(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】与薬ラック
(51)【国際特許分類】
A61G 12/00 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
A61G12/00 F
(21)【出願番号】P 2020128810
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】394016874
【氏名又は名称】河淳株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 厚三
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-307104(JP,A)
【文献】特開2007-094608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A47B 43/00
A47B 81/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部を有するラック本体と、
前記収納部に収納される複数のトレイと、
を備え、
前記複数のトレイのそれぞれは、
トレイ本体と、
前記トレイ本体に設けられ、個人情報を記載した第1シートを装着可能な第1装着部であって、外部から視認可能な表示位置と外部から視認不可能な秘匿位置との間で移動可能な第1装着部と、
前記トレイ本体に設けられ、前記収納部に前記トレイが収納された状態で前記装着部を前記表示位置から前記秘匿位置にする移動機構と、
を有する与薬ラック。
【請求項2】
前記移動機構は、押下された際に前記第1装着部を前記秘匿位置に移動させるとともに、押下が解除された際に前記第1装着部を前記表示位置に移動させるスイッチを有し、
前記スイッチは、前記トレイが前記収納部に収納された際に押下される請求項1に記載の与薬ラック。
【請求項3】
前記ラック本体は、
前記収納部に収納された収納位置にある前記複数のトレイに係合して前記複数のトレイの引出位置への移動を禁止する係合位置と、前記複数のトレイから離間した離間位置と、の間で移動可能な複数の係合部であって、前記係合位置にあるときに前記スイッチを押下可能な複数の係合部と、
前記複数の係合部を前記係合位置と前記離間位置との間で移動させる操作部と、
を備える請求項2に記載の与薬ラック。
【請求項4】
前記トレイ本体は、前記個人情報以外の情報を記載した第2シートを装着可能な第2装着部を有し、
前記秘匿位置は、前記第2装着部の後方に隠れた位置に設けられ、
前記表示位置は、前記第2装着部の下方に設けられ、
前記移動機構は、前記スイッチに接続されるリンクであって、前記スイッチが押下された際に前記装着部を上方に持ち上げて前記秘匿位置に移動させるリンクを有し、
前記第1装着部は、前記スイッチの押下が解除された際に自重で前記表示位置に落下するとともに前記リンクを介して前記スイッチを押下前の状態に戻す請求項3に記載の与薬ラック。
【請求項5】
前記トレイ本体は、前記第2装着部の後方に隠れた位置に前記第1装着部および前記移動機構を差し込み可能に窪んだ差込部を有し、
前記第1装着部および前記移動機構は、前記差込部に対して着脱可能である請求項4に記載の与薬ラック。
【請求項6】
収納部を有するラック本体と、
前記収納部に収納され
た収納位置と、前記収納部から引き出された引出位置と、の間で進退可能な複数のトレイと、
を備え、
前記複数のトレイのそれぞれは、
トレイ本体と、
前記トレイ本体に設けられ、個人情報を記載した第1シートを装着可能な第1装着部と、
前記トレイ本体に設けられ、外部から前記第1装着部を視認可能にする表示位置と、外部から前記第1装着部を視認不可能にする秘匿位置と、の間で移動可能なシャッターと、
前記トレイ本体に設けられ、前記収納部に前記トレイが収納された状態で前記シャッターを前記表示位置から前記秘匿位置にする
移動機構であって、前記引出位置にして前記トレイから薬を取り出そうとする際に、前記シャッターを前記表示位置に移動できる移動機構と、
を有する与薬ラック。
【請求項7】
収納部を有するラック本体と、
前記収納部に収納される複数のトレイと、
を備え、
前記複数のトレイのそれぞれは、
トレイ本体と、
前記トレイ本体に設けられ、個人情報を記載した第1シートを装着可能な第1装着部と、
前記トレイ本体に設けられ、外部から前記第1装着部を視認可能にする表示位置と、外部から前記第1装着部を視認不可能にする秘匿位置と、の間で移動可能なシャッターと、
前記トレイ本体に設けられ、前記収納部に前記トレイが収納された状態で前記シャッターを前記表示位置から前記秘匿位置にする移動機構と、
を有し、
前記移動機構は、押下された際に前記シャッターを前記秘匿位置に移動させるとともに、押下が解除された際に前記シャッターを前記表示位置に移動させるスイッチを有し、
前記スイッチは、前記トレイが前記収納部に収納された際に押下される
与薬ラック。
【請求項8】
前記ラック本体は、
前記収納部に収納された収納位置にある前記複数のトレイに係合して前記複数のトレイの引出位置への移動を禁止する係合位置と、前記複数のトレイから離間した離間位置と、の間で移動可能な複数の係合部であって、前記係合位置にあるときに前記スイッチを押下可能な複数の係合部と、
前記複数の係合部を前記係合位置と前記離間位置との間で移動させる操作部と、
を備える請求項7に記載の与薬ラック。
【請求項9】
前記秘匿位置は、前記第1装着部の前方に位置し、
前記表示位置は、前記第1装着部の下方に設けられ、
前記移動機構は、前記スイッチに接続されるリンクであって、前記スイッチが押下された際に前記シャッターを上方に持ち上げて前記秘匿位置に移動させるリンクを有し、
前記シャッターは、前記スイッチの押下が解除された際に自重で前記表示位置に落下するとともに前記リンクを介して前記スイッチを押下前の状態に戻す請求項8に記載の与薬ラック。
【請求項10】
前記トレイ本体は、前記第1装着部、前記シャッターおよび前記移動機構を差し込み可能に窪んだ差込部を有し、
前記第1装着部、前記シャッターおよび前記移動機構は、前記差込部に対して着脱可能である請求項9に記載の与薬ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬を管理・収納できる与薬ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設等において入院患者等に医薬品や輸液等を配薬する際に使用される与薬カートが存在する(特許文献1参照)。このような与薬カートは、例えば患者毎に割り当てられたトレイを複数段有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療施設等においても、セキュリティ向上に関する要請がある。一方、セキュリティ対策を施すと、現場での作業性が悪化する問題や製造コストが増加する問題がある。
【0005】
従って、本発明の課題の一つは、簡単な構造を用いてセキュリティ対策を施した与薬ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)の与薬ラックは、
収納部を有するラック本体と、
前記収納部に収納される複数のトレイと、
を備え、
前記複数のトレイのそれぞれは、
トレイ本体と、
前記トレイ本体に設けられ、個人情報を記載した第1シートを装着可能な第1装着部であって、外部から視認可能な表示位置と外部から視認不可能な秘匿位置との間で移動可能な第1装着部と、
前記トレイ本体に設けられ、前記収納部に前記トレイが収納された状態で前記装着部を前記表示位置から前記秘匿位置にする移動機構と、
