(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A63F7/02 320
A63F7/02 304D
(21)【出願番号】P 2020057034
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 倫也
(72)【発明者】
【氏名】續木 清貴
(72)【発明者】
【氏名】市原 卓人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 康晃
【審査官】堀川 あゆ美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-166243(JP,A)
【文献】特開2016-067741(JP,A)
【文献】特開2019-150377(JP,A)
【文献】特開2015-139529(JP,A)
【文献】特開2015-029849(JP,A)
【文献】特開2019-051053(JP,A)
【文献】特開2017-055806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常態様から演出態様に変化可能な可動ユニットと、
遊技者に有利な成功結末に至る場合には前記可動ユニットが前記演出態様となる特定演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
前記可動ユニットは、前記通常態様から中途態様に変化することを経て前記演出態様に変化することが可能なものであり、
前記特定演出は、結末に至る前の分岐段階にて前記可動ユニットを前記通常態様から前記中途態様に変化させた上で、成功結末となる場合には前記可動ユニットを前記中途態様から前記演出態様に変化させるものである一方、前記成功結末とならない場合には前記可動ユニットを前記中途態様から前記通常態様に変化させるものであり、
遊技者に有利な成功結末に至る場合には前記可動ユニットが前記演出態様となる別演出を実行することが可能であり、
前記別演出は、結末に至る前の分岐段階にて前記可動ユニットを前記通常態様とした上で、成功結末となる場合には前記可動ユニットを前記通常態様から前記演出態様に変化させるものであることを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の表示領域に重なる位置まで進出することが可能な可動体を備えた遊技機が多い(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、可動ユニットを用いた分かりやすい演出を実行することが可能な遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかる遊技機は、通常態様から演出態様に変化可能な可動ユニットと、遊技者に有利な成功結末に至る場合には前記可動ユニットが前記演出態様となる特定演出を実行する演出実行手段と、を備え、前記可動ユニットは、前記通常態様から中途態様に変化することを経て前記演出態様に変化することが可能なものであり、前記特定演出は、結末に至る前の分岐段階にて前記可動ユニットを前記通常態様から前記中途態様に変化させ、成功結末とならない場合には前記可動ユニットを前記中途態様から前記通常態様に変化させるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる遊技機は、可動ユニットを用いた分かりやすい演出を実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】表示領域に表示された識別図柄および保留図柄を示した図である。
【
図3】第一装飾部の位置を説明するための図である。
【
図4】第二装飾部の位置(第一装飾部に対する相対的な位置)を説明するための図である。
【
図5】可動ユニットの態様を説明するための図である。
【
図7】第一具体例(別演出)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1)遊技機の基本構成
以下、本発明にかかる遊技機1(ぱちんこ遊技機)の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1を参照して遊技機1の全体構成について簡単に説明する。なお、以下の説明にて画像というときは、動画および静止画の両方を含むものとする。
