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  • 特許-椅子の作動機構 図1
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  • 特許-椅子の作動機構 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】椅子の作動機構
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/06 20060101AFI20240513BHJP
   A47C 1/024 20060101ALI20240513BHJP
   F16F 9/19 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A47C1/06
A47C1/024
F16F9/19
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020007911
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021112528
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000149789
【氏名又は名称】株式会社大廣製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】廣田 能久
(72)【発明者】
【氏名】松本 新之介
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202155034(CN,U)
【文献】特開2016-073442(JP,A)
【文献】特開2008-142455(JP,A)
【文献】特開2002-045252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/06
A47C 1/024
F16F 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧モーターと油圧アクチュエーターとを備え、前記油圧モーターから前記油圧アクチュエーターへ送られる油圧の流れを制御する弁装置を備えた油圧回路によって椅子の作動を行うものであり、
前記弁装置と前記油圧アクチュエーターとの間に緩衝部を配置し、
前記緩衝部によって、少なくとも1つの前記油圧アクチュエーターへのオイルの一部を待避させて前記油圧アクチュエーターに加わる急激な昇圧を緩和して衝撃の発生を抑制するように構成された椅子の作動機構において、
前記油圧アクチュエーターは、前記椅子の座を昇降させる座シリンダーと、前記椅子の背もたれを傾斜させる背シリンダーと、前記椅子の作動部分をロックさせるロックシリンダーとを備え、
前記油圧回路は、オイルタンク、前記油圧モーター、前記弁装置とで前記オイルの共通の環状の流路が構成されており、前記弁装置から枝分かれして前記座シリンダーへの前記オイルの流路と、前記背シリンダーへの前記オイルの流路と、前記弁装置から枝分かれして前記ロックシリンダーへの前記オイルの流路とが配置され、
前記オイルタンクと前記油圧モーターとは第一共通往路を介して接続され、前記油圧モーターと前記弁装置とは第二共通往路を介して接続され、
前記油圧モーターと前記弁装置との間の前記流路と、前記弁装置と前記座シリンダーとの間の前記流路と、前記弁装置と前記背シリンダーとの間の前記流路とのそれぞれに、前記緩衝部が配置され、前記弁装置と前記ロックシリンダーとの間の前記流路には前記緩衝部が配置されておらず、
さらに、前記緩衝部は第二共通往路にも配置されていることを特徴とする椅子の作動機構。
【請求項2】
前記緩衝部は、シリンダー本体と、ピストンと、前記ピストンを付勢するバネとを備え、前記オイルが前記バネの付勢力に抗して前記シリンダー本体内に導入されることを特徴とする請求項1に記載の椅子の作動機構。
【請求項3】
前記椅子は、基台によって床に設置されるように構成され、被用者の腰を支持する前記座と、前記座の後方側に対して回動可能に設けられた前記背を構成する背もたれとを備え、
前記座シリンダーにて作動する座昇降用リンクが、前記基台と前記座との間に配置され、
前記背シリンダーにて作動する背昇降用リンクが、前記座と前記背もたれとの間に配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子の作動機構。
【請求項4】
全ての前記各緩衝部が一か所にまとめて前記基台付近に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の椅子の作動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の作動機構、特に理美容室で施術を行う際に被施術者が座る椅子などであって、昇降などの作動が油圧機構によって行われる椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