を有する。
【0007】
また、本発明(2)の与薬ラックは、(1)記載の与薬ラックであって、
前記移動機構は、押下された際に前記第1装着部を前記秘匿位置に移動させるとともに、押下が解除された際に前記第1装着部を前記表示位置に移動させるスイッチを有し、
前記スイッチは、前記トレイが前記収納部に収納された際に押下される。
【0008】
また、本発明(3)の与薬ラックは、(2)記載の与薬ラックであって、
前記ラック本体は、
前記収納部に収納された収納位置にある前記複数のトレイに係合して前記複数のトレイの引出位置への移動を禁止する係合位置と、前記複数のトレイから離間した離間位置と、の間で移動可能な複数の係合部であって、前記係合位置にあるときに前記スイッチを押下可能な複数の係合部と、
前記複数の係合部を前記係合位置と前記離間位置との間で移動させる操作部と、
を備える。
【0009】
また、本発明(4)の与薬ラックは、(3)記載の与薬ラックであって、
前記トレイ本体は、前記個人情報以外の情報を記載した第2シートを装着可能な第2装着部を有し、
前記秘匿位置は、前記第2装着部の後方に隠れた位置に設けられ、
前記表示位置は、前記第2装着部の下方に設けられ、
前記移動機構は、前記スイッチに接続されるリンクであって、前記スイッチが押下された際に前記装着部を上方に持ち上げて前記秘匿位置に移動させるリンクを有し、
前記第1装着部は、前記スイッチの押下が解除された際に自重で前記表示位置に落下するとともに前記リンクを介して前記スイッチを押下前の状態に戻す。
【0010】
また、本発明(5)の与薬ラックは、(4)記載の与薬ラックであって、
前記トレイ本体は、前記第2装着部の後方に隠れた位置に前記第1装着部および前記移動機構を差し込み可能に窪んだ差込部を有し、
前記第1装着部および前記移動機構は、前記差込部に対して着脱可能である。
【0011】
また、本発明(6)の与薬ラックは、
収納部を有するラック本体と、
前記収納部に収納される複数のトレイと、
を備え、
前記複数のトレイのそれぞれは、
トレイ本体と、
前記トレイ本体に設けられ、個人情報を記載した第1シートを装着可能な第1装着部と、
前記トレイ本体に設けられ、外部から前記第1装着部を視認可能にする表示位置と、外部から前記第1装着部を視認不可能にする秘匿位置と、の間で移動可能なシャッターと、
前記トレイ本体に設けられ、前記収納部に前記トレイが収納された状態で前記シャッターを前記表示位置から前記秘匿位置にする移動機構と、
を有する。
【0012】
また、本発明(7)の与薬ラックは、(6)記載の与薬ラックであって、
前記移動機構は、押下された際に前記シャッターを前記秘匿位置に移動させるとともに、押下が解除された際に前記シャッターを前記表示位置に移動させるスイッチを有し、
前記スイッチは、前記トレイが前記収納部に収納された際に押下される。
【0013】
また、本発明(8)の与薬ラックは、(7)記載の与薬ラックであって、
前記ラック本体は、
前記収納部に収納された収納位置にある前記複数のトレイに係合して前記複数のトレイの引出位置への移動を禁止する係合位置と、前記複数のトレイから離間した離間位置と、の間で移動可能な複数の係合部であって、前記係合位置にあるときに前記スイッチを押下可能な複数の係合部と、
前記複数の係合部を前記係合位置と前記離間位置との間で移動させる操作部と、
を備える。
【0014】
また、本発明(9)の与薬ラックは、(8)記載の与薬ラックであって、
前記秘匿位置は、前記第1装着部の前方に位置し、
前記表示位置は、前記第1装着部の下方に設けられ、
前記移動機構は、前記スイッチに接続されるリンクであって、前記スイッチが押下された際に前記シャッターを上方に持ち上げて前記秘匿位置に移動させるリンクを有し、
前記シャッターは、前記スイッチの押下が解除された際に自重で前記表示位置に落下するとともに前記リンクを介して前記スイッチを押下前の状態に戻す。
【0015】
また、本発明(10)の与薬ラックは、(9)記載の与薬ラックであって、
前記トレイ本体は、前記第1装着部、前記シャッターおよび前記移動機構を差し込み可能に窪んだ差込部を有し、
前記第1装着部、前記シャッターおよび前記移動機構は、前記差込部に対して着脱可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な構造を用いてセキュリティ対策を施した与薬ラックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の与薬ラックを複数のトレイを取り外した状態で示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す与薬ラックの操作部周辺を拡大して示し、複数のトレイがロック状態にあることを示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す与薬ラックの複数のトレイのうち1つと、その周辺構造を示す、複数の係合部が係合位置にある状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す与薬ラックの操作部、切換機構、側壁、および複数のレールを示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す切換機構のリンク部材およびロッド部材、リンクレール、操作部の錠前機構およびピン、複数の係合部を分解して示す分解斜視図である。
【
図6】
図3に示す複数のトレイのうち1つのトレイ(第1トレイ)を示し、第1装着部が秘匿位置にある状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す1つのトレイ(第1トレイ)を示し、第1装着部が秘匿位置にある状態を示す正面図である。
【
図8】
図6に示す1つのトレイ(第1トレイ)を示し、第1装着部が表示位置にある状態を示す斜視図である。
【
図9】
図7に示す1つのトレイ(第1トレイ)を示し、第1装着部が表示位置にある状態を示す正面図である。
【
図10】
図8に示す1つのトレイ(第1トレイ)内の複数の個別与薬ケースを示す斜視図である。
【
図11】
図9に示す与薬ラックのトレイをF11-F11線の位置で切断して示す断面図である。
【
図12】
図11に示すトレイの移動機構の周囲を拡大して示す断面図である。
【
図13】
図8に示すトレイの移動機構および第1装着部を前方から示し、第1装着部が表示位置にある状態を示す斜視図である。
【
図14】
図8に示すトレイの移動機構および第1装着部を後方からケースの一部を取り外した状態で示し、第1装着部が表示位置にある状態を示す斜視図である。
【
図15】
図13に示すトレイの移動機構および第1装着部を前方から示し、第1装着部が秘匿位置にある状態を示す斜視図である。
【
図16】
図14に示すトレイの移動機構および第1装着部を後方からケースの一部を取り外した状態で示し、第1装着部が秘匿位置にある状態を示す斜視図である。
【
図17】
図1に示す与薬ラックに複数のトレイ(第1トレイ、第2トレイ)をランダムな配置で設置した状態を示す正面図である。
【
図18】
図17に示す与薬ラックの操作部周辺を拡大して示し、複数のトレイが非ロック状態にあることを示す斜視図である。
【
図19】
図17に示す与薬ラックにおいて複数の係合部が係合位置にある状態を示す斜視図である。
【
図20】
図19に示す与薬ラックにおいて複数の係合部が離間位置にあり、第1装着部が表示位置にある状態を示す斜視図である。
【
図21】
図17に示す与薬ラックにおいて複数の係合部が離間位置にある状態を示す斜視図である。
【
図22】