【0009】
遊技機1は遊技盤90を備える。遊技盤90は、ほぼ正方形の合板により成形されており、発射装置908(発射ハンドル)の操作によって発射された遊技球を遊技領域902に案内する通路を構成するガイドレール903が略円弧形状となるように設けられている。
【0010】
遊技領域902には、表示装置50、始動領域904、大入賞口906、アウト口などが設けられている。表示装置50の表示領域51は、遊技盤90に形成された開口901を通じて視認可能な部分である。また、遊技領域902には、流下する遊技球が衝突することにより遊技球の流下態様に変化を与える障害物としての遊技釘が複数設けられている。遊技領域902を流下する遊技球は、遊技釘に衝突したときの条件に応じて様々な態様に変化する。
【0011】
このような遊技機1では、発射装置908を操作することにより遊技領域902に向けて遊技球を発射する。遊技領域902を流下する遊技球が、始動領域904や一般入賞領域20、大入賞口906等の入賞領域に入賞すると、所定の数の賞球が払出装置により払い出される。
【0012】
なお、遊技球を貯留する下皿や上皿など、本発明に関係のない遊技機1の構成要素は説明を省略する。これらについては公知の遊技機と同様の構造のものが適用できる。
【0013】
大当たりの抽選は、図示されない制御基板に設けられた当否判定手段が始動領域904への遊技球の入賞を契機として実行する。本実施形態では、始動領域904として、第一始動領域904a(いわゆる「特
図1」の始動領域)と第二始動領域904b(いわゆる「特
図2」の始動領域)が設けられている。始動領域904への遊技球の入賞を契機として乱数源から数値(当否判定情報)が取得され、当該数値が予め定められた大当たりの数値と同じである場合には大当たりとなり、異なる場合にははずれとなる。本実施形態では、当該数値が取得された順に当否判定結果の報知が開始される(いわゆる変動が開始される)こととなるが、未だ当否判定結果の報知が完了していない当否判定情報が存在する場合には、新たに取得された当否判定情報は保留情報として図示されない制御基板に設けられた記憶手段に記憶される。記憶手段に保留情報が記憶されていることは、保留図柄70として表示される。
【0014】
本実施形態では、保留図柄70として、当否判定結果を報知する報知演出(識別図柄80(識別図柄群80g)の変動開始から、当否判定結果を示す組み合わせで完全に停止するまでの演出、いわゆる一変動中分の演出をいう)は開始されているものの、当否判定結果の報知は完了していない情報(以下、変動中保留情報と称することもある)に対応する変動中保留図柄71(いわゆる「当該変動保留」の存在を示す図柄)と、当否判定結果を報知する報知演出が開始されていない情報(以下、変動前保留情報と称することもある)に対応する変動前保留図柄72が表示される(
図2参照)。本実施形態では、変動中保留図柄71と変動前保留図柄72の基本的な形態は同じであり、両者を区別するために変動中保留図柄71の方が変動前保留図柄72よりも大きく表示される。変動中保留図柄71と変動前保留図柄72の基本的な形態が全く異なるものとしてもよい。
【0015】
変動前保留情報の最大の記憶数は上限が決められている。本実施形態では、第一始動領域904aに入賞することによって得られる第一変動前保留情報(特
図1保留)の最大の記憶数は四つであり、第二始動領域904bに入賞することによって得られる第二変動前保留情報(特
図2保留)の最大の記憶数は四つである。したがって、特
図1および特
図2の一方に相当する保留図柄70に関していえば、一つの変動中保留図柄71と、最大四つの変動前保留図柄72が表示されることがある(
図2参照)。
【0016】
本実施形態では、公知の遊技機と同様に、表示装置50の表示領域51に表示される識別図柄80(
