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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】可動型仕切り壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20240513BHJP
   E05D 15/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
E04B2/74 561C
E05D15/00 A
E04B2/74 541N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020157132
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050934
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502318375
【氏名又は名称】株式会社トータルメディア開発研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000102474
【氏名又は名称】エスイー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】宮本 育美
(72)【発明者】
【氏名】会津 寿美子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 重一郎
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-520497(JP,A)
【文献】特開2003-172067(JP,A)
【文献】特開平11-299597(JP,A)
【文献】特開2012-112117(JP,A)
【文献】特開2006-030832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72 - 2/82
E05D 15/00 -15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に敷設されたハンガーレールに沿って移動させることを可能とする可動型の仕切り壁であって、
主面を対向させた状態で離間して配置され、外周に枠部を備えることで壁面本体を構成する一対のメインボードと、
一対の前記メインボードの一方、あるいは双方の対向位置に開口部を設ける事により、前記壁面本体の内部に構成される展示空間と、
前記メインボードに設けられた開口部を閉塞する透光性板部材と、
前記メインボードの外側主面に設けられ、前記メインボードの幅方向に沿ってスライド可能に配置されるカバーボードと、を備え、
前記カバーボードは、少なくとも前記開口部の幅方向長さよりも長い幅寸法を有しており、
前記壁面本体を構成する前記枠部のうちの上枠部にはフック付きライナを備えたピクチャーレールが配置されており、
前記上枠部は、前記メインボードの上端位置よりも低い位置に設けられ、
前記ピクチャーレールは、レール開口部を上側に向けて配置され、
前記フック付きライナは、フック部が前記メインボードの外側に位置するように配置されていることを特徴とする可動型仕切り壁。
【請求項2】
前記カバーボードの高さは、前記メインボードの高さに近似し、
前記壁面本体の上部に備えられた吊り金具と、前記壁面本体の下部に備えられた受け部保持金具とを介して支持されており、
前記展示空間は奥行き方向に沿って、上面と下面、及び側面を構成する展示空間枠部を有し、
前記上面を構成する展示空間枠部にはピクチャーレールが備えられており、
前記下面を構成する展示空間枠部には展示台が配置されており、
前記枠部のうちの下枠部には、前記壁面本体の厚み方向中心部にストッパが備えられ、
前記壁面本体と床面との間の距離dを前記壁面本体の厚みWを基準として1/5以下としたことを特徴とする請求項1に記載の可動型仕切り壁。
【請求項3】
前記メインボードと、前記枠部のうちの側枠部、及び底枠部には、化粧クロスを貼っていることを特徴とする請求項1または2に記載の可動型仕切り壁。
【請求項4】
前記カバーボードの表裏面に、前記化粧クロスを貼っていることを特徴とする請求項に記載の可動型仕切り壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を仕切るための仕切り壁に係り、特に建物の室内空間や、内外空間を仕切るための可動型の仕切り壁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や2に開示されているように、可動型の仕切り壁は、建物の天井に敷設されたハンガーレールに沿って移動させることを可能とする吊下型の壁とされている場合が多い。このよう構成の可動型の仕切り壁では、移動先においてストッパを床面に押し当てる事で位置決めが成される。
