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特許7486742電子所見録記録支援装置および電子所見録記録支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】電子所見録記録支援装置および電子所見録記録支援方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240513BHJP
   G10L 15/22 20060101ALI20240513BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20240513BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20240513BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20240513BHJP
【FI】
G16H10/00
G10L15/22 460Z
G10L15/00 200L
G06F3/16 620
G06F3/16 650
G06F3/0481
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020108853
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006564
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】398018021
【氏名又は名称】株式会社アドバンスト・メディア
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 克明
(72)【発明者】
【氏名】梶原 三幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 明博
(72)【発明者】
【氏名】林 敬人
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-021216(JP,A)
【文献】特開2004-102509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G10L 15/00 - 17/26
G06F 3/16
G06F 3/01
G06F 3/048- 3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体部位に関する所見情報の電子所見録への記録を支援する電子所見録記録支援装置であって、
音声入力機能および画像表示機能を有する端末装置と接続する端末接続部と、
人体図を表示している前記端末装置において、身体部位を示す身体部位情報と、当該身体部位を識別する識別情報とが音声入力された場合、音声認識処理に基づいて、前記身体部位情報および前記識別情報を取得する情報取得部と、
取得された前記身体部位情報、および、前記人体図と、前記身体部位情報と、前記人体図における前記身体部位の位置を示す位置情報とを対応付けて含む人体図情報に基づいて、前記人体図における前記身体部位の位置を特定する位置特定部と、
前記人体図において、特定された前記身体部位の位置に前記識別情報を表示させる表示制御部と、
を備える電子所見録記録支援装置。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記所見情報が音声入力された場合、音声認識処理に基づいて、前記所見情報に含まれる前記身体部位情報および前記識別情報を取得する、
請求項1に記載の電子所見録記録支援装置。
【請求項3】
前記人体図と、前記身体部位情報と、前記人体図における前記身体部位の位置を示す位置情報とを対応付けて含む前記人体図情報を記憶する人体図情報記憶部を備える
請求項1または2に記載の電子所見録記録支援装置。
【請求項4】
前記人体図情報において、前記人体図と、前記身体部位情報と、前記位置情報と、前記情報取得部により取得された前記識別情報とを対応付けて記憶させる記憶制御部を備える、
請求項3に記載の電子所見録記録支援装置。
【請求項5】
身体部位に関する所見情報の電子所見録への記録を支援するコンピュータが実行する電子所見録記録支援方法であって、
音声入力機能および画像表示機能を有する端末装置と接続し、
人体図を表示している前記端末装置において、身体部位を示す身体部位情報と、当該身体部位を識別する識別情報とが音声入力された場合、音声認識処理に基づいて、前記身体部位情報および前記識別情報を取得し、
取得された前記身体部位情報、および、前記人体図と、前記身体部位情報と、前記人体図における前記身体部位の位置を示す位置情報とを対応付けて含む人体図情報に基づいて、前記人体図における前記身体部位の位置を特定し、
前記人体図において、特定された前記身体部位の位置に前記識別情報を表示させる、
電子所見録記録支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の身体部位に関する所見情報の電子所見録への入力を支援する電子所見録記録支援装置および電子所見録記録支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、診療の分野において電子カルテ(所見録)の普及が進んでいる。通常、電子カルテは、液晶ディスプレイ等の表示インタフェースに、入力すべき情報の項目や入力欄を配置した画面を表示する。そして、電子カルテは、キーボードおよびマウス等の手入力インタフェースを介して、医療従事者から情報の入力を受け付け、入力された情報を参照可能な状態で記録する。
【0003】
総合病院等では、複数の医療従事者がカルテの記録や参照を行う。そこで、複数の端末装置から1つの電子カルテにアクセスすることを可能にする技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の技術(以下「従来技術」という)は、ある患者の電子カルテがいずれかの端末装置において編集されている間、他の端末装置ではかかる患者の電子カルテの編集ができないようにするとともに、所定のルールに基づいて編集を許可する端末装置を切り替える。このような従来技術によれば、複数の医療従事者による電子カルテへの所見情報の記録を、効率良く行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-13577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、診療の分野だけでなく、法医解剖や病理解剖の分野においても、剖検所見を記録する所見録の電子化が望まれる。
【0007】
しかしながら、剖検を行っている執刀医にとって、手入力インタフェースを使用することは困難である。また、一人は頭部の剖検を行い、他の一人は腹部の剖検を行うというように、複数の執刀医が1つの被検体について同時に剖検を行うことも多い。したがって、上述の従来技術は、剖検所見を電子的な所見録(以下「電子所見録」という)に記録する用途には適していない。
【0008】
本発明の目的は、剖検所見の電子所見録への記録作業を支援することができる電子所見録記録支援装置および電子所見録記録支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る電子所見録記録支援装置は、