図2参照)の組み合わせによって当否判定結果を遊技者に報知する。具体的には、複数種の識別図柄80を含む識別図柄群80g(左識別図柄群80gL、中識別図柄群80gC、右識別図柄群80gR)が変動を開始し、最終的に各識別図柄群80gから一の識別図柄80が選択されて停止する。大当たりに当選している場合には各識別図柄群80gから選択されて停止した識別図柄80の組み合わせは所定の組み合わせ(例えば、同じ識別図柄80の三つ揃い)となる。はずれである場合にはそれ以外(大当たりとなる組み合わせ以外)の組み合わせとなる。識別図柄80は、数字とキャラクタ等が組み合わされたものとしてもよい。
【0017】
本実施形態では、遊技状態として、通常遊技状態と特別遊技状態が設定されている。特別遊技状態は、通常遊技状態に比して遊技者に有利な遊技状態である。通常遊技状態は、大当たりに当選する確率が低い低確率遊技状態であり、かつ、始動領域904に遊技球が入賞しにくい低ベース状態(低確率・時短無)である。特別遊技状態としては、第一特別遊技状態と第二特別遊技状態が設定されている。第一特別遊技状態は、大当たりに当選する確率が高い高確率遊技状態であり、かつ、始動領域904に遊技球が入賞しやすい高ベース状態(高確率・時短有)である。第二特別遊技状態は、大当たりに当選する確率が低い低確率遊技状態であり、かつ、始動領域904に遊技球が入賞しやすい高ベース状態(低確率・時短有)である。通常遊技状態においては、遊技者は、第一始動領域904a(特
図1)を狙って遊技球を発射させる。本実施形態では、遊技領域902における表示領域51の左側を遊技球が流下するように遊技球を発射させる。つまり、いわゆる「左打ち」を行う。特別遊技状態は、第二始動領域904b(特
図1)を狙って遊技球を発射させる。本実施形態では、遊技領域902における表示領域51の右側を遊技球が流下するように遊技球を発射させる。つまり、いわゆる「右打ち」を行う。特別遊技状態は、普通始動領域905に遊技球が進入することを契機とした第二始動領域904bの開放抽選に当選しやすい状態であるため、比較的容易に第二始動領域904bに遊技球が入賞する。
【0018】
2)可動ユニットの構成
本実施形態にかかる遊技機1は、所定の動作を行う可動ユニット10(可動役物)を備える。可動ユニット10は、第一装飾部11および第二装飾部12を有し、当該第一装飾部11および第二装飾部12が変位することでその態様を変化させるものである。以下、装飾部について説明する。
【0019】
第一装飾部11は、所定範囲を動作することが可能な有体物である。その前面には遊技者が視認可能な装飾が形成されている。装飾の態様はどのようなものであってもよい。本実施形態における第一装飾部11は、左右方向にスライド可能な(上下方向位置を変化させずにスライドする)物体である。このように第一装飾部11を動作させることが可能なものであれば、その駆動機構はどのようなものであってもよいから詳細な説明は省略する。後述するように、第一装飾部11は、第二装飾部12を支持するものであるため、第一装飾部11は可動ユニット10の「ベース」となる部材であるとみることもできる。本実施形態では、表示装置50よりも上側および下側に図示しない左右方向に沿うレールが設けられ、当該レールに誘導されて第一装飾部11が変位する。第一装飾部11は、右位置(
図3(a)参照)、中央位置(
図3(b)参照)、左位置(
図3(c)参照)に位置することが可能である。右位置よりも左側の位置が中央位置であり、中央位置よりも左側の位置が左位置である。第一装飾部11の原位置は、右位置または左位置とされる(本実施形態では右位置である)。
【0020】
第一装飾部11は表示領域51よりも手前で、前後方向における位置を変化させずにスライドする。したがって、第一装飾部11と表示領域51が前後方向で重なる場合、表示領域51における当該重なる部分は第一装飾部11に覆われて視認することが困難または不可能である(正対する遊技者は視認できない部分となる)。
【0021】
図3(b)に示すように、(第二装飾部12が後述する被覆位置に位置する状態で)第一装飾部11が中央位置に位置するときには、表示領域51の中央側の一部が覆われ、第一装飾部11の左側および右側に遊技者が視認可能な露出した部分が存在することになる。なお、左側の領域を左分割領域51CL、右側の領域を右分割領域51CRとする。
図3(a)に示すように、(第二装飾部12が後述する被覆位置に位置する状態で)第一装飾部11が右位置に位置するときには、表示領域51の右側の一部が覆われ、第一装飾部11の左側に遊技者が視認可能な左露出領域51Lが存在することになる。