【0003】
こうした可動型の仕切り壁は、比較的大きな空間を所望する広さの空間毎に分けるのに好適とされており、不使用時における収納性についても考慮されている場合が多い。しかし、このような使用形態の仕切り壁は、外観が比較的簡素なものが多く、構成される空間が無味乾燥となりがちである。
【0004】
これに対し、特許文献3には、後付け可能な仕切り壁にアクセントを設ける工夫が開示されている。具体的には、仕切り壁を一対の透明パネルを用いて構成し、対を成す透明パネルの間に形成される空間に展示物を配置するというものである。このような構成の仕切り壁であれば、空間に合わせて仕切り壁のイメージを変える事が容易となり、仕切り壁を単なる壁でなく、空間作りのための手段として利用しやすくなると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-132284号公報
【文献】特開2006-22542号公報
【文献】特許第5133003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に開示されているような仕切り壁の構造を、特許文献1、2に開示されているような可動型の仕切り壁に適用すれば、仕切られる空間には個性を出す事が可能となると考えられる。
【0007】
しかし、壁面全面を透明パネルとする仕切り壁は、この透明パネルをガラスとする場合には、全体の重量が嵩むため、頻繁に移動させるような可動壁の仕切り壁には不向きであると共に、移動時の接触による破損など、安全性に支障が出る場合がある。目隠しといった意味での間仕切りとして利用した場合には、その意味を成さなくなってしまう。
【0008】
そこで本発明では、単なる間仕切りとしてだけでなく、自在に動く展示ケースとしての利用も可能とし、かつ目隠しとして利用することもできる可動型仕切り壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成することのできる本発明に係る可動型仕切り壁は、天井に敷設されたハンガーレールに沿って移動させることを可能とする可動型の仕切り壁であって、主面を対向させた状態で離間して配置され、外周に枠部を備えることで壁面本体を構成する一対のメインボードと、一対の前記メインボードの一方、あるいは双方の対向位置に開口部を設ける事により、前記壁面本体の内部に構成される展示空間と、前記メインボードに設けられた開口部を閉塞する透光性板部材と、前記メインボードの外側主面に設けられ、前記メインボードの幅方向に沿ってスライド可能に配置されるカバーボードと、を備え、前記カバーボードは、少なくとも前記開口部の幅方向長さよりも長い幅寸法を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有する可動型仕切り壁において、前記カバーボードの高さは、前記メインボードの高さに近似し、前記壁面本体の上部に備えられた吊り金具と、前記壁面本体の下部に備えられた受け部保持金具とを介して支持されていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、カバーボードにより開口部を覆った際、1つの壁面としての一体感を奏することができる。また、カバーボードの高さをメインボードの高さに近似させることにより、吊り金具や受け部保持金具の露出を少なくすることができる。
【0011】
また、上記のような特徴を有する可動型仕切り壁において前記展示空間は奥行き方向に沿って、上面と下面、及び側面を構成する展示空間枠部を有し、前記上面を構成する展示空間枠部にはピクチャーレールが備えられていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、展示空間の内部にランナやワイヤを介して展示物を吊下することが可能となる。
【0012】
また、上記のような特徴を有する可動型仕切り壁において前記展示空間は奥行き方向に沿って、上面と下面、及び側面を構成する展示空間枠部を有し、前記下面を構成する展示空間枠部には展示台が配置されていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、展示空間に配置する展示物の支持高さを容易に変えることが可能となる。
【0013】
また、上記のような特徴を有する可動型仕切り壁では、前記壁面本体を構成する前記枠部のうちの上枠部にはフック付きラナを備えたピクチャーレールが配置されており、前記上枠部は、前記メインボードの上端位置よりも低い位置に設けられ、前記ピクチャーレールは、レール開口部を上側に向けて配置され、前記フック付きラナは、フック部が前記メインボードの外側に位置するように配置されていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、メインボードの外側主面側から壁面本体を見る鑑賞者には、ピクチャーレールが視界に入る事が無い。
