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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】粒子捕捉システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240513BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240513BHJP
   G01N 1/34 20060101ALI20240513BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G01N35/10 A
G01N37/00 101
G01N35/10 K
G01N1/34
G01N1/28 J
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021547667
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2019058138
(87)【国際公開番号】W WO2020086999
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】62/750,620
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521181013
【氏名又は名称】サブラン・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SAVRAN TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キョシェル,ヒュル
(72)【発明者】
【氏名】リベッリ,パトリック
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/185098(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0131283(US,A1)
【文献】特表2008-510974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 37/00
G01N 1/34
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性である、または磁性にされる標的物質の自動化されたアッセイを行うためのシステムであって、
a)ハウジングを備え、前記ハウジングは、標的物質を含有する試料流体が試験カートリッジデバイス(110,200,300)を通って流れるときに標的物質を捕捉するための前記試験カートリッジデバイスを受け入れるように構成された受け入れ領域を含み各々の前記試験カートリッジデバイスは、精製マイクロ流体チップおよび抽出マイクロ流体チップを含、さらに、
b)前記受け入れ領域と流体連通し、前記試料流体を貯蔵するように構成された試料流体リザーバと、
c)各々が前記受け入れ領域と流体連通し、1つまたは複数の試薬を貯蔵するように構成された1つまたは複数の試薬リザーバ(134)と、
d)前記受け入れ領域に隣接して配置されており、試料流体が前記精製マイクロ流体チップ内の表面にわたって流れるときに、磁性標的物質を非磁性物質から分離し、少なくとも1つの磁性標的物質を前記マイクロ流体チップのうちの少なくとも1つの中の少なくとも1つの既知の位置に保持するのに十分な磁力を前記試験カートリッジデバイス内に発生させるように構成されている1つまたは複数の磁石構成要素(144)と、
e)前記ハウジング内の前記精製および抽出マイクロ流体チップを通じた前記試料流体および前記1つまたは複数の試薬の流れを制御するための流体制御デバイス(130)であって、前記流体制御デバイスは、非磁性物質を前記精製および抽出マイクロ流体チップから外方に動かすのに十分であるが、前記精製および抽出マイクロ流体チップから磁性標的物質を除去するには不十分である流量において、前記試料流体に、前記精製および抽出マイクロ流体チップを通過させる、流体制御デバイス(130)と、
f)前記分析デバイスおよび前記流体制御デバイスを制御するように構成およびプログラムされているコンピューティングデバイス(120)
g)前記ハウジングの前記受け入れ領域に挿入するための1つまたは複数の試験カートリッジデバイスとを備え、
各々の試験カートリッジデバイスの前記精製チップ(112A,310A)は多孔性表面(118)を含、前記多孔性表面の細孔は前記標的物質よりも小さく、前記磁力は、前記試料流体が前記多孔性表面にわたって流れるときに磁性標的物質を前記多孔性表面に向かって引き付けて移動させ、少なくとも1つの磁性標的物質を前記多孔性表面上に保持し、標的物質に結合されていない磁性ビーズを引き付けて前記細孔を通過させるように制御され
前記各々の試験カートリッジデバイスの前記抽出チップ(112B,310B)は、マイクロウェル表面を含み、前記マイクロウェル表面は1つまたは複数の前記マイクロウェル表面のアレイに配置された複数のマイクロウェル(122A)を含、前記マイクロウェルが前記標的物質よりも大きく、前記試料流体が前記マイクロウェル表面にわたって流れるときに前記複数のマイクロウェルの少なくとも1つに少なくとも1つの磁性標的物質を引きつけて保持するように、前記磁力が制御され
前記流体制御デバイスは未結合磁性ビーズおよび非標的物質を前記試料流体から取り除くのに十分な流量において前記試料流体を前記精製チップを通って動かし、
前記流体制御デバイスは前記試料流体が前記精製チップを出て前記抽出チップに入り前記抽出チップ内の1つまたは複数の前記マイクロウェルにおいて標的物質を捕捉するのに十分な流量において前記試料流体を動かし、
前記精製チップは前記抽出チップの流体回路上流において前記抽出チップに直列接続されかつ廃棄物容器に接続されて非標的物質および未結合磁性ビーズを含む一定量の前記試料流体が廃棄物容器に流される、システム。
【請求項2】
前記試験カートリッジデバイス内の少なくとも1つの既知の位置において前記少なくとも1つの磁性標的物質を撮像するための分析デバイス(140)をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記試料流体リザーバに貯蔵された前記試料流体を前記試験カートリッジデバイスに流すこと、または
前記試薬リザーバに貯蔵された前記1つもしくは複数の試薬流体を前記試験カートリッジデバイスに流すことのいずれかを選択するための切替弁をさらに備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記標的物質に特異的に結合するように構成された磁性ビーズのセットをさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記磁性ビーズは、特定の種類の細胞、例えば、循環腫瘍細胞、栄養膜細胞を含む胎児細胞、または有核赤血球に特異的に結合するように官能化され、および/または、前記磁性ビーズは、表面に、前記標的物質の前記表面上の分子に特異的に結合する1つまたは複数の結合部分を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記抽出チップのマイクロウェルの少なくとも1つの既知の位置から標的物質を抽出するように構成された標的物質抽出モジュールをさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記標的物質抽出モジュールがマイクロピペットを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記多孔性表面の細孔が、0.5μm~20μm、例えば5~15μmのサイズを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数のマイクロウェルのうちのマイクロウェルは各々、前記マイクロウェルへの1つの標的物質のみの進入を可能にするサイズを有し、前記複数のマイクロウェルのうちの各マイクロウェルはほぼ同じサイズを有する、請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記マイクロウェル表面の前記1つまたは複数のアレイは、
前記マイクロウェル表面上の第1の位置に配置されたマイクロウェルの第1のアレイと、
存在する場合、試料流体が最初に前記マイクロウェルの第1のアレイにわたって流れ、次いでマイクロウェルの第2のアレイおよび後続のアレイにわたって順次流れるように、第2の位置および後続の位置において前記マイクロウェル表面上に順次配置された第2のアレイおよび後続のアレイとを含み、前記第2のアレイおよび後続のアレイ内のマイクロウェルは、存在する場合、各々、所与のアレイ内で、先行して隣接するアレイ内の前記マイクロウェルのサイズよりも少なくとも10%大きいサイズを有する、請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記試験カートリッジデバイスおよび前記前記1つまたは複数の試薬リザーバは1つのユニットに一体化され、前記システムに挿入されると流体的および機械的に結合される、請求項1から10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記試験カートリッジデバイスは使い捨てである、請求項1から11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
磁性である、または磁性にされる標的物質の自動アッセイを実行するための、標的物質を捕捉する方法であって、
試料流体リザーバからの磁性標的物質を含む試料流体を請求項1から12のいずれか1項に記載の試験カートリッジデバイス(110,200,300)の本体入口に導入するステップと、
試薬リザーバ(134)から前記試験カートリッジデバイスの前記本体入口に1つまたは複数の試薬を導入するステップと、
前記試験カートリッジデバイスに導入された前記試料流体および前記1つまたは複数の試薬をインキュベートするステップと、
磁石構成要素を使用して、前記試験カートリッジデバイスに可変磁力を印加するステップと、
非磁性物質を前記多孔性表面にわたって、かつ前記表面から外方に移動させるのに十分であるが、磁性標的物質を、前記可変磁力によって前記磁性標的物質が保持されている前記多孔性表面から除去するのに十分ではない流量で、前記試料流体に、前記試験カートリッジデバイスの前記多孔性表面の上を通過させるステップと、