図3(c)に示すように、(第二装飾部12が後述する被覆位置に位置する状態で)第二装飾部12が左位置に位置するときには、表示領域51の左側の一部が覆われ、第一装飾部11の右側に遊技者が視認可能な右露出領域51Rが存在することになる。基本的には、表示領域51における第一装飾部11に覆われずに露出した部分に演出用の各種画像が表示されることになる。なお、右位置や左位置に位置するときには、第一装飾部11と表示領域51が全く重ならない設定としてもよい。
【0022】
第二装飾部12は、その前面に遊技者が視認可能な装飾が形成されたものである。当該装飾の態様はどのようなものであってもよい。本実施形態における第二装飾部12は、第一装飾部11に対して変位可能に支持されたものである。したがって、第一装飾部11が変位することに伴って第二装飾部12も変位する。第二装飾部12は、第一装飾部11に対し、左右後方にスライド可能に支持されている。第一装飾部11と同様、第二装飾部12は、上下方向位置、前後方向位置を変化させずにスライドする。このように第二装飾部12を変位させることができるのであれば、第二装飾部12の駆動機構はどのようなものであってもよいから詳細な説明を省略する。第一装飾部11と第二装飾部12の駆動源が別のものであってもよいし、一の駆動源により両装飾部が動作するものとしてもよい。本実施形態では、第一装飾部11の裏側の上下に図示しないレール(左右方向に沿うレール)が設けられ、当該レールに誘導されて第二装飾部12が第一装飾部11に対して変位する。
【0023】
前後方向において、第二装飾部12は、第一装飾部11よりも後方に位置する。したがって、第二装飾部12における前後方向にて第一装飾部11と重なる部分は、正対する遊技者が視認できない箇所となる。第二装飾部12は、第一装飾部11に対する相対的な位置として、被覆位置(
図4(a)参照)および露出位置(
図4(b)参照)に位置することが可能である(なお、
図3では、第二装飾部12が被覆位置に位置した状態での第一装飾部11の各位置を示している)。当該被覆位置および露出位置は、あくまで第一装飾部11に対する相対的な位置であり、第一装飾部11の位置に応じ、第二装飾部12の実際の位置(以下、「相対的な位置」と区別するため「絶対的な位置」と称することもある)は異なることになる。被覆位置が原位置である。
【0024】
被覆位置に位置する第二装飾部12の方が、露出位置に位置する第二装飾部12よりも、前後方向にて第一装飾部11と重なる範囲が大きい。被覆位置では、第二装飾部12の半分以上が第一装飾部11に重なり、露出位置では第二装飾部12の半分未満が第二装飾部12に重なるように設定される。つまり、第二装飾部12が被覆位置から露出位置に変位することで、第一装飾部11に覆われずに露出する範囲が大きくなるように設定されている。本実施形態では、被覆位置では、第二装飾部12の全体が第一装飾部11に覆われた状態となる(
図4(a)参照)。つまり、正面視で第二装飾部12を視認することはできない。第二装飾部12は、当該被覆位置から第一装飾部11に対して右に向かって変位することで露出位置に到達する。露出位置では、第二装飾部12の左側の一部が第一装飾部11に覆われ、右側の一部が第一装飾部11に覆われずに露出した状態にある(
図4(b)参照)。第二装飾部12の全体が露出するような態様としてもよい。
【0025】
3)可動ユニットの態様
可動ユニット10の態様について説明する。なお、ここでいう「態様」とは、可動ユニット10の外観およびその位置により決まるものをいう。つまり、外観および位置の両方が同じであることを「態様」が同じであるとし、いずれか一方が異なることを「態様」が異なるものとする。
【0026】
通常態様(
図5(a)参照)は、第一装飾部11を右位置、第二装飾部12を被覆位置に位置させた態様である。第二装飾部12は第一装飾部11に覆われるため、遊技者には第一装飾部11が右位置に位置した状態に見える。特定演出が実行されていないとき等、可動ユニット10を用いた演出が実行されていない状況においては、可動ユニット10は通常態様にある。つまり、通常態様は、可動ユニット10の「原位置」であるといえる。
【0027】
中途態様(
