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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】異物検査装置及び異物検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/90 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
G01N21/90 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020194967
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083571
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390014661
【氏名又は名称】オムロン キリンテクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 千代子
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕宗
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-517668(JP,A)
【文献】特開2005-241310(JP,A)
【文献】特開2000-197035(JP,A)
【文献】特開2011-033625(JP,A)
【文献】国際公開第2017/064917(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0233410(US,A1)
【文献】中国実用新案第204214790(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填された容器を照明する照明手段と、前記容器を撮影して前記容器の電子的な画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段が取得した画像に基づいて前記容器内における異物の有無を検査する処理手段と、前記照明手段にて照明された容器の画像が取得されるように前記照明手段及び前記撮像手段を制御する制御手段と、を備えた異物検査装置であって、
前記照明手段は、前記容器内の前記異物における反射光が前記撮像手段に入射するように設けられた第1照明部と、前記容器の透過光が前記撮像手段に入射するように設けられた第2照明部とを含み、
前記撮像手段は、前記第1照明部によって照明された容器の撮影と、前記第2照明部によって照明された容器の撮影とで共用されるカメラを含み、
前記カメラは、前記容器を底部側から撮影するように設けられ、
前記第1照明部は前記容器の底部を側方から照明するように設けられ、前記第2照明部は前記容器を上方から照明するように設けられ、
前記制御手段は、同一の容器が前記第1照明部及び前記第2照明部によって交替的に照明されるように各照明部を制御し、かつ前記第1照明部によって照明された容器と、前記第2照明部によって照明された容器とが順次撮影されるように前記カメラを制御する異物検査装置。
【請求項2】
搬送中の容器が検査対象の容器として設定され、
前記カメラの視野は、前記第1照明部による照明時と前記第2照明部による照明時のいずれの時期でも前記容器を撮影できるように設定されている請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記第1照明部による前記容器の照明位置と、前記第2照明部による前記容器の照明位置とが、前記容器の搬送方向に関して互いにずらして設定され、
前記カメラの前記視野は、前記容器が前記第1照明部の照明位置、及び前記第2照明部の照明位置のいずれの位置にある場合でも前記容器を撮影できるように設定され、
前記制御手段は、前記容器が前記第1照明部の照明位置に達したときに前記第1照明部を発光させ、前記容器が前記第2照明部の照明位置に達したときに前記第2照明部を発光させる請求項2に記載の異物検査装置。
【請求項4】
前記処理手段には、前記第1照明部によって照明された容器の第1画像を処理する第1処理部と、前記第2照明部による照明に対応して前記撮像手段が取得した前記容器の第2画像を処理する第2処理部とが設けられ、
前記撮像手段と前記処理手段との間には、前記撮像手段が取得した画像を前記第1処理部又は前記第2処理部に対して選択的に出力する切替手段が設けられ、
