(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】水酸化ニッケル薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/04 20060101AFI20240513BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240513BHJP
H01M 4/52 20100101ALN20240513BHJP
H01M 4/36 20060101ALN20240513BHJP
H01M 4/48 20100101ALN20240513BHJP
【FI】
C01G53/04
C23C16/455
H01M4/52
H01M4/36 E
H01M4/48
(21)【出願番号】P 2020000182
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】津國 和之
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 樹理
(72)【発明者】
【氏名】久保 宏気
(72)【発明者】
【氏名】殿川 孝司
(72)【発明者】
【氏名】川原村 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔太
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-216110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/04
H01M 4/52
H01M 4/48
H01M 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液を作製する第1の工程と、
前記分散液を超音波でミスト化し、水酸化ニッケルナノ粒子が内在した水酸化ニッケル溶液ミストを作製する第2の工程と、
前記水酸化ニッケル溶液ミストを不活性ガスで輸送する第3の工程と、
加熱した基板の上に、前記第3の工程で輸送された前記水酸化ニッケル溶液ミストを排出する第4の工程を有する、水酸化ニッケル薄膜の製造方法。
【請求項2】
第1の容器内において、水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液をミスト化させて水酸化ニッケル溶液ミストを得る工程と、
ミスト経路を介して前記水酸化ニッケル溶液ミストを第1不活性ガスで輸送する工程と、
前記ミスト経路の下流側に配置された分級器において、前記水酸化ニッケル溶液ミストを受ける工程と、
加熱した基板上に、前記分級器からの前記水酸化ニッケル溶液ミストを排出する工程を有する、水酸化ニッケル薄膜の製造方法。
【請求項3】
第1の容器内において、水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液をミスト化させて水酸化ニッケル溶液ミストを得る工程と、
前記第1の容器と独立した第2の容器内において、金属化合物含んだ金属化合物溶液をミスト化させて金属化合物ミストを得る工程と、
互いに独立した第1及び第2の経路を介して前記水酸化ニッケル溶液ミスト及び前記金属化合物ミストを受ける混合容器内において、前記水酸化ニッケル溶液ミストと前記金属化合物ミストとを混合して混合ミストを得る工程と、
加熱した基板上に、第3の経路を介して前記混合容器からの前記混合ミストを排出し、前記基板上に金属酸化物が混ざった水酸化ニッケルを成膜する工程を有する、水酸化ニッケル薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記基板の温度を調整する工程が含まれる、請求項1乃至3の何れか1項に記載の水酸化ニッケル薄膜の製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、水酸化ニッケル薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二次電池として、電解液・希少元素を用いないこと、及び薄膜化可能であるため、第1電極/絶縁物・n型酸化物半導体層/p型酸化物半導体層/第2電極が積層された二次電池が提案されている。
【0003】
又、この二次電池に類似した構造として、酸化ニッケルなどを正極活物質として含む正極活物質膜を備える正極と、含水多孔質構造を有する固体電解質と、酸化チタンなどを負極活物質として含む負極活物質膜を備える負極とを備える二次電池が提案されている。
【0004】
更に、正極活物質に酸化ニッケル、負極活物質にスパッタで成膜した酸化チタン、固体電解質に酸化シリコンなどに金属酸化物を添加した二次電池も提案されている。
【0005】
一方、低温かつ水酸化物を維持した状態での成膜法として、移流集積法、ディップ法等が知られている。
【0006】
また、非真空成膜技術を用いて基板上に成膜する方法として、スプレー法、ゾルゲル法、ミストCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の大気開放溶液系の成膜方法がある。
【0007】
ミストCVD法は、主成分を含む溶液を霧化してミストとし、ミスト状態で基材へ供給する方法である。ミストの供給条件の制御と反応炉の設計などにより、均一性の高い薄膜製造を実現可能である。またミストCVD法は、環境負荷が少なく、運用コストも安価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-71479号公報
