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特許7486757多関節バイオニックイルカ運動の制御方法、システム及び水中損傷検出方法
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  • 特許-多関節バイオニックイルカ運動の制御方法、システム及び水中損傷検出方法 図1
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  • 特許-多関節バイオニックイルカ運動の制御方法、システム及び水中損傷検出方法 図8A
  • 特許-多関節バイオニックイルカ運動の制御方法、システム及び水中損傷検出方法 図8B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】多関節バイオニックイルカ運動の制御方法、システム及び水中損傷検出方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 71/10 20200101AFI20240513BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20240513BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20240513BHJP
   G05B 13/04 20060101ALI20240513BHJP
   B63G 8/08 20060101ALI20240513BHJP
   B63H 25/48 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B63B71/10
B63C11/48 Z
G05B11/36 G
G05B13/04
B63G8/08 Z
B63C11/48 D
B63H25/48
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023039581
(22)【出願日】2023-03-14
(65)【公開番号】P2024042639
(43)【公開日】2024-03-28
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】202211122302.7
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211471543.2
(32)【優先日】2022-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522420144
【氏名又は名称】福建省交通規劃設計院有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】523093505
【氏名又は名称】廈門理工学院
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【弁理士】
【氏名又は名称】譚 粟元
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(72)【発明者】
【氏名】鄭 清松
(72)【発明者】
【氏名】袁 志群
(72)【発明者】
【氏名】洪 錦祥
(72)【発明者】
【氏名】曽 佑栄
(72)【発明者】
【氏名】陳 長泰
(72)【発明者】
【氏名】劉 昌生
(72)【発明者】
【氏名】常 宇軒
(72)【発明者】
【氏名】陳 晨
(72)【発明者】
【氏名】林 暁波
(72)【発明者】
【氏名】夏 丹丹
(72)【発明者】
【氏名】林 立
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110758698(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109866904(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111190364(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113955057(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110861761(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 71/10
B63C 11/48
B63G 8/08
B63H 25/48
G05B 11/36
G05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節バイオニックイルカ運動の制御方法であって、
多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用される多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用される多関節バイオニックイルカの計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得することと;
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、水域に流れの有無、流れの速度や方向を含む指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られることと;
前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出することと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位を含む動力学パラメータが得られることと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得することは、具体的に、
多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築することと;
前記多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域の3Dモデルインポートして、3Dモデル及び計算領域の3Dモデルに対してモデルの簡素化と表面メッシュ分割の前処理を実行して、前処理済みのモデルファイルを取得することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学的曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られることは、具体的に、
前記前処理済みのモデルファイルインポートして、計算領域の確立を完成し、ボディメッシュを生成し、境界を定義し、多関節バイオニックイルカ変形運動操作を定義することと;
計算領域の水流速度をゼロに設定し、多関節バイオニックイルカの尾部をスイングさせ、多関節バイオニックイルカが所定の運動方程式でスイングする場合の推力曲線を算出して、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線とすることと;
相対運動の原理に基づいて、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの直線運動を速度合成し、合成速度を水の流れに変換して流体力学エミュレーションし、推力の作用下での多関節バイオニックイルカの理論上の推進速度までに水流速度を徐々に増加させて、指定の水中作業条件での多関節バイオニックイルカの加速度運動中の異なる運動速度での流体力学曲線を取得することと;
前記推力曲線と流体力学曲線に基づいて、差を求め、多関節バイオニックイルカが各瞬間に所定の運動方程式でスイングするときの速度につれて変化する抵抗曲線をフィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブとすることと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記の前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出することは、