身体部位に関する所見情報の電子所見録への記録を支援する電子所見録記録支援装置であって、
音声入力機能および画像表示機能を有する端末装置と接続する端末接続部と、
人体図を表示している前記端末装置において、身体部位を示す身体部位情報と、当該身体部位を識別する識別情報とが音声入力された場合、音声認識処理に基づいて、前記身体部位情報および前記識別情報を取得する情報取得部と、
取得された前記身体部位情報、および、前記人体図と、前記身体部位情報と、前記人体図における前記身体部位の位置を示す位置情報とを対応付けて含む人体図情報に基づいて、前記人体図における前記身体部位の位置を特定する位置特定部と、
前記人体図において、特定された前記身体部位の位置に前記識別情報を表示させる表示制御部と、
を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る電子所見録記録支援方法は、
身体部位に関する所見情報の電子所見録への記録を支援するコンピュータが実行する電子所見録記録支援方法であって、
音声入力機能および画像表示機能を有する端末装置と接続し、
人体図を表示している前記端末装置において、身体部位を示す身体部位情報と、当該身体部位を識別する識別情報とが音声入力された場合、音声認識処理に基づいて、前記身体部位情報および前記識別情報を取得し、
取得された前記身体部位情報、および、前記人体図と、前記身体部位情報と、前記人体図における前記身体部位の位置を示す位置情報とを対応付けて含む人体図情報に基づいて、前記人体図における前記身体部位の位置を特定し、
前記人体図において、特定された前記身体部位の位置に前記識別情報を表示させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、剖検所見の電子所見録への記録作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る電子所見録記録支援装置が使用されるシステムの概要の一例を示す図
図2】本実施の形態に係る電子所見録記録支援装置の構成の一例を示す図
図3】本実施の形態における所見録構造データの内容の一例を示す図
図4】本実施の形態におけるコマンドデータの内容の一例を示す図
図5】本実施の形態における発音辞書データの内容の一例を示す図
図6】本実施の形態における端末状態管理表の内容の一例を示す図
図7】本実施の形態における電子所見録の作業開始画面の一例を示す図
図8】本実施の形態に係る電子所見録記録支援装置の動作の一例を示すフローチャート
図9】本実施の形態における所見録入力画面の第1の例を示す図
図10】本実施の形態における所見録入力画面の第2の例を示す図
図11】本実施の形態における所見録入力画面の第3の例を示す図
図12】本実施の形態における所見録入力画面の第4の例を示す図
図13】本実施の形態における所見録入力画面の第5の例を示す図
図14】本実施の形態における所見録情報データの内容の一例を示す図
図15】本実施の形態における剖検記録の一例を示す図
図16】本実施の形態における所見録入力画面の第6の例を示す図
図17】本実施の形態における人体図情報の内容の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
<システム概要>
まず、本実施の形態に係る電子所見録記録支援装置が使用される電子所見録システムの概要について説明する。本実施の形態において、電子所見録システムは、法医解剖における剖検所見を記録するためのシステムである。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る電子所見録記録支援装置が使用される電子所見録システムの概要の一例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、電子所見録システム100は、解剖室110の内部に配置される第1および第2の端末装置200、200と、解剖室110の外部に配置される電子所見録記録支援装置300とを有する。
【0017】
第1の端末装置200は、第1の端末制御装置210と、マイクロフォンを備えた第1のヘッドセット220と、液晶ディスプレイを備えた第1の表示装置230と、を有する。
【0018】
第1のヘッドセット220および第1の表示装置230は、それぞれ、第1の端末制御装置210に通信可能に接続されている。すなわち、第1の端末装置200は、音声入力機能および画像表示機能を有する端末装置である。第1のヘッドセット220は、ある被検体120を法医解剖する執刀医である第1のユーザ130の頭部に装着される。第1の表示装置230は、この第1のユーザ130によって使用される。
【0019】
また、第2の端末装置200も、第2の端末制御装置210、第2のヘッドセット220、および第2の表示装置230を備えた、第1の端末装置200と同様の構成となっている。第2のヘッドセット220は、被検体120を法医解剖するもう一人の執刀医である第2のユーザ130の頭部に装着される。第2の表示装置230は、この第2のユーザ130によって使用される。
【0020】
電子所見録記録支援装置300は、第1の端末制御装置210および第2の端末制御装置210のそれぞれと通信可能に接続し、第1の端末装置200および第2の端末装置200のそれぞれに電子所見録のユーザインタフェースを実現する。すなわち、電子所見録記録支援装置300は、各端末装置200に所見録入力画面を表示させ、所見録情報の提示および電子所見録への所見情報の入力の受け付けを行う。
【0021】
より具体的には、電子所見録記録支援装置300は、音声によるハンズフリーでの所見情報の入力を可能にし、更に、第1および第2のユーザ130、130が同時に所見情報を入力することを可能にする。
【0022】
<装置の構成>
次に、電子所見録記録支援装置300の構成について説明する。
【0023】
図2は、電子所見録記録支援装置300の構成の一例を示す図である。
【0024】
図2において、電子所見録記録支援装置300は、情報格納部310(本発明の「人体図情報記憶部」として機能)、端末接続部320、音声認識解析部330、入力画面制御部340(本発明の「情報取得部」、「位置特定部」および「表示制御部」として機能)、および情報記録部350(本発明の「記憶制御部」として機能)を有する。
【0025】
情報格納部310は、電子所見録のユーザインタフェースを実現するための各種情報を予め格納している。より具体的には、情報格納部310は、音声認識辞書311、所見録構成情報312、所見録情報データ313および人体図情報314を格納している。
【0026】
音声認識辞書311は、音響モデル、発音辞書、および言語モデル等の、音声データをテキストデータに変換する音声認識処理で使用される情報である。音響モデルは、音声の特徴量と発音記号との確率的な対応付けをデータ化したものである。発音辞書は、音声認識処理による音声認識結果の候補群として、複数のテキスト配列を記述したものである。言語モデルは、発音辞書に記述されたテキスト配列のそれぞれについて、出現確率や接続確率をデータ化したものである。
【0027】
なお、発音辞書および言語モデルは、医学専門用語および所見録の記録形式に対応したものであることが望ましい。また、音響モデルは、学習によりユーザ毎にカスタマイズされた音響モデルと、不特定のユーザ用の音響モデルとを含むことが望ましい。また、発音辞書および言語モデルは、後述の、表示画面毎および画面モード毎に用意されていることが望ましい。
