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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】配管加工用具
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/06 20060101AFI20240513BHJP
   F16L 1/028 20060101ALI20240513BHJP
   B23D 21/14 20060101ALI20240513BHJP
   B23D 21/02 20060101ALI20240513BHJP
   B26D 3/06 20060101ALI20240513BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B26D1/06 Z
F16L1/028 L
B23D21/14 C
B23D21/02 B
B26D1/06 A
B26D3/06
B26D7/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020022294
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021126728
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】寺田 孝
(72)【発明者】
【氏名】西條 一樹
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05507597(US,A)
【文献】米国特許第05112158(US,A)
【文献】特開2003-340776(JP,A)
【文献】特開昭57-120789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0018007(US,A1)
【文献】登録実用新案第3094269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/06
F16L 1/028
B23D 21/14
B23D 21/02
B26D 3/06
B26D 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側端部に入口と出口とが形成された既設配管に進入可能な本体部と、前記本体部を既設配管内に案内する索状体に前記本体部を接続する接続部と、を備え、
前記本体部は既設配管の内径よりも外径が小さい基部と、前記基部から径外方向に突出し、既設配管に作用することで既設配管を加工する加工手段と、を備え、
前記接続部は、前記基部における径方向と直交する方向の両端から索状体が延びるように前記基部を索状体に接続するよう構成され、
前記加工手段は、前記既設配管の内部を移動しながら前記既設配管を加工するように構成されるとともに、前記基部の径方向と直交する方向の一端側から既設配管に進入して既設配管を加工する場合と前記基部の径方向と直交する方向の他端側から既設配管に進入して既設配管を加工する場合とで異なる加工ができるよう構成され、
前記加工手段が前記既設配管に対してする加工は、前記既設配管の内周面に管軸方向に沿う溝を形成する溝付け、前記既設配管を径方向及び管軸方向に切断する切断、又は、前記既設配管の内径を拡径する拡径、であり、
前記基部は、径方向と直交する軸方向の両端部に縮径された縮径部を備え、
前記加工手段は、前記溝付け又は前記切断をするための刃先を有する刃物と、前記拡径をするための拡径具と、を備え、
前記刃物は、前記基部に対して前記刃先が軸方向一端側を向くように取付け及び取外し可能であり、
前記拡径具は、前記既設配管の内径よりも外径が小さい小径部と、前記既設配管の内径よりも外径が大きい大径部と、を備え、前記基部に対して前記小径部が軸方向他端側を向くように取付け及び取外し可能に構成されている配管加工用具。
【請求項2】
両側端部に入口と出口とが形成された既設配管に進入可能な本体部と、前記本体部を既設配管内に案内する索状体に前記本体部を接続する接続部と、を備え、
前記本体部は既設配管の内径よりも外径が小さい基部と、前記基部から径外方向に突出し、既設配管に作用することで既設配管を加工する加工手段と、を備え、
前記接続部は、前記基部における径方向と直交する方向の両端から索状体が延びるように前記基部を索状体に接続するよう構成され、
前記加工手段は、前記基部に対して着脱可能であるとともに、前記基部の径方向と直交する方向の一端側から既設配管に進入して既設配管を加工する場合と前記基部の径方向と直交する方向の他端側から既設配管に進入して既設配管を加工する場合とで異なる加工ができるよう構成され
前記基部は、径方向と直交する軸方向の両端部に縮径された縮径部を備え、
前記加工手段は、前記既設配管の内周面に管軸方向に沿う溝を形成する溝付け、又は、前記既設配管を径方向及び管軸方向に切断する切断をするための刃先を有する刃物を備え、
前記刃物は、前記基部に対して前記刃先が軸方向一端側を向くように取付け及び取外し可能であり、かつ、前記基部に対して前記刃先が軸方向他端側を向くように取付け及び取外し可能に構成されている配管加工用具。
【請求項3】
両側端部に入口と出口とが形成された既設配管に進入可能な本体部と、前記本体部を既設配管内に案内する索状体に前記本体部を接続する接続部と、を備え、
前記本体部は既設配管の内径よりも外径が小さい基部と、前記基部から径外方向に突出し、既設配管に作用することで既設配管を加工する加工手段と、を備え、
前記基部は、前記加工手段を取り付け可能な加工手段装着部を備え、
前記加工手段装着部は、前記基部を貫通するように形成された貫通孔が形成されており、
前記加工手段は、前記貫通孔に挿入可能な挿入部と、該挿入部の両端に設けられた刃と、を有し、前記貫通孔に挿入した前記挿入部が前記加工手段装着部に固定されることで、前記加工手段装着部に装着され
前記挿入部の両端に設けられた刃は、刃先が同じ方向を向くように設けられ、前記挿入部が前記加工手段装着部に固定された状態で前記基部に対して径外方に突出する配管加工用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設配管を新配管に更新する際に用いられる配管加工用具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、既設配管を新配管に更新する際の配管更新方法、および配管更新方法に用いられる既設配管の加工具としての切断工具が開示されている。なお、特許文献1では、既設配管として給水用配管を用いている。
【0003】
特許文献1の配管更新方法では、給水本管側である既設配管の分岐側に、ワイヤを巻き取ったウインチを準備するとともに、家屋側であるメーター側に切断工具を準備する。続いて、既設配管の内部の分岐側からメーター側にワイヤを通し、メーター側に露出したワイヤに切断工具を取付ける。そして、ウインチを操作し、ワイヤを巻き取ることにより、切断工具によって既設配管を分割し、その後に既設配管を抜き取って新配管に更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-34941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、既設配管の種類によっては、上記した切断工具では既設配管を一度に分割できないこともあり得、また、異なる加工をする必要もあり得る。そうなると、既設配管に対して複数の異なる加工をする必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1の配管更新方法に用いられる加工具では、分岐側からメーター側(一方側から他方側)への引張り施工であるため、既設配管に対して複数の加工を行う毎に既設配管にワイヤを通したうえで、ウインチと反対側に、加工毎に異なる加工具を配置しなければならない。このような場合では、配管更新方法の施工に手間がかかる。
