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特許7486788インバータ回路、整流回路およびこれらを使用する無線電力伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】インバータ回路、整流回路およびこれらを使用する無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240513BHJP
   H02J 50/05 20160101ALI20240513BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H02M7/48 A
H02J50/05
H02M7/06 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020094392
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021191111
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】水谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋士
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-184824(JP,A)
【文献】特開2018-68079(JP,A)
【文献】特開2019-176621(JP,A)
【文献】特開2017-93180(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00- 7/98
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界結合のための結合器を有する無線電力伝送システムにおいて、直流電圧源から直流電力が供給され、送電側整合回路に対して交流電力を出力するインバータ回路であって、
直流電圧源に第1の入力インダクタを介して第1の直列LCフィルタが接続された第1の送電側配線と、前記直流電圧源に第2の入力インダクタを介して第2の直列LCフィルタが接続された第2の送電側配線と、前記第1および第2の送電側配線の間に直列に接続された第1および第2のスイッチング回路とを備え、前記第1および第2のスイッチング回路は相互に逆位相によりスイッチングされ、一組の基本回路構造体を形成するものであって、2組以上の適宜な組数の該基本回路構造体を直列に接続されていることを特徴とするインバータ回路。
【請求項2】
前記第1のスイッチング回路は、前記第1の送電側配線と前記直流電圧源の負極側との間に接続された第1のスイッチング素子と、該スイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードと、前記スイッチング素子に並列に接続された容量素子と、前記直流電圧源と前記第1のスイッチング素子との間に直列に接続された前記第1の入力インダクタとをそれぞれ備え、
前記第2のスイッチング回路は、前記第2の送電側配線と前記直流電圧源の負極側との間に接続された第2のスイッチング素子と、該スイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードと、前記スイッチング素子に並列に接続された容量素子と、前記直流電圧源と前記第2のスイッチング素子との間に直列に接続された前記第2の入力インダクタとをそれぞれ備え、
第1および第2のスイッチング素子を相互に逆位相によりスイッチングしてなるものである請求項1に記載のインバータ回路。
【請求項3】
前記基本回路構造体の組数は、前記結合器の構成に応じて算出される該結合器の所望の入力インピーダンスを基準として、前記送電側整合回路におけるポアンカレ長を最短とする該送電側整合回路の入力インピーダンスの範囲に基づき、前記インバータ回路の出力インピーダンスが該範囲内となるように決定されたものである
請求項1または2に記載のインバータ回路。
【請求項4】
請求項1または2に記載のインバータ回路を用いる電界結合による無線電力伝送システムであって、
前記インバータ回路と、送電側整合回路と、送電電極と受電電極とを電界結合する結合器と、受電側整合回路と、前記受電側整合回路から出力される電力を整流する整流回路とを備え、
前記インバータ回路を構成する第1および第2のスイッチング回路を一組とする基本回路構造体の組数は、前記インバータ回路の出力インピーダンスが送電側整合回路に入力されるインピーダンスの所定の範囲内となるように決定されており、
前記整流回路は、倍電流整流回路を一組として、適宜な組数の該倍電流整流回路によって構成されるものであり、その組数は、前記結合器の構成に応じて算出される該結合器の所望の出力インピーダンスを基準として、前記受電側整合回路におけるポアンカレ長を最短とする該受電側整合回路の出力インピーダンスの範囲に基づき、前記整流回路の入力インピーダンスが該範囲内となるように決定されたものである
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項5】
請求項4に記載の無線電力伝送システムにおける整流回路であって、