前記制御手段は、前記第1画像が前記第1処理部に、前記第2画像が前記第2処理部に出力されるように前記切替手段を制御する請求項1~3のいずれか一項に記載の異物検査装置。
【請求項5】
液体が充填された容器を照明手段にて照明し、照明された容器を撮像手段にて撮影して前記容器の電子的な画像を取得し、取得された画像に基づいて前記容器内における異物の有無を検査する異物検査方法であって、
前記容器内の前記異物における反射光が前記撮像手段に入射するように設けられた第1照明部と、前記容器の透過光が前記撮像手段に入射するように設けられた第2照明部とを前記照明手段に設け、
前記第1照明部によって照明された容器の撮影と、前記第2照明部によって照明された容器の撮影とで共用されるカメラを前記撮像手段に設け、
前記カメラは、前記容器を底部側から撮影するように設け、
前記第1照明部は前記容器の底部を側方から照明するように設け、前記第2照明部は前記容器を上方から照明するように設け、
同一の容器が前記第1照明部及び前記第2照明部によって交替的に照明されるように各照明部を制御し、かつ前記第1照明部によって照明された容器と、前記第2照明部によって照明された容器とが順次撮影されるように前記カメラを制御する異物検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物が充填された容器内の異物を検査する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に充填された液体中の異物の有無を検査する手法として、異物における反射光の有無を検査する手法と、異物による遮光部分の有無を検査する手法とが従来より用いられている。前者の手法は、ガラス片のように光を反射する性質の異物の検出に適し、白検出と称されることがある。後者の手法は黒色異物のように光を遮光する性質の異物の検出に適し、黒検出と称されることがある。これらの手法に用いられる検査装置は、検出原理の相違に応じて照明系の構成を変える必要があることから、従来は各手法に専用の装置として構成されることが通例である。一方、両手法を併用可能な検査装置として、白検出に適合させた照明系と、黒検出に適合させたストロボ光源を含む照明系とを併設するとともに、各照明系ごとにカメラを用意し、白検出用の照明系を連続点灯させつつ、黒検出用の照明系を断続発光させ、ストロボ光源の発光時には黒検出用のカメラのシャッタを閉じて白検出用の画像と、黒検出用の画像とを各カメラに取得させる検査装置も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-092109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検査装置は、光を反射する性質の異物、及び光を遮光する性質の異物のいずれも検出することが可能である。しかしながら、ストロボ光源の発光時に、他方の照明系からも容器が照明されるため、強力なストロボ光源を用いたとしても、二種類の光の干渉の影響が少なからず発生する。各照明系に対応して別々にカメラを用意しているので、装置の小型化や部品点数の削減に関しても相応の限界がある。
【0005】
そこで、本発明は、光を反射する性質の異物、及び光を遮光する性質の異物のいずれも検出することが可能であって、かつ小型化、部品点数の削減に有利な異物検査装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る異物検査装置は、液体が充填された容器を照明する照明手段と、前記容器を撮影して前記容器の電子的な画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段が取得した画像に基づいて前記容器内における異物の有無を検査する処理手段と、前記照明手段にて照明された容器の画像が取得されるように前記照明手段及び前記撮像手段を制御する制御手段と、を備えた異物検査装置であって、前記照明手段は、前記容器内の前記異物における反射光が前記撮像手段に入射するように設けられた第1照明部と、前記容器の透過光が前記撮像手段に入射するように設けられた第2照明部とを含み、前記撮像手段は、前記第1照明部によって照明された容器の撮影と、前記第2照明部によって照明された容器の撮影とで共用されるカメラを含み、前記カメラは、前記容器を底部側から撮影するように設けられ、前記第1照明部は前記容器の底部を側方から照明するように設けられ、前記第2照明部は前記容器を上方から照明するように設けられ、前記制御手段は、同一の容器が前記第1照明部及び前記第2照明部によって交替的に照明されるように各照明部を制御し、かつ前記第1照明部によって照明された容器と、前記第2照明部によって照明された容器とが順次撮影されるように前記カメラを制御するものである。
