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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】IgG1 Fcモノマー、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240513BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240513BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240513BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240513BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240513BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K38/17 100
A61K39/00 Z
A61K47/68
C07K16/18
C07K19/00
C12N5/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020541849
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 CN2018111577
(87)【国際公開番号】W WO2019080858
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-04-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】201711014953.3
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520131462
【氏名又は名称】蘇州復融生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU FORLONG BIOTECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 2101-109,B2,No.21,Chengji Road,high tech Zong,Suzhou,Jiangsu 215000 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】応天雷
(72)【発明者】
【氏名】王春雨
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】松本 淳
【審判官】福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0050278号明細書(US,A1)
【文献】特表2013-511281号公報(JP,A)
【文献】特表2013-537416号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K1/00-19/00
Caplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CH2及びCH3ドメインを含むIgG1 Fcモノマーポリペプチドであって、
SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含み、新生児Fc受容体(FcRn)と結合可能である、IgG1 Fcモノマーポリペプチド。
【請求項2】
IgG1の428位にアミノ酸置換をさらに含む、請求項1に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチド。
【請求項3】
100ngの抗原と最大667nMのIgG1 Fcモノマーポリペプチドを用いた酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定されるように、前記IgG1 Fcモノマーポリペプチドは、gp140、ZIKV EDII、ZIKV EDIII、mesothelin、5T4、PD-L1、OX40及びTIM-3からなる群から選択される少なくとも1つの抗原に非特異的に結合しない、請求項1に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチド及び異種タンパク質を含む、融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチド、又は請求項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項6】
請求項に記載の核酸分子を含有するプラスミド。
【請求項7】
請求項に記載のプラスミドを含有する宿主細胞。
【請求項8】
予防/治療有効量の請求項1から3のいずれか1項に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチド、又は予防/治療有効量の請求項に記載の融合タンパク質、及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項9】
予防/治療有効量の請求項に記載の核酸分子、又は予防/治療有効量の請求項に記載のプラスミド、及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項10】
予防/治療有効量の請求項1から3のいずれか1項に記載のIgG1 FcモノマーFcポリペプチド、又は予防/治療有効量の請求項に記載の融合タンパク質を含有し、検出可能なマーカーにコンジュゲートされている医薬組成物。
【請求項11】
検出可能なマーカーは蛍光標識、放射性標識、アビジン、ビオチン、又は酵素である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
組換えモノマーFcライブラリーの構築方法であって、
然変異を請求項1に記載のIgG1 FcモノマーポリペプチドのCH2又はCH3ドメインの1つ又は複数のβ鎖に導入すること含む方法によってライブラリーを構築する組換えモノマーFcライブラリーの構築方法。
【請求項13】
CH2及びCH3ドメインを含むIgG1 Fcモノマーポリペプチドであって、