前記受電側整合回路と負荷との間に接続された第1の受電側配線と、前記受電側整合回路と負荷との間に接続された第2の受電側配線と、前記第1および第2の受電側配線のそれぞれに接続された整流ダイオードおよびリアクトルとを備え、前記両配線は、負荷の正極側配線と負極側配線とに分岐しており、正極側配線にはカソードを正極側とする整流ダイオードを、負極側にリアクトルをそれぞれ接続されて一組の倍電流整流回路を構成していることを特徴とする整流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界結合方式による無線電力伝送において、送電側の整合回路の低損失化に資するインバータ回路と、同様に受電側の整合回路の低損失化のための整流回路と、これらのインバータ回路および整流回路を用いた無線電力伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、無線(非接触)により電力を伝送する技術としては、磁界結合方式のほか、電界結合方式があり、電界結合方式は、一対の送電電極と一対の受電電極とを対向させ、送電電極と受電電極との間に比誘電率の高い誘電体が設けられ、両者間のキャパシタンスを高い状態とすることにより電力伝送がなされるものである。
【0003】
ところが、誘電体を設けない場合または電極間の距離を大きくした場合には、両極間のインピーダンスが高くなり、インピーダンス整合が困難になることが指摘され、送電側において直列共振回路と並列共振回路を組み合わせ、受電側においても並列共振回路と直列共振回路を組み合わせる構成としつつ、双方の並列共振回路を電極側に配置することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-070055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1に開示される技術は、送電側および受電側において、直列共振回路と並列共振回路を組み合わせたものであり、電極側に並列共振回路を配置するものであるが、それぞれの直列共振回路と並列共振回路との間は、変圧器を構成するコイルによって結合されるものであった。しかしながら、上記の変圧器は、所望の変圧比に応じた巻数比とされるものであるが、インダクタンス比は、1~15が好ましく、さらに好ましくは3~8であるとされている。この場合の最大インダクタンス比の15は、インピーダンスに換算すると225となり、非常に大きいものとなっていた。本発明者らの研究によると、上記のような構成の場合には、送電側および受電側の両整合回路における損失が増大するものとなっていた。さらに、整合回路の素子ズレ(回路設計における理論値と現実的な性能とのズレ)による効率低下または伝送電力の低下をもたらすことも懸念されていた。
【0006】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、整合回路における損失を抑えることができるインバータ回路および整流回路を提供するとともに、これらを使用した効率のよい無線電力伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
インバータ回路に係る本発明は、電界結合のための結合器を有する無線電力伝送システムにおいて、直流電圧源から直流電力が供給され、送電側整合回路に対して交流電力を出力するインバータ回路であって、直流電圧源に入力インダクタを介して直列LCフィルタが接続された第1の送電側配線と、前記直流電圧源に入力インダクタを介して直列LCフィルタが接続された第2の送電側配線と、前記第1および第2の送電側配線の間に直列に接続された第1および第2のスイッチング回路とを備え、前記第1および第2のスイッチング回路は相互に逆位相によりスイッチングされ、一組の基本回路構造体を形成するものであって、適宜な組数の該基本回路構造体を直列に接続されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第1および第2のスイッチング回路は、相互に逆位相によりスイッチングされるものであるから、いわゆるプッシュプル構造により出力電圧をシングルエンド構造の出力電圧の2倍とするものである。これを一組の基本回路構造体として、その基本回路構造体を適宜な組数(例えば、2組以上の整数の組数)とすることにより、出力電圧は組数に応じた倍率(例えば2倍以上)となり、その出力電圧に応じて出力インピーダンスを調整可能となる。入力インピーダンスに対する出力インピーダンスの比は、スイッチング回路の数の2乗に比例することとなり、スイッチング回路の数(基本回路構造体の組数)に応じて出力インピーダンスを調整することができる。このインピーダンス調整により、送電側整合回路の損失を低減させることができる所望範囲のインピーダンスを当該送電側整合回路に入力させることができるものとなる。
【0009】