多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、ラグランジュ法を用いて流体力を集中させ、多関節バイオニックイルカの動力学解析をマルチボディダイナミクスシステム解析に変換し、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記の前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、多関節バイオニックイルカの動力学パラメータが得られることは、具体的に、
前記多関節バイオニックイルカの動力学モデルを構築し、動力学モデルで多関節バイオニックイルカの質量と長さのパラメータを設定しておくこと;
前記動力学モデルの力項目を推力マイナス抵抗に分解し、推力は指定の水中作業条件下での推力曲線に対応する推力であり、各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、各瞬間における抵抗を取得し、推力マイナス抵抗を利用して、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を計算して取得すること;
各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を前記動力学モデルに代入して、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント及び進行方向に沿った変位、速度、及び加速度を計算し取得し、前記各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度―抵抗フィッティングカーブに基づいて、各瞬間における抵抗を得るステップに戻ることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
多関節バイオニックイルカ運動の制御システムであって、
多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用される多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用される多関節バイオニックイルカの計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得するために使用される、3Dモデルの構築及び前処理モジュールと;
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、水域に流れの有無、流れの速度や方向を含む指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学的曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られる、流体力学エミュレーションモジュールと;
前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する動力学解析モジュールと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位を含む動力学パラメータが得られる動力学カップリングモジュールと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御するイルカ運動制御モジュールと、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
前記3Dモデルの構築及び前処理モジュールは、具体的に、
多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築する3Dモデル構築ユニット;
前記多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域の3Dモデルインポートして、3Dモデル及び計算領域の3Dモデルに対してモデルの簡素化と表面メッシュ分割の前処理を実行して、前処理済みのモデルファイルを取得する前処理ユニットを含むことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記流体力学エミュレーションモジュールは、具体的に、
前記前処理済みのモデルファイルインポートして、計算領域の確立を完成し、ボディメッシュを生成し、境界を定義し、多関節バイオニックイルカ変形運動操作を定義するモデルファイルインポートユニットと;
計算領域の水流速度をゼロに設定し、多関節バイオニックイルカの尾部をスイングさせ、多関節バイオニックイルカが所定の運動方程式でスイングする場合の推力曲線を算出して、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線とする推力曲線計算ユニットと;
相対運動の原理に基づいて、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの直線運動を速度合成し、合成速度を水の流れに変換して流体力学エミュレーションし、推力の作用下での多関節バイオニックイルカの理論上の推進速度までに水流速度を徐々に増加させて、指定の水中作業条件での多関節バイオニックイルカの加速度運動中の異なる運動速度での流体力学的曲線を取得する流体力学曲線計算ユニットと;
前記推力曲線と流体力学曲線に基づいて、差を求め、多関節バイオニックイルカが各瞬間に所定の運動方程式でスイングするときの速度につれて変化する抵抗曲線をフィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブとする速度-抵抗フィッティングカーブ計算ユニットとを含むことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記動力学解析モジュールは、具体的に、
多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、ラグランジュ法を用いて流体力を集中させ、多関節バイオニックイルカの動力学解析をマルチボディダイナミクスシステム解析に変換し、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する動力学解析ユニットを含むことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
多関節バイオニックイルカ運動制御に基づく水中損傷検出方法であって、
多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得し;前記多関節バイオニックイルカが頭にソナーシステムを取り付け;前記3Dモデルは、多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用され;前記計算領域3Dモデルは、多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用されることと;
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、水域に流れの有無、流れの速度や方向を含む指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学的曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られることと;