図5(b)参照)は、第一装飾部11を中央位置、第二装飾部12を被覆位置に位置させた態様である。第二装飾部12は第一装飾部11に覆われるため、遊技者には第一装飾部11が中央位置に位置した状態に見える。第二装飾部12が被覆位置に位置していることは通常態様と共通する。そのため、通常態様にある状態から、第一装飾部11を中央位置まで変位させることで中途態様に変化する。第一装飾部11に対する第二装飾部12の相対的な位置は維持されるものの、第一装飾部11が変位することでそれに支持された第二装飾部12の絶対的な位置も変化する。
【0028】
演出態様(
図5(c)参照)は、第一装飾部11を左位置、第二装飾部12を演出位置に位置させた態様である。具体的には、中途態様から演出態様に変化させる場合は、第一装飾部11を中央位置から左位置に変位させた後、第二装飾部12を被覆位置から演出位置に変位させることになる(第一装飾部11の変位と第二装飾部12の変位が少なくとも一部の期間で同時進行するようにしてもよい)。つまり、第二装飾部12が右に展開されることになる。遊技者の視点で言えば、第一装飾部11が左、第二装飾部12が右に位置するようにして両装飾部が並ぶ一体的な演出形態が構築される。
【0029】
中途態様での第一装飾部11の絶対的な位置を第一中途位置(上記中央位置に相当する)と、第二装飾部12の絶対的な位置を第二中途位置(第一装飾部11が中央位置にあるときの上記原位置に相当する)とし、演出態様での第一装飾部11の絶対的な位置を第一演出位置(上記左位置に相当する)と、第二装飾部12の絶対的な位置を第二演出位置(第一装飾部11が左位置にあるときの上記演出位置に相当する)とする。中途態様から演出態様への変化により、第一装飾部11は第一中途位置(中央位置)から第一演出位置(左位置)に変位する。つまり、中途態様から演出態様への変化により、第一装飾部11の右側の空間が大きくなることになる(中途態様での当該右側の空間を「小空間」と、演出態様での当該右側の空間を「大空間」とする)。一方、中途態様から演出態様への変化により、第二装飾部12は第二中途位置から第二演出位置に変位するところ、仮に第一装飾部11が第一中途位置に位置したままの状態である(小空間のままである)とすると第二装飾部12を右に変位させる(展開する)ことができない(第二装飾部12が遊技盤90に干渉してしまうから)。つまり、第一装飾部11の右側の空間が、小空間から大空間に変化して大きくなるからこそ、第二装飾部12を第二中途位置から第二演出位置に変位させることが可能となる。見方を変えれば、第二装飾部12を展開するための空間をあけるために、第一装飾部11を第一中途位置から第一装飾位置に変位させているともいえる。
【0030】
4)特定演出
可動ユニット10を利用した特定演出について説明する。特定演出は、その結末が成功結末または失敗結末に至る演出である。成功結末の方が、失敗結末に比して、遊技者に有利な結末である。本実施形態における特定演出は、いわゆるリーチ演出の一種であり、当否判定結果が大当たりである場合には成功結末(
図6(c-1)参照)となり、はずれである場合には失敗結末(
図6(c-2)参照)となるものである。成功結末となった場合の方が、失敗結末となった場合よりも、当否判定結果が大当たりとなる蓋然性が高まることに留まる(いわゆるチャンスアップに留まる)設定等としてもよい。また、成功結末となった場合には当否判定結果が大当たりとなる可能性が残るものの、失敗結末となった場合には当否判定結果がはずれとなることが確定するといった設定としてもよい。
【0031】
成功結末または失敗結末に至った段階を結末段階とし、当該結末段階に至る前の段階を分岐段階とする。つまり、分岐段階は、遊技者が結末を知る前の段階である。特定演出では、分岐段階にて可動ユニット10を通常態様から中途態様に変化させる(
図6(a)(b)参照)。つまり、結末が明らかになる前の段階にて、可動ユニット10を中途態様とする。
【0032】
その後、結末移行契機の成立を契機として結末段階に移行する。本実施形態では、操作手段(例えば押しボタン)の操作が結末移行契機とされている。左分割領域51CLや右分割領域51CRに操作手段の操作を促す画像が表示される(
