(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】植物栽培装置の管理システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240513BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20240513BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2020082431
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】515147852
【氏名又は名称】嘉創株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【氏名又は名称】畑添 隆人
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【氏名又は名称】稲葉 滋
(72)【発明者】
【氏名】王 玉冬
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127205(JP,A)
【文献】特開2012-044930(JP,A)
【文献】特開2018-163606(JP,A)
【文献】特開2018-038329(JP,A)
【文献】特開2011-097852(JP,A)
【文献】特開2014-035700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のプロセッサを備える植物栽培装置の管理システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、
植物栽培装置を登録する登録手段と、
ユーザ毎に、該ユーザによって管理される植物栽培装置からのセンサ出力に基づく
設置位置周辺の温度、湿度、風速、音響、明るさ、水位、液肥濃度、イメージ、二酸化炭素量、土壌の導電率、土壌の水分量及び土壌の温度の少なくとも何れかを含む環境情報と比較される条件と、該比較の結果に従って決定される
、前記植物栽培装置の栽培器に植えられた植物に水又は液肥を送るポンプの回転数、駆動時間、暖房、電磁弁、潅水設備、液肥調整、換気用の天窓、人工光及びファンの少なくとも何れかを制御するための命令を含む制御指示内容とを関連付けた制御設定を保持する設定保持手段と、
第一のユーザに係る前記制御設定を、該第一のユーザとは異なる第二のユーザに係る前記制御設定として設定する設定共有手段と、
として機能する、植物栽培装置の管理システム。
【請求項2】
複数のユーザの夫々によって管理される複数の植物栽培装置からのセンサ出力に基づく情報を含む環境情報を受信する環境情報受信手段と、
受信された前記環境情報に係る前記植物栽培装置のユーザについて設定された前記制御設定に従って、該植物栽培装置への制御指示内容を決定する指示内容決定手段と、
決定された前記制御指示内容を、前記環境情報に係る前記植物栽培装置に対して送信する指示内容送信手段と、
を更に備える、請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記設定共有手段は、前記第一のユーザによる共有許可がある場合に、該第一のユーザに係る前記制御設定を、前記第二のユーザに係る前記制御設定として設定する、
請求項1又は2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記設定共有手段は、前記第二のユーザによる共有要求がある場合に、前記第一のユーザに係る前記制御設定を、該第二のユーザに係る前記制御設定として設定する、
請求項1から3の何れか一項に記載の管理システム。
【請求項5】
前記設定保持手段によって保持される制御設定の、ユーザによる編集を受け付ける編集受付手段を更に備え、
前記編集受付手段は、前記ユーザに係る前記制御設定の少なくとも一部について、該ユーザによって編集権限を与えられた他のユーザによる編集を受け付ける、
請求項1から4の何れか一項に記載の管理システム。
【請求項6】
前記植物栽培装置からのセンサ出力に基づく情報を含む前記環境情報を、ユーザ端末に配信する配信手段を更に備え、
前記配信手段は、前記環境情報を、該環境情報に係る前記植物栽培装置のユーザによって閲覧権限を与えられた他のユーザのユーザ端末に配信する、
請求項1から5の何れか一項に記載の管理システム。
【請求項7】
前記センサ出力は、イメージセンサからの画像出力を含み、