前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出することと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位を含む多関節バイオニックイルカの動力学パラメータが得られることと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御することにより、検出対象の水中工学構造物で多関節バイオニックイルカの等速運動とポジショニングサスペンションを制御し、多関節バイオニックイルカの頭部に搭載されたソナーシステムによって、水中の工学的構造物での損傷部分のターゲット認識と位置決めを実現することと、を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオニックロボット及び水中工学構造物の損傷検出技術分野に関し、特に、多関節バイオニックイルカ運動制御方法、システム、及び水中損傷検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中ロボットは、港湾や橋梁の水中構造物などの水中工学構造物の損傷検出の分野で幅広い応用の見通しを持っているが、既存の水中ロボットは一般的にプロペラ推進を採用しており、当該推進方法は、バイオニック推進と比較すると、効率、騒音レベル、操縦性の点でやや不十分である。優れた運動性能を備えたバイオニック推進は、小型水中ロボットの将来の開発方向になる。ところが、水中での作業条件は複雑であり、バイオニック推進の適用には次の2つの問題がある:第一に、バイオニック推進にはプロペラがなく、プロペラの運動状態を調整して作業中の安定性を維持することができず、代わりに関節モーメントを調整して安定性を維持しているが、関節モーメントの動力学予測は非常に困難である。第二に、設計されたバイオニックロボットの速度を事前に推定することは困難であり、実験的にしか得られないが、既存の研究はこれを深く掘り下げていないため、本分野では、水中工学構造物の損傷検出と位置決め識別を実現するように、バイオニックロボット関節のモーメントと加速度、速度、変位などの動力学パラメータを動力学に予測し、これに基づいてバイオニックロボットの運動を制御して安定性を確保する方法を提供することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、動力学カップリング技術によって多関節バイオニックイルカの各関節のモーメントを取得でき、各瞬間の加速度、速度、及び変位パラメータを予測して、上記の動力学パラメータに基づいて、多関節バイオニックイルカの各関節での出力モーメントを制御し、多関節バイオニックイルカへの外界からの影響を弱めて安定性を向上させ;また、バイオニックイルカの頭にソナーシステムを取り付けることで、精密な運動制御方法により、水中工学構造物の損傷検出と位置決め識別を実現する多関節バイオニックイルカ運動の制御方法、システム及び水中損傷検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の解決策を提供する:
一方では、本発明は、多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用される多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用される多関節バイオニックイルカの計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得することと;
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、水域に流れの有無、流れの速度や方向を含む指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られることと;
前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出することと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位を含む動力学パラメータが得られることと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御することと、を含む多関節バイオニックイルカ運動制御方法を提供する。
【0005】
任意選択で、前記多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得することは、具体的に、
SolidWorks3D描画ソフトウェアで多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築することと;
前記多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域の3DモデルをHypermeshソフトウェアにインポートして、3Dモデル及び計算領域の3Dモデルに対してモデルの簡素化と表面メッシュ分割の前処理を実行して、前処理済みのモデルファイルを取得することと、を含む。
【0006】
任意選択で、前記の前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学的曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られることは、具体的に、
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアStar-CCM+にインポートして、計算領域の確立を完成し、ボディメッシュを生成し、境界を定義し、多関節バイオニックイルカ変形運動操作を定義することと;
計算領域の水流速度をゼロに設定し、多関節バイオニックイルカの尾部をスイングさせ、多関節バイオニックイルカが所定の運動方程式でスイングする場合の推力曲線を算出して、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線とすることと;
相対運動の原理に基づいて、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの直線運動を速度合成し、合成速度を水の流れに変換して流体力学エミュレーションし、推力の作用下での多関節バイオニックイルカの理論上の推進速度までに水流速度を徐々に増加させて、指定の水中作業条件での多関節バイオニックイルカの加速度運動中の異なる運動速度での流体力学曲線を取得することと;
前記推力曲線と流体力学曲線に基づいて、差を求め、多関節バイオニックイルカが各瞬間に所定の運動方程式でスイングするときの速度につれて変化する抵抗曲線をフィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブとすることと、を含む。
【0007】
任意選択で、前記の前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出することは、
多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、ラグランジュ法を用いて流体力を集中させ、多関節バイオニックイルカの動力学解析をマルチボディダイナミクスシステム解析に変換し、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出することを含む。
【0008】
任意選択で、前記の前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、多関節バイオニックイルカの動力学パラメータが得られることは、具体的に、
Matlabソフトウェアで前記多関節バイオニックイルカの動力学モデルを構築し、動力学モデルで多関節バイオニックイルカの質量と長さのパラメータを設定しておくこと;
前記動力学モデルの力項目を指定の水中作業条件下での推力曲線に対応する推力から、各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて得られた各瞬間における抵抗をマイナスすることに分解し、推力マイナス抵抗を利用して、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を計算して取得すること;
各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を前記動力学モデルに代入して、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント及び進行方向に沿った変位、速度、及び加速度を計算し取得し、前記各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度―抵抗フィッティングカーブに基づいて、各瞬間における抵抗を得るステップに戻ることを含む。