【0007】
そこで本発明は、既設配管を新配管に更新するのにかかる手間を低減した配管加工用具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる配管加工用具は、両側端部に入口と出口とが形成された既設配管に進入可能な本体部と、前記本体部を既設配管内に案内する索状体に前記本体部を接続する接続部と、を備え、前記本体部は既設配管の内径よりも外径が小さい基部と、前記基部から径外方向に突出し、既設配管に作用することで既設配管を加工する加工手段と、を備え、前記接続部は、前記基部における径方向と直交する方向の両端から索状体が延びるように前記基部を索状体に接続するよう構成され、前記加工手段は、前記基部の径方向と直交する方向の一端側から既設配管に進入して既設配管を加工する場合と前記基部の径方向と直交する方向の他端側から既設配管に進入して既設配管を加工する場合とで異なる加工ができるよう構成されている。
【0009】
上記構成によれば、基部の両端から索状体が延び、かつ、基部の一端側から既設配管に進入する場合と基部の他端側から既設配管に進入する場合とで異なる加工ができるから、両端の索状体で牽引することによる既設配管内での往復運動を利用して、既設配管の入口から出口へ基部の一端側が先頭で進入する往動の場合と、既設配管の出口から入口に基部の他端側が先頭で進入する復動の場合とで異なる加工をすることができ、既設配管に対して効率のいい加工が可能である。
【0010】
また、前記基部は、径方向と直交する方向の両端部分にそれぞれの端部に向かうにつれて先細りとなる小径部を備えるよう構成されてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、基部の両端が先細り形状とされるので、基部の一端側が先頭で既設配管に進入する往動の場合も基部の他端側が先頭で既設配管に進入する復動の場合も本体部を既設配管に挿入しやすくなる。
【0012】
また、前記接続部は、前記基部における径方向と直交する方向を軸として前記基部が索状体に対して回転可能であるように前記基部を索状体に接続するよう構成されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、基部は、既設配管内で基部における径方向と直交する方向を軸として回転可能となるため、既設配管加工作業中に既設配管から受ける抵抗によって加工手段が既設配管の管軸中心に回転する方向に力を受けたとしても、力に従って基部が回転し、力を逃がすので、加工手段にかかる力が少なくなる。また、索状体がねじれており、索状体がねじれを解くように回転した場合でも、索状体のみが回転し、基部に索状体の回転力が伝わらないため、加工手段に力がかかることを防ぐことができる。そのため、既設配管加工作業中に加工手段が破損することを防ぐことができる。
【0014】
また、前記加工手段は、前記基部から径外方向に突出し、かつ、前記基部における径方向と直交する方向まわりである周方向の異なる位置に配置される複数の加工部を含んでもよい。
【0015】
上記構成によれば、複数の加工部が基部から径外方向に突出し、かつ、基部の周方向の異なる位置に配置されるため、本体部を既設配管の入口側から出口側へ、又は出口側から入口側へ往復移動させることで、既設配管の周方向の複数の位置を同時に加工することができ、既設配管加工作業の効率が高まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の配管加工用具によれば、既設配管を新配管に更新するための手間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一の実施形態に係る配管加工用具を用いた配管更新工法の対象である配管の、建築物への配置例を示す概略図である。
図2】前記配管更新工法に用いるウインチと配管加工用具との組み合わせを示す概略図である。
図3】(a)は基部の半断面図である。(b)は基部に取付けられる第一刃物の平面図である。(c)は基部に取付けられる第二刃物の平面図である。(d)は基部に取付けられる第三刃物の平面図である。
図4】(a)は前記配管更新工法における溝付け工程の準備段階を示す軸方向断面図である。(b)は溝付け工程(1段階目)を示す軸方向断面図である。(c)は溝付け工程(1段階目)の後の既設配管の径方向断面図である。(d)は溝付け工程(2段階目)を示す軸方向断面図である。(e)は溝付け工程(2段階目)の後の既設配管の径方向断面図である。
図5】(a)は前記配管更新工法における溝付け工程(3段階目)を示す軸方向断面図である。(b)は溝付け工程(3段階目)の後の既設配管の径方向断面図である。(c)は溝付け工程(4段階目)を示す軸方向断面図である。(d)は溝付け工程(4段階目)の後の既設配管の径方向断面図である。(e)は既設配管分割工程を示す軸方向断面図である。(f)は既設配管分割工程の後の既設配管の径方向断面図である。
図6】(a)は第一刃物が取付けられた基部と接続部との接続状態を示す軸方向断面図である。(b)は第二刃物が取付けられた基部と接続部との接続状態を示す軸方向断面図である。(c)は第三刃物が取付けられた基部と接続部との接続状態を示す軸方向断面図である。
図7】本発明の第二の実施形態にかかる加工手段に含まれる拡径具の斜視図である。
図8】前記拡径具の分解斜視図である。
図9】(a)は、前記拡径具の正面図である。(b)は前記拡径具の側面図である。(c)は、(b)のC-C断面図である。
図10】本発明の第二の実施形態に係る配管更新工法であり、(a)は配管更新工法における溝付け工程の準備段階を示す軸方向断面図である。(b)は溝付け工程(1段階目)を示す軸方向断面図である。(c)は溝付け工程(1段階目)の後の既設配管の径方向断面図である。(d)は溝付け工程(2段階目)を示す軸方向断面図である。(e)は溝付け工程(2段階目)の後の既設配管の径方向断面図である。
図11】(a)は既設配管切断工程を示す軸方向断面図である。(b)既設配管切断工程の後の既設配管の径方向断面図である。(c)は拡径工程を示す軸方向断面図である。(d)は拡径工程後の既設配管の径方向断面図である。
図12】(a)は第一刃物を取り付けられた基部と接続部との接続状態を示す軸方向断面図である。(b)は第二刃物を取り付けられた基部と接続部との接続状態を示す軸方向断面図である。(c)は第三刃物を取り付けられた基部と接続部との接続状態を示す軸方向断面図である。(d)は拡径具を取り付けられた基部と接続部との接続状態を示す軸方向断面図である。
図13】本発明の別の実施形態にかかる概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る配管加工用具を用いた配管加工装置を説明する。第一の実施形態の配管加工用具を用いた配管加工装置は、既設配管を切断して撤去したうえで新たなフレキシブルな新配管を設置する配管更新工法に用いるものである。既設配管の一例は、給水配管、給湯配管である。はじめに、一般的な建築物(家屋)に用いられる給湯配管および給水配管の概略について説明する。
【0019】
図1に示すように、一般的に、家屋における給湯配管Yおよび給水配管は、床材Fによって、管軸方向(管の軸方向に沿った方向)の少なくとも途中部分が覆われている。また、管軸方向の、給湯および給水方向を基準とした入口5および出口6が、床材Fから露出されている。