【0028】
所見録構成情報312は、電子所見録のユーザインタフェースを構築するために必要な情報である。所見録構成情報312は、例えば、所見録構造データ、コマンドデータ、発音辞書データ、および端末状態管理表を含む。
【0029】
所見録構造データは、電子所見録の構造を記述するデータである。コマンドデータは、ユーザから受け付けるコマンドを記述するデータである。発音辞書データは、電子所見録で表示される文字列とその読みとを対応付けて記述するデータである。端末状態管理表は、各端末装置200を識別し、各端末装置200の状態を記述する情報である。なお、所見録構造データ、コマンドデータ、および発音辞書データは、予め用意された情報であるのに対し、端末状態管理表は、電子所見録システム100の状態に応じて生成され変化する情報である。
【0030】
図3は、所見録構造データの内容の一例を示す図である。
【0031】
図3に示すように、所見録構造データ410は、部位名411毎に、部位名に属する項目名412と、当該項目名412の入力欄タイプ413とを記述する。
【0032】
部位名411は、身体部位の名称である。部位名411とは、例えば、「心臓」等の、一人の執刀医が剖検を行う際に一時に着目する、被検体の範囲の名称である。なお、本実施の形態では、「基本情報」といった、一人の執刀医が剖検を行う際に一時に着目する、一まとまりの各種情報の名称についても、部位名411として取り扱う。
【0033】
項目名412は、部位名411に対応する、所見情報を記録すべき対象の名称である。
【0034】
入力欄タイプ413は、項目名412に対応する所見情報の、入力の仕方の種別である。
【0035】
なお、所見録構造データ410は、部位名411、項目名412、および項目名412のそれぞれについて、所見録入力画面において表示される際の、位置、大きさ、字体、および色等の情報を含んでいてもよい。また、所見録構造データ410は、項目名412のそれぞれについて、入力された所見情報のメモリ格納場所に関する情報を含んでいてもよい。
【0036】
図4は、コマンドデータの内容の一例を示す図である。
【0037】
図4に示すように、コマンドデータ420は、画面モード421毎に、コマンド422を記述している。
【0038】
画面モード421は、電子所見録の画面が受け付ける操作の種別である。本実施の形態において、画面モード421に、少なくとも、「選択モード」および「入力モード」を含む。選択モードは、画面に表示された部位名や項目名を選択する操作を受け付けるモードである。入力モードは、画面に表示された項目名に対応する入力欄への情報入力操作を受け付けるモードである。なお、入力モードは、更に、自由文を入力するためのモードと、数値を入力するためのモードとに分かれていることが望ましい。
【0039】
コマンド422は、所見録入力画面においてユーザから受け付ける命令語である。本実施の形態において、コマンド422は、入力欄への入力を開始するための入力開始コマンド、入力欄に記述された内容への編集を行うための各種編集コマンド、および入力欄への入力を停止するための入力停止コマンドを含む。
【0040】
図5は、発音辞書データの内容の一例を示す図である。
【0041】
図5に示すように、発音辞書データ430は、文字列431毎に、読み432を記述している。文字列431は、電子所見録システム100が所見録入力画面において音声入力を受け付ける語句の文字列であり、部位名411、項目名412、およびコマンド422(図3および図4参照)を含む。
【0042】
なお、かかる発音辞書データ430と同じ内容の情報が、上述の音声認識辞書311の発音辞書に含まれているものとする。あるいは、発音辞書データ430は、音声認識辞書311と所見録構成情報312とで兼用されていてもよい。
【0043】
図6は、端末状態管理表の内容の一例を示す図である。
【0044】
図6に示すように、端末状態管理表440は、第1の端末装置442および第2の端末装置443のそれぞれについて、状態項目441毎の状態を記述している。
【0045】
状態項目441には、端末ID、ユーザ名、作業中所見録No.、表示画面、作業状態、および選択中の項目が含まれる。端末IDは、端末装置200の識別情報である。なお、端末IDは、マイクIDとディスプレイIDとの組であってもよい。ユーザ名は、端末装置200を使用するユーザの識別情報である。作業中所見録No.は、端末装置200で入力あるいは編集の作業の対象となっている所見録情報データの識別情報である。表示画面は、端末装置200が表示している画面の識別情報である。作業状態は、端末装置200に設定されている画面モード421(図4参照)である。
【0046】
なお、端末IDは、例えば、電子所見録記録支援装置300に端末装置200が接続されたときに、通信ネットワークの自動検出機能やユーザ操作に基づいて、入力画面制御部340により記述される。ユーザ名および作業中所見録No.は、例えば、電子所見録の作業開始画面におけるユーザ操作に基づいて、入力画面制御部340により記述される。また、表示画面、作業状態、および選択中の項目は、例えば、所見録入力画面に対する各種ユーザ操作を受けて、逐次、入力画面制御部340により更新される。
【0047】
図2の所見録情報データ313の内容については、後述する。
【0048】
図2の端末接続部320は、第1および第2の端末装置200、200のそれぞれと、通信可能に接続する。そして、端末接続部320は、第1および第2の端末装置200、200のそれぞれと、音声認識解析部330、入力画面制御部340、および情報記録部350との間で、情報の中継を行う。
【0049】
音声認識解析部330は、端末装置200毎に、音声認識辞書310を用いた音声認識処理により、部位名411(図3参照)が音声入力されたか否か、および、所見情報が音声入力されたか否か、を判定する。なお、音声認識解析部330は、図示しないが、発話者の音声をコンパクトなデータに変換する音響分析部と、変換されたデータを解析してテキスト化する認識デコーダとを含む。そして、音声認識解析部330は、部位名あるいは所見情報が音声入力されたとき、当該部位名あるいは所見情報のテキスト情報を、入力画面制御部340へ出力する。なお、音声認識解析部330は、項目名412(図3参照)およびコマンド422(図4参照)についても、同様に、音声入力の有無の判定および判定結果の出力を行う。
【0050】
なお、音声認識解析部330は、端末状態管理表440(図6参照)に基づいて、使用する音響モデル、発音辞書、および言語モデルを切り替えてもよいし、認識対象とする語句を絞ってもよい。
【0051】
入力画面制御部340は、端末装置毎に、複数の身体部位の部位名の一覧を含む所見録入力画面を生成して表示させる。そして、入力画面制御部340は、いずれかの部位名がいずれかの端末装置200において音声入力されたとき、当該端末装置200の所見録入力画面に、対応する所見情報を入力するための部位別画面を表示させる。また、入力画面制御部340は、入力された所見情報のテキスト情報を、入力の対象となった部位名および項目名と対応付けて、情報記録部350へ出力する。
【0052】
