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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A47J27/00 109G
A47J27/00 109P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020114029
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012292
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】菅原 かほり
(72)【発明者】
【氏名】桝澤 岳史
(72)【発明者】
【氏名】寺島 幸之介
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-284639(JP,A)
【文献】特開平04-357911(JP,A)
【文献】特開2008-206541(JP,A)
【文献】特開2001-008821(JP,A)
【文献】特開2014-046089(JP,A)
【文献】特開2010-234101(JP,A)
【文献】特開2019-024730(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3632272(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対して着脱自在に収納される内釜と、
前記内釜を加熱する加熱部と、
前記加熱部の出力制御を行う制御部と、を有し、
前記内釜に標準の調合比で準備された米穀及び水を、昇温工程及び炊き上げ工程を含む複数の工程を経て炊飯する第一運転モードと、
前記内釜に前記標準の調合比よりも水を多く含む調合比で準備された米穀及び水を、昇温工程及び炊き上げ工程を含む複数の工程を経て炊飯する第二運転モードと、を含む複数の運転モードから選ばれた一の運転モードにより炊飯する炊飯運転を実施可能であり、
前記第二運転モードにおける前記炊き上げ工程中に、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程中よりも前記加熱部の出力を制限する出力制限期間を有し、
前記第二運転モードによる炊飯を、前記内釜に準備する米穀に対する水の調合比を所定の範囲で相違させて実施可能であり、
米穀に対する水の調合量の増加に応じて、前記出力制限期間が調整されること、を特徴とする炊飯器。
【請求項2】
本体に対して着脱自在に収納される内釜と、
前記内釜を加熱する加熱部と、
前記加熱部の出力制御を行う制御部と、を有し、
前記内釜に標準の調合比で準備された米穀及び水を、昇温工程及び炊き上げ工程を含む複数の工程を経て炊飯する第一運転モードと、
前記内釜に前記標準の調合比よりも水を多く含む調合比で準備された米穀及び水を、昇温工程及び炊き上げ工程を含む複数の工程を経て炊飯する第二運転モードと、を含む複数の運転モードから選ばれた一の運転モードにより炊飯する炊飯運転を実施可能であり、
前記第二運転モードにおける前記炊き上げ工程中に、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程中よりも前記加熱部の出力を制限する出力制限期間を有し、
糖質量を基準として前記炊飯運転の運転条件を指示可能であり、
指示された前記運転条件による前記炊飯運転を実現するための米穀及び水の調合比に基づいて前記出力制限期間が設定されること、を特徴とする炊飯器。
【請求項3】
前記出力制限期間が、前記内釜の温度が水の沸点に到達すると想定されるタイミングを基準として所定のタイミングで開始されること、を特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記第二運転モードによる炊飯において、前記出力制限期間中に、前記内釜の温度を水の沸点よりも低い温度領域において経時的に上昇するように前記加熱部の出力制御を行うこと、を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記出力制限期間において、前記内釜の温度が水の沸点よりも低い温度領域内において推移するように前記加熱部の出力制御を行い、
前記出力制限期間の終了後、所定時間に亘って、前記内釜の温度が水の沸点よりも高くなるように前記加熱部の出力制御を行うこと、を特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項6】
糖質量を基準として前記炊飯運転の運転条件を指示することを条件として、前記第一運転モードにより前記炊飯運転を行った場合の米飯に含まれると想定される糖質量に対し、指示された運転条件で得られる米飯に含まれると想定される糖質量の減少量を報知可能であること、を特徴とする請求項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されている加熱調理器のようなものが提供されている。この炊飯器は、本体内に着脱自在に収納される内鍋と、内鍋を加熱する加熱部と、内鍋内の溶液を内鍋外へ排出する排出部と、加熱部と排出部を制御する制御手段を備えたものとされている。