(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】カバー、被収容部及びこれらを備える物品
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20240513BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H05K5/03 A
H05K5/02 E
(21)【出願番号】P 2019108176
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和智 湧斗
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 ひろみ
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05644552(US,A)
【文献】特開2015-180243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0128753(US,A1)
【文献】米国特許第06636458(US,B1)
【文献】特開平06-133856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00- 5/06
A47J 27/00-36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収容部の少なくとも一部を収容するための筒状の収容部と、
前記収容部の外周面の少なくとも一部を覆うように前記収容部の外周面に設けられる外套部と、を備え、
前記外套部は、可撓性を有し、その一端を中心として反転可能に前記収容部の外周面に接続するように構成され、
前記外套部が反転される前の通常状態において、前記外套部は、前記収容部の外周面の1/2以上を覆い、前記収容部の外周面と前記外套部の前記収容部の外周面と対向する内周面との間に空間部分が形成され、
前記外套部が反転された後の反転状態において、前記外套部は、前記収容部の外周面を覆わなくなり、
前記反転状態における前記外套部の他端にラップが載置されてから、前記外套部の他端と前記ラップとの両方が押えられながら、前記外套部が前記反転状態から前記通常状態に切り替わると、前記ラップは、前記外套部の復元力によって延伸しながら引っ張られて前記被収容部
を覆
い、その縁部が前記空間部分に収容されている、
カバー。
【請求項2】
請求項1に記載のカバーであって、
前記外套部の一端は、前記収容部の一端において接続される、
カバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカバーであって、
前記外套部は、前記収容部の高さ方向に沿う断面視にて外側に膨らむ円弧状に設けられる、
カバー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のカバーであって、
前記カバーは、シリコーン樹脂からなる、
カバー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のカバーと、前記カバーの前記収容部に収容される被収容部と、を備える物品であって、
前記被収容部は、
前記収容部により覆われない二つの端面と、
前記収容部により覆われる側面と、を有する、
物品。
【請求項6】
請求項5に記載の物品であって、
前記被収容部は、電池を用いて作動する電気機器からなり、
前記被収容部の一方の端面には、操作部が設けられ、
前記収容部は、その一端が前記操作部の先端面と面一となるように設けられる、
物品。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の物品であって、
前記被収容部の他方の端面には、磁石が設けられ、
前記外套部は、その他端が前記磁石の吸着端面と同じ高さに位置するように設けられる、
物品。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の物品であって、
前記被収容部は、電池を用いて作動する電気機器からなり、
前記被収容部の前記側面には、開閉可能な電池蓋が設けられる、
物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー、被収容部及びこれらを備える物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケース本体内の回路基板にリチウムイオン電池を電気的に接続するとともに取り外し不能に固定するタイマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のタイマーでは、ケース本体の全体を一体構造にしているため、ケース本体の密閉性及び防水機能が向上する。
【0005】