図6(b)参照)。なお、操作手段の操作がなされなかったときには、操作有効期間の経過を契機として結末段階に移行する。必ずしも遊技者の行動に起因して結末段階に移行する設定でなくてもよい。すなわち自動的に結末段階に移行するような設定としてもよい。例えば、可動ユニット10が中途態様となってから所定時間経過することを結末移行契機として設定することが考えられる。また、操作手段の操作(または操作有効期間の経過)が結末移行契機とされることもあれば、可動ユニット10が中途態様となってから所定時間経過することが結末移行契機とされることもある設定としてもよい。つまり、操作手段の操作が促されることもあれば、促されないこともある設定としてもよい。なお、この場合は、操作手段の操作が促される場合と、促されない場合とで、成功結末となる蓋然性が異なる設定(操作手段の操作が促されるかどうかが、いわゆるチャンスアップとされた設定)とされるとよい。
【0033】
成功結末となる場合には、可動ユニット10が中途態様から演出態様に変化する(
図6(c-1)参照)。本実施形態では、第一装飾部11に覆われた第二装飾部12が露出した状態となる。一方、失敗結末となる場合には、可動ユニット10が中途態様から通常態様に戻る(
図6(c-1)参照)。本実施形態では、第二装飾部12は露出せず、第一装飾部11に覆われたままとなる。成功結末となった場合には、その後大当たりであることが報知される(大当たりを示す識別図柄80の組み合わせが表示される)。失敗結末となった場合には、その後はずれであることが報知される(はずれを示す識別図柄80の組み合わせが表示される)。
【0034】
このように、本実施形態における特定演出では、結末に至る前の分岐段階にて、可動ユニット10が中途態様まで変化する(
図6(b)参照)。つまり、結末に至る前の段階にて、可動ユニット10が「完成」しそうな状況であることが示される(可動ユニット10が「完成」することが有利な結末であると推測できる)ため、(分岐段階に至るまで何らの変化も生じない演出と比較して)演出が分かりやすくなる。
【0035】
また、成功結末となる場合の可動ユニット10の変化(中途態様から演出態様への変化)は、第一装飾部11に覆われていた第二装飾部12が露出する(中途態様に至るまで隠れていたものが露出する)というものであるため、成功結末に至ったということが分かりやすい。
【0036】
また、中途態様から演出態様への変化に際し、第二装飾部12は第二中途位置(被覆位置)から第二演出位置(露出位置)に変位するところ、当該変位は第一装飾部11が第一中途位置(中央位置)から第一演出位置(左位置)に変位することにより空間が広げられる(小空間から大空間に広がる)ことにより実現されるものである。このようにすることで、限られたスペースの範囲内で大きな演出態様を構築することができる。
【0037】
5)以下、上記実施形態にかかる遊技機1を改良、具体化、変形等した具体例について説明する。なお、可能な限りにおいて、以下の具体例を用いて説明する技術を複数組み合わせて適用した構成としてもよい。
【0038】
〇第一具体例
可動ユニット10を用いた特定演出とは異なる演出(以下、別演出とする)が実行されるものとする。別演出は、次の点を除き、基本的な態様は特定演出と同じである。別演出と特定演出の違いは、分岐段階にて可動ユニット10が通常態様とされる(
図7(b)参照)か、中途態様とされる(
図6(b)参照)かという点である。つまり、別演出は、分岐段階にて可動ユニット10が通常態様(
図7(b)参照)とされ、結末移行契機の成立を契機として、成功結末となる場合には可動ユニット10が中途態様を経て演出態様に変化するように制御される(
図7(c-1)参照)。なお、失敗結末となる場合には可動ユニット10は通常態様のままとされる(
図7(c-2)参照)。
【0039】
可動ユニット10は、通常態様から中途態様を経て演出態様に至るものであるところ、特定演出は分岐段階にて可動ユニット10を中途態様とする(通常態様から中途態様に変化させる)一方、別演出は分岐段階にて可動ユニット10を通常態様とする点で両演出は異なる。可動ユニット10が演出態様となることが遊技者にとっての「ゴール」であることに照らせば、分岐段階にて中途態様にある場合の方が、通常態様にある場合よりも「ゴール」に近い状態であるといえる。つまり、分岐段階においては、特定演出の方が、別演出よりも、成功結末に近い状況にあるように遊技者は感じる蓋然性が高い。