【文献】特開2019-33142号公報
【文献】特開2018-76591号公報
【文献】特許第5508542号公報
【文献】特許第5297809号公報
【文献】特開2015-82445号公報
【文献】特開2016-82125号公報
【文献】特開2017-147186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
正極に水酸化ニッケル、負極に酸化チタンを用いた薄膜固体二次電池において、一旦酸化ニッケルをスパッタデポジション法で成膜し、電気的処理により正極の水酸化ニッケルを形成する方法が提案されている。この方法では正極を厚く形成することが難しい点が問題となっている。
【0010】
本実施の形態では、膜厚が略均一かつ、ミストの噴射時間を調整することにより膜厚制御が容易な水酸化ニッケル薄膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施の形態の一態様によれば、水酸化ニッケルナノ粒子(本発明において、「ナノ粒子」とはサイズが数百ナノメートル程度以下のオーダーの粒子をいう。)が分散している分散液を作製する工程と、前記分散液を超音波でミスト化する工程と、前記水酸化ニッケルナノ粒子を内在したミストを不活性ガスで輸送する工程と、前記水酸化ニッケルナノ粒子を内在した前記ミストを基板上に、ノズルを通して噴霧する工程と、前記基板上、又は前記基板の直上で前記ミストを蒸発させる工程と、前記ミスト内に分散している前記水酸化ニッケルナノ粒子を前記基板上に堆積させ、前記基板上に水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を成膜する工程とを有する水酸化ニッケル薄膜の製造方法が提供される。
【0012】
本実施の形態の他の態様によれば、第1の容器内において、水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液を作製する第1の工程と、前記分散液を超音波でミスト化し、水酸化ニッケルナノ粒子が内在した水酸化ニッケル溶液ミストを作製する第2の工程と、前記水酸化ニッケル溶液ミストを不活性ガスで輸送する第3の工程と、加熱した基板の上に、前記第3の工程で輸送された前記水酸化ニッケル溶液ミストを排出する第4の工程を有する水酸化ニッケル薄膜の製造方法が提供される。
【0013】
本実施の形態の他の態様によれば、第1の容器内において、水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液をミスト化させて水酸化ニッケル溶液ミストを得る工程と、ミスト経路を介して前記水酸化ニッケル溶液ミストを第1不活性ガスで輸送する工程と、前記ミスト経路の下流側に配置された分級器において、前記水酸化ニッケル溶液ミストを受ける工程と、加熱した基板上に、前記分級器からの前記水酸化ニッケル溶液ミストを排出する工程を有する水酸化ニッケル薄膜の製造方法が提供される。
【0014】
本実施の形態の他の態様によれば、第1の容器内において、水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液をミスト化させて水酸化ニッケル溶液ミストを得る工程と、前記第1の容器と独立した第2の容器内において、金属化合物を含んだ金属化合物溶液をミスト化させて金属化合物物ミストを得る工程と、互いに独立した第1及び第2の経路を介して前記水酸化ニッケル溶液ミスト及び前記金属化合物ミストを受ける混合容器内において、前記水酸化ニッケル溶液ミストと前記金属化合物ミストとを混合して混合ミストを得る工程と、加熱した基板上に、第3の経路を介して前記混合容器からの前記混合ミストを排出し、前記基板上に金属酸化物が混ざった水酸化ニッケルを成膜する工程を有する水酸化ニッケル薄膜の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本実施の形態によれば、膜厚が略均一かつ、ミストの噴射時間の調整により膜厚制御も容易な水酸化ニッケル薄膜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法に適用可能な第1の製造装置の模式的構成図。
【
図2】水に水酸化ニッケル粒子を分散させた分散液で作製した、水酸化ニッケル薄膜の表面の段差測定例。
【
図3】エタノールに水酸化ニッケル粒子を分散させた分散液で作製した、水酸化ニッケル薄膜の表面の段差測定例。
【
図4】100nm程度の水酸化ニッケルのナノ粒子が分布している分散液を使用して作製した水酸化ニッケル薄膜のステージ温度に対する膜厚と膜厚の面内分布の測定結果。
【
図5】本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法において、キャリアガス流量5.0L/min、希釈ガス2.0L/minの条件で形成した水酸化ニッケル薄膜の断面SEM写真例。
【
図6】本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法に適用可能な第2の製造装置の模式的構成図。
【
図7】水酸化コバルトと、水酸化ニッケルとの混合薄膜を形成する成膜条件。
【
図8】Znアセチルアセトナートと水酸化ニッケルとの混合薄膜の表面SEMーEDX写真例。
【
図9】本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法により形成した水酸化ニッケル薄膜を正極活物質層に備える二次電池の充放電特性例。
【