前記配信手段は、前記イメージセンサからの画像出力に基づくデータを、前記閲覧権限を与えられた他のユーザのユーザ端末に配信する、
請求項6に記載の管理システム。
【請求項8】
前記植物栽培装置には、ユーザ端末によって読取可能な識別コードが付されており、
前記登録手段は、ユーザ端末によって読み取られた識別コードとユーザアカウントとを関連づけることで、該植物栽培装置を登録する、
請求項1から7の何れか一項に記載の管理システム。
【請求項9】
コンピューターが、
植物栽培装置を登録する登録ステップと、
ユーザ毎に、該ユーザによって管理される植物栽培装置からのセンサ出力に基づく
設置位置周辺の温度、湿度、風速、音響、明るさ、水位、液肥濃度、イメージ、二酸化炭素量、土壌の導電率、土壌の水分量及び土壌の温度の少なくとも何れかを含む環境情報と比較される条件と、該比較の結果に従って決定される
、前記植物栽培装置の栽培器に植えられた植物に水又は液肥を送るポンプの回転数、駆動時間、暖房、電磁弁、潅水設備、液肥調整、換気用の天窓、人工光及びファンの少なくとも何れかを制御するための命令を含む制御指示内容とを関連付けた制御設定を保持する設定保持ステップと、
第一のユーザに係る前記制御設定を、該第一のユーザとは異なる第二のユーザに係る前記制御設定として設定する設定共有ステップと、
実行する、植物栽培装置の管理方法。
【請求項10】
コンピューターを、
植物栽培装置を登録する登録手段と、
ユーザ毎に、該ユーザによって管理される植物栽培装置からのセンサ出力に基づく
設置位置周辺の温度、湿度、風速、音響、明るさ、水位、液肥濃度、イメージ、二酸化炭素量、土壌の導電率、土壌の水分量及び土壌の温度の少なくとも何れかを含む環境情報と比較される条件と、該比較の結果に従って決定される
、前記植物栽培装置の栽培器に植えられた植物に水又は液肥を送るポンプの回転数、駆動時間、暖房、電磁弁、潅水設備、液肥調整、換気用の天窓、人工光及びファンの少なくとも何れかを制御するための命令を含む制御指示内容とを関連付けた制御設定を保持する設定保持手段と、
第一のユーザに係る前記制御設定を、該第一のユーザとは異なる第二のユーザに係る前記制御設定として設定する設定共有手段と、
として機能させる、植物栽培装置の管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物栽培装置の管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物毎の生育環境に応じた栽培状態をユーザに対し報知し適切な栽培管理を促す植物管理装置及び植物管理システムや、栽培対象植物の品種に基づいて栽培管理情報データベースから栽培管理情報を取得及び出力するシステムが提案されている(特許文献1及び2を参照)。
【0003】
また、植物を栽培するハウス内の環境を管理する栽培環境管理装置であって、気象予報データと測定データの推移に基づいて、予測気温データ、予測室温データ及び予測地温データを含む予測データを生成し、予め設定された環境条件と予測データとに基づいて環境調整装置を制御する栽培環境管理装置が提案されており(特許文献3を参照)、更に、作物の栽培棚と空調装置と加湿装置と照明装置とを備える高断熱及び高気密のコンテナ内のセンサによる計測信号を受信してコンテナの各装置をフィードバック制御する栽培管理サーバが提案されている(特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-193174号公報
【文献】特開2017-163851号公報
【文献】特開2017-127281号公報
【文献】特開2011-97852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、農作物の生産を目的とした植物工場を管理するためのシステムが種々提案されている。しかし、このようなシステムは、植物の育成に関するノウハウが少ない一般のユーザや小規模な生産者にとって、導入及び運用が困難なものであった。
【0006】
本開示にかかる技術は、植物の育成に関するノウハウが少ないユーザにとっても導入及び運用が容易なシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの側面は、1又は複数のプロセッサを備える植物栽培装置の管理システムであって、前記1又は複数のプロセッサは、植物栽培装置を登録する登録手段と、前記ユーザ毎に、該ユーザによって管理される植物栽培装置からのセンサ出力に基づく情報を含む環境情報と比較される条件と、該比較の結果に従って決定される制御指示内容とを関連付けた制御設定を保持する設定保持手段と、第一のユーザに係る前記制御設定を、該第一のユーザとは異なる第二のユーザに係る前記制御設定として設定する設定共有手段と、として機能する、植物栽培装置の管理システムである。