上記構成に発明において、前記第1のスイッチング回路は、前記第1の送電側配線と前記直流電圧源の負極側との間に接続された第1のスイッチング素子と、該スイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードと、前記スイッチング素子に並列に接続された容量素子と、前記直流電圧源と前記第1のスイッチング素子との間に直列に接続された入力インダクタとをそれぞれ備え、前記第2のスイッチング回路は、前記第2の送電側配線と前記直流電圧源の負極側との間に接続された第2のスイッチング素子と、該スイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードと、前記スイッチング素子に並列に接続された容量素子と、前記直流電圧源と前記第2のスイッチング素子との間に直列に接続された入力インダクタとをそれぞれ備え、第1および第2のスイッチング素子を相互に逆位相によりスイッチングしてなるものとすることができる。
【0010】
上記のような構成によれば、それぞれのスイッチング回路は、スイッチング素子がオフ状態となることにより、容量素子に電荷が蓄積され、他方、スイッチング素子がオン状態となるとき、容量素子から電荷が放出されてスイッチング素子に供給される。第1および第2のスイッチング素子が相互に逆位相によりスイッチングされることにより、プッシュプル構造を構成することとなり全体としての出力電圧がシングルエンド構造の出力電圧の2倍となるものである。従って、送電側配線に対して各スイッチング回路の数に相当する比率に応じて、電圧調整が可能となることから、第1および第2の送電側配線を介して、当該組数に応じた偶数倍電圧を出力することができる。
【0011】
上記各構成の発明において、前記基本回路構造体の組数は、前記結合器の構成に応じて算出される該結合器の所望の入力インピーダンスを基準として、前記送電側整合回路におけるポアンカレ長を最短とする該送電側整合回路の入力インピーダンスの範囲に基づき、該範囲内の出力インピーダンスにより出力されるように決定されたものとすることができる。
【0012】
このような構成によれば、予め設計された結合器と、当該結合器に使用される各素子等の条件に基づき、送電側整合回路に対する出力インピーダンスを調整することで、当該送電側整合回路における整合効率を向上させることができる。すなわち、結合器の構成に応じて結合器に入力すべきインピーダンスを算出し、当該インピーダンスに整合させるための整合回路において、ポアンカレ長が最短となるような整合回路への入力インピーダンスの範囲を予め求めておき、インバータ回路からの出力インピーダンスが前記の範囲内となるように基本回路構造体の組数(スイッチング回路の数)を決定することによって、整合回路における損失を最小限に抑えるのである。ここで、ポアンカレ長とは、非ユークリッド幾何学を用いたポアンカレ計量による幾何学的な長さのことであり、スミスチャート上にプロットされる2点のインピーダンスと経路から計算されるものである。そして、本願の発明者らの研究により、当該ポアンカレ長を最短となるインピーダンスの範囲で整合する場合に、整合回路の損失を低減させることができるものとなる。
【0013】
他方、無線電力伝送システムに係る本発明は、前記構成のインバータ回路を用いる電界結合による無線電力伝送システムであって、前記インバータ回路と、送電側整合回路と、送電電極と受電電極とを電界結合する結合器と、受電側整合回路と、前記受電側整合回路から出力される電力を整流する整流回路とを備え、前記インバータ回路を構成する第1および第2のスイッチング回路を一組とする基本回路構造体の組数は、送電側整合回路に入力されるインピーダンスの所定の範囲内となるように決定されており、前記整流回路は、倍電流整流回路を一組として、適宜な組数の該倍電流整流回路によって構成されるものであり、その組数は、前記結合器の構成に応じて算出される該結合器の所望の出力インピーダンスを基準として、前記受電側整合回路におけるポアンカレ長を最短とする該受電側整合回路の出力インピーダンスの範囲に基づき、該範囲内の入力インピーダンスを負荷に応じたインピーダンスとして出力させるように決定されたものであることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、インバータ回路における出力インピーダンスは、第1および第2のスイッチング回路の数(倍電圧となる基本回路構造体の組数)により所望の範囲内とすることができ、また、整流回路における入力インピーダンスは、倍電流整流回路の組数により所望の範囲内とすることができる。このように送電側整合回路への入力インピーダンスと、受電側整合回路からの出力インピーダンスとを、それぞれ所定の範囲内に調整することにより、両整合回路における整合効率が向上することとなる。
【0015】
また、整流回路に係る発明は、前記構成の無線電力伝送システムにおける整流回路であって、前記受電側整合回路と負荷との間に接続された第1の受電側配線と、前記受電側整合回路と負荷との間に接続された第2の受電側配線と、前記第1および第2のそれぞれに接続された整流ダイオードおよびリアクトルとを備え、前記両配線は、負荷の正極側配線と負極側配線とに分岐しており、正極側配線にはカソードを正極側とする整流ダイオードを、負極側にリアクトルをそれぞれ接続されて一組の倍電流整流回路を構成していることを特徴とする。
【0016】
上記のような構成によれば、倍電流整流回路を一組として、これを必要な組数に構成することにより、受電側整合回路における損失を低減させることができる。すなわち、結合器から出力され、整流回路に入力される間のインピーダンスを受電側整合回路によって整合する際に、予め整流回路の入力インピーダンスが調整されることにより、整合回路における損失の低減が可能となるのである。
【発明の効果】