但し、入力画面制御部340は、一方の端末装置の200においていずれかの部位別画面が表示されている間、他方の端末装置200に表示されている対応する部位名に対して、対応する所見情報の入力が不可である事を示す不可通知情報を付与する。また、入力画面制御部340は、一方の端末装置の200においていずれかの部位別画面が表示されている間、対応する部位別画面を、他方の端末装置200において表示させない。
【0053】
なお、入力画面制御部340は、各端末装置200における表示画面、作業状態、および選択中の項目を、逐次、端末状態管理表440(図6参照)に反映させる。
【0054】
情報記録部350は、入力画面制御部340から所見情報のテキスト情報が入力されたとき、入力された所見情報のテキスト情報を、対応する部位名および項目名に対応付けて、所見録情報データ313として、情報格納部310に格納する。
【0055】
なお、上述の所見録構造データ410(図3参照)と、所見録情報データ313との組み合わせは、電子所見録を構成する。すなわち、情報記録部350は、ユーザにより入力された所見情報を、電子所見録に記録する。
【0056】
電子所見録記録支援装置300は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、および通信回路を有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0057】
このような電子所見録記録支援装置300は、各端末装置200において、身体部位毎に用意された部位別画面を介して、項目毎の所見情報を音声入力することを可能にする。また、電子所見録記録支援装置300は、ある端末装置200においていずれかの部位別画面が表示されている間、他の端末装置200では当該部位別画面を表示させないとともに、対応する所見情報を音声入力することができない旨を当該他の端末装置200のユーザに通知することができる。
【0058】
<装置の動作>
次に、電子所見録記録支援装置300の動作について、電子所見録の画面状態を例示しながら説明する。
【0059】
まず、入力画面制御部340は、端末装置200毎に、電子所見録の作業開始画面を生成して端末装置200に表示させる。そして、入力画面制御部340は、端末装置200毎に、所見情報の入力あるいは編集の作業の対象の設定、および、作業を行うユーザの設定を受け付ける。
【0060】
図7は、電子所見録の作業開始画面の一例を示す図である。
【0061】
図7に示すように、作業開始画面510は、所見録選択領域511およびユーザ選択領域512を有する。所見録選択領域511は、既存の所見録情報データの一覧を表示し、作業開始の対象となる所見録情報データの選択操作、あるいは、新規の所見録情報データの作成開始の操作を、ユーザから受け付ける。ユーザ選択領域512は、ユーザ名の一覧を表示し、作業を開始するユーザのユーザ名の選択操作、あるいは、新規のユーザ名の登録の操作を、ユーザから受け付ける。
【0062】
例えば、第1のユーザ130は、第1の端末装置200に表示された作業開始画面510において、所見録情報データ「000019」およびユーザ名「TARO」を選択する。また、第2のユーザ130は、第2の端末装置200に表示された作業開始画面510において、所見録情報データ「000019」およびユーザ名「HANAKO」を選択する。
【0063】
電子所見録記録支援装置300は、作業開始画面510において所見録情報データおよびユーザ名が選択される毎に、以下に説明する動作を端末装置200毎に行う。
【0064】
図8は、電子所見録記録支援装置300の動作の一例を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS1010において、入力画面制御部340は、選択された所見録情報データの所見録入力画面を生成して、選択が行われた端末装置200に表示させる。このとき、入力画面制御部340は、選択が行われた端末装置200に対して、選択されたユーザ名を登録するとともに、選択モードを設定する。これらの登録および設定は、端末状態管理表440(図6参照)を用いて行われる。
【0066】
図9は、所見録入力画面の一例を示す図である。
【0067】
図9に示すように、所見録入力画面600は、部位選択領域610、所見入力領域(部位別画面)620、コマンド表示領域630、および音声認識操作領域640を有する。
【0068】
部位選択領域610は、複数の身体部位の部位名411(図3参照)を、複数の部位名タブ611として一覧表示する領域である。
【0069】
所見入力領域(部位別画面)620は、1つの身体部位について、当該身体部位の部位名411に対応する複数の項目名412(図3参照)を、複数の項目名ボタン621として一覧表示する領域である。また、所見入力領域620は、各項目名412に対応する入力欄タイプ413(図3参照)に応じた入力欄を、入力エリア622として、項目名ボタン621に対応付けて表示する領域である。
【0070】
なお、所見録入力画面600は、各所見入力領域620が、対応する部位名タブ611が上端に付されたシートに見えるように、描画されている。
【0071】
コマンド表示領域630は、画面モード421に応じたコマンド422(図4参照)の読みを、一覧表示する。
【0072】
音声認識操作領域640は、認識対象となる単語の登録やユーザプロファイルの編集等の、音声認識辞書311を編集する操作や、マイクロフォンのボリュームや音声認識の開始および停止等の、音声認識に関する操作を受け付ける領域である。
【0073】
入力画面制御部340は、例えば、初期状態として、基本情報についての所見入力領域620を含む所見録入力画面600を表示する。
【0074】
図8のステップS1020において、音声認識解析部330は、選択モードにある端末装置200において、表示されている部位名の音声入力があったか否かを判定する。かかる判定は、例えば、所見録構造データ410(図3参照)、発音辞書データ430(図5参照)、および端末状態管理表440(図6参照)に基づいて行われる。
【0075】
ここで、判定の対象となる部位名は、所見録入力画面600の部位選択領域610に、部位名タブ611として表示されている。したがって、ユーザは、表示された複数の部位名タブ611の中から1つを選択して読み上げるような感覚で、所望の部位名を選択し、これを端末装置200に音声入力することができる。
【0076】
音声認識解析部330は、選択モードで部位名の音声入力があった場合(S1020:YES)、処理をステップS1030へ進める。また、音声認識解析部330は、選択モードで部位名の音声入力がない場合(S1020:NO)、処理を後述のステップS1060へ進める。
【0077】
ステップS1030において、入力画面制御部340は、他の端末装置200において、音声入力された部位名についての所見入力領域620を含む所見録入力画面600が表示されているか否かを判定する。かかる判定は、例えば、端末状態管理表440(図6参照)に基づいて行われる。
【0078】
入力画面制御部340は、対応する所見録入力画面600が他の端末装置200において表示されていない場合(S1030:NO)、処理をステップS1040へ進める。また、入力画面制御部340は、対応する所見録入力画面600が他の端末装置200に表示されている場合(S1030:YES)、処理を後続のステップS1060へ進める。
【0079】