【0008】
なお、本開示は、コンピューターシステム、情報処理装置、コンピューターによって実行される方法、またはコンピューターに実行させるプログラムとして把握することが可能である。また、本開示は、そのようなプログラムをコンピューターその他の装置、機械等が読み取り可能な記録媒体に記録したものとしても把握できる。ここで、コンピューター等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピューター等から読み取ることができる記録媒体をいう。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る技術によれば、植物の育成に関するノウハウが少ないユーザにとっても導入及び運用が容易なシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るシステムのハードウェア構成の概略を示す図である。
【
図2】実施形態に係る植物栽培装置のハードウェア構成の概略を示す図である。
【
図3】実施形態に係る管理サーバの機能構成の概略を示す図である。
【
図4】実施形態における設定共有処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施形態における管理サーバによる植物栽培装置の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施形態における配信処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施形態における第一の権限付与処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施形態における第二の権限付与処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係るシステム、方法及びプログラムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。但し、以下に説明する実施の形態は例示であって、本開示に係るシステム、方法及びプログラムを以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本開示に係る技術は、植物の栽培を管理するための技術に広く適用可能であり、実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用され、また、種々の改良や変形が行われてよい。
【0012】
<システムの構成>
図1は、本実施形態に係るシステムのハードウェア構成の概略を示す図である。本実施形態に係るシステムは、ネットワークに接続された管理サーバ(管理装置)5と、ネットワークを介して管理サーバ5と通信可能に接続された複数の植物栽培装置1と、植物栽培装置1を管理する複数のユーザの夫々によって用いられる複数のユーザ端末9と、を備える。各ユーザは、当該ユーザが所有する(又は、借り受けている)1又は複数の植物栽培装置1を、当該ユーザが利用できる場所(例えば、ビルの屋上やバルコニー、庭、等)に設置して管理する。
図1では、破線で示されたグループが、ユーザ端末9と、同一の場所に設置されて当該ユーザに管理される1又は複数の植物栽培装置1とのグループを示す。管理サーバ5は、様々な場所に設置された複数の植物栽培装置1の状態を遠隔モニタし、制御する。
【0013】
管理サーバ5は、1又は複数のCPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、ROM(Read Only Memory)53、ストレージ(補助記憶装置)54、及びネットワークインターフェース55を備えるコンピューターである。但し、管理サーバ5の具体的なハードウェア構成に関しては、実施の形態に応じて適宜省略や置換、追加が可能である。また、管理サーバ5は、単一の装置に限定されない。管理サーバ5は、所謂クラウド技術や分散コンピューティング技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。
【0014】