しかしながら、このようなタイマーを油が飛散しやすい飲食店のような場所等で使用すると、タイマーの表面に油汚れが付着する問題がある。そこで、タイマーをその表面にラップフィルム(以下、単にラップと称する。)を巻き付けた状態で使用することにより、タイマー本体に油が付着することを回避する場合がある。
【0006】
ところが、タイマーにラップを適切に巻き付けるには一定の困難性がある。例えば、ラップの端部がタイマーに適切に保持されないことでラップがずれてしまい、タイマーの視認性が損なわれる場合がある。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明は、例えばタイマーのような被収容部を収容して、被収容部にラップを容易に被せることができるカバー、当該カバーに収容される被収容部及びこれらを備える物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある一つの態様によれば、被収容部の少なくとも一部を収容するための筒状の収容部と、前記収容部の外周面の少なくとも一部を覆うように前記収容部の外周面に設けられる外套部と、を備え、前記外套部は、その一端が前記収容部の外周面に接続されるとともに、他端が前記収容部の外周面から離間するように構成され、前記収容部の外周面と前記外套部の内周面との間には、溝部が形成される、カバーが提供される。
【0009】
また、本発明の他の態様によれば、環状の収容部と、前記収容部の内周面に設けられる嵌合部と、を備えるカバーに着脱可能に収容される被収容部であって、前記収容部により覆われる側面と、前記収容部により覆われない二つの端面と、前記嵌合部に嵌合する被嵌合部と、を備える、被収容部が提供される。
【発明の効果】
【0010】
これらの態様によれば、カバーに備わる溝部にラップの端部を保持することができるので、被収容部にラップを容易に被せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】
図1におけるIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】外套部が通常状態にあるタイマーを示す断面図である。
【
図6】外套部が反転状態にあるタイマーを示す断面図である。
【
図7】ラップが載置された外套部が反転状態にあるタイマーを示す断面図である。
【
図8】正面がラップで貼り付けられた状態のタイマーを示す断面図である。
【
図10】第2変形例に係るタイマーの正面図である。
【
図11】第3変形例に係るタイマーの正面図である。
【
図12】第4変形例に係るタイマーの正面図である。
【
図13】参考例1に係るカバー付きタイマーの意匠を示す正投影図法による6面図である。
【
図14】
図13(a)におけるA-A線に沿う拡大断面図である。
【
図15A】参考例1に係るカバー付きタイマーの意匠の正面斜視図である。
【
図15B】参考例1に係るカバー付きタイマーの意匠の背面斜視図である。
【
図16A】参考例1に係るカバー付きタイマーのカバーの意匠の正面斜視図である。
【
図16B】参考例1に係るカバー付きタイマーのカバーの意匠の背面斜視図である。
【
図17A】参考例1に係るカバー付きタイマーのタイマー本体の意匠の正面斜視図である。
【
図17B】参考例1に係るカバー付きタイマーのタイマー本体の意匠の背面斜視図である。
【
図18】参考例2に係るカバー付きタイマーの意匠を示す正投影図法による6面図である。
【
図19】参考例2に係るカバー付きタイマーの意匠を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面等を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(タイマーの構成)
以下、主に
図1から
図4を参照しながら、実施形態に係るタイマー1の構成について説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係るタイマー1の正面図である。
図2は、本発明の実施形態に係るタイマー1の背面図である。
図3は、本発明の実施形態に係るタイマー1の側面図である。
図4は、
図1におけるIV-IV線に沿う断面図である。なお、
図4において、矢印Zに沿う方向を高さ方向とする。
【0015】
図1から
図5に示すように、物品としてのタイマー1は、被収容部としてのタイマー本体2と、タイマー本体2を着脱可能に収容するカバー3と、を備える。タイマー1は、例えば、飲食店のような油汚れが付着しやすい場所等で使用される。使用時において、タイマー1の正面は、特にタイマー本体2に油が付着することを回避するために、ラップ4(
図8参照)のような透視かつ使い捨て可能なフィルム状の部材が貼り付けられる。このため、タイマー本体2の正面に油汚れが付着することが防止される。さらに、防水加工が施されたタイマーを水洗いする場合に比べ、ラップ4を取り替えるだけで、タイマー1を清潔な状態で使用することができる。
【0016】
