(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/56 20060101AFI20240513BHJP
F16K 7/04 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
F16K31/56
F16K7/04 A
(21)【出願番号】P 2022555046
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038111
(87)【国際公開番号】W WO2022074782
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】517123221
【氏名又は名称】アイ ピース,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】597095957
【氏名又は名称】株式会社アクアテック
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田邊 剛士
(72)【発明者】
【氏名】平出 亮二
(72)【発明者】
【氏名】中本 浩
(72)【発明者】
【氏名】井上 広昭
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-117552(JP,A)
【文献】特開2013-104440(JP,A)
【文献】特開昭61-76061(JP,A)
【文献】特開2008-138790(JP,A)
【文献】実公昭52-12170(JP,Y2)
【文献】米国特許第5409194(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/44-31/62
F16K 7/00- 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に配置されたチューブと、
前記ケース内に配置されたヒンジ支点と、
前記ヒンジ支点に接続され、前記チューブに接触可能な接触部材と、
前記ケースの外から前記接触部材に非接触力を加え、前記接触部材が前記チューブに加える接触力を変化させて、前記チューブの内径を変化させる駆動装置と、
を備えるバルブ。
【請求項2】
前記チューブが前記ケースの内壁に沿って配置されている、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記接触部材が、前記チューブを前記内壁に押し付けるよう構成されている、請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記接触部材に前記非接触力が加わっていない場合に、前記接触部材が前記チューブを閉塞させないよう構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記接触部材に前記非接触力が加わると、前記接触部材が、前記チューブに向かって移動する、請求項4に記載のバルブ。
【請求項6】
前記接触部材に加わる前記非接触力が増加すると、前記接触部材が前記チューブに加える接触力が増加する、請求項4又は5に記載のバルブ。
【請求項7】
前記接触部材に前記非接触力が加わっていない場合に、前記接触部材が前記チューブを閉塞させるよう構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項8】
前記接触部材に前記非接触力が加わると、前記接触部材が、前記チューブから離れる方向に移動する、請求項7に記載のバルブ。
【請求項9】
前記接触部材を前記チューブに押し付ける押し付け部材をさらに備える、請求項7又は8に記載のバルブ。
【請求項10】
前記接触部材に加わる前記非接触力が増加すると、前記接触部材が前記チューブに加える接触力が減少する、請求項7から9のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項11】
前記接触部材に磁石が設けられており、
前記駆動装置が、前記磁石を介して磁力で前記接触部材を移動させる、
請求項1から10のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項12】
前記ケースが閉鎖されている、請求項1から11のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項13】
前記ケースが流体透過性でない、請求項1から12のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項14】
前記ケースが液体透過性でない、請求項1から13のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項15】
前記ケースに入口コネクターと出口コネクターとが設けられており、
前記チューブの一端が前記入口コネクターに接続され、
前記チューブの他端が前記出口コネクターに接続される、
請求項1から14のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項16】
前記ケースと前記駆動装置が分離可能である、請求項1から15のいずれか1項に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流体が流れる流路においては、バルブによって流体の流量を制御している(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5270177号公報
【文献】特許第5600180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流路を流れる流体が清浄であることが好ましい場合、バルブを通過する際にも、流体を清浄に保つことが好ましい。そこで、本発明は、流体を清浄に保ちながら流体の流量を調節可能なバルブを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、ケースと、ケース内に配置されたチューブと、ケース内に配置されたヒンジ支点と、ヒンジ支点に接続され、チューブに接触可能な接触部材と、ケースの外から接触部材に非接触力を加え、接触部材がチューブに加える接触力を変化させて、チューブの内径を変化させる駆動装置と、を備えるバルブが提供される。