図2は、本実施形態に係る植物栽培装置1のハードウェア構成の概略を示す図である。本実施形態に係る植物栽培装置1は、栽培の対象となる植物が植えられる栽培器4と、栽培器4を制御する制御装置2と、制御装置2に接続されて栽培環境をモニタするための1または複数のセンサ3(植物の状態を視覚的にモニタするためのイメージセンサを含む)と、を備える。また、植物栽培装置1は、装置内又は装置外に設置されて植物栽培装置1に電力を供給するソーラー発電器8に接続される。但し、植物栽培装置1の具体的なハードウェア構成に関しては、実施の形態に応じて適宜省略や置換、追加が可能である。例えば、植物栽培装置1への電力は、ソーラー発電器8以外の電源(AC電源等)から供給されてもよいし、複数種類の電源から供給されてもよい。本実施形態では、植物栽培装置1として、水耕栽培装置を例に説明する。但し、本開示に係る技術を用いて管理可能な植物栽培装置は、水耕栽培装置に限定されない。
【0015】
制御装置2は、CPU11、RAM12、ROM13、ストレージ(補助記憶装置)14、無線ネットワークインターフェース15、及び制御信号送出装置16を備える情報処理装置である。
【0016】
制御装置2に接続された1または複数のセンサ3は、栽培器4の設置位置周辺の環境情報を計測することができる。本実施形態において、1または複数のセンサ3は、温度センサ、湿度センサ、風速センサ、音響センサ、光センサ、水位センサ、液肥濃度センサ及びイメージセンサの少なくとも何れかを含み、制御装置2は、これらのセンサ3を用いて、設置位置周辺の温度(気温)、湿度、風速、音響、明るさ、水位、液肥濃度及びイメージの少なくとも何れかを取得することが出来る。そして、制御装置2は、取得された環境情報を、定期的に(又は、常時)管理サーバ5に送信する。なお、本実施形態において管理サーバ5に送信される環境情報には、ソーラー発電器8による発電量、及び植物栽培装置1による消費電力が含まれてもよい。
【0017】
本実施形態において、栽培器4は、制御装置2によって制御される1又は複数の制御対象(例えば、ポンプ)41を備える。例えば、栽培器4は、制御装置2から送出された指示信号を受信し、ポンプを制御することによって、栽培器4に植えられた植物に水や液肥等を供給する。
【0018】
制御装置2は、上記説明した制御対象(例えば、ポンプ)41の他、植物栽培装置1が備えるセンサ3及びソーラー発電器8等の各構成を制御する。なお、制御装置2によって制御される対象は、制御装置2からの指示信号に従って植物栽培装置1による植物栽培の補助を行うための装置であればよく、本実施形態における例示に限定されない。
【0019】
ユーザ端末9は、CPU、RAM、ROM、ストレージ(補助記憶装置)、無線ネットワークインターフェース、タッチパネル式ディスプレイ、及びスピーカー等を備えるコンピューターである(詳細な構成の図示は省略する)。ユーザ端末9は、具体的には、所謂スマートフォンや携帯電話、タブレット、ラップトップ等であってよい。但し、ユーザ端末9として利用可能な装置は上記した例に限定されない。ユーザ端末9の具体的なハードウェア構成に関しては、実施の形態に応じて適宜省略や置換、追加が可能である。
【0020】
ユーザは、栽培管理のためのアプリケーションソフトウェアをユーザ端末9にインストールし、当該ソフトウェアが提供するユーザインターフェースを用いることで、管理サーバ5を介して、又は植物栽培装置1から直接、植物栽培装置1の環境情報を閲覧し、植物栽培装置1を制御する。本実施形態によれば、このような構成を備えることで、ユーザは、データ保存、表示、制御、通知等をリアルタイムに行うことが出来る。
【0021】
図3は、本実施形態に係る管理サーバ5の機能構成の概略を示す図である。本実施形態に係る管理サーバ5は、ユーザや植物栽培装置1の登録・削除・稼働状態を把握するためのサーバであり、CPU51が、RAM52に展開された各種プログラムを解釈及び実行して、管理サーバ5に備えられた各種ハードウェアを制御することで、登録部21、設定保持部22、設定共有部23、編集受付部24、環境情報受信部25、指示内容決定部26、指示内容送信部27及び配信部28を備えるコンピューターとして機能する。なお、本実施形態では、管理サーバ5の機能が汎用のCPU51によって実行される例について説明しているが、これらの機能は、その一部または全部が、1または複数の専用のプロセッサによって実現されてもよい。
【0022】
登録部21は、植物栽培装置1を登録する。本実施形態において、植物栽培装置1には、ユーザ端末9によって読取可能な識別コード(例えば、一次元バーコードや二次元バーコード、ICタグ等)が付されており、登録部21は、ユーザ端末9のリーダー(例えば、バーコードリーダーやRFIDリーダー等)を用いて読み取られた識別コードとユーザアカウントとを関連づけることで、当該植物栽培装置1を登録する。このようにすることで、植物栽培装置1をホームセンター等の小売店で購入した等の理由で、植物栽培装置1の入手時に植物栽培装置1とユーザとが紐づけられていない場合でも、容易にユーザと植物栽培装置1とを紐付けて登録することが可能である。