前記CH3ドメインは、EUナンバリングによればIgG1の341~447位に対応するSEQ ID NO:2の残基111~217を有するアミノ酸配列を含む、IgG1 Fcモノマーポリペプチド。
【請求項14】
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチド。
【請求項15】
請求項13に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチドと、異種タンパク質を含む、融合タンパク質。
【請求項16】
前記IgG1 Fcモノマーポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
CH2及びCH3ドメインを含むIgG1 Fcモノマーポリペプチドであって、
前記CH3ドメインは、SEQ ID NO:2の残基111~217を有するアミノ酸配列、及びEUナンバリングによればIgG1におけるM428L置換に対応するSEQ ID NO:2における追加のM198L置換を含む、IgG1 Fcモノマーポリペプチド。
【請求項18】
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列及びEUナンバリングによればIgG1における追加のM428L置換を含む、請求項13に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチド。
【請求項19】
請求項17に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチドと、異種タンパク質を含む、融合タンパク質。
【請求項20】
前記IgG1 Fcモノマーポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列及びEUナンバリングによればIgG1における追加のM428L置換を含む、請求項19に記載の融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー分野に属し、具体的には、IgG1 Fcモノマー、その調製方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
研究によれば、現在、タンパク質医薬品の長時間作用化技術には、PEG(ポリエチレングリコール)修飾技術、HSA(ヒト血清アルブミン)融合技術、及びFc(ヒト抗体Fc領域)融合技術という3つの主要な技術がある。これらの3つの技術のいずれにもそれなりの欠点があるが、共通の主な欠点は、融合又は修飾対象となるタンパク質薬の分子量を大幅に増加させ、且つ、融合対象となるタンパク質薬の収率及び臨床効果を大幅に低減させる場合が多いことであり、たとえば、ヒト抗体定常領域Fcはホモ二量体であり、その自体の分子量が60kDaであり、且つ融合対象となるタンパク質は二量体化形態にしかならないため、融合タンパク質の分子量はしばしば数倍に増加し、また二量体化された薬物分子は互いに干渉して薬物の効果に影響を与える恐れがある。長い間、関連する研究者は、Fab、1本鎖抗体(scFv)、ナノ抗体(nanobody)などを含む、分子量がより小さく原核細胞で可溶性発現させた「抗体断片」(antibody fragment)を、生産コストが低く、組織への浸透が強い新世代の抗体薬として使用することを検討してきたが、これらの抗体断片は、分子量を減らすためには、IgGのFc領域を捨てる必要があり、その結果、FcRnに結合できないため、in vivoでの半減期は非常に短くなり(2時間未満)、そのため、現在の小分子量抗体断片は、疾患の臨床治療薬として使用されるのが困難である。
【0003】
従来技術は、ヒトIgGのFc領域がホモ二量体であることを開示している。本発明の以前の研究では、多機能スクリーニングである新方法を使用してヒトIgG1 Fc領域を改変し、10億(10)個の異なるFc変異体分子に対してドラッガブル、FcRn結合活性などについてのスクリーニングを行い、分子量がIgG1 Fc領域の半分しかなく、抗体Fc領域のFcRn結合特性、ProteinA / G結合特性を完全に保持し、大腸菌で高度に可溶性発現させるという優れた特性を有し、動物のin vivoでの半減期が最大約2日間に達するFcモノマー分子(mFc)を構築し、その後、研究中に、該Fcモノマー分子(mFc)は、非常に強力な非特異的結合特性を有することを見出し、この特性により、in vivoで使用するとき、mFcは非関連タンパク質に非特異的に結合し、それにより、その臨床使用が大幅に制限される。したがって、本発明は、以前の研究に基づいて、突然変異部位を変更し、スクリーニングステップを最適化することで(図1参照)、新規IgG1 FcモノマーであるsFc(small-sized Fc)を取得し、このIgG1 Fcモノマーは従来のモノマーFcの優れた特性を維持することに加えて、非特異的結合が大幅に改善された。
【0004】
本発明に関連する技術は、以下のとおりである。
[1]HOLLIGER P,HUDSON P J.Engineered antibody fragments and the rise of single domains[J].Nat Biotechnol,2005,23(9):1126-1136.
[2]SAERENS D,GHASSABEH G H,MUYLDERMANS S.Single-domain antibodies as building blocks for novel therapeutics[J].Curr Opin Pharmacol,2008,8(5):600-608.
[3]YING T,FENG Y,WANG Y,et al.Monomeric IgG1 Fc molecules displaying unique Fc receptor interactions that are exploitable to treat inflammation-mediated diseases[J]. MAbs,2014,6(5):1201-1210.
[4]YING T, CHEN W, GONG R, et al.Soluble monomeric IgG1 Fc[J].J Biol Chem,2012,287(23):19399-19408.
