示す1,3-ビスホスホグリセラートから図10(g)に示すグリセルアルデヒド-3-ホスフェートが可逆的に合成される。グリセルアルデヒド-3-ホスフェートは、グルコースの結合エネルギーを生体内で使いやすい形に変換する代謝過程である解糖系や、グルコースを生産する糖新生に用いられる。グリセルアルデヒド-3-ホスフェートから図10(h)に示すキシルロース-5-ホスフェートが合成される。キシルロース-5-ホスフェートから図10(j)に示すリブロース-5-ホスフェートが合成される。
【0090】
グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼは、1,3-ビスホスホグリセラートと、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートとの間の可逆反応に関与する。グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加した。フルクトース-6-ホスフェートホスホケトラーゼは、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートからキシルロース-5-ホスフェートを合成する反応に関与する。フルクトース-6-ホスフェートホスホケトラーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて顕著に異なることはなかった。
【0091】
リブロース-5-ホスフェート-3-エピメラーゼは、キシルロース-5-ホスフェートからリブロース-5-ホスフェートを合成する反応に関与する。リブロース-5-ホスフェート-3-エピメラーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて顕著に異なることはなかった。
【0092】
図11(d)に示すオキサロアセタートにアセチル-CoA(コエンザイムエー)を反応させることにより、図11(j)に示すシトラートが可逆的に合成される。シトラートから図11(k)に示すイソシトラートが可逆的に合成される。イソシトラートから図11(l)に示す2-オキソグルタレートが可逆的に合成される。2-オキソグルタレートは、アルギニン生合成、アスコルベート代謝、アルダレート代謝、アラニン代謝、アスパルテート代謝及びグルタメート代謝に用いられる。
【0093】
シトラートシンターゼは、オキサロアセタートとシトラートとの間の可逆反応に関与する。シトラートシンターゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加した。アコニターゼは、シトラートとイソシトラートとの間の可逆反応に関与する。アコニターゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3に比べて増加した。
【0094】
イソシトラートデヒドロゲナーゼは、イソシトラートと2-オキソグルタレートとの間の可逆反応に関与する。イソシトラートデヒドロゲナーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加した。
【0095】
微細藻類の細胞内では、図12(g)に示すグリセルアルデヒド-3-ホスフェートから図12(m)に示すD-フルクトース-1,6-ビスホスフェートが合成される。D-フルクトース-1,6-ビスホスフェートから図12(n)に示すD-フルクトース-6-ホスフェートが合成される。D-フルクトース-6-ホスフェートから図12(o)に示すエリトロース-4-ホスフェートと、キシルロース-5-ホスフェートとが合成される。
【0096】
フルクトース-ビスホスフェートアルドラーゼは、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートからD-フルクトース-1,6-ビスホスフェートを合成する反応に関与する。フルクトース-ビスホスフェートアルドラーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加した。D-フルクトース-1,6-ビスホスファターゼは、D-フルクトース-1,6-ビスホスフェートからD-フルクトース-6-ホスフェートを合成する反応に関与する。D-フルクトース-1,6-ビスホスファターゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べてわずかに増加した。
【0097】
トランスケトラーゼは、D-フルクトース-6-ホスフェートからエリトロース-4-ホスフェートを合成する反応に関与する。トランスケトラーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加した。
【0098】
微細藻類の細胞内では、図13(o)に示すエリトロース-4-ホスフェートから図13(p)に示すセドヘプツロース-1,7-ビスホスフェートが合成される。セドヘプツロース-1,7-ビスホスフェートから図13(q)に示すセドヘプツロース-7-ホスフェートが合成される。
【0099】
フルクトース-ビスホスフェートアルドラーゼは、エリトロース-4-ホスフェートからセドヘプツロース-1,7-ビスホスフェートを合成する反応に関与する。フルクトース-ビスホスフェートアルドラーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加した。セドヘプツロース-1,7-ビスホスファターゼは、セドヘプツロース-1,7-ビスホスフェートからセドヘプツロース-7-ホスフェートを合成する反応に関与する。セドヘプツロース-1,7-ビスホスファターゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べてわずかに増加した。
【0100】
図14(q)に示すセドヘプツロース-7-ホスフェートにグリセルアルデヒド-3-ホスフェートを反応させることにより、図14(r)に示すリボース-5-ホスフェート及びキシルロース-5-ホスフェートが合成される。リボース-5-ホスフェートから図14(i)に示すリブロース-5-ホスフェートが合成される。リブロース-5-ホスフェートから図14(f)に示すリブロース-1,5-ビスホスフェートが合成される。
【0101】
トランスケトラーゼは、セドヘプツロース-7-ホスフェートからリボース-5-ホスフェートを合成する反応に関与する。トランスケトラーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べてわずかに増加した。
【0102】
リボース-5-ホスフェートイソメラーゼは、リボース-5-ホスフェートからリブロース-5-ホスフェートを合成する反応に関与する。リボース-5-ホスフェートイソメラーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加した。
【0103】