【0023】
設定保持部22は、ユーザ毎に、当該ユーザによって管理される植物栽培装置1からのセンサ出力に基づく情報を含む環境情報と比較される条件と、当該比較の結果に従って決定される制御指示内容とを関連付けた制御設定を保持する。ここで、条件は、例えば温度、湿度等の組み合わせである。但し、制御設定における条件には、植物栽培装置1及び/又は外部情報(例えば、天気予報や、植物栽培装置1以外のセンサから取得された情報)と比較されるものであればよく、本実施形態における例示に限定されない。
【0024】
設定共有部23は、第一のユーザに係る制御設定を、当該第一のユーザとは異なる第二のユーザに係る制御設定として設定する。本実施形態において設定共有部23は、第一のユーザによる共有許可があり、且つ第二のユーザによる共有要求がある場合に、当該第一のユーザに係る制御設定を、第二のユーザに係る制御設定として設定する。但し、制御設定を共有するための条件は、本実施形態に示された例に限定されない。例えば、設定共有部23は、第一のユーザによる共有許可のみを条件として制御設定を共有してもよいし、第二のユーザによる共有要求のみを条件として制御設定を共有してもよい。
【0025】
編集受付部24は、設定保持部22によって保持される制御設定の、ユーザによる編集を受け付ける。更に、本実施形態において、編集受付部24は、ユーザに係る制御設定の少なくとも一部について、当該ユーザによって編集権限を与えられた他のユーザによる編集を受け付ける。本実施形態によれば、このような機能を備えることで、植物栽培の専門家等の他のユーザに設定を依頼することができ、専門的な知識を有さないユーザであっても、クオリティの高い植物栽培を楽しむことが出来る。
【0026】
環境情報受信部25は、複数のユーザの夫々によって管理される複数の植物栽培装置1からのセンサ出力に基づく情報を含む環境情報を受信する。
【0027】
指示内容決定部26は、受信された環境情報に係る植物栽培装置1のユーザについて設定された制御設定に従って、当該植物栽培装置1への制御指示内容を決定する。本実施形態において、環境情報は、温度及び湿度の情報を含み、指示内容決定部26は、受信された環境情報に含まれる温度及び湿度の情報に対応する制御指示内容を決定する。なお、本実施形態では、植物栽培装置1に備えられたセンサ3からの出力に基づく環境情報と条件とが比較されるが、条件と比較される環境情報は、植物栽培装置1に備えられたセンサ3以外のソースから取得された情報であってもよい。例えば、温度及び湿度は、天気予報や、植物栽培装置1以外のセンサから取得された情報であってもよい。
【0028】
指示内容送信部27は、決定された制御指示内容を、環境情報に係る植物栽培装置1に対して送信する。本実施形態において、制御指示内容は、栽培器4の植物に水や液肥を送るポンプの回転数や時間等を制御するための命令を含む。
【0029】
配信部28は、植物栽培装置1からのセンサ出力に基づく情報を含む環境情報又は制御設定(閲覧対象情報)を、ユーザ端末9に配信する。更に、本実施形態において、配信部28は、閲覧対象情報を、当該閲覧対象情報に係る植物栽培装置1のユーザによって閲覧権限を与えられた他のユーザのユーザ端末9に配信する。センサ出力は、イメージセンサからの画像出力を含み、配信部28は、イメージセンサからの画像出力に基づくデータを、閲覧権限を与えられた他のユーザのユーザ端末9に配信する。
【0030】
<処理の流れ>
次に、本実施形態に係る処理の詳細を説明する。なお、本実施形態において説明される処理の具体的な内容及び順序等は、本開示を実施する上での一例である。具体的な処理内容及び順序等は、実施の態様に応じて適宜選択されてよい。
【0031】
図4は、本実施形態における管理サーバ5による設定共有処理の流れを示すフローチャートである。設定共有処理は、他のユーザ(第一のユーザ)の制御設定を所望するユーザ(第二のユーザ)のユーザ端末9から送信された共有要求が受信されたことを契機として実行される。
【0032】