本実施形態では、被収容部は、電池を用いて作動する電気機器としてのタイマー本体2により構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、湿度計又は温度計等のような他の計器類により構成されてもよいし、茶碗、皿又はボウル等のような食器類(非電気機器)により構成されてもよい。あるいは、被収容部は、スマホ又はタブレット等の携帯端末(電気機器)により構成されてもよい。
【0017】
図1から
図4に示すように、タイマー本体2は、正面視にて略矩形(略正方形)をなす電気機器である。タイマー本体2は、正面視にてその角がR面をなすように構成される。また、タイマー本体2は、カバー3に収容された状態で、カバー3により覆われない部分である略正方形の正面21及び略正方形の背面22と、カバー3により覆われる側面23(
図4参照)と、カバー3の後述する嵌合部33に嵌合する被嵌合部24と、を主に備える。
【0018】
また、タイマー本体2の一方の端面としての正面21には、タイム等を表示するための表示部25と、タイマー設定等の各種操作を行うための操作部26と、が設けられる。さらに、図示しないが、タイマー本体2は、音で時間の経過をユーザに報知する報知部としてのスピーカを備える。
【0019】
表示部25は、正面視にて矩形状の液晶表示パネルにより構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、楕円形状の液晶表示パネル又は有機EL表示パネルにより構成されてもよい。
【0020】
操作部26は、表示部25を両側(
図1の上側及び下側)から挟み込むように設けられる複数の押下可能な操作ボタン26a,26b,26cを有する。操作ボタン26a及び操作ボタン26bは、それぞれ、所定の秒(Second)及び所定の分(Minute)を選択するための選択ボタンである。一方、操作ボタン26cは、開始(Start)又は停止(Stop)のタイミングを決定するための決定ボタンである。非押下時において、操作ボタン26a,26b,26cの先端面としての正面は、互いに面一となるように構成される。
【0021】
ユーザが操作ボタン26a及び操作ボタン26bにより時間を選択設定した後に、操作ボタン26cを押下すると、例えば、タイマー本体2の背面22に設置されたスピーカは、選択設定された時間が経過したことを音でユーザに報知する。
【0022】
なお、本実施形態では、操作部26は、操作ボタン26a,26b,26cにより構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、タッチパネルにより構成されてもよいし、タッチパネルと操作ボタンとの組み合わせにより構成されてもよい。
【0023】
図2に示すように、タイマー本体2の他方の端面としての背面22には、背面22の外縁よりも内側に位置する吸着用の磁石27が設けられる。磁石27は、背面22に取り付けられる取付端面27aと、取付端面27aとは反対の面である吸着端面27bと、を有する。そして、磁石27の吸着端面27bによりタイマー1を金属製の壁等に吸着させて使用することができる。
【0024】
図4に示すように、タイマー本体2の側面23は、正面21から背面22に向かって内側(中心側)に傾斜するように設けられる。すなわち、正面21は、その面積が背面22の面積よりも大きい。換言すれば、側面23の形状は、正面21側から背面22側に向かって先細るテーパ形状である。
【0025】
側面23には、スライドすることにより開閉可能な電池蓋(図示しない)が設けられる。このため、カバー3の収容部31が側面23に設けられる電池蓋を覆うことにより、電池蓋の密閉性を向上させることができ、電池蓋から浸水することが防止される。
【0026】
正面21の外縁と側面23の正面21側の端部との境目には、第1段差部としての環状(具体的には、略正方形環状)の段差部28が形成される。なお、段差部28は、被嵌合部24を構成する。本実施形態では、段差部28は、環状をなしているが、これに限定されるものではなく、例えば、正面21の外縁上に所定の間隔を空けて形成される複数の段差部であってもよい。
【0027】
背面22の外縁には、環状(具体的には、略正方形環状)の凹部29が形成される。なお、凹部29は、被嵌合部24を構成する。本実施形態では、凹部29は、連続する環状の溝を構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、背面22の外縁上に所定の間隔を空けて形成される複数の凹部であってもよい。
【0028】
被嵌合部24は、環状の段差部28及び環状の凹部29を有する以外に、環状の段差部28及び環状の凹部29の間に位置するように側面23に形成される環状の溝部30を有する。溝部30は、収容部31の内周面に設けられるリブ37に嵌合する。これにより、不本意によるタイマー本体2とカバー3との分離が防止される。なお、被嵌合部24は、溝部30を省略してもよい。この場合、嵌合部33は、溝部30に対応するリブ37を有しない。
【0029】