前記印加される磁力が前記複数のマイクロウェル内に前記磁性標的物質を引き付けて保持するように、前記試験カートリッジデバイスに対する前記磁石構成要素の位置、磁場強度、または両方を調整するステップとを含む、方法。
【請求項14】
検出構成要素を使用して、前記磁性標的物質の特性を分析するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分析される特性は、前記標的物質の内部に含まれる分子、DNA、RNA、タンパク質、小分子、および酵素、または、前記標的物質の表面に含まれる分子マーカー、または前記標的物質から分泌される分子の量、サイズ、配列、および/または立体配座を含
、および/または、前記分析するステップが、前記標的物質によって発せられた蛍光を検出することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のマイクロウェルの少なくとも1つから標的物質を抽出するステップをさらに含む、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記抽出された標的物質を前記試験カートリッジデバイスの外側の容器に輸送するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記磁石構成要素の位置を調整するステップは、前記磁石構成要素を前記試験カートリッジデバイスに対して2つの水平軸に沿って移動させることを含む、請求項13から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料流体が前記試験カートリッジデバイスの前記精製チップに流されている間に、前記可変磁力が前記試験カートリッジデバイスに印加される、請求項13から18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月25日に出願された米国特許出願第62/750,620号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本明細書は、一般に、マイクロ流体システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
流体試料内の細胞などの個々の粒子は、そのような細胞を試料に含まれる多数の細胞から区別する必要がある場合、高スループットマイクロ流体システム内で分析することが困難であり得る。さらに、個々の細胞を最初に流体試料から単離して、実施される試験の種類に応じて、DNA、RNA、および/またはタンパク質などの細胞内容物を適切に分析しなければならない。場合によっては、自動化された処理および分析を可能にするために、個々の細胞を予め定義された幾何学的配置構成において単離する必要もあり得る。一般的な単離技法は、単一の細胞のみがマイクロウェルプレートの単一のマイクロウェルと一致するように流体試料を希釈することを含むことができる。しかしながら、そのような技法は、十分な正確度および速度を欠き、主に統計に依存し、再現可能な結果を得る機会を減少させる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本開示を通して記載される発明的な態様は、使い捨てマイクロ流体カートリッジに導入される流体試料内の標的物質、例えば細胞、細胞クラスタ、および/または他の種類の粒子を単離、捕捉、および抽出するためのデバイス、システム、および方法を含む。カートリッジは、精製チップ、例えば本明細書に記載の多孔性チップ内の免疫磁気抗体ベースの表面認識を使用して流体から標的物質を単離または精製し、次いで、抽出チップ、例えば本明細書に記載のマイクロウェルチップ内の既知の位置から標的物質を抽出または捕捉するために使用される1つまたは複数のマイクロ流体チップを収容することができる。いくつかの実施形態では、システムは、流体試料を処理し、人間の介入を最小限にするかまたはまったく行わずに標的物質のアッセイを実行して、使用の容易さを向上させ、同等の手動アッセイ技法と比較して、システムを使用した標的物質の精製および抽出の再現性および精度を高めることができる。
【0005】
本明細書に記載のシステムおよび技法は、個々の稀な標的物質、例えば、稀な細胞、例えば、血液試料中の循環腫瘍細胞または母体血液もしくは母体頸管粘液試料中の胎児細胞(例えば、栄養膜細胞または有核赤血球)を分析することが、例えば、癌などの疾患または胎児異数性などの遺伝的障害を理解および検出するために重要である疾患状態の科学的および臨床的研究において使用することができる。
【0006】
本方法およびシステムを使用して、細胞間変動を決定することもできる。例えば、システムおよび技法は、多くの場合、複数の腫瘍の存在および性質を同定することを必要とし得る腫瘍不均一性を有する癌の研究を改善するために使用することができる。一例として、複数の細胞を組み合わせて溶解する場合、それらの遺伝的内容物が混ざり合い、細胞間変異に関する情報が損なわれるおよび/または失われる。しかし、本明細書に記載のシステムおよび技法を使用してそれらを分離、捕捉、および別個に分析することができる場合、細胞間変動に関する情報を分析のために保持することができる。これは、流体(例えば、血液、尿および唾液)から得られる細胞、ならびにまた固形組織、例えば腫瘍を例えば化学的または機械的に粉砕し、細胞を液体媒体、例えば緩衝液中に分配することによって得られる細胞にも当てはまる。
【0007】
一態様では、本開示は、例えば官能化磁性ビーズを使用して、磁性であるか、または磁性になるように作製された稀少細胞などの標的物質をアッセイ、例えば精製、抽出、および任意選択的に分析するためのシステムを提供する。システムは、ハウジングを含み、ハウジングは、標的物質を含有する試料流体が1つまたは複数の試験カートリッジデバイスを通って流れるときに標的物質を捕捉するための1つまたは複数の試験カートリッジデバイスを受け入れるように構成された受け入れ領域であって、各試験カートリッジデバイスは、精製、分離、および/または抽出機能を提供する1つまたは複数のマイクロ流体チップを含む、受け入れ領域と、受け入れ領域と流体連通し、試料流体を貯蔵するように構成された試料流体リザーバと、各々が受け入れ領域と連通し、アッセイにおいて使用される1つまたは複数の試薬を貯蔵するように構成された1つまたは複数の試薬リザーバと、試験カートリッジデバイスを保持し、試料流体がマイクロ流体チップ内の表面にわたって流れるときに、磁性標的物質を非磁性物質から精製または分離し、少なくとも1つの磁性標的物質をマイクロ流体チップのうちの少なくとも1つの中の少なくとも1つの既知の位置に保持するのに十分な磁力を発生させるように構成されている、受け入れ領域に隣接して配置されている1つまたは複数の磁石構成要素と、流体回路を通じた試料流体および1つまたは複数の試薬の流れを制御するための流体制御デバイスであって、流体制御デバイスは、非磁性物質を1つまたは複数のマイクロ流体チップから外方に動かすのに十分であるが、1つまたは複数のマイクロ流体チップから磁性標的物質を除去するには不十分である流量において、試料流体に、1つまたは複数のマイクロ流体チップを通過させる、流体制御デバイスと、任意選択的に、マイクロ流体チップ内の少なくとも1つの既知の位置において少なくとも1つの磁性標的物質を撮像するための分析デバイスと、分析デバイスおよび流体制御デバイスを制御するように構成およびプログラムされているコンピューティングデバイスとを含む。
【0008】
これらのシステムでは、試験カートリッジデバイスは、多孔性表面を含む精製もしくは分離チップ、および/または、マイクロウェル表面の1つまたは複数のアレイに配置構成された複数のマイクロウェルを有するマイクロウェル表面を含む抽出チップを含むことができ、多孔性表面の細孔は標的物質よりも小さく(例えば、細孔は、0.5μm~20μm、例えば5~15μmのサイズを有することができる)、マイクロウェルは標的物質よりも大きく、1つまたは複数の磁石構成要素は、試料流体が多孔性表面にわたって流れるときに磁性標的物質を多孔性表面に向かって引き付けて移動させ、少なくとも1つの磁性標的物質を多孔性表面上に保持し、流体がマイクロウェル表面にわたって流れるときに少なくとも1つの磁性標的物質を複数のマイクロウェルのうちの少なくとも1つに引き付けて保持するように配置構成される。
【0009】
異なる実施態様では、システム、例えばハウジングは、試料流体リザーバに貯蔵された流体試料を試験カートリッジに流すこと、または1つもしくは複数の試薬リザーバに貯蔵された1つもしくは複数の試薬流体を試験カートリッジに流すことのいずれかを選択するための切替弁をさらに含むことができる。
【0010】
これらのシステムは、標的物質に特異的に結合するように構成された磁性ビーズのセットをさらに含み得る。例えば、磁性ビーズは、特定の種類の細胞、例えば、栄養膜細胞および有核赤血球を含む循環腫瘍細胞または胎児細胞に特異的に結合するように官能化することができる。いくつかの実施態様では、磁性ビーズは、その表面に、標的物質の表面上の分子に特異的に結合する1つまたは複数の結合部分を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、磁石構成要素は、マイクロウェル表面に対して2つの水平軸に沿って移動するように構成および制御される。
【0012】
特定の実施形態では、システムは、少なくとも1つの既知の位置、例えばマイクロウェルから標的物質を抽出するように構成された標的物質抽出モジュールをさらに含む。例えば、標的物質抽出モジュールは、手動または自動マイクロピペットを含むことができる。
【0013】
例えば、複数のマイクロウェルのうちのマイクロウェルは各々、所与のマイクロウェルへの1つの標的物質のみの進入を可能にするサイズを有することができ、複数のマイクロウェルのうちの各マイクロウェルはほぼ同じサイズを有する。いくつかの実施態様では、マイクロウェル表面の1つまたは複数のアレイは、マイクロウェル表面上の第1の位置に配置されたマイクロウェルの第1のアレイと、存在する場合、試料流体が最初にマイクロウェルの第1のアレイにわたって流れ、次いでマイクロウェルの第2のアレイおよび後続のアレイにわたって順次流れるように、第2の位置および後続の位置においてマイクロウェル表面上に順次配置された第2のアレイおよび後続のアレイとを含むことができ、第2のアレイおよび後続のアレイ内のマイクロウェルは各々、所与のアレイ内で、先行して隣接するアレイ内のマイクロウェルのサイズよりも少なくとも10%大きいサイズを有する。
【0014】