【0014】
また、上記のような特徴を有する可動型仕切り壁では、前記メインボードと、前記枠部のうちの側枠部、及び底枠部には、化粧クロスを貼っていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、可動型仕切り壁を空間に合わせて構成することができる。
【0015】
また、上記のような特徴を有する可動型仕切り壁では、前記カバーボードの表裏面に、前記化粧クロスを貼っていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、壁面本体とカバーボードとの統一感を奏することができる。また、片方のカバーボードのみが展示空間を覆った際には、カバーボードの裏面を展示空間の背景とすることができる。
【0016】
さらに、上記のような特徴を有する可動型仕切り壁では、前記枠部のうちの下枠部には、前記壁面本体の厚み方向中心部にストッパが備えられ、前記壁面本体と床面との間の距離dを前記壁面本体の厚みWを基準として1/5以下としたことを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、ストッパを床面に押し付けた場合であっても、鑑賞者の視点からストッパが視界に入る事が無くなる。
【発明の効果】
【0017】
上記のような特徴を有する可動型仕切り壁によれば、単なる間仕切りとしてだけでなく、自在に動く展示ケースとしての利用も可能となる。さらに、カバーボードにより展示空間を覆うことで、目隠しとして利用することもできる
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る可動型仕切り壁の概略構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る可動型仕切り壁の展示空間部分の断面構造を示す概略図である。
図3】吊り構造部におけるピクチャーレールの構造を説明するための部分拡大図である。
図4】吊り構造部におけるカバーボード吊りレールの構造を説明するための部分拡大図である。
図5】位置決め構造部の構成を説明するための部分拡大図である。
図6】実施形態に係る可動型仕切り壁の表面に化粧クロスを貼る場合の例を示す斜視図である。
図7】一方のメインボードのみに開口部を設ける場合の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の可動型仕切り壁に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、図1から図6を参照して、本発明の可動型仕切り壁の基本的な形態について説明する。ここで、図面において、図1は、実施形態に係る可動型仕切り壁の概略構成(化粧クロス無し)を示す斜視図であり、図2は、実施形態に係る可動型仕切り壁における展示空間部分の断面構成を示す概略図である。また、図3は、壁面本体の上部に配置されたピクチャーレールの構成を説明するための部分拡大図であり、図4は、同カバーボード吊りレールの構成を説明するための部分拡大図であり、図5は、位置決め構造部の構成を説明するための部分拡大図である。さらに、図6は、実施形態に係る可動型仕切り壁に化粧クロスを貼付する場合の例を示す斜視図である。
【0020】
なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の一部であり、その効果を奏する限りにおいて、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0021】
[構成]
本実施形態に係る可動型仕切り壁(以下、単に仕切り壁10と称す)は、壁面本体12と、カバーボード24を基本として構成されている。壁面本体12は、建物の天井(不図示)に敷設されたハンガーレール30に沿って移動させることを可能とする壁面であり、メインボード14とサイドボード16、吊り構造部18、位置決め構造部20、及び展示空間22を有する。
【0022】
メインボード14は、壁面本体12の主面を構成する板部材である。本実施形態では、壁面本体12における一方の主面と他方の主面にそれぞれメインボードを備える構成としている。図1図2に示す形態では、一対のメインボード14の主面の対応する位置に、詳細を後述する展示空間22を形成するための開口部14aが設けられている。なお、開口部14aの形状や大きさ、位置については、特に限定するものでは無い。
【0023】
また、壁面本体12における一方の主面を構成するメインボード14と、他方の主面を構成するメインボード14は、それぞれ離間して配置され、一対のメインボード14の側端面(幅方向における端面)を覆うように、サイドボード16が配置されている。
【0024】