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術に基づいて、抗体工学により改変された非特異性の低い新規IgG1 Fcモノマーを提供することにあり、具体的には、IgG1 Fcモノマー及びその使用に関し、
具体的には、本発明は、IgG1 Fcモノマーをコードする核酸を開示しており、いくつかの実施形態では、これら核酸を含むベクター、及びこれらベクターを含む宿主細胞を開示している。
【0006】
IgG1定常領域Fcがホモ二量体であるので、特別なpH依存的結合モードFcRn(neonatal Fc receptor、新生Fc受容体)を利用することによって、IgG1のin vivoでの半減期を長くすることができ、本発明では、抗体IgG1定常領域を改変した新規IgG1 Fcモノマー配列において、抗体工学技術によりヒト抗体IgG1定常領域Fcを改変することで、そのFc二量体をFcモノマーに変換し、且つFcRn結合機能を維持し、非関連タンパク質に対する非特異的結合特性を極めて低くし、Fcモノマーの主な特徴は、抗体定常領域のCH3領域のT366、L368、P395、K409位置に突然変異が存在し、且つ原核細胞で効率的に発現されており、本発明では、特別なpH依存的結合モードでFcRnを結合し、さらに極めて低い非特異的結合特性を有することにある。
【0007】
本発明で調製された新規Fcモノマーは、さまざまなターゲットに対する各種のタンパク質、ポリペプチド、小分子、核酸などと融合又はコンジュゲートし、融合又はコンジュゲート対象となる分子にpH依存的にFcRnと結合可能な特性を付与できる。
【0008】
本発明の目的は、下記技術案によって実現される。
【0009】
1、新規IgG1 Fcモノマー(sFc)のスクリーニング及び判断(図1参照)
本発明では、IgG1定常領域で突然変異を行い、この突然変異のうち、モノマー形成に関するものとして4つの部位特異的突然変異部位と1つのランダム突然変異部位(Leu-351、Thr-366、Leu-368、Pro-395、Lys-409)を含み、FcRn結合に関するものとして2つのランダム突然変異部位(Met-428、Asn-434)を含み、それに基づいて、容量1.28×10のIgG1 Fc突然変異抗体ライブラリーを構築し、
ビオチン標識可溶性FcRnタンパク質に対して新規IgG1 Fcモノマーをスクリーニングし、ビオチン標識可溶性FcRnをストレプトアビジンで被覆された磁気ビーズ上に固定し、1012個のファージでディスプレイされたFcを常温で第1、2ラウンドにおいてprotein Gとインキュベートし、第3、4、5ラウンドでは、それぞれ5、4、2mgのFcRn抗原と2時間インキュベートし、各ラウンドのスクリーニングには、ファージを1012個用い、ポリクローナルファージELISAにより抗体の濃縮を検出し、第3、4、5ラウンドのファージを被覆されるタンパク質とインキュベートし、抗ファージHRP結合抗体を用いてファージとタンパク質との結合を検出し、ポリクローナルファージELISA結果から、第4、5ラウンドのスクリーニング後には、濃縮が極めて顕著であり、
本発明では、このように2ラウンドのスクリーニングで得られたファージを用いて、TG1細胞を感染し、クローンをランダムに選択してモノクローナルファージELISAを行い、さらにシーケンシングをして、濃縮されたIgG1 Fcを同定し、SECを利用してモノマーを判断し、その結果(図1参照)から、sFc、及びスクリーニングされた別のタンパク質1-B10-9(sFcに比べてM428L突然変異を有する)はいずれもモノマーであることが示された。
【0010】
2、新規IgG1 Fcモノマー(sFc)の安定性検出
本発明では、sFc、1-B10-9、mFc及びFcをすべて濃度0.25mg/mlとなるように希釈し、器具Jasco J-815 spectropolarimeter(Jasco International)を用いて、216nmでタンパク質の安定性を検出し、結果を図2に示し、すなわち、sFc、1-B10-9、mFc及びFcのTm値は、それぞれ、62.4±0.1℃、64.0±0.1℃、58.4±0.2℃、80.6±0.3℃である。
【0011】
3、表面プラズモン共鳴(SPR)による新規IgG1 Fcモノマー(sFc)のFcRnへの結合能の検出