【0007】
本発明の一態様に係る異物検査方法は、液体が充填された容器を照明手段にて照明し、照明された容器を撮像手段にて撮影して前記容器の電子的な画像を取得し、取得された画像に基づいて前記容器内における異物の有無を検査する異物検査方法であって、前記容器内の前記異物における反射光が前記撮像手段に入射するように設けられた第1照明部と、前記容器の透過光が前記撮像手段に入射するように設けられた第2照明部とを前記照明手段に設け、前記第1照明部によって照明された容器の撮影と、前記第2照明部によって照明された容器の撮影とで共用されるカメラを前記撮像手段に設け、前記カメラは、前記容器を底部側から撮影するように設け、前記第1照明部は前記容器の底部を側方から照明するように設け、前記第2照明部は前記容器を上方から照明するように設け、同一の容器が前記第1照明部及び前記第2照明部によって交替的に照明されるように各照明部を制御し、かつ前記第1照明部によって照明された容器と、前記第2照明部によって照明された容器とが順次撮影されるように前記カメラを制御するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一形態に係る異物検査装置を示す図。
図2図1の異物検査装置の変形例を示す図。
図3図1の異物検査装置の他の変形例を示す図。
図4図1又は図2の異物検査装置を使用した場合における各部の動作の時間的な相互関係を示すタイミングチャート。
図5図3の異物検査装置を使用した場合における各部の動作の時間的な相互関係を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一形態に係る異物検査装置の要部の構成を示している。異物検査装置1は、容器2内における異物の有無を検査するためのものである。検査対象の容器2は、飲料等の液体が充填されてキャップにて封印されたものである。容器2は透光性を有する素材にて形成されたものであって、例えばガラス壜等であってよい。検出対象の異物は、光を反射する性質の異物Aと、光を遮光する性質の異物Bのいずれも含む。
【0010】
異物検査装置1は、照明手段の一例としての照明装置10と、撮像手段の一例としてのカメラ20とを含んでいる。照明装置10は、第1照明部の一例としての第1照明器11と、第2照明部の一例としての第2照明器12とを含む。第1照明器11は、容器2の下部、より好ましくは異物Aが沈殿していることが予想される容器2の底部の近傍を、その側方から照明するように設けられている。図1では容器2を半径方向に挟み込むようにして一対の第1照明器11が設けられている。ただし、第1照明器11の台数は適宜に変更されてよい。一方、第2照明器12は、容器2をその上方から照明するように設けられている。一例として、第2照明器12は容器2をその肩部から底部に向かって照明するように設けられている。第2照明器12は、例えば容器2と同時的に配置されたリング状の照明器とされてよい。図1では、各照明器11、12からの照明光の方向を白抜きの矢印で示している。
【0011】
照明器11、12のそれぞれは、短時間で強力な照明光を発光することが可能なストロボ照明として構成されている。照明器11、12の発光時間は、一例として数十マイクロ秒程度に設定される。各照明器11、12が照射する照明光は、容器2及びその内部の液体に対して透過性を有する波長域の光である。照明器11、12の光源には、ストロボ発光が可能な限りにおいて、LED、キセノンランプ等の光源が適宜に用いられてよい。照明器11、12は、容器2を適切な範囲で照明するためのレンズ、ミラー等の光学部品をさらに含んでもよい。
【0012】
カメラ20は、容器2をその底部の側から撮影するように設けられている。カメラ20は、CMOS、CCD等の固体撮像素子を有し、容器2を撮影して得られた光学像を電子的な画像に変換して出力する。カメラ20の視野F(図において、一対の破線で挟まれた範囲である。)は、容器2の底部の全体が含まれるように設定されている。カメラ20は、第1照明器11によって照明された容器2の撮影と、第2照明器12によって照明された容器2の撮影のいずれにも利用される。つまり、カメラ20は、第1照明器11の照明に対応した撮像手段、及び第2照明器12の照明に対応した撮像手段として共用される。
【0013】