【0040】
これを踏まえ、特定演出が発生した場合の方が、別演出が発生した場合よりも成功結末となる蓋然性が高くなるように設定されているとよい。「成功結末となること=大当たり」となる設定とするのであれば、特定演出の方が別演出よりも大当たり信頼度が高い演出ということである。つまり、特定演出と別演出はともに所定条件成立時に発生するリーチ演出であるところ、所定条件成立時に別演出が発生した場合よりも、特定演出が発生した場合の方が、大当たりに期待がもてるということである。別演出を基準とするのであれば、特定演出はいわゆるチャンスアップ演出であるとみることもできる。なお、別演出の方が、特定演出よりも、成功結末となる蓋然性が高い設定とすることを否定するわけではない。
【0041】
〇第二具体例
中途態様にある可動ユニット10により、特定演出が成功結末となる蓋然性が示唆されるものとする。特定演出においては、分岐段階(結末が分からない段階)にて可動ユニット10が中途態様とされる。当該中途態様の可動ユニット10を利用して成功結末となる蓋然性が示唆されるものとする。「成功結末となること=大当たり」となる設定とするのであれば、中途態様の可動ユニット10により大当たり信頼度が示唆されることになる。
【0042】
上記示唆は、可動ユニット10(第一装飾部11)が有する遊技者が視認可能な要素(視覚的要素)によるものであればよい。一例として、可動ユニット10が有する発光部18の発光態様により成功結末となる蓋然性が示唆されるものとすることが考えられる。例えば、分岐段階における発光部18の発光色は、青、緑、赤のいずれかとされ、当該順で成功結末となる蓋然性が高くなる(赤が最も高い)設定とする(
図8参照)。成功結末となることが確定する発光色が設定されていてもよい。それ以外の例としては、可動ユニット10(第一装飾部11)が表示器を備えるものとし、当該表示器に表示される画像の態様により示唆がなされるものとすることが考えられる。また、第一装飾部11がその形態を変化させることが可能な構成とし、その形態により示唆がなされるものとすることが考えられる。
【0043】
特定演出は、結末に至る前の段階から可動ユニット10(第一装飾部11)が通常態様から中途態様に変化させられるものであり、当該可動ユニット10に遊技者は注目するであろうから、本例のように当該可動ユニット10を結末の示唆に利用するとよい。
【0044】
〇第三具体例
第二装飾部12は、第一装飾部11に支持されたものでなくてもよい。つまり、第一装飾部11の変位に伴って、必然的に第二装飾部12が変位するものでなくてもよい。第一装飾部11と第二装飾部12により一体的な演出形態を構築することができるのであれば、第一装飾部11とは別に第二装飾部12を独立して変位させることができるものとしてもよい。
【0045】
〇第四具体例
第一装飾部11や第二装飾部12は複数の部材から構成されるものであってもよい。一例として、第二装飾部12が二つの部材(第一部材121、第二部材122)から構成される態様を説明する。被覆位置においては、第一部材121と第二部材122は互いに重なるようにして第一装飾部11に覆われた状態にある(
図9(a)参照)。露出位置においては、第一部材121と第二部材122の一方が他方を引っ張ることで両部材の重なりが被覆位置での重なりよりも小さくなるようにする。つまり、第一装飾部11との重なりが小さくなりつつ、第一部材121と第二部材122が展開されることで第二装飾部12が構築されるものとする(
図9(b)参照)。
【0046】
〇第五具体例
可動ユニット10の態様として、複数の中途態様が設定された構成とする。例えば、可動ユニット10は、通常態様(
図10(a)参照)から、第一中途態様(
図10(b)参照)を経て、さらに第二中途態様(
図10(c)参照)を経た上で、演出態様(
図10(d)参照)に変化するものとする。通常態様を基準とすれば、第一中途態様は第一段階の態様、第二中途態様は第二段階の態様、演出態様は第三段階(最終段階)の態様とみることもできる。このような構成であることを前提とし、特定演出の分岐段階にて可動ユニット10が通常態様から第一中途態様まで変化する場合だけでなく、通常態様から第一中途態様を経て第二中途態様まで変化する場合もある設定とする。