【0017】
インバータ回路における本発明によれば、スイッチング回路の数を適宜選択することにより出力電圧を調整することができ、これにより、インバータ回路による出力インピーダンスを送電側整合回路の効率を考慮したインピーダンス値として整合回路に入力させることができる。このようなインバータ回路を使用することにより、整合回路での損失を減少させ、無線電力の伝送効率を向上させることができる。さらに、整合回路の素子ズレに対してロバストな高効率伝送を可能とすることができる。
【0018】
また、上記インバータ回路を使用する無線電力伝送システムによれば、インバータ回路による出力インピーダンスの調整により、送電側整合回路における損失を低下させることができるうえ、整流回路における入力インピーダンスの調整により受電側整合回路の損失をも低下させるものとなるから、無線電力伝送における全体の損失を小さくし、伝送効率の良いシステムを構築することができる。さらに、整合回路の素子ズレに対するロバストな高効率の伝送システムを構築することができる。
【0019】
なお、上記無線電力伝送システムに使用する整流回路によれば、倍電圧整流回路を一組として、その組数を受電側整合回路の効率を考慮して決定できることから、簡便な手法により受電側整合回路の損失低減を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は無線電力伝送システムの概要を示す説明図であり、(b)はインバータ回路の実施形態を示す説明図である。
図2】(a)はスイッチング回路の詳細を示す説明図であり、4倍電圧のインバータ回路の実施形態を示す説明図である。
図3】(a)は結合器の構成を示す説明図であり、(b)はスミスチャートを例示する図である。
図4】(a)は実施形態に使用する整流回路の説明図であり、4倍電流の整流回路の例を示す説明図である。
図5】6倍電圧のインバータ回路を例示した説明図である。
図6】8倍電圧のインバータ回路を例示した説明図である。
図7】6倍電流の整流回路を例示した説明図である。
図8】8倍電圧のインバータ回路を例示した説明図である。
図9】(a)は実施例の構成を示す説明図であり、(b)は実施例におけるスミスチャートを示す図である。
図10】(a)実験例の実験結果を示し、(b)は比較例の結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1(a)に無線電力伝送システムの概要を示す。発明の無線電力伝送システムは、この図に示されるように、送電側には、直流電圧源Aから電力供給されるインバータ回路1と、送電側整合回路2とを備え、受電側には、受電側整合回路3と、整流回路4とを備え、両者を結合器5による電界結合により負荷Bに電力伝送されるものである。
【0022】
電界結合による無線電力伝送では、高効率化を達成するために、結合器5の両端を高インピーダンス化することとなっていた。これは、結合器5の電極間距離を大きくすることにより、結合容量が小さくなる場合であっても高効率の電力伝送を可能とするためであって、従来は、変圧器を用いていたことため、コイルの巻き数に応じた変圧比を得ることができるが、高インピーダンス化を抑えることにはなり得なかった。
【0023】
そして、インバータ回路1における出力インピーダンスと結合器に対する入力インピーダンスとの間において、インピーダンス整合する場合、整合回路2,3の入出力インピーダンスが調整されていない状態では損失が大きくなり、電力伝送の効率を十分に向上させることに限界があった。そこで、本発明は、整合回路2,3の入出力インピーダンスを適度な範囲とすることにより、電力伝送効率を向上させるものである。
【0024】
<インバータ回路>
図1(b)は、インバータ回路1に係る実施形態の基本構造(基本回路構造体)を示している。インバータ回路1の基本構造は、この図に示すように、第1のスイッチング回路10aと、第2のスイッチング回路10bを備えるプッシュプル型のインバータである。個々のスイッチング回路10a,10bは、それぞれが直列LCフィルタ11a,11bを接続してなる送電側配線12a,12bの間に直列に接続されるものである。第1の送電側配線12aと、第2の送電側配線12bは、それぞれ入力インダクタ16a,16bを介して直流電圧源Aに接続されるとともに、両配線12a,12bの間に、第1のスイッチング回路10aおよび第2のスイッチング回路10bが介在された状態となっている。
【0025】
個々のスイッチング回路10a,10bは、それぞれスイッチング素子13a,13bが接続されており、このスイッチング素子13a,13bは、NチャンネルMOS-FETが使用されている。このスイッチング素子13a,13bには、逆並列にダイオード14a,14bが接続され、また、出力コンデンサ(容量素子)15a,15bが接続された構成となっている。なお、上記のダイオード14a、14bは、ボディダイオードであり、それぞれのカソードがドレイン側に接続され、アノードがソース側に接続されている。このような構成のスイッチング回路10a,10bが第1および第2の配線12a,12bの間に直列に接続される状態とは、個々のスイッチング回路10a,10bの各素子および直流電圧源Aが、スイッチング素子13a,13のドレインとソースに対して並列であることを除き、隣接するスイッチング回路10a,10bの各素子間が直列に接続されている状態であり、少なくとも出力コンデンサ15a,15bが直列に配置されている状態を意味する。