カメラ20と照明器11、12との関係は次の通りである。第1照明器11は容器2の底部を側方から照明するように設けられている。そのため、容器2の底部に異物Aが存在する場合、第1照明器11から照射された光が異物Aにて反射し、その反射光がカメラ20に入射する。したがって、第1照明器11にて照明された容器2の画像において、異物Aは明部として出現する。よって、第1照明器11は、いわゆる白検出用の照明系として機能する。一方、第2照明器12は容器2をその上方から照明するように設けられている。そのため、第2照明器12の照明光は容器2を透過してカメラ20に入射する。容器2の底部に異物Bが存在する場合、第2照明器12から照射された光が異物Bにて遮光される。したがって、第2照明器12にて照明された容器2の画像において、異物Bは暗部として出現する。よって、第2照明器12は、いわゆる黒検出用の照明系として機能する。なお、第1照明器11の照明光が異物Bで遮られても、第1照明器11の照明光に基づく画像(第1画像)において異物Bの影は出現しない。第2照明器12の照明光は異物Aを透過するため、第2照明器12の照明光に基づく画像(第2画像)において異物Aの像は出現しないか、僅かな明度として出現する程度である。
【0014】
異物検査装置1には、照明装置10及びカメラ20を連携動作させて異物A、Bの有無を検査するため、画像処理装置30及び検査制御装置40がさらに設けられている。画像処理装置30は、カメラ20の撮影動作を制御し、カメラ20から出力される画像を所定の手順で処理することにより、異物A、Bの有無を検査する。それにより、画像処理装置30は処理手段の一例として機能する。画像処理装置30は、一例として、カメラ20に対してシャッタ信号を与え、得られた画像を受け取るフレームグラバ等の制御基板と、制御基板が受け取った画像を所定のアルゴリズムに従って処理することにより、異物A、Bの有無を判別するコンピュータユニットとを組み合わせて構成されてよい。検査のためのアルゴリズムは、既存の白検出用、黒検出用のアルゴリズムが用いられてよく、その詳細は説明を省略する。
【0015】
検査制御装置40は、第1照明器11及び第2照明器12と、画像処理装置30とを連携して動作させるために必要な各種の制御処理を担当する。例えば、検査制御装置40は、所定の検査開始信号をトリガとして、第1照明器11及び第2照明器12のいずれか一方が発光し、その後に他方が発光するように照明器11、12の動作を制御する。照明器11、12のいずれを先に発光させるかは適宜に選択されてよい。すなわち、照明器11、12の発光順序は適宜に定められてよい。
【0016】
検査制御装置40は、照明器11、12の発光動作に同期してカメラ20が画像を取得し、得られた画像に基づく検査が実行されるように画像処理装置30に指示する。その指示に対応して、画像処理装置30は、照明器11、12の発光動作に同期して容器2が撮影されるようにカメラ20の撮影動作を制御し、得られた画像をカメラ20から受け取って処理する。なお、検査開始信号を画像処理装置30に入力し、画像処理装置30から検査制御装置40に対して発光動作を指示することにより、画像処理装置30の制御に連携して検査制御装置40が照明器11、12の発光動作を制御してもよい。いずれにしても、画像処理装置30と検査制御装置40が協働して照明器11、12及びカメラ20を連携動作させればよい。それにより、画像処理装置30と検査制御装置40は制御手段の一例として機能する。画像処理装置30の制御基板が、カメラ20の撮影動作に連携して外部装置を制御する機能を有する場合には、画像処理装置30にて第1照明器11及び第2照明器12の発光動作を制御してもよい。その場合には、画像処理装置30が制御手段の一例として機能する。
【0017】
以上のように構成された異物検査装置1によれば、一台の異物検査装置1に白検出用の第1照明器11と、黒検出用の第2照明器12とを設けて、それらの照明器11、12を交替的に発光させているため、照明器11、12のそれぞれの照明光が干渉するおそれがなく、一方の照明に基づく画像において他方の照明の影響が出現して検査精度が損なわれることもない。各照明部11、12によって照明された容器2の撮影に関して同一のカメラ20を共用しているので、異物検査装置1を小型化してその設置スペースの削減を図ることができる。部品点数を削減してコストダウンを図ることも可能である。
【0018】
上記の形態の異物検査装置1において、容器2は静止状態で検査されてもよいし、搬送中の状態で検査されてもよい。搬送中の容器2を検査する場合には、第1照明器11による照明の時期と、第2照明器12による照明の時期とが異なるため、それらの照明時期間で容器2が移動する。例えば、図2において、第1照明器11による照明時の容器2の中心線をL1で、第2照明器12による照明時の容器2の中心線をL2で示せば、それらの照明時期間に容器2は搬送面Cに沿って中心線L1、L2間の距離dだけ移動する。この場合、カメラ20の視野Fは、いずれの照明時でも容器2が撮影できるように設定しておく必要がある。