別の態様では、本開示は、磁性ビーズを使用して、磁性であるか、または磁性にされる標的物質を液体試料から精製および抽出するための試験カートリッジデバイスを提供する。これらの試験カートリッジデバイスは、少なくとも1つの本体入口および少なくとも1つの本体出口を有する本体と、本体内に配置され、本体入口と流体連通する第1の入口、および第1の出口を有する第1のチャンバ、ならびに、チャンバ内に配置され、チャンバを第1の部分と第2の部分とに分離するプレートであって、プレートは複数の細孔を含み、各細孔は標的物質よりも小さく、磁性ビーズよりも大きい、プレートを含む第1のマイクロ流体構成要素と、本体内に配置され、第2の入口および第2の出口を有する第2のチャンバを含む第2のマイクロ流体構成要素であって、第2のチャンバが、マイクロウェル表面の1つまたは複数のアレイ内に配置された複数のマイクロウェルを有するマイクロウェル表面を含み、マイクロウェルは標的物質よりも大きい、第2のマイクロ流体構成要素と、本体内に配置され、第1の出口、本体出口、および第2の入口との選択的流体連通を提供するように構成された弁とを含み、第1のマイクロ流体構成要素および第2のマイクロ流体構成要素は直列に配置され、弁は、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に配置され、弁は、第1の出口から本体出口または第2の入口のいずれかへの選択的流体連通を提供する。
【0015】
いくつかの実施態様において、複数のマイクロウェルのうちのマイクロウェルは各々、マイクロウェルへの1つの標的物質のみの進入を可能にするサイズを有し、複数のマイクロウェルのうちの各マイクロウェルはほぼ同じサイズを有する。
【0016】
別の態様では、本開示は、標的物質を捕捉する方法を提供し、方法は、任意選択的に本明細書に記載のシステムに収容された場合に、試料流体リザーバから本明細書に記載の試験カートリッジデバイスに、磁性標的物質を含有する流体試料を導入することを含む。本方法は、試薬リザーバから試験カートリッジデバイスに1つまたは複数の試薬を導入するステップと、試験カートリッジデバイスに導入された試料流体および1つまたは複数の試薬をインキュベートするステップと、例えば、マイクロ流体試験カートリッジデバイスの下に調整可能に配置された磁石構成要素を使用して、試験カートリッジデバイスに可変磁力を印加するステップと、非磁性物質を多孔性プレートの表面にわたって、かつ表面から外方に移動させるのに十分であるが、磁性標的物質を、可変磁力によって磁性標的物質が保持されている多孔性プレートの表面から除去するのに十分ではない流量で、試料流体に、試験カートリッジの多孔性プレートの上を通過させるステップと、印加される磁力が複数のマイクロウェル内に磁性標的物質を引き付けて保持するように、試験カートリッジデバイスに対する磁石構成要素の位置、磁場強度、または両方を調整するステップとを含む。
【0017】
いくつかの実施態様では、方法は、例えば検出構成要素を使用して、磁性標的物質の特性を分析するステップをさらに含む。例えば、分析される特性は、標的物質の内部に含まれる分子、DNA、RNA、タンパク質、小分子、および酵素、または、標的物質の表面に含まれる分子マーカー、または標的物質から分泌される分子の量、サイズ、配列、および/または立体配座であり得る。例えば、分析するステップは、標的物質によって放出される蛍光を検出することを含み得る。
【0018】
特定の実施態様では、方法は、複数のマイクロウェルに対する磁石構成要素の位置を調整した後、試験カートリッジデバイスの蓋を調整するステップと、複数のマイクロウェルの少なくとも1つから標的物質を抽出するステップとをさらに含むことができる。例えば、複数のマイクロウェルの少なくとも1つから標的物質を抽出するステップは、抽出された標的物質を使い捨てカートリッジの外部の容器に輸送することを含み得る。
【0019】
いくつかの実装形態では、磁石構成要素の位置を調整するステップは、磁石構成要素を使い捨てカートリッジに対して2つの水平軸に沿って移動させることを含む。特定の実施態様では、流体試料が試験カートリッジデバイスの第1のマイクロ流体構成要素に流されている間に、可変磁力が試験カートリッジデバイスに印加される。
【0020】
本明細書に記載のシステムおよび技法は、他の既存の粒子捕捉システムにまさる多くの技術的利点を提供することができる。例えば、循環腫瘍細胞(CTC)のための多くの検出システムは、不十分な感度、純度、速度、使いやすさ、および効率などの問題をしばしば有する。いくつかのシステムは、許容可能な感度を提供することができるが、多くの場合、例えば6時間を超える長い動作時間を必要とし、複数の大型機器を必要とし、これにより、ポイントオブケアまたは他のリソースが制約された設定での使用が制限される可能性がある。いくつかのシステムは、費用対効果が高い場合があるが、感度の欠如という欠点もあり、したがって、既に稀で貴重なCTCを検出することができないことが多い。本明細書に記載のシステムおよび技法は、以下に説明するように、他の既知のマイクロ流体デバイスの使用によるこれらおよび他の制限に対処する。
【0021】
システムは、試験カートリッジおよび試薬カートリッジを含む。試験カートリッジは、精製チップ(例えば、多孔性チップ)および/または抽出チップ(例えば、マイクロウェルチップ)などの1つ、2つ、またはそれ以上のマイクロ流体チップを収容することができる。多孔性チップは、多孔性表面によって分離された2つの流体チャンバを含む。多孔性表面は、多孔性表面を通る流体試料中の磁性ビーズの進入を可能にするが、標的物質の進入を妨げるような大きさの細孔を含む。マイクロウェルチップは、単一の標的物質または標的物質のクラスタがマイクロウェルに入ることを可能にするように選択されたサイズを有する、マイクロウェルの1つまたは複数のアレイを有する表面を有する基板、例えば、薄板を含む。本明細書に記載のように、これらの複数のチップは、本明細書に記載の自動システムにおいて使用するように設計された1つの使い捨てカートリッジに統合される。
【0022】
試薬カートリッジ、例えば使い捨て試薬カートリッジは、自動システムによって実行される1つまたは複数のアッセイを実行するために使用される試薬を貯蔵する複数のリザーバを含む。例えば、試薬カートリッジは、とりわけ、磁性ビーズ溶液、抗体溶液、洗浄緩衝液のためのリザーバを含むことができる。本明細書に記載の新規の自動システムにおいて使用する場合、試験カートリッジおよび試薬カートリッジは、自動アッセイシステムに挿入されると、流体的および機械的に接続され、自動アッセイシステムは、流体システムと、ポンプ(または他の流体圧または流動源、例えば真空源)と、例えば、試験カートリッジに含まれる流体チャンバ内で分析を実行するための流体試料および他の試薬の試験カートリッジへの導入を制御するフロー制御デバイスを含む。いくつかの実施形態では、使い捨て試験カートリッジおよび使い捨て試薬カートリッジは、本明細書に記載のシステムにおいて使用するように設計された1つのユニットに統合される。
【0023】
システムは、磁性であるかまたは磁性にされる標的物質の動きを誘導および制御するために流れに依存しない可変磁力を印加するために使用することができる磁石構成要素を含む。例えば、磁石構成要素は、多孔性チップの第1の流体チャンバ内の多孔性表面の表面上に標的物質を引き付けて保持するために使用され、一方、流体試料中の結合していない磁性ビーズは多孔性表面を通過して第2の流体チャンバに入り、非標的物質は第1の流体チャンバを通って多孔性チップから流出する。別の例として、磁石構成要素は、しばしば特定の標的物質の意図しない喪失をもたらし得る、非標的物質、例えば細胞の偽陽性検出を回避するために洗浄工程を使用することを必要とせずに、標的物質をマイクロウェルチップのマイクロウェル内に移動させ、および/または標的物質をマイクロウェル内に保持するために使用される。
【0024】
異なる実施形態では、磁力の大きさは、標的物質、例えば細胞の沈降速度を増加または減少させるように調節され、印加される磁場の方向は、マイクロウェルチップの表面の1つまたは2つの次元に沿って磁気によって誘導される標的物質の動きを引き起こすように調整することができる。これに関して、プレートのマイクロウェル配置構成および可変磁場の印加を使用して、磁化された細胞および細胞クラスタをより高い正確度および一貫性でより効率的に捕捉することができる。
【0025】
本明細書に記載されているものとしての、標的物質を参照する場合の「磁性」という用語は、本質的に磁性、常磁性、もしくは超常磁性であるか、または磁力もしくは電気力の印加によって磁性、常磁性、もしくは超常磁性にされることを意味する。標的物質を参照する場合の磁性という用語はまた、それ自体が磁性、常磁性または超常磁性であるビーズまたは粒子に付着される、すなわち、例えば共有結合または非共有結合されることによって、磁性、常磁性もしくは超常磁性であるか、または磁性、常磁性もしくは超常磁性にされた標的物質を指す。
【0026】
本明細書に記載されるものとしての、流体試料内の「標的物質」または「標的粒子」は、本質的に磁性、常磁性、もしくは超常磁性であるか、または複数の異なる技法、例えば本明細書に記載されるような磁性粒子、例えば磁性ビーズへの結合を使用して少なくとも一時的に磁化(例えば、磁気、常磁性、または超常磁性に)される。標的物質または粒子は、細胞(例えば、ヒトまたは動物の血液細胞、哺乳動物細胞(例えば、ヒトまたは動物の胎児細胞、例えば、母体血液試料中の栄養膜または有核赤血球細胞、ヒトまたは動物の腫瘍細胞、例えば、循環腫瘍細胞(CTC)、上皮細胞、幹細胞、B細胞、T細胞、キメラ抗原受容体T細胞、樹状細胞、顆粒球、先天性リンパ球系細胞、老化細胞(および特発性肺線維症に関連する他の細胞)、巨核球、単球/マクロファージ、骨髄由来サプレッサー細胞、ナチュラルキラー細胞、血小板、赤血球、胸腺細胞および神経細胞)、および細菌性細胞(例えば、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、大腸菌(E.coli)、サルモネラ菌(Salmonella)、リステリア菌(Listeria)、およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(StaphylococcusAureus)(MRSA)を含む敗血症を引き起こす細菌などの他の細菌)であり得る。
【0027】
標的物質または粒子はまた、植物細胞(例えば、花粉粒、葉、花および野菜の細胞、柔組織細胞、厚角細胞、木部細胞および植物表皮細胞)または様々な生体分子(例えば、DNA、RNAまたはペプチド)、タンパク質(例えば、抗原および抗体)、または環境流体(例えば、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、ならびに寄生虫および他の汚染生物ならびにそれらの卵または嚢胞などの汚水または水)中の汚染物質、例えば毒性粒子などの粒子であり得る。標的物質はまた、例えば、ヒトまたは動物の消費のための水または流体中の汚染粒子または毒性粒子を含む粒子であり得る。