【0026】
上記のような構成のスイッチング回路10a,10bは、スイッチング素子13a,13bがオフ状態のとき、出力コンデンサ15a,15bに電荷が蓄積され、スイッチング素子13a,13bをオン状態に移行する前に蓄積した電荷をすべて放出することで、ゼロボルトスイッチングを達成する。
【0027】
なお、本実施形態は、プッシュプル型の2倍電圧インバータ回路を示していることから、同じ回路構成を有する第1のスイッチング素子13aと第2のスイッチング素子13bとが、相互に逆位相でスイッチングされることにより、グランドGを基準とする出力電圧がシングルエンド構造の出力電圧の2倍となるため、2個のスイッチング回路により倍電圧インバータとして機能することとなる。また、それぞれの送電側配線12a,12bに対して逆位相の電力を出力し、高周波電力を発生させるものである。
【0028】
ここで、第1のスイッチング回路10aおよび第2のスイッチング回路10bは同じ構成であり、それぞれの回路は図2(a)に示すようものとなり、入力インダクタ14のインダクタンス(L)、出力コンデンサ14の容量(C)ならびに直列LCフィルタ11を構成するコンデンサの容量(C)およびインダクタのインダクタンス(L)は、出力電力(Pout)、直流電圧源電圧(VDD)、共振インダクタのQ値(QLo)およびスイッチング周波数(f)および出力電圧の倍率(現実に設けるべきスイッチング回路の数)(n)を決定することより、下式のように特定することができる。なお、各素子は、ともにスイッチング回路10における出力インピーダンス(Rout)の関数となるが、ここでの出力インピーダンス(Rout)は、単一のスイッチング回路10によるものである。
【0029】
【数1】
【0030】
本実施形態は、上記のような構成の基本構造(基本回路構造体)を一組とし、両送電側配線12a,12bに合流させるように設けられるものである。このとき、例えば、上記一組の基本回路構造体を2組以上(2組、3組、4組・・・)とするものである。そこで、基本回路構造体を2組(出力電圧を4倍)に増設する場合は、図2(b)に示すように、両送電側配線12a,12bの間に合計4個のスイッチング回路10a~10dが設けられる構成となっている。
【0031】
このような構成の場合、直流電圧源Aに接続された二つの送電側配線12a,12bに対して、組数に応じたスイッチング回路10a~10dが2個ずつ設けられるものである。このとき、両端に配置されるスイッチング回路10a,10dを第1組とすると、その内側に配置されるスイッチング回路10b,10cが追加された第2組となる。このように、2個のスイッチング回路が同時かつ相互に逆位相でスイッチングされるため、片方のスイッチング回路がオン状態のとき、他方のスイッチング回路がオフ状態となるように接続され、2倍の出力電圧による高周波電力が出力される。このとき、二つの送電側配線12a,12bの間には、追加されているスイッチング回路10b,10cを含めた各出力コンデンサ15a,15b,15c,15dが直列に接続されるものであり、これらによって出力電圧がさらに2倍(合計4倍)に昇圧されることとなる。
【0032】
なお、図2(b)に示す回路構成の場合には、隣接するスイッチング回路入力10a,10b(10c,10d)の間に設けられる入力インダクタ16b,16cは、隣接する双方に接続していることから、他の入力インダクタ16a,16bの1/2のインダクタンスとすることとなる。
【0033】
上記のような構成により、無線電力伝送システム全体の各素子が決定すれば、出力電圧の倍率が算出可能となり、インバータ回路1における出力インピーダンスも決定することとなる。このときの出力インピーダンスは、インバータ回路1の入力インピーダンスとの比によって算出され、上記構成のインバータ回路1に使用するスイッチング回路10a,10b,・・・の数の2乗に比例することから、送電側整合回路2に対して出力すべき所望のインピーダンスに応じて、スイッチング回路10a,10b,・・・の数を選択することができる。但し、スイッチング回路10a,10b,・・・の数は基本回路構造体の組数を単位とすることから、実質的に、スイッチング回路10a,10b,・・・の数は2の倍数となる。
【0034】
例えば、直流電圧源Aの電圧(VDD)を100V、負荷の抵抗を10Ωとするとき、出力電力Poutは、入力電力Pinと等しく1000Wとなる(下式(6)参照)。但し、インバータはE級とするために理論効率は100%である。このとき、直流電圧源Aの側から入力される入力インピーダンスRinは下式(7)により10と算出され、インバータから出力される出力インピーダンスRoutとの比は下式(8)となる。
【0035】
【数2】
【0036】
ここで、上記の組数を決定する場合には、予め結合器3の構成が設計され、その構成に応じて送電側整合回路2に入力されるべきインピーダンスの範囲を求めておき、上記インバータ1の出力インピーダンスが当該送電側整合回路2の入力インピーダンスの範囲内となるように、上記基本回路構造体の組数を決定するのである。このとき、組数は送電側整合回路2が好適にインピーダンス整合し得るインピーダンスの範囲内であれば送電側整合回路2における損失を低減することができる。仮に、当該範囲が広範囲となる場合には、当該範囲内に属する組数が複数存在することとなり得るが、インバータ回路1の出力インピーダンスは、上述のように、スイッチング回路10a,10b,・・・の数の2乗に比例する程度であることから、いずれの組数を採用してもよい。これは、インバータ回路1そのものの効率は変化しないことによるものであり、その結果として、所定の範囲内となる状態であれば組数は任意となるものである。