この加熱調理器は、排出部により、調理中に溶液にご飯から溶け出たデンプンや糖などを除去することで、炊き上がった米のデンプン濃度を下げ、米飯の低カロリー化を図るものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-217503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来技術の加熱調理器においては、米飯の低カロリー化を実現させるために、調理中に米穀から溶出される余分なでんぷんや糖などを取り除くために、排出部や、ポンプ、液体タンク等の特別な機構や、これらの動作制御を行うためのプログラム等を必要とする。そのため、上述した従来技術の加熱調理器は、装置構成及び動作制御の双方とも複雑な構成とならざるを得ない。また、上述したような構成とした場合、様々な構成を備えている分だけ加熱調理器(炊飯器)の本体サイズが大きくなってしまったり、排出部において調理中にごはんから溶出される余分なでんぷんや糖などを取り除くための清掃や、目詰まり等の不具合が発生した場合のメンテナンス等も必要になるという問題がある。さらに、上述したような構成とした場合、排出部が炊飯に用いられている米穀や水の中に挿入されるため、衛生面においても十分な配慮が必要になるという問題がある。また、上述した従来技術の加熱調理器では、排出部を上蓋から着脱可能な構造にはなっておらず、炊き上がった米飯を内鍋から茶碗等に装う作業を行うとき等に邪魔になるという問題も生じ得る。
【0005】
そこで本発明は、特別な構成を追加することなく、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を手軽に調整可能な炊飯器の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の炊飯器は、本体に対して着脱自在に収納される内釜と、前記内釜を加熱する加熱部と、前記加熱部の出力制御を行う制御部と、を有し、前記内釜に標準の調合比で準備された米穀及び水を、昇温工程及び炊き上げ工程を含む複数の工程を経て炊飯する第一運転モードと、前記内釜に前記標準の調合比よりも水を多く含む調合比で準備された米穀及び水を、昇温工程及び炊き上げ工程を含む複数の工程を経て炊飯する第二運転モードと、を含む複数の運転モードから選ばれた一の運転モードにより炊飯する炊飯運転を実施可能であり、前記第二運転モードにおける前記炊き上げ工程中に、前記第一運転モードにおける前記炊き上げ工程中よりも前記加熱部の出力を制限する出力制限期間を有すること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明の炊飯器は、第一運転モードによる炊飯運転に加え、第一運転モードによる場合に比べて水を多く含む調合比で準備された米穀及び水を炊飯する第二運転モードによる炊飯運転を行うことができる。また、本発明の炊飯器は、第二運転モードにおける炊き上げ工程中に出力制限期間を設けて炊飯運転を行うものとされている。このように、出力制限期間を設けて炊飯運転を行うことにより、米穀に対して水分を浸透させることができる。これにより、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を抑制しつつ、第一運転モードによる炊飯運転を行った場合と遜色のない食味となるように米飯を炊き上げることができる。従って、本発明によれば、特別な構成を追加することなく、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を手軽に調整可能な炊飯器を提供できる。
【0008】
(2)上述した炊飯器は、前記出力制限期間が、前記内釜の温度が水の沸点に到達すると想定されるタイミングを基準として所定のタイミングで開始されること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
かかる構成によれば、第二運転モードによる炊飯運転を行う場合に、出力制限期間中に吹きこぼれが発生するのを抑制しつつ、米穀に対して水分を浸透させることができる。
【0010】
(3)上述した炊飯器は、前記第二運転モードによる炊飯を、前記内釜に準備する米穀に対する水の調合比を所定の範囲で相違させて実施可能であり、米穀に対する水の調合量の増加に応じて、前記出力制限期間が調整されること、を特徴とするものであると良い。
【0011】
本発明の炊飯器においては、第二運転モードによる炊飯運転を行う場合に、米穀に対する水の調合比に対応して出力制限期間が調整される。これにより、出力制限期間の長さを、米穀に対して水分を浸透させて炊飯するのに適した長さに調整できる。そのため、本発明の炊飯器は、米穀に対する水の調合比を変更して単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を調整することが可能となる。従って、本発明の炊飯器によれば、ユーザの希望に応じて、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を手軽に調整可能な炊飯器を提供できる。
【0012】
(4)上述した炊飯器は、前記第二運転モードによる炊飯において、前記出力制限期間中に、前記内釜の温度を水の沸点よりも低い温度領域において経時的に上昇するように前記加熱部の出力制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0013】
かかる構成によれば、第二運転モードによる炊飯運転を行う場合に、出力制限期間中に吹きこぼれが発生するのを抑制しつつ、米穀に対して水分を浸透させることができる。これにより、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を抑制しつつ、第一運転モードによる炊飯運転を行った場合と遜色のない食味となるように米飯を炊き上げることができる。
