(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】無機粒子分散スラリー及び無機粒子分散スラリー用分散剤
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20240513BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240513BHJP
C08G 65/26 20060101ALI20240513BHJP
C07C 217/42 20060101ALN20240513BHJP
C07C 217/04 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
C09D17/00
C08L71/02
C08G65/26
C07C217/42
C07C217/04
(21)【出願番号】P 2019200999
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-06-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】浦本 海
(72)【発明者】
【氏名】平川 剛
(72)【発明者】
【氏名】島林 克臣
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517074(JP,A)
【文献】特開2014-205088(JP,A)
【文献】特開2013-221088(JP,A)
【文献】特開2011-098323(JP,A)
【文献】特開平04-189876(JP,A)
【文献】特開昭64-054084(JP,A)
【文献】特開平11-106692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09C 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)を含有してなり、
pH(25℃)が1~6であり、
分散剤(C)が式(1)で表されるポリアミン化合物(Y)を含有してなることを特徴とする無機粒子分散スラリー。
【化1】
R
1~R
5は水素原子、炭素数1~10の炭化水素基及びH-(AO)
s-で表される基(AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基、sは1~80の整数)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、R
1~R
5のうち少なくとも一つはH-(AO)
s-で表される基である。nは1~6の整数、mは0~2の整数、Nは窒素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表す。
【請求項2】
無機粒子(A)が金属酸化物及び/又はカーボンである請求項1に記載の無機粒子分散スラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子分散スラリー及び無機粒子分散スラリー用分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
「(I)(a)アクリル酸40~60モル%と(b)(無水)マレイン酸60~40モル%とを含む共重合体の水溶性塩と、(II)(a)アクリル酸80~95モル%と(b)(無水)マレイン酸20~5モル%とを含む共重合体の水溶性塩を含有し、共重合体(I)100重量部に対して、共重合体(II)30~300重量部を含むことを特徴とする塗被紙用分散剤」、無機粒子(重質・軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、酸化チタン、タルク又はこれらの混合物)及び水からなる無機粒子分散スラリーが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の無機粒子分散スラリーは、pH(25℃)を1~6に調整した場合、十分な流動性が得られないという問題がある。本発明の目的は、pH(25℃)が1~6(好ましくは1~5、さらに好ましくは1.7~4.7)であっても優れた流動性を有する無機粒子分散スラリー及びこのスラリー用の分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無機粒子分散スラリーの特徴は、無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)を含有してなり、
pH(25℃)が1~6であり、
分散剤(C)が式(1)で表されるポリアミン化合物(Y)を含有してなる点を要旨とする。
【0006】
【0007】
R1~R5は水素原子、炭素数1~10の炭化水素基及びH-(AO)s-で表される基(AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基、sは1~80の整数)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、R1~R5のうち少なくとも一つはH-(AO)s-で表される基である。nは1~6の整数、mは0~2の整数、Nは窒素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子を表す。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無機粒子分散スラリーは、pH(25℃)が1~6(好ましくは1~5、さらに好ましくは1.7~4.7)であっても優れた流動性を有する。
【0009】
本発明の分散剤は、pH(25℃)が1~6(好ましくは1~5、さらに好ましくは1.7~4.7)である無機粒子分散スラリーに適用した場合でも優れた流動性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