第一のユーザの制御設定を所望する第二のユーザのユーザ端末9から送信された共有要求が受信されると(ステップS101)、設定共有部23は、第一のユーザによる共有許可があるか否かを判定する(ステップS102)。第一のユーザによる共有許可があると判定された場合、設定共有部23は、第一のユーザに係る制御設定を、第二のユーザに係る制御設定として設定する(ステップS103)。一方、第一のユーザによる共有許可が無いと判定された場合、制御設定の共有は行われず、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0033】
ここで、制御設定を共有するための具体的な手段は限定されない。例えば、第一のユーザに係る制御設定が第二のユーザに係る制御設定としてデータ複製されることで共有されてもよいし、第一のユーザに係る制御設定が第二のユーザに対してリンク付けされることで共有されてもよいし、第一のユーザに係る制御設定が第二のユーザのユーザ端末9にダウンロードされることで共有されてもよい。
【0034】
図5は、本実施形態における管理サーバ5による植物栽培装置1の制御処理の流れを示すフローチャートである。制御処理は、植物栽培装置1からのセンサ出力に基づく情報を含む環境情報が受信されたことを契機として実行される。
【0035】
ステップS201及びステップS202では、環境情報が受信及び保存される。環境情報受信部25は、植物栽培装置1からのセンサ出力に基づく情報を含む環境情報を受信し(ステップS201)、管理サーバ5は、受信された環境情報を、ストレージ54又は外部のデータベースに保存する(ステップS202)。その後、処理はステップS203へ進む。
【0036】
ステップS203からステップS206では、環境情報及び制御設定に基づいて制御指示内容が決定され、送信される。指示内容決定部26は、ステップS201で受信された環境情報に係る植物栽培装置1のユーザについて設定された制御設定を、ストレージ54又は外部のデータベースから読み出す(ステップS203)。そして、指示内容決定部26は、ステップS201で受信された環境情報と、ステップS203で読み出された制御設定に含まれる条件とを比較し(ステップS204)、条件に合致する制御指示内容を、当該植物栽培装置1への制御指示内容として決定する(ステップS205)。指示内容送信部27は、決定された制御指示内容を、環境情報に係る植物栽培装置1に対して送信する(ステップS206)。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0037】
管理サーバ5から送信された制御指示内容が植物栽培装置1によって受信されると、植物栽培装置1は、受信された制御指示内容に従って、栽培器4に備えられた制御対象(ポンプ等)41及びセンサ(イメージセンサ等)3を制御する。
【0038】
図6は、本実施形態における管理サーバ5による配信処理の流れを示すフローチャートである。配信処理は、環境情報又は制御設定(閲覧対象情報)の閲覧を所望するユーザのユーザ端末9から送信された閲覧要求が受信されたことを契機として実行される。
【0039】
環境情報(イメージセンサから出力された映像等を含む)又は制御設定(閲覧対象情報)の閲覧を所望するユーザのユーザ端末9から送信された閲覧要求が受信されると(ステップS301)、配信部28は、閲覧を所望するユーザが、閲覧対象情報の閲覧権限を有しているか否かを判定する(ステップS302)。ここで、閲覧対象情報の所有ユーザと閲覧ユーザとが同一である場合には、通常、閲覧ユーザは閲覧権限を有している。一方、所有ユーザと閲覧ユーザとが異なる場合、閲覧ユーザが当該所有ユーザの環境情報又は制御設定について閲覧権限を有しているか否かが問題となる。本実施形態に係るシステムにおいて、ユーザは、他のユーザに対して、予め環境情報又は制御設定の閲覧権限を与えることが可能である。
【0040】
閲覧を所望するユーザが閲覧権限を有していると判定された場合、配信部28は、閲覧されるユーザの環境情報又は制御設定(閲覧対象情報)を、閲覧ユーザのユーザ端末9に配信する(ステップS303)。一方、閲覧を所望するユーザが閲覧権限を有していないと判定された場合、閲覧対象情報の配信は行われず、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0041】
このような機能を備えることで、本実施形態に係るシステムによれば、ユーザは、友人等の他のユーザを招待して、自身のデータ(栽培中の植物の映像等を含む)を見せることが出来る。なお、リアルタイムの環境情報(映像を含む)を配信する場合には、ユーザ端末9は、管理サーバ5に対してリアルタイム環境情報の閲覧要求を送信し、管理サーバ5は植物栽培装置1のセンサ3に命令(動画取得コマンド等)を送信し、センサ3からの出力データを管理サーバ5経由で(又は管理サーバ5を介さずに)ユーザ端末9に配信する。