【0014】
(5)上述した炊飯器は、前記出力制限期間において、前記内釜の温度が水の沸点よりも低い温度領域内において推移するように前記加熱部の出力制御を行い、前記出力制限期間の終了後、所定時間に亘って、前記内釜の温度が水の沸点よりも高くなるように前記加熱部の出力制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0015】
上述した炊飯器においては、出力制限期間において、内釜の温度が出力制限期間の開始時よりも高く、水の沸点よりも低い温度領域内の温度となるように加熱部の出力制御が行われる。そのため、上述した炊飯器によれば、出力制限期間において吹きこぼれの発生を抑制しつつ、米穀に対して十分に水分を浸透させることができる。また、上述した炊飯器においては、出力制限期間の終了に伴い米穀に浸透することなく残存している水量が少なくなった状態において、所定時間に亘って、内釜の温度が水の沸点よりも高くなるように加熱部の出力制御が行われる。上述した炊飯器においては、このような温度制御が行われるため、しっかりと米穀を炊き上げることができる。従って、本発明の炊飯器によれば、糖質量を抑制しつつ食味の良い米飯を炊飯することができる。
【0016】
(6)上述した炊飯器は、糖質量を基準として前記炊飯運転の運転条件を指示可能であり、指示された前記運転条件による前記炊飯運転を実現するための米穀及び水の調合比に基づいて前記出力制限期間が設定されること、を特徴とするものであると良い。
【0017】
かかる構成によれば、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量が、炊飯運転の運転条件として設定された糖質量となるように炊飯運転を行える炊飯器を提供できる。
【0018】
(7)上述した炊飯器は、糖質量を基準として前記炊飯運転の運転条件を指示することを条件として、前記第一運転モードにより前記炊飯運転を行った場合の米飯に含まれると想定される糖質量に対し、指示された運転条件で得られる米飯に含まれると想定される糖質量の減少量を報知可能であると良い。
【0019】
かかる構成によれば、第二運転モードによる炊飯運転を行うことによって、糖質量をどの程度減少させることができたのかをユーザに知らせることができる。
【0020】
ここで、上述した第二運転モードによる炊飯運転を行う場合、米穀に対して調合する水量に応じて、炊飯後に得られる米飯に含まれる糖質量が変動する。そのため、米飯に含まれる糖質量を精度良く調整するためには、準備した米穀を炊飯するのに必要な水量を精度良く導出できるようにすることが望ましい。
【0021】
(8)かかる知見に基づけば、上述した炊飯器は、炊飯に用いる米穀の量、及び炊飯後の米飯に含まれると想定される糖質量に基づいて、前記第二運転モードによる炊飯に要する水量を導出可能であると良い。
【0022】
かかる構成によれば、炊飯に用いる米穀の量と、米飯に含まれる糖質量を指標として、炊飯に最適な水量を導出することができる。
【0023】
(9)上述した炊飯器は、炊飯後の米飯に含まれる糖質量に関する情報を記録可能であること、を特徴とするものであると良い。
【0024】
かかる構成によれば、ユーザが米飯から摂取したであろう糖質量を記録可能な炊飯器を提供できる。
【0025】
(10)上述した炊飯器は、炊飯後の米飯に含まれる糖質量に関する情報を外部端末に向けて送信可能であること、を特徴とするものであると良い。
【0026】
かかる構成によれば、外部端末を用いて糖質量の把握や管理を行うことが可能な炊飯器を提供できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、特別な構成を追加することなく、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を手軽に調整可能な炊飯器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る炊飯器を示す斜視図である。
図2図1の炊飯器を示す断面図である。
図3図1の炊飯器が備える操作部を拡大視した平面図である。
図4図1の炊飯器における制御部の構成、及び炊飯器を構成する他の構成と制御部との関係を示したブロック図である。
図5図1の炊飯器が加熱部と内釜の温度との関係を模式的に示したグラフであり、(a)は通常運転モードで炊飯運転を行う場合のもの、(b)は低糖質運転モードで炊飯運転を行う場合のものである。
図6図1の炊飯器において、低糖質運転モードによる設定操作を行う際の動作フローを示したフローチャートである。
図7図1の炊飯器において、低糖質運転モードでの動作時に表示装置に表示される表示画面の一例を示した説明図である。
図8図1の炊飯器に通信部を設けた変形例における動作状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係る炊飯器10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、炊飯器10の構成について概略を説明した後、制御部30の構成、及び制御部30によって行われる炊飯器10における特徴的な動作制御について詳細に説明する。なお、以下の説明において上下左右や、正面、背面、側面、天面、底面等の位置関係を示す用語については、特に断りのない限り、図1に示すように通常の使用形態として想定される姿勢で炊飯器10を設置した状態を前提として説明する。