ただし、本実施形態では、被嵌合部24は、正面21に形成される段差部28及び背面22に形成される凹部29を有しているが、これに限定されるものではなく、例えば、正面21及び背面22の両方に形成される二つの段差部28又は二つの凹部29を有してもよいし、正面21に形成される凹部29及び背面22に形成される段差部28を有してもよい。
【0030】
正面21及び背面22の両方に段差部28が形成される場合、収容部31の正面側の端部である一端31a及び収容部31の背面側の端部である他端31bの両方には、段差部28に嵌合する環状のリブ35が設けられる。また、正面21及び背面22の両方に凹部29が形成される場合、収容部31の一端31a及び他端31bの両方には、凹部29に嵌合する環状の返し部36が設けられる。さらに、正面21及び背面22にそれぞれ凹部29及び段差部28が形成される場合、収容部31の一端31a及び他端31bには、それぞれ凹部29に嵌合する環状の返し部36及び段差部28に嵌合する環状のリブ35が設けられる。
【0031】
図1に示すように、カバー3は、正面視にて略正方形環状をなす。カバー3は、可撓性を有するシリコーン樹脂からなる。このように、カバー3は、可撓性を有し、柔軟に変形することができるので、カバー3に対するタイマー本体2の着脱を行いやすくなる。そして、カバー3は、シリコーン樹脂からなるため、カバー3の全体を容易に洗うことができ、食材等に触れる可能性がある場所でも安心して使用することができる。また、一つのタイマー本体2に対して複数のカバー3があれば、カバー3を交換してタイマー本体2に装着することができる。そして、交換により取り外されたカバー3を気軽に水洗いすることができる。
【0032】
図1から
図4に示すように、カバー3は、タイマー本体2を収容するための筒状(略正方形筒状)の収容部31と、収容部31の外周面の一部を覆うように収容部31の外周面に設けられる環状(具体的には、略正方形環状)の外套部32と、収容部31の内周面に設けられタイマー本体2の被嵌合部24に嵌合する嵌合部33と、を備える。なお、ここでは、筒状は、幅に対して高さが小さい環状を含む。また、環状は、円環状だけでなく、角環状を含む。さらに、カバー3の収容部31、外套部32及び嵌合部33は、一体成形される。
【0033】
収容部31の少なくとも内周面は、タイマー本体2の側面23に対応して、一端31a(
図4の上端)から他端31b(
図4の下端)に向かって内側に傾斜するように設けられる。これにより、収容部31に収容されるタイマー本体2が、収容部31の他端31b側から抜けにくくなる。また、タイマー本体2は、その背面22を収容部31の一端31aから挿入させて収容部31に収容される。収容部31は、タイマー本体2の正面21及び背面22を覆わずに、タイマー本体2の側面23を覆うように設けられる。このように、タイマー本体2の正面21だけでなく、タイマー本体2の背面22も収容部31に覆われていないので、磁石27が露出し、磁石27の吸着効果が高くなる。
【0034】
また、本実施形態では、収容部31は、その正面側の端部である一端31aが非押下時における操作ボタン26a,26b,26cの先端面と面一となるように設けられている。このように、非押下時における操作ボタン26a,26b,26cの先端面に対する収容部31の一端31aの高さを調整することにより、タイマー1の正面をラップ4(
図8参照)で覆うときに、操作ボタン26a,26b,26cがラップ4に押されて、タイマー本体2が誤操作されることを防止することができる。さらに、タイマー1の正面がラップ4で覆われた状態において、タイマー本体2の操作性が担保される。なお、タイマー本体2が誤操作されない観点のみから、収容部31の一端31aを、非押下時における操作ボタン26a,26b,26cの先端面よりも高くしてもよい。
【0035】
外套部32は、その一端32aが収容部31の外周面に接続され、その他端32bにおいて収容部31の外周面から離間する。具体的には、外套部32は、その一端32aが収容部31の一端31aにおいて接続される。これにより、ラップ4と外套部32との間に段差を生じさせることなく、タイマー1の正面をラップ4で綺麗に貼り付けることができる。
【0036】
また、本実施形態では、外套部32の一端32aと収容部31の一端31aとが接続される位置は、側面23において一致しているが、これに限定されるものではなく、ラップ4の巻きやすさ又はデザイン性等を考慮して適宜変更されてもよい。
【0037】
そして、収容部31の外周面と外套部32の内周面との間には、環状(具体的には、略正方形環状)の空間である溝部34が形成される。溝部34は、タイマー1の正面を覆うラップ4の端部を収容するための収容空間として機能する。ラップ4をタイマー1の正面に貼り付ける際に、ラップ4の端部を溝部34に収容することにより、ラップ4の端部が溝部34に保持されてずれにくくなる。したがって、タイマー1の正面に皺が生じにくくなるので、ラップ4によりタイマー本体2の視認性が損なわれることを抑制することができる。さらに、ラップ4の端部を溝部34に収容しない場合に比べ、ラップ4の端部を保持するためにラップ4を巻き付ける必要がないので、ラップ4の巻き付けによってタイマー1の美観性が損なわれることを防止することができる。