無機粒子(A)としては、pH1~6の水に対して安定に分散できるものであれば特に制限はなく、金属酸化物及びカーボンが含まれる。
【0011】
金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び酸化チタン等が挙げられる。
【0012】
カーボンとしては、グラファイト及びカーボンブラック等が挙げられる。
【0013】
無機粒子(A)として、金属酸化物及びカーボン以外に、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム及び硫酸セリウム等)、金属ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウム等)、金属(金、ロジウム、パラジウム及び白金等)、窒化物(窒化アルミニウム、窒化ホウ素及び窒化ケイ素等)及びこれらを含む複合体(セピオライト、ゼオライト、コージェライト、ベーマイト、イモゴライト、セリサイト、合金、珪藻土、ハイドロタルサイト、クレー、タルク、マイカ及びガラス等)等も使用できる。
【0014】
無機粒子(A)の含有量(重量%)は、無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)の重量に基づいて、1~80が好ましく、さらに好ましくは10~70、特に好ましくは28~60である。この範囲であると流動性がさらに良好となる。
【0015】
酸(B)としては、無機粒子分散スラリーのpH(25℃)を1~6にすることができるものであれば特に制限はなく、無機酸及び有機酸のいずれでもよく、これらを単独で使用しても混合物にしてもよい。
【0016】
無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クロム酸及びホウ酸等が挙げられる。
【0017】
有機酸としては、カルボン酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸及び酒石酸等)及びスルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン)等が挙げられる。
【0018】
これらの酸のうち、硝酸、ホウ酸及び有機酸が好ましく、さらに好ましくは硝酸及びカルボン酸、特に好ましくは硝酸及び酢酸である。
【0019】
酸(B)の含有量(重量%)は、無機粒子分散スラリーのpH(25℃)を1~6にすることができれば制限はないが、無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)の重量に基づいて、0.1~5が好ましく、さらに好ましくは0.5~4、特に好ましくは1.5~3である。
【0020】
分散剤(C)は、式(1)で表されるポリアミン化合物(Y)を含有してなり、1種類であっても、複数種類の混合物であってもよい。
【0021】
炭素数1~10の炭化水素基としては、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基(メチル、エチル、ブチル、デシル、2-エチルヘキシル、シクロヘキシル及びオクテニル等)及び炭素数6~10の芳香族炭化水素基(フェニル、ベンジル及びナフチル等)等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル、エチル、ブチル、デシル、2-エチルヘキシルである。
【0022】
H-(AO)s-で表される基において、AOとしては、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基であり、1種でもよく2種含んでもよいが、いずれか1種からなることが好ましい。
【0023】
(AO)sに2種のAOを含む場合、ランダム状でもブロック状でもこれらの混合でもよい。
【0024】
sは、1~80の整数であり、好ましくは1~60の整数、さらに好ましくは1~40の整数である。
【0025】
ポリアミン化合物(Y)は、公知の方法(たとえば、ポリアミンとエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとのアルキレンオキシド付加反応や、ポリアミンのケチミン化物とエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとのアルキレンオキシド付加反応及び加水分解反応)により容易に得られる。なお、ポリアミンのケチミン化物を用いる方法は、第1級アミノ基をケトンにより保護し(ケチミン化すなわちイミノ化)、第2級アミノ基に選択的にアルキレンオキシド付加反応をした後、加水分解反応により保護基(イミノ基)を外して第1級アミノ基を復活させる方法である(特開平1-249748号公報等)。
【0026】
ポリアミンとしては、ジアミン{アルキレンジアミン(メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等)及びN-置換ジアミン(N-メチル-エチレンジアミン、N-エチル-エチレンジアミン、N-デシルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及びN-エチル-1,3-プロピレンジアミン等)等};トリアミン{ジアルキレントリアミン(ジエチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン及び3,3’-ジアミノ-ジプロピルアミン等)及びN-置換トリアミン(N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、N,N’,N’’-トリメチルジエチレントリアミン、N,N,N’’,N’’-テトライソプロピルジエチレントリアミン及びN,N,N’’,N’’-テトラブチルジエチレントリアミン等)等};及びテトラミン{トリアルキレンテトラミン(トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン及びN,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン等)及びN-置換テトラミン(N,N’’’-ジイソプロピルトリエチレンテトラミン等)等}が含まれる。これらのうち、流動性の観点から、アルキレンジアミン、N-置換ジアミン、ジアルキレントリアミン及びトリアルキレンテトラミンが好ましく、さらに好ましくはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-デシル-エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンである。