【0009】
他方では、本発明は多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用される多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用される多関節バイオニックイルカの計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得するために使用される、3Dモデルの構築及び前処理モジュールと;
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、水域に流れの有無、流れの速度や方向を含む指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学的曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られる、流体力学エミュレーションモジュールと;
前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する動力学解析モジュールと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位を含む動力学パラメータが得られる動力学カップリングモジュールと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御するイルカ運動制御モジュールと、を含む、多関節バイオニックイルカ運動制御システムを提供する。
【0010】
任意の選択で、前記3Dモデルの構築及び前処理モジュールは、具体的に、
SolidWorks3D描画ソフトウェアで多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築する3Dモデル構築ユニット;
前記多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域の3DモデルをHypermeshソフトウェアにインポートして、3Dモデル及び計算領域の3Dモデルに対してモデルの簡素化と表面メッシュ分割の前処理を実行して、前処理済みのモデルファイルを取得する前処理ユニットを含む。
【0011】
任意の選択で、前記流体力学エミュレーションモジュールは、具体的に、
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアStar-CCM+にインポートして、計算領域の確立を完成し、ボディメッシュを生成し、境界を定義し、多関節バイオニックイルカ変形運動操作を定義するモデルファイルインポートユニットと;
計算領域の水流速度をゼロに設定し、多関節バイオニックイルカの尾部をスイングさせ、多関節バイオニックイルカが所定の運動方程式でスイングする場合の推力曲線を算出して、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線とする推力曲線計算ユニットと;
相対運動の原理に基づいて、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの直線運動を速度合成し、合成速度を水の流れに変換して流体力学エミュレーションし、推力の作用下での多関節バイオニックイルカの理論上の推進速度までに水流速度を徐々に増加させて、指定の水中作業条件での多関節バイオニックイルカの加速度運動中の異なる運動速度での流体力学的曲線を取得する流体力学曲線計算ユニットと;
前記推力曲線と流体力学曲線に基づいて、差を求め、多関節バイオニックイルカが各瞬間に所定の運動方程式でスイングするときの速度につれて変化する抵抗曲線をフィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブとする速度-抵抗フィッティングカーブ計算ユニットとを含む。
【0012】
任意の選択で、前記動力学解析モジュールは、具体的に、
多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、ラグランジュ法を用いて流体力を集中させ、多関節バイオニックイルカの動力学解析をマルチボディダイナミクスシステム解析に変換し、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する動力学解析ユニットを含む。
【0013】
任意の選択で、前記動力学カップリングモジュールは、具体的に、
Matlabソフトウェアで多関節バイオニックイルカの動力学モデルを構築し、動力学モデルで多関節バイオニックイルカの質量と長さのパラメータを設定しておくために使用される動力学モデル構築ユニット;
前記動力学モデルの力項目を推力マイナス抵抗に分解し、推力は指定の水中作業条件下での推力曲線に対応する推力であり、各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、各瞬間における抵抗を取得し、推力マイナス抵抗によって、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を計算して取得するために使用される各関節モーメント計算ユニット;
各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を前記動力学モデルに代入し、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント及び進行方向に沿った変位、速度、加速度を計算し取得し、前記各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度―抵抗フィッティングカーブに基づいて、各瞬間における抵抗を得るステップに戻るために使用されるイルカ変位及び速度計算ユニットを含む。
【0014】
他方では、本発明は、
多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得し;前記多関節バイオニックイルカが頭にソナーシステムを取り付け;前記3Dモデルは、多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用され;前記計算領域3Dモデルは、多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用されることと;
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、水域に流れの有無、流れの速度や方向を含む指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学的曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られることと;
前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出することと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位を含む多関節バイオニックイルカの動力学パラメータが得られることと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御することにより、検出対象の水中工学構造物で多関節バイオニックイルカの等速運動とポジショニングサスペンションを制御し、多関節バイオニックイルカの頭部に搭載されたソナーシステムによって、水中工学構造物での損傷部分のターゲット認識と位置決めを実現することと、を含む多関節バイオニックイルカ運動制御に基づく水中損傷検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって提供される指定の実施形態によれば、本発明は以下の技術的効果を開示する:
本発明は多関節バイオニックイルカ運動の制御方法、システム及び水中損傷検出方法を提供し、ここで、前記多関節バイオニックイルカ運動制御方法は、多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用される多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用される多関節バイオニックイルカの計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得することと;前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、水域に流れの有無、流れの速度や方向を含む指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られることと;前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出することと;前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位を含む動力学パラメータが得られることと;前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御することと、を含む。本発明の方法は、動力学カップリング技術を介して多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント取得し、各瞬間におけるその加速度、速度、及び変位パラメータを予測して、上記の動力学パラメータにより多関節バイオニックイルカの各関節における出力モーメントを制御し、多関節バイオニックイルカに対する外界からの影響が弱まり、安定性が向上される。
【0016】
さらに、本発明は、多関節バイオニックイルカの頭部にソナーシステムを設置することにより、正確な多関節バイオニックイルカ運動制御方法を通じて、水中工学構造物の損傷検出及び位置識別も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明又は従来技術の実施形態における技術的解決策をより明確に説明するために、以下では、実施形態に必要な図面を簡単に紹介するが、明らかに、以下の説明における図面は、本発明の一部にすぎず、実施形態については、当業者であれば、創造的な努力なしに、これらの図面に基づいて他の図面を取得することもできる。
【0018】
図1】本発明の多関節バイオニックイルカ運動制御方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施形態によって提供される推力曲線の概略図である。
図3A】本発明の実施形態によって提供される静水域作業条件の流体力学的曲線の概略図であり、静水作業条件下で0.2m/sの速度で移動する場合の流体力学的曲線の模式図である。
図3B】本発明の実施形態によって提供される静水域作業条件の流体力学的曲線の概略図であり、静水作業条件下で0.6m/sの速度で移動する場合の流体力学的曲線の模式図である。
図3C】本発明の実施形態によって提供される静水域作業条件の流体力学的曲線の概略図であり、静水作業条件下で1m/sの速度で移動する場合の流体力学的曲線の模式図である。
図3D】本発明の実施形態によって提供される静水域作業条件の流体力学的曲線の概略図であり、静水作業条件下で1.4m/sの速度で移動する場合の流体力学的曲線の模式図である。
図3E】本発明の実施形態によって提供される静水域作業条件の流体力学的曲線の概略図であり、静水作業条件下で1.8m/sの速度で移動する場合の流体力学的曲線の模式図である。
図3F】本発明の実施形態によって提供される静水域作業条件の流体力学的曲線の概略図であり、静水作業条件下で2.2m/sの速度で移動する場合の流体力学的曲線の模式図である。
図4】本発明の実施形態によって提供される静水作業条件下での速度ー抵抗フィッティングカーブの概略図である。
図5】本発明によって提供される動力学分析プロセスの概略図。
図6】本発明によって提供されるMatlabソフトウェアに構築された動力学モデルの概略図である。
図7】本発明によって提供される動力学カップリング技術のプロセスの概略図である。
図8A】本発明の実施形態によって提供される動力学パラメータの曲線図であり、モーメントの経時変化の曲線図である。
図8B】本発明の実施形態によって提供される動力学パラメータの曲線図であり、各運動パラメータ(加速度、速度、変位)の経時変化を示すグラフである。
図9】本発明における多関節バイオニックイルカ運動制御に基づく水中損傷検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態におけるの図面を参照して、本発明の実施形態における技術案を明確且つ完全に説明するが、明らかに、説明された実施形態は、本発明のすべての実施形態ではなく、いくつかの実施形態にすぎず、本発明の実施形態に基づいて、当業者が創造的な努力をすることなく得た他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に属する。
【0020】
本発明は、動力学カップリング技術によって多関節バイオニックイルカの各関節のモーメントを取得でき、各瞬間の加速度、速度、及び変位パラメータを予測して、上記の動力学パラメータに基づいて、多関節バイオニックイルカの各関節での出力モーメントを制御し、多関節バイオニックイルカへの外界からの影響を弱めて安定性を向上させ;また、バイオニックイルカの頭にソナーシステムを取り付けることで、精密な運動制御方法により、水中工学構造物の損傷検出と位置決め識別を実現する多関節バイオニックイルカ運動の制御方法、システム及び水中損傷検出方法を提供することを目的とする。
【0021】
本発明の上記の目的、特徴、及び利点をより理解できるようにするために、本発明は、図面及び指定の実施形態に関連して、以下でさらに詳細に説明される。
【0022】
図1は本発明の多関節バイオニックイルカ運動制御方法のフローチャートである。図1を参照すると、本発明の一種の多関節バイオニックイルカ運動制御方法は、具体的に以下のステップを含む:
ステップ1:多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用される多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用される多関節バイオニックイルカの計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得する。
【0023】
具体的には、SolidWorks3D描画ソフトウェアで多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築し;前記多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域の3DモデルをHypermeshソフトウェアにインポートして、3Dモデル及び計算領域の3Dモデルに対してモデルの簡素化と表面メッシュ分割の前処理を実行して、前処理済みのモデルファイルを取得する。
【0024】
ステップ2:前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、水域に流れの有無、流れの速度や方向を含む指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学的曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られる。
【0025】
具体的には、前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアStar-CCM+にインポートして、計算領域の確立を完成し、ボディメッシュを生成し、境界を定義し、多関節バイオニックイルカ変形運動操作を定義する。計算領域の水流速度をゼロに設定し、多関節バイオニックイルカの尾部をスイングさせ、多関節バイオニックイルカが所定の運動方程式でスイングする場合の推力曲線を算出して、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線とする。相対運動の原理に基づいて、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの直線運動を速度合成し、合成速度を水の流れに変換して流体力学エミュレーションし、推力の作用下での多関節バイオニックイルカの理論上の推進速度までに水流速度を徐々に増加させて、指定の水中作業条件での多関節バイオニックイルカの加速度運動中の異なる運動速度での流体力学的曲線を取得する。前記推力曲線と流体力学曲線に基づいて、差を求め、多関節バイオニックイルカが各瞬間に所定の運動方程式でスイングするときの速度につれて変化する抵抗曲線をフィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブとする。