理美容椅子など、作動が油圧機構によって行われるについて椅子は、特許文献1~3に示されるように、油圧シリンダーが駆動手段として用いられるのが一般的である。また、理美容椅子の回転や昇降のロックを行うために、特許文献4に示されるようなロック装置が用いられる場合もあり、このロック装置の駆動手段として油圧シリンダーが用いられる場合もある。
この油圧シリンダーの作動は、油圧回路中の油圧モーターの駆動に伴い、昇圧したオイルの供給によってなされるものであるが、作動開始時に急激な昇圧が生じると、油圧シリンダーの作動が急激に開始されてしまい、椅子に座っている使用者にガクンと言った衝撃を感じさせてしまう場合もある。
特許文献5にあっては、この衝撃の緩和のために弁装置を改良することを提案しているが、弁装置が複雑なものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5451527号
【文献】特許第4798859号公報
【文献】特許第三162642号公報
【文献】特開2003-259929号公報
【文献】特許第5313118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、弁装置をいたずらに複雑化することなく、油圧作動時などの衝撃を緩和して椅子の動きを滑らかにすることができる椅子の油圧作動機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、油圧モーターと油圧アクチュエーターとを備え、前記油圧モーターから前記油圧アクチュエーターへ送られる油圧の流れを制御する弁装置を備えた油圧回路によって椅子の作動を行う椅子の作動機構を改良するものである。
本発明にあっては、前記弁装置と前記油圧アクチュエーターとの間に緩衝部を配置し、前記緩衝部によって、前記油圧アクチュエーターへのオイルの一部を待避させて前記油圧アクチュエーターに加わる急激な昇圧を緩和して衝撃の発生を抑制するものである。
前記緩衝部は、シリンダー本体と、ピストンと、前記ピストンを付勢するバネとを備え、前記オイルが前記バネの付勢力に抗して前記シリンダー本体内に導入されるようにしたものを採用することができる。これによって、昇圧にともなうオイルの一部を前記シリンダー本体内に導入して、待避させることで前記油圧アクチュエーターに加わる急激な昇圧を緩和するものである。
前記油圧アクチュエーターは、前記椅子の座を昇降させる座シリンダーと、前記椅子の背を傾斜させる背シリンダーとを備えたものとして実施することができる。
前記油圧回路は、オイルタンク、前記油圧モーター、前記弁装置とで前記オイルの共通の環状の流路が構成されており、前記弁装置から枝分かれして前記座シリンダーへの前記オイルの流路と、前記背シリンダーへの前記オイルの流路とが配置されたものとすることができる。
そして前記油圧モーターと前記弁装置との間の前記流路と、前記弁装置と前記座シリンダーとの間の前記流路と、前記弁装置と前記背シリンダーとの間の前記流路とのそれぞれに、前記緩衝部が配置される。
さらに、前記油圧アクチュエーターは、前記椅子の作動部分をロックさせるロックシリンダーを備えたものとして実施することができる。
前記油圧回路には、前記弁装置から枝分かれして前記ロックシリンダーへの前記オイルの流路がさらに配置されるが、前記弁装置と前記ロックシリンダーとの間の前記流路には前記緩衝部が配置されていないものであっても構わない。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、弁装置をいたずらに複雑化することなく、油圧作動時などの衝撃を緩和して椅子の動きを滑らかにすることができる椅子の油圧作動機構を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態に係る椅子の下降時の側面図。
図2】同椅子の上昇時の側面図。
図3】同椅子の油圧回路の回路図。
図4】同椅子の衝撃吸収シリンダーの構造説明図。
図5】(A)~(E)はそれぞれ同椅子の油圧回路の弁装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照しながら本発明の実施の形態を説明する
【0009】
(椅子の構造)
この実施の形態に係る椅子は、図1及び図2に示すように、被用者の腰を支持する座12と、座12の後方側に対して回動可能に設けられた背もたれ13と、座12の前方側に対して回動可能に設けられたケリ板14とを備えている。
この椅子は基台11によって床に設置され、基台11と座12の間には座昇降用リンク15が設けられることによって座12すなわち椅子全体が座シリンダー24の作動によって昇降可能となっている。また、座12と背もたれ13との間には背昇降用リンク16が設けられ、座12に対する背もたれ13の角度調整が背シリンダー25 の作動によってなされるものである。