【0020】
給湯配管Yおよび給水配管については同様の構成であるので、給湯配管Yを給水配管に兼用して説明すると、給湯配管Yは、保護材G(断熱材)に、例えばポリエチレン管(PE管)、架橋ポリエチレン管(PE-X管)、ポリブテン管(PB管)、また、金属強化樹脂管等、アルミニウム合金等の金属層を挟んだ多層管とすることもできる。また、給湯配管Yは、床材Fの下側に配置されたスラブB等に、バンドI等によって管軸方向に固定されている。
【0021】
第一の実施形態の配管加工用具に係る配管更新工法、および配管加工用具を備えた配管加工装置を具体的に説明する。配管更新工法は、
(1)溝付け工程…既設配管Poの内周面に管軸方向に沿う溝Sを形成する工程、
(2)既設配管分割工程…既設配管Poを径方向および管軸方向に切断することにより、複数の切断片Psに分割する工程、
(3)引抜工程…切断片Psを保護材Gから引き抜くようにする工程、
(4)新配管挿入工程…新配管Pnを保護材Gの内周面に沿わせて保護材Gの内部に通す工程、
を有する。また、既設配管Poの管軸方向は、直線に延長される場合、あるいは、既設配管Poに湾曲部分が存在した場合でも、この配管更新工法が行われる。
【0022】
配管更新工法に先立ち、説明の便宜上、配管加工装置を説明する。なお、以下における「左右」は説明の便宜上用いており、方向が以下説明のものに限定されることはない。
【0023】
配管加工装置は、図2に示すように、入口側索状体と、入口側牽引部(巻上機である右ウインチ1R)と、出口側索状体と、出口側牽引部(巻上機である左ウインチ1L)と、配管加工用具9と、を備える。配管加工用具9は、本体部7と、接続部12と、を備える。
【0024】
入口側牽引部、出口側牽引部は、施工対象、すなわち給湯配管Yの入口5側、出口6側に一台ずつ配置される。入口側牽引部は、給湯配管Yの入口5側に配置された右ウインチ1Rを備え、出口側牽引部は、給湯配管Yの出口6側に配置された左ウインチ1Lを備える。また、右ウインチ1Rには、入口側索状体である右ワイヤ11が巻解き自在に巻回され、左ウインチ1Lには、出口側索状体である左ワイヤ11が巻解き自在に巻回されている。このように、右ウインチ1R、左ウインチ1Lは二台で一組として用いられる。
【0025】
右ウインチ1R、左ウインチ1Lは、右ワイヤ11および左ワイヤ11がつながった状態(基部2等を介して連結された状態)で、一組中の一台はワイヤ11に引張力を発し、他の一台は引張力を受けてワイヤ11が引き出される。なお、何れのウインチであっても、その駆動方式は手動であってもいいし、電動等、原動機の動力を利用するものであってもよい。
【0026】
基部2の側面視の半断面形状を、図3(a)に示す。基部2は、略円柱形状であり、長手方向両端には、縮径された小径部23を備える。即ち、基部2の径方向と直交する方向の両端部分には、それぞれの端部に向かうにつれて先細りとなる小径部23が備えられる。基部2の最大径部分における外径寸法は、工事対象の既設配管Poの内径よりも小さい。そのため、基部2は既設配管Poから受ける抵抗が少なく、既設配管Po内をスムーズに移動できる。また、基部2の径方向と直交する方向の両端部分にそれぞれ小径部23が備えられるので、基部2を、一端側を先頭にして既設配管Poに進入させる場合と、他端側を先頭にして既設配管Poに進入させる場合とのいずれの場合にも基部2を既設配管Poに進入させやすくなる。さらに、基部2は、加工手段4が装着される加工手段装着部22を備える。
【0027】
基部2の長手方向両端の径方向中央に、接続受部21が設けられている。接続受部21は、後述する接続部12と接続可能に構成されており、本実施形態において、接続受部21は、雌ねじであり、後述する接続部12の雄ねじ部162と螺合可能に構成されている。
【0028】
基部2の側面には、加工手段4を取り付け可能な加工手段装着部22が備えられる。加工手段装着部22は、基部2の側面から基部2の略軸心を通り裏側の側面まで貫通するよう形成された貫通孔221と、貫通孔221から周方向に90度ずれて形成されるねじ穴222と、を備える。また、本実施形態において、ねじ穴222は雌ねじであり、雄ねじである固定ねじ(図示しない)がねじ穴222に嵌め込まれることで、加工手段4を固定可能である。
【0029】
基部2は基部2における径方向と直交する軸方向にずれて2か所に、加工手段装着部22を備える。具体的に、加工手段装着部22は、それぞれの加工手段装着部22の貫通孔221が基部2における軸方向視で直交するように備えられる。
【0030】
ここで、本体部7を構成する一部であって、加工手段装着部22に装着される加工手段4について説明する。本実施形態で、この加工手段4は、平面状(扁平状)であって基部2に取付けた状態で径外方向に突出し、既設配管Poに対して切断を行う刃41を有している。本実施形態では、既設配管Poを内径側から切削加工する加工刃として、刃41を備えたもの、具体的には、両端部に刃41を備えたものが加工手段4に含まれており、既設配管Poへの切込みの深さに応じ、加工手段装着部22への装着時に径方向の長さが異なる第一刃物4A(図3(b))、第二刃物4B(図3(c))、第三刃物4C(図3(d))の3種を用いている。即ち、加工手段4は、既設配管Poに対して異なる加工ができるように、複数種類の加工部材を含む。
【0031】
各刃物4A~4Cは扁平状に形成され、刃板8の両側に刃41が配置される。この刃41は、刃板8を基準にした高さに相違がある。すなわち、刃41の低い側が刃先42となり、高い側が刃元43となって刃板8が加工手段装着部22に装着される。刃先42の先端421は刃41のうち最も刃板8を基準にした高さが最も低く、その高さは各刃物4A~4Cを基部に装着した際に、基部2の側面と略同じ高さである。また、刃先42は刃元43に近づくにつれて高さが増すよう構成されている。
【0032】
刃板8には、中央部分に取付孔8aが形成されている。ねじ穴222に固定ねじが嵌め込まれることで、取付孔8aに固定ねじの先端が嵌り、刃物4A~4Cは基部2に取り付けられる。つまり、各刃物としての加工刃は、中央部に加工手段装着部への装着部と、両端部に刃と、を備える。両端部の刃は刃先が同じ方向、具体的には、刃板の幅方向一方側の方向に向けて設けられている。
【0033】
このように本実施形態では、加工手段4は、既設配管Poに加工される切込みの深さを変更可能とするよう構成されている。なお、各刃物4A~4Cの使い分けについては後述する。
【0034】
ワイヤ11の先端には接続部12が設けられている。接続部には、索状体に接続される索状体側接続部と、基部に接続される基部側接続部と、索状体側接続部に対して基部側接続部が回転可能となるように両接続部を連結する回転連結部と、を備える。接続部12は、ワイヤ11の先端を外嵌する索状体側接続部としての接続部本体13と、接続部本体13に内蔵された回転連結部としてのベアリング14と、軸部15と、軸部15と同軸に備えられる基部側接続部としてのねじ部16とを備えており、ねじ部16はねじ部16を回転操作するための操作部161と、基部2の接続受部21に接続可能な雄ねじ部162と、を備える。具体的に、接続部本体13は、ベアリング14の外輪141に取り付けられ、軸部15は、ベアリング14の内輪142に取り付けられる。また操作部161は、雄ねじ部162よりも大径に備えられる。本実施形態の接続部12は、基部2の軸方向一端側と軸方向他端側とに各々設けられ、一方の接続部12が一方のワイヤ11を基部2の一端側に接続し、他方の接続部12が他方のワイヤ11を基部2の他端側に接続する。接続されたワイヤ11は、基部2に対して同軸上に延出する。