図10】第1の実施の形態に係る二次電池の模式的断面図。
【
図11】(a)負極活物質層にTiO
xを備え、正極活物質層にNi(OH)
2を備える例、(b)負極活物質層にTiO
xとSiO
xとを備え、正極活物質層にNi(OH)
2を備える例。
【
図12】(a)固体電解質と正極活物質層との間にバッファ層を挿入した
図11の変形例。(b)12(a)と異なる
図11の変形例。
【
図13】(a)固体電解質の負極活物質との間、及び固体電解質と正極活物質層との間にバッファ層を挿入した
図11の変形例。(b)13(a)と異なる
図11の変形例。
【
図14】(a)固体電解質と負極活物質層との間にバッファ層を挿入した
図11の変形例。(b)14(a)と異なる
図11の変形例。
【
図15】(a)正極活物質層と固体電解質層との間に金属酸化物を含むバッファ層を挿入した
図11の変形例。(b)負極活物質層と固体電解質層との間に金属酸化物を含むバッファ層を挿入した
図11の変形例。
【
図16】
図10に例示した模式的断面図における負極活物質層、及び正極活物質の具体例。
【
図17】第2の実施の形態に係る二次電池の模式的断面図。
【
図18】第3の実施の形態に係る二次電池の模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[水酸化ニッケルの第1の製造装置]
本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法に適用可能な第1の製造装置101の模式的構成は、
図1に示すように表される。本実施の形態に係る水酸化ニッケルの製造装置101は、ナノ粒子のミスト噴射製造装置構造を備え、噴霧器(150、160)と、分級器80と、成膜装置部110とを備える。
【0019】
噴霧器(150、160)は、水酸化ニッケルナノ粒子を純水等に分散させた分散液140を収容する分散液容器150と、ミスト化器160とを備え、水酸化ニッケルナノ粒子を含んだ分散液をミスト化し、水酸化ニッケル溶液ミストを作製する機能を有する。噴霧器(150、160)には、
図1に示すようにキャリアガスG1(第1不活性ガス)が導入され、経路L1(ミスト経路)を介して水酸化ニッケルのナノ粒子を含む水酸化ニッケル溶液ミスト(以下、ミストM1)が、分級器80に送出される。また、経路L1には、経路L1内のミストM1の流量を調整する流量調整ガスG2(第2不活性ガス)が導入されても良い。
【0020】
流量調整ガスG2としては、窒素N2、アルゴンAr、などの、膜形成工程に対する活性を持たない不活性ガスが使用され、好ましくは、キャリアガスG1と同種のガスを使用する。
【0021】
また、流量調整ガスG2の導入経路にはミスト濃度を、あらかじめ定める数値に設定するため、または適宜変更するため、さらには成膜時に変化させるため、流量調整ガスG2の導入量を調節することが可能な、フローメータあるいはマスフローコントローラなどの流量調節手段を設けることが望ましい。
【0022】
ミストM1を搬送するキャリアガスG1には、窒素N2、アルゴンAr、などの、膜形成工程に対する活性を持たない不活性ガスが適している。
【0023】
分級器80は、噴霧器(150、160)から送り出されたミストM1を滞留させて、ノズル120へ送るミストM3の重量分布を減らす機能を備える。これは、分級器80において、比較的大きな水酸化ニッケルナノ粒子を含むミストは、分級器80に滞留中にトラップされるため、ノズル120へ送るミストM3を粒径の小さいものに絞ることができる。また、分級器80は、噴霧器(150、160)から導入される不活性ガス(キャリアガスG1、流量調整ガスG2)の等の均一化を図ることも可能である。
【0024】
成膜装置部110は、ミストM3を噴射するノズル120と、基板40を左右にスキャンする機能と、ヒータを内蔵し400℃まで加熱する機能を持つステージ130からなる。ステージ130上には、水酸化ニッケルを堆積するための基板40が配置される。
【0025】
分級器80から導入されるミストM3は、ステージ130上に配置された基板40へ噴射される。ノズル120は、安定してミストM3を基板40に噴射するために、例えば、ノズル幅、基板までの距離、ノズル温度がパラメータとして変更が可能であり、種々のパラメータを成膜に合わせて変更する。ステージ130は、噴射されたミストM3を蒸発させるために必要な熱量を供給可能である。成膜温度が低いと、ミストM3が基板40上で液滴になりウォータマークなどの表面異常が発生する。一方、成膜温度が高いと、ミストM3が基板40から離れたところで蒸発して、水酸化ニッケルのナノ粒子が排気されてしまう。温度としては、ミストM3が基板に到達、接触した直後にミストM3が蒸発するのが最適である。基板40の表面温度は供給するミストM3の量にも依存する。
【0026】
[水酸化ニッケル薄膜の製造方法]
本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法は、ミストを輸送手段として水酸化ニッケルのナノ粒子が内在したミストM3を基板40の上に送り、ミストM3を蒸発させて、ミストM3に内在している水酸化ニッケルナノ粒子を堆積させる製造方法である。そのための必要な装置構成は、
図1に示した通りである。
【0027】