【0042】
なお、上記説明した設定共有処理及び配信処理における共有許可/編集権限/閲覧権限は、様々な方法でユーザに付与することが可能である。以下に、あるユーザが他のユーザに対して共有許可/編集権限/閲覧権限を付与する方法について説明する。
【0043】
図7は、本実施形態における第一の権限付与処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、管理サーバ5が招待コードの生成要求を受信したことを契機として実行される。
【0044】
ステップS401からステップS403では、招待コードの生成要求に応じて、招待コードが発行される。管理サーバ5は、第一のユーザのユーザ端末9によって送信された、招待コードの生成要求を受信する(ステップS401)。招待コードの生成要求が受信されると、管理サーバ5は、第一のユーザのユーザ端末に対して、第一のユーザの設定の共有許可、編集権限及び/又は閲覧対象情報の閲覧権限を付与するための招待コードを生成し(ステップS402)、生成された招待コードを、第一のユーザのユーザ端末9に対して送信する(ステップS403)。
【0045】
他のユーザに共有許可、編集権限及び/又は閲覧権限を付与するための招待コードを入手した第一のユーザは、当該招待コードを、自身の設定の共有許可、編集権限及び/又は自身の情報の閲覧権限を与えたい他のユーザ(第二のユーザ)に対して、電子メールやソーシャルネットワーキングシステム(SNS)等の手段を介して送信する。ここで、第一のユーザから第二のユーザに対して招待コードを送信する手段は限定されない。そして、第一のユーザから招待コードを受け取った第二のユーザは、管理サーバ1に対して、例えば、管理サーバ1が提供するWebページの招待コード入力画面で招待コードを入力する等の方法で、当該招待コードを送信する。
【0046】
ステップS404からステップS406では、受信された招待コードに応じて、権限の付与が行われる。管理サーバ5は、第二のユーザのユーザ端末9によって送信された招待コードを受信する(ステップS404)。そして、管理サーバ5は、受信された招待コードと、ステップS402で生成された招待コードとを照合し(ステップS405)、一致する場合、当該招待コードの生成要求を行った第一のユーザの設定の共有許可、編集権限及び/又は自身の情報の閲覧権限を、第二のユーザに対して付与する(ステップS406)。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0047】
なお、
図7のフローチャートでは、ユーザ端末9が直接管理サーバにアクセスして共有許可、編集権限及び/又は閲覧権限を付与する場合の処理の流れを説明したが、共有許可、編集権限及び/又は閲覧権限の付与には、その他の処理の流れが採用されてもよい。例えば、第一のユーザのユーザ端末9が専用SNSにアクセスし、第二のユーザへの招待コードの生成を指示し、本サービス専用の又は汎用のSNSが招待コードを生成して第二のユーザに通知し、第二のユーザのユーザ端末9がSNSにアクセスして招待コードを承認し、承認を受けてSNSが管理サーバに対して第二のユーザへの権限付与を指示し、管理サーバが第二のユーザに権限を付与する。このようにすれば、第一のユーザは招待コードの転送が不要であり、また、管理サーバによる招待コードの照合も不要となる。
【0048】
図8は、本実施形態における第二の権限付与処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、管理サーバ5が権限付与指示を受信したことを契機として実行される。
【0049】
管理サーバ5は、システムの管理者端末(図示は省略する)に対して、ネットワークを介して管理システムの契約画面(インターフェース)を提供する。システムの管理者は、管理者端末を用いて契約画面にアクセスし、ユーザの契約関係に従って、契約ユーザに関する設定の共有許可、編集権限及び/又は情報の閲覧権限を、所定の他のユーザ(例えば、植物栽培の専門家やコンサルタント等)に対して付与するための、権限付与指示を管理サーバに送信する。管理サーバ5は、管理者端末から送信された権限付与指示を受信し(ステップS501)、受信された権限付与指示の内容に従って、契約ユーザに関する設定の共有許可、編集権限及び/又は情報の閲覧権限を、所定の他のユーザに対して付与する(ステップS502)。
【0050】