【0035】
次に、配管更新工法を順次説明する。図4に示すように、既設配管(給湯用の配管)Poは、外周が管状の保護材Gにより覆われている。既設配管Poおよび新配管Pnは樹脂管であって、例えばポリエチレン管である。樹脂管は、アルミニウム合金等の金属層を挟んだ多層管とすることもできる。保護材Gは、既設配管Poおよび新配管Pnの外径寸法以上の内径寸法を有しており、発泡樹脂等の柔軟な材料、例えば発泡ポリエチレンから形成されていて、径方向において断熱および保温の機能を有している。各配管Po,Pnから保護材Gが径外方向への外力を受けた場合に、保護材Gは、内径の軸線がずれるように変形、または内径部が径外方向へ圧縮変形される程度の柔軟性を有していればよい。
【0036】
本実施形態においては、保護材Gは、既設配管Poおよび新配管Pnの抜き差しに際して各配管Po,Pnから保護材Gが外力を受けた場合に、軸線がずれるような変形、または、径方向への圧縮変形がなされる程度の柔軟性を有していればよい。ちなみに、従来の工法(例えば特開2004-150145号公報)では、保護材から既設配管を引き抜く際、また、既設の保護材に新配管を通す際に、発泡樹脂等の柔軟な材料から形成された保護材が用いられていると、コーナー部やバンド固定部で配管が保護材を突き破って破損してしまう。すなわち、柔軟な材料から形成された保護材に対して、従来の工法では施工できなかった。
【0037】
なお、配管更新後の新配管Pnも建築物Cに対して既設配管Poと同じ形態で配置される。また、既設配管Poにおいて管軸方向の入口5および出口6が、床材Fから上方に露出されており、既設配管Poの入口5は例えば給湯器(図示しない)にヘッダーHを介して接続され、出口6は、例えば浴室の水栓Vに接続されている。既設配管Poは、通水時の水圧で挙動しない(暴れない)よう、床材Fの下方に位置するスラブBに、バンドI等によって管軸方向において所定間隔で固定されている。なお、この固定に際しては、保護材GはバンドとスラブBにより径内方向への外力を受け、柔軟な材料で形成された保護材Gの外径は外力によって圧縮されて縮径されている。
【0038】
上記(1)溝付け工程は、既設配管Poの内周面に管軸方向に沿う溝(スリット)Sを形成する工程である。溝付け工程前は、既設配管Poには何ら加工は施されていない。溝付け工程に先立ち、図4(a)に示すように、右ウインチ(図示せず)から、接続部12付きの右ワイヤ11が既設配管Poに通される。この際、右ワイヤ11は作業者の手により、図示右方から左方に押し込まれ、既設配管Poの図示左端から出される。
【0039】
図4(b)は溝付け工程の1段階目を示す。図4(a)に示す状態で、右ワイヤ11の先端と左ワイヤ11の先端とは、それぞれ右ワイヤ11と左ワイヤ11に設けられた接続部12,12の雄ねじ部162を、基部2の接続受部21,21に螺合させることで、基部2によって接続される(図6(a)参照)。この時、雄ねじ部162と接続受部21とを螺合させる際に、雄ねじ部162よりも大径に備えられる操作部161を回転させることで、雄ねじ部162を接続受部21とを螺合することができる。ここで、操作部161は雄ねじ部162よりも大径に備えられるため、ねじ部16の回転操作を容易にすることができる。
【0040】
また、溝付け工程の1段階目では、基部2には、第一刃物4Aが一枚取付けられる。図6(a)に、第一刃物4Aが加工手段4として取り付けられた基部2と接続部12,12との接続状態を示す。第一刃物4Aは、刃41(刃先42)が既設配管Poの肉厚に至らない溝切断刃である。そして、前述したように、貫通孔221に第一刃物4Aを装着し、刃板8の取付孔8aに対し固定ねじで押さえることで、貫通孔221に第一刃物4Aが装着される。このように、加工手段4に含まれる加工部としての刃物は、基部2に対して着脱可能であり、基部2に取り付けられた状態では、両端部の刃41が基部2に対して径外方向に突出する。
【0041】
この状態で右ウインチ1Rを操作し(回転させ)、第一刃物4Aの刃41を既設配管Poの内面(入口5)に接するようにして本体部7を既設配管Poの図示左端から図示右端まで移動させる。この結果、図4(c)に示すように、径方向に対向する二本の溝Sが既設配管Poの内周部に形成される。
【0042】
さらに、このとき、接続部12には、索状体接続部に対して基部側接続部が回転可能となるように回転連結部で連結されている。具体的には、接続部12にベアリング14が内蔵されており、軸部15と、軸部15と同軸で回転可能なねじ部16がワイヤ11に対して回転可能に取り付けられているため、ねじ部16と接続される基部2もワイヤ11に対して回転可能となり、ワイヤ11がねじれており、ワイヤ11がねじれを解くように回転した場合でも、ワイヤ11のみが回転し、基部2にワイヤ11の回転力が伝わらないため、第一刃物4Aに力がかかることを防ぐことができる。
【0043】
また、基部2は、既設配管Poで基部2における径方向と直交する方向を軸として回転可能となるため、溝付け工程中に既設配管Poから受ける抵抗によって第一刃物4Aが既設配管Poの管軸中心に回転する方向に力を受けたとしても、力に従って基部2が回転し、力を逃がすので、第一刃物4Aにかかる力が少なくなる。
【0044】
図4(d)は溝付け工程の2段階目を示す。基部2には第一刃物4Aが二枚、軸方向視で直交するように取付けられる。第一刃物4Aの刃先42の向きは1段階目と管軸方向において逆にされる。つまり、加工手段(加工部)は、基部2に対して加工方向を基部2の軸方向一端側向きと軸方向他端側向きとに付け替え可能に構成されている。具体的には、加工手段装着部22から一度第一刃物4Aを取り外し、刃先42の向きを管軸方向において逆に向けてから再度加工手段装着部22に取り付けることで刃先42の向きを変更する。ここで、刃板8の中央部分に取付孔8aが備えられるので、第一刃物4Aの刃先の向きを逆に向けたとしても、取付孔8aの位置は刃先を逆に向ける前と同じままになるため、容易に加工手段装着部22に刃先を逆に向けた第一刃物4Aを取り付けることができる。基部2に第一刃物4Aが二枚取付けられた状態で、左ウインチ1Lを操作して本体部7を既設配管Poの図示右端から図示左端まで移動させる。
【0045】
この際、第一刃物4Aのうち一枚は1段階目で形成した溝Sに沿わせるようにする。つまり、この第一刃物4Aのうち一枚は、この刃41では既設配管Poを積極的には切断せず、本体部7(特に、装着されたもう一枚の第一刃物4A)を既設配管Poに対して周方向にずれることを防止する「ガイド」として機能する。
【0046】
そして、第一刃物4Aのうち他の一枚における刃41を既設配管Poの内面であって、1段階目で形成した溝Sに対して周方向で90度ずれた位置に接するようにして移動させる。つまり、2つの第一刃物4Aのうち、一の第一刃物4Aをガイドとして溝Sに沿わせることで、基部2に、第一刃物4Aと周方向で90度ずれて備えられる他の第一刃物4Aは、一の第一刃物の軌道、すなわち1段階目で形成した溝Sと周方向で90度ずれた位置を移動する。この結果、図4(e)に示すように、周方向で90度おきに四本の溝Sが既設配管Poの内周部に形成される。以上、第一刃物4Aのうち一枚を「ガイド」として機能させることにより、四本の溝Sを確実に形成することができる。このように、第一刃物4Aは、既設配管Poには何ら加工が施されていない状態から、次の加工である溝Sを形成する加工を行う。また、第一刃物4Aは二本の溝Sから、次の加工(先の加工とは異なる加工)である四本の溝Sを形成する加工を行う。
【0047】