【0028】
細胞である標的物質は、100ナノメートル~1マイクロメートルの間であり、最大約20、30、または40マイクロメートル以上に及ぶ最小直径を有することができる。標的物質のクラスタは、より大きく、サイズが最大100μmまたは1mmに及び得る。本開示は、細胞または細胞クラスタの捕捉に関して記載されているが、本明細書に記載のシステムおよび方法を使用して、液体試料から他の種類の標的物質または粒子を捕捉または単離することもできる。例えば、標的物質は、エキソソームまたは30ナノメートル以下の小ささであり得るサイズを有する他の細胞外小胞であり得る。試料は、ヒトまたは動物の対象からの任意の体液、例えば血液、例えば全血、血漿、血清、尿、唾液、肺洗浄液、脳脊髄液、母乳、羊水、精液、リンパ液、ならびに粘液および粘膜分泌物、例えば膣または子宮頸部の分泌物であり得る。試料はまた、緩衝液または他の液体中で混合された糞便試料、および骨髄または他の組織または細胞試料、例えば、水または緩衝液中で切断および浸軟された固形腫瘍試料であり得る。
【0029】
他に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と類似または同等の方法および材料は、本発明の実践または試験に使用され得るが、適切な方法および材料が本明細書において説明される。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0030】
1つまたは複数の実施形態の詳細が、添付の図面および以下の説明に記載されている。他の可能性のある特徴および利点は、本明細書、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】標的物質を単離し、捕捉し、分析するための使い捨て試験カートリッジと共に使用することができるシステムの一例を示す概略図である。
図1B】試料流体から未結合の磁性ビーズおよび非標的物質を除去するために、使い捨て試験カートリッジなどの試験カートリッジの一部として構成することができる精製チップ、例えば多孔性チップの流体チャンバを通して試料流体を流す例を示す概略図である。
図1C】例えば、例として使い捨てカートリッジなどの試験カートリッジの一部として構成することができるマイクロウェルチップのマイクロウェル内など、抽出チップ内に、磁性標的物質の少なくとも一部を堆積させるために、流体チャンバを通して磁性標的物質を有する試料流体を流す結果の一例を示す概略図である。
図2A図1Aに示すシステムと共に使用することができるマイクロ流体デバイス、例えば試験カートリッジの一例の概略図である。
図2B図1Aに示すシステムと共に使用することができるマイクロ流体デバイス、例えば試験カートリッジの一例の概略図である。
図2C図1Aに示すシステムと共に使用することができるマイクロ流体デバイス、例えば試験カートリッジの一例の概略図である。
図2D図1Aに示すシステムと共に使用することができるマイクロ流体デバイス、例えば試験カートリッジの一例の概略図である。
図2E図1Aに示すシステムと共に使用することができるマイクロ流体デバイス、例えば試験カートリッジの一例の概略図である。
図2F図1Aに示すシステムと共に使用することができるマイクロ流体デバイス、例えば試験カートリッジの一例の概略図である。
図2A】完全に組み立てられたマイクロ流体デバイスを示す図である。
図2B図2Aのマイクロ流体デバイスの複数の層の分解図である。
図2C図2Aのマイクロ流体デバイスの個々の層の上面図である。
図2D図2Aのマイクロ流体デバイスの個々の層の上面図である。
図2E図2Aのマイクロ流体デバイスの個々の層の上面図である。
図2F図2Aのマイクロ流体デバイスの個々の層の上面図である。
図3】多孔性チップなどの精製チップとマイクロウェルチップなどの抽出チップの両方を含む使い捨て試験カートリッジの一例の概略図である。
図4A図1Aに示すシステムと共に使用することができる試薬カートリッジの一例の概略図であり、試薬カートリッジのリザーバの例を示す、図である。
図4B図1Aに示すシステムと共に使用することができる試薬カートリッジの一例の概略図であり、嵌合マニホールド上に配置された試薬カートリッジの一実施形態を示す、図である。
図5】本明細書に記載の試験カートリッジと共に使用することができる完全自動アッセイシステムの実施形態の一例の概略図である。
図6】本明細書に記載の細胞分析システムを使用して細胞を捕捉するプロセスの一例のフローチャートである。
図7A】本明細書に記載のシステムが、非小細胞肺癌(NSCLC)患者の血液試料から循環腫瘍細胞(CTC)を単離、捕捉、および/または分析するために使用されている、可能性のある結果を示すグラフである。
図7B】同定されたCTCを有する患者試料の可能性のある蛍光画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面において、同様の参照符号は、全体を通して対応する部分を表す。
発明を実施するための形態
一般に、使い捨てマイクロ流体試験カートリッジに導入される流体試料中の標的物質、例えば細胞、細胞クラスタ、および/または、エキソソーム、細菌、もしくは他の生物学的物質などの他の種類の粒子を単離、捕捉、および抽出するためのデバイス、システム、および方法が記載される。カートリッジは、磁性のまたは磁化された標的物質を非標的物質および標的物質に結合していない過剰な磁性ビーズから分離する精製チップ(例えば、多孔性チップ)、ならびに、標的物質を抽出することができる特定の既知の位置に標的物質を局在化させる抽出チップ(例えば、マイクロウェルチップ)などの1つまたは複数のマイクロ流体チップを収容することができ、それらのチップはともに、免疫磁気抗体ベースの表面認識を使用して標的物質を流体からマイクロウェルに単離し、標的物質を捕捉することするために使用される。
【0033】
一例では、多孔性チップは、多孔性表面を通る流体試料中の磁性ビーズの進入を可能にするが、細孔よりも大きい細胞などのいくつかの標的物質の進入を妨げ、ただし、エキソソームまたは遊離またはビーズに結合している特定のタンパク質、例えば抗体などの他のより小さな標的物質の進入を依然として可能にする大きさの細孔を有する多孔性表面によって分離された2つの流体チャンバを含む。一例において、マイクロウェルチップは、特定のサイズの標的物質がマイクロウェルに入ることを可能にするように選択されたサイズを有する、マイクロウェルの1つまたは複数のアレイを有する表面を有する基板、例えば、薄板を含む。いくつかの実施形態では、マイクロウェルチップは、異なるサイズのマイクロウェルの2つ以上のセットを含み、セット内のすべてのマイクロウェルは同じ直径を有するが、異なるセット内のマイクロウェルは異なる直径を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステムは、流体試料を処理し、人間の介入を最小限にするかまたはまったく行わずに標的物質のアッセイを実行して、同等の手動アッセイ技法と比較して、使用の容易さ、再現性、および本明細書に記載の方法を使用した標的物質単離の正確度を高めることができる。
【0035】
このシステムはまた、非標的物質の偽陽性検出を回避するために洗浄工程を使用する必要なく、目的の磁性、常磁性、または超常磁性標的物質、例えば細胞の動きを誘導および制御するために流れに依存しない可変引力を印加することができる。例えば、印加される流れに依存しない引力の大きさは、細胞沈降速度を増加または減少させるように操作することができ、印加される磁場の方向は、プレート表面の2つの次元に沿って、磁気によって誘導される細胞の動きを引き起こすように調整することができる。これに関して、プレート上のマイクロウェル配置構成および可変磁場の印加を使用して、細胞および細胞クラスタをより高い効率、正確度および一貫性でより効率的に捕捉することができる。
【0036】
システム概要
図1Aは、細胞分析システム100の一例を示す。システム100は、一般に、マイクロ流体デバイス110、例えばマイクロ流体試験カートリッジ、コンピューティングデバイス120、流体制御デバイス130、分析デバイス140、ポンプ150、および廃棄物容器160を含む。
【0037】
一般に、システム100を使用して、1つまたは複数のマイクロ流体チップを収容する試験カートリッジに導入される流体試料から標的物質を単離することができる。標的物質は、例えば、マイクロ流体チップの1つまたは複数の表面に対して免疫磁気抗体ベースの表面認識(標的物質表面リガンド、例えば細胞表面受容体の)技法を使用して、流体チャンバを含む精製チップに単離され捕捉される。いくつかの実施形態では、システム100の態様は、人間のオペレータによる手動アッセイとして操作することができる。例えば、標的物質が抽出チップ内に捕捉されると、人間のオペレータはマイクロピペットを使用して、抽出チップ内の特定の既知の位置から捕捉された標的物質を抽出することができる。他の実施形態では、例えば図5に示すように、システム100は、人間の介入を最小限にするかまたはまったく行わずにコンピューティングデバイス120によって制御される半自動または完全自動のアッセイとして動作する。例えば、試料流体は、人間のオペレータによって試料流体容器、例えばバキュテナ132に最初に導入することができ、アッセイの他の態様、例えばマイクロ流体デバイス110を通る流れ制御、磁石144の動き、分析デバイス140による画像捕捉および分析、ならびに標的物質抽出は、コンピューティングデバイス120上で作動するソフトウェアによって制御することができる。
【0038】
いくつかの実施態様では、試料流体容器、例えばリザーバ132は、システムのハウジング内にあってもよく、または試料流体、例えば血液の試験管/バイアル/バキュテナ、および試験管からシステムに通じる管または流体導管を保持するホルダがハウジング内またはハウジング上にあってもよい。他の実施態様では、ハウジング内またはハウジング上のラックが、2つ以上の試験管/バイアルを保持する。磁性ビーズを試験管/バイアルに加えることができ、または試料流体をハウジング内の1つまたは複数のリザーバに流すことができ、次いで磁性ビーズが1つまたは複数のリザーバに添加される。あるいは、試料流体、例えば血液を添加する前に、磁性ビーズを試験管/バイアル/バキュテナ内に配置することができる。