【0037】
上記において、例えば、送電側整合回路2の構成に応じて好適となる入出力インピーダンスが160Ωから938Ωの範囲内である場合には、上式(8)のnは、6(組数3)、8(組数4)、10(組数5)、12(組数6)であれば良いこととなる。このように、組数の選択肢が複数存在する場合には、いずれかの任意な組数を選択することができる。
【0038】
<無線電力伝送システム>
無線電力伝送システムに係る実施形態は、前述したように、送電側に、直流電圧源Aから電力供給されるインバータ回路1と、送電側整合回路2とを備え、受電側に、受電側整合回路3と、整流回路4とを備え、両者を結合器5による電界結合により負荷Bに電力伝送されるものである(図1参照)。
【0039】
ここで、インバータ回路1は、前記のような構成とされるものであり、従って、前述のように、結合器5の構成に応じて、送電側整合回路2に対する入力インピーダンス(コンバータ回路1から出力されるインピーダンス)が、所定範囲内となるように、基本回路構造体の組数が決定される。そこで、結合器5について説明する。
【0040】
<結合器>
結合器5は、図3(a)に示すように、中央の送電電極50aおよび受電電極50bを境に送電側と受信側に区分され、送電側整合回路2および受電側整合回路3の間において高周波電力を電界結合させて送電可能とするものである。結合器5の構成として、図3(a)は、送電側と受電側とを対称な構成としているが、送電側と受電側とが異なる構成としてもよい。この図による例示の場合、電極50a,50bの送電側および受電側には、それぞれ抵抗51,52およびキャパシタ(容量素子)53,44によってパッシブ回路が構成されている。上記各素子のパラメータ等を与えることにより、結合器5における所望のインピーダンスが算出され、両整合回路2,3によって当該所望のインピーダンスに整合されるものである。
【0041】
ここで、整合回路2,3における整合効率について説明する。前述のように、インバータ回路1は、スイッチング回路数を調整することが可能であることから、整合回路2,3におけるポアンカレ長が最短となるような出力インピーダンスに調整することができる。ポアンカレ長が短ければ、整合回路2,3における損失が小さくなり、整流効率は向上することとなるのである。
【0042】
ポアンカレ長とは、非ユークリッド幾何学を用いたポアンカレ計量による幾何学的長さのことであり、スミスチャート上にプロットされた2点のインピーダンスと経路から計算される。これにより、整合回路で用いるインダクタおよびキャパシタの損失を表すことができる。整合素子(インダクタおよびキャパシタ)を選択使用することにより最短経路を辿ることによって、最短ポアンカレ長を達成し、整合回路2,3の損失を低減させることができる。
【0043】
そこで、例えば、図3(b)に示すようなインピーダンスZ(=r+jx)を整合する場合、最短となるポアンカレ長は、整合後インピータンスの実部が図中のR(R~1/gの範囲内)となる領域に存在する。なお、gは、インピーダンス(Z)をアドミタンス(Y=g+jb)に換算したときの実部である。また、最短ポアンカレ長(lpmin)が下式(9)によって算出されるとき、整合回路の効率(ηmax)は、下式(10)に示されるものとなる。この式(10)から明らかなとおり、ポアンカレ長の値(Q)が小さければ、整合回路2,3の効率は高いものとなるのである。
【0044】
【数3】
【0045】
従って、最短のポアンカレ長を導き出すことにより、高効率の整合回路2,3を構成することができ、そのためには、送電側整合回路2に対する入力インピーダンスおよび受電側整合回路3からの出力インピーダンスを設定することとなる。その両側において、当該所定のインピーダンスとなるように、上記範囲内にインバータ回路1からの出力インピーダンスが調整され、また、整流回路4における入力インピーダンスが調整されるのである。そこで、整流回路4においてもインピーダンス調整のため倍電流回路が使用されるものである。なお、最短のポアンカレ長を参照する手法は、当該整合回路2,3による損失の低減に資するものであるが、必ずしも最短のポアンカレ長を参照しなければならないという趣旨ではない。すなわち、最短ポアンカレ長から多少逸脱するような状態となる場合であっても、最短ポアンカレ長の近くであれば損失の適度な低減を実現できる。また、近似の回路構成においては、回路構成の変更の度に、最短ポアンカレ長を導き出すことが必須ではなく、経験的に損失低減可能な回路を構成することも可能である。
【0046】
<整流回路>