図17に示す与薬ラックの複数のトレイのうちの一つを前傾位置(引出位置)にした状態を示す断面図である。
【
図23】第2実施形態の与薬ラックの複数のトレイの第1トレイを示す斜視図である。
【
図24】
図23に示す第1トレイのトレイ本体から第1装着部、シャッター、および移動機構を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図25】
図24に示す第1装着部、シャッター、および移動機構を拡大して示し、シャッターが表示位置にある状態を示す斜視図である。
【
図26】
図24に示す第1装着部、シャッター、および移動機構を拡大して示し、シャッターが秘匿位置にある状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照して、本発明の与薬ラックの実施形態について説明する。本発明の与薬ラックは、医療施設や介護施設で用いられ、セキュリティにも配慮しつつ、簡単且つ低コスト構造で患者に付与される薬を管理・保管できるものである。
[第1実施形態]
【0019】
図1~
図22を参照して、第1実施形態の与薬ラック11を説明する。
図1、
図3、
図4に示すように、与薬ラック11は、前方を開放した箱状のラック本体12と、ラック本体12の内側に設けられた1以上の収納部13と、ラック本体12の底板部31に設けられた複数のキャスター14と、1以上の収納部13の内側に収納される複数のトレイ15と、ラック本体12の側部に設けられた第1ハンドル16および第2ハンドル17と、複数のトレイ15に係合して複数のトレイ15の引出位置P2への移動を禁止する複数の係合部18と、複数の係合部18を係合位置S1と離間位置S2との間で一括的に切り替え可能な切換機構21と、切換機構21を操作するための操作部22と、1以上の収納部13のそれぞれの両側部に設けられた一対の側壁23と、一対の側壁23のそれぞれに形成された複数のレール24と、複数のレール24と離間するように一対の側壁23のそれぞれに設けられた複数の貫通孔25と、操作部22を間に挟んだ両側の位置に設けられた一対の保護部材26と、を備える。本実施形態の与薬ラック11は、複数のキャスター14を有さなくてもよい。すなわち、与薬ラック11は、移動を前提せず、施設内に据え置かれる据え置き型のラックであってもよい。
【0020】
本実施形態では、1以上の収納部13は、一対に形成されているが、収納部13の数は任意であり、1個でもよいし、3個以上であってもよい。第1ハンドル16は、例えば第2ハンドル17とは異なる設置高さに設置されている。複数のキャスター14のうちのいくつかは、そのローラをロックすることが可能なブレーキを内蔵していてもよい。
【0021】
一対の側壁23および複数のレール24は、例えば、合成樹脂材料によって一体に成形されている。複数のレール24は、複数のトレイ15の数量よりも多い数量で収納部13内に設置される。複数のレール24は、1以上の収納部13内に設けられるように一対の側壁23に形成されている。複数のレール24は、複数のトレイ24が収納位置P1と引出位置P2との間で進退するように鍔部44を案内できる。
図3、
図4に示すように、複数のレール24のそれぞれは、収納位置P1にある複数のトレイ15の後述する鍔部44を落ち込ませることが可能な凹部27と、凹部27の前後方向D1における両端部を規定するように上方に向けて隆起した一対の係止爪28と、を有する。複数のレール24は、複数のトレイ24が収納位置P1と引出位置P2との間で進退するように鍔部44を案内できる。
【0022】
図3~
図5に示すように、複数の貫通孔25は、複数の係合部18を収納部13内に突出させることができる。後述するように、複数の係合部18は、複数の貫通孔25を介して収納部13内に突出したり、複数の貫通孔25に対して埋没することで収納部13から退避したりできる。
【0023】
図1に示すように、ラック本体12は、底板部31と、底板部31上に金属製の棒材を四角い箱状に枠組みするように形成されたフレーム32と、フレーム32の上部に嵌め込まれた天板部33と、フレーム32の側部にはめ込まれた一対の側板部34と、フレーム32の奥部に嵌め込まれた奥板部35と、1以上の収納部13の開口部13Aを取り囲む枠部36と、を有する。一対の側壁23は、フレーム32に対して固定されている。本実施形態において、天板部33、一対の側板部34、および奥板部35は、例えば、金属板等によって形成されている。
【0024】
本実施形態において、枠部36は、フレーム32の上側前方の直下に設けられ開口部13Aの上縁を規定する上側横枠部36Aを有している。本実施形態において、枠部36は、開口部13Aの下縁を規定する下側横枠部と、開口部13Aの右縁および左縁を規定する一対の縦枠部と、を有していない。枠部36の一対の縦枠部は、フレーム32の左右両端部前方部分によって代用されている。枠部36の下側横枠部は、底板部31によって代用されている。枠部36は、上記下側横枠部と、上記一対の縦枠部とを有していてもよい。
【0025】
図2に示すように、操作部22は、枠部36の上側横枠部36Aに設けられている。上側横枠部36Aは、表示部37を有する。表示部37は、複数の係合部18が複数のトレイ15に対して係合した係合位置S1にある「閉」状態と、複数の係合部18が複数のトレイ15に対して離間した離間位置S2にある「開」状態と、を表示できる。表示部37は、貫通孔等で形成された窓で構成される。
図2、
図18に示すように、表示部37は、上記閉状態を示す閉マーカ41と、上記開状態を示す開マーカ42と、を窓内に表示できる。
【0026】
複数のトレイ15は、収納部13に収納された収納位置P1と、収納部13から引き出された引出位置P2と、の間で進退可能に構成される。複数のトレイ15は、複数のレール24のうち、任意の一つに対して設置可能である。
図17に示すように、複数のトレイ15は、1以上の第1トレイ15Aと、第1トレイ15Aとは大きさが異なる1以上の第2トレイ15Bと、を含む。
【0027】
図6~
図9に示すように、第1トレイ15Aは、上側を開放した箱状のトレイ本体43と、トレイ本体43の側面から側方に向けて板状に張り出した一対の鍔部44と、トレイ本体43に設けられ個人情報を記載した第1シート63を装着可能な第1装着部64と、トレイ本体43に設けられ第1装着部64を表示位置R1と秘匿位置R2との間で移動できる移動機構65と、トレイ本体43に設けられ個人情報以外の情報を記載した第2シート66を装着可能な第2装着部67と、第2装着部67の後方に隠れた位置に設けられた差込部68と、を有する。
【0028】
第1トレイ15Aは、例えば、合成樹脂材料によって一体的に成形されている。第1トレイ15Aの内部には、例えば、
図10等に示すように、薬を個別に収納できる複数の個別与薬ケース47を収納したり、処方箋等の紙資料を収納したりできる。鍔部44は、その後部の下面に、下方に向けて突出した突起部44Aを有する。
【0029】
第1装着部64は、
図6、
図7に示すように外部から視認不可能な秘匿位置R2と、
図8、
図9に示すように外部から視認可能な表示位置R1と、の間で移動することができる。秘匿位置R2は、第2装着部67の後方に隠れた位置に設けられている。表示位置R1は、第2装着部67の下方に設けられている。第1装着部64の秘匿位置R2と表示位置R1との間の移動は、次に述べる移動機構65によって実現される。第1装着部64は、例えば、透光性を有する合成樹脂材料によって扁平なスリーブ状に形成されている。第1装着部64の内側に個人情報(施設利用者の名前等)を記載した第1シート63を装着できる。
【0030】