【0047】
本例のようにする場合、分岐段階にて第一中途態様となる場合(
図11(a)→(b-1)となる場合)よりも、第二中途態様となる場合(
図11(a)→(b-2)となる場合)の方が、成功結末となる(結末段階にて演出態様となる)蓋然性が高い設定とするとよい。第一中途態様(第一段階の態様)よりも、第二中途態様(第二段階の態様)の方が、最終段階の態様である演出態様に近いのであるから、第一中途態様にある場合よりも、第二中途態様にある場合の方が、演出態様に至る蓋然性が高い設定とする。つまり、「演出態様までの近さ」と「成功確率」がリンクする分かりやすい演出とすることが好ましい。
【0048】
4)以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0049】
上記実施形態から得られる具体的手段(遊技機)を以下に列挙する。
【0050】
・手段1
通常態様から演出態様に変化可能な可動ユニットと、遊技者に有利な成功結末に至る場合には前記可動ユニットが前記演出態様となる特定演出を実行する演出実行手段と、を備え、前記可動ユニットは、前記通常態様から中途態様に変化することを経て前記演出態様に変化することが可能なものであり、前記特定演出は、結末に至る前の分岐段階にて前記可動ユニットを前記通常態様から前記中途態様に変化させた上で、成功結末となる場合には前記可動ユニットを前記中途態様から前記演出態様に変化させるものであることを特徴とする遊技機。
上記遊技機によれば、結末に至る前の分岐段階にて、可動ユニットが中途態様まで変化して当該可動ユニットが「完成」(遊技者が目標とする態様)に至りそうな状況であることが示されるため、可動ユニットを用いた演出を分かりやすくすることが可能である。
【0051】
・手段2
前記可動ユニットは、第一装飾部および第二装飾部を有し、前記中途態様にて前記第一装飾部に覆われていた前記第二装飾部の少なくとも一部が、前記演出態様への変化によって露出することを特徴とする手段1に記載の遊技機。
このようにすることで、中途態様と演出態様の見た目の違いが大きくなるため、成功結末に至ったということが分かりやすい。
【0052】
・手段3
前記第二装飾部は、前記第一装飾部に支持されたものであることを特徴とする手段2に記載の遊技機。
【0053】
・手段4
前記可動ユニットは、前記通常態様から第一中途態様に変化し、当該第一中途態様から第二中途態様に変化すること経て前記演出態様に変化することが可能なものであり、前記特定演出は、前記分岐段階にて前記可動ユニットが前記第一中途態様とされる場合もあれば、前記第二中途態様とされる場合もある演出であることを特徴とする手段1から手段3のいずれかに記載の遊技機。
中途態様を複数設定することで、演出のバリエーションが広がり面白みが増す。
【0054】
・手段5
前記分岐段階にて前記可動ユニットが前記第一中途態様とされる場合よりも、前記第二中途態様とされる場合の方が、成功結末に至る蓋然性が高いことを特徴とする手段4に記載の遊技機。
第一中途態様よりも第二中途態様の方が目標となる演出態様に近いため、分岐段階にて第一中途態様である場合よりも第二中途態様である場合の方が成功結末に至る蓋然性が高い設定とするとよい。
【0055】
・手段6
遊技者に有利な成功結末に至る場合には前記可動ユニットが前記演出態様となる別演出を実行することが可能であり、前記別演出は、結末に至る前の分岐段階にて前記可動ユニットを前記通常態様とした上で、成功結末となる場合には前記可動ユニットを前記通常態様から前記演出態様に変化させるものであることを特徴とする手段1から手段5のいずれかに記載の遊技機。
このようにすれば、分岐段階にて可動ユニットが中途態様となる変化が生じるか否かに注目する遊技性が実現される。
【0056】
・手段7
前記別演出よりも前記特定演出の方が成功結末に至る蓋然性が高いことを特徴とする手段6に記載の遊技機。
通常態様よりも中途態様の方が目標となる演出態様に近いため、分岐段階にて通常態様である別演出よりも、中途態様である特定演出の方が成功結末に至る蓋然性が高い設定とするとよい。
【符号の説明】
【0057】
1 遊技機
10 可動ユニット
11 第一装飾部
12 第二装飾部
50 表示装置
51 表示領域