本実施形態で使用する整流回路4の基本構成は、図4(a)に示すような倍電流整流回路(2倍電流の整流回路)である。この整流回路4は、2つの整流ダイオード41a,41bと2つのリアクトル42a,42bで構成されている。整流回路4には、前述のようにインピーダンス整合された交流電圧源が入力され、二つの整流ダイオード41a,41bは、それぞれアノード側を二種類の入力配線(受電側配線)43a,43bに接続して全波整流させる構成となっている。二つの配線43a,43bは整流ダイオード41a,41bが接続される線路とリアクトル42a,42bが接続される線路とに分岐しており、整流ダイオード41a,41bがオンの状態とオフの状態との双方でリアクトル42a,42bに出力電流が生じ、二つのリアクトル42a,42bの出力電流の和が全体の出力電流となり、結果的に2倍電流の整流回路となるものである。
【0047】
そこで、4倍電流の整流回路を構成する場合には、図4(b)に示すように、4つの整流ダイオード41a,41b,41c,41dと4つのリアクトル42a,42b,42c,42dを設け、それぞれ分岐させるとともに、これを合流させることにより4倍電流の整流回路となるものである。
【0048】
このように、受電側整合回路3によりインピーダンス整合された交流電圧源の電流を複数倍の電流に変換することにより、負荷に出力されるインピーダンスを低下させることができる。この場合受電側整合回路3によるインピーダンス整合は、前述した送電側のインバータ回路による場合と同様に、受電側整合回路3の損失を低減させるようにインピーダンスを調整することができるものである。
【0049】
すなわち、前述の結合器5の構成に基づき、受電側整合回路3におけるポアンカレ長が最短となるような当該整合回路3の出力インピーダンスの範囲を定め、整流回路4のおける入力電流と出力電流との倍率を変化させることにより、整流回路4の入力インピーダンスを上記所定の範囲内に調整するのである。このときの整流回路4の入力インピーダンスの調整は、倍電流回路の倍率(組数)によって可能となる。これにより、当該整合回路3の損失を低減させつつ、負荷に対する所定電力を供給することができる。
【0050】
<変形例>
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、上記の実施形態は本発明の一例を示すものであり、本発明が上記実施形態に限定されるものではない。従って、本発明は、上記実施形態の要素を変更し、または他の要素を追加するものであってもよい。
【0051】
例えば、インバータ回路は、4倍電圧(基本回路構造体を2組)とする構成までを示したが、6倍電圧インバータ回路としてもよく、さらには8倍電圧インバータ回路としてもよい。そこで、図5に6倍電圧インバータ回路を、図6に8倍電圧インバータ回路を示す。6倍電圧インバータ回路の場合には、図5に示されているように、6個のスイッチング回路10a~10fが設けられ、8倍電圧インバータ回路の場合には、図6に示されているように、8個のスイッチング回路10a~10hが設けられる構成となるものである。
【0052】
また、同様に整流回路においても、4倍電流整流回路までを例示したが、6倍電流整流回路または8倍電流整流回路を使用する場合もあり得る。そこで、図7に6倍電流整流回路を示し、図8に8倍電流整流回路を示す。これらの各回路は、基本的構成を同じにしつつ、倍率のみを変更できるように構成されたものである。6倍電流整流回路の場合には、図7に示すように、6個の整流ダイオード41a~41fと6個のリアクトル42a~42gが設けられ、8倍電流整流回路の場合には、図8に示すように、8個の整流ダイオード41a~41hと8個のリアクトル42a~42hが設けられる構成となっている。
【0053】
倍電流(2倍)整流回路における入出力インピーダンス比の理論値は、本願発明者らの解析によれば、約0.186である。これを2組(4倍電流)とする場合は、2倍電流時を基準として1/2、3組(6倍電流)では1/3、4組(8倍電流)では1/4のように、所定の組数(2n倍)となる倍電流整流回路におけるインピーダンス比は2倍時(0.186)を基準として2/nの2乗として算出できる。
【0054】
なお、整合回路2,3は、LCインピーダンス回路によって構成することができ、直列LCインピーダンス回路または並列LCインピーダンス回路によって構成してもよく、インダクタおよびコンデンサの数および接続状態は任意に選択することができる。上述のように、送電側整合回路2から結合器5に入力する際のインピーダンス応じた整合回路2に対する入力インピーダンス、および結合器5から受電側整合回路3に出力される際のインピーダンスに応じた整合回路3からの出力インピーダンスを、それぞれ所定の範囲内に設定すれば、上述のようにポアンカレ長を最短とする整合回路2,3となり、その損失は低減されるものである。このとき、結合器5の入出力インピーダンス(Zopt)が、Zopt=r±jxの場合には、コイルおよびコンデンサによるLCインピーダンス回路を構成することになるが、Zopt=r+jxの場合は、コンデンサのみを使用し、Zopt=r-jxの場合は、インダクタのみを使用することにより、最短ポアンカレ長を達成することができる。
【実施例
【0055】
以下に、本発明の具体的な実施例を示す。まず、結合器の構成から、送電側整合回路に入力されるべきインピーダンスおよび受電側整合回路に出力されるべきインピーダンスを求める。例えば、図9(a)に示す結合器を有する無線電力伝送システムにおいて、結合器を同図に示すように構成した場合、下表のようなパラメータを与えるものとする。
【0056】
【表1】
【0057】