【0039】
システム100は、マイクロ流体試験カートリッジデバイス110を使用して、試料流体内の標的物質を単離し、抽出し、任意選択的に分析するように構成される。標的物質は、磁性ビーズを使用して、例えば特異的抗体-抗原結合を使用して磁化される。磁石(複数可)144、例えば永久磁石(複数可)または電磁石(複数可)が、一般的に、マイクロ流体試験カートリッジデバイス110の反対側に配置された受け入れ領域、例えばステージ142に隣接して配置され、引力、例えば磁場を発生させて、多孔性表面を通して未結合の磁性ビーズを引きつけ、多孔性表面の表面上で捕捉される磁性のまたは「磁化された」標的物質を引きつけて保持し、抽出チップの特定の位置、例えば本明細書に記載のマイクロ流体試験カートリッジデバイス110のマイクロウェルチップのマイクロウェルに標的物質を保持するために使用される。分析デバイス140は、存在する場合、捕捉された標的物質と関連付けられる特性を検出するために使用される。
【0040】
本明細書に記載のシステムおよび方法において使用するための、本明細書に記載の「磁性ビーズ」は、任意の形状を有することができ、球形に限定されない磁性、常磁性、または超常磁性粒子であり得る。そのような磁性ビーズは市販されているか、または本明細書に記載の方法およびシステムにおいて使用するために特別に設計することができる。例えば、Dynabeads(登録商標)は、磁性または超常磁性であり、様々な直径(1.05μm、2.8μm、4.5μm)で提供される。Sigmaは常磁性ビーズ(平均直径1μm、3μm、5μm、10μm)を提供する。Pierceは、例えば平均直径1μmの超常磁性ビーズを提供する。Thermo ScientificmagnaBind(登録商標)ビーズは超常磁性であり、様々な直径(1μm~4μm)で提供される。Bangs Labは、磁性および常磁性ビーズ(平均直径0.36、0.4、0.78、0.8、0.87、0.88、0.9、2.9、3.28、5.8、および7.9μm)を販売している。R&D SystemsmagCellect(登録商標)Ferrofluidは、超常磁性ナノ粒子(直径150ナノメートル)を含有する。Biocloneは磁性ビーズ(平均直径1μmおよび5μm)を販売している。さらに、PerkinElmerは、(Chemagen)超常磁性ビーズ(平均直径0.5~1μmおよび1~3μm)を提供する。磁性ビーズは、平均直径が、例えば、10ナノメートル~100マイクロメートルの範囲であり得る粒子である。
【0041】
細胞が実質的に水平な流体流および下向きの磁力の影響下でマイクロ流体デバイス110の流体チャンバ内を移動している場合、表面とのその接触は、流体抗力と下向きの磁力との間のバランスに依存し、これは磁場、ならびに細胞表面上のビーズの特性および数に依存する。流体抗力は平均流速に依存し、これは以下の式Q=V*Aで表され、式中、Qは流量、Vは平均流体速度、Aはフローチャンバの断面積である。
【0042】
「circulating tumorCellDetection usingA parallel flowmicro-apertureChip system」と題する研究では、研究者らは、腫瘍細胞がSigma製の少なくとも7つの超常磁性ビーズ(平均直径1μm)に結合している場合、平均流体速度が4.4mm/s程度であれば、細胞が固体表面に行き当たる確率が90%であることを実証した(すなわち、約7.6mm2の断面積であれば2ml/分の流量)。LabChip,2015,15,1677-1688を参照されたい。この研究において、使用された磁石は、チップの表面の約650マイクロメートル下に配置された磁石の表面付近に0.4~1.5Tの磁束密度および160~320T/mの勾配を有するネオジム永久磁石(K&Jmagnetics、グレードN52)であった。これらの条件下では、単一の磁性ビーズを有する細胞であっても、より低い確率ではあるが、チップ表面に引きつけられ得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、細胞を捕捉する確率を最大化するために、流量および速度を大幅に低下させることができる。より高い流量(ml/分)は、より高い速度(mm/s)をもたらす可能性があり、細胞が表面から逃げるリスクをもたらし得る。あるいは、平均速度が増加するのを防ぐために、より大きな断面積でより高い流量を依然として使用することができる。これらの実施形態では、「断面積」は、流体流に対して垂直に測定される流体チャンバの面積を指す。あるいは、より高い磁化率(例えば、より高い酸化鉄含有量)を有するより強い磁石またはビーズを使用することもできる。いくつかの他の変形例では、より高い親和性の抗体をビーズ表面に結合させることができる。これにより、細胞の表面に結合するビーズの数が多くなり、したがって全体的な磁力が大きくなる。
【0044】
いくつかの実施形態では、マイクロウェル内に捕捉された細胞をマイクロウェルチップの表面から逃がすことなく、流体の流量および速度を増加させることもできる。例えば、一実施形態では、体積流量、磁場強度、および断面積は、0.0001mm/s~500mm/sまたは0.01mm/s~50mm/sまたは1mm/s~10mm/sの範囲の平均流速を可能にするように構成される。一実施態様では、単一の磁性粒子に対する磁束密度力は、1ピコニュートン~100ピコニュートンの範囲であり得るが、場合によっては、1アットニュートンと小さくすることができ、数百ナノニュートンまたはマイクロニュートンと大きくすることができる。
【0045】
ほとんどの磁性ビーズは、典型的には、それらの中心にポリマーシェルを有する酸化鉄コアを有する。ビーズはまた、容易に官能化され得る表面、例えばストレプトアビジン、ビオチン、デキストラン、カルボキシル、NHSまたはアミンの表面コーティングでプレコーティングされ得る。
【0046】
様々な実施形態では、磁性ビーズは、標的物質、例えば流体試料内の細胞の表面上に発現される特異的抗原に結合または連結される。これらの実施形態では、磁性ビーズは、1つまたは複数の結合部分または1つまたは複数の異なる種類の結合部分、例えばEpCAM、EGFR、ビメンチン、HER2、プロゲステロン受容体、エストロゲン受容体、PSMA、CEA、PD-L1、HLA-G、CD105、CD141、CD71、葉酸受容体に対する抗体を含むがこれらに限定されない適切なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、またはアプタマーなどの他の結合部分、または血液試料中のCTCなどの特異的細胞もしくは母体血液試料中の胎児細胞などの特異的標的物質の表面に結合することができる短ペプチドを含む、任意の1つまたは複数の方法、例えば新規の、従来の、または市販の方法で官能化される。
【0047】
抗体以外の分子もビーズ上の捕捉として使用することができる。低分子量リガンドまたはアプタマー、ならびに抗体は、試料中の非標的物質へのビーズの非特異的結合を抑制するために、低分子量リガンドと官能基との間のリンカー基、例えばポリエチレングリコール(PEG)鎖を用いて官能基(使用する磁性ビーズ上の官能基に応じたアミノ、n-ヒドロキシスクシンアミド(NHS)またはビオチン)に結合することができる。
【0048】
他の例では、磁性粒子は、流体試料を磁性粒子の液滴、磁性粒子の流体流に曝露することによって、またはマイクロウェルチップへの磁気泳動流を使用して、標的細胞によって内在化される。例えば、標的細胞は、磁性粒子、常磁性粒子または超常磁性粒子、典型的には約1nm~マイクロメートルのサイズを有するナノ粒子を含有する流体中で、細胞が磁性粒子を内在化するのに十分な条件下で、そのような時間にわたってインキュベートすることができる。一実施形態では、磁性粒子の平均直径は、粒子が細胞によって内在化され得るように標的細胞のサイズよりも十分に小さい限り、数マイクロメートルである。一実施形態では、細胞は、5マイクロメートル~20マイクロメートルの範囲のサイズを有する血液細胞または腫瘍細胞である。
【0049】
様々な実施形態では、磁性粒子を内在化する細胞は、白血球(WBC)、腫瘍細胞、免疫細胞、T細胞、B細胞、または幹細胞である。この技術の一実施態様では、細胞は、ビーズの内在化の程度に関して互いに分離される。例えば、より多くの磁性ビーズを内在化する細胞は、より「磁性」になることができ、したがって流動下でチップ表面により容易に引き付けられるが、一方、より少ないビーズを内在化する他の細胞は、より磁性が低くなる。
【0050】
図1Aに示すように、マイクロ流体デバイス110は、流体試料が入口ポートと出口ポートとの間を流れるマイクロ流体チャンバを形成する表面を有する1つまたは複数のチップを含むことができる。例えば、マイクロ流体デバイス110は、流体チャンバ114を形成するための孔118Aを有する多孔性表面118を含む精製チップ、例えば多孔性チップ112A(図1Bに示す)を有する。別の例として、マイクロ流体デバイス110は、マイクロ流体チャンバ124を形成するためのマイクロウェル122Aを有する表面を有する抽出チップ、例えばマイクロウェルチップ112B(図1Cに示す)を含む。マイクロ流体チャンバ124の底面は、流体試料に懸濁された個々の細胞または細胞クラスタを捕捉するように設計されたマイクロウェル(本明細書では「ウェル」とも呼ばれる)のアレイを含むプレートを含むか、または含有する。いくつかの実施態様では、多孔性表面118の細孔は、その後の抽出のために標的物質をより良好に局在化するように、標的物質を完全にまたは部分的に収容することができるカップ状の細孔開口部を有する。そのような実施態様では、精製チップおよび抽出チップは1つのチップに統合される。例えば、多孔性チップ112Aは、別個のマイクロウェルチップ112Bを使用せずに、精製チップおよび抽出チップの両方として機能することができる。
【0051】
マイクロウェルの寸法(例えば、直径、深さ、形状など)およびマイクロウェルアレイパターンは、マイクロ流体デバイス110を使用して捕捉される標的物質、例えば標的細胞に基づいて変えることができる。例えば、マイクロウェルの深さは、標的細胞の公称直径と標的細胞の公称直径の2倍未満との間であり得る。一例として、循環腫瘍細胞の直径は約15マイクロメートルである。マイクロウェルの深さは、15~30マイクロメートルであり得る。別の例として、細菌のサイズは約1マイクロメートルであり、マイクロウェルの深さは1~10マイクロメートルであり得る。別の実施形態では、マイクロウェルの深さは、細胞がマイクロウェルの内側にあり、下向きの磁力の影響を受けると、その厚さが減少する可能性があるが、その幅が増加する可能性があることを考慮すると、細胞の公称直径に等しいか、またはさらには5、10、20、または50%小さくすることができる。一実施形態では、標的とされる細菌は、1~7マイクロメートルの間で変化する長さを有する棒状であり得る。