【0038】
また、ラップ4は、タイマー1の全体ではなく、タイマー1の正面のみを覆っているので、従来のようにタイマー全体を覆うように巻き付けるのに比べ、ラップ4の節約に寄与することができる。さらに、ラップ4は、タイマー本体2の磁石27を巻き付けていないので、ラップ4により磁石27の吸着力が弱まることはない。仮に、ラップ4は、磁石27を覆ったとしても、余ったラップ4を溝部34に収容することができるので、余ったラップ4が溝部34に収容されず磁石27に巻き付けられる場合に比べ、磁石27の吸着力が弱まることが防止される。
【0039】
外套部32は、その一端32aを中心として、通常状態(
図5参照)と反転状態(
図6参照)との間で反転可能に設けられる。すなわち、外套部32は、通常状態において、その一端32aに対して背面側(
図5の下側)に位置する他端32bが一端32aを軸として正面側(
図5の上側)にめくりあげることによって、反転状態になる。
【0040】
外套部32が反転した反転状態を維持する観点から、外套部32は、収容部31の外周面の1/2以上を覆うように構成されることが好ましく、収容部31の外周面の4/5以上を覆うように構成されることがより好ましい。そして、外套部32は、収容部31の外周面の1/2未満を覆うように構成されると、外套部32の反転状態を維持しにくくなり、外套部32が通常状態に戻ってしまうおそれがある。
【0041】
また、外套部32の高さ(
図4において、外套部32の一端32aから外套部32の他端32bまでの高さ)は、ラップ4の素材の延伸しやすさとの関係で決定される。すなわち、外套部32の高さが高過ぎると、外套部32の反転には有利であるが、ラップ4が延伸する量が増え、ラップ4が切れてしまうおそれがある。このように、外套部32の高さは、外套部32の反転状態で静止できることと、ラップ4の素材の延伸しやすさとの関係で決定される。
【0042】
本実施形態では、外套部32は、収容部31の外周面の一部を覆っているが、これに限定されるものではなく、例えば、収容部31の外周面の全部を覆ってもよい。この場合、外套部32は、その他端32bが磁石27の吸着端面27bと同じ高さに位置するように設けられることが好ましい。これにより、タイマー1を磁石27により金属製の壁等に吸着させて使用する際に、外套部32の他端32bは、壁に当接(密着)しているため、油等が溝部34に入り込むことはない。
【0043】
また、本実施形態では、
図4に示すように、外套部32は、収容部31の高さ方向に沿う断面視にて外側に膨らむ円弧状に設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、収容部31の高さ方向に沿う断面視にて直線状に設けられてもよい。なお、外套部32の反転しやすさを向上させる観点から、環状の外套部32の他端32bに所定の間隔を空けて複数の切り込みを入れてもよい。さらに、外套部32は、その高さが一定である必要がなく、例えば、その他端32bの高さが変化する花びら形状をなしてもよい。
【0044】
嵌合部33は、収容部31の一端31aに設けられる環状のリブ35と、収容部31の他端31bに設けられる環状の返し部36と、リブ35及び返し部36の間に設けられる環状のリブ37と、を有する。環状のリブ35、環状の返し部36及び環状のリブ37は、共に収容部31の内周面から突出する。そして、リブ35、返し部36及びリブ37は、それぞれ段差部28、凹部29及び溝部30に嵌合することにより、タイマー本体2が確実に移動不能にカバー3の収容部31に収容される。
【0045】
本実施形態では、リブ35は、環状をなしているが、これに限定されるものではなく、例えば、タイマー本体2の段差部28に対応して、この環状に所定の間隔を空けて形成される複数の突起であってもよい。また、本実施形態では、返し部36は、環状をなしているが、これに限定されるものではなく、例えば、タイマー本体2の凹部29に対応して、この環状に所定の間隔を空けて形成される複数の返し部であってもよい。リブ37は、環状をなしているが、これに限定されるものではなく、例えば、タイマー本体2の溝部30に対応して、この環状に所定の間隔を空けて形成される複数の突起であってもよい。
【0046】
(タイマーへのラップの貼り付け動作)
以下、
図5から
図8を参照しながら、タイマー1の正面をラップ4で貼り付ける動作について説明する。
【0047】
図5は、外套部32が通常状態にあるタイマー1を示す断面図である。
図6は、外套部32が反転状態にあるタイマー1を示す断面図である。
図7は、ラップ4が載置された外套部32が反転状態にあるタイマー1を示す断面図である。
図8は、正面がラップ4で貼り付けられた状態のタイマー1を示す断面図である。
【0048】
図5に示すように、通常状態において、外套部32は、収容部31の外周面の一部を覆っている。すなわち、通常状態において、収容部31と外套部32との間には、溝部34が形成される。まず、外套部32を、その一端32aを中心として、
