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特許7486728乳酸菌及び同乳酸菌を含有する食品・化粧品
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  • 特許-乳酸菌及び同乳酸菌を含有する食品・化粧品 図1
  • 特許-乳酸菌及び同乳酸菌を含有する食品・化粧品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】乳酸菌及び同乳酸菌を含有する食品・化粧品
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240513BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240513BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A23L33/135
A61Q19/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021019749
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122490
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-10-26
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-03367
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-03368
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318001603
【氏名又は名称】株式会社インパクト
(73)【特許権者】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】中野 雄揮
(72)【発明者】
【氏名】北垣 浩志
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-061978(JP,A)
【文献】特開2020-061977(JP,A)
【文献】特開2019-017381(JP,A)
【文献】特開昭61-63241(JP,A)
【文献】特開2013-169193(JP,A)
【文献】特表2010-533487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
A61K 35/744
A61P 37/04
A61K 8/99
A23L 33/135
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号:NITE P-03367で寄託されているリューコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)に属し、マクロファージ活性化能を有することを特徴とする乳酸菌。
【請求項2】
受託番号:NITE P-03368で寄託されているラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)に属し、マクロファージ活性化能を有することを特徴とする乳酸菌。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乳酸菌を含有する食品。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の乳酸菌を含有する化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌及び同乳酸菌を含有する食品・化粧品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌は、従来よりヨーグルトや漬物などの乳酸発酵食品として広く食されており、近年では、健康維持・増進に寄与する機能を有することに注目されている。
【0003】
多くの種類を有する乳酸菌の中でも球菌は、多量に摂取するのに適しており、体内の狭小部分にまで行き届けることができることから、健康維持や増進を促進する乳酸菌として期待されている。
【0004】
そのため、従来より、特定の乳酸菌を抽出し、その乳酸菌の性質を研究することが広く行われている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5114770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乳酸菌は、代謝により乳酸を産生する細菌類の総称であり、リューコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)やラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)などに属する乳酸菌であってもそれぞれの乳酸菌によって異なる性質を有している。
【0007】
そこで、本発明者らは、乳酸菌の抽出、研究、検討を重ね、リューコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)やラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)に属する乳酸菌の中から免疫活性において標準品とは異なる性質を有する乳酸菌を見出すに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明では、受託番号:NITE P-03367で寄託されているリューコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)に属し、マクロファージ活性化能を有することを特徴とする乳酸菌を提供する。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、受託番号:NITE P-03368で寄託されているラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)に属し、マクロファージ活性化能を有することを特徴とする乳酸菌を提供する。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、請求項1又は請求項2に記載の乳酸菌を含有する食品を提供する。