ステップS1040において、入力画面制御部340は、音声入力があった端末装置200に対して、入力された部位名に対応する項目名の一覧を含む所見録入力画面600、つまり、入力された部位名に対応する所見入力領域620を表示させる。
【0080】
図10は、「心臓」の部位名に対応する内容に切り替わったときの所見録入力画面の一例を示す図であり、図9に対応するものである。図9と対応する部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0081】
例えば、第2の端末装置200に心臓の所見入力領域620が表示されていない間に、第1の端末装置200において、選択モードであるときに「心臓」が音声入力されたとする。この場合、入力画面制御部340は、図10に示すように、第1の端末装置200に表示されている所見録入力画面600に、心臓の所見入力領域620を表示させる。
【0082】
なお、所見入力領域620は、上述の通り、部位名タブ611が付されたシートのように表示されている。このような表示形態により、所見録入力画面600は、どの身体部位(部位名)についての所見入力領域620であるかを、ユーザに示すことができる。
【0083】
また、図9および図10では、画面モードは選択モードである。したがって、いずれのコマンド表示領域630にも、選択モードのコマンド422(図4参照)の読みの一覧が表示される。
【0084】
なお、身体部位によっては、項目名ボタン621および入力エリア622が多い場合、全ての項目名ボタン621および入力エリア622を一度に表示しきれない場合もある。したがって、コマンドには、画面のスクロール操作のコマンドが含まれている。これにより、所見入力領域620は、項目名ボタン621および入力エリア622が多い場合であっても、必要な全ての項目についての項目名ボタン621および入力エリア622を一覧表示することを、実質的に可能にしている。
【0085】
図8のステップS1050において、入力画面制御部340は、他の端末装置200において、ステップS1040において表示の対象となった身体部位についての不可通知情報を表示する。
【0086】
図11は、不可通知情報が表示された所見録入力画面の一例を示す図であり、図9および図10に対応するものである。図9および図10と対応する部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0087】
例えば、第1の端末装置200には、心臓の所見入力領域620が表示されているとする(図10参照)。この場合、第2の端末装置200に表示される所見録入力画面600の「心臓」の部位名タブ611の表示形態が、他の部位名タブ611とは異なった表示形態となる。すなわち、不可通知情報は、他の部位名タブ611とは異なる部位名タブ611の表示形態である。かかる異なる表示形態としては、例えば、文字色、字体、あるいは背景色の変更を採用することができる。
【0088】
このような不可通知情報の表示が行われることにより、第2のユーザは、第1のユーザが心臓の所見情報を入力中であるため、かかる入力作業が終わるまで第2の端末装置200では心臓の所見情報を入力できないという事を、直感的に認識することができる。
【0089】
図8のステップS1060において、音声認識解析部330は、選択モードにある端末装置200において、表示されている項目名の音声入力があり、続けて、入力開始コマンドの音声入力があったか否かを判定する。かかる判定は、例えば、所見録構造データ410(図3参照)、コマンドデータ420(図4参照)、発音辞書データ430(図5参照)、および端末状態管理表440(図6参照)に基づいて行われる。
【0090】
ここで、判定の対象となる項目名は、所見録入力画面600の所見入力領域620に、項目名ボタン621として表示されている。したがって、ユーザは、表示された複数の項目名ボタン621の中から1つを選択して読み上げるような感覚で、所望の項目名を選択し、これを端末装置200に音声入力することができる。
【0091】
例えば、心臓の所見入力領域620が表示されているとする(図10参照)。この場合、「心臓摘出血液量」や「心臓摘出血液性状」等の項目名412(図3参照)および「入力開始」というコマンド422(図4参照)が、判定の対象となる。
【0092】
音声認識解析部330は、項目名および入力開始コマンドの音声入力があった場合(S1060:YES)、処理をステップS1070へ進める。また、音声認識解析部330は、項目名および入力開始コマンドの音声入力がない場合(S1060:NO)、処理を後述のステップS1080へ進める。
【0093】
ステップS1070において、入力画面制御部340は、項目名および入力開始コマンドの音声入力があった端末装置200の画面モードを、入力モードに切り替えるとともに、選択中の項目として、入力された項目を設定する。
【0094】
図12は、図10に示す所見録入力画面において「心臓摘出血液性状」に続けて「入力開始」が音声入力されたときの、所見録入力画面の変化を示す図であり、図10に対応するものである。図10と対応する部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0095】
図12に示すように、入力画面制御部340は、音声入力された「心臓摘出血液性状」に対応する項目名ボタン621に、選択中であることを示す選択通知情報を付与する。選択通知情報としては、例えば、他の項目名ボタン621とは異なる項目名ボタン621の表示形態を用いる。かかる異なる表示形態としては、ボタン枠線の線種、ボタン色、ボタン形状、文字色、あるいは字体を採用することができる。
【0096】
また、入力画面制御部340は、コマンド表示領域630に、入力モードのコマンド422(図4参照)の読みの一覧を表示させる。
【0097】
図8のステップS1080において、音声認識解析部330は、入力モードにある端末装置200において、コマンド表示領域630に表示されているコマンド以外の語句についての音声入力があったか否かを判定する。かかる判定は、例えば、コマンドデータ420(図4参照)、発音辞書データ430(図5参照)、および端末状態管理表440(図6参照)に基づいて行われる。
【0098】
音声認識解析部330は、コマンド以外の語句についての音声入力があった場合(S1080:YES)、処理をステップS1090へ進める。また、音声認識解析部330は、コマンド以外の語句についての音声入力がない場合(S1080:NO)、処理を後述のステップS1100へ進める。
【0099】
ステップS1090において、入力画面制御部340は、音声入力された語句のテキスト情報を、選択されている項目名ボタン621に対応する入力エリア622(図12参照)に表示する。また、情報記録部350は、入力された語句のテキストデータを、元の音声データとともに、選択されている項目名ボタン621に対応する項目についての所見情報として、電子所見録に記録する。すなわち、情報記録部350は、所見録情報データ313に、入力された情報を追加する。
【0100】
図13は、「全身」の部位名に対応する所見入力領域で所見情報が入力されたときの所見録入力画面の一例を示す図であり、図9図12に対応するものである。図9図12と対応する部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0101】