さらに、このとき、接続部12に備えられたベアリング14によって、基部2は、既設配管Poで基部2における径方向と直交する方向を軸として回転可能となるため、1段階目で形成した溝Sが、既設配管Poがうねっていたとしても、基部2が回転することで、1段階目で形成したうねった溝Sに沿って一の第一刃物4Aが移動し、本体部7をガイドすることができるため、安定して溝付け工程の2段階目を行うことができる。
【0048】
図5(a)は溝付け工程の3段階目を示す。基部2には第二刃物4Bが一枚取付けられる。第二刃物4Bもまた、刃41(刃先42)が既設配管Poの肉厚に至らない溝切断刃であり、しかしながら第二刃物4Bは、第一刃物4Aよりも径外方向への刃41の突出量が大きい。図6(b)に、第二刃物4Bが加工手段4として取り付けられた基部2と接続部12,12との接続状態を示す。そして、既設配管Poの外側で、貫通孔221に第二刃物4Bを装着し、刃板8の取付孔8aを固定ねじでさえることで、貫通孔221に第二刃物4Bが装着され、これによって、基部2に取り付けられる加工手段4は、第一刃物4Aから第二刃物4Bに交換(変更)できる。
【0049】
この状態で右ウインチ1Rを操作し、第二刃物4Bの刃41を1段階目または2段階目で形成した溝Sに沿わせつつ、本体部7を既設配管Poの図示左端から図示右端まで移動させる。ここで、刃41の刃先42の先端421は、基部2と略同じ高さであり、刃元43に向かうにつれて高さが増すので、溝Sに第二刃物4Bの刃41の先端421が嵌り、第二刃物4Bを溝Sに沿わせやすい。第二刃物4Bの移動の結果、図5(b)に示すように、径方向に対向する二本の溝Sが深くなる。
【0050】
図5(c)は溝付け工程の4段階目を示す。ここでも、基部2には第二刃物4Bが一枚取付けられる。第二刃物4Bの向きは3段階目と逆にされる。この状態で左ウインチ1Lを操作し、第二刃物4Bの刃41を3段階目で沿わせた溝Sとは別の溝Sに沿わせつつ、を既設配管Poの図示右端(入口5)から図示左端(出口6)まで移動させる。この結果、図5(d)に示すように、前記別の溝Sであって、径方向に対向する二本の溝Sが深くなる。これによって、四本の溝Sが同等の深さになる。溝付け工程はこれで終了となる。
【0051】
また、基部2の外径が既設配管Poの内径に近いことから、第一刃物4A、第二刃物4Bのガイドになり易く、したがって、溝Sの深さや距離が均等になる。そして上記溝付け工程においては、複数の溝Sのうち、先に一部の溝Sを形成し、該溝Sをガイドにして残りの溝Sを形成することで、複数の溝どうしの間隔を軸方向に一定にすることができる。また、溝Sの形成を複数段階に分け、溝Sを徐々に深くすることで、加工抵抗を小さくして、軸方向に真っすぐな溝を形成することができる。さらに、既設配管Poの種類や大きさに合わせて、基部2の外径を変更することもできる。
【0052】
上記溝付け工程においては、複数の溝Sのうち、先に一部の溝Sを形成し、先に形成した溝Sをガイドにして残りの溝Sを形成することで、複数の溝S同士の間隔を軸方向に一定にすることができる。また、溝Sの形成を複数段階に分け、溝Sを徐々に深くすることで、加工抵抗を小さくして、管軸方向に真っすぐな溝を形成することができる。以上の溝付け工程により既設配管Poに溝Sを形成した状態で、既設配管Poを切断することで、既設配管分割工程において切断に失敗すること(例えば、切断片Psの幅が長手方向の途中で狭くなって切れてしまうこと)がなく、管軸方向の確実な切断が可能である。さらに、下記の既設配管分割工程において、溝Sに沿って切断することで、切断における抵抗を小さくすることができる。
【0053】
上記(2)既設配管分割工程は、溝付け工程を終了した次工程である。既設配管分割工程は、既設配管Poを、径方向および管軸方向に切断することにより、既設配管Poを径方向で間隔をあけて複数個所で管軸方向に切断して、複数の切断片Psに分割する工程である。本実施形態では、径方向の切断が、周方向に一定の距離(角度で90度ごと)をおいて4箇所でなされ、この切断が管軸方向に連続して行われる。
【0054】
図5(e)は既設配管分割工程を示す。基部2には第三刃物4Cが二枚取付けられる。第三刃物4Cは、刃41(刃先42)が既設配管Poの肉厚を超えた分割切断刃である。これには、既設配管Poの外側でねじ穴222に第三刃物4Cを装着し、固定ねじで刃板8の取付孔8aを押さえることで、貫通孔221に第三刃物4Cが装着され、第二刃物4Bから第三刃物4Cに交換できる。第三刃物4Cの方が第二刃物4Bよりも径方向への刃41の突出量が大きい。図6(c)に、第三刃物4Cが加工手段4として取り付けられた基部2と接続部12,12との接続状態を示す。
【0055】
そして右ウインチ1Rを操作し、第三刃物4Cの刃41を溝付け工程の3段階目および4段階目を経て深くなった溝Sに沿わせつつ、本体部7を既設配管Poの図示左端から図示右端まで移動させる。ここで、刃41の刃先42の先端421は、基部2と略同じ高さであり、刃元43に向かうにつれて高さが増すので、溝Sに第三刃物4Cの刃41の先端421が嵌り、第三刃物4Cを溝Sに沿わせやすい。第三刃物4Cの移動の結果、図5(f)に示すように、既設配管Poが周方向で四分割される。このように、第二刃物4Bで深く形成された溝Sに対し、その後に交換された第三刃物4Cにより、既設配管Poの次の加工として、既設配管Poを周方向で割ることができる。上記既設配管分割工程において、溝付工程で形成した複数の溝Sに対応するように刃41を沿わせることにより、切断時の抵抗を小さくすることができる。さらに、本実施形態では、既設配管を周方向に一定の間隔で複数に分割することで、各切断片Psの形状は略同じ形状にできる。よって、新配管挿入時の挿入抵抗を、周方向で偏りなく均一なものとでき、新配管Pnを真っすぐ挿入しやすくなる。
【0056】
なお、第三刃物4Cは、既設配管Poの肉厚を超えた分割切断刃である。したがって、既設配管Poに湾曲部分が存在する場合には、湾曲部分がひしゃげて断面が歪になる場合もあるので、第三刃物4Cの刃41は、その高さを考慮して、既設配管Poの肉厚を超えることが望ましい。
【0057】
このように、本実施形態では、本体部7の構成部分の一部であり、刃41の形状が異なる第一刃物4Aから第三刃物4Cを変更可能なように基部2に取付け、右ワイヤ11又は左ワイヤ11の一方を、既設配管Poを通した状態で基部2の一端に接続し、他方を既設配管Poに通す前の状態で基部2の他端に接続することで、既設配管Poに対し、本体部7は既設管Po内を基部2の一端側を先頭として進む往動と基部2の他端側を先頭として進む復動とで異なる加工ができる。
【0058】
上記(3)引抜工程は、複数の切断片Psを保護材Gから引き抜くようにした工程である。これにより、保護材Gの内部から既設配管Poが除去される。引き抜きは、作業者が各切断片Psを手やペンチ等の工具でつかんで行う。基本的には一本ずつ引き抜くが、場合によっては複数本をまとめて引き抜くこともできる。各切断片Psは幅方向で湾曲した帯状であって、周方向に沿って4枚並んでいる。
【0059】
各切断片Psの断面形状は保護材Gの内部空間の断面形状に比べて小さく、当該内部空間において各切断片Psの径方向および周方向への移動の自由度が高いことから、既設配管Poを切断することなく管の状態のままで保護材Gから引き抜くことに比べ、はるかに小さな引張力で引き抜きが可能である。また、引き抜きに伴い、保護材Gを破損してしまう可能性も小さいため、既設の保護材Gを引き続き使用することができる。このように、本実施形態の引抜工程は、発泡樹脂等の柔軟な材料(破損しやすい材料)で形成された保護材Gに対して有効である。そして、保護材Gがバンド等とスラブBにより径内方向への外力を受け、圧縮されて縮径されている場合に有効である。
【0060】