溶媒中に水酸化ニッケルのナノ粒子を混合させ、その溶液の中に基板を浸し、溶媒が蒸発してなくなることで、基板上に沈殿堆積させ膜を形成する方法、又は同様に基板を浸し、その基板を一定速度で引き上げることで、膜を形成する方法は、溶媒の基板上での乾燥状態で膜厚ムラが発生し、サブミクロンからミクロンレベルの成膜において、数10~数100nmレベルの膜厚制御が困難である。また、成膜条件によっては長時間、溶媒中に浸される状態となり水酸化ニッケルを成膜する下地の膜が溶媒の影響を受けることがあるため、成膜できる基板に制限があった。さらに、溶媒中のナノ粒子の粒子径の大きさにばらつきがあると、成膜した膜の平坦性、膜厚分布の制御を著しく困難にする傾向があった。
【0028】
本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法は、水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液水酸化ニッケルを作製し、それを超音波でミスト化し、その水酸化ニッケルナノ粒子が内在した水酸化ニッケル溶液ミストを不活性ガスG1で輸送して、基板40の上に、隙間の狭いノズル120を通して噴霧し、基板40の上、又は直上で水酸化ニッケル溶液ミストを蒸発させることで、このミスト内に含まれる成膜物質(水酸化ニッケルナノ粒子)を基板40の上に堆積させ成膜する方法である。
【0029】
本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法は、ナノ粒子の堆積成膜を、基板を溶媒中に浸さずに行うことができ、成膜できる基材の種類が増える。また、本実施形態に係る製造方法は、水酸化物を、その特性を維持しサブミクロンからミクロンの薄膜を数10~数100nm程度のバラつきで形成できる。更に、本実施形態に係る製造方法は、二次電池の正極活物質である水酸化ニッケル薄膜の成膜方法にも適用可能である。
【0030】
本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法によれば、水酸化ニッケルを正極活物質層に備える二次電池を製造することができる。膜厚が略均一かつ、ミストの噴射条件の調整により膜厚制御も容易で、しかも正極活物質層の厚膜化も容易である。
【0031】
この方法により、従来の方法では溶媒の乾燥時に生じる膜ムラ(ウォータマーク)が抑制される。すなわちこの方法によると、基板上に水酸化ニッケルナノ粒子が均一に分布するため、従来の方法より膜厚が略均一かつ、ミストの噴射条件の調整により膜厚制御も容易となる。また、成膜に用いる粒子の粒子径はミストに内在できるものに限られるため、成膜中のナノ粒子の粒子径が揃い、その結果、膜の均一性も向上する。
【0032】
本実施の形態では、膜厚が略均一かつ、ミストの噴射条件の調整により膜厚制御も容易な水酸化ニッケル薄膜の製造方法及びこの製造方法を適用して製造された二次電池を提供することができる。
【0033】
(実験1)
水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液を作製し、
図1の製造装置を用い、水酸化ニッケル薄膜を製膜するミスト成膜を実施した。その結果、0.5μmの膜厚を確認したが、表面は凹凸の多い膜となった。
【0034】
(実験2)
本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法において、100nm程度の水酸化ニッケルのナノ粒子が分散している分散液を作製し、
図1の製造装置を用い、水酸化ニッケル薄膜を製膜するミスト成膜を実施した。水酸化ニッケル薄膜を成膜するときの成膜温度(ステージ温度)に対する膜厚とその面内分布の測定結果は、
図4に示される。
【0035】
本実験では、水酸化ニッケルナノ粒子が分布している分散液を作製し、ステージ温度と水酸化ニッケルの成長膜の均一性の関係を調査した。その結果、ステージ温度が高いほど均一性が良くなる傾向であった。水酸化ニッケルは230℃程度で分解することから、プロセスの決定にあたっては、基板表面における温度分布の均一性にも注意する必要がある。当然のことながら、キャリアガス流量、希釈ガス流量、スキャンスピードなどで最適な温度は異なる。
【0036】
(実験3)
図1の製造装置を用い、水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液を、水に水酸化ニッケルナノ粒子を分散させることにより作製した。
図2は、この場合における水酸化ニッケル薄膜の表面の段差測定例である。
図2において、横軸のスケールはX(mm)、縦軸のスケールはZ(μm)で表される。
【0037】
一方、
図1の製造装置を用い、水酸化ニッケルナノ粒子が分散している分散液を、エタノールに水酸化ニッケルナノ粒子を分散させることにより作製した水酸化ニッケル薄膜の表面の段差測定例を、
図3に示す。
図3において、横軸のスケールはX(mm)、縦軸のスケールはZ(μm)で表される。
図2と
図3の比較により、溶媒をメタノールと水で比較した場合、水よりメタノールの方が緻密な構造かつ均一性がよい膜となっていることがわかった。メタノールを使うことで成膜時の温度の低下も可能となる。これは、メタノールの方が水より濡れ性がよく揮発性も高い為と考えられる。
【0038】
(実験4)
図1の製造装置を用い、水酸化ニッケルナノ粒子が分散した分散液を作製し、ミスト化し、基板上に、水酸化ニッケル薄膜を形成した。キャリアガス流量5.0L/minm、希釈ガス2.0L/minの条件で形成した水酸化ニッケル薄膜の断面SEM写真例を
図5に示す。
【0039】
次に、比較のため、分流器として機能する分級器80の有り無しで比較した。
【0040】
[分級器80が無い第1の製造装置]