上記のパラメータに基づいて、最大電力伝送効率(ηmax)および結合器の入出力インピーダンス(Zsopt,Zlopt)は下表のとおりとなる。
【0058】
【表2】
【0059】
上記により、入出力インピーダンス(Zsopt,Zlopt)が160-j354Ωであることから、r=160Ωとなり、1/gは938Ωとなる。この場合のスミスチャートを図9(b)に示す。そして、上記における最短のポアンカレ長(送電側Qs,受電側Ql)および各整合回路の効率(η,η)は、前記式(9)より下記表のとおりとなる。
【0060】
【表3】
【0061】
また、このときの入力側の効率ηおよび出力側の効率ηは、整合素子のQ値(Qu)を100とすると、双方ともに97.8%となる。
【0062】
上記の結果より、高効率にインピーダンス整合し得るインバータの出力インピーダンスおよび整流回路への入力インピーダンス(R)は、それぞれ下式の条件を満たすものとすればよいこととなる。
【0063】
【数4】
【0064】
次に、インバータ回路1を構成する際の基本回路構造体の組数に応じた出力インピーダンスが上記式(11)の範囲内となるRを求めることとなるが、図9(a)に示される無線電力伝送システムの場合には、直流電圧源の電圧が100V、負荷の抵抗を10Ωであるから、E級インバータによる理論効率を100%とすると、出力電力(Pout)は、入力電力(Pin)と等しく1000Wとなる(前記式(6)参照)。このとき、直流電圧源からインバータへの入力インピーダンスに対する出力インピーダンスの比は前記式(8)に基づいて、前記式(11)を満たすRとなるスイッチング回路の数(n)は、6、8、10、12となり、基本回路構造体の組数(nの1/2)は3組、4組、5組および6組となる。これらの組数の中から任意の組数を選択することにより、整合効率のよいインピーダンス比となるインバータ回路を構成することができる。
【0065】
また、受電側整合回路3から出力され、整流回路4に入力すべき入力インピーダンスが上記式(11)の範囲内となるRを求める。すなわち、上述のように、倍電流整流回路における入出力インピーダンス比(R/r)が、約0.186であり、これを基準として2/nの2乗により、整流回路4の入力インピーダンスが、60Ω~938Ωとなる組数を決定する。
【0066】
これを出力インピーダンス10Ωとして計算すると、基本回路構造体を単位として、2組(4倍電流)が約215Ω、3組(6倍電流)が約484Ω、4組(8倍電流)が約860Ωとなり、これらの組数が上記範囲内のRsに合致する。そして、これらの組数から任意の組数を選択することができる。
【0067】
<実験例>
上記のように設計された各回路により無線電力伝送システムを構築し、シミュレーションによって伝送効率を算出した。具体的には、図9(a)に示した結合器5を設計した場合、送電側整合回路2による出力インピーダンスおよび受電側整合回路3に対する入力インピーダンスは、いずれも160-j354Ωとなり、インバータ回路1は6倍電圧(3組)とし、整流回路は4倍電流(2組)とした。この場合、図10に示すように、送電側整合回路2における伝送効率は98.1%、受電側整合回路3の効率は96.8%となった。なお、結合器4における効率が93.4%であったことから、システム全体の伝送効率は88.7%であった。
【0068】
<比較例>
上記例と比較するために、インバータ回路を1組の倍電圧(2倍)回路とし、整流回路も1組の倍電流回路を使用した場合についても同様にシミュレーションによって伝送効率を算出した。この場合には、図11に示すように、送電側整合回路における伝送効率は89.7%であり、受電側整合回路における効率は94.8%であった。また、結合器の効率が93.3%であったことから、全体の伝送効率は79.4%となった。
【0069】
上記の実験例と比較例とを比較すれば明らかなとおり、伝送効率が10%程度も向上することが判明した。
【符号の説明】
【0070】
1 インバータ回路
2 送電側整合回路
3 受電側整合回路
4 整流回路
5 結合器
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h スイッチング回路
11,11a,11b 直列LCフィルタ
12,12a,12b 送電側配線
13,13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13h スイッチング素子
14,14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h ダイオード(ボディダイオード)
15,15a,15b,15c,15d,15e,15f,15g,15h 容量素子(出力コンデンサ)
16,16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16h 入力インダクタ
50a 送電電極
50b 受電電極
51,52 インダクタ
53,54 キャパシタ(容量素子)
41a,41b,41c,41d,41e,41f,41g,41h 整流ダイオード
42a,42b,42c,42d,42e,42f,42g,42h リアクトル
43a,43b 入力配線(受電側配線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10