図13に示すように、所見入力領域620の各入力エリア622には、音声入力された所見情報が、テキスト表示される。テキスト情報は、例えば、各文節の音声認識結果が得られる毎に、リアルタイムで表示される。これにより、ユーザは、自分が発話した内容が正しく入力されているかどうかを、逐次確認しながら、音声入力の作業を行うことができる。
【0102】
なお、入力画面制御部340は、必要な所見情報の記録が全て行われた身体部位の部位名タブ611に対して、その旨を示す完了通知情報を付与してもよい。かかる完了通知情報としては、文字色、字体、あるいは背景色の変更等による、他の部位名タブ611とは異なる部位名タブ611の表示形態を採用することができる。
【0103】
すなわち、入力画面制御部340は、他のユーザが入力操作中につき音声入力が不可の身体部位、音声入力が可であり所見情報の記録が完了していない身体部位、および、音声入力が可であり所見情報の記録が未完了の身体部位のそれぞれを、識別可能に表示する。
【0104】
図8のステップS1100において、音声認識解析部330は、入力モードにある端末装置200において、入力停止コマンドの音声入力があったか否かを判定する。かかる判定は、例えば、コマンドデータ420(図4参照)、発音辞書データ430(図5参照)、および端末状態管理表440(図6参照)に基づいて行われる。
【0105】
音声認識解析部330は、入力停止コマンドの音声入力があった場合(S1100:YES)、処理をステップS1110へ進める。また、音声認識解析部330は、入力停止コマンドの音声入力がない場合(S1100:NO)、処理を後述のステップS1120へ進める。
【0106】
ステップS1110において、入力画面制御部340は、入力停止コマンドの音声入力があった端末装置200の画面モードを、選択モードに切り替える。かかる設定は、端末状態管理表440(図6参照)を用いて行われる。
【0107】
ステップS1120において、音声認識解析部330は、編集コマンド等の、選択モードにおける入力開始コマンドおよび入力モードにおける入力停止コマンド以外のコマンド(他のコマンド)の音声入力があったか否かを判定する。かかる判定は、例えば、コマンドデータ420(図4参照)、発音辞書データ430(図5参照)、および端末状態管理表440(図6参照)に基づいて行われる。
【0108】
音声認識解析部330は、他のコマンドの音声入力があった場合(S1120:YES)、処理をステップS1130へ進める。また、音声認識解析部330は、他のコマンドの音声入力がない場合(S1120:NO)、処理を後述のステップS1140へ進める。
【0109】
ステップS1130において、入力画面制御部340は、音声入力されたコマンドに応じた処理を行う。かかる処理には、例えば、画面のスクロール、項目の追加、所見情報の入力が不要である事を示す情報の入力、入力された所見情報の編集、あるいは入力された所見情報の削除等が含まれる。
【0110】
ステップS1140において、入力画面制御部340は、所見情報の音声入力処理を終了する旨の指示があったか否かを判定する。かかる指示は、例えば、ユーザによる終了ボタンの押下等により行われる。
【0111】
入力画面制御部340は、処理の終了を指示されていない場合(S1140:NO)、処理をステップS1020へ戻す。また、入力画面制御部340は、処理の終了を指示された場合(S1140:YES)、一連の処理を終了する。
【0112】
このような動作により、電子所見録記録支援装置300は、端末装置200毎に、それぞれの表示状態および操作経過に応じて、情報やコマンドの音声入力を受け付けるとともに、身体部位毎の排他的な音声入力インタフェースを、ユーザにとって使いやすい形で実現することができる。
【0113】
他の端末装置200において入力作業中の身体部位の部位名について、不可通知情報を表示せずに音声入力を受け付けないようにした場合、ユーザは、その理由を即座に特定することができず、困惑する可能性がある。
【0114】
この点、電子所見録記録支援装置300は、不可通知情報を表示し、かつ、他の端末装置200において入力作業中の身体部位については、対応する部位選択領域610を表示させない。この場合、ユーザは、部位名や項目名の無駄な発話を行う前に、入力操作の排他制御が働いているということを認識することができる。
【0115】
これにより、各ユーザは、他のユーザが入力作業中の身体部位以外の、他の身体部位の部位名を速やかに選択して、作業を進めることができる。すなわち、電子所見録記録支援装置300は、複数のユーザが複数の身体部位に関する所見情報を音声によって電子所見録に記録する作業を、適切に支援することができる。
【0116】
図14は、情報記録部350により生成される所見録情報データ313の内容の一例を示す図である。ここでは、所見録情報データ313が、XML(eXtensible Markup Language)で記述されており、所見録構造データ410(図3参照)および発音辞書データ430(図5参照)を含んでいる場合の例を示す。
【0117】
図14に示すように、所見録情報データ313は、「spoken」という属性により、項目名の読みを記述し、「label」という属性により、項目名の所見録入力画面における表記を記述している。また、所見録情報データ313は、「data」とう属性により、入力された所見情報のテキスト情報を記述し、「initial」という属性により、所見情報の初期状態を記述する。更に、所見録情報データ313は、「type」とう属性により、入力欄タイプを記述し、「voicefile」という属性により、入力および記録された音声データのデータ名を記述する。なお、所見録情報データ313は、入力欄タイプが選択肢である場合、各選択肢の「spoken」および「label」という属性についての記述を含むともに、「select」という属性により、どの選択肢が選択されたか(つまり所見情報)を記述する。
【0118】
例えば、情報記録部350は、新規の対象について電子所見録を生成する場合、「data」、「voicefile」、および「select」の属性に値を記述しない状態で、所見録情報データ313を生成する。そして、情報記録部350は、所見情報が入力される毎に、所見情報の音声データ、テキスト情報、およびどの選択肢が選択されたかを示す情報を、情報記録部350の対応する箇所に追記していく。
【0119】
このような所見録情報データ313が生成されることにより、所見情報を電子所見録に反映させるだけでなく、元の音声データを音声出力して、音声入力が的確に行われたか否かを後から確認することも可能となる。
【0120】
例えば、入力画面制御部340は、音声入力だけでなく、キーボードやマウスといった手入力インタフェースによる所見情報の入力や編集の操作についても、ユーザから受け付ける。そして、入力画面制御部340は、表示されている項目名ボタン621に対して、クリック操作等の所定の操作が行われたとき、対応する音声データを所見録情報データ313に基づいて取得し、ラウドスピーカを介して音声出力する。
【0121】
これにより、所見情報を音声入力したユーザ、あるいは、電子所見録の情報を管理するオペレータは、実際の発話音声を確認して、適宜、記録された所見情報を編集することができる。
【0122】
なお、情報記録部350は、ユーザから所定の操作を受け付け、かかる所定の操作に応じて、所見録情報データ313の内容を文書データ化して剖検記録を作成し、表示や印刷を行ってもよい。
【0123】
図15は、剖検記録の一例を示す図である。