図5に示される矢印R1の方向(上方向)に沿って反転させると、
図6に示すように、外套部32が反転状態になる。反転状態において、外套部32は、収容部31の外周面の一部を覆わなくなる。すなわち、反転状態において、収容部31と外套部32との間には、溝部34が形成されなくなる。
【0049】
次に、
図7に示すように、反転状態におけるタイマー1の上面に形成され環状の他端32b上にラップ4を載置してから、他端32bとラップ4とが接触した状態を維持しながら外套部32をその一端32aを中心として、
図7に示される矢印R2の方向(下方向)に沿って反転させると、
図8に示すように、外套部32が通常状態に戻る。
【0050】
そして、外套部32が反転状態から通常状態に反転する過程において、外套部32の他端32b上に載置されたラップ4は、延伸するように引っ張られながら、タイマー1の正面(タイマー本体2及びカバー3の正面)を覆っていく。これにより、タイマー1の正面を覆うラップ4に皺が生じにくくなる。
【0051】
また、外套部32が反転状態から通常状態に反転する際に、外套部32は、その円弧状の復元力を利用して、ラップ4を延伸するように引っ張るので、タイマー1の正面をラップ4でより綺麗に貼り付けることができる。
【0052】
図6に示すように、反転状態にある外套部32により取り囲まれた領域Pは、収容空間として使用されてもよい。なお、外套部32の反転しやすさを確保するために、ラップ4の硬度をカバー3の硬度よりも小さくすることが好ましい。
【0053】
上述のように、収容部31の内周面は、傾斜したタイマー本体2の側面23に対応して一端31aから他端31bに向かって内側に傾斜するように設けられる。このため、外套部32を通常状態から反転状態に反転させる際に、カバー3に収容部31の他端31b側が広がる力がかかったとしても、タイマー本体2が収容部31の他端31b側から抜けにくくなる。
【0054】
このように、反転状態にある外套部32にラップ4を載置させてから、外套部32を、その一端32aを中心として通常状態に反転させるだけで、タイマー1の正面をラップ4で容易に素早くかつ綺麗に貼り付けることができる。その結果、タイマー1の美観性が向上するとともにタイマー本体2における表示部25の視認性が担保される。また、ラップ4の端部が溝部34に収容されるので、ラップ4の端部が溝部34に収容されない場合に比べ、タイマー1の美観性がさらに向上する。
【0055】
次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0056】
本実施形態に係るカバー3は、タイマー本体2を収容するための筒状の収容部31と、収容部31の外周面の一部を覆うように収容部31の外周面に設けられる外套部32と、を備える。そして、外套部32は、その一端32aが収容部31の外周面に接続されるとともに、他端32bが収容部31の外周面から離間するように構成され、収容部31の外周面と外套部32の内周面との間には、溝部34が形成される。
【0057】
この構成によれば、収容部31の外周面と外套部32の内周面との間に形成される溝部34は、タイマー1の正面を覆うラップ4の端部を収容するための収容空間として機能する。ラップ4をタイマー1の正面に貼り付ける際に、ラップ4の端部を溝部34に収容することにより、タイマー本体2にラップ4を容易に被せることができる。さらに、タイマー1の正面がラップ4により覆われるので、タイマー1の正面への油汚れが防止される。
【0058】
また、本実施形態では、外套部32は、可撓性を有し、その一端32aを中心として反転可能に設けられる。この構成によれば、カバー3の正面を覆うラップ4に皺が生じにくくなり、カバー3の正面をラップ4で容易に素早くかつ綺麗に貼り付けることができる。
【0059】
また、本実施形態では、外套部32の一端32aは、収容部31の一端31aにおいて接続される。この構成によれば、ラップ4と外套部32との間に段差を生じさせることなく、カバー3の正面をラップ4で綺麗に貼り付けることができる。
【0060】
また、本実施形態では、外套部32は、収容部31の外周面の1/2以上を覆うように構成される。この構成によれば、外套部32が反転した反転状態を維持することができる。
【0061】
また、本実施形態では、外套部32は、収容部31の高さ方向に沿う断面視にて外側に膨らむ円弧状に設けられる。この構成によれば、外套部32が反転状態から通常状態に反転する際に、外套部32は、その円弧状の復元力を利用して、ラップ4を延伸するように引っ張るので、タイマー1の正面をラップ4でより綺麗に貼り付けることができる。
【0062】
また、本実施形態では、カバー3は、シリコーン樹脂からなる。この構成によれば、カバー3の全体を容易に洗うことができ、食材等に触れる可能性がある場所でも安心して使用することができる。
【0063】