本発明では、SA(ビオチンアビジン)チップを用いて新規IgG1 FcモノマーのFcRnへの結合能を検出し、ここで、新規IgG1 Fcモノマーを可溶性発現可能に調製することは、ほぼ文献に従って行われ、検出中に、タンパク質を2倍希釈し(IgG1 Fcは200nMから6.25nMへ希釈、IgG1 Fcモノマーは400nMから12.5nMへ希釈する)、pH6.0の条件下で結合と解離を検出して親和定数を取得し、結果を図3に示し、すなわち、Fc、mFcと比較し、新規IgG1 FcモノマーsFc及び1-B10-9のFcRnへの結合能はほぼ一致している。
【0012】
4、新規IgG1 Fcモノマー(sFc)の非特異性結合の検出
本発明では、Fcを真核生物で発現させ、mFc及び新規IgG1 FcモノマーsFcを原核生物で発現させ、Protein Gで精製し、ウイルス及び癌関連タンパク質(gp140、mesothelin、ZIKV EDII、ZIKV EDIII、5T4、PD-L1、OX40、TIM-3)を用いて1ウェルあたり100ngでプレート(#3690)を被覆して4℃で一晩放置し、1ウェルあたり3%MPBS(PBS+3%milk)100μlを加えて37℃で1hブロックし、次に、0.05%PBST(PBS+0.05%Tween 20)を用いて洗浄し、Fc、mFc、新規IgG1 FcモノマーsFc及び1-B10-9を2μMから3倍希釈し、37℃で抗原と1.5hインキュベートし、0.05%PBSTで洗浄した後、1:1000でanti-FLAG-HRPを加えて37℃で45minインキュベートした後、ABTSを加えて吸光値405nmで発色させ、3つの間の非特異性結合を比較したところ、新規IgG1 FcモノマーはmFcよりもはるかに良好であり、図4に示されるELISA結果として、新規IgG1 FcモノマーsFcと1-B10-9との非特異性結合が極めて低い。
【0013】
本発明では、前記IgG1 Fcモノマーペプチド鎖は、CH2及びCH3ドメインを含み、ペプチド鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1を含有し、X1はR/T、X2はL/H、X3はP/K、X4はK/Tであり、Fcはモノマーであり且つ新生児Fc受容体(FcRn)と結合可能であり、
前記IgG1 Fcモノマーペプチド鎖では、ペプチド鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2を含有し、X1はR、X2はH、X3はK、X4はTである。
【0014】
本発明では、前記CH3ドメインは、
(a)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列における第341-447位のアミノ酸と、
(b)SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列における第341-447位のアミノ酸と、を含む。
【0015】
本発明は、上記IgG1 Fcモノマーポリペプチド、又は前記CH3ドメイン、及び異種タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。
【0016】
前記異種タンパク質は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、且つ目標抗原に特異的に結合可能であり、本発明の実施例では、前記異種タンパク質は病原体の抗原に由来し、前記病原体はウイルス又は細菌であり、前記ウイルスはヒト免疫不全ウイルス(HIV)から選ばれる。
【0017】
前記異種タンパク質は、また腫瘍抗原から選ばれ、前記腫瘍は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、肝癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸癌又は腎臓細胞癌である。
【0018】
前記異種タンパク質は、また自己免疫又は炎症性疾患抗原から選ばれる。
【0019】
本発明の前記融合タンパク質は毒素を含む。
【0020】
本発明の前記融合タンパク質において、異種タンパク質はサイトカイン、可溶性受容体、成長因子又はマーカーから選ばれる。
【0021】
本発明の前記融合タンパク質において、前記異種タンパク質は、また、ヒトインターフェロン、エリスロポエチン、可溶性腫瘍壊死因子受容体、CTLA-4、可溶性IL-4受容体又はファクターIXから選ばれる。
【0022】
本発明は、請求項に記載のIgG1 Fcモノマーポリペプチド、前記CH3ドメイン、及び/又は前記融合タンパク質をコードする核酸分子をさらに提供する。