上記(4)新配管挿入工程は、新配管Pnを保護材Gの内周面に沿わせつつ保護材Gの内部に通す工程である。既設配管Poが除去された保護材Gの内部に、新配管Pnが沿うように、保護材Gの一端側から他端側に向けて新配管Pnを挿入する。配管の更新はこれで終了であって、その後、新配管Pnの両端部を給湯器や水栓Vに接続して工事を完了する。
【0061】
このように、本実施形態の工法では、既設配管Poおよび保護材Gが建築物Cの外部に露出した端部で作業可能である。このため、既設配管Poを新配管Pnに取り換える作業を、既設配管Poの設置対象物(本実施形態では建築物CのスラブBや床材F)から保護材Gを取り外さない状態で行うことができる。また、各ウインチ1の操作、既設配管Poの保護材Gからの引き抜き、新配管Pnの保護材Gへの挿入が全て建築物Cの外部(詳しくは、建築物Cにおける床材FとスラブBとの間の閉鎖空間に対する外部)にて行える。このため、建築物Cの解体の必要がないので、工事の低コスト化に貢献できる。
【0062】
以上、本実施形態の配管更新工法によると、既設配管Poを覆っていた保護材Gを建築物CにバンドIなどで固定したままとしておき、この保護材Gを、新配管Pnを敷設する際のガイドとして利用できる。しかも、既設配管分割工程と引抜工程とにより、配管の引き抜き作業を、配管の敷設形状に影響されにくく容易にできる。
【0063】
また、配管の更新の際に建築物Cの解体を極力不要とし、また、配管新設時の施工に格段の配慮が不要である。この「格段の配慮」とは、配管に折損が生じるような急な曲がりを形成しないという最低限の配慮を超えた配慮を意味する。このように本実施形態の配管更新工法を採用することで、配管新設時における配管経路をラフに設定してもよく、しかも、配管新設時に、現場にて保護材Gに配管が抜き差しできるか否かのテストを行うことも不要であるから、配管新設時の工数が従来よりも増加することがない。
【0064】
さらに、配管更新工法に用いる配管加工装置によれば、左右のウインチ1R,1Lは、給湯配管Yの入口5側、出口6側に一台ずつ配置され、各ワイヤ11の途中で、既設配管Poにおける加工状況に応じて既設配管Poの外側で加工手段4を変更する。すなわち、基部2において装着されていた加工手段4を、第一刃物4Aから第二刃物4Bに変更し、さらに第二刃物4Bから第三刃物4Cに変更する。そして、左右ウインチ1R,1Lとの間で既設配管Poの内側で各ワイヤ11を移動させることで、既設配管Poにおける加工状態に応じて、既に行った加工とは異なる、次の加工をすることができる。このため、既設配管Poに対して効率のよい加工をすることができる。
【0065】
配管加工用具9が、基部2及び加工手段4を有する本体部7と、本体部7を索状体に接続する接続部12を備え、加工手段4が、基部2がその軸方向一端側から既設配管Poに進入して加工する場合と、軸方向他端側から既設配管Poに進入して加工する場合とで、異なる加工できる。具体的には、溝付け工程の1段階目ないし4段階目や、既設配管分割工程のように刃41の向きを変更することや、刃物4A~4Cの種類を基部2に対して付け替えることにより変更することで、既設配管の入口から出口へ基部の一端側が先頭で進入する往動の場合と、既設配管の出口から入口に基部の他端側が先頭で進入する復動の場合とで異なる加工をすることができるので、既設配管Poに対して効率よく加工ができる。
【0066】
また、既設配管Poの経年等による老朽化に応じて、新配管Pnを更新する際に、保護材Gおよび既設配管Poを全て取換えていることに比べ、新配管Pnの設置に手間がかからない。
【0067】
さらに、本実施形態にかかる配管加工用具9は、基部2が既設配管Po内で基部2における径方向と直交する方向を軸として回転可能となるため、加工作業中に既設配管Poから受ける抵抗によって加工手段4が既設配管Poの管軸中心に回転する方向に力を受けたとしても、力に従って基部2が回転し、力を逃がすので、加工手段4にかかる力が少なくなる。また、ワイヤ11がねじれており、ワイヤ11がねじれを解くように回転した場合でも、ワイヤ11のみが回転し、基部2にワイヤ11の回転力が伝わらないため、加工手段4に力がかかることを防ぐことができる。そのため、加工作業中に加工手段4が破損することを防ぐことができる。
【0068】
また、加工手段4である刃41が、基部2における周方向の異なる位置に複数配置されているため、本体部7を既設配管Poの入口5側から出口6側へ、又は出口6側から入口5側へ往復移動させることで、既設配管Poの周方向の複数の位置を同時に加工することができ、加工作業の効率が高まる。
【0069】
さらには、加工手段4である刃41の先端421が、刃板8を基準とした高さにおいて、基部2の側面と同じ高さから始まり、刃元43に近づくにつれて高くなるため、一段階目の溝付け工程の際に、基部2が既設配管Po内で径方向にずれたとしても、刃先42が既設配管Poの内周に確実に切込みを入れることができる。また、2段階目以降の溝付け工程と、既設配管分割工程の際に、刃先42の先端部分が、以前の工程で形成された溝Sに嵌るため、基部2が溝Sにガイドされやすくなる。
【0070】
また、接続部12に備えられたベアリング14によって、基部2は、既設配管Poで基部2における径方向と直交する方向を軸として回転可能となるため、形成した溝Sがうねっていたとしても、基部2が回転することで、うねった溝Sに沿って刃41が移動し、本体部7をガイドすることができるため、安定して溝付け工程の2段階目以降および既設配管分割工程を行うことができる。
【0071】
次に、本発明の第二実施形態を、図7ないし図12に基づいて説明する。はじめに、配管加工装置は、入口側索状体と、入口側牽引部(巻上機である右ウインチ1R)と、出口側索状体と、出口側牽引部(巻上機である左ウインチ1L)と、本体部7と、接続部12とを備える。入口側索状体と、入口側牽引部と、出口側索状体と、出口側牽引部と、接続部12と、は、上記第一の実施形態と同様である。
【0072】
第二の実施形態が第一の実施形態と異なる配管加工装置の構成は、本体部7における加工手段4が異なる。
【0073】
加工手段4について説明する。第一の実施形態では、刃板8の両側に刃41が配置されたが、第二の実施形態では、刃板8の片側にのみ刃41が形成されている。また、基部2は第一の実施形態と同様の構成であり、刃板8と貫通孔221とは、相対形状に形成されている。図12(a)~(c)に示すように、本体部7としては、このような第一刃物4A、第二刃物4B、第三刃物4Cを含む加工手段4を備えている。第一刃物4A、第二刃物4B、第三刃物4Cにおける基部2への取付け状態は、第一の実施形態と同様である。
【0074】
図7ないし図9、および図12(d)を参照して、既設配管Poの内径を拡径する加工をする加工手段の一つである拡径具44の説明をする。拡径具44は、基部2に対して周方向全周にわたって径外方向に突出し、既設配管Poに対して拡径という加工を行うものであり、表面が一方側から他方側に向けて傾斜された傾斜面48を有した円錐台形状に形成されている。一方側は、既設配管Poの内径よりも小径に形成された外径面であり、他方側は既設配管Poの内径よりも大径に形成された外径面である。
【0075】