【0124】
図15に示すように、剖検記録710は、部位名毎に項目名を記述し、更に、各項目名に対応付けて、記録された所見情報を記述する。かかる剖検記録710は、例えば、鑑定書の剖検記録部として使用することができる。
【0125】
法医解剖における剖検所見は、ユーザに対して、その剖検所見が人体のどの身体部位についてのことなのかを視覚的にわかりやすい形式で提示することが望ましい。そこで、剖検所見の中に、当該剖検所見に対応する身体部位を識別する識別情報(例えば、番号)を含めておき、人体図を表示し、その人体図における当該身体部位の位置に当該識別情報を表示することが考えられる。従来、ユーザは、剖検所見において身体部位を識別する識別情報を手入力し、人体図において当該剖検所見に対応する身体部位の位置を特定し、特定した位置に識別情報を手入力している。この場合、識別情報の入力作業は繁雑であるとともに、剖検所見と人体図との間で異なる識別情報が誤って入力される可能性もあるという問題があった。
【0126】
そこで本実施の形態では、所見録入力画面において、ある身体部位について所見情報が音声入力され、その所見情報に、当該身体部位を示す身体部位情報と当該身体部位を識別する識別情報とが含まれている場合、電子所見録記録支援装置300は、身体部位情報に基づいて人体図における当該身体部位の位置を特定し、特定した位置に識別情報を表示させる処理を行う。これにより、ユーザは、身体部位情報および識別情報を含む所見情報を発話する(すなわち、電子所見録記録支援装置300に音声認識させる)だけで、剖検所見および人体図の両方に対して同じ識別情報を入力させることが可能となる。よって、識別情報の入力作業は繁雑であるとともに、剖検所見と人体図との間で異なる識別情報が誤って入力される可能性もあるという従来の問題を解消することができる。
【0127】
以下、図16,17を参照し、所見情報に含まれる身体部位情報に基づいて人体図における身体部位の位置を特定し、特定した位置に識別情報を表示させる具体的な処理について説明する。
【0128】
図16は、人体図を含む所見録入力画面の一例を示す図である。図16に示すように、所見録入力画面600が有する所見入力領域(部位別画面)620は、1つの身体部位(図16に示す例では、「損傷頸部以上」)について、当該身体部位の部位名411に対応する複数の項目名412(図16に示す例では、「損傷01」、「損傷02」)を、複数の項目名ボタン621a,621bとして一覧表示する領域である。また、所見入力領域620は、各項目名412に対応する入力欄タイプ413(図3参照)に応じた入力欄を、入力エリア622a,622bとして、項目名ボタン621a,621bに対応付けて表示する領域である。
【0129】
また、所見入力領域620は、入力エリア622a,622bの右方において、1つの身体部位(図16に示す例では、「損傷頸部以上」)に関連する人体を模式的に表す人体図800を表示する。人体図800において、左方には人体の右側面図が表示され、右方には人体の左側面図が表示されている。なお、所見入力領域620に表示可能な人体図として例えば4種類の人体図が用意されており、その4種類の人体図の中から、所見録入力画面600の表示中に音声入力によって選択された身体部位に関連する人体図が表示される。
【0130】
人体図800は、情報格納部310に格納される人体図情報314に含まれる。図17は、人体図情報314の内容の一例を示す図である。図17に示すように、人体図情報314は、人体図(図示せず)と、身体部位(部位名)を示す身体部位情報と、身体部位の読み方を示す読み方情報と、当該人体図における身体部位の位置(X位置、Y位置)を示す位置情報と、身体部位を例えば番号やアルファベット等で識別する識別情報とを対応付けて含む。ここで、X位置は、図16の人体図800の左右方向における身体部位の位置を示す。また、Y位置は、図16の人体図800の上下方向における身体部位の位置を示す。
【0131】
例えば、身体部位(部位名)が「左側頸部」である場合、人体図情報314を参照することにより、人体図800における「左側頸部」のX位置は307であり、「左側頸部」のY位置は67であることを特定することができる。また、身体部位(部位名)が「胸骨部」である場合、人体図800における「胸骨部」のX位置は372であり、「胸骨部」のY位置は92であることを特定することができる。
【0132】
図16に示す所見録入力画面600において、表示されている項目名(例えば、「損傷01」)に続いて入力開始コマンドの音声入力があった後、入力画面制御部340は、音声入力された語句のテキスト情報(所見情報、例えば「13番の鼻根部に損傷を認める。」)を、選択されている項目名ボタン621aに対応する入力エリア622aに表示する。
【0133】
また、入力画面制御部340は、音声入力された所見情報の中から、身体部位を示す身体部位情報(例えば、「鼻根部」)と、当該身体部位を識別する識別情報(例えば、13)とを取得する。
【0134】
なお、入力画面制御部340は、音声入力された所見情報が「13番の鼻根部に損傷を認める。」ではなく、「13番鼻根部に損傷を認める。」、「鼻根部の13番に損傷を認める。」、「鼻根部13番に損傷を認める。」または「鼻根部13番左耳介に損傷を認める。」といった異なる表現で示されても、当該所見情報の中から、身体部位を示す身体部位情報(例えば、「鼻根部」)と、当該身体部位を識別する識別情報(例えば、13)とを取得する。音声入力された所見情報が「鼻根部13番左耳介に損傷を認める。」である場合、すなわち2つの身体部位情報(例えば、「鼻根部」、「左耳介」)の間に識別情報が挟まれている場合には、入力画面制御部340は、先に音声入力された「鼻根部」を身体部位情報として取得する。
【0135】
次に、入力画面制御部340は、取得された身体部位情報(「鼻根部」)と、情報格納部310に格納される人体図情報314とに基づいて、人体図800における身体部位の位置(符号810により示される位置)を特定する。そして、入力画面制御部340は、人体図800において、特定された身体部位の位置に識別情報(「13」)を表示させる。
【0136】
最後に、情報記録部350は、情報格納部310に格納される人体図情報314において、人体図800と、身体部位情報(「鼻根部」)と、読み方情報と、位置情報と、所見情報の音声入力を介して取得された識別情報(「13」)とを対応付けて記憶させる。これにより、所見録入力画面600において人体図800を再表示する場合、入力画面制御部340は、人体図情報314において識別情報が存在する身体部位について、人体図800における当該身体部位の位置に当該識別情報を表示させることができる。
【0137】
また、図16に示す所見録入力画面600において、表示されている項目名(例えば、「損傷02」)に続いて入力開始コマンドの音声入力があった後、入力画面制御部340は、音声入力された語句のテキスト情報(所見情報、例えば「5番の左耳介に出血を認める。」)を、選択されている項目名ボタン621bに対応する入力エリア622bに表示する。
【0138】
また、入力画面制御部340は、音声入力された所見情報の中から、身体部位を示す身体部位情報(例えば、「左耳介」)と、当該身体部位を識別する識別情報(例えば、5)とを取得する。
【0139】