第2装着部67は、上方から第2シート66を着脱可能な窪み部で構成される。第2装着部67の窪み部の両側部には、上下方向に延びる一対のガイド枠67Aが設けられており、これらのガイド枠67Aの後方に第2シート66を保持できる。第2装着部67に対して、個人情報以外の情報(部屋番号等の情報)を記載した第2シート66を装着できる。
【0031】
差込部68は、移動機構65を差し込むことができるように、箱状をなした移動機構65に対して相補的な形状に窪んでいる。
図11、
図12に示すように、差込部68は、トレイ本体43と一体的に形成されるとともに略断面「U」字形に形成されている。
【0032】
本実施形態において、移動機構65は、第1装着部64と一体になった箱状のカセットで構成されている。このカセット状の移動機構65および第1装着部64は、差込部68に対して着脱可能に装着されている。このため、移動機構65および第1装着部64は、トレイ本体43に対して着脱可能に設けられる。
【0033】
図13~
図16に示すように、移動機構65は、例えば合成樹脂材料によって形成された箱状のケース71と、ケース71内部に収納されX字状をなした一対のリンク72と、一対のリンク72同士をそれらの中間部で連結する第1ピン73と、ケース71から飛び出してトレイ本体43の開口43A(
図6、
図8参照)を貫通したスイッチ74と、スイッチ74と一体に設けられる第1スライダー部75と、第1スライダー部75とリンク72の一方の端部とを連結する第2ピン76と、第1装着部64に接続された一対の第2スライダー部77と、一対の第2スライダー部77と一対のリンク72の他方の端部とを連結する一対の第3ピン78と、を有する。
【0034】
ケース71は、差込部68に対して係合するための一対の係合爪81を有する。トレイ本体43には、一対の係合爪81が落ち込むように構成された一対の受け部(図示省略)が設けられている。移動機構65は、上側半分を差込部68に差し込んだ状態で、一対の係合爪81と一対の受け部との係合によって、差込部68(トレイ本体43)に対して着脱可能に装着される。
【0035】
第1スライダー部75は、スイッチ74の押し込みに伴い左右方向に進退移動可能である。リンク72は、第1スライダー部75を介してスイッチ74に接続されている。第2スライダー部77は、ケース71に設けられた上下方向に延びる貫通口82に嵌っており、上下方向に進退移動可能である。第2スライダー部77の一方は、第3ピン78の一方が貫通する横方向に細長い長孔77Aを有する。
【0036】
図13~
図16を参照して、移動機構65の動作について説明する。スイッチ74が押し込まれると、第1スライダー部75が左右方向にスライド移動する。これによって、一対のリンク72が立ち上がり、一対のリンク72の他方の端部(一対の第3ピン78)が上昇して第2スライダー部77を上方に押し上げる(
図14、
図16参照)。第1装着部64は、第2スライダー部77に接続されているために、この第2スライダー部77の上方への押し上げに伴い上昇することができる。この状態で、第1装着部64は、第2装着部67の後方に隠れた秘匿位置R2に移動できる(
図15参照)。このように、スイッチ74の押し込みによって、第1装着部64を表示位置R1から秘匿位置R2に移動させることができる。
【0037】
一方、スイッチ74の押し込みが解除されると、第1装着部64および第2スライダー部77は、それらの自重によって下方に落下する。これらが下方に落下する際の荷重によって、一対のリンク72が横たわるようになり、第1スライダー部75およびスイッチ74が押し込み前の元の位置に移動する(
図13、
図14参照)。これによって、第1装着部64は、表示位置R1に移動される。
【0038】
図17に示すように、第2トレイ15Bは、第1トレイ15Aの構成に加えて、トレイ本体43の前部から上方に平板状に突出した目隠し板部48を有する。目隠し板部48は、前方から第2トレイ15Bの内容物が見えないように周囲から目隠しをするために設けられる。
図17に示されるように、第2トレイ15Bには、目隠し板部48の高さ寸法が異なる複数種類のトレイが含まれる。第2トレイ15Bの内部には、上記した複数の個別与薬ケース47に限らず、例えば、薬液のボトル等や大型の紙ファイル等を収納できる。
【0039】
第1トレイ15Aおよび互いに大きさの異なる第2トレイ15Bは、
図17に示すように、ランダムな組み合わせでラック本体12に対して固定することができる。その際、医療関係者および介護関係者(以下、単に関係者という)は、ラック本体12の収納部13の任意の場所に第1トレイ15Aを装着できるとともに、ラック本体12の収納部13の任意の場所に第2トレイ15Bを装着できる。
図17、
図22に示すように、複数のトレイ15(第1トレイ15A、第2トレイ15B)は、収納部13に収納された収納位置P1と、収納部13から引き出された引出位置P2と、の間で進退可能である。
【0040】
図2に示すように、操作部22は、上側横枠部36Aに設けられている。操作部22は、切換機構21を介して、複数の係合部18を係合位置S1と離間位置S2との間で移動させることができる。操作部22は、切換機構21を操作する錠前機構51と、錠前機構51に差し込まれる鍵52と、を有する。
図4、
図5に示すように、錠前機構51は、鍵穴53を有するシリンダー部54と、シリンダー部54に接続されシリンダー部54の回転に伴い回転するピン55と、を有する。ユーザは、鍵穴53に鍵52を差し込んで回転することで、シリンダー部54およびこれに接続されたピン55を回転させることができる。
【0041】
図2に示すように、一対の保護部材26は、上側横枠部36Aから前方に山型に突出するように設けられており、例えば、合成樹脂材料によって構成されている。一対の保護部材26は、ゴム材料で構成されていてもよい。一対の保護部材26が上側横枠部36Aから突出する高さは、錠前機構51に差し込まれた鍵52の高さと略同じかそれよりも高くなっていることが好ましい。一対の保護部材26は、鍵52が差し込まれた錠前機構51を保護することができ、医療施設や介護施設の利用者(以下、単に利用者という)が誤って鍵52に接触した際に、鍵52および錠前機構51が破損しないように保護するのと同時に、利用者の手指等を保護することができる。
【0042】
図4、
図5に示すように、切換機構21は、操作部22の錠前機構51のピン55に接続されるとともに横方向に延びるリンク部材56と、縦方向に延びるとともにリンク部材56と接続されるロッド部材57と、を有する。すなわち、ロッド部材57は、リンク部材56に対して交差(直交)する方向に延びている。
図3、
図5に示すように、ロッド部材57は、側壁23の裏面に形成された縦穴23Aに通されて回転可能に保持される。
【0043】
図4、
図5に示すように、リンク部材56は、上側横枠部36Aに固定されたリンクレール58に対して、ローラ61を介して取り付けられている。リンク部材56は、リンクレール58の長手方向に沿って進退移動することができる。リンク部材56は、細長い板状のリンク部材本体56Aと、リンク部材本体56Aの中間部から上方に平板状に突出した一対の爪部56Bと、リンク部材本体56Aの両端部から横方向に板状に突出した腕部56Cと、を有する。一対の爪部56Bの一方は、複数の係合部18が複数のトレイ15に係合した係合位置S1にあることを示す閉マーカ41(閉ラベル)を有する。一対の爪部56Bの他方は、複数の係合部18が複数のトレイ15から離間した離間位置S2にあることを示す開マーカ42(開ラベル)を有する。
【0044】