【0011】
また、請求項4に係る本発明では、請求項1又は請求項2に記載の乳酸菌を含有する化粧品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る乳酸菌は、標準品とは免疫活性において異なる特有な性質を有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】桜の花乳酸菌の一酸化窒素産生量と乳酸菌濃度との関係を示すグラフ。
図2】カボスの実乳酸菌の一酸化窒素産生量と乳酸菌濃度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[乳酸菌の単離・同定]
桜の花及びカボスの実から乳酸菌を乳酸菌用のMRS培地で分離培養してコロニーを得て、そのコロニーを用いてカタラーゼ試験及び顕微鏡観察で乳酸菌の簡易同定を行い、乳酸菌のコロニーと同定されるものについて16SrDNA(16SrRNA遺伝子)塩基配列解析による乳酸菌の同定を行った。
【0015】
まず、桜の花とカボスの実とをそれぞれ0.85%食塩水で懸濁し、懸濁液をMRS brothにて30℃で3日間培養した後に、MRS agarにて30℃で3日間培養することで、コロニーを形成させた。
【0016】
次に、形成されたコロニーについて3%過酸化水素水を用いて気泡の発生の有無によるカタラーゼ試験を行うとともに、サフラニンを用いて染色の有無によるグラム染色を行って顕微鏡による目視観察を行うことで、乳酸菌の簡易同定を行った。簡易同定により、カタラーゼ陰性・グラム陽性のコロニーを乳酸菌のコロニーとして選択した。
【0017】
次に、選択されたコロニーについてアルカリ熱抽出法を用いてDNAを抽出し、抽出されたDNAの16SrDNA領域をPCR増幅させた後にDNA精製を行い、16SrDNA領域のシークエンス解析を行った。
【0018】
得られた塩基配列について相同性検索を行ったところ、桜の花から抽出された乳酸菌は、Leuconostoc属のL.mesenteroidesと同定され、また、カボスの実から抽出された乳酸菌は、Lactococcus属のL.lactisと同定された。
【0019】
これらの桜の花やカボスの実から抽出された乳酸菌については、下記のように寄託している。
寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 郵便番号292-0818)
受託番号:NITE -03367(桜の花から抽出された乳酸菌)
受託番号:NITE -03368(カボスの実から抽出された乳酸菌)
【0020】
[乳酸菌の免疫活性評価]
受託番号:NITE -03367で寄託されているリューコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)に属する乳酸菌(以下、「桜の花乳酸菌」という。)、及び、受託番号:NITE -03368で寄託されているラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)に属する乳酸菌(以下、「カボスの実乳酸菌」という。)それぞれについて、乳酸菌の調整や細胞培養を行った後に、生細胞率や一酸化窒素産生量を測定することで乳酸菌の免疫活性の評価を行った。なお、免疫活性の評価においては、独立行政法人製品評価技術基盤機構から入手した標準品Leuconostoc mesenteroides(NBRC100496)及びLactococcus lactis(NBRC100933)と比較した。
【0021】
まず、乳酸菌の濃度を、市販されている乳酸菌飲料に含有されている菌数を参考にして、Leuconostoc mesenteroidesについては105cpm,106cpm,107cpmに、Lactococcus lactisについては、105cpm,3*105cpm,106cpm,3*106cpm,107cpmに、それぞれ調整し、65℃で30分間の熱不活処理を行い、4x10cpmのRAW264.7マクロファージ細胞株に添加して5%二酸化炭素環境下で37℃で24時間培養した。
【0022】
培養した細胞について生細胞率を測定したところ、いずれの乳酸菌についても濃度依存無く生細胞率が95%以上であり、また、無添加の場合の生細胞率との差が確認されなかった。このことから、桜の花乳酸菌及びカボスの実乳酸菌には、細胞傷害性が無いことが分かった。
【0023】
また、培養した細胞についてGriess法を用いて一酸化窒素産生量を測定したところ、図1、2に示す結果が得られた。
【0024】
桜の花乳酸菌の一酸化窒素産生量は、図1に示すように、標準品と同様に濃度に依存して増加しており、免疫活性化が認められた。また、桜の花乳酸菌では、低い濃度であっても標準品よりも多く一酸化窒素を産生し得ることが分かった。
【0025】
カボスの実乳酸菌の一酸化窒素産生量は、図2に示すように、標準品と同様に濃度に依存して増減しており、免疫活性化が認められた。また、カボスの実乳酸菌では、低い濃度であっても高い濃度であってもいずれにおいても標準品よりも多く一酸化窒素を産生し得ることが分かった。
【0026】
以上に説明したように、桜の花乳酸菌及びカボスの実乳酸菌は、免疫活性(一酸化窒素産生量)においてそれぞれの標準品とは異なる特有な性質を有していることが分かった。
【0027】
このように、桜の花乳酸菌やカボスの実乳酸菌がマクロファージ活性化能を有することから、これらの乳酸菌を食事として摂取することで、小腸でマクロファージと接触し、全身の自然免疫を活性化し、ウィルスや細菌や真菌による感染を防ぐ効果が期待できる。また、皮膚の真皮にもマクロファージが分布していることから、桜の花乳酸菌やカボスの実乳酸菌を皮膚に塗布等することで、皮膚における免疫の活性化も期待できる。
【0028】
そのため、桜の花乳酸菌及びカボスの実乳酸菌は、新たに医薬品や食品や健康補助食品や化粧品などに適用することができる。なお、それぞれの乳酸菌の死んだ状態(死菌)であっても免疫活性の効果を有しており、加工を加えても品質を保持することができると考えられる。
図1
図2