サイドボード16(側枠部)は、上述したように、一対のメインボード12の側端面を覆うように配置されることで、壁面本体12の側面を構成することとなる要素である。実施形態に係るサイドボード16には、外側面にスリット16aが設けられている。スリット16aは、詳細を後述する化粧クロス26の端部を巻き込むための要素であり、図1に示す例では、サイドボード16の高さ方向に沿うように、全長に亘って設けられている。
【0025】
吊り構造部18(上枠部)は、壁面本体12の上端側に位置し、天井に敷設されたハンガーレール30との係合を図るための要素である。吊り構造部18は、一対のメインボード14の間に、設けられている。図2に示す形態に係る壁面本体12の場合、吊り構造部18には、メインレール18aと、カバーボード吊りレール18b、及びピクチャーレール18cが備えられている。メインレール18aは、ハンガーレール30と係合するランナ32が摺動するレールであり、壁面本体12を吊下するための基礎となる要素である。メインレール18aは、一対のメインボード14間に配置された吊り構造ベース18dに固定されると共に、メインボード14の幅方向に沿って配置されている。
【0026】
カバーボード吊りレール18bは、カバーボード24の上部に係合する吊り金具18b1を摺動させるためのレールである。カバーボード吊りレール18bは、メインレール18aに付帯されたサポート18eに固定され、メインレール18aの配置方向、すなわちメインボード14の幅方向に沿って配置されている。カバーボード吊りレール18bは、メインボード14の裏側であって、その上端位置がメインボード14の上端位置と同等、あるいはメインボード14の上端位置よりも低い位置となるように配置する構成としている。このため、カバーボード吊りレール18bは、レール面が上側を向くように配置されている。また、このように配置構成されているカバーボード吊りレール18bは、メインボード14の主面側に立つ人(例えば展示品等の鑑賞者)から視認する事ができなくなる。
【0027】
ピクチャーレール18cは、メインボード14に展示品等を吊下するためのワイヤ等を係合するフック付きライナ18c1を摺動させるためのレールである。ピクチャーレール18cも、カバーボード吊りレール18bと同様に、メインレール18aに付帯されたサポート18eに固定され、メインレール18aの配置方向に沿って配置されている。また、カバーボード吊りレール18bと同様にピクチャーレール18cも、メインボード14の裏側に配置されている。そして、その配置高さは、ピクチャーレール18cの上端位置が、メインボード14の上端位置と同等の位置となるような配置としている。このため、本実施形態に係るピクチャーレール18cは、レール面が上側を向くように配置され、フック付きライナ18c1は、フック部分がメインボード14の表面側に突出するように、横向きに配置されている。このため、ピクチャーレール18cも、カバーボード吊りレール18bと同様に、メインボード14の主面側に立つ人から視認する事ができなくない。つまり、本実施形態に係る仕切り壁10では、吊り構造部18を構成するレールや金具類が、メインボード14の主面側に立つ人の目に触れにくい配置構成とされている。
【0028】
位置決め構造部20(底枠部)は、壁面本体12の下端側に位置し、床面40に対してストッパ20aを押し当て、壁面本体12の位置決めを成すための要素である。位置決め構造部20は、ストッパ20aと、カバーボード受け部20bが備えられている。ストッパ20aは、メインボード14の幅方向に沿って少なくとも1箇所備えられ、一対のメインボード14の間に配置された位置決め構造ベース20cに固定されている。ストッパ20aは、ストッパベース20a1と、このストッパベース20a1の開口方向に沿って上下可能なストッパ本体20a2とを有する。ストッパ本体20a2は、図5に示すように、ストッパ本体20a2をストッパベース20a1側に引き上げた“解除状態”と、ストッパ本体20aを床面40に押し当てた“ロック状態”との切換えを行う事ができるように構成されている。
【0029】
カバーボード受け部20bは、カバーボード24の下端部を支持すると共に、カバーボード24の摺動を補助する役割を担う要素である。カバーボード受け部20bは、カバーボード受けレール20b1と、受け部保持金具20b2とを有する。カバーボード受けレール20b1は、ストッパ20aを基点として、メインボード14との間に対を成すように配置されたレールベース20dに備えられている。また、カバーボード受けレール20b1は、カバーボード吊りレール18bと同様に、メインボード14の幅方向に沿うように設けられている。
【0030】