【0006】
上記のバルブにおいて、チューブがケースの内壁に沿って配置されていてもよい。
【0007】
上記のバルブにおいて、接触部材が、チューブを内壁に押し付けるよう構成されていてもよい。
【0008】
上記のバルブにおいて、接触部材に非接触力が加わっていない場合に、接触部材がチューブを閉塞させないよう構成されていてもよい。
【0009】
上記のバルブにおいて、接触部材に非接触力が加わると、接触部材が、チューブに向かって移動してもよい。
【0010】
上記のバルブにおいて、接触部材に加わる非接触力が増加すると、接触部材がチューブに加える接触力が増加してもよい。
【0011】
上記のバルブにおいて、接触部材に非接触力が加わっていない場合に、接触部材がチューブを閉塞させるよう構成されていてもよい。
【0012】
上記のバルブにおいて、接触部材に非接触力が加わると、接触部材が、チューブから離れる方向に移動してもよい。
【0013】
上記のバルブが、接触部材をチューブに押し付ける押し付け部材をさらに備えていてもよい。
【0014】
上記のバルブにおいて、接触部材に加わる非接触力が増加すると、接触部材がチューブに加える接触力が減少してもよい。
【0015】
上記のバルブにおいて、接触部材に磁石が設けられており、駆動装置が、磁石を介して磁力で接触部材を移動させてもよい。
【0016】
上記のバルブにおいて、ケースが閉鎖されていてもよい。
【0017】
上記のバルブにおいて、ケースが流体透過性でなくてもよい。
【0018】
上記のバルブにおいて、ケースが液体透過性でなくてもよい。
【0019】
上記のバルブにおいて、ケースに入口コネクターと出口コネクターとが設けられており、チューブの一端が入口コネクターに接続され、チューブの他端が出口コネクターに接続されていてもよい。
【0020】
上記のバルブにおいて、ケースと駆動装置が分離可能であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、流体を清浄に保ちながら流体の流量を調節可能なバルブを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係るバルブの側方から見た模式的断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るバルブの上方から見た模式的断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るバルブの側方から見た模式的断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るバルブの上方から見た模式的断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るバルブの駆動装置のケースに対向する側から見た模式的側面図である。
【
図6】第2実施形態に係るバルブの側方から見た模式的断面図である。
【
図7】第2実施形態に係るバルブの側方から見た模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0024】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るバルブは、
図1及び
図2に示すように、ケース3と、ケース3内に配置されたチューブ1と、ケース3内に配置されたヒンジ支点4と、ヒンジ支点4に接続され、チューブ1に接触可能な接触部材5と、ケース3の外から接触部材5に非接触力を加え、接触部材5がチューブ1に加える接触力を変化させて、チューブ1の内径を変化させる駆動装置10と、を備える。
【0025】
チューブ1内を流体が流れる。本開示において、流体は、気体及び液体を含む。チューブ1は、例えば、弾性変形可能であり、可撓性を有する。チューブ1は、両側から挟み込むことにより圧縮され、内部を閉塞することが可能である。チューブ1の材料は、例えば、チューブ1の内部が、チューブ1の壁を通して外部と気体、ウイルス、微生物及び不純物等の交換をしないよう選定される。チューブ1の材料としては、樹脂が挙げられる。
【0026】
ケース3は、例えば、ケース3Aとケース3Bとに分割可能である。ケース3Aとケース3Bとは例えば勘合可能である。ケース3の材料は、例えば、流体透過性ではない。例えば、ケース3には、入口コネクター31と出口コネクター32が設けられている。チューブ1の一端が入口コネクター31に接続され、チューブ1の他端が出口コネクター32に接続される。入口コネクター31と出口コネクター32はケース3と一体化していてもよい。あるいは、入口コネクター31と出口コネクター32は、ケース3から分離可能であってもよい。この場合、Oリング等の密封部材を介して、入口コネクター31と出口コネクター32をケース3に配置してもよい。
【0027】
チューブ1の両端を入口コネクター31及び出口コネクター32に接続し、ケース3Aとケース3Bを勘合させると、ケース3の内部は外部から閉鎖される。閉鎖されたケース3内部は真空であってもよい。閉鎖されたケース3内部は、窒素及びアルゴン等の不活性ガスで充填されてもよい。閉鎖されたケース3内部は、液体又はゲルで充填されてもよい。ケース3が閉鎖されると、ケース3内部に流体が存在しても、ケース3内部の流体は外部に出ることができない。また、ケース3が閉鎖されると、ケース3外部の流体は、ケース3内部に進入することができない。そのため、ケース3の内部は、外部と気体、ウイルス、微生物及び不純物等の交換をしない。
【0028】
チューブ1は、ケース3の内壁33に沿って配置される。ケース3の内壁33と外壁34の間には空間があってもよい。接触部材5は、ヒンジ支点4を中心として回転可能である。チューブ1は、ケース3の内壁33と接触部材5の間に配置される。接触部材5のチューブ1に接触する部分には、突起が設けられていてもよい。接触部材5のチューブ1に接触する部分に対向する、ケース3の内壁33の部分には、突起が設けられていてもよい。
【0029】