【0023】
本発明は、前記核酸分子を含有するプラスミドをさらに提供する。
【0024】
本発明は、前記プラスミドを含有する宿主細胞をさらに提供する。
【0025】
本発明は、前記IgG1 Fcモノマーポリペプチド、前記CH3ドメイン、又は前記融合タンパク質、及び薬学的に許容される担体を予防/治療有効量で含有する医薬組成物をさらに提供する。
【0026】
本発明は、前記核酸分子、又は前記プラスミド、及び薬学的に許容される担体を予防/治療有効量で含有する医薬組成物をさらに提供する。
【0027】
本発明は、前記IgG1 FcモノマーFcポリペプチド、前記CH3ドメイン、及び/又は前記融合タンパク質を予防/治療有効量で含有し、検出可能なマーカーにコンジュゲートされている医薬組成物をさらに提供し、検出可能なマーカーは、蛍光標識、放射性標識、アビジン、ビオチン、又は酵素である。
【0028】
本発明は、前記融合タンパク質、前記核酸分子、又は前記プラスミドを治療有効量で前記被験者に投与することを含む、自己免疫疾患、炎症性疾患、神経変性疾患、癌又は病原体感染の治療方法をさらに提供し、被験者は病原体を感染しており、融合タンパク質は病原体に特異的に結合可能であり、且つ前記方法は、感染被験者の病原体を治療し、病原体はウイルスであり、前記ウイルスは特に免疫不全ウイルスである。
【0029】
本発明は、組換えモノマーFcライブラリーの構築方法をさらに提供し、
(a)突然変異を前記IgG1 FcモノマーポリペプチドCH2又はCH3ドメインの1つ又は複数のβ鎖に導入すること、又は
(b)CH2ドメイン又はCH3ドメインの一部の代わりとして、異種免疫グロブリン可変領域のうち特異的結合抗原が保留された相補決定領域(CDR)又は機能的断片を利用すること、又は
(c)上記の両方を含むことを含む方法によってライブラリーを構築する。
【0030】
本発明では、上記方法によって組換えモノマーFcライブラリーを構築し、組換えモノマーFcライブラリーは、CH2及びCH3ドメインを含み、ライブラリーにおける各IgG1 Fcモノマーポリペプチドは、
(a)モノマー形態であり、
(b)分子量が30KD未満であり、
(c)新生児Fc受容体(FcRn)と結合可能であり、
(d)含まれるアミノ酸配列とSEQ ID NO:1とは少なくとも95%の相同性を有する。
【0031】
本発明では、核酸分子によりコードされるモノマーFcポリペプチドライブラリーは、CH2及びCH3ドメインを含み、ライブラリーにおいてコードされる各Fcポリペプチドは、
(a)モノマーであり、
(b)分子量が30KD未満であり、
(c)FcRnと結合可能であり、
(d)含まれるアミノ酸配列とSEQ ID NO:1とは少なくとも95%の相同性を有する。
【0032】
本発明に係る新規IgG1 Fcモノマー(sFc)は、小分子量の長時間作用モノマーモジュールとして、抗体断片と融合して新規遺伝子組み換え抗体を構築することができ、抗体医薬品の開発のボトルネックを解消するために重要な理論的基礎及び解決策を提供し、あるいは、さまざまなターゲットに対する各種のタンパク質、ポリペプチド、小分子、核酸などと融合又はコンジュゲートし、融合又はコンジュゲート対象となる分子にpH依存的にFcRnと結合可能な特性を付与し、それによって、潜在的により優れたドラッガブル、及びより長いin vivoの半減期を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】SECによる新規IgG1 Fcモノマー(sFc)と従来のモノマーFc(mFc)及びIgG1 Fcとの検出・比較である。
図2】本新規IgG1 Fcモノマーの安定性検出である。
図3】表面プラズモン共鳴(SPR)による新規IgG1 Fcモノマー(sFc)のFcRnへの結合能の検出である。
図4】本新規IgG1 Fcモノマー(sFc)の非特異性検出、及び従来のモノマーFc(mFc)及びIgG1Fcとの比較である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施例1 新規IgG1 Fcモノマー(sFc)のスクリーニングおよび判断