粒径が小さく、且つ粒径の揃った水酸化ナノ粒子を使用して分散液を作製する場合には、分級器80を通さなくても粒径の揃ったミストM3を噴射ノズル120へ送ることができる。すなわち、分級器80が無い第1の製造装置において、分散液は分級器80でトラップされない為、分散液の有効利用率は下がらない。
【0041】
[分級器80が有る第2の製造装置(
図1)]
一方、粒径が揃っていない水酸化ナノ粒子を使用して分散液を作製する場合には、分級器80が必要となる。しかし、分級器80を通すことで、成膜速度は低下する。それを補うためミストのキャリアガスの流量を増加させたところ、同膜厚で、膜密度が向上する傾向であった。分級器80を通ることで、サイズの大きい水酸化ニッケルナノ粒子が除去されたミストが、ノズル120に供給される。ミスト径の分布を径の小さいものに絞ることで、基板上に成膜される水酸化ニッケル薄膜の膜厚均一性と密度の増加に寄与していると考える。一方で分散液の有効利用率は下がっている。
【0042】
[第3の製造装置103]
図6に示すように、本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法に適用可能な第3の製造装置103は、成膜装置部110、成膜装置部110を加熱するステージ130、水酸化ニッケルの分散液140を収容する分散液容器150、分散液容器150内の分散液140をミスト化し、水酸化ニッケル溶液ミストを作製するミスト化器160、金属化合物を含む金属化合物溶液240を収容する分散液容器250、及び分散液容器250内の金属化合物溶液240をミスト化するミスト化器260、混合容器90から構成されている。
【0043】
このような構成において、ミスト化器160により分散液140からミスト化されたミストM1は経路L1を介して、混合容器90に供給される。一方、ミスト化器260により金属化合物溶液240からミスト化された金属酸化物ミスト(以下、ミストM2)は経路L1と独立して設けられた経路L2を介して、混合容器90に供給される。
【0044】
経路L1及びL2を介して混合容器90に供給されるミストM1及びミストM2は、経路L4を介して、混合容器90内で混合されて得られる混合ミストM4としてノズル120に供給され、基板40上に噴霧されることにより、基板40表面上に金属酸化物を含有した水酸化ニッケル薄膜を成膜することができる。
【0045】
すなわち、ステージ130上に基板40が載置されている状態で、大気圧下で、混合ミストM4が供給され、基板40上には添加物を含有した水酸化ニッケル薄膜が成膜される。
【0046】
分散液容器150内には、水酸化ニッケル薄膜を成膜するための材料溶液となる分散液140が充填されている。この分散液140は、溶媒に水酸化ニッケルナノ粒子が分散した材料溶液である。溶媒としては、水、メタノールなどを用いることができる。ここで、水酸化ニッケルナノ粒子は、例えば、中和滴定法などを用いて作製可能である。
【0047】
ミスト化器160として、例えば超音波霧化装置を採用できる。超音波霧化装置であるミスト化器160は、分散液容器150内の分散液140に対して超音波を印加することにより、分散液容器150内の分散液140をミスト化させる。ミスト化された分散液140であるミストM1は、経路L1を通って、混合容器90内に向けて供給される。
【0048】
分散液容器250内には、Ni元素用の金属化合物溶液240が充填されている。この金属化合物溶液240には例えば、Niアセチルアセトナート(Ni(acac)2)溶液などを用いることができる。
【0049】
ミスト化器160と同一機能を有するミスト化器260は、分散液容器250内の金属化合物溶液240に対して超音波を印加することにより、分散液容器250の金属化合物溶液240をミスト化させ、ミストM2を作成する。ミストM2は、経路L2を通って、混合容器90内に向けて供給される。
【0050】
互いに異なる経路L1及びL2を介してミストM1及びミストM2が混合容器90内に供給されると、混合容器90内においてミストM1及びミストM2が混合され、混合ミストM4が生成される。混合ミストM4は、経路L4を介して、ノズル120に供給される。ノズル120から基板40の上に混合ミストM4が供給される。
【0051】
その結果、大気圧下で加熱された基板40上において、混合ミストM4が蒸発し、基板40上に金属酸化物を含む水酸化ニッケル薄膜が成膜される。なお、基板40としては、例えば、正極活物質が成膜されていない未完成の固体二次電池を用いても良い。
【0052】
(実験5)
実験5では、
図6に示される混合容器90を利用する第3の製造装置103を用いて、複数のナノ粒子の堆積成膜方法を実施した。例えば、酸化ニッケルナノ粒子の組合せでの水酸化ニッケル膜と酸化ニッケル(NiO)膜の製法を実施した。また、
水酸化コバルトと水酸化ニッケルの混合膜の製法を実施した。
【0053】
2つの分散溶液容器(150、250)と混合容器を用いての2つの物質が混合した混合膜の成膜を実施している。第1の噴霧器(150、160)と第2の噴霧器(250、260)の組み合わせにより説明する。
【0054】
第1の噴霧器に水酸化ニッケルナノ粒子の分散液の分散液、第2の噴霧器に水酸化コバルトナノ粒子の金属化合物溶液を投入してミスト化して混合容器90にそれぞれ送る。それらの混合ミストM4を用いて成膜したところ水酸化コバルトと水酸化ニッケルの混合膜が形成できた。さらにそれぞれの第1の噴霧器、第2の噴霧器のキャリアガスの流量比を変更することで任意の割合で2つの物質を混合した混合膜を形成できることを確認した。
【0055】
本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法において、