【0052】
図1A図1Cに示すように、マイクロ流体デバイス110は、一般に、1つまたは複数の流体チャンバを含むことができ、多孔性チップ112A、マイクロウェルチップ112B、またはその両方を収容する。最初に図1Bを参照すると、多孔性チップ112Aは、標的物質102よりも小さいが未結合磁性ビーズ106よりも大きいサイズの細孔118Aを含む多孔性表面118を含む。多孔性チップ112Aは、標的物質104よりも小さく、したがって細孔118Aを通過することができる任意の非標的物質102、例えば全血試料中の白血球、および任意の未結合磁性ビーズ106を除去するために使用される。磁石144は、流体が多孔性チップ112Aの上部に沿って流れ、未結合磁性ビーズ106が細孔を通過するときに、磁性化標的物質102が多孔性チップ112Aの表面に引きつけられたままにする引力を加えるために使用され、それによって多孔性チップにわたって流れる試料から未結合の磁性ビーズを除去する。
【0053】
一般に、多孔性チップは、レーザ穿孔、フライス加工、異方性エッチング、および化学エッチングを含む様々な技法を使用して、十分に剛性である様々な材料から製造することができる。多孔性チップの一例を図1Bに示し、本明細書に記載する。多孔性チップの他の例は、「MICRO-FLUIDIC SYSTEM USING MICRO-APERTURES FOR HIGH THROUGHPUTDETECTION OFCELLS」と題する米国特許第9,500,625号明細書に開示されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、細孔を通過する磁性ビーズの一部は、他の二次標的物質、例えば、単独でまたはビーズに付着したときに細孔を通過するのに十分小さい分子またはエキソソームに結合している。そのような実施形態では、一次標的物質は多孔性チップの表面上に捕捉され、二次標的物質は多孔性チップの下のチャンバ内に捕捉される。この実施形態は、例えば、多孔性プレートの表面上に捕捉されるCTC、例えば前立腺癌CTCと、細孔を通り抜け、多孔性プレートの下のチャンバ内に捕捉される関連または対応する分子、例えば前立腺特異抗原(PSA)との両方を収集するために1つのデバイスを使用するのに有用である。CTCおよびPSAに付着させるために異なる磁性ビーズを使用することができ、したがって、両方とも磁性である。
【0055】
ここで図1Cを参照すると、マイクロウェルチップ112Bは、磁石144によって加えられる引力によってマイクロウェルの下部に引きつけられた標的物質を捕捉するために使用されるマイクロウェル122Aの複数のアレイを有する構成を含むことができる。マイクロウェルチップの他の例は、「HIGH-THROUGHPUT PARTICLECAPTUREANDANALYSIS」と題されたPCT/US2017/029202に開示されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
図1Aに示す例などのいくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイス110は、多孔性チップ112Aおよびマイクロウェルチップ112Bの両方を収容する単一のハウジングを有する。マイクロ流体デバイス110のハウジングは、そのような実施形態では、流体回路であって、多孔性チップが流体回路内のマイクロウェルチップの上流に配置されるように、ハウジング内で多孔性チップとマイクロウェルチップとを接続する、流体回路を含む。図1Aに示す例では、マイクロ流体デバイス110は2つの入力を含む。上部入口ポート101Aが試料チューブ132から試料流体を受け取り、下部入口ポート101Bが試薬リザーバ134から試薬を受け取る。マイクロ流体デバイス110はまた、2つの出口を含む。上部出口103Aは、マイクロウェルチップから廃棄物、例えば、マイクロウェルチップの流体チャンバを通って流れ、捕捉された標的物質を含まない過剰な流体を除去するために使用される。下部出口103Bは、多孔性チップから廃棄物、例えば、未結合磁性ビーズ106および非標的物質104(図1Bに示す)を含む多孔性チップ112Aの流体チャンバ114を通って流れる流体を除去するために使用される。これはマイクロ流体デバイス110内の流体回路の配置構成の一例であるが、本明細書に記載されるように、他の配置構成も本開示内で企図される。
【0057】
いくつかの他の実施形態では、マイクロ流体デバイス110は、単一のマイクロウェルチップまたは単一の多孔性チップのいずれかを収容する。そのような実施形態では、マイクロウェルチップを収容するマイクロ流体デバイス110は、多孔性チップを収容するマイクロ流体デバイス110と同様に構成することができる。例えば、図2Bに示すように、各マイクロ流体デバイス110は、マイクロウェルチッププレートもしくは多孔性プレートのいずれか、または両方を形成する同様の外層および異なる内層および/またはチャンバを有することができる。マイクロ流体デバイスが1つの内部チップのみを収容する実施形態では、多孔性チップを収容するマイクロ流体デバイスは、流体回路内でマイクロウェルチップを収容する別のマイクロ流体デバイスと直列に接続することができる。例えば、多孔性チップを収容するマイクロ流体デバイスは、流体回路内の上流に配置することができ、その結果、非標的物質および未結合磁性ビーズを含む一定量の試料流体が廃棄物容器160に流される。次いで、標的物質を含む別の量の試料流体を、標的物質を捕捉するためのマイクロウェルを収容するマイクロ流体デバイスに導入することができる。この種の配置構成は、マイクロウェルを含む流体チャンバに導入される流体内の標的物質の濃度を増加させることによって標的物質の捕捉を改善するために使用することができる。
【0058】
図1Aに示すように、コンピューティングデバイス120は、本明細書に記載の方法の様々なステップ、例えば、試料流体注入、細胞捕捉、捕捉された細胞の抽出、および/または捕捉された細胞の分析のためにマイクロ流体デバイス110上で実行される動作を自動化するためのコントローラとして使用することができる。コンピューティングデバイス120は、1つまたは複数のマイクロプロセッサと、標的物質の捕捉、単離、および/または分析に関する動作をコンピューティングデバイス120に実行させるコンピュータプログラム命令によって符号化されたコンピュータ可読記憶媒体とを有する任意の種類のコンピューティングデバイスとすることができる。例として、コンピューティングデバイス120は、デスクトップコンピューティングデバイス、ラップトップコンピューティングデバイス、タブレットコンピューティングデバイス、スマートフォン、または実行可能コードを作動することができる任意の他のデバイスとすることができる。
【0059】
コンピューティングデバイス120は、コンピューティングデバイス120がシステム100のコントローラとして動作することを可能にするソフトウェアを作動させることができる。コンピューティングデバイス120は、本明細書に記載の方法の様々なステップ、例えば、試料流体導入、細胞捕捉、捕捉された細胞の抽出、および/または捕捉された細胞の分析のためにマイクロ流体デバイス110上で実行される動作を自動化することができる。一例では、コンピューティングデバイス120は、各マイクロウェルの内容物の画像を記録するための分析デバイス140の視野に対する、または捕捉された細胞を抽出するためのマイクロピペットに対するマイクロ流体デバイス110の位置を調整する受け入れ領域、例えばステージ142の位置を調整するために使用することができる。別の例では、コンピューティングデバイス120は、磁石144の位置および生成される引力の大きさを調整して、特定の種類の試料流体、標的物質、磁性ビーズ、および/またはカートリッジに対して細胞捕捉技法をカスタマイズするコンピュータ実施命令を生成することができる。
【0060】
コンピューティングデバイス120は、特定の標的物質、磁性ビーズ、認識要素、試料流体、および/または試料サイズのための制御されたフロープロトコルを実行するように流体制御デバイス130を制御するように構成された1つまたは複数のマイクロプロセッサを含むことができる。異なるフロープロトコルを使用して、分析される異なる標的物質、処理される異なる種類の流体試料、または異なる量の同じ試料流体を用いてアッセイを実施することができる。コンピューティングデバイス120は、特定の1つまたは複数の試料に関連する印を読み取り、特定の試料に関連する所定のフロープロトコルを自動的にアップロードおよび実行するためのリーダを組み込むことができる。コンピューティングデバイス120はまた、検出サイクル中に磁場を変調して、標的物質を捕捉し、未結合磁性ビーズを多孔性チップを通して引き込み、標的物質を多孔性チップの表面上に保持し、次いでマイクロウェルのアレイ内に保持することを容易にすることができる。
【0061】
コンピューティングデバイス120はまた、ユーザ制御操作を可能にするように構成することもできる。例えば、特定の標的細胞-磁性ビーズの組み合わせの流量は、標的物質をマイクロ流体デバイス110の表面に引き付けることがもはや不可能になるまで、結合した標的細胞試料の流量を増加させることによって決定することができる。システム100の連続動作は、追加の試料処理が必要か否か、または検出プロセスが完了したか否かを判定するために、可視化窓、例えばマイクロ流体デバイス110の上方に配置された窓を通して直接観察することができる。コンピューティングデバイス120はまた、分析デバイス140がマイクロ流体デバイス110の様々なセクション上の画像を走査して取得することを可能にするために、マイクロ流体デバイス110を移動させることができる。次いで、これらの画像を使用して、マイクロ流体デバイス110の表面の全体または一部の画像を再構成することができる。
【0062】