【0030】
≪炊飯器10の概略構成について≫
図1及び図2に示すように、炊飯器10は、炊飯器本体20、蓋部40、内釜50等を備えている。炊飯器10は、IH(Induction Heating)式や、圧力IH式のように、内釜50を発熱させる加熱方式を採用したものである。
【0031】
炊飯器本体20は、内釜収容部22、加熱部24、電源部26、温度センサ28、制御部30等を備えている。内釜収容部22は、内釜50を収容するために設けられた部分である。内釜収容部22は、平面視において略円形状に開口しており、上側へ開放された凹状の形状とされている。そのため、炊飯器本体20は、内釜収容部22に対して上方から内釜50を出し入れすることができる。
【0032】
加熱部24は、内釜50を加熱するためのものである。加熱部24は、底側加熱部24a、及び蓋側加熱部24bを有する。底側加熱部24aは、内釜収容部22の下方側に設けられており、内釜50を底側から加熱可能なものとされている。また、蓋側加熱部24bは、後に詳述する蓋部40側に設けられている。蓋側加熱部24bは、内釜50を蓋部40側から加熱可能なものとされている。
【0033】
電源部26は、加熱部24に対して背面側の位置に設けられている。電源部26は、加熱部24や制御部30等、炊飯器10において電力を消費する部分に電力供給するためのものである。電源部26は、加熱部24をなす誘導コイルに対し、高周波電流を印加できるものとされている。そのため、炊飯器10は、電源部26によって加熱部24をなす誘導コイルに高周波電流を印加して内釜50内に渦電流を発生させ、内釜50内の電気抵抗によって内釜50を発熱させることができる。
【0034】
温度センサ28は、内釜収容部22の下方であって、内釜収容部22の中央部に相当する位置に設けられている。温度センサ28は、内釜収容部22に収容された内釜50の底部において温度測定するためのものである。
【0035】
制御部30は、炊飯器本体20において内釜収容部22に対して正面側にある空間内に配置されている。制御部30は、電源部26、温度センサ28や、後述する蓋部40に設けられた操作部44等に対して電気的に接続されている。制御部30は、マイクロコンピュータ等で構成され、CPU等のハードウェアおよびソフトウェア(プログラム)の協働によって、炊飯器10の動作制御を行うことができる。すなわち、制御部30は、操作部44を介して炊飯器10の動作設定信号を受け付けたり、温度センサ28からの出力信号に基づいて電源部26の出力制御を行ったりして、炊飯器10の動作制御を行うことができる。
【0036】
蓋部40は、ヒンジ機構42によって、炊飯器本体20の上部に回動可能に連結されている。蓋部40は、閉状態とすることにより、内釜収容部22の開口部を覆い、閉塞することができる。また、蓋部40を開状態とすると、蓋部40がヒンジ機構42によって回動し、内釜収容部22の開口部が開いた状態になる。蓋部40は、上述した加熱部24を構成する蓋側加熱部24bに加え、操作部44、表示装置46、及び蒸気排気部48を備えている。
【0037】
操作部44は、炊飯器10の操作を行うためのものであり、蓋部40の天面側に設けられている。操作部44は、蓋部40の天面に露出するように設けられた複数のボタンを備えている。具体的には、操作部44は、運転モード選択操作部44a、低糖質炊飯操作部44b、炊飯操作部44c、予約操作部44d、保温/取消操作部44e、ヘルシーメニュー操作部44f等をなす複数の操作ボタンを備えている。操作部44は、これらの操作ボタンを操作することにより、炊飯器10の運転モードの選択や、後に詳述する低糖質炊飯を実施するための設定操作、炊飯運転の開始操作、予約運転に関する設定操作、保温運転に関する設定操作、麦飯や玄米、雑穀米等の炊飯運転に関する設定操作等を行うことができる。また、操作部44には、LED等の表示器を備えており、操作ボタンによって選択された運転モードや運転予約の表示等を行うことができる。
【0038】
表示装置46は、炊飯器10の動作状態や、操作部44の操作に伴う表示等を行うものである。表示装置46は、操作部44を構成する各操作部(操作ボタン)等に隣接する位置に設けられている。
【0039】
蒸気排気部48は、蓋部40を閉状態として炊飯を行う際に発生する蒸気を排出するためのものである。蒸気排気部48は、蓋部40を閉状態としたときに、内釜収容部22やこれに収容された内釜50の上方となる位置に設けられている。蒸気排気部48は、蓋部40の天面側及び底面側(内釜収容部22側)に向けて開放された開口、及び両開口を繋ぐ通路からなる排気経路を有し、これを介して炊飯器10の内側から外側に向けて蒸気を排出可能とされている。
【0040】
内釜50は、上述した内釜収容部22に対して出し入れ可能とされた炊飯用の釜である。内釜50は、上側へ開放された有底略円筒状であって、内部に炊飯用の米穀や水等を収容可能とされている。
【0041】
≪制御部30の構成について≫
続いて、制御部30の構成について説明する。図4に示すように、制御部30は、上述した加熱部24や、電源部26、温度センサ28、操作部44、表示装置46、計量部60、通信部70等に対して電気的に接続されている。制御部30は、通電制御部100、熱量設定部102、合数判定部104、データ格納部106、算出部108、報知制御部110、タイマ112等を備えている。
【0042】