錠前機構51のピン55は、先端がリンク部材56の一対の爪部56Bの間に挟まれて保持されている。腕部56Cは、長穴62を有する。長穴62は、ロッド部材57の後述するクランクピン57Bを内側に通してこれを保持できる。
【0045】
ロッド部材57は、上下方向に延びる軸部57Aと、軸部57Aの端部(上側の端部)に設けられたクランクピン57Bと、を有する。複数の係合部18は、この軸部57Aの軸方向に離散的に固定されている。複数の係合部18は、軸部57Aに対して一定の間隔で固定されていることが好ましい。
【0046】
複数の係合部18のそれぞれは、半円形の小片状の駒で構成されるとともに、ロッド部材57の軸部57Aの周囲に巻き付くように固定されている。このため、複数の係合部18は、ロッド部材57の軸回りの一方向への回転に伴い、収納部13内に突出するとともに複数のトレイ15に係合して複数のトレイ15の引出位置P2への移動を禁止する係合位置S1になる。複数の係合部18は、ロッド部材57の軸回りの一方向とは逆方向の回転に伴い、収納部13から退避するとともに複数のトレイ15から離間した離間位置S2になる。複数の係合部18は、係合位置S1にあるときに、複数の貫通孔25を貫通して収納部13内に突出する(
図3参照)。この係合位置S1にある状態で、複数の係合部18は、複数のレール24に対して、複数のトレイ15の鍔部44を間に挟んだ反対側に位置される。このため、複数の係合部18は、係合位置S1にある状態で、複数の鍔部44を複数のレール24の複数の凹部27内に保持できる。
【0047】
この係合位置S1にある状態で、複数の係合部18は、鍔部44に対して当接していてもよいし、鍔部44に対して若干のクリアランスを保持して対向してもよい。組み立てた際の複数の係合部18の位置のばらつきや、レール24の位置のばらつき、鍔部44の厚さのばらつき等を考慮すると、複数の係合部18は、鍔部44に対して若干のクリアランスを保持して対向させることが好ましい。これによっても、鍔部44は、レール24の凹部27内に保持されるために、複数のトレイ15が誤って収納位置P1から引出位置P2に引き出されてしまう恐れがない。また、複数の係合部18は、鍔部44に対して若干のクリアランスを保持して対向することで、複数の係合部18の回転の際に、鍔部44との間で摩擦力が働かなくなり、関係者が複数のトレイ15のロック状態と非ロック状態とを切り換えるのに必要な力量を低減できる。
【0048】
複数の係合部18は、係合位置S1にある状態で、移動機構65のスイッチ74を押し込むことができる。このため、複数の係合部18が係合位置S1にある状態で、第1装着部64が秘匿位置R2に位置される。
【0049】
なお、本実施形態の第1装着部64の動作は一例であり、例えば、第1装着部64を次のように動作させてもよい。すなわち、複数のトレイ15を引出位置P2から収納位置P1に移動させた際に、側壁23やレール24等によって半自動的にスイッチ74を押し込んで、第1装着部64を表示位置R1から秘匿位置R2に移動させても当然よい。しかしながら、収納位置P1にある状態でも、第1装着部64に装着された第1シート63に記載された利用者の個人情報を視認できたほうが関係者の利便性が向上する。このため、本実施形態では、複数の係合部18を係合位置S1にした場合にのみ、第1装着部64を秘匿位置R2に位置させる構成を採用している。
【0050】
続いて、
図2~
図22を参照して、本実施形態の与薬ラック11の作用について説明する。
【0051】
図17に示す状態では、複数のトレイ15のそれぞれは、収納部13内に収納された収納位置P1に配置されている。
図3に示すように、複数のトレイ15のそれぞれは、複数の係合部18によって係合されることで引出位置P2に移動することが禁止されたロック状態にある。このとき、複数の係合部18は、係合位置S1にある。この状態において、与薬ラック11には、セキュリティが確保されており、与薬ラック11は、通常、このようにセキュリティが確保された状態で医療施設や介護施設内に設置されている。したがって、この与薬ラック11に関係者ではない第三者が接触した場合でも、個々のトレイ15を引出位置P2に移動させて内部の医薬品にアクセスすることができない。なお、このようにセキュリティが確保された状態では、
図2に示すように、表示部37の窓から閉マーカ41を視認することができる。
【0052】
さらに、複数のトレイ15が収納位置P1に配置された状態で且つ複数の係合部18が係合位置S1にあるときには、
図3、
図6、
図7に示すように、移動機構65のスイッチ74は、複数の係合部18によって押し込まれた状態にある。このため、移動機構65の作用によって第1装着部64は、第2装着部67の後方に隠れた秘匿位置R2に移動されている。このため、複数の係合部18が係合位置S1にあるときには、第1装着部64が秘匿位置R2に移動しており、第1装着部64の第1シート63に記入された利用者の氏名等の個人情報から外部から視認できないように、セキュリティが確保された状態となっている。
【0053】
通常、医療施設や介護施設では、1人の利用者に対応して1個のトレイ15(第1トレイ15A、第2トレイ15B)が用意される。トレイ15の第2装着部67には、例えば、利用者のプライバシーに配慮して部屋番号等のみが記載された第2シート66が装着される。トレイ15内には、複数の個別与薬ケース47が設置され、個別与薬ケース47内に利用者の1回分の薬が収納される。このため、トレイ15全体として1週間分又はそれ以上の薬が、例えば、朝食後、昼食後、夕食後、就寝前、等のように与薬の時間毎に整理された状態で分かり易く保存される。
【0054】
関係者がトレイ15内の薬にアクセスしたい場合には、
図17に示す与薬ラック11に対して、
図2に示すように、上側横枠部36Aにある錠前機構51の鍵穴53に鍵52を差し込んで所定の角度を回転して、
図18に示す状態にする。これによって、表示部37の窓から開マーカ42が視認できるようになる。
【0055】
これと同時に、
図4、
図5、
図19、
図20に示すように、錠前機構51のピン55がシリンダー部54を中心に回転する。これに伴い、ピン55が一対の爪部56Bの間に差し込まれたリンク部材56もリンクレール58に沿って移動する。リンク部材56の移動に伴い、リンク部材56の両端部の腕部56Cがロッド部材57のクランクピン57Bを移動させ、これによってロッド部材57が軸部57Aを中心に回転する。このロッド部材57の回転(自転)によってロッド部材57に巻き付いた駒状の複数の係合部18が旋回して係合位置S1から離間位置S2に移動する。このとき、複数の係合部18は、複数の貫通孔25を貫通してそれらの先端が収納部13内に突出した状態から、複数の貫通孔25に対して埋没して収納部13から退避した状態になる。これによって、複数の係合部18が複数のトレイ15に対して係合した状態が解除され、複数のトレイ15のロック状態が解除される。
【0056】
このようにロック状態が解除された状態では、複数の係合部18によるスイッチの押下が解除され、
図8、
図9、
図13、
図14に示すように、第1装着部64および第2スライダー部77は、自重で下方に落下する。その結果、
図21に示すように、第1装着部64は、第2装着部67の後方に隠れた秘匿位置R2から、第2装着部67の下方に位置する表示位置R1に移動した状態になる。関係者は複数のトレイ15を個別に又は同時に収納位置P1から引出位置P2に引き出して、目的の利用者の薬をピックアップすることができる。その際、作業者は、第1装着部64に装着された第1シート63の氏名等の個人情報を確認しながら、目的の利用者の薬をピックアップすることができる。このため、薬の入れ替わり等のヒューマンエラーを生じることが極力回避される。
【0057】
また、