本実施形態に係るタイマー1は、上述したカバー3と、カバー3の収容部31に収容されるタイマー本体2と、を備える。そして、タイマー本体2は、収容部31により覆われない正面21及び背面22と、収容部31により覆われる側面23と、を有する。
【0064】
この構成によれば、溝部34は、タイマー1の正面を覆うラップ4の端部を収容するための収容空間として機能する。ラップ4をタイマー1の正面に貼り付ける際に、ラップ4の端部を溝部34に収容することにより、タイマー本体2にラップ4を容易に被せることができる。さらに、タイマー1の正面がラップ4により覆われるので、タイマー1の正面への油汚れが防止される。
【0065】
また、本実施形態では、タイマー本体2は、電池を用いて作動する電気機器からなり、タイマー本体2の正面21には、操作ボタン26a,26b,26cが設けられ、収容部31は、その一端31aが操作ボタン26a,26b,26cの先端面と面一となるように設けられる。この構成によれば、タイマー1の正面をラップ4で覆うときに、操作ボタン26a,26b,26cがラップ4に押されて、タイマー本体2が誤操作されることを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態では、タイマー本体2の背面22には、磁石27が設けられ、外套部32は、その他端32bが磁石27の吸着端面27bと同じ高さに位置するように設けられる。この構成によれば、タイマー1を磁石27により金属製の壁等に吸着させて使用する際に、外套部32の他端32bは、壁に当接(密着)しているため、油等が溝部34に入り込むことはない。
【0067】
また、本実施形態では、タイマー本体2は、電池を用いて作動する電気機器からなり、タイマー本体2の側面23には、開閉可能な電池蓋が設けられる。この構成によれば、カバー3の収容部31が側面23に設けられる電池蓋を覆うことにより、電池蓋の密閉性を向上させることができ、電池蓋から浸水することが防止される。
【0068】
本実施形態に係るタイマー本体2は、環状の収容部31と、収容部31の内周面に設けられる嵌合部33と、を備えるカバー3に着脱可能に収容されるものであって、収容部31により覆われない正面21及び背面22と、収容部31により覆われる側面23と、嵌合部33に嵌合する被嵌合部24と、を有する。
【0069】
この構成によれば、タイマー本体2の被嵌合部24は、カバー3の嵌合部33に嵌合するので、タイマー本体2が移動不能にカバー3の収容部31に収容される。
【0070】
また、本実施形態では、被嵌合部24は、正面21と側面23との境目に形成される段差部28を有する。この構成によれば、段差部28を利用してカバー3の嵌合部33に嵌合することで、タイマー本体2の被嵌合部24とカバー3の嵌合部33との嵌合が実現される。
【0071】
(変形例)
以下、
図9から
図12を参照しながら、各変形例に係るタイマー1について説明する。なお、各変形例では、上記実施形態と同様の点については、説明を省略し、上述した実施形態と主に異なる点について説明する。
【0072】
図9は、第1変形例に係るタイマー1の断面図である。
図10は、第2変形例に係るタイマー1の正面図である。
図11は、第3変形例に係るタイマー1の正面図である。
図12は、第4変形例に係るタイマー1の正面図である。
【0073】
上記実施形態では、タイマー本体2の被嵌合部24は、凹部29を有しているが、これに限定されるものではなく、例えば、凹部29の代わりに、
図9に示すように、背面22の外縁と磁石27との高低差により形成される第2段差部としての環状(具体的には、略正方形環状)の段差部29aを有してもよい。この場合、嵌合部33は、返し部36の代わりに段差部29aに嵌合する環状のリブ36aを有する。
【0074】
この構成によれば、背面22の外縁に特別な形状(例えば、凹部)を設けることなく、背面22の外縁よりも内側に位置する磁石27を利用するだけで、環状の段差部29aを容易に形成することができる。したがって、タイマー本体2を容易に製造することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、タイマー1は、その外形が正面視にて略正方形をなしているが、これに限定されるものではなく、例えば、三角形、矩形(
図10参照)、五角形等の多角形をなしてもよいし、円形(
図11参照)又は楕円形(
図12参照)等をなしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、タイマー本体2とカバー3とは、その外形が正面視にて一致しているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図11に示すように異なってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、タイマー本体2は、カバー3に着脱可能に収容されているが、これに限定されるものではなく、例えば、カバー3に着脱不能に収容されてもよい。すなわち、タイマー本体2及びカバー3は、一体形成される。