IgG1定常領域で突然変異を行い、この突然変異のうち、モノマー形成に関するものとして4つの部位特異的突然変異部位と1つのランダム突然変異部位(Leu-351、Thr-366、Leu-368、Pro-395、Lys-409)を含み、FcRn結合に関するものとして2つのランダム突然変異部位(Met-428、Asn-434)を含み、それに基づいて、容量1.28×10のIgG1 Fc突然変異抗体ライブラリーを構築した。ビオチン標識可溶性FcRnタンパク質に対して新規IgG1 Fcモノマーをスクリーニングし、ビオチン標識可溶性FcRnをストレプトアビジンで被覆された磁気ビーズ上に固定し、1012個のファージでディスプレイされたFcを常温で第1、2ラウンドにおいてprotein Gとインキュベートし、第3、4、5ラウンドでは、それぞれ5、4、2mgのFcRn抗原と2時間インキュベートし、各ラウンドのスクリーニングには、ファージを1012個用い、ポリクローナルファージELISAにより抗体の濃縮を検出した。第3、4、5ラウンドのファージを被覆されるタンパク質とインキュベートし、抗ファージHRP結合抗体を用いてファージとタンパク質との結合を検出し、ポリクローナルファージELISA結果から、第4、5ラウンドのスクリーニング後には、濃縮が極めて顕著であり、したがって、このように2ラウンドのスクリーニングで得られたファージを用いて、TG1細胞を感染し、クローンをランダムに選択してモノクローナルファージELISAを行い、さらにシーケンシングをして、濃縮されたIgG1 Fcを同定し、SECを利用してモノマーを判断し、その結果(図1参照)から、sFc、及びスクリーニングされた別のタンパク質1-B10-9(sFcに比べてM428L突然変異を有する)はいずれもモノマーであることが示された。
【0035】
安定性検出
sFc、1-B10-9、mFc及びFcをすべて濃度0.25mg/mlとなるように希釈し、器具Jasco J-815spectropolarimeter(Jasco International)を用いて、216nmでタンパク質の安定性を検出し、結果を図2に示し、すなわち、sFc、1-B10-9、mFc及びFcのTm値は、それぞれ、62.4±0.1℃、64.0±0.1℃、58.4±0.2℃、80.6±0.3℃であった。
【0036】
表面プラズモン共鳴(SPR)による新規IgG1 Fcモノマー(sFc)のFcRnへの結合能の検出
SA(ビオチンアビジン)チップを用いて新規IgG1 FcモノマーのFcRnへの結合能を検出した。ここで、IgG1 Fcモノマーを可溶性発現可能に調製することは、ほぼ文献に従って行われ、検出中に、タンパク質を2倍希釈し(IgG1 Fcは200nMから6.25nMへ希釈、IgG1 Fcモノマーは400nMから12.5nMへ希釈する)、pH6.0の条件下で結合と解離を検出して親和定数を取得し、結果(図3参照)から、Fc、mFcと比較し、新規IgG1 FcモノマーsFc及び1-B10-9のFcRnへの結合能はほぼ一致していることを示した。
【0037】
IgG1 Fcモノマー(sFc)の非特異性結合の検出
Fcを真核生物で発現させ、mFc及び前記IgG1 FcモノマーsFcを原核生物で発現させ、Protein Gで精製し、ウイルス及び癌関連タンパク質(gp140、mesothelin、ZIKV EDII、ZIKV EDIII、5T4、PD-L1、OX40、TIM-3)を用いて1ウェルあたり100ngでプレート(#3690)を被覆して4℃で一晩放置し、1ウェルあたり3%MPBS(PBS+3%milk)100μlを加えて37℃で1hブロックし、次に、0.05%PBST(PBS+0.05%Tween 20)を用いて洗浄し、Fc、mFc、前記IgG1 FcモノマーsFc及び1-B10-9を2μMから3倍希釈し、37℃で抗原と1.5hインキュベートし、0.05%PBSTで洗浄した後、1:1000でanti-FLAG-HRPを加えて37℃で45minインキュベートした後、ABTSを加えて吸光値405nmで発色させ、3つの間の非特異性結合を比較したところ、前記IgG1 FcモノマーはmFcよりもはるかに良好であり、図4に示されるELISA結果として、前記IgG1 FcモノマーsFcと1-B10-9との非特異性結合が極めて低い。
【0038】
SEQUENCE LISTING
SEQ ID NO:1は、mutated Fcのアミノ酸配列である。
【0039】

【0040】
SEQ ID NO:2は、sFcのアミノ酸配列である。
【0041】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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