【0026】
ステップ3:前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する。
【0027】
具体的には、多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、ラグランジュ法を用いて流体力を集中させ、多関節バイオニックイルカの動力学解析をマルチボディダイナミクスシステム解析に変換し、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する。
【0028】
ステップ4:前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、多関節バイオニックイルカの動力学パラメータを得る。
【0029】
具体的には、Matlabソフトウェアで前記多関節バイオニックイルカの動力学モデルを構築し、動力学モデルで多関節バイオニックイルカの質量と長さのパラメータを設定しておき;前記動力学モデルの力項目を推力マイナス抵抗に分解し、推力は、指定の水中作業条件下での水中作業条件下での推力曲線の対応する推力であり、各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度―抵抗を用いてフィッティングカーブして、各瞬間における抵抗を取得し、推力マイナス抵抗によって、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を計算し取得し;各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を前記動力学モデルに代入して、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント及び進行方向に沿った変位、速度、及び加速度を計算し取得し、前記各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度―抵抗フィッティングカーブに基づいて、各瞬間における抵抗を取得するステップに戻る。
【0030】
ステップ5:前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御する。
【0031】
具体的には、前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、制御戦略を書き、有効な電気信号を離散形式に分散することで、電気信号によって配信される平均電力を調整、即ち、各瞬間における多関節バイオニックイルカ関節の出力モーメントを制御することにより、多関節バイオニックイルカに対する外界からの影響を弱め、安定性を向上させる。
【0032】
本発明の方法は、作業中の多関節バイオニックイルカの安定性を改善でき、当該方法により、多関節バイオニックイルカの動力学パラメータを予測でき、多関節バイオニックイルカが作動中各瞬間の関節に対応するモーメントを取得し、PWMパルス幅変調技術を使用して、有効な電気信号を離散形式に分散させることで、電気信号によって配信される平均電力を調整、即ち、各瞬間における多関節バイオニックイルカ関節の出力モーメントを制御することにより、多関節バイオニックイルカに対する外界からの影響を弱め、安定性を向上させる。また、多関節バイオニックイルカが一つの運動方程式で動く場合、本発明の方法によって更に各瞬間における加速度、速度、変位、及びその他のパラメータも予測できる。特定の多関節バイオニックイルカに対応し、即ち質量、長さ、体積などの特定のパラメータを使用して、その最大前進速度及び対応する運動方程式を、本発明の方法によってさらに取得できる。
【0033】
以下、静水中での2関節型バイオニックイルカ運動を例に挙げ、本発明の多関節型バイオニックイルカ運動制御方法の具体的な実施形態例として提供し、当該方法実施形態は、具体的には以下のステップを含む:
S1:多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取する。
【0034】
SolidWorks3D描画ソフトウェアで2関節バイオニックイルカ(イルカと略す)の3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築し;前記3Dモデルは、2関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用され;前記計算領域の3Dモデルは、2関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用される。前記2関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域の3DモデルをHypermeshソフトウェアにインポートして、当該3Dモデル及び計算領域の3Dモデルに対してモデルの簡素化と表面メッシュ分割の前処理を実行して、前処理済みのモデルファイルを取得する。
【0035】
S2:前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、静水作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線、流体力学曲線及び各瞬間における関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られる。
【0036】
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアStar-CCM+にインポートして、計算領域の確立を完成し、ボディメッシュを生成し、境界を定義し、2関節バイオニックイルカ変形運動などの操作を定義する。計算領域の水流速度を0m/sに設定し、2関節バイオニックイルカの尾部をθ21(t)とθ32(t)方程式に従ってスイングさせ、2関節バイオニックイルカが所定の運動方程式でスイングする場合の推力曲線を算出し、図2に示すように、この時、流体力学的な力は純粋な推力であり、当該推力曲線(推力データ)を中間ファイル形式にエクスポートする。
【0037】
【数1】
【0038】
さらに、相対運動の原理に基づいて、上記の推力下での2関節バイオニックイルカの直線運動速度を水流の速度に変換させて、流体力学エミュレーションし、上記推力下での2関節バイオニックイルカの理論推進速度までに、水流速度を徐々に上げ、2関節バイオニックイルカが一つの運動方程式でスイングする場合の加速運動プロセス中の異なる速度での流体力学的数値曲線(即ち、流体力学的曲線)を計算し、図3Aから図3Fに示すように、この場合の流体力は合力の大きさ、即ち、推力マイナス抵抗である。
【0039】
さらに、上記で得られた推力曲線と流体力学曲線を組み合わせて、差を求め、各瞬間における2関節バイオニックイルカがあらかじめ設定された運動方程式でスイング場合の速度につれて変化する抵抗曲線をフィッティングして、各瞬間における2関節バイオニックイルカの速度―抵抗フィッティングカーブとし、図4に示すとおりである。図4では、横軸が速度v、縦軸が抵抗Fである。図3Aから図3Fの各瞬間における速度―抵抗フィッティングカーブの式は表1に示すとおりである。
【0040】
【表1】
【0041】
S3:前記2関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、2関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する。
【0042】