流体制御デバイス130は、試料流体を流体回路に導入し、試料を1つまたは複数の選択された流量で流体回路を通って流すために使用される任意の種類の流体送達デバイスとすることができる。例えば、流体制御デバイス130は、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、流量計を備えた圧力コントローラ、またはマトリックスバルブを備えた圧力コントローラのいずれかとすることができる。流体制御デバイス130は、試料流体および/または試薬流体をマイクロ流体デバイス110の流体チャンバに導入するためにマイクロ流体デバイス110の入口ポート101Aおよび101Bに取り付けられる配管に接続することができる。場合によっては、流体制御デバイス130はまた、所定のプログラムに従って流体チャンバに導入される試料流体の流量を調整することもできる。この所定のプログラムは、細胞を含有する試料流体を一定の時間にわたって一定の速度で流し、次いで、特定の色素を導入して細胞を染色し、特定の分子および酵素を導入して細胞に結合または相互作用させることを含む特定のシーケンスに基づくことができる。
【0063】
流体制御デバイス130は、マイクロ流体デバイス110に関連する流体回路の異なる位置に配置することができる。いくつかの実施形態では、流体制御デバイス130は、マイクロ流体デバイス110の上流に配置される(例えば、流体回路内のマイクロ流体デバイス110の入口ポートの前に)。そのような実施形態では、流体制御デバイス130を使用して、一定量の流体を試料チャンバ(例えば、キュベット、試験管、または血液バイアル)からマイクロ流体デバイス110を含むチャンバに「押し込む」力を加えることができる。他の実施形態では、流体制御デバイス130は、例えば流体回路内のマイクロ流体デバイス110の出口ポートの後のポンプ150として、マイクロ流体デバイス110の下流に配置することができる。そのような実施形態では、代わりに、流体制御デバイス130を使用して、流体を試料容器からマイクロ流体デバイス110を含むチャンバに「引き込む」力、例えば吸引力または真空力を加えることができる。下流または上流構成のいずれかで流体制御デバイス130によって適用される流量は、例えば、0.1~100mL/分、例えば、0.1~3mL/分または0.1~10ml/分の範囲であり得る。
【0064】
図1Aに示すように、流体制御デバイス130は、試料チューブ132および試薬カートリッジ134に接続されている。流体制御デバイス130は、試薬カートリッジに接続されるとき、いずれの試薬を流体デバイスに導入するかを制御するバルブマトリックスであり、選択された試薬を流体デバイスの上部または下部入口のいずれかに導入することができる。試料チューブ132は、流体制御デバイス130によってマイクロ流体デバイス110の流体回路に導入される一定量の試料流体を収容する。試薬カートリッジ134は、マイクロ流体デバイス110内の標的物質を捕捉、単離、および/または分析するためにイムノアッセイにおいて使用される異なる試薬を各々が貯蔵する区画(または「リザーバ」)を含む。試薬カートリッジ134の一例を図4Aに示し、本明細書で説明する。
【0065】
いくつかの実施形態では、流体制御デバイス130は、最小限の人間の介入でまたは人間の介入なしに、試料チューブ132および試薬カートリッジ134からマイクロ流体試験カートリッジデバイス110にそれぞれ試料流体およびアッセイ試薬を導入するように構成することができる。例えば、流体制御デバイス130は、試料チューブ132および試薬カートリッジ134から一定量の試料流体およびアッセイ試薬を自動的に抽出するソフトウェア制御バルブマトリックスであり得る。この例では、試料チューブ132は、流体制御デバイス130による所定量の液体の引き込みを容易にするためにチューブ内に真空シールを形成するストッパを備えたバキュテナである。試薬リザーバ134は、マイクロ流体試験カートリッジデバイス110に一定量の試薬を導入することを可能にする空気圧バルブを含む。そのような実施形態では、流体制御デバイス130は、コンピューティングデバイス120から受信される制御信号に基づいて、人間のオペレータがステップを実行する必要なしに、分析ステップを実行するマルチチャネルポンプとして動作する。
【0066】
いくつかの実施形態では、試料チューブ132は市販の採血チューブである。そのような実施形態では、流体試料は、例えば化学物質、例えば抗凝固剤、固定剤、および緩衝液と混合された血液溶液である。例えば、試料チューブ132は、Streck、Norgen、またはLBGard(Biomatrica)によって製造された採血チューブとすることができる。採血チューブは、それらが細胞を保存するために使用される時間およびそれらが細胞をどの程度良好に保存するかに基づいて変化し得る。試料チューブ132は、標的物質の最大回収を確実にするために室温または4°C付近で貯蔵することができる。
【0067】
磁石144は、一般に、マイクロ流体デバイス110に対向して、例えばいくつかの実施形態ではマイクロ流体デバイス110の下に配置され、磁性ビーズを多孔性チップの細孔に向かっておよびそれを通って引き付けるように配置構成される。磁石(複数可)は、標的物質をマイクロ流体デバイス110の表面に向かって引くのに十分な磁力を発揮するために、標的物質の各々に連結された磁性ビーズの平均数に対して較正される。いくつかの実施形態では、磁石(複数可)は、重力に対応するように調整された磁力で、マイクロ流体デバイスの側面または上部に配置することができる。一般に、磁石(複数可)はフローチャンバの反対側に位置し、多孔性チップはフローチャンバと磁石(複数可)との間に配置される。
【0068】
磁力は、標的物質がマイクロウェルの入口を通過すると、標的物質を多孔性チップ112Aの細孔に、次いでマイクロウェルチップ112Bのマイクロウェル内に保持する。磁力はまた、マイクロ流体デバイス110内の多孔性チップ112Aの表面に平行な流路内で標的物質を引き寄せる傾向があるマイクロ流体チャンバ114および124を通る流体流から標的物質を引き出すのに十分に強い。一例として、磁石144は、(測定の正確な位置に応じて)0.4T~2Tの測定表面磁束密度および100~400T/mの計算勾配を有するNdFeB立方体磁石(約5×5×5mm)とすることができる。他の例では、限定はしないが、様々な材料から作成されるより大きいまたはより小さい永久磁石、および市販されているか、または標準的なもしくは微細加工手順を使用して製造され、時変磁場を発生させることができる電磁石を含む他の磁石も使用することができる。磁束密度は、0.01T~50T、またはより狭くは0.1~5Tの範囲とすることができる。磁束密度勾配は、0.01~1000T/m、例えば、それぞれ0.1~1000T/m、10~750T/m、100~500T/m、および200~300T/mの範囲とすることができる。
【0069】
磁石144は、特定の用途に基づいて異なる形状および寸法を有することができる。例えば、磁石144の形状は、立方体形状、矩形角柱様形状、リング形状、円形もしくは楕円形、またはそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。さらに、複数の磁石を使用することができる。磁石144のサイズは、その最小寸法が0.1~30cmであり得るように変化し得る。いくつかの実施形態では、磁石144は、磁性粒子または磁化標的物質の凝集体の分散を引き起こすおよび/または助けるために使用されるリング状磁石である。例えば、個々の標的物質を磁石144の周縁に向かって分散させるのを助けるために、標的物質の凝集体の周りにリング状磁石を配置することができる。
【0070】
磁石144は、マイクロ流体デバイス110を含むハウジングの下半分に形成されたキャビティ内に収容することができ、またはキャビティを必要とせずにハウジングの外面に取り付けることができる。磁石144は、標的物質をマイクロ流体デバイス110の表面に引き付け、制御された方法でチャンバの表面上の細胞の動きを調整するように配向または配置されていれば、マイクロ流体デバイス110の外側に固定または支持することができる。例えば、磁石144を使用して、マイクロ流体デバイス110の下の磁石144の移動によって規定される経路に沿って表面上の細胞を誘導することができる。他の実施形態では、1つまたは複数の磁石は、例えばカートリッジまたはキュベットの形態の本明細書に記載のマイクロ流体デバイスを挿入することができるシステム内の収容チャンバ内に固定することができる。そのようなシステムはまた、流体がマイクロ流体デバイスを通過するのに必要なポンプ、コントローラ(例えば、コンピュータまたはマイクロプロセッサ)、流体導管、リザーバ、ならびに本明細書に記載の分析システムおよび機器を含むことができる。
【0071】
磁石144の移動は、手動で、モータによって達成することができ、および/または磁石のための特定の掃引パターンの選択を可能にするコントローラによって与えることができる。磁石144は、必要に応じて作動または停止させることができる電磁石とすることができる。さらに、電磁石は、磁性ビーズおよびリガンド結合物質の動きを制御するための技法の一部として極性を逆転させるように構成することができる。加えて、磁石144の向きを選択的に変更して、加えられる引力の大きさおよび方向を制御することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、複数の磁石、例えば電磁石を例としてタンデム方式でまたは順次に使用および制御して、時間および空間に関して変化する磁場を生成することができる。例えば、マイクロ流体デバイス110の近傍(例えば、下方)に位置する2つ以上の電磁石を制御して、マイクロ流体デバイス110の表面に沿って磁性物質を移動させるために使用される移動する磁力を生成することができる。磁石の動きおよび磁場の力は、コンピューティングデバイス120によって制御される。
【0073】