図1及び図2には示さないが、椅子の昇降や回転などがなされないようにするために、特許文献4に示すようなロック機構(図示せず)も設けられている
【0010】
(油圧回路)
次に図3を参照しながら、この椅子の作動に適用することができる油圧回路20を説明する。
この油圧回路20は、オイルタンク21、油圧モーター22、弁装置23で環状の油圧用のオイルの流路が構成されており、弁装置23から枝分かれして座シリンダー24、背シリンダー25、ロックシリンダー26が配置され、これらへ油圧モーター22から加圧されたオイルが供給される。
オイルタンク21と油圧モーター22とは第一共通往路27を介して接続され、油圧モーター22と弁装置23とは第二共通往路28を介して接続され、弁装置23とオイルタンク21とは共通復路29を介して接続されている。弁装置23と座シリンダー24とは座往復路31を介して接続され、弁装置23と背シリンダー25とは背往復路32を介して接続され、弁装置23とロックシリンダー26とはロック往復路33を介して接続されている。
座シリンダー24は座12の昇降をなすためのアクチュエーターであり、背シリンダー25は背もたれ13の昇降をなすためのアクチュエーターであり、ロックシリンダー26はロック機構のロックをなすためのアクチュエーターである。
これらの油圧用の経路は、パイプやチューブによって構成されるもので、第二共通往路28、座往復路31、背往復路32、ロック往復路33は耐圧性の高いパイプやチューブによって構成されている
【0011】
(衝撃部)
第二共通往路28の流路中には共通緩衝部34が設けられ、座往復路31の流路中には座緩衝部35が設けられ、背往復路32の流路中には背緩衝部36が設けられているが、ロック往復路33の流路中には衝撃部が設けられていない。これは、ロック機構は軸などを固定するためのもので、たとえ衝撃が生じても使用者に対して不快感を与えることがないためであるが、ロック往復路33の流路中に緩衝部を設けて実施しても構わない。
各緩衝部34、35、36は、別々の位置に配置しても構わないが、この実施の形態では微調整やメンテナンス作業が容易なように、図1図2に示すように緩衝装置37として一か所まとめて基台11付近に配置されている
【0012】
(衝撃吸収シリンダー40)
それぞれの緩衝部34、35、36は、衝撃吸収シリンダー40によって構成されている。この衝撃吸収シリンダー40は図4に示すように、シリンダー本体41と、シリンダー本体41の内部を摺動するピストン42と、シリンダー本体41の先端に設けられて各流路に導通している接続部44と、シリンダー本体41の基端とピストン42との間に配置された吸収用バネ43とを備えている。各流路内の油圧が高まるとオイルが接続部44からシリンダー本体41の内部に流入する。オイルの流入は、オイルの油圧と吸収用バネ43の付勢力とが均衡するまでなされるものであり、各流路内の油圧が低下すると吸収用バネ43の付勢力によってピストン42が先端側に移動してシリンダー本体41の内部のオイルが各流路内へ流出する。この作用(オイルがシリンダー本体41内部に流入する作用)によって、各流路内の圧力が急激に高まった場合でも、それぞれの緩衝部よりも下流側の各アクチュエーター(座シリンダー24、背シリンダー25)に対する油圧の圧力が急激に高まることを抑制することができる。これによって各アクチュエーター(座シリンダー24、背シリンダー25)がガクンと急激に作動することを抑制し、使用者への不快感を緩和して滑らかな動きを実現することができる
【0013】
(弁装置23)
次に図5を参照して、弁装置23について説明する。この弁装置23は、第二共通往路28と共通復路29とにそれぞれ接続される流路を分岐する分岐路とそれぞれの開閉をなす電磁弁などの弁を備えたものである。
この弁装置23は、第二共通往路28からのオイルを座往復路31、背往復路32、ロック往復路33に分配して各アクチュエーター(座シリンダー24、背シリンダー25、ロックシリンダー26)へ送るとともに、各アクチュエーター(座シリンダー24、背シリンダー25、ロックシリンダー26)の座往復路31、背往復路32、ロック往復路33からのオイルを選択的に共通復路29へ戻すものである。具体的には、往路側には、第二共通往路28からの3本の分岐路にそれぞれ接続された往路第一弁51、往路第二弁52、往路第三弁53の各開閉用の電磁弁を備える。復路側には、各アクチュエーター(座シリンダー24、背シリンダー25、ロックシリンダー26)にそれぞれ接続された復路第一弁61、復路第二弁62、復路第三弁63の電磁弁を備え、これらは共通復路29へ接続されている。なお、三方弁などを採用することによって弁の数を減らすなどしても構わない
【0014】
(座シリンダーのオイルの流れ)