図22に示すように、トレイ15を引出位置P2にした状態で、トレイ15を最も前方に引き出した場合に、トレイ15(第1トレイ15A、第2トレイ15B)は、前部を下方に下げるように傾斜させた前傾位置P3に保持される。このとき、鍔部44の下面後端から下方に突出した突起部44Aが、レール24の前端の係止爪28に係止されるとともに、鍔部44の後端上面44Bが当該レール24の直上にある他のレール24の下面に当接する。これによって、トレイ15の前傾位置P3が保持される。この前傾位置P3では、関係者がトレイ15の内部を視認しやすくなる。
【0058】
複数のトレイ15を再びロック状態に戻す際には、複数のトレイ15を水平状態に戻し、引出位置P2から収納位置P1に移動させ、鍵52を回転前の角度に戻すように回転させ、複数の係合部18を係合位置S1に移動させる。そして、鍵52を錠前機構51から除去することで簡単にセキュリティが確保されたロック状態に戻すことができる。
【0059】
第1実施形態によれば、以下のことがいえる。与薬ラック11は、収納部13を有するラック本体12と、収納部13に収納される複数のトレイ15と、を備え、複数のトレイ15のそれぞれは、トレイ本体43と、トレイ本体43に設けられ、個人情報を記載した第1シート63を装着可能な第1装着部64であって、外部から視認可能な表示位置R1と外部から視認不可能な秘匿位置R2との間で移動可能な第1装着部64と、トレイ本体43に設けられ、収納部13にトレイ15が収納された状態で第1装着部64を表示位置R1から秘匿位置R2にする移動機構65と、を有する。
【0060】
この構成によれば、トレイ15が収納部13に収納された状態で、第1装着部64を移動機構65によって秘匿位置R2に移動させることができる。これによって、トレイ15を収納位置P1に収納した状態で、個人情報を外部から視認できないようにできる。これによって、トレイ15が収納された収納位置P1において、セキュリティが確保された与薬ラック11を実現できる。
【0061】
この場合、移動機構65は、押下された際に第1装着部64を秘匿位置R2に移動させるとともに、押下が解除された際に第1装着部64を表示位置R1に移動させるスイッチ74を有し、スイッチ74は、トレイ15が収納部13に収納された際に押下される。この構成によれば、トレイ15が収納部13に収納された状態で第1装着部64を秘匿位置R2にする構成を、スイッチ74を用いた簡単な構造によって実現できる。これによって、当該構成を有する与薬ラック11を低価格で実現できる。
【0062】
この場合、ラック本体12は、収納部13に収納された収納位置P1にある複数のトレイ15に係合して複数のトレイ15の引出位置P2への移動を禁止する係合位置S1と、複数のトレイ15から離間した離間位置S2と、の間で移動可能な複数の係合部18であって、係合位置S1にあるときにスイッチ74を押下可能な複数の係合部18と、複数の係合部18を係合位置S1と離間位置S2との間で移動させる操作部22と、を備える。
【0063】
この構成によれば、トレイ15が収納位置P1に移動され且つ操作部22の操作に伴い複数の係合部18が係合位置S1になった場合(複数のトレイ15がロック状態になった場合)に、第1装着部64を秘匿位置R2に移動できる。一方、トレイ15を引出位置P2にしてトレイ15から薬を取り出そうとする際には、第1装着部64を表示位置R1に移動できる。このため、関係者は、第1装着部64に装着された第1シート63の個人情報を確認しながら、薬の取り出し作業を行うことができる。これによって、薬の取り出し作業中に薬の入れ替わり等のヒューマンエラーが発生することを極力防止して、目的の患者に正しく薬を提供することができる。一方、薬が取り出された後は、複数のトレイ15を収納位置P1に戻し、操作部22の操作によって複数の係合部18を離間位置S2から係合位置S1に戻すことで、複数のトレイ15をロック状態にできる。また、複数の係合部18が係合位置S1に移動すると、第1装着部64を秘匿位置R2に移動できるため、個人情報を外部から視認できないようにできる。これによって、施設内に据え置かれた状態でも、セキュリティが十分に確保された与薬ラック11を実現できる。
【0064】
この場合、トレイ本体43は、前記個人情報以外の情報を記載した第2シート66を装着可能な第2装着部67を有し、秘匿位置R2は、第2装着部67の後方に隠れた位置に設けられ、表示位置R1は、第2装着部67の下方に設けられ、移動機構65は、スイッチ74に接続されるリンク72であって、スイッチ74が押下された際に第1装着部64を上方に持ち上げて秘匿位置R2に移動させるリンク72を有し、第1装着部64は、スイッチ74の押下が解除された際に自重で表示位置R1に落下するとともにリンク72を介してスイッチ74を押下前の状態に戻す。
【0065】
この構成によれば、第2装着部67の後方のスペースを第1装着部64の秘匿位置R2として有効に活用することができる。また、第1装着部64を表示位置R1に戻し且つスイッチ74を押下前の状態に戻す際に、第1装着部64の自重を用いることができる。さらに、第1装着部64を秘匿位置R2に移動させるには、複数の係合部18が係合位置S1に移動する際の操作力を用いることができる。したがって、第1装着部64を表示位置R1と秘匿位置R2との間で移動させるための動力を実質的に不要にすることができる。これによって、第1装着部64を秘匿位置R2に退避させる構造を実現するために、バネやモータ等が不要で、簡単な構造を有する与薬ラック11を実現できる。これによって、セキュリティが十分に確保され、壊れにくく且つ低価格な与薬ラック11を実現できる。
【0066】
この場合、トレイ本体43は、第2装着部67の後方に隠れた位置に第1装着部64および移動機構65を差し込み可能に窪んだ差込部68を有し、第1装着部64および移動機構65は、差込部68に対して着脱可能である。
【0067】
この構成によれば、第1装着部64および移動機構65の構造をオプションにすることができる。このため、例えば、第1装着部64および移動機構65が不要である医療施設又は介護施設に対しては、これらを取り外してさらに低価格化した与薬ラック11を提供できる。一方、個人情報を記入可能にでき且つこれをプライバシーの観点から外部から視認できないようにするニーズがある医療施設又は介護施設に対しては、個人情報が保護される高機能な与薬ラック11を実現できる。以上より、施設側のニーズに合わせた与薬ラック11を適宜に実現できる。
【0068】
以下の実施形態では、主として上記第1実施形態と異なる部分を説明する。第1実施形態と共通する部分については、図示および説明を省略する。
[第2実施形態]
【0069】
図23~
図26を参照して、第2実施形態の与薬ラック11について説明する。
【0070】
図17に示すように、与薬ラック11の複数のトレイ15は、1以上の第1トレイ15Aと、第1トレイ15Aとは大きさが異なる1以上の第2トレイ15Bと、を含む。
【0071】
図23、
図24に示すように、第1トレイ15Aは、上側を開放した箱状のトレイ本体43と、トレイ本体43の側面から側方に向けて板状に張り出した一対の鍔部44と、トレイ本体43に設けられ個人情報を記載した第1シート63を装着可能な第1装着部64と、トレイ本体43に設けられ、外部から第1装着部64を視認可能にする表示位置R1と外部から第1装着部64を視認不可能にする秘匿位置R2との間で移動可能なシャッター91と、トレイ本体43に設けられシャッター91を表示位置R1と秘匿位置R2との間で移動できる移動機構65と、トレイ本体43に設けられ個人情報以外の情報を記載した第2シート66を装着可能な第2装着部67と、第2装着部67に対して横並びの位置に設けられた差込部68と、を有する。