【0019】
また、搬送中の容器2を検査対象とする場合、第1照明器11、第2照明器12は、それぞれの照明時の容器2の位置に合わせて搬送方向(矢印Dで示す。)に距離dと等しくずらして配置することが好ましい。言い換えれば、照明器11、12はそれぞれの照明範囲の中心が中心線L1、L2と略一致するように配置されることが好ましい。この場合、中心線L1、L2で示す位置が照明器11、12のそれぞれの照明位置に相当する。さらに、カメラ20はその撮影光軸Lcが中心線L1、L2間の距離dを二等分する位置となるように配置することが好ましい。なお、図2では第2照明器12が搬送方向上流側に、第1照明器11が搬送方向下流側にずれているため、第2照明器12が先に発光し、第1照明器11が後に発光する。発光順序が逆の場合には、第1照明器11及び第2照明器12の照明位置を図2とは入れ替えればよい。
【0020】
照明器11、12の照明位置のずれ量(距離dに相当する。)は、容器2の大きさ、搬送速度及びカメラ20と画像処理装置30との間の画像転送速度によって定めることができる。例えば、胴径70mmの容器2が100mm間隔で毎分600本搬送される場合、搬送速度は毎分60mである。カメラ20から画像処理装置30への画像の転送に要する時間が仮に10mm秒であれば、第1照明器11の照明位置(中心線L1)と第2照明器12の照明位置(中心線L2)との距離dは10mm程度である。この程度のずれ量であれば、市場で通常入手可能なカメラを利用しても、その視野内に各照明器11、12の照明位置の容器2を収めることが可能である。
【0021】
容器2の検査に要する時間(タクトタイム)は、カメラ20から画像処理装置30への画像の転送速度のみならず、画像処理装置30における画像処理に要する時間の影響も受けることがある。例えば、カメラ20から画像処理装置30へと画像が転送された後、照明器11、12の照明光に基づく画像のそれぞれを処理して異物A、Bの有無の判定結果を得るまでに要する時間によって、検査に要する時間が変化する。その時間が長引くと、カメラ20が容器2の搬送に同期して白検出用の画像、及び黒検出用の画像を適時に取得できても、判定結果が得られるまでの処理が追いつかず、ひいては容器2の搬送速度の高速化への適応性が損なわれるおそれがある。このように、画像処理装置30の処理速度が不足する場合には、画像処理を実行するための複数の処理部を画像処理装置30に設け、第1照明器11による照明光に基づく画像の処理と、第2照明器12による照明光に基づく画像の処理とが、互いに異なる処理部に実行させてもよい。その一例を図3に示す。
【0022】
図3の例では、カメラ20と画像処理装置30Aとの間に、切替手段の一例としての画像切替器50が設けられ、画像処理装置30A内には第1処理部31と、第2処理部32とが設けられている。第1処理部31及び第2処理部32のそれぞれは、図1に示した画像処理装置30に相当するものである。すなわち、各処理部31、32は、カメラ20の撮影動作を制御し、得られた画像を受け取って、異物の検出に必要な各種の処理を実行する。画像切替器50は、カメラ20が取得した画像の出力先を、第1処理部31と第2処理部32との間で選択的に切り替える。画像切替器50の切替動作は、一例として検査制御装置40により制御される。例えば、検査制御装置40は、第1照明器11の発光時にはカメラ20の画像が第1処理部31に出力され、第2照明器11の発光時にはカメラ20の画像が第2処理部32に出力されるように画像切替器50の動作を制御する。この例によれば、第1照明器11の照明光に基づく画像の処理と、第2照明器12の照明光に基づく画像の処理と、を互いに異なる処理部が担当するので、両画像を同一の処理部にて処理する場合と比較して、検査に要する時間を短縮し、容器2の搬送速度の高速化への適応性を高めることができる。なお、図3の例では、第1処理部31及び第2処理部32の二つの処理部を設けたが、さらに多くの処理部を設けてカメラ20の撮影間隔に応じて適宜の処理部が画像の出力先として選択されるように画像切替器50が制御されてもよい。
【0023】