また、上記説明した実施形態では、制御設定の共有許可や編集権限、環境情報又は制御設定の閲覧権限を設定することが説明されているが、これらの共有許可/編集権限/閲覧権限は、登録部21に登録された植物栽培装置のユーザが利用可能な、本サービス専用の又は汎用のSNSにおいて、ユーザ間のコミュニケーション(メッセージの送受信等)を通じて設定可能であってもよい。本システムのユーザは、友人、専門家、コンサルタント等とメッセージの送受信によって、情報、質問などの発信、アドバイスの受信等を行うことが出来る。また、ユーザは、当該SNSを通じて自身が管理する植物栽培装置の制御設定や環境情報を公開することも可能である。
【0051】
<バリエーション>
上記説明した実施形態では、センサ出力を含む環境情報が、植物栽培装置からユーザ端末を介さずに管理サーバに送信される例について説明したが、植物栽培装置から送信される環境情報は、その他の経路で管理サーバに送信されてもよい。例えば、センサ出力を含む環境情報は、ユーザ端末を介して管理サーバに送信されてもよい。また、後述するように、設定保持、環境情報受信、指示内容決定及び指示内容送信等の機能が管理サーバでなくユーザ端末に実装される場合には、環境情報は、植物栽培装置からユーザ端末に送信されてもよい。
【0052】
上記説明した実施形態では、設定保持、環境情報受信、指示内容決定及び指示内容送信等の機能が管理サーバに実装される例について説明したが、これらの機能は、その他の装置(例えば、ユーザ端末)に実装されてもよい。
【0053】
上記説明した実施形態では、制御指示内容が管理サーバから直接植物栽培装置に送信される例について説明したが、制御指示内容の送信経路は上記説明した実施形態の例に限定されない。例えば、制御指示内容は、管理サーバからユーザ端末を介して植物栽培装置に送信されてもよいし、ユーザ端末から植物栽培装置に送信されてもよいし、ユーザ端末から管理サーバを介して植物栽培装置に送信されてもよい。
【0054】
また、上記説明した実施形態では、環境情報に基づいてポンプが制御される例について説明したが、取得される環境情報の内容及び制御対象は、本開示における例示に限定されない。例えば、ソーラー発電器8では悪天候で発電量が落ちたときにシステムが停止してしまう恐れがある。このため、環境情報として発電量及び消費電力を取得し、制御設定に基づいて適切なパネルを選択することとしてもよい。また、ソーラー発電器8では雨天における発電量が低いが、雨天の場合、循環ポンプを頻繁に回す必要もない。そこで、環境情報として天候、発電量及び消費電力を取得し、制御設定に基づいてポンプを動的制御してもよい。
【0055】
また、上記説明した実施形態では、イメージセンサによって取得された画像が環境情報として管理サーバに送信される例について説明しているが、映像データ送信には広帯域の通信が必要となる一方、植物は急激に変化するわけではない。このため、常時リアルタイムでの映像送信及び配信は行わないこととしてもよい。例えば、一日分の状態変化を短時間で把握したり、必要なとき(豪雨や強風時等)にリアルタイムで画像を見たりすることができるように、一定時間間隔で画像を撮影してサーバ側でタイムラプス動画を作成しユーザ端末で閲覧できるようにする機能、又は、ユーザ端末からのアクセス時のみ動画を送信及び配信する機能、を備えてもよい。また、複数のイメージセンサを切り替える機能、イメージセンサの電源オン/オフ機能、及び動画の配信日時をカレンダーで指定できる機能、等を備えてもよい。
【0056】
また、上記説明した実施形態では、植物栽培装置として水耕栽培装置を例に説明したが、本開示に係る技術を用いて管理可能な植物栽培装置は、水耕栽培装置に限定されない。例えば、土壌を用いる植物栽培装置を管理対象とする場合、システムは、更に、二酸化炭素量、土壌の導電率、土壌の水分量、土壌の温度、等の環境情報を収集し、暖房、電磁弁、潅水設備(水/液肥の量)、液肥調整(EC、pH)、換気用の天窓、人工光、ファン等の外部装置を制御してよい。また、管理サーバ5は、このような情報を分析し、分析結果を植物に最適な環境を維持管理するために活用することが出来る。
【0057】
<効果>
本実施形態によれば、複数のユーザが夫々の植物栽培装置を管理サーバに登録し、ユーザ間で植物栽培装置のための制御設定を共有(他のユーザに提供)することが可能である。
【0058】
また、本実施形態に例示されたシステムによれば、従来の生産を目的とした植物工場での栽培とは異なり、都市のビルの屋上やベランダ等の遊休スペースを活用し、個人が本格的な果菜類の栽培を楽しみとして行うためのシステムを提供することも可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 植物栽培装置
5 管理サーバ