2関節バイオニックイルカの動力学解析を実行し、ラグランジュ法を使用して流体力を集中させ、2関節バイオニックイルカの動力学解析をマルチボディダイナミクスシステム解析に変換し、2関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する。
【0043】
図5は、本発明によって提供される動力学分析プロセスの概略図である。図中、Xは地球座標系であり、X、X、Xはそれぞれイルカの体、尾柄、尾鰭に設定された座標系である。図4に示すように、プロセスを簡素化するために、次の仮定が行われる:
a.イルカの各部分は、均一な質量分布を持つロッド部品として簡素化され、質量中心は剛体と見なされる幾何学的中心であり;
b.尾柄と尾鰭のスイングによる重心と浮力の変化は考慮しない;
c.イルカの進行作業条件のみを考慮し、イルカはX方向の変位のみを生成する。
【0044】
この条件では、イルカは3つの自由度があり、各関節の関係は、座標系の変換によって記述され、F、F、Fはそれぞれがイルカの体、尾柄、尾鰭にかける流体力であり、各部分の重心に統合され;M21、M32はイルカの身体各部分の接合部位におけるモーメントであり、ここでM21はイルカの体と尾柄の接合部でのモーメントであり、M32はイルカの尾柄と尾鰭の接合部でのモーメントであり;尾鰭と尾柄の長さはそれぞれlとlであり、イルカの体、尾柄、尾鰭の質量はそれぞれm、m、mであり、ラグランジュ法を使用してダイナミクス分析し、得られた最終結果を行列形式に整理した。
【0045】
【数2】
【0046】
ここで、
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0047】
当該行列(1)は導出された動力学モデルであり、モデル(1)では、θ21、θ32はイルカの尾柄と尾鰭のスイング関数をそれぞれ表し;X10はXの方向に沿ったイルカの変位を表し;F1Xはイルカの体にかかるXの方向の力であり;F2x、F2yはそれぞれがX座標系のX軸とY軸上のFの投影であり;F3xとF3yは、それぞれX座標系のX軸とY軸上のFの投影である。
【0048】
当該動力学モデルはθ21(t)、θ32(t)が指定された場合、M21(t)、M32(t)、X10(t)、即ち、指定の時刻tにおける尾柄と尾鰭のスイング関数θ21(t)、θ32(t)を求めて、時刻tにおけるX方向に沿ったイルカの変位関数X10(t)、尾柄M21(t)と尾鰭M32(t)を計算できる。この動力学モデルを適用すると、逆解問題も研究でき、即ち、指定のM21(t)、M32(t)から、θ21(t)、θ32(t)、X10(t)を逆解できる。
【0049】
S4:2関節バイオニックイルカの動力学モデル、静水作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における2関節バイオニックイルカの速度抵抗フィッティングカーブに基づいて、2関節バイオニックイルカの動力学カップリングが完成され、2関節バイオニックイルカの動力学パラメータが得られ;前記動力学パラメータには、各瞬間における2関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位が含まれる。
【0050】
Matlabソフトウェアで前記2関節バイオニックイルカの動力学モデルを構築し、図6に示すとおりであり、図6では、Velocity、Acceleration、displacementはそれぞれ速度、加速度、変位を表し;1/sはMatlabの積分モジュールであり、積分計算に使用され、ここで、加速度の積分は速度であり、速度の積分は変位であり;1/zはMatlabの遅延モジュールであり、前の時間ステップのデータを記録する機能であり、本時間ステップで使用され、本発明の動力学モデルの前の時間ステップで得られた速度を記録するために使用される。図5のモジュールの下側に対応するX10、θ21、θ32の三つのパラメータは、ラグランジュ法で一般化された座標として定義されていることを示す。
【0051】
Matlabソフトウェア動力学モデルで2関節バイオニックイルカの質量、長さなどのパラメータを設定する。
【0052】
前記動力学モデルの力項目を推力マイナス抵抗に分解し、推力は、静水作業条件下での推力曲線(即ち、水速が0m/sの場合の流体力学曲線)の対応する推力であり、さらに、Matlabは中間ファイルの一番目の時間ステップの推力データを読み取り、このとき、2関節バイオニックイルカの速度は0m/sであり、抵抗は0であり、推力マイナス抵抗を利用して一番目の時間ステップでの2関節バイオニックイルカの各関節の合力を計算して得ることにより、動力学モデルにおけるF1x、F2x、F3x、F2y、F3yが得られ;次に、一番目の時間ステップの合力を動力学モデルに代入して動力学計算し、当該時間ステップで、対応する2関節バイオニックイルカの関節モーメント、変位、速度、及び加速度を計算する。さらに、当該速度を次の動力学モデルエミュレーションの初期条件として使用し、当該速度をフィッティングして得られた速度-抵抗カーブの中に代入して、次のステップの抵抗の大きさを得る。さらに、Matlabは中間ファイルの2番目の時間ステップの推力データを読み取り、このときの合力(流体力)は、読み取ったデータから前ステップで計算した抵抗分を差し引いたものであり、動力学モデルエミュレーションによって2番目の時間ステップに対応する速度が求められる。このように往復することで、2関節バイオニックイルカの一方向の動力学カップリングが完了し、そのプロセスは図7に示とおりである。最終的には、図8A又は図8Bに示すように、さまざまな作業条件下での2関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、変位などの動力学パラメータの動力学画像が取得される。
【0053】
上記の動力学カップリングにより、異なる作業条件下での2関節バイオニックイルカの各関節のモーメントを取得でき、PWMパルス幅変調技術を使用して制御戦略を書き、作業中の2関節バイオニックイルカに対する外界からの影響を弱め、安定性を向上させることができる。動力学カップリングにより、2関節バイオニックイルカの各関節が一つの状態で運動する場合、その各瞬間の加速度、速度、変位などのパラメータを予測できる。一つの特定の2関節バイオニックイルカ、即ち、質量、長さ、体積などの特定のパラメータに対応し、本発明の方法により、さらに最大移動速度及び対応する運動方程式も得られる。
【0054】
S5:前記2関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、2関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御する。
【0055】
エミュレーションから得られた運動パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、制御戦略を書き、有効な電気信号を離散形式に分散することで、電気信号によって配信される平均電力を調整、即ち、各瞬間における2関節バイオニックイルカの関節部位の出力モーメントを制御することにより、2関節バイオニックイルカに対する外界からの影響を弱め、安定性を向上させることかできる。
【0056】
本発明によって提供される方法に基づいて、本発明はまた、多関節バイオニックイルカ運動制御システムを提供し、このシステムは、
多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築及び前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得するために使用され、前記3Dモデルは、多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用され、前記計算領域3Dモデルは、多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用される3Dモデルの構築及び前処理モジュールと;
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学的曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られ;前記指定の水中作業条件下には、水域に流れの有無、流れの速度や方向が含まれる流体力学エミュレーションモジュールと;