【0072】
第1トレイ15Aは、例えば、合成樹脂材料によって一体的に成形されている。第1トレイ15Aの内部には、例えば、
図10等に示すように、薬を個別に収納できる複数の個別与薬ケース47を収納したり、処方箋等の紙資料を収納したりできる。
【0073】
シャッター91は、
図26に示すように外部から第1装着部64を視認不可能にする秘匿位置R2と、
図25に示すように外部から第1装着部64を視認可能にする表示位置R1と、の間で移動することができる。秘匿位置R2は、第1装着部64の前方であって、第1装着部64を覆い隠す位置である。表示位置R1は、移動機構65のケース71内に隠れる位置であって、第1装着部64の下方に設けられている。シャッター91の秘匿位置R2と表示位置R1との間の移動は、移動機構65によって実現される。移動機構65の構成は、第1実施形態と略同様である(但し、貫通口82等は図示省略した。シャッター91を支持する第2スライダー部77は、シャッター91が秘匿位置R2にあるときに第1シート63と干渉しないように、第1シート63を避けた形状(例えば、断面U字状)に形成されている。)。第1装着部64は、上方から第1シート63を着脱可能な窪み部で構成される。第1装着部64の窪み部の両側部には、上下方向に延びる一対のガイド枠64Aが設けられており、これらのガイド枠64Aの後方に第1シート63を保持できる。第1装着部64の内側に個人情報(施設利用者の名前等)を記載した第1シート63を装着できる。
【0074】
第2装着部67は、上方から第2シート66を着脱可能な窪み部で構成される。第2装着部67の窪み部の両側部には、上下方向に延びる一対のガイド枠67Aが設けられており、これらのガイド枠67Aの後方に第2シート66を保持できる。第2装着部67に対して、個人情報以外の情報(部屋番号等の情報)を記載した第2シート66を装着できる。
【0075】
差込部68は、移動機構65を差し込むことができるように、箱状をなした移動機構65に対して相補的な形状に窪んでいる。
【0076】
本実施形態において、移動機構65は、第1装着部64およびシャッター91と一体になった箱状のカセットで構成されている。
図24に示すように、このカセット状の移動機構65、第1装着部64およびシャッター91は、差込部68に対して着脱可能に装着されている。このため、移動機構65、第1装着部64およびシャッター91は、トレイ本体43に対して着脱可能に設けられる。
【0077】
図示省略したが、移動機構65のケース71は、差込部68に対して係合するための一対の係合爪を有することは第1実施形態と同様である。トレイ本体43には、一対の係合爪が落ち込むように構成された一対の受け部(図示省略)が設けられている。移動機構65は、一対の係合爪と一対の受け部との係合によって、差込部68(トレイ本体43)に対して着脱可能に装着される。
【0078】
図17に示すように、第2トレイ15Bは、第1トレイ15Aの構成に加えて、トレイ本体43の前部から上方に平板状に突出した目隠し板部48を有する。目隠し板部48は、前方から第2トレイ15Bの内容物が見えないように周囲から目隠しをするために設けられる。
図17に示されるように、第2トレイ15Bには、目隠し板部48の高さ寸法が異なる複数種類のトレイが含まれる。第2トレイ15Bの内部には、上記した複数の個別与薬ケース47に限らず、例えば、薬液のボトル等や大型の紙ファイル等を収納できる。
【0079】
第1トレイ15Aおよび互いに大きさの異なる第2トレイ15Bは、
図17に示すように、ランダムな組み合わせでラック本体12に対して固定することができる。その際、関係者は、ラック本体12の収納部13の任意の場所に第1トレイ15Aを装着できるとともに、ラック本体12の収納部13の任意の場所に第2トレイ15Bを装着できる。
図17、
図22に示すように、複数のトレイ15(第1トレイ15A、第2トレイ15B)は、収納部13に収納された収納位置P1と、収納部13から引き出された引出位置P2と、の間で進退可能である。
【0080】
続いて、
図2~
図26を参照して、本実施形態の与薬ラック11の作用について説明する。
【0081】
図17に示す状態では、複数のトレイ15のそれぞれは、収納部13内に収納された収納位置P1に配置されている。
図3に示すように、複数のトレイ15のそれぞれは、複数の係合部18によって係合されることで引出位置P2に移動することが禁止されたロック状態にある。このとき、複数の係合部18は、係合位置S1にある。この状態において、与薬ラック11には、セキュリティが確保されており、与薬ラック11は、通常、このようにセキュリティが確保された状態で医療施設や介護施設内に設置されている。したがって、この与薬ラック11に関係者ではない第三者が接触した場合でも、個々のトレイ15を引出位置P2に移動させて内部の医薬品にアクセスすることができない。なお、このようにセキュリティが確保された状態では、
図2に示すように、表示部37の窓から閉マーカ41を視認することができる。
【0082】
さらに、複数のトレイ15が収納位置P1に配置された状態で且つ複数の係合部18が係合位置S1にあるときには、
図26に示すように、移動機構65のスイッチ74は、複数の係合部18によって押し込まれた状態にある。このため、移動機構65の作用によってシャッター91は、秘匿位置R2に移動されている。このため、複数の係合部18が係合位置S1にあるときには、シャッター91が秘匿位置R2に移動しており、第1装着部64の第1シート63に記入された利用者の氏名等の個人情報から外部から視認できないように、セキュリティが確保された状態となっている。
【0083】
通常、医療施設や介護施設では、1人の利用者に対応して1個のトレイ15(第1トレイ15A、第2トレイ15B)が用意される。トレイ15の第2装着部には、例えば、利用者のプライバシーに配慮して部屋番号等のみが記載された第2シート66が装着される。トレイ15内には、複数の個別与薬ケース47が設置され、個別与薬ケース47内に利用者の1回分の薬が収納される。
【0084】
関係者がトレイ15内の薬にアクセスしたい場合には、
図17に示す与薬ラック11に対して、
図2に示すように、上側横枠部36Aにある錠前機構51の鍵穴53に鍵52を差し込んで所定の角度を回転して、
図18に示す状態にする。これによって、表示部37の窓から開マーカ42が視認できるようになる。
【0085】
これと同時に、
図4、
図5、
図19、
図20に示すように、錠前機構51のピン55がシリンダー部54を中心に回転する。これに伴い、ピン55が一対の爪部56Bの間に差し込まれたリンク部材56もリンクレール58に沿って移動する。リンク部材56の移動に伴い、リンク部材56の両端部の腕部56Cがロッド部材57のクランクピン57Bを移動させ、これによってロッド部材57が軸部57Aを中心に回転する。このロッド部材57の回転(自転)によってロッド部材57に巻き付いた駒状の複数の係合部18が旋回して係合位置S1から離間位置S2に移動する。このとき、複数の係合部18は、複数の貫通孔25を貫通してそれらの先端が収納部13内に突出した状態から、複数の貫通孔25に対して埋没して収納部13から退避した状態になる。これによって、複数の係合部18が複数のトレイ15に対して係合した状態が解除され、複数のトレイ15のロック状態が解除される。
【0086】
このようにロック状態が解除された状態では、複数の係合部18によるスイッチの押下が解除され、
図25に示すように、第1装着部64および第2スライダー部77は、自重で下方に落下する。その結果、
図26、