図4は、図1又は図2の異物検査装置1を使用して検査を実行する場合における各部の動作の時間的関係を示すタイミングチャートの一例である。図中の「OFF」は動作又は処理の停止を、「ON」は動作中又は処理中を示す。図4の例では、まず所定の検査開始信号を受けて第1照明器11による発光動作が開始される。第1照明器11の発光に連携してカメラ20が画像を取得すると、カメラ20から画像処理装置30へ画像が転送される。その画像転送が終了すると第2照明器12の発光動作が開始される。第2照明器12の発光に連携してカメラ20が画像を取得すると、カメラ20から画像処理装置30へ画像が転送される。その転送が終了すると、画像処理装置30にて、転送された画像の処理が行われて異物A、Bの有無が判定され、その処理が終わると画像処理装置30から判定結果が出力される。
【0024】
図5は、図3の異物検査装置1を使用して検査を実行する場合における各部の動作の時間的関係を示すタイミングチャートの一例である。図中の「OFF」は動作又は処理の停止を、「ON」は動作中又は処理中を示す。「画像処理」及び「判定結果出力」に付された「1」又は「2」は、「1」が第1処理部31による処理であることを、「2」が第2処理部32による処理であることをそれぞれ示す。「画像出力切替」は、図3の画像切替器50の動作を示し、「1」は出力先が第1処理部31であることを、「2」は出力先が第2処理部32であることを示す。図5の例では、まず所定の検査開始信号を受けて第1照明器11による発光動作が開始され、同時に画像切替器50により第1処理部31が画像の出力先として選択される。第1照明器11の発光に連携してカメラ20が画像を取得すると、カメラ20から画像処理装置30Aの第1処理部31へ画像が転送される。その画像転送が終了すると第1処理部31にて画像処理が行われて異物Aの有無が判定され、その判定結果が第1処理部31から出力される。一方、第1処理部31による画像処理と並行して、第2照明器12の発光動作が開始され、それと同時に画像切替器50により第2処理部32が画像の出力先として選択される。第2照明器12の発光に連携してカメラ20が画像を取得すると、カメラ20から画像処理装置30Aの第2処理部32へ画像が転送される。その転送が終了すると、第2処理部32にて画像処理が行われて異物Bの有無が判定され、その判定結果が第2処理部32から出力される。なお、図5では、各処理部31、32から判定結果を別々に出力させたが、各処理部31、32の判定結果を総合して、異物A、Bに関する判定結果が一括して出力されるように画像処理装置30Aを動作させてもよい。図4及び図5の例では、第1照明器11を先に発光させているが、第2照明器12を先に発光させてもよい。
【0025】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、適宜の変形又は変更が施された形態にて実施されてよい。例えば、上記の形態では、カメラ20を容器2の底部と対向配置しているが、ミラー、プリズム等の光路変更用の光学部品を利用してカメラを別の位置に配置してもよい。カメラ単独では十分な視野が確保できない場合には、撮像手段に視野の拡大のためのレンズ等の光学部品が追加されてもよい。容器内の異物を含んだ画像の撮影に適した位置であれば、カメラは必ずしも容器を底部側から撮影するように設けられることを要しない。
【0026】
照明手段は、図1図3に示した第1照明器11及び第2照明器12を含む例に限らない。異物における反射光が撮像手段に入射するように設けられた第1照明部と、容器の透過光が撮像手段に入射するように設けられた第2照明部とを含む限りにおいて、照明手段の構成も適宜に変更されてよい。
【0027】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する構成要素を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0028】
本発明の一態様に係る異物検査装置(1)は、液体が充填された容器(2)を照明する照明手段(10)と、前記容器を撮影して前記容器の電子的な画像を取得する撮像手段(20)と、前記撮像手段が取得した画像に基づいて前記容器内における異物の有無を検査する処理手段(30、30A)と、前記照明手段にて照明された容器の画像が取得されるように前記照明手段及び前記撮像手段を制御する制御手段(30、30A、40)と、を備えた異物検査装置であって、前記照明手段は、前記容器内の前記異物における反射光が前記撮像手段に入射するように設けられた第1照明部(11)と、前記容器の透過光が前記撮像手段に入射するように設けられた第2照明部(12)とを含み、前記撮像手段は、前記第1照明部によって照明された容器の撮影と、前記第2照明部によって照明された容器の撮影とで共用されるカメラ(20)を含み、前記制御手段は、同一の容器が前記第1照明部及び前記第2照明部によって交替的に照明されるように各照明部を制御し、かつ前記第1照明部によって照明された容器と、前記第2照明部によって照明された容器とが順次撮影されるように前記カメラを制御するものである。