通電制御部100は、加熱部24への通電制御を行うためのものである。熱量設定部102は、炊飯器10により行われる炊飯運転の各工程において、加熱部24により内釜50やこれに準備されている米穀、水等に付与する熱量(電力)を設定するものである。また、合数判定部104は、炊飯する米穀の量(合数)を判定するためのものである。
【0043】
データ格納部106は、ROMやフラッシュメモリ等の記憶媒体を備えたものとされている。データ格納部106は、炊飯運転や糖質量の減少量の算出、炊飯に必要な水量の算出等を行うための実行プログラムを格納すると共に、炊飯運転における各工程等に関するデータ等をデータテーブル106aとして予め格納している。算出部108は、米穀の炊飯に必要な水量を算出したり、被炊飯物である米飯等の重量変化量に、被炊飯物の単位重量当たりの糖質量やカロリー量を乗じることにより、ユーザが摂取したであろうと考えられる糖質量やカロリー量を算出したりする等の演算処理を行うことができる。
【0044】
報知制御部110は、表示装置46において表示を行うことによる報知や、図示しないスピーカーやブザー等を用いた音による報知等を制御するものである。タイマ112は、炊飯運転における各工程の継続時間や切り替えタイミングを調整するためのものである。
【0045】
≪制御部30による動作制御について≫
以下、炊飯器10において制御部30によって行われる特徴的な動作制御について説明する。炊飯器10は、制御部30による動作制御により、通常運転モード(第一運転モード)、低糖質運転モード(第二運転モード)を含む複数の運転モードからユーザにより選択された運転モードにより炊飯運転を行うことができる。
【0046】
通常運転モードは、内釜50に標準の調合比(以下、「標準調合比」とも称する)で準備された米穀及び水を、昇温工程及び炊き上げ工程を含む複数の工程を経て炊飯する炊飯運転を行うものである。本実施形態の炊飯器10では、通常運転モードは、前炊き工程、昇温工程、炊き上げ工程、第一蒸らし工程、追い炊き工程、第二蒸らし工程をこの順で行うシーケンスにより、炊飯運転を実施するモードとされている。
【0047】
図5(a)に示すように、前炊き工程は、炊飯運転の初期において加熱部24により内釜50を所定温度まで昇温させる工程である。また、昇温工程は、前炊き工程に続いて行われる工程であり、加熱部24による出力を上昇させ、内釜50を所定温度まで昇温させる工程である。また、炊き上げ工程は、昇温工程に引き続き加熱部24を動作させ、水の沸点、あるいはこれを越える温度まで内釜50の温度を上昇させて米穀を炊き上げる工程である。第一蒸らし工程は、加熱部24の出力を停止あるいは抑制し、炊き上げ工程において炊き上げた米飯を蒸らす工程である。追い炊き工程は、加熱部24のうち、蓋側加熱部24bを作動させ、内釜50内に炊き上げられた米飯を追い炊きする工程である。第二蒸らし工程は、蓋側加熱部24bを作動させた状態で米飯の蒸らしを行う工程である。
【0048】
低糖質運転モードは、内釜50に上述した標準調合比よりも水を多く含む調合比で準備された米穀及び水を、昇温工程及び炊き上げ工程を含む複数の工程を経て炊飯する炊飯運転を行うものである。低糖質運転モードにおいて、米穀に対する水の調合比を調整することにより、炊き上げ後における単位重量当たりの米飯に含まれる糖質の量を調整することができる。そのため、低糖質運転モードは、炊飯器10は、炊き上げ後における単位重量の米飯に含まれる糖質の量を、通常運転モードによって炊飯した単位重量の米飯に含まれる糖質量を基準として、削減する糖質量(以下、「糖質削減量」とも称する)を適宜設定して炊飯運転を行うものとすることができる。炊飯器10は、低糖質運転モードによる糖質削減量を所定の範囲内で無段階に変更可能なものとしたり、多段階に変更可能なものとしたりすることができる。
【0049】
本実施形態では、低糖質運転モードにより炊飯運転を行う場合に、糖質削減量を10%、20%の二段階に切り替え可能なものとされている。炊飯器10においては、操作部44に設けられた低糖質炊飯操作部44bの操作により、糖質削減量を10%、20%の二段階に切り替え可能とされている。具体的には、本実施形態の炊飯器10では、低糖質炊飯操作部44bをなす操作ボタンを押下する毎に、糖質削減量の設定値を10%と20%との間で切り替え可能とされている。さらに具体的には、本実施形態の炊飯器10では、図6に示すフローに則り、低糖質運転モードにおける設定操作を行うことができる。
【0050】
すなわち、低糖質運転モードによる設定操作を行う場合には、先ずステップ1において操作部44において何らかのボタン操作(キー操作)がなされたか否かが確認される。ボタン操作が確認された場合には、ステップ2に進み、操作されたボタンが低糖質炊飯操作部44bをなす操作ボタンであるか否かを確認する。ここで、低糖質炊飯操作部44bの操作であることが確認される場合には制御フローがステップ3に移行し、低糖質炊飯操作部44bの操作でない場合には制御フローがステップ6に移行する。
【0051】
制御フローがステップ3に進むと、現時点で選択されている糖質削減量が20%であるか否かが確認される。ここで、現時点の糖質削減量の設定値が20%である場合には、制御フローがステップ4に進み、糖質削減量の設定値が10%に切り替えられる。一方、ステップ3において、現時点の糖質削減量の設定値が20%でない場合、すなわち現時点の糖質削減量の設定値が10%である場合には、制御フローがステップ5に進み、糖質削減量の設定値が20%に切り替えられる。
【0052】