通常、装置が作動していない時には図5(A)に示すように、全ての弁が閉成状態となっている。
この状態で座12を上昇させる場合、座シリンダー24を伸長させるために制御部(図示せず)の座上昇スイッチを入れる。これによって弁装置23の往路第一弁51が開く(図5(B)参照)。なお、図5では、開成状態の弁を白丸で示し、閉成状態の弁を黒丸で示すもので、図5(B)では他のすべての弁は閉じているものである。この状態で油圧モーター22が作動し、オイルタンク21からのオイルが第二共通往路28を介して弁装置23へ送られると、開いている往路第一弁51から座往復路31を介してオイルが座シリンダー24に送られる。これによって、座昇降用リンク15が作動して座12が上昇する。
その際、共通緩衝部34によって弁装置23に対する油圧の急激な上昇が緩和され、さらに座緩衝部35によって座シリンダー24に対する油圧の急激な上昇が緩和される。このように2段階で油圧の急上昇が緩和されるため、それぞれの衝撃吸収シリンダー40の容量を極端に大きくしたり吸収用バネ43の付勢力を大きくしたりしなくとも、より緩やかな座シリンダー24の動きを確実に実現することができる。
座12が所定位置まで上昇すると、その位置で停止させるために、図5(A)に示すように、全ての弁が閉成状態となり、油圧モーター22が停止する。
次に、座12を下降させる場合、座シリンダー24を収縮させるために制御部(図示せず)の座下降スイッチを入れる。
これによって図5(C)に示すように、復路第一弁61のみが開成状態となり、座シリンダー24の内部のオイルがオイルタンク21に戻され、椅子の自重によって座12ならびに椅子全体が下降する
【0015】
(背シリンダーのオイルの流れ)
背もたれ13を上方へ回動させて立てる場合、背シリンダー25を伸長させるために制御部(図示せず)の背上昇スイッチを入れる。これによって電磁弁の往路第二弁52が開く(図5(D)参照)。この状態で油圧モーター22が作動し、オイルタンク21からのオイルが第二共通往路28を介して弁装置23へ送られると、開いている往路第二弁52から背往復路32を介してオイルが背シリンダー25に送られる。これによって、背昇降用リンク16が作動して背もたれ13が上昇する。
その際、共通緩衝部34によって弁装置23に対する油圧の急激な上昇が緩和され、さらに背緩衝部36によって背シリンダー25に対する油圧の急激な上昇が緩和される。このように2段階で油圧の急上昇が緩和されるため、それぞれの衝撃吸収シリンダー40の容量を極端に大きくしたり吸収用バネ43の付勢力を大きくしたりしなくとも、より緩やかな背シリンダー25の動きを確実に実現することができる。
背もたれ13を、所定の位置で停止させる際には、図5(A)に示すように、全ての弁が閉成状態となり、油圧モーター22が停止する。
次に、背もたれ13を下降させる場合、背シリンダー25を収縮させるために制御部(図示せず)の背下降スイッチを入れる。
これによって図5(E)に示すように、復路第二弁62のみが開成状態となり、背シリンダー25の内部のオイルがオイルタンク21に戻され、背もたれ13の自重によって背もたれ13が下方に回動する
【0016】
(ロックシリンダーのオイルの流れ)
ロックシリンダー26についても、上述の座昇降用リンク15及び背昇降用リンク16と同様の動きをするものであり、ロックシリンダー26を上昇させるスイッチを入れると弁装置23の往路第三弁53が開き、油圧モーター22がオイルタンク21からオイルをロックシリンダー26に送ることによってロックシリンダー26が伸長してロック用の軸を上昇させる。この場合には、ロック往復路33には緩衝部が設けられていないが、共通緩衝部34のみは作動して極端に大きな油圧が弁装置23やロックシリンダー26に作用することを抑制することができる。
ロックを解除する場合は、ロックシリンダー26を収縮させるスイッチを入れると復路第三弁63が開きロックシリンダー26の内部のオイルをオイルタンクに戻す。
以上、本発明は、上記の実施の形態の他、種々の椅子に適用することができるし、シリンダー及び緩衝部の数も適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0017】
11…基台
12…座
13…背もたれ
14…ケリ板
15…座昇降用リンク
16…背昇降用リンク
20…油圧回路
21…オイルタンク
22…油圧モーター
23…弁装置
24…座シリンダー
25…背シリンダー
26…ロックシリンダー
27…第一共通往路
28…第二共通往路
29…共通復路
31…座往復路
32…背往復路
33…ロック往復路
34…共通緩衝部
35…座緩衝部
36…背緩衝部
37…緩衝装置
40…衝撃吸収シリンダー
41…シリンダー本体
42…ピストン
43…吸収用バネ
44…接続部
51…往路第一弁
52…往路第二弁
53…往路第三弁
61…復路第一弁
62…復路第二弁
63…復路第三弁
図1
図2
図3
図4
図5