具体的に、拡径具44は、半円錐台形状の拡径部品44aと、拡径部品44aと後述する切り欠き471の位置が異なる拡径部品44bと、を備える。拡径部品44aは、基部2から径外方向に突出し、既設配管Poを拡径する拡径部45と、拡径部品44aを基部2に取り付けるための取付部49と、を備え、拡径部45は、軸方向の一端側に既設配管Poの内径よりも外径が小さい小径部46と、既設配管Poの内径よりも外径が大きい大径部47と、小径部46と大径部47とをつなぐ傾斜面48と、を備える。取付部49は板状の板部81を備え、板部の中央には取付孔81aが形成されている。また、板部81の厚さは、貫通孔221の厚さの半分以下に設定される。さらに、大径部47には、切り欠き471が形成され、切り欠き471は、拡径具44を基部2に取り付けた際に、ねじ穴222と切り欠き471の位置が軸方向及び周方向で一致する様に形成される。切り欠き471の形状は、半円状であり、拡径部品44aと44bとを合わせたとき、2つの切り欠き471が合わさって固定ねじが挿入可能な大きさの孔になる形状である。
【0076】
拡径部品44bは、拡径部品44aと切り欠き471の位置が異なり、板部の長手方向を軸に対称の位置に切り欠き471が形成される。そのため、基部2に拡径部品44a及び拡径部品44bを取り付けた際に、切り欠き471同士が向き合うように拡径具44が基部2に取り付けられる。
【0077】
拡径部品44a、44bを基部2に取り付ける際には、それぞれの板部81を貫通孔221に挿入し、固定ねじを切り欠き471とねじ穴222とに通し固定ねじの先端で取付孔81aを固定することにより、基部2に拡径具44が取り付けられる。ここで、取付孔81aは、板部81の中央に備えられるため、貫通孔221の一端側から板部81を挿入した場合と、貫通孔221の他端側から板部81を挿入した場合とで同じ位置に取付孔81aが現れる。そのため拡径部品44aを貫通孔221の一端側から挿入し、拡径部品44bを貫通孔221の他端側から挿入した場合でも、拡径部品44aを貫通孔221の他端側から挿入し、拡径部品44bを貫通孔221の一端側から挿入した場合でも、拡径具44を基部2に取り付けることができるため、取付の向きを気にしなくてよい。
【0078】
このように第二の実施形態では、加工手段4に加工刃と拡径具とが含まれる。
【0079】
第二の実施形態に係る配管更新工法について説明する。本実施形態に係る配管更新工法は、
(1)溝付け工程…既設配管Poの内周面に管軸方向に沿う溝Sを形成する工程、
(2)既設配管切断工程…溝Sを用いて既設配管Poを径方向で切断する工程、
(3)拡径工程…既設配管Poを拡径する工程、
(4)新配管挿入工程…新配管Pnを既設配管Poの内部に通す工程、
とを有する。
【0080】
溝付け工程に先立ち、図10(a)に示すように、右ウインチ1R(図示していない)から、右ワイヤ11が図示右方(入口5)から左方(出口6)に押し込まれ、既設配管Poの図示左端から出される。これは作業者の手によって行われる。
【0081】
図10(b)は溝付け工程の1段階目を示す。図10(a)に示す状態で、右ワイヤ11の先端と左ワイヤ11の先端とは、それぞれ右ワイヤ11と左ワイヤ11に設けられた接続部12,12の雄ねじ部162を、基部2の接続受部21,21に螺合させることで、基部2によって接続される。また、溝付け工程の1段階目では、基部2には、図12(a)で示す第一刃物4Aが一枚取付けられる。
【0082】
この状態で右ウインチ1Rを操作し、第一刃物4Aの刃41を既設配管Poの内面(入口5)に接するようにして本体部7を既設配管Poの図示左端から図示右端まで移動させる。この結果、図10(c)に示すように、径方向に1本の溝Sが既設配管Poの内周部に形成される。
【0083】
図10(d)は溝付け工程の2段階目を示す。基部2には第二刃物4Bが一枚取付けられる(図12(b))。第二刃物4Bの向きは1段階目と管軸方向において逆にされる。基部2に第二刃物4Bが一枚取付けられた状態で、左ウインチ1Lを操作して本体部7を既設配管Poの図示右端から図示左端まで移動させる。この際、第二刃物4Bは1段階目で形成した溝Sに沿わせるようにする。このように加工手段4は、刃物を取り替えることで、既設配管の入口から出口へ基部の一端側が先頭で進入する往動の場合と、既設配管の出口から入口に基部の他端側が先頭で進入する復動の場合とで異なる加工をすることができるように構成されている。
【0084】
つまり、この第二刃物4Bでは、これを利用することで、1段階目で形成した溝Sをガイドとして、図10(e)で示すように、1段階目より深い溝Sを形成させるものである。このようにして、既設配管Poの内周面に管軸方向に沿う溝Sを形成する。以上で、上記した(1)溝付け工程を終了する。
【0085】
図11(a)(b)は、既設配管切断工程を示す。基部2には第三刃物4Cが一枚取り付けられる。第三刃物4Cの方が第二刃物4Bよりも径方向への刃41の突出量が大きい。この状態で右ウインチ1Rを操作し、第三刃物4Cの刃41を溝付工程の2段階目を経て深くなった溝Sに沿わせつつ、本体部7を既設配管Poの図示左端から図示右端まで移動させる。この結果、図11(b)に示すように径方向断面に、一箇所の分断部S1が形成される。
【0086】
次に、(3)拡径工程を説明する。拡径工程では、加工手段4を、第三刃物3Cから図12(d)で示す、拡径具44に変更する。既設配管切断工程で用いた加工手段4である第三刃物4Cを基部2から取り外し、2つの拡径部品44a、44bの板部8を小径部46が既設配管Poと向かい合いように貫通孔221に貫通孔221の一端側と他端側からそれぞれ挿入し、切り欠き471を通して、ねじ穴222に固定ねじを嵌め、取付孔81aとねじの先端とを係止することで、第三刃物4Cを拡径具44に容易に取替えられる。このとき、板部81の厚さは、貫通孔221の厚さの半分以下に設定されるため、2枚の板部81を貫通孔221に入れることができる。
【0087】
図11(c)の状態においては、本体部7が図示右端にあるので、本体部7の一方側を図示右端(入口5)に配置することになる。このとき、本体部7に取り付けられた拡径具44の一方側は、既設配管Poの内径よりも小径に形成された小径部46であるから、左ワイヤ11を操作して、既設配管Poの内側に拡径具44を確り嵌合し、拡径具44を備える本体部7を図示右端から図示左端まで移動させる。そして、拡径具44の他方側は傾斜面48を介して既設配管Poの内径よりも大径に形成された外径面であるから、図11(d)で示すように、既設配管Poにおける径方向の一箇所において、分断部S1の間隔が広げられる。なお、この加工(変形)は、保護材Gの内部空間の範囲内で行われる。以上で、拡径工程を終了する。このように、加工手段4は、刃物を拡径具44に交換することで、既設配管の入口から出口へ基部の一端側が先頭で進入する往動の場合と、既設配管の出口から入口に基部の他端側が先頭で進入する復動の場合とで異なる加工をすることができる。
【0088】
次に、(4)新配管挿入工程を説明する。新配管挿入工程では、拡径された既設配管Poの内部に新配管Pnを挿入する。既設配管Poに沿って既設配管Poの一端側から他端側まで新配管Pnを挿入することで本工程は終了する。このとき、既設配管切断工程において既設配管Poが、径方向断面の一箇所の分断部S1で割られているから、既設配管Poの内部に新配管Pnが容易に通る。
【0089】
本実施形態の配管更新工法に用いる配管加工装置では、加工手段4を刃41から拡径具44に変更され、拡径具44によって既設配管Poを内側から拡大されるから、既設配管Poに対して新配管Pnを通り易くすることができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0091】