受け部保持金具20b2は、カバーボード24の下端部と、カバーボード受けレール20b1との間に配置される保持部材である。受け部保持金具20b2の一端には、カバーボード受けレール20b1に転接するコロ20b3が設けられ、受け部保持金具20b2の他端には、カバーボード24の下端部が固定されている。このような構成とすることで、カバーボード24をメインボード14の幅方向に沿って移動させる際、カバーボード24の下端部が厚み方向に揺動し、メインボード14と接触してしまう事を防ぐと共に、カバーボード24をスムーズに移動させることが可能となる。
【0031】
展示空間22は、鑑賞のための展示物などを配置するための要素であり、メインボード14に形成された開口部14aを基にして構成される。展示空間22は、枠部22aと、透光性板部材22bを基本として構成されている。枠部22aは、開口部14aの縁に沿って設けられる部材であり、展示空間22の上面と下面、及び側面を構成する。枠部22aの材質等は限定するものでは無く、一対のメインボード14の間に掛け渡すように配置可能であれば良い。
【0032】
透光性板部材22bは、展示空間22を閉塞しつつ、展示空間22の内部に配置された展示物を外部から視認可能とするための要素である。透光性板部材22bは、ガラスやアクリル、ポリカーボネートなどにより構成すれば良く、必ずしも無色透明である必要は無い。また、透光性板部材22bは、メインボード14の開口部14aに配置した枠部22aに嵌め込むように配置すれば足りるが、少なくとも1つの透光性板部材22bは、開閉可能な構造とすると良い。展示空間22に対する展示物の出し入れが容易となるからである。
【0033】
本実施形態では、一対のメインボード14のそれぞれ設けた開口部14aのうち、図2における左側の開口部14aに配置した透光性板部材22bを扉状に開閉可能な構成としている。なお、図2中に二点鎖線で示す状態が、透光性板部材22bを開放した状態である。また、透光性板部材22bを扉状に開閉可能とするための構成については特に限定するものではなく、枠部22aに対して一般的なサッシ(窓枠)や開閉ジョイントを配置し、ここに透光性板部材22bを配置するように構成すれば良い。
【0034】
また、本実施形態に係る展示空間22には、上面にピクチャーレール22cを配置し、図示しないランナやワイヤを介して展示物を吊下することを可能な構成としている。さらに、本実施形態係る展示空間22では下面に、必要に応じて展示台22dを配置するようにしている。展示台22dを配置する事により、展示物の展示高さの調整を容易に行う事が可能となるからである。
【0035】
カバーボード24は、壁面本体12の主面に配置され、メインボード14の幅方向(図1に矢印Aで示す方向)への摺動を可能とすると共に、必要に応じて開口部14a、すなわち展示空間22を覆い、目隠しの役割を担う要素である。本実施形態に係るカバーボード24は、一対の板片24aを有し、当該板片の縁辺にスペーサ24bを配置して構成されている。そして、吊り構造部18の吊り金具18b1や、位置決め構造部20の受け部保持金具20b2は、このスペーサ24bを介してカバーボード24に固定されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、吊り金具18b1は、スペーサ24b裏側(メインボード14側に配置されている板片24aとスペーサ24bの間)に固定するように構成されている。このような配置構成とすることで、メインボード14の主面側に立つ人の目に触れにくくすることができるからである。
【0037】
本実施形態に係る仕切り壁10は、その表面に化粧クロス26を貼付するようにしている。化粧クロス26を貼付することにより、展示物を展示する空間や、用途に合わせた空間に、仕切り壁10の雰囲気を調和させることが可能となるからである。
【0038】
化粧クロス26は、主にメインボード14とサイドボード16、及びカバーボード24に貼付されている。また、本実施形態では、サイドボード16に貼付する化粧クロスの端部をスリット16aに押し込み、いわゆる巻き込み状態となるようにして端部処理を行っている。このような構成とすることで、化粧クロス26の端面が壁面本体の表面(サイドボード16の表面)に現れる事が無くなり、美観を向上させることができる。さらに、クロスを布製とした場合には、端部のほつれを防ぐことができる。
【0039】
また、壁面本体12の下端部に貼付される化粧クロス26は、位置決め構造部20側に巻き込むように貼付するようにしている(不図示)。このような構成とすることで、壁面本体12の下端部で化粧クロス26が浮き上がる事が無くなり、美観を長時間維持することが可能となるからである。
【0040】