また、上述したステップ2において低糖質炊飯操作部44bをなす操作ボタン以外の操作であると判断された場合には、制御フローがステップ6に進む。ステップ6では、ステップ1で検知された操作ボタンが、運転モード選択操作部44a、あるいはヘルシーメニュー操作部44fを構成するものであるか否かが確認される。ここで、運転モード選択操作部44a、あるいはヘルシーメニュー操作部44fを構成する操作ボタンの操作であると判断された場合には、低糖質運転モードの選択が解除される。一方、運転モード選択操作部44a、及びヘルシーメニュー操作部44fのいずれでもないと判断された場合には、ステップ8に移行し、操作が検知された操作ボタンに対応する動作制御がなされる。炊飯器10においては、このようにして、低糖質運転モードによる設定操作に係る処理が実施される。
【0053】
低糖質運転モードは、上述した通常運転モードと同様のシーケンスにより炊飯運転を行うものであるが、一部の工程における動作が相違している。具体的には、通常運転モードと同様に、前炊き工程、昇温工程、炊き上げ工程、第一蒸らし工程、追い炊き工程、第二蒸らし工程をこの順で行うシーケンスにより、炊飯運転を実施する。ここで、低糖質運転モードは、炊き上げ工程中に出力制限期間を設ける点において、上述した通常運転モードの場合と異なる動作制御がなされる。
【0054】
具体的には、図5(b)に示すように、低糖質運転モードにより炊飯運転を行う場合、制御部30は、出力制限期間において、通常運転モードにおける炊き上げ工程中よりも加熱部24の出力を制限する。さらに詳細には、低糖質運転モードにおいて、炊飯運転の工程が昇温工程から炊き上げ工程に移行した後、内釜の温度が水の沸点に到達すると想定されるタイミング、あるいはこのタイミングよりも少し前のタイミングにおいて、出力制限期間が開始される。出力制限期間においては、内釜50の温度が水の沸点よりも低い温度領域において経時的に推移するように加熱部24の出力制御が制御部30によって行われる。本実施形態の炊飯器10においては、内釜50の底部における温度が92℃に達したタイミングにおいて、出力制限期間が開始される。出力制限期間においては、水の沸点である100℃よりも低い温度領域において経時的に上昇するように加熱部24の出力制御が制御部30によって行われる。このような出力制御を行うことにより、標準調合比よりも米穀に対する水の配合量を多くして炊飯運転を行ったとしても、吹きこぼれが生じることなく、米穀に対してしっかりと水分を浸透させつつ炊飯を行うことができる。
【0055】
ここで、低糖質運転モードにより炊飯運転を行う場合は、米穀に対する水の配合量の大小によって糖質削減量が増減する。また、米穀に対する水の配合量が多い場合(すなわち、糖質削減量が多い場合)は、米穀に対する水の配合量が少ない場合(すなわち、糖質削減量が少ない場合)に比べて、多くの水を米穀に浸透させる必要がある。さらに、水の配合量に応じて、炊き上げ工程において吹きこぼれが発生したり、食味が損なわれたりする可能性も変動する。そのため、ユーザが設定する糖質削減量で炊飯を行いつつ、吹きこぼれや食味の低下等の不具合を抑制するためには、ユーザが設定する糖質削減量、内釜50に準備された米穀の量、及びこれに配合される水の量を精度良く調整することが望まれる。
【0056】
さらに詳細には、本実施形態の炊飯器10においては、通常運転モードで運転する際における米穀の量に対する水量の比率(標準調合比=水量/米穀量)は、米穀が1合の場合に1.70倍、2合の場合に1.6倍、3合の場合に1.47倍と規定されている。これに対し、糖質削減量を20%として低糖質運転モードにより炊飯運転を行う際の標準調合比は、米穀が1合の場合に2.20倍、2合の場合に2.17倍、3合の場合に1.90倍と規定されている。また、糖質削減量を10%として低糖質運転モードにより炊飯運転を行う際の標準調合比は、米穀が1合の場合に2.00倍、2合の場合に1.85倍、3合の場合に1.75倍と規定されている。本実施形態では、内釜50の内壁面に、糖質削減量及び炊飯に用いる米穀の量(合数)に応じて、最適な水量が分かるように水位の指標となる目盛が付されている。本実施形態の炊飯器10においては、内釜50に付された目盛を指標とする等して、糖質削減量及び米穀量に応じて、適切な量の水が準備されていることを前提として、制御部30が上述した動作制御を行う。これにより、炊飯器10は、吹きこぼれや食味の低下等を抑制しつつ、ユーザにより設定された糖質削減量を満足する米飯を炊き上げることができる。
【0057】
制御部30は、内釜50に準備された米穀の量、及び糖質削減量(換言すれば、炊飯後の米飯に含まれると想定される糖質量)に基づいて、出力制限期間の長さ、出力制限期間において内釜50やこれに準備されている米穀、水等に付与する熱量(加熱部24の出力)を導出する。制御部30は、このようにして導出された出力制限期間の長さ、及び加熱部24の出力を満足するように、炊飯運転に係る動作制御を行う。
【0058】
低糖質運転モードにより炊飯運転を行う場合、制御部30は、出力制限期間の終了後、所定時間に亘って、内釜の温度が水の沸点よりも高くなるように加熱部24の出力制御を行う。これにより、内釜50内に残存している水分を蒸発させ、しっかりと米穀を炊き上げる。
【0059】