図6の製造装置の第2の噴霧器に水酸化コバルトナノ粒子の金属化合物溶液、第1の噴霧器に水酸化ニッケルナノ粒子の分散液を投入してミスト化して混合容器90にそれぞれ送り、それらの混合ミストM4を用いて
水酸化コバルトと水酸化ニッケルの混合膜を形成するときのキャリアガスと希釈ガスの流量条件を
図7に示す。
【0056】
条件1では、水酸化ニッケルナノ粒子の分散液を使用せずに、水酸化コバルトナノ粒子の金属化合物溶液のキャリアガスの流量を5L/min、流量調整ガスの流量を2L/minとした。これにより水酸化コバルトの薄膜が単独で成膜可能であることが分かった。
【0057】
条件2では、水酸化ニッケルナノ粒子の分散液のキャリアガス及び流量調整ガスの流量をいずれも1L/minとし、水酸化コバルトナノ粒子の分散液のキャリアガスの流量を4L/min、流量調整ガスの流量を1L/minとした。その結果、得られた膜中のCo/Ni混合比は55%であった。
【0058】
条件3では、水酸化ニッケルナノ粒子の分散液のキャリアガスの流量を2L/min、流量調整ガスの流量を1L/minとし、水酸化コバルトナノ粒子の分散液のキャリアガスの流量を3、流量調整ガスの流量を1L/minとした。その結果、得られた膜中のCo/Ni混合比は26%であった。
【0059】
なお、上記条件1~条件3のより製膜された膜中のCo/Ni混合比は、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray spectrometry)により測定した。
【0060】
(実験6)
(Znアセチルアセトナートと水酸化ニッケルの混合膜)
本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法において、
図6の製造装置の第1の噴霧器にZnアセチルアセトナートの溶液を投入し、第2の噴霧器に水酸化ニッケルのナノ水溶液を投入してミスト化して分流器にそれぞれ送り、これらの混合ミストを用いて形成したZn(acac)
2と水酸化ニッケルの混合膜の表面SEM写真等を
図8に示す。
図8においては、混合膜中に導入されるO、Ni、Zn、Siの分析結果も示されている。
【0061】
この他、実験5と同じ構成で、第1の噴霧器に水酸化ニッケルナノ粒子の分散液を投入、第2の噴霧器に、Niアセチルアセトナート(Ni(acac)2)、Coアセチルアセトナート(Co(acac)3)、又は水酸化コバルトを投入して、これらの混合ミストを用いて、基板上に混合膜を製膜する事も可能である。
【0062】
(実験7)
本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法により形成した水酸化ニッケルを正極活物質層に備える二次電池の充放電特性例を
図9に示す。本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法によりナノ粒子のミスト噴射成膜により形成した水酸化ニッケルを正極活物質層として用いた二次電池では、従来の酸化ニッケルを電気処理して水酸化ニッケルを形成した場合と同等の充放電特性が得られた。
【0063】
[二次電池]
以下、本実施の形態に係る水酸化ニッケル薄膜の製造方法を適用して形成された水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を正極活物質として含む正極活物質層22を備える二次電池について説明する。
【0064】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係る二次電池30は、
図10に示すように、第1電極(E1)(負極集電体)12/n型半導体層14/負極活物質層(負極)16/固体電解質層18/正極活物質層(正極)22/第2電極(E2)(正極集電体)26の構成を備える。
【0065】
第1の実施の形態に係る二次電池30は、
図12に示すように、水(H
2O)及び水酸基(-OH)のうち少なくとも1つを有する五酸化タンタル(Ta
2O
5)を固体電解質として含む固体電解質層18と、固体電解質層18の上面に配置され、水酸化ニッケル(Ni(OH)
2)を正極活物質として含む正極活物質層22と、正極活物質層22の上面に配置された第2電極(正極集電体)26と、正極活物質層22に対向して、固体電解質層18の下面に配置され、水(H
2O)及び水酸基(-OH)のうち少なくとも1つを有する酸化チタン(TiO
x)を負極活物質として含む負極活物質層16と、第2電極(正極集電体)26に対向して、負極活物質層16の下面に配置された第1電極(負極集電体)12とを備える。
【0066】
また、正極活物質層22と固体電解質層18との間の界面状態を良くし、電荷の授受をスムーズにするために、SiO
2をベースとしたバッファ層19(
図12等を参照)を正極活物質層22と固体電解質層18との間に挿入しても良い。固体電解質層18(Ta
2O
5)と正極活物質層22(Ni(OH)
2)との間にSiOxをベースとした薄い膜を挿入することで、電池の内部抵抗が減少する。
【0067】
正極活物質層22は、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を直接成膜することで形成することができる。尚、正極活物質層22の正極活物質としては、酸化ニッケル(NiO)正極活物質層として成膜し、その後の電気的な処理、例えば充放電の繰り返しにより酸化ニッケルから形成した水酸化ニッケルも適用可能である。なお、正極活物質層22としては、酸化ニッケル(NiO)、金属ニッケル(Ni)、及び水酸化コバルト(Co(OH)2)等が適用可能である。