また、カバーボード24に対しては、表面だけでなく裏面にも、化粧クロス26を貼るようにすることが望ましい。カバーボード24は、メインボード14の幅方向にスライドさせ、展示空間22を覆うことができる。ここで、壁面本体12の一方の面に配置されているカバーボード24のみが展示空間22を覆うように移動された場合、壁面本体12の他方の面からは、展示空間22を視認することが可能な状態が維持される。このような場合、カバーボード24の裏面側に化粧クロス26が貼られていることで、カバーボード24は、展示空間22の背景として化粧クロス26を視認させることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態に係る仕切り壁10は、一般的な吊り型の仕切り壁に比べて、床面40と位置決め構造部20との隙間が小さくなるように構成されている。隙間について具体的な数値は限定するものでは無いが、例えば壁面本体12の下端部から床面40までの高さをd、壁面本体12の厚みをwとした場合、d/wが1/5以下となるようにすると良い。壁面本体12と床面40からの高さの比をこのような関係とした場合、メインボード14の主面側に立つ人の目線からは、床面40にストッパ20aを押し当てた状態であっても、このストッパ20aが見えづらくなる。
【0042】
[作用]
上記のような構成の仕切り壁10は、建物の天井に敷設されたハンガーレール30に沿って自由に移動させることができる。また、移動させた場所で床面40にストッパ20aを押し当てることにより、固定することができる。これにより、所望する位置での間仕切りや、室空間の構成を行うことが可能となる。
【0043】
また、展示空間22には、開閉可能な透光性板部材22bを介して展示物を配置することができる。さらに、カバーボード24をメインボード14の幅方向にスライドさせることで、開口部14aを覆い、展示空間22を目隠しすることもできる。このような形態とすることで、仕切り壁10の主面全体を展示用の壁として利用することも可能となる。
【0044】
[効果]
上記のような特徴を有する仕切り壁10によれば、単なる間仕切りとしてだけでなく、自在に動かすことのできる展示ケースとしての機能を持たせることができる。また、展示空間22を壁面の一部とすると共に、カバーボード24により展示空間22を覆う事もできる。このため、仕切り壁10を移動させる際に透光性板部材22bが周囲に接触して破損することを防ぐことができる。よって、移動時の安全性を確保することができる。
【0045】
また、壁面全体を展示空間とすることなく、壁面の一部に展示空間22を構成することとし、不要な場合にはカバーボード24で覆い隠すこともできるため、目隠しとして利用することもできる。このため、美術館などの空間における間仕切りとして利用した場合であっても、主体となる展示物(実施形態に係る仕切り壁10を利用しないで展示されるもの)の鑑賞の邪魔にならない。
【0046】
さらに、ピクチャーレール18cや、吊り金具18b1、およびストッパ本体20a2などの雑物が鑑賞者の目に入り難い構造となっているため、空間的な統一感を出す事が可能となり、美術館などで使用した際には、主体となる展示物に集中することができるようになる。
【0047】
[変形例]
上記実施形態では、壁面本体12を構成する一対のメインボード14のそれぞれ対応する位置に開口部14aを設けて展示空間22を構成していた。このような構成とすることで、仕切り壁10のどちらの主面からでも、展示空間22に配置された展示物を視認することができる。
【0048】
しかしながら、本発明に係る仕切り壁10を構成する場合、必ずしも仕切り壁10の両サイドから展示空間22を視認可能な構成とする必要は無い。具体的には、図7に示すように、壁面本体12を構成する一対のメインボード14のうちの一方(図7に示す例では図中左側のメインボード14)のみに開口部14aを設けるようにしている。
【0049】
このような構成とした場合であっても、間仕切りとしての役割の他に、自在に動かすことのできる展示ケースとしての機能を持たせる事となるからである。
【符号の説明】
【0050】
10………仕切り壁、12………壁面本体、14………メインボード、14a………開口部、16………サイドボード、16a………スリット、18………吊り構造部、18a………メインレール、18b………カバーボード吊りレール、18b1………吊り金具、18c………ピクチャーレール、18c1………フック付きライナ、18d………吊り構造ベース、18e………サポート、20………位置決め構造部、20a………ストッパ、20a1………ストッパベース、20a2………ストッパ本体、20b………カバーボード受け部、20b1………カバーボード受けレール、20b2………受け部保持金具、20b3………コロ、20c………位置決め構造ベース、20d………レールベース、22………展示空間、22a………枠部、22b………透光性板部材、22c………ピクチャーレール、22d………展示台、24………カバーボード、24a………板片、26………化粧クロス、30………ハンガーレール、32………ランナ、40………床面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7