上述したように、本実施形態の炊飯器10は、通常運転モードとは別に設けられた低糖質運転モードを選択することにより、通常運転モードによる場合に比べて水を多く含む調合比で準備された米穀及び水を用いて炊飯運転を行うことができる。また、炊飯器10は、低糖質運転モードにおける炊き上げ工程中に出力制限期間を設けて炊飯運転を行うものとされている。このように、出力制限期間を設けて炊飯運転を行うことにより、米穀に対して水分を浸透させることができる。これにより、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を抑制しつつ、通常運転モードによる炊飯運転を行った場合と遜色のない食味となるように米飯を炊き上げることができる。従って、上述した炊飯器10によれば、特別な構成を追加することなく、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を手軽に調整することができる。
【0060】
また、上述したように、炊飯器10においては、出力制限期間が、内釜50の温度が水の沸点に到達すると想定されるタイミング、あるいはこれよりも少し前のタイミングから開始される。このようなタイミングで出力制限期間を開始し、加熱部24の出力制限を行うことにより、低糖質運転モードによる炊飯運転中に吹きこぼれが発生するのを抑制しつつ、米穀に対して水分を浸透させることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、内釜50の温度が水の沸点に到達すると想定されるタイミングを基準として出力制限期間を開始する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、内釜50の温度を基準として他のタイミングで出力制限期間を開始するようにしたり、内釜50の内圧の推移に基づいて出力制限期間の開始タイミングを規定するようにしたりしても良い。
【0062】
上述したように、炊飯器10は、低糖質運転モードによる炊飯を、内釜50に準備する米穀に対する水の調合比を所定の範囲で相違させて実施可能であり、米穀に対する水の調合量の増加に応じて、出力制限期間の長さが調整されるものとされている。具体的には、炊飯器10は、糖質削減量に応じて内釜50に準備する米穀に対する水の調合比を所定の範囲で相違させて実施可能とされており、水の調合量に応じて変わる糖質制限量に基づいて出力制限期間の長さが調整されるものである。これにより、出力制限期間の長さを、米穀に対して水分を浸透させて炊飯するのに適した長さとなるように調整することができる。
【0063】
上述したように、炊飯器10は、低糖質運転モードによる炊飯において、出力制限期間中に、内釜50の温度を水の沸点よりも低い温度領域において経時的に上昇するように加熱部24の出力制御を行うこととされている。そのため、炊飯器10においては、低糖質運転モードによる炊飯運転を行う場合に、出力制限期間中に吹きこぼれが発生するのを抑制しつつ、米穀に対して水分を浸透させることができる。これにより、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量を抑制しつつ、通常運転モードによる炊飯運転を行った場合と遜色のない食味となるように米飯を炊き上げることができる。
【0064】
また上述したように、炊飯器10は、低糖質運転モードによる炊飯において、出力制限期間の終了後、所定時間に亘って、内釜50の温度が水の沸点よりも高くなるように加熱部24の出力制御を行うこととしている。これにより、出力制限期間の終了に伴い米穀に浸透することなく残存している余剰の水分を気化させる等して、しっかりと米穀を炊き上げることができる。これにより、糖質量を抑制しつつ、食味の良い米飯を炊飯することができる。なお、本実施形態では、出力制限期間の終了後に内釜50の温度が水の沸点よりも高くなるように加熱部24の出力制御を行うようにしているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、炊飯器10は、例えば、出力制限期間の終了後に余剰の水分を気化させる等する必要がない場合には、前述したような出力制限期間の終了後における加熱部24の出力制御を行わないようにすると良い。
【0065】
上述したように、炊飯器10においては、糖質量(糖質制限量)を基準として炊飯運転の運転条件を選択可能とされており、選択された運転条件による炊飯運転を実現するための米穀及び水の調合比に基づいて出力制限期間が設定されるものとされている。そのため、上述した炊飯器10によれば、単位重量当たりの米飯に含まれる糖質量が、炊飯運転の運転条件として設定された糖質量となるように炊飯運転を行える。なお、本実施形態の炊飯器10は、糖質制限量を10%及び20%の二種類から選択するものであるため、製造段階等において、予め出力制限期間を導出して設定しておくことが可能であるが、本発明はこれに限定されない。具体的には、例えば、炊飯後の米飯に含まれる糖質量(糖質制限量)を無段階、あるいは多段階に設定可能である等して、米穀の量及び糖質量(糖質制限量)に応じて最適な米穀及び水の調合比や出力制限期間を予め決定しておくことが困難である場合等には、炊飯用に準備された米穀量に応じて内釜50に投入すべき水の量や出力制限期間の長さ等の条件を、制御部30によって導出して報知等できるようにすると良い。これにより、予め規定された糖質量(糖質制限量)等の既定値に制限されることなく、炊飯に用いる米穀の量や、糖質量(糖質制限量)を任意のものに変更しても、ユーザの希望に即した糖質量(糖質制限量)の米飯を得ることができる。
【0066】