【0068】
正極活物質層22は、少なくとも水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を有し、プロトン、水酸化物イオン(OH-)、及びヒドロニウムイオン(H3O+)のうち少なくとも1つが移動可能な構造とする。充放電時には正極活物質層中のニッケル原子の価数が変化する。
【0069】
負極活物質層16は、水(H2O)及び水酸基(-OH)のうち少なくとも1つを有する酸化チタン化合物(TiOxHy)又は、酸化チタン(TiOx)及び酸化シリコン(SiOx)を備え、プロトン、水酸化物イオン(OH-)、及びヒドロニウムイオン(H3O+)のうち少なくとも1つを移動可能とする。充放電時に負極活物質層中のチタン原子の価数が変化する。
【0070】
又、上記の酸化チタン化合物は、脂肪酸チタンを塗布、焼成して形成しても良い。
【0071】
又、上記の酸化チタン化合物は、価数3価と4価のチタン原子を混在して備え、更にチタン原子の周辺に水(H2O)又は水酸基(-OH)を備えていても良い。更に、上記の酸化チタン化合物は、アモルファス構造又は微結晶構造を備えていても良い。
【0072】
固体電解質層18は膜厚と添加する金属酸化物の量を適正化することで、イオンの移動を維持しつつ、電子に対する高抵抗層若しくは絶縁層を形成することも可能である。固体電解質層18の材料としては、酸化タンタル(Ta2O5)及び二酸化ジルコニウム(ZrO2)のうち、少なくとも1つが適用可能である。
【0073】
n型半導体層14は、ルチル型若しくはアナターゼ型の結晶構造うち少なくとも1つを有する酸化チタン(IV)である。また、n型半導体層14は、ルチル型の結晶構造、及びアナターゼ型の結晶構造のうち少なくとも1つの結晶構造を有し、且つ水(H2O)又は水酸基(-OH)の少ない金属酸化物半導体を有することが望ましい。又、第2電極(正極集電体)は、Al、Ti、ITO、Niのいずれかを備えていても良い。又、第1電極(負極集電体)は、W、Ti、ITOのいずれかを備えていても良い。
【0074】
(負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層の構成例)
図11~
図16は、
図10に例示した二次電池30の模式的断面構造における負極活物質層16、固体電解質層18、正極活物質層22の部分の模式的断面構造を例示している。
【0075】
図11(a)に例示する二次電池30は、Ta
2O
5を固体電解質として含む固体電解質層18と、固体電解質層18の上面に配置され、Ni(OH)
2を正極活物質として含む正極活物質層22と、正極活物質層22に対向して、固体電解質層18の下面に配置され、TiO
xを負極活物質として含む負極活物質層16とを備える。
【0076】
また、
図11(b)に例示する二次電池30は、Ta
2O
5を固体電解質として含む固体電解質層18と、固体電解質層18の上面に配置され、Ni(OH)
2を正極活物質として含む正極活物質層22と、正極活物質層22に対向して、固体電解質層18の下面に配置され、TiO
xとSiO
xとを負極活物質として含む負極活物質層16Sとを備える。
【0077】
図12~
図14は、正極活物質層22と固体電解質層18との間に、界面改善用のバッファ層19を、あるいは、負極活物質層16と固体電解質層18との間に、界面改善用のバッファ層17を挿入した例を示している。バッファ層17、19は、例えば、酸化シリコン(SiO
x)を含んで構成される。
【0078】
図12(a)は、
図11(a)に例示した二次電池30において、正極活物質層22と固体電解質層18との間に界面改善用のバッファ層19を挿入した例を示し、
図12(b)は、
図11(b)に例示した二次電池30において、正極活物質層22と固体電解質層18との間に界面改善用のバッファ層19を挿入した例を示す。
【0079】
図13(a)は、
図12(a)に例示した二次電池30において、負極活物質層16と固体電解質層18との間にも界面改善用のバッファ層17を挿入した例を示し、
図13(b)は、
図12(b)に例示した二次電池30において、負極活物質層16Sと固体電解質層18との間にも界面改善用のバッファ層17を挿入した例を示す。
【0080】
図14(a)は、
図11(a)に例示した二次電池30において、負極活物質層16と固体電解質層18との間に界面改善用のバッファ層17を挿入した例を示し、
図14(b)は、
図11(b)に例示した二次電池30において、負極活物質層16Sと固体電解質層18との間に界面改善用のバッファ層17を挿入した例を示す。
【0081】
また、
図15は、正極活物質層22と固体電解質層18との間に、金属酸化物を含む界面改善用のバッファ層(金属酸化物含有バッファ層)19MOを、あるいは、負極活物質層16と固体電解質層18との間に、金属酸化物を含む界面改善用のバッファ層(金属酸化物含有バッファ層)17MOを挿入した例を示している。(金属酸化物含有バッファ層)17MO、19MOは、金属酸化物を含む酸化シリコン(SiO
x)を備えて構成される。(金属酸化物含有バッファ層)17MO、19MOに含まれる金属酸化物としては、酸化スズ(SnO)、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化リン(P
xO
y)などを適用することができる。
【0082】
図15(a)は、