【0027】
ポリアミンのケチミン化物は、ポリアミンとケトンとの反応のより容易に得られるイミンである。
【0028】
ケトンとしては、炭素数3~9のケトンが含まれ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルペンチルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、エチルペンチルケトン、エチルヘキシルケトン、ジプロピルケトン、プロピルブチルケトン、プロピルペンチルケトン及びプロピルヘキシルケトン等が挙げられる。これらのうち、加水分解後のケトンの除去のしやすさの観点から、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルブチルケトンが好ましい。
【0029】
分散剤(C)は、水性溶媒を含有してもよい。水性溶媒としては、水、炭素数1~6のアルコール(エチルアルコール、メチルアルコール、エチレングリコール及びジエチレングリコール等)及び炭素数1~6のケトン(メチルイソブチルケトン及びアセトン等)等が挙げられ、これらは単独又は混合して用いてもよい。
【0030】
分散剤(C)には、水性溶媒を含まないことが好ましいが、水性溶媒を含む場合、水性溶媒の含有量(重量%)は、ポリオキシアルキレン化合物(Y)及び水性溶媒の重量に基づいて、1~90程度が好ましい。またこの場合、ポリアミン化合物(Y)の含有量(重量%)は、ポリアミン化合物(Y)及び水性溶媒の重量に基づいて、10~99程度が好ましい。
【0031】
分散剤(C)の含有量(重量%)は、無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)の重量に基づいて、0.05~30が好ましく、さらに好ましくは0.1~10、特に好ましくは0.5~5である。この範囲であると流動性がさらに良好となる。
【0032】
水(D)としては特に限定はないが、イオン交換水及び超純水等が好ましい。
【0033】
水(D)の含有量(重量%)は、無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)の重量に基づいて、1~90が好ましく、さらに好ましくは20~80、特に好ましくは38~65である。この範囲であると流動性がさらに良好となる。
【0034】
本発明の無機粒子分散スラリーには、無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)以外に、他の構成成分(水溶性有機化合物及び水溶性金属化合物等)や他の添加剤(増粘剤、防錆剤及び消泡剤等)を含有してもよい。
【0035】
水溶性有機化合物としては、水(0~100℃、好ましくは5~60℃)に容易に溶解する有機化合物が含まれ、炭素数1~4のアルコール及び炭素数3~6のケトン等が挙げられる。
【0036】
水溶性金属化合物としては、水(0~100℃、好ましくは5~60℃)に容易に溶解する金属化合物が含まれ、有機酸金属塩、金属硝酸塩、金属オキシ硝酸塩、金属水酸化物及び金属亜硝酸塩等が挙げられる。
【0037】
他の構成成分を含有する場合、他の構成成分の含有量(重量%)は、無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)の重量に基づいて、0.1~70が好ましく、さらに好ましくは0.3~60、特に好ましくは7~54である。
【0038】
増粘剤としては、公知の天然又は合成の増粘剤(無機化合物、セルロース化合物、タンパク質、アクリルポリマー及びビニルポリマー等)が含まれる。
【0039】
防錆剤としては、含窒素有機防錆剤又は多価アルコール部分エステル防錆剤等からなる群より選ばれる少なくとも一種が含まれる。
【0040】
消泡剤としては、公知の水系用の消泡剤(シリコーン系消泡剤、鉱物油系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤及びワックス系消泡剤等)が含まれる。
【0041】
他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量(重量%)は、無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)の重量に基づいて、好ましくは0.1~5、さらに好ましくは0.5~3、特に好ましくは0.5~1である。
【0042】
本発明の無機粒子分散スラリーは、無機粒子(A)、酸(B)、分散剤(C)及び水(D)、並びに必要に応じて他の構成成分及び/又は他の添加剤を均一混合分散できれば、製造方法に制限はなく、公知の混合分散機を用いて得ることができる。無機粒子(A)以外の成分を均一混合してから、無機粒子(A)を分散させることが好ましい。なお、均一混合分散する際、無機粒子が粉砕や破砕を受けてもよい。
【0043】
本発明の無機粒子分散スラリー中の無機粒子(A)の個数平均粒子径(μm)は、0.01~100が好ましく、さらに好ましくは0.02~50、特に好ましくは0.08~40である。