上述したように、低糖質運転モードによる炊飯運転を行う場合には、米穀に対して調合する水量に応じて、炊飯後に得られる米飯に含まれる糖質量が変動する。上記実施形態において例示した炊飯器10においては、内釜50に付された目盛を指標にする等によって、炊飯用の米穀の量に応じて水量を調整可能とした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、低糖質運転モードによる炊飯運転により得られる米飯に含まれる糖質量を精度良く調整するためには、内釜50に準備した米穀の量の計量や、炊飯に必要な水量の導出、内釜50に米穀を準備してから投入された水量の報知等を行えるようにすると良い。
【0067】
具体的には、炊飯器10をかかる構成とする場合には、例えば図4において破線で示すように、内釜収容部22にセットされた内釜50内に存在しているものを被計量物とし、その計量結果に係るデータを出力可能な計量部60を設けると良い。計量部60を設けることにより、内釜収容部22にセットされた内釜50に準備された米穀や水の量を計測できる。計量部60は、例えば従来公知の重量センサのように直接的に重量を計測できるものや、重量以外の物理量を計測することにより間接的に重量を導出するもの等とすることができる。このような構成によれば、炊飯に用いる米穀や水の量を精度良く計測して炊飯することができるため、低糖質運転モードのように米穀と水との調合比が重要な炊飯運転を行う場合であっても、想定した通りの米飯を得ることができる。また、計量部60を設ける場合には、例えば表示装置46やスピーカー、ブザー等の報知手段により報知可能な構成等すると、さらにユーザの利便性が向上する。
【0068】
具体的には、低糖質運転モードで炊飯を行うために米穀や水を内釜50に準備する段階で、例えば図7に示すように表示装置46を用いてユーザがすべきことや、準備すべき水の量等について順を追って表示すると良い。さらに詳細に説明すると、図7に示した例においては、低糖質運転モードで炊飯を行う際に、先ず内釜50に米穀を準備するように促す報知を行う(図7(a)参照)。米穀が投入されると、その重量を計量部60によって計量すると共に、米穀の重量に基づき、低糖質運転モードで炊飯するために必要な水量を制御部30において算出し、その結果を表示装置46によって報知する(図7(b)参照)。図示例では、洗米後に600ccの水を内釜50に入れるように報知している。このような表示がなされた状態において、内釜50に水を投入していくと、水の投入量が計量部60によって計量されると共に、投入量に応じて内釜50に準備すべき水量の表示を減少させる処理を行う(図7(c)参照)。内釜50に準備すべき量だけ水が準備されると、図7(d)のように内釜50に入れるべき水量がゼロとして表示されると共に、ブザー音(例えば、「ピッ」と一度音を鳴らす)によりその旨を報知する。また、内釜50に過剰に水が投入された場合には、図7(e)のように、減少させるべき水量が表示されると共に、先のものとは違うブザー音(例えば、「ピッ、ピッ」と二度に亘って音を鳴らす)によりその旨を報知する。このような構成によれば、低糖質運転モードのように米穀と水との調合比が重要な炊飯運転を行う場合であっても、ユーザが米穀と水との調合比を容易かつ正確に調整でき、想定した通りの米飯を得ることができる。
【0069】
また、上述した炊飯器10は、低糖質運転モードで炊飯を行う場合に、通常運転モードによって炊飯運転を行ったに比べて、糖質量の減少量を報知可能であると良い。このような構成とすれば、低糖質運転モードで炊飯することにより、どの程度糖質量の摂取を制限できたかをユーザが容易に把握し、健康管理等に活用することが可能となる。
【0070】
上述した炊飯器10は、例えば、制御部30に記憶媒体を設ける等して、炊飯後の米飯に含まれる糖質量に関する情報を記録可能なものとすると良い。このような構成によれば、ユーザが米飯から摂取したであろう糖質量を記録しておき、健康管理等に活用することが可能となる。
【0071】
上述した炊飯器10は、炊飯後の米飯に含まれる糖質量に関する情報を外部端末に向けて送信可能なものとすると良い。具体的には、図4において破線で示すように、通信部70を設ける等して、炊飯器10に通信機能を付加し、炊飯器10とは異なる外部の機器類と制御部30との通信を行えるようにすると良い。図8に示す例のように、通信部70は、例えば、炊飯器10のユーザが所有している携帯電話やスマートフォン、タブレット端末、PC等のクライアント端末72と無線通信可能としたり、LAN回線やインターネット回線を通じてローカル環境に設置されたサーバや、クラウドサーバ等からなるサーバ74と通信可能としたりすると良い。このような構成によれば、例えば炊飯器10と、クライアント端末72やサーバ74との間で、糖質制限量や摂取カロリー等の情報を定期的に送受信したり、炊飯器10からサーバ74にアップロードされた情報をクライアント端末72において参照可能としたりすることができる。
【0072】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示および精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の炊飯器は、糖質制限を行うための炊飯を行う炊飯器全般において好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 :炊飯器
20 :炊飯器本体
24 :加熱部
30 :制御部
50 :内釜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8