前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する動力学解析モジュールと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、多関節バイオニックイルカの動力学パラメータが得られ;前記動力学パラメータには、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位が含まれる動力学カップリングモジュールと;
前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御するイルカ運動制御モジュールを含む。
【0057】
ここで、前記3Dモデルの構築及び前処理モジュールは、具体的に、
SolidWorks3D描画ソフトウェアで多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築する3Dモデル構築ユニット;
前記多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域の3DモデルをHypermeshソフトウェアにインポートして、3Dモデル及び計算領域の3Dモデルに対してモデルの簡素化と表面メッシュ分割の前処理を実行して、前処理済みのモデルファイルを取得する前処理ユニットを含む。
【0058】
前記流体力学エミュレーションモジュールは、具体的に、
前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアStar-CCM+にインポートして、計算領域の確立を完成し、ボディメッシュを生成し、境界を定義し、多関節バイオニックイルカ変形運動操作を定義するモデルファイルインポートユニットと;
計算領域の水流速度をゼロに設定し、多関節バイオニックイルカの尾部をスイングさせ、多関節バイオニックイルカが所定の運動方程式でスイングする場合の推力曲線を算出して、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線とする推力曲線計算ユニットと;
相対運動の原理に基づいて、指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの直線運動を速度合成し、合成速度を水の流れに変換して流体力学エミュレーションし、推力の作用下での多関節バイオニックイルカの理論上の推進速度までに水流速度を徐々に増加させて、指定の水中作業条件での多関節バイオニックイルカの加速度運動中の異なる運動速度での流体力学的曲線を取得する流体力学曲線計算ユニットと;
前記推力曲線と前記流体力学曲線に基づいて、差を求め、多関節バイオニックイルカが各瞬間に所定の運動方程式でスイングするときの速度につれて変化する抵抗曲線をフィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブとする速度-抵抗フィッティングカーブ計算ユニットとを含む。
【0059】
前記動力学解析モジュールは、具体的に、
多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、ラグランジュ法を用いて流体力を集中させ、多関節バイオニックイルカの動力学解析をマルチボディダイナミクスシステム解析に変換し、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出する動力学解析ユニットを含む。
【0060】
前記動力学カップリングモジュールは、具体的に、
Matlabソフトウェアで多関節バイオニックイルカの動力学モデルを構築し、動力学モデルで多関節バイオニックイルカの質量と長さのパラメータを設定しておくために使用される動力学モデル構築ユニット;
前記動力学モデルの力項目を推力マイナス抵抗に分解し、推力は指定の水中作業条件下での推力曲線に対応する推力であり、各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、各瞬間における抵抗を取得し、推力マイナス抵抗によって、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を計算して取得するために使用される各関節モーメント計算ユニット;
各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節の合力を前記動力学モデルに代入し、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント及び進行方向に沿った変位、速度、加速度を計算し取得し、各瞬間における前記多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、各瞬間における抵抗を得るステップに戻るために使用されるイルカ変位及び速度計算ユニットを含む。
【0061】
本発明によって提供される方法に基づいて、本発明はまた、図9に示されるように、多関節バイオニックイルカ運動制御に基づく水中損傷検出方法を提供し、水中損傷検出方法は、
ステップ901:多関節バイオニックイルカの3Dモデル及び計算領域3Dモデルを構築し、前処理して、前処理済みのモデルファイルを取得し;前記多関節バイオニックイルカが頭にソナーシステムを取り付け;前記3Dモデルは、多関節バイオニックイルカの運動モードをシミュレートするために使用され;前記計算領域3Dモデルは、多関節バイオニックイルカの流体力学エミュレーションに使用され;
ステップ902:前記前処理済みのモデルファイルを数値流体力学解析ソフトウェアにインポートして流体力学エミュレーションを実行して、水域に流れの有無、流れの速度や方向を含む指定の水中作業条件下での多関節バイオニックイルカの推力曲線と流体力学曲線が得られ、次に、推力曲線と流体力学的曲線の差を求め、フィッティングして、各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブが得られ;
ステップ903:前記多関節バイオニックイルカに対して動力学解析を行い、多関節バイオニックイルカの動力学モデルを導出し;
ステップ904:前記多関節バイオニックイルカの動力学モデル、指定の水中作業条件下での推力曲線、及び各瞬間における多関節バイオニックイルカの速度-抵抗フィッティングカーブに基づいて、多関節バイオニックイルカの動力学カップリングを完成して、各瞬間における多関節バイオニックイルカの各関節のモーメント、加速度、速度、及び変位を含む多関節バイオニックイルカの動力学パラメータが得られ;
ステップ905:前記多関節バイオニックイルカの動力学パラメータに基づいて、PWMパルス幅変調技術を使用して、多関節バイオニックイルカの各瞬間における各関節の出力モーメントを制御することにより、検出対象の水中工学構造物で多関節バイオニックイルカの等速運動とポジショニングサスペンションを制御し、多関節バイオニックイルカの頭部に搭載されたソナーシステムによって、水中工学構造物での損傷部分のターゲット認識と位置決めを実現する。
【0062】
本発明は、多関節バイオニックイルカの頭部にソナーシステムを設置することにより、本発明の正確な多関節バイオニックイルカ運動制御方法により、水中工学構造物の損傷検出及び位置識別を実現できる。
【0063】
本明細書の各実施形態は累進的な方式で説明され、各実施形態は他の実施形態との相違点に焦点を当てており、各実施形態の同一及び類似の部分は互いに参照することができる。実施形態で開示されるシステムに関しては、実施形態で開示される方法に対応するため、説明は比較的に簡単であり、関連情報については、方法部分の説明を参照してください。
【0064】
本明細書では、具体的な例を使用して本発明の原理と実施形態を説明したが、上記の実施形態の説明は、本発明の方法とその核となる思想を理解するのに役立つだけである同時に、当業者にとっては、当技術分野では、本発明の思想に従って、具体的な実施形態及び適用範囲に変化がある。要約すると、本明細書の内容は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9