なお、入力画面制御部340は、音声入力された所見情報が「5番の左耳介に出血を認める。」ではなく、「5番左耳介に出血を認める。」、「5番の左耳介に出血を認める。」、「左耳介5番に出血を認める。」または「左耳介5番鼻根部に出血を認める。」といった異なる表現で示されても、当該所見情報の中から、身体部位を示す身体部位情報(例えば、「左耳介」)と、当該身体部位を識別する識別情報(例えば、5)とを取得する。音声入力された所見情報が「左耳介5番鼻根部に出血を認める。」である場合、すなわち2つの身体部位情報(例えば、「左耳介」、「鼻根部」)の間に識別情報が挟まれている場合には、入力画面制御部340は、先に音声入力された「左耳介」を身体部位情報として取得する。
【0140】
次に、入力画面制御部340は、取得された身体部位情報(「左耳介」)と、情報格納部310に格納される人体図情報314とに基づいて、人体図800における身体部位の位置(符号820により示される位置)を特定する。そして、入力画面制御部340は、人体図800において、特定された身体部位の位置に識別情報(「5」)を表示させる。
【0141】
最後に、情報記録部350は、情報格納部310に格納される人体図情報314において、人体図800と、身体部位情報(「左耳介」)と、読み方情報と、位置情報と、所見情報の音声入力を介して取得された識別情報(「5」)とを対応付けて記憶させる。これにより、所見録入力画面600において人体図800を再表示する場合、入力画面制御部340は、人体図情報314において識別情報が存在する身体部位について、人体図800における当該身体部位の位置に当該識別情報を表示させることができる。
【0142】
なお、入力画面制御部340は、音声入力された所見情報の中から、身体部位を示す身体部位情報と、当該身体部位を識別する識別情報とを取得する例について説明したが、身体部位情報および識別情報の取得方法はこれに限らない。例えば、所見録入力画面600において人体図800が表示されている場合、人体図800を選択する人体図選択コメントに続いて身体部位情報(例えば、「前頭部左側外側」)および識別情報(「4」)の音声入力があった場合、入力画面制御部340は、音声入力された身体部位情報と識別情報とを取得する。そして、入力画面制御部340は、取得された身体部位情報と、情報格納部310に格納される人体図情報314とに基づいて、人体図800における身体部位(「前頭部左側外側」)の位置(符号830により示される位置)を特定する。そして、入力画面制御部340は、人体図800において、特定された身体部位の位置に丸い円で示されるカーソルを表示し、そのカーソル内に識別情報(「4」)を表示させる。これにより、ユーザは、人体図800に表示される識別情報がカーソル内に表示されているか否かを確認することによって、当該識別情報が所見情報に含めて音声入力されたものか否かを容易に把握することができる。
【0143】
<本実施の形態の効果>
以上のように、本実施の形態に係る電子所見録記録支援装置300は、複数の端末装置200のそれぞれにおいて、身体部位毎に用意された部位別画面を介して、項目毎の所見情報を音声入力する。また、電子所見録記録支援装置300は、ある端末装置200においていずれかの部位別画面が表示されている間、他の端末装置200では当該部位別画面を表示させないともに、対応する所見情報を音声入力することができない旨を当該他の端末装置200のユーザに通知する。
【0144】
これにより、電子所見録記録支援装置300は、手入力インタフェースを使用することが困難であり、かつ、複数のユーザが複数の身体部位についての所見情報を同時に入力することが必要なケースであっても、所見情報の電子所見録への記録作業を支援することができる。すなわち、電子所見録記録支援装置300は、例えば、剖検所見の電子所見録への記録作業を支援することができる。
【0145】
<本実施の形態の変形例>
なお、以上説明した実施の形態では、電子所見録記録支援装置300を、法医解剖における剖検所見を記録するためのシステムに適用した場合について説明したが、これに限定されない。電子所見録記録支援装置300は、例えば、救急救命用の電子カルテ等、複数のユーザが複数の身体部位についての所見情報を同時に入力することを受け付ける各種システムに適用することができる。
【0146】
また、部位名、項目名、およびコマンドは、上述の例に限定されない。更に、項目名おおよびコマンドに関する処理は、項目名毎に細分化された所見情報の記録が不要であるような場合には、必ずしも必要でない。
【0147】
また、身体部位の単位は、上述の例に限定されない。身体部位は、一人のユーザが所見情報を記録する際に一時に着目する一まとまりの情報の範囲であればよく、更に、電子所見録の目的に応じて変化し得る。
【0148】
また、所見録入力画面600(図9図13参照)における各情報の配置および表示形態は、上述の例に限定されない。入力画面制御部340は、例えば、部位選択領域610を、所見入力領域620の左側、下側、あるいは右側に配置してもよい。
【0149】
また、所見録情報データのデータ形式は、上述の例に限定されない。所見録情報データは、RTF(Rich Text Format)形式、TEX形式、plain text形式等の他のデータ形式であってもよい。
【0150】
また、端末接続部320は、ヘッドセット220および表示装置230のそれぞれと、個別に通信を行ってもよい。この場合、電子所見録記録支援装置300は、例えば入力画面制御部340において、ヘッドセット220と表示装置230との対応付けを設定する必要がある。
【0151】
また、端末装置200の構成は、上述の例に限定されない。端末装置200は、例えば、マイクロフォンおよび液晶ディスプレイを備えたパーソナルコンピュータであってもよい。
【0152】
また、電子所見録記録支援装置300が接続する端末装置200の個数は、3個以上であってもよい。この場合、入力画面制御部340は、いずれかの端末装置の200においていずれかの部位別画面が表示されている間、他の全ての端末装置200に表示されている対応する部位名に、不可通知情報を付与する。また、入力画面制御部340は、いずれかの端末装置の200においていずれかの部位別画面が表示されている間、対応する部位別画面を、他の全ての端末装置200において表示させない。
【0153】
また、電子所見録記録支援装置300の構成の一部は、ネットワーク上のサーバ等に配置される等して、電子所見録記録支援装置300の構成の他の部分と離隔していてもよい。この場合、これら部分のそれぞれは、互いに通信を行うための通信部を備える必要がある。
【0154】
また、電子所見録記録支援装置300の構成の一部または全部は、いずれかの端末装置200と一体的に構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、剖検所見の電子所見録への記録作業を支援することができる電子所見録記録支援装置および電子所見録記録支援方法として有用である。
【符号の説明】
【0156】
100 電子所見録システム
200 端末装置
210 端末制御装置
220 ヘッドセット
230 表示装置
300 電子所見録記録支援装置
310 情報格納部
311 音声認識辞書
312 所見録構成情報
313 所見録情報データ
314 人体図情報
320 端末接続部
330 音声認識解析部
340 入力画面制御部
350 情報記録部
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