【0044】
個数平均粒子径は、JIS X8825:2013(粒子径解析-レーザー回折・散乱法)に準拠したレーザー回折分析式粒度分布計(たとえば、LA-950V2、株式会社堀場製作所)を用いて求められる。
【0045】
本発明の無機粒子分散スラリーは、各種基材(プラスチック、木、皮革、金属及びセラミックス等)に塗布してもよく、乾燥成型してもよい。また、バインダー等と混合して各種基材に塗布したり、乾燥成形してもよい。さらに、塗布や成型した後に焼結してもよい。
【実施例】
【0046】
以下、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
公知の方法により、以下のポリアミン化合物(Y1)~(Y8){< >内は式(1)に対応する値である}を合成し、それぞれ順に本発明の分散剤(c1)~(c8)とした。また、特許文献1の製造例1に準拠して比較用の分散剤(c9;アクリル酸ナトリウム塩-マレイン酸ナトリウム塩共重合体<アクリル酸ナトリウム塩:マレイン酸ナトリウム塩=50:50(モル%)、Mn=5000>の35%水溶液)を調製した。
【0047】
(Y1)エチレンジアミン・エチレンオキシド4モル・プロピレンオキシド4モルブロック付加体<n=2、m=0、s=2>
(Y2)エチレンジアミン・エチレンオキシド4モル付加体<n=2、m=0、s=1>
(Y3)エチレンジアミン・プロピレンオキシド4モル付加体<n=2、m=0、s=1>
(Y4)エチレンジアミン・エチレンオキシド3モル付加体<n=2、m=0、s=1>(R1は水素原子であり、R2、R4及びR5にはエチレンオキシドを含む。)
(Y5)ヘキサメチレンジアミン・エチレンオキシド8モル付加体<n=6、m=0、s=2>
(Y6)ジエチレントリアミン・プロピレンオキシド10モル付加体<n=2、m=1、s=10>ポリアミンのケチミン化物を用いた例(R1、R2、R4及びR5は水素原子であり、R3にはポリオキシプロピレン鎖を含む。)
(Y7)トリエチレンテトラミン・エチレンオキシド60モル・プロピレンオキシド20モルランダム付加体<n=2、m=2、s=40>ポリアミンのケチミン化物を用いた例(R1、R2、R4及びR5は水素原子であり、R3にはポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン鎖を含む。)
(Y8)N-デシル-エチレンジアミン・エチレンオキシド30モル付加体<n=2、m=0、s=10>(R1はデシル基であり、R2、R4及びR5にはポリオキシエチレン鎖を含む。)
【0048】
<実施例1>
分散剤(c1)2部と水(d1;イオン交換水)55部と酸(b1;酢酸、EP規格、ナカライテスク株式会社)3部を均一混合し、ホモミキサー(HIGH-FLEX DISPERSER、株式会社SMT)を用いて1,000rpmで攪拌しながら、無機粒子(アルミナ、A-11、住友化学株式会社)40部を徐々に加え、加え終わってから1,500rpmにて5分間攪拌を行って、本発明の無機粒子分散スラリー(1)を得た。無機粒子分散スラリー(1)中の無機粒子(a11)の個数平均粒子径は33μmであった。
【0049】
個数平均粒子径は、レーザー回折式粒度分析計(LA-950V2、株式会社堀場製作所)を用い、電気伝導度0.1mS/m以下の水に、測定試料濃度0.1%となるように測定試料を添加して、測定温度25±10℃で測定した。なお、循環液(水)の屈折率1.33、アルミナの屈折率1.66、カーボンブラックの屈折率1.92、酸化チタンの屈折率2.50、親水性シリカの屈折率1.45を用いた。以下同様である。
【0050】
<実施例2~8>
分散剤(c1)を分散剤(c2~c8)のいずれかに変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の無機粒子分散スラリー(2~8)を得た。無機粒子分散スラリー(2)中の無機粒子(a12)の個数平均粒子径は32μmであった。無機粒子分散スラリー(3)中の無機粒子(a13)の個数平均粒子径は32μmであった。無機粒子分散スラリー(4)中の無機粒子(a14)の個数平均粒子径は33μmであった。無機粒子分散スラリー(5)中の無機粒子(a15)の個数平均粒子径は36μmであった。無機粒子分散スラリー(6)中の無機粒子(a16)の個数平均粒子径は33μmであった。無機粒子分散スラリー(7)中の無機粒子(a17)の個数平均粒子径は36μmであった。無機粒子分散スラリー(8)中の無機粒子(a18)の個数平均粒子径は36μmであった。
【0051】
<実施例9>
分散剤(c1)5部と水(d1;イオン交換水)65部と酸(b2;硝酸、JIS試薬特級、ナカライテスク株式会社)2部と無機粒子(カーボンブラック、MA100、三菱化学株式会社)28部を均一混合し、撹拌・脱泡装置(マゼルスターKK-VT300、倉敷紡績株式会社)を用いて撹拌し、超音波分散装置(UP400S、ヒールッシャー社)で30秒間出力240Wで分散させ、本発明の無機粒子分散スラリー(9)を得た。無機粒子分散スラリー(9)中の無機粒子(a21)の個数平均粒子径は0.08μmであった。
【0052】
<実施例10>
分散剤(c1)を分散剤(c2)に変更したこと以外、実施例9と同様にして、本発明の無機粒子分散スラリー(10)を得た。無機粒子分散スラリー(10)中の無機粒子(a22)の個数平均粒子径は0.08μmであった。
【0053】
<実施例11>
無機粒子(酸化チタン、R-820、石原産業株式会社)60部、酸(b1)1.5部、分散剤(c1)0.5部及び水(d1)38部を均一混合した後、ホモミキサー(HIGH-FLEX DISPERSER、株式会社SMT)を用いて1,500rpmにて5分間攪拌を行って、本発明の無機粒子分散スラリー(11)を得た。無機粒子分散スラリー(11)中の無機粒子(a31)の個数平均粒子径は0.49μmであった。