【0078】
さらに、タイマー本体2及びカバー3は、収容部31の一端31a及び他端31bのいずれか一方において接続(例えば、接着又は溶着)されるように一体形成される場合、タイマー本体2に対して収容部31の一端31a及び他端31bのいずれか他方をめくりあげることができるので、タイマー本体2の側面23に電池蓋が設けられたとしても、電池の交換等を行うことができる。
【0079】
さらに、タイマー本体2及びカバー3は、側面23の全体と収容部31の内周面とが接続されるように一体形成される場合、電池蓋は、磁石27と干渉しないようにタイマー本体2の背面22に設けられる。
【0080】
また、上記実施形態では、タイマー本体2は、その側面23全体が収容部31の内周面に接触するようにカバー3に収容されているが、これに限定されるものではなく、例えば、その側面23の一部のみが収容部31の内周面に接触するようにカバー3に収容されてもよい。すなわち、カバー3の収容部31は、タイマー本体2の少なくとも一部を収容するものであればよい。
【0081】
また、本実施形態では、カバー3の収容部31の他端31bには、タイマー本体2の背面22の外縁に形成される略正方形環状の凹部29に嵌合する略正方形環状の返し部36が設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、略正方形環状の返し部36と、タイマー本体2の背面22にせり出すように略正方形環状の返し部36の四隅に位置する抜け防止部とが設けられてもよい。この場合、カバー3の外套部32を反転させる際に、タイマー本体2が抜け防止部により収容部31の他端31b側から抜けにくくなる。
【0082】
(参考例)
以下、参考例1及び参考例2に係るカバー付きタイマーを物品とする意匠について説明する。なお、本物品は、音で経過の時間をユーザに報知するカバー付きタイマーである。具体的には、本物品は、カバーと、カバーに着脱可能に収容されるタイマー本体と、を備える。なお、参考例2では、タイマー本体は、カバーに着脱不能に収容されてもよい。
【0083】
(参考例1)
上記実施形態では、タイマーは、正面視にて略矩形をなしていが、これに限定されるものではなく、例えば、
図13のように円形をなしてもよい。
図13は、参考例1に係る物品としてのカバー付きタイマーの意匠を示す図である。より詳細には、
図13(a)から
図13(f)は、当該カバー付きタイマーの形態を、正投影図法により各図同一縮尺で作成した正面図、背面図、左側面図、右側面図、上面図、及び底面図で表したものである。なお、底面図(
図13(f))は上面図(
図13(e))に対して対称形又は同一形である。また、右側面図(
図13(d))は左側面図(
図13(c))に対して対称形又は同一形である。
【0084】
また、
図14は、
図13(a)におけるA-A線に沿う拡大断面図である。
図15は、参考例1に係るカバー付きタイマーの意匠の斜視図である。より詳細には、
図15Aは、カバー付きタイマーの意匠の正面斜視図であり、
図15Bは、カバー付きタイマーの意匠の背面斜視図である。
図16は、参考例1に係るカバー付きタイマーのカバーの意匠の斜視図である。より詳細には、
図16Aは、カバー付きタイマーのカバーの意匠の正面斜視図であり、
図16Bは、カバー付きタイマーのカバーの意匠の背面斜視図である。
図17は、参考例1に係るカバー付きタイマーのタイマー本体の意匠の斜視図である。より詳細には、
図17Aは、カバー付きタイマーのタイマー本体の意匠の正面斜視図であり、
図17Bは、カバー付きタイマーのタイマー本体の意匠の背面斜視図である。
【0085】
なお、
図13(a)、
図15A及び
図17Aに示され、タイマー本体の正面に設けられる表示部及び操作ボタンの数、形状や配置パターンは、一例に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0086】
(参考例2)
図18は、参考例2に係る物品としてのカバー付きタイマーの意匠を示す図である。より詳細には、
図18(a)から
図18(f)は、当該カバー付きタイマーの形態を、正投影図法により各図同一縮尺で作成した正面図、背面図、左側面図、右側面図、上面図、及び底面図で表したものである。なお、底面図(
図18(f))は上面図(
図18(e))に対して対称形又は同一形である。また、右側面図(
図18(d))は左側面図(
図18(c))に対して対称形又は同一形である。また、
図19は、参考例2に係るカバー付きタイマーの意匠の斜視図である。
【0087】
なお、
図18(a)に示され、タイマー本体の正面に設けられる表示部及び操作ボタンの数、形状や配置パターンは、一例に過ぎず、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0088】
1 タイマー
2 タイマー本体
3 カバー
4 ラップ
21 正面
22 背面
23 側面
24 被嵌合部
26 操作部
27 磁石
31 収容部
32 外套部
33 嵌合部
34 溝部