図25に示すように、シャッター91は、秘匿位置R2から、第1装着部64の下方に位置する表示位置R1に移動した状態になる。関係者は複数のトレイ15を個別に又は同時に収納位置P1から引出位置P2に引き出して、目的の利用者の薬をピックアップすることができる。その際、作業者は、第1装着部64に装着された第1シート63の氏名等の個人情報を確認しながら、目的の利用者の薬をピックアップすることができる。このため、薬の入れ替わり等のヒューマンエラーを生じることが極力回避される。
【0087】
また、
図22に示すように、トレイ15を引出位置P2にした状態で、トレイ15を最も前方に引き出した場合に、トレイ15(第1トレイ15A、第2トレイ15B)は、前部を下方に下げるように傾斜させた前傾位置P3に保持される。このとき、鍔部44の下面後端から下方に突出した突起部44Aが、レール24の前端の係止爪28に係止されるとともに、鍔部44の後端上面44Bが当該レール24の直上にある他のレール24の下面に当接する。これによって、トレイ15の前傾位置P3が保持される。この前傾位置P3では、関係者がトレイ15の内部を視認しやすくなる。
【0088】
複数のトレイ15を再びロック状態に戻す際には、複数のトレイ15を水平状態に戻し、引出位置P2から収納位置P1に移動させ、鍵52を回転前の角度に戻すように回転させ、複数の係合部18を係合位置S1に移動させる。そして、鍵52を錠前機構51から除去することで簡単にセキュリティが確保されたロック状態に戻すことができる。
【0089】
第2実施形態によれば、以下のことがいえる。与薬ラック11は、収納部13を有するラック本体12と、収納部13に収納される複数のトレイ15と、を備え、複数のトレイ15のそれぞれは、トレイ本体43と、トレイ本体43に設けられ、個人情報を記載した第1シート63を装着可能な第1装着部64と、トレイ本体43に設けられ、外部から第1装着部64を視認可能にする表示位置R1と、外部から第1装着部64を視認不可能にする秘匿位置R2と、の間で移動可能なシャッター91と、トレイ本体43に設けられ、収納部13にトレイ15が収納された状態でシャッター91を表示位置R1から秘匿位置R2にする移動機構65と、を有する。
【0090】
この構成によれば、トレイ15が収納部13に収納された状態で、第1装着部64を移動機構65によって秘匿位置R2に移動させることができる。これによって、トレイ15を収納位置P1に収納した状態で、個人情報を外部から視認できないようにできる。これによって、トレイ15が収納された収納位置P1において、セキュリティが確保された与薬ラック11を実現できる。
【0091】
この場合、移動機構65は、押下された際にシャッター91を秘匿位置R2に移動させるとともに、押下が解除された際にシャッター91を表示位置R1に移動させるスイッチ74を有し、スイッチ74は、トレイ15が収納部13に収納された際に押下される。この構成によれば、トレイ15が収納部13に収納された状態で第1装着部64を秘匿位置R2にする構成を、スイッチ74を用いた簡単な構造によって実現できる。これによって、当該構成を有する与薬ラック11を低価格で実現できる。
【0092】
この場合、ラック本体12は、収納部13に収納された収納位置P1にある複数のトレイ15に係合して複数のトレイ15の引出位置P2への移動を禁止する係合位置S1と、複数のトレイ15から離間した離間位置S2と、の間で移動可能な複数の係合部18であって、係合位置S1にあるときにスイッチ74を押下可能な複数の係合部18と、複数の係合部18を係合位置S1と離間位置S2との間で移動させる操作部22と、を備える。
【0093】
この構成によれば、トレイ15が収納位置P1に移動され且つ操作部22の操作に伴い複数の係合部18が係合位置S1になった場合(複数のトレイ15がロック状態になった場合)に、シャッター91を秘匿位置R2に移動できる。一方、トレイ15を引出位置P2にしてトレイ15から薬を取り出そうとする際には、シャッター91を表示位置R1に移動できる。このため、関係者は、第1装着部64に装着された第1シート63の個人情報を確認しながら、薬の取り出し作業を行うことができる。これによって、薬の取り出し作業中に薬の入れ替わり等のヒューマンエラーが発生することを極力防止して、目的の患者に正しく薬を提供することができる。一方、薬が取り出された後は、複数のトレイ15を収納位置P1に戻し、操作部22の操作によって複数の係合部18を離間位置S2から係合位置S1に戻すことで、複数のトレイ15をロック状態にできる。また、複数の係合部18が係合位置S1に移動すると、第1装着部64を秘匿位置R2に移動できるため、個人情報を外部から視認できないようにできる。これによって、施設内に据え置かれた状態でも、セキュリティが十分に確保された与薬ラック11を実現できる。
【0094】
この場合、秘匿位置R2は、第1装着部64の前方に位置し、表示位置R1は、第1装着部64の下方に設けられ、移動機構65は、スイッチ74に接続されるリンク56であって、スイッチ74が押下された際にシャッター91を上方に持ち上げて秘匿位置R2に移動させるリンク56を有し、シャッター91は、スイッチ74の押下が解除された際に自重で表示位置R1に落下するとともにリンク56を介してスイッチ74を押下前の状態に戻す。
【0095】
この構成によれば、シャッター91を表示位置R1に戻し且つスイッチ74を押下前の状態に戻す際に、シャッター91の自重を用いることができる。さらに、シャッター91を秘匿位置R2に移動させるには、複数の係合部18が係合位置S1に移動する際の操作力を用いることができる。したがって、シャッター91を表示位置R1と秘匿位置R2との間で移動させるための動力を実質的に不要にすることができる。これによって、シャッター91を秘匿位置R2に退避させる構造を実現するために、バネやモータ等が不要で、簡単な構造を有する与薬ラック11を実現できる。これによって、セキュリティが十分に確保され、壊れにくく且つ低価格な与薬ラック11を実現できる。
【0096】
この場合、トレイ本体43は、第1装着部64、シャッター91および移動機構65を差し込み可能に窪んだ差込部68を有し、第1装着部64、シャッター91および移動機構65は、差込部68に対して着脱可能である。
【0097】
この構成によれば、第1装着部64、シャッター91および移動機構65の構造をオプションにすることができる。このため、例えば、第1装着部64、シャッター91および移動機構65が不要である医療施設又は介護施設に対しては、これらを取り外してさらに低価格化した与薬ラック11を提供できる。一方、個人情報を記入可能にでき且つこれをプライバシーの観点から外部から視認できないようにするニーズがある医療施設又は介護施設に対しては、個人情報が保護される高機能な与薬ラック11を実現できる。以上より、施設側のニーズに合わせた与薬ラック11を適宜に実現できる。
【0098】
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。また、上記実施形態同士を適宜に組み合わせて発明を実現することも当然にできる。
【符号の説明】
【0099】
11 与薬ラック
12 ラック本体
13 収納部
13A 開口部
15 トレイ
15A 第1トレイ
18 係合部
S1 係合位置
S2 離間位置
21 切換機構
22 操作部
24 レール
26 保護部材
27 凹部
43 トレイ本体
44 鍔部
48 目隠し板部
P1 収納位置
P2 引出位置
P3 前傾位置
63 第1シート
64 第1装着部
65 移動機構
66 第2シート
67 第2装着部
68 差込部
R1 表示位置
R2 秘匿位置
74 スイッチ