【0054】
<実施例12>
無機粒子(親水性シリカ、ニップシールNA、東ソー・シリカ株式会社)35部、酸(b1)2部、分散剤(c1)3部及び水(d1)60部を均一混合した後、ホモミキサー(HIGH-FLEX DISPERSER、株式会社SMT)を用いて1,500rpmにて5分間攪拌を行って、本発明の無機粒子分散スラリー(12)を得た。無機粒子分散スラリー(12)中の無機粒子(a41)の個数平均粒子径は10μmであった。
【0055】
<実施例13>
酸(b1)を酸(b2)に変更したこと以外、実施例12と同様にして、本発明の無機粒子分散スラリー(13)を得た。無機粒子分散スラリー(13)中の無機粒子(a42)の個数平均粒子径は10μmであった。
【0056】
<比較例1>
分散剤(c1)を水(d1)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(14)の調製を試みたが、無機粒子が沈降してしまい無機粒子分散スラリーを得ることができなかった。
【0057】
<比較例2>
分散剤(c1)を使用しなかったこと以外、実施例1と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(15)を得た。無機粒子分散スラリー(15)中の無機粒子(a19)の個数平均粒子径は37μmであった。
【0058】
<比較例3>
分散剤(c1)を比較用の分散剤(c9)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(16)を得た。無機粒子分散スラリー(16)中の無機粒子(a20)の個数平均粒子径は36μmであった。
【0059】
<比較例4>
分散剤(c1)を水(d1)に変更したこと以外、実施例9と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(17)の調製を試みたが、無機粒子が凝集し全体が固化したため無機粒子分散スラリーを得ることができなかった。
【0060】
<比較例5>
分散剤(c1)を分散剤(c9)に変更したこと以外、実施例9と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(18)を得た。無機粒子分散スラリー(18)中の無機粒子(a23)の個数平均粒子径は0.18μmであった。
【0061】
<比較例6>
分散剤(c1)を水(d1)に変更したこと以外、実施例11と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(19)を得た。無機粒子分散スラリー(19)中の無機粒子(a32)の個数平均粒子径は1.1μmであった。
【0062】
<比較例7>
分散剤(c1)を分散剤(c9)に変更したこと以外、実施例11と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(20)を得た。無機粒子分散スラリー(20)中の無機粒子(a33)の個数平均粒子径は0.72μmであった。
【0063】
<比較例8>
分散剤(c1)を水(d1)に変更したこと以外、実施例12と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(21)を得た。無機粒子分散スラリー(21)中の無機粒子(a43)の個数平均粒子径は12μmであった。
【0064】
<比較例9>
分散剤(c1)を分散剤(c9)に変更したこと以外、実施例12と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(22)を得た。無機粒子分散スラリー(22)中の無機粒子(a44)の個数平均粒子径は11μmであった。
【0065】
<比較例10>
分散剤(c1)を水(d1)に変更したこと以外、実施例13と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(23)を得た。無機粒子分散スラリー(23)中の無機粒子(a45)の個数平均粒子径は12μmであった。
【0066】
<比較例11>
分散剤(c1)を分散剤(c9)に変更したこと以外、実施例13と同様にして、比較用の無機粒子分散スラリー(24)を得た。無機粒子分散スラリー(24)中の無機粒子(a46)の個数平均粒子径は11μmであった。
【0067】
<流動性評価1>
実施例1~8、11~13で調製した無機粒子分散スラリー(1)~(8)、(11)~(13)並びに、比較例2、3及び6~11で調製した無機粒子スラリー(15)、(16)及び(19)~(24)について、BM型粘度計(VISCOMETER TV-20、東機産業株式会社、25℃、60rpm)を用いて粘度(mPa・s)を測定した。さらに、同スラリーのpHをマルチ水質計(MM-43M、東亜ディーケーケー株式会社、25℃)を用いて測定した。これらの結果を下表に示す。
【0068】
【表1】
「-」は無機粒子分散スラリーが得られなかったことを意味し、「∞」は測定範囲(mPa・s)を越えたことを意味する。
【0069】
<流動性評価2>
実施例9及び10で調製した無機粒子分散スラリー(9)及び(10)、並びに比較例5で調製した無機粒子分散スラリー(18)について、E型粘度計(RE80型、東機産業株式会社、25℃、10rpm)を用いて粘度(mPa・s)を測定した。さらに、同スラリーのpHをマルチ水質計(MM-43M、東亜ディーケーケー株式会社、25℃)を用いて測定した。これらの結果を下表に示す。
【表2】
「-」は無機粒子分散スラリーが得られなかったことを意味する。
【0070】
実施例で調製した無機粒子分散スラリーは、比較例で調製した無機粒子分散スラリーに比べて、pH(25℃)が1~6であっても優れた流動性であった。そして、本発明の分散剤は、pH(25℃)が1~6である無機粒子分散スラリーに適用した場合でも優れた流動性を発揮した。