例えば別の実施形態として、右ワイヤ11と左ワイヤ11の途中部分に加工手段4の異なる複数の本体部7、例えば第一刃物4Aを備える本体部7と、第二刃物4Bを備える本体部7と、を離間して設けておき、第一刃物4Aを既設配管Poの入口5側又は出口6側へ向かう方向の二方向で異なる加工(角度を変えてを溝を加工)するようにする。続いて第二刃物4Bを既設配管Poの入口5側又は出口6側へ向かう方向の二方向で異なる加工(角度を変えて溝を加工)するようにしてもよい。あるいは、第二刃物4Bを拡径具44に代えることもできる。このようにすることで、加工手段4の交換が、複数の本体部7の内の一つの加工手段4から、別な加工手段4に変更できる。そして、この構成によれば、一つの加工手段4から別な加工手段4に変更して、目的の加工に適した多様な形態変更をすることができる。
【0092】
また、第一及び第二の実施形態において、加工手段4の変更は、刃41を交換することにより変更していたが、加工手段4の変更は、部品の交換のよる変更に限られない。例えば、刃が繰り出し式であり、突出量を変更することにより加工手段4を変更してもよいし、刃板8を固定する位置を変更可能にすることで、刃の突出量を変更可能としてもよい。いずれにしても、加工手段が既設配管に加工する加工部を含み、加工部が取替え可能、付替え可能、形態変更可能などによって加工の種類が選択可能であることにより、既設配管Poに対して異なる加工ができる。
【0093】
さらに、第一実施形態では、既設配管の切断片Psを引き抜いてから新配管Pnを挿入したが、これに限られない。例えば、既設配管分割工程で基部2に第三刃物4Cを二枚取付け、既設配管Poが周方向で四分割された状態から、保護材Gの内部と切断片Psとに、新配管Pnが沿うように、保護材Gの一端側から他端側に向けて新配管Pnを挿入してもよい。なお、既設配管Poの分割は二分割以上であればよく、上記のように四分割に限定されない。
【0094】
上記の工法の場合には、引抜工程を省いた分だけ新配管Pnの設置に手間がかからない。さらに、分割された既設配管Poが新配管Pnを取巻くため、新配管Pnが補強される利点もある。また、保護材Gが、柔軟な素材であれば、保護材Gの内径が変化可能となるため、新配管Pnの挿入による、切断片Psの径外方向に押し広げを保護材Gの内径が変化することで吸収することができるので挿入がスムーズになる。さらに、保護材Gが柔軟な素材であれば、保護材GがバンドIで締め付けられ縮径している部分を新配管Pnが通過する際にも、保護材Gの内径が変化することで、挿入抵抗を緩和することができる。さらに、既設配管Poが周方向に一定の間隔で分割されていれば、各切断片Psの形状は略同じ形状にできるため新配管Pnの挿入時の挿入抵抗を周方向で偏りなく均一なものとでき、新配管Pnをまっすぐ挿入しやすい。
【0095】
また、第一及び第二の実施形態において、本体部7とワイヤ11との接続は、螺合により行っていたが、これに限られない。例えば、図13に示すように、ワイヤ11と、2つのかしめリング18と、ワイヤ11が軸方向に貫通可能な穴24が形成された基部2を備える本体部7と、を備える構成としてもよい。このような構成によれば、ワイヤ11を基部2の穴24に通し、ワイヤ11において基部2の両端側に基部2をはさむようにかしめリング18を備えれば、ワイヤ11の基部2に近接した位置でかしめリング18をかしめることで、基部2のワイヤ11における長手方向への移動を規制することができ、基部2をワイヤ11に取り付けることができる。これにより、基部2は、その両端部からワイヤ11が延びるようにワイヤ11に接続される。
【0096】
さらに、加工手段を基部に取り付ける方法は、ねじ穴とねじを使った固定に限られず、別の固定方法により加工手段を基部に取り付けてもよい。例えば、基部と加工手段が嵌合することで、加工手段を基部に取り付ける構成としてもよいし、基部にロック機構を備えることで、加工手段を取り付け可能としてもよい。
【0097】
例えば、前記各実施形態において、保護材Gは断熱および保温の機能を有したものであっても、断熱および保温の機能を有しておらず単に配管(既設配管Poまたは新配管Pn)を覆うに過ぎないものであってもよい。また、保護材Gは配管の管軸方向の全部を覆っている必要はなく、管軸方向の一部が覆われていてもよい。また保護材Gでは、径方向断面が、周方向において分断部S1に対向する切れ目を有していてもよい。
【0098】
また、前記各実施形態では、牽引部として左右ウインチ1R,1Lを使用したが、ウインチ(巻上機)に該当しない装置であっても、ワイヤ11や鎖等の索状材料を長手方向に引っ張ることのできる種々の装置を用いることができる。
【0099】
また、前記各実施形態では、基部2は略円柱状であったが、既設配管Po内での管軸方向の移動に支障がなく、既設配管Poを加工する加工手段4を支持することが可能であれば、他の形状であってよい。また、基部2に装着される刃41は、固定刃、回転刃のいずれであってもよい。また、刃41の形状も特に限定されない。前記実施形態では、管軸方向の片方向で切断できる刃41であったが、管軸方向の両方向で切断できる刃41であってもよい。
【0100】
また、第一の実施形態において、溝付け工程および既設配管分割工程を経た既設配管Poの分割数は、前記実施形態の四分割に限られるものでなく、三分割以下、または五分割以上であってもよい。特に、既設配管Poの径および長さに応じ、引抜工程における切断片Psの保護材Gからの引き抜きやすさを考慮して、分割数を適宜決定してよい。また、切断軌跡を管軸方向に対して傾斜させることにより、螺旋状の切断片Psを形成してもよい。
【0101】
また、第一の実施形態、第二の実施形態において、溝付け工程内の段階に関する、段階の数および加工内容は前記実施形態で示したもの(1段階目~4段階目)に限らず、種々に変更できる。さらに、溝付け工程で形成した溝Sに沿って既設配管を切断する場合について説明したが、これに限らず、溝Sには、第1刃物4A又は第2刃物4Bの刃41を嵌め込み、これをガイドとして、溝S以外の部分を刃41で切断するようにしてもよい。いずれにしても、溝Sをガイドにして既設配管Poを切断することにより、切断に失敗することなく、確実に分割することができる。
【0102】
また、第二の実施形態において、拡径具44の切り欠き471は、拡径部品44a及び44bの双方に備えられたが、これに限らず、拡径部品の一方側にねじ穴222と軸方向及び周方向で位置が一致する個所に固定ねじを挿入可能な切り欠きが備えられてもよい。
【0103】
さらに、第二の実施形態において、拡径具44は、半割れ形状の拡径部品を合わせることで、一つの拡径具を構成することとしていたが、これに限らず、基部2に装着し、既設配管Poを拡径できる形状であれば、どのような構成であってもかまわない。
【0104】
また、実施形態において、加工手段として刃物及び拡径具を例示したが、これに限らず、基部に装着し、既設配管に対して加工可能な種々の手段が加工手段に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1L…左ウインチ、1R…右ウインチ、11…ワイヤ、12…接続部、13…接続部本体、14…ベアリング、15…軸部、16…ねじ部、161…操作部、162…雄ねじ部、18…かしめリング、2…基部、21…接続受部、22…加工手段装着部、221…貫通孔、222…ねじ穴、23…小径部、4…加工手段、4A…第一刃物、4B…第二刃物、4C…第三刃物、41…刃、42…刃先、421…先端、43…刃元、44…拡径具、44a…拡径部品、44b…拡径部品、45…拡径部、46…小径部、47…大径部、471…切り欠き、48…傾斜面、49…取付部、5…入口、6…出口、7…本体部、8…刃板・板部、8a…取付孔、81…板部、81a…取付孔、9…配管加工用具、B…スラブ、C…建築物、F…床材、G…保護材、Pn…新配管、Po…既設配管、Ps…切断片、S…溝、S1…分断部、Y…給湯配管
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