ホスホリブロキナーゼは、リブロース-5-ホスフェートからリブロース-1,5-ビスホスフェートを合成する反応に関与する。ホスホリブロキナーゼの遺伝子の発現量は、微細藻類成長促進剤Aを添加して培養された細胞S1~S3において微細藻類成長促進剤Aを添加しない細胞C1~C3と比べて増加した。以上の結果から、微細藻類成長促進剤Aを添加することにより、炭素固定に関わる代謝亢進作用があると推察することができる。
【0104】
実施例3に記載の発現量解析の結果、微細藻類成長促進剤Aはシネココッカス・エロンゲイタスの遺伝子転写制御システムに影響を与え、窒素・炭酸の取り込みや窒素や炭素の同化を亢進する機能を有すると推察することができる。
【0105】
[実施例4]
[微生物群集解析]
実施例1に記載した方法で製造した微細藻類成長促進剤A(1mL)をフィルターによる滅菌をすることなく遠心分離(20,000×g、5分間)し、沈殿物を回収した。560μLのTE緩衝液(10mM Tris緩衝液(pH8.0)、1mM EDTA)に沈殿物を溶解させた後、30μLのSDS溶液、10μLのProteinaseK(10mg/mL)を添加した。その後、溶液を撹拌した後、溶液を37℃で1時間保温した。その後、100μLの5M NaClを溶液に添加し、十分に撹拌した後、80μLのCTAB/NaCl溶液を加え、さらに撹拌した。その後、当該サンプルを65℃で10分間保温した。保温後、0.7mLのクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)をサンプルに添加し、反転混合した。その後、サンプルを遠心分離(20,000×g、5分間)させた。生じた上清を新しいサンプルチューブに移し、フェノールクロロホルム抽出、イソプロパノール沈殿により、DNAを調整した。
【0106】
分離したDNAを鋳型として、5′-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC-3′(配列番号4)の塩基配列からなる第1プライマー、及び、5′-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG-3′(配列番号3)の塩基配列からなる第2プライマーを用いて、16S rRNAの部分配列が増幅された。具体的には、5 ng/μlのDNA2.5 μlにAmplion PCR Forward Primer (1 μM) 5 μl、Amplicon PCR Reverse Primer (1 μM) 5 μl、KAPA HiFi Hotstart ReadyMix (KAPA Biosystems) 12.5 μlを混合し、サーマルサイクラーT-100 (BioRad)を用いてPCR増幅した。サーマルサイクル反応は初期変性(95℃、3分)の後、変性(95℃、30秒)、アニーリング(55℃、30秒)、伸長反応(72℃、30秒)を25サイクル行い、72℃、5分の伸長反応を行った。
【0107】
アガロースゲル電気泳動を用いてPCR増幅反応が確認された後、AMPure XPビーズを用いて、PCR増幅産物の精製をした。PCR増幅産物を遠心機でスピンダウンした後、ボルテックスでよく撹拌したAMPure XPビーズを20 μl加え、ピペッティングで10回混合した。室温で溶液を5分静置した後、マグネティックスタンドにセットした状態で2分静置した。その後、透明になった上清をピペッティングで取り除いた。80%エタノールを沈殿に200 μl加え、30秒静置した。上清を再び取り除き沈殿に再度80%エタノールを200 μl加えた。30秒溶液を静置した後、ピペッティングでエタノールを完全に取り除き、10分風乾した。
【0108】
続いて、マグネティックスタンドからチューブを取り出し、10 mM Tris-HCl (pH 8.5)を52.5 μl加え、ピペッティングでよく撹拌した。室温で溶液を2分静置した後、マグネティックスタンドにセットし、さらに2分静置した。PCR産物が含まれる上清を新しいチューブに移した。Qubit fluorometerを用いて、DNA濃度が確認され、0.2 ng/μl以上であることが確認された。
【0109】
アダプタ及びインデックスを付加するため、2回目のPCRを行った。精製済みのPCR産物5 μlに対してNextera XT Index Primer mix 10 μl、KAPA HiFi HotStart ReadyMix (2 x) 25 μl、RCR grade water 10 μlを混合し、サーマルサイクル反応を行った。サーマルサイクル反応では、初期変性(95℃、3分)の後、変性(95℃、30秒)、アニーリング(55℃、30秒)、伸長反応(72℃、30秒)を8サイクル行い、72℃、5分の伸長反応を行った。その後、AMPure XPビーズを用いて、PCR増幅産物の精製をした。更に、Qubit fluorometerを用いて、DNA濃度が確認され、5 ng/μl以上であることが確認された。
【0110】
Illumina社MiSeqシーケンサーを用いて、ペアエンドシークエンスを行った。得られたリードデータはクオリティーチェックされ、アダプタならびにインデックス配列が除去され、Qiimeプログラムを用いたクラスター解析を行った。97%以上の相同性に基づくOperated Taxonomic Unit (OTU)を作成し、BLAST解析を用いて、系統学的な情報を付与した。計算過程で得られたOTU代表配列データをまとめた多様性解析データが得られた。
【0111】
OTU代表配列データを門レベルでまとめた表を図1に示す。代表配列に含まれるリード数ならびに全リードに対する割合を示している。全リード数は46,605リードであった。アシドバクテリア門に含まれる微生物の割合は14.88%、バクテロイデス門に含まれる微生物の割合は6.804%、クロロビウム門に含まれる微生物の割合は8.619%、クロロフレクサス門に含まれる微生物の割合は8.952%、ゲンマティモナス門に含まれる微生物は3.12%、未培養門OD1に含まれる微生物は2.929%、プランクトミケス門に含まれる微生物は3.525%、プロテオバクテリア門に含まれる微生物は36.792%、ウェルコミクロビウム門に含まれる微生物は2.83%含まれていることが確認された。
【0112】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本実施形態の微細藻類成長促進剤は、微細藻類の成長を促進させるので、微細藻類が生産する各種の有用物質の生産の経済性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0114】
10 糞尿貯め
20 供給部
30a 第1曝気処理槽
30b 第2曝気処理槽
30c 第3曝気処理槽
30d 第4曝気処理槽
40a コンプレッサ
40d コンプレッサ
50 回収部
100 製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
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