第1実施形態に係るバルブは、接触部材5に設けられた磁石7を備えていてもよい。磁石7の数は任意である。ケース3の外部に配置される駆動装置10は、磁石11を備える。ケース3と、駆動装置10と、は、分離可能である。そのため、ケース3及びその内部の構成要素はディスポーザブルであり、駆動装置10は、新品に交換されたケース3及びその内部の構成要素に対して再利用可能である。接触部材5に接続された磁石7と、駆動装置10が備える磁石11と、の間には非接触力である磁力による反発力が生じる。ケース3外部の駆動装置10は、磁石11と磁石7の間の反発力の磁力を用いて、ケース3内部の接触部材5を、ヒンジ支点4を中心として回転させる。
【0030】
例えば、
図1に示すように、駆動装置10が備える磁石11が接触部材5に接続された磁石7から離れている場合、駆動装置10が備える磁石11と、接触部材5に接続された磁石7と、の間には反発力が生じない。この場合、チューブ1には、接触部材5から荷重されるが、接触部材5及び磁石7の質量、並びにチューブ1の材料及び構造を、接触部材5からの荷重のみでは、チューブ1が閉塞しないように設定する。
【0031】
図3に示すように、駆動装置10が備える磁石11が接触部材5に接続された磁石7に接近すると、駆動装置10が備える磁石11と、接触部材5に接続された磁石7と、の間には反発力が生じる。これにより、接触部材5がチューブ1に向かって移動して、接触部材5がチューブ1に加える接触力が増加し、接触部材5がチューブ1をケース3の内壁33に押し付ける。ケース3の内壁33と接触部材5で挟まれたチューブ1の内径は減少し、チューブ1内を流れる流体の流量が減少する。
図4に示すように、ケース3の内壁33と接触部材5で挟まれたチューブ1の内が閉塞すると、チューブ1内を流れる流体の流れが止まる。
【0032】
チューブ1の内径は、接触部材5がチューブ1に加える接触力を調整することにより、調整可能である。接触部材5がチューブ1に加える接触力は、接触部材5に接続された磁石7と駆動装置10が備える磁石11との間の反発力を調整することにより、調整可能である。磁石7と磁石11との間の反発力は、磁石7と磁石11の対向面積や、磁石7と磁石11の間の距離を調整することにより調整可能である。
【0033】
駆動装置10は、例えば、
図5に示すように、ローター12を備える。磁石11は、ローター12に配置されている。ローター12が回転すると、磁石11の配置が変更される。そのため、ローター12を回転させることにより、接触部材5に設けられた磁石7と、駆動装置10が備える磁石11と、の対向面積を変化させることが可能である。
【0034】
第1実施形態に係るバルブによれば、ケース3で遮蔽された内部のチューブ1内を流れる流体の流量を、ケース3の外に配置された駆動装置10によって非接触で制御することが可能である。そのため、仮にチューブ1が破損しても、チューブ1内の物質がケース3の外に飛散することを防止することが可能である。
【0035】
また、第1実施形態に係るバルブによれば、ケース3外部の物体がチューブ1内に進入し、チューブ1内の流体にコンタミネーションが発生することを防止することが可能である。例えばバルブで、培養液、医療用液、生体分子用液、及び化学溶液等の清浄な流体の流量を制御する際に、チューブ1内の液体にウイルスやバクテリアが進入することを防止することが可能である。さらに、例えばバルブで、培養液、医療用液、生体分子用液、及び化学溶液等のpHを一定にすべき流体の流量を制御する際に、チューブ1内に酸性又はアルカリ性の流体が進入して、チューブ1内の液体のpHが変化することを防止することが可能である。
【0036】
(第2実施形態)
第1実施形態に係るバルブでは、
図1及び
図2に示すように、接触部材5に非接触力が加わっていない場合に、接触部材5がチューブ1を閉塞させないよう構成されており、
図3及び
図4に示すように、接触部材5に加わる非接触力が増加すると、接触部材5がチューブ1に加える接触力が増加する例を説明した。
【0037】
これに対し、第2実施形態に係るバルブにおいて、
図6に示すように、接触部材5に非接触力が加わっていない場合に、接触部材5がチューブ1を閉塞させるよう構成してもよい。例えば、接触部材5及び磁石7の質量、並びにチューブ1の材料及び構造を、接触部材5に非接触力が加わっていない場合に、接触部材5がチューブ1をケース3の内壁33に押し付けて、チューブ1が閉塞するように設定する。また、第2実施形態に係るバルブは、接触部材5をチューブ1に押し付ける押し付け部材8をさらに備えていてもよい。押し付け部材8の例としては、バネが挙げられる。
【0038】
図7に示すように、駆動装置10が備える磁石11が接触部材5に接続された磁石7に接近すると、駆動装置10が備える磁石11と、接触部材5に接続された磁石7と、の間に反発力が生じる。これにより、接触部材5がチューブ1から遠ざかり、接触部材5がチューブ1に加える接触力が減少する。ケース3の内壁33と接触部材5で挟まれたチューブ1の内径が増加し、チューブ1内を流れる流体の流量が増加する。
【0039】
第2実施形態に係るバルブにおいては、駆動装置10が接触部材5に非接触力を加えていない場合、チューブ1が閉塞した状態になる。そのため、例えば駆動装置10に電源が接続されていない場合や、駆動装置10が近傍に未だ配置されていない場合に、バルブを含む流路回路に振動が加わっても、チューブ1内を流体が意図せずに流れることを抑制することが可能である。
【0040】
上記のように、本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、駆動装置10は、駆動装置10が備える磁石11を、接触部材5に設けられた磁石7に近づけたり、離したりすることにより、接触部材5がチューブ1に加える接触力を調整してもよい。また、接触部材5がチューブ1に加える接触力は、接触部材5に接続された磁石7と駆動装置10が備える磁石11との間の吸引力により調整してもよい。この場合、駆動装置10が備える磁石11を、チューブ1を押し付けている接触部材5が、吸引力によりチューブ1から離れるような位置に配置すればよい。また、磁石は永久磁石に限られず、電磁石であってもよい。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0041】
1・・・チューブ、3・・・ケース、3A・・・ケース、3B・・・ケース、4・・・ヒンジ支点、5・・・接触部材、7・・・磁石、8・・・部材、10・・・駆動装置、11・・・磁石、12・・・ローター、31・・・入口コネクター、32・・・出口コネクター、33・・・内壁、34・・・外壁