図11(b)に例示した二次電池30において、正極活物質層22と固体電解質層18との間に界面改善用の金属酸化物含有バッファ層19MOを挿入した例を示し、
図15(b)は、
図11(b)に例示した二次電池30において、負極活物質層16Sと固体電解質層18との間に界面改善用の金属酸化物含有バッファ層17MOを挿入した例を示す。尚、
図15(a)及び
図15(b)の負極活物質層16S(TiO
x+SiO
x)を、負極活物質層16(TiO
x)にそれぞれ置き換えても良い。
【0083】
また、
図16は、SiO
x(バッファ層材料)を内部に含む正極活物質層22Sと、SiO
x(バッファ層材料)を内部に含む負極活物質層16Sの例を示す。
【0084】
図16(a)に例示する二次電池30は、Ta
2O
5を固体電解質として含む固体電解質層18と、固体電解質層18の上面に配置され、Ni(OH)
2を正極活物質として含むと共にSiO
xをバッファ層材料として含む正極活物質層22Sと、正極活物質層22Sに対向して、固体電解質層18の下面に配置され、TiO
xを負極活物質として含む負極活物質層16とを備える。
【0085】
図16(b)に例示する二次電池30は、Ta
2O
5を固体電解質として含む固体電解質層18と、固体電解質層18の上面に配置され、Ni(OH)
2を正極活物質として含むと共にSiO
xをバッファ層材料として含む正極活物質層22Sと、正極活物質層22Sに対向して、固体電解質層18の下面に配置され、TiO
xを負極活物質として含むと共にSiO
xをバッファ層材料として含む負極活物質層16Sとを備える。
【0086】
図12~
図16に例示した実施の形態による二次電池30によれば、正極活物質層22と固体電解質層18との間、あるいは負極活物質層16と固体電解質層18との間の電荷の授受を改善することができ、蓄電性能を向上することができる。
【0087】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る二次電池30は、
図17に示すように、第1電極(E1)(負極)12/負極活物質層16/固体電解質層18/正極活物質層22/p型半導体層24/第2電極(E2)(正極集電体)26の構成を備える。
【0088】
第2の実施の形態に係る二次電池30は、正極活物質層22上にp型半導体層24を挿入した構造を有する。
【0089】
第2の実施の形態に係る二次電池30は、
図18に示すように、正極活物質層と第2電極(正極集電体)との間に配置されたp型半導体層24を備える。
【0090】
p型半導体層24は、電荷輸送層として機能し、例えば、結晶構造を有する酸化ニッケル(NiO)を備えていても良い。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0091】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態に係る二次電池30は、
図18に示すように、第1電極(E1)(負極集電体)12/n型半導体層14/負極活物質層16T/固体電解質層18/正極活物質層22/p型半導体層24/第2電極(E2)(正極集電体)26の構成を備える。第2の実施の形態との違いは、負極活物質層16Tが酸化チタン化合物(TiO
x)を有し、酸化シリコンを有さない点である。
【0092】
p型半導体層24は、導電性のホール輸送層として機能し、例えば、酸化ニッケル(NiO)を有していても良い。その他の構成は、第2の実施の形態と同様である。尚、
図13~
図18に例示した実施形態に係る二次電池30について、第1の実施の形態と同様に、第2及び第3の実施の形態にも適用することができる。また、高イオン伝導度の膜の適用による、膜厚の制御、適正化が可能となり、サイクル特性や製造上の安定性の向上が期待できる。
【0093】
[その他の実施の形態]
上記のように、いくつかの実施の形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0094】
このように、本実施の形態は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本実施の形態の二次電池は、様々な民生用機器、産業機器に利用することができ、通信端末、無線センサネットワーク向けの二次電池など、各種センサ情報を低消費電力伝送可能なシステム応用向けの二次電池など、幅広い応用分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
12…第1電極(E1)(負極)
14…n型半導体層(TiO2)
16…負極活物質層(TiOx)
16S…負極活物質層(TiOx及びSiOx)
16T…負極活物質層(TiOx)
17…バッファ層(SiOx)
17MO…金属酸化物含有バッファ層(金属酸化物を含むSiOx)
18…固体電解質層(Ta2O5)
18SS…固体電解質層(SiOx+SnO)
19…バッファ層(SiOx)
19MO…金属酸化物含有バッファ層(金属酸化物を含むSiOx)
22…正極活物質層(Ni(OH)2)
22S…正極活物質層(Ni(OH)2+SiOx)
24…p型半導体層(NiO)
26…第2電極(E2)(正極)
30…二次電池
40…基板
80…分級器
90…混合容器
110…成膜装置部
120…ノズル
130…ステージ
140…分散液
150、250…分散液容器
160、260…ミスト化器
240…金属化合物溶液
101、102、103…製造装置
L1、L2、L3…経路
M1、M2、M3、M4…ミスト
G1、G1’…キャリアガス(第1不活性ガス)
G2、G2’…流量調整ガス(第2不活性ガス)