【0029】
本発明の一態様に係る異物検査方法は、液体が充填された容器(2)を照明手段(10)にて照明し、照明された容器を撮像手段(20)にて撮影して前記容器の電子的な画像を取得し、取得された画像に基づいて前記容器内における異物の有無を検査する異物検査方法であって、前記容器内の前記異物における反射光が前記撮像手段に入射するように設けられた第1照明部(11)と、前記容器の透過光が前記撮像手段に入射するように設けられた第2照明部(12)とを前記照明手段に設け、前記第1照明部によって照明された容器の撮影と、前記第2照明部によって照明された容器の撮影とで共用されるカメラ(20)を前記撮像手段に設け、同一の容器が前記第1照明部及び前記第2照明部によって交替的に照明されるように各照明部を制御し、かつ前記第1照明部によって照明された容器と、前記第2照明部によって照明された容器とが順次撮影されるように前記カメラを制御するものである。
【0030】
上記態様によれば、第1照明部にて照明された容器の画像に基づいて、光を反射する性質の異物の有無を、第2照明部にて照明された容器の画像に基づいて、光を遮光する性質の異物の有無を検査することができる。第1照明部による照明と、第2照明部による照明とを交替的に行っているので、両者の照明が干渉して検査精度が損なわれるおそれはない。第1照明部にて照明された容器の撮影と、第2照明部にて照明された容器の撮影とでカメラを共用しているため、照明部ごとにカメラを設ける場合と比較して装置の小型化を図り、設置スペースを削減することができる。部品点数を削減してコストダウンを図ることも可能である。
【0031】
上記態様において、搬送中の容器が検査対象の容器として設定され、前記カメラの視野は、前記第1照明部による照明時と前記第2照明部による照明時のいずれの時期でも前記容器を撮影できるように設定されてもよい。これによれば、第1照明部による照明時と第2照明部による照明時との間で容器が移動しても、容器を共通のカメラで確実に撮影することができる。
【0032】
前記第1照明部による前記容器の照明位置と、前記第2照明部による前記容器の照明位置とが、前記容器の搬送方向に関して互いにずらして設定され、前記カメラの前記視野は、前記容器が前記第1照明部の照明位置、及び前記第2照明部の照明位置のいずれの位置にある場合でも前記容器を撮影できるように設定され、前記制御手段は、前記容器が前記第1照明部の照明位置に達したときに前記第1照明部を発光させ、前記容器が前記第2照明部の照明位置に達したときに前記第2照明部を発光させてもよい。これによれば、第1照明部と第2照明部とを搬送方向にずらして配置することにより、搬送中の容器を各照明部にて適切に照明しつつ、それらの照明部にて照明された容器の画像をカメラにて確実に撮影することができる。
【0033】
前記処理手段には、前記第1照明部によって照明された容器の第1画像を処理する第1処理部(31)と、前記第2照明部による照明に対応して前記撮像手段が取得した前記容器の第2画像を処理する第2処理部(32)とが設けられ、前記撮像手段と前記処理手段との間には、前記撮像手段が取得した画像を前記第1処理部又は前記第2処理部に対して選択的に出力する切替手段(50)が設けられ、前記制御手段は、前記第1画像が前記第1処理部に、前記第2画像が前記第2処理部に出力されるように前記切替手段を制御してもよい。これによれば、第1照明部の照明光に基づく画像と、第2照明部の照明光に基づく画像とを互いに異なる処理部にて処理することにより、画像処理に要する時間の制約で検査に要する時間が長引くおそれを低減することができる。そのため、容器の搬送速度の高速化への適応性を高めることが可能である。
【0034】
前記カメラは、前記容器を底部側から撮影するように設けられ、前記第1照明部は前記容器の底部を側方から照明するように設けられ、前記第2照明部は前記容器を上方から照明するように設けられてもよい。これによれば、容器の底部付近に沈下している異物を確実に検出することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 異物検査装置
2 容器
10 照明装置(照明手段)
11 第1照明器(第1照明部)
12 第2照明器(第2照明部)
20 カメラ(撮像手段)
30、30A 画像処理装置(処理手段、制御手段)
31 第1処理部
32 第2処理部
40 検査制御装置(制御手段)
50 画像切替器(切替手段)
図1
図2
図3
図4
図5