磁石144によって加えられる引力の大きさは、標的物質、例えば細胞に付着した粒子の磁気特性、磁石144の強度、および/またはマイクロ流体デバイス110に対する磁石144の配置に基づいて調整される。例えば、磁石144は、マイクロ流体デバイス110からの磁石の距離が変化し、それによってマイクロ流体チャンバ内の標的物質に加えられる磁力を変化させることができるように、外部本体と関連付けることができる。次いで、加えられた磁力を、特定の種類の標的物質または使用される特定の種類の官能化磁性ビーズに対して較正することができる。さらに、磁石144は、システム100のプロトコルに従って磁力を完全に除去するように移動させることができる。捕捉された標的物質の多孔性チップの表面および/またはマイクロウェル内からの除去を容易にするために、磁力の除去を使用することができ、その結果、標的物質はその後、別個の回収容器に輸送またはフラッシングすることができる。一実施形態では、マイクロウェルから細胞を抽出するのを助けるために、磁石144または別の磁石をチップの上に配置することができる。次いで、上部に配置された磁石144を横方向に移動させて、マイクロウェルアレイ内の細胞を連続的に抽出することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、磁石144は、マイクロ流体デバイス110の一部を覆うようにマイクロ流体デバイス110の下に配置された電磁石のアレイを含む。次いで、アレイ内の1つまたは複数の電磁石に特定のシーケンスにおいて選択的に電力を供給して引力を加え、マイクロ流体デバイス110の表面に沿った指定の経路に沿って細胞を運動させることができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、磁石144によって加えられる引力を使用して、非特異的細胞の偽陽性検出を回避するために洗浄工程を使用する必要なく、目的の磁性、常磁性、または超常磁性細胞の移動を指示することができる。例えば、印加される引力の大きさは、細胞沈降速度を増加または減少させるように操作することができ、印加される磁場の方向は、プレート表面の2つの次元に沿って、磁気によって誘導される細胞の動きを引き起こすように調整することができる。これに関して、プレート上のマイクロウェル配置構成および可変磁場の印加を使用して、細胞および細胞クラスタをより高い正確度および一貫性で効率的に捕捉することができる。
【0076】
分析デバイス140は、存在する場合、マイクロ流体試験カートリッジデバイス110内に捕捉された細胞を分析するために光学技法を使用するように構成することができる。例えば、分析デバイス140は、他の既知の技法の中でも、蛍光、明視野、暗視野、ノマルスキー、質量分析、ラマン分光、表面プラズモン共鳴に基づく様々な顕微鏡技法を使用するように構成することができる。
【0077】
分析デバイス140は、CCDカメラおよびコンピュータ画像取得・分析システムを含むことができる。CCDカメラは、多孔性チップ112Aのすべての細孔および/またはマイクロ流体デバイス110内のすべてのマイクロウェルから画像を取得するように、マイクロ流体デバイス110の全領域のサイズをカバーするのに十分な大きさであり得る。あるいは、CCDカメラは、細孔および/または1つのマイクロウェルまたはマイクロウェル群に捕捉された1つの標的物質のみを含むより小さい視野を分析することができる。そのような実施形態では、CCDカメラまたはマイクロ流体デバイス110を手動で、またはステージ142もしくは他のコンピュータ制御モダリティを使用して移動させて、CCDカメラを他の細孔および/またはマイクロウェルと順次位置合わせし、それらの画像を取得することができる。
【0078】
分析デバイス140は、マイクロ流体デバイス110を使用した細胞捕捉プロセスの様々な態様を分析するために使用することができる。例えば、分析デバイス140は、マイクロ流体デバイス110のマイクロウェルから抽出された細胞を分析するために使用することができる。あるいは、分析デバイス140を付加的または代替的に使用して、細胞抽出の前に多孔性チップ112Aの細孔および/またはマイクロ流体デバイス110のマイクロウェル内の細胞捕捉を可視化および/または確認することができる。
【0079】
収集デバイス146は、本明細書に記載の技法を使用してマイクロ流体デバイス110の抽出チップに捕捉された標的物質を抽出するために使用することができる。例えば、収集デバイス146は、抽出チップ内の特定の既知の位置、例えば多孔性チップの良好な形状の細孔内またはマイクロウェルチップの表面上のマイクロウェル内に存在する標的物質の抽出を可能にする1つまたは複数のマイクロピペットであり得る。場合によっては、マイクロピペットは、捕捉された標的物質を抽出するために人間のオペレータによって操作される。他の場合、システム100は、マイクロ流体デバイス110内に捕捉された標的物質を抽出するためのマイクロピペット(複数可)の精密な移動を可能にするために、1つまたは複数のマイクロピペットと物理的に相互作用するマイクロマニピュレータを含む。例えば、マイクロマニピュレータは、マイクロピペット(複数可)を標的物質抽出のためにマイクロ流体デバイス110の上の精密な高さまで下げることを可能にする垂直小型リニアアクチュエータであり得る。マイクロピペットはまた、抽出中にマイクロピペット(複数可)の先端を通して標的物質を押し引きする能力を提供するためにピストンポンプに接続することができる。
【0080】
試料処理技法
本明細書に記載されるように、システム100は、流体試料から標的物質を単離、捕捉、分析、および/または抽出するための部分手動、半自動、または完全自動アッセイシステムとして動作することができる。一例では、システム100は、下流の遺伝子分析のために、母体血液もしくは頸管粘液中の胎児細胞などの希少細胞、または哺乳動物もしくはヒト、例えばがんと診断された人もしくはがんの危険性の可能性がある人、例えばがん患者、例えば肺がん患者の血液試料からの循環腫瘍細胞(CTC)を処理するために使用することができる。試料処理は、本開示全体を通して記載される技法を使用してマイクロ流体デバイスを使用して行われる。
【0081】
典型的な動作では、標的物質は、例えば標的物質の表面抗原の免疫磁気認識を使用して磁性ビーズによって官能化される。次いで、磁化された標的物質を有する試料は、最初に一定量の試料流体を精製チップ、例えば多孔性チップに流して、未結合の磁性ビーズおよび非標的物質(図1Bに示す)を除去することによって処理される。次いで、精製チップを出て、官能化標的物質を含む一定量の試料流体が、特定の既知の位置、例えばマイクロウェルチップのマイクロウェルで標的物質を単離し捕捉するために、マイクロウェルチップなどの抽出チップに導入される(図1Cに示す)。
【0082】
最初に図1Bを参照すると、多孔性チップ112Aに試料流体を流す例を示す概略図が示されている。多孔性チップ112Aは、多孔性表面118によって分離された流体チャンバ114および116を含む。多孔性表面118は、標的物質102および場合によっていくつかの非標的物質104よりも直径が小さいが、磁性ビーズおよび特定の非標的物質よりも大きい細孔118Aを含む。これにより、流体チャンバ114を通って流れる流体中の結合していない磁性ビーズが細孔118Aを通過して流体チャンバ116に入ることが可能になり、標的物質102および非標的物質104による進入が防止される。
【0083】
磁石144は、多孔性チップ112Aの近くに配置され、例えば、多孔性チップ112Aが配置されたステージの下に配置される。磁石144は、流体試料が多孔性チップ112Aの上方の流体チャンバ114を通って流れる際に、流体試料中の未結合の磁性ビーズを細孔118Aに進入させる引力を加えるために使用される。この引力はまた、標的物質102を多孔性表面118の表面に一時的に結合させ、一方、いかなる磁性ビーズにも結合していないか、またはそれらのうちの少なすぎるものに結合している非標的物質104は、引力の影響を受けず、流体チャンバ114を通る流体の流れに従う。この点において、多孔性チップに流体試料を流すステップを使用して、未結合磁性ビーズおよび非標的物質を除去し、それにより、マイクロウェルチップを使用したその後の標的物質の単離および捕捉を改善することができる。
【0084】
非標的物質および未結合磁性ビーズが流体チャンバ114から洗い流されると、磁石144によって加えられる引力を減少または停止させて、主に標的物質を含む一定量の試料流体を流体チャンバ114から流出させることができる。この量は、標的物質の単離および捕捉のためにマイクロウェルチップに導入することができる。マイクロウェルチップに導入された量は、廃棄物、すなわち非標的物質および未結合磁性ビーズを有する流体を排除し、緩衝液流を使用してマイクロウェルチップに曝露することができる。
【0085】
特定の実施形態では、標的物質は、8mLの血液試料内の約7~20μmの直径を有する細胞である。そのような実施形態では、磁性ビーズは、約1マイクロメートルの直径を有することができる。細孔118Aは、約5μmの直径を有するようなサイズにすることができ、これは、細孔118Aを通る未結合の磁性ビーズの進入を可能にするが、標的物質の進入を防止する。これにより、多孔性チップ112Aを使用して、異なる種類の細胞、例えば標的細胞と非標的細胞とを区別することなく、血液試料から未結合の磁性ビーズを除去することができる。血液試料は、0.1~10mL/分、例えば1~5mL/分、2~4mL/分の十分に高い流量で流体チャンバ114を通って流れ、非標的物質、例えば磁性ビーズに結合していない白血球を流体チャンバ114から洗い流すことができる。流体チャンバ114は、線速度を増加させることなくそのような流量を維持するために、5~100mm、例えば高さ0.1~5mmおよび長さ5~100mm、例えば5~50mmの比較的大きな寸法を有することができ、そうでなければセルまたはチャンバの完全性を損傷する可能性がある過剰なせん断または圧力の蓄積を防止する。細孔118Aのサイズのために、血液試料は流体チャンバ114を通ってのみ流れる。しかしながら、流体チャンバ116はまた、例えば、緩衝液による気泡のないプライミングの目的のために、流体的に独立してアクセス可能であってもよい。
【0086】
ここで図1Cを参照すると、マイクロウェルチップ112Bのマイクロウェル122A内の磁化標的物質104Aの捕捉を示す概略図が示されている。マイクロウェルチップ112Bは、マイクロウェル122Aの1つまたは複数のアレイを有する表面を有する基板122、例えば薄板を含む。各マイクロウェルは、特定のサイズの標的物質がマイクロウェルに入ることを可能にするように選択されたサイズを有する。図1Cに示す一実施形態では、すべてのマイクロウェルが1つのアレイ内にあり、すべてがほぼ同じサイズ、例えば選択されたサイズの±5パーセント以内を有する。
【0087】
いくつかの他の実施形態では、マイクロウェルチップは、マイクロウェルの2つ以上のアレイを有することができ、所与のアレイ内のマイクロウェルはすべてほぼ同じサイズであるが、1つのアレイ内のマイクロウェルは別のアレイ内のマイクロウェルとは異なるサイズを有する。例えば、マイクロウェルチップ112Bは、2つのマイクロウェルアレイを有することができ、より小さいマイクロウェルの第1のアレイは、個々の細胞を捕捉するために、表面の第1の端部の近く、例えばマイクロ流体チャンバの入口ポートの近くで基板の表面上に配置され、比較的大きいマイクロウェルを含む第2のアレイは、上流のより小さいマイクロウェルに適合しないより大きい細胞または細胞クラスタを捕捉するために、第2の端部の近く、例えば第1のアレイの「下流」で、マイクロ流体チャンバの出口ポートの近くで表面上に配置される。
【0088】
いくつかの実施形態では、基板122は、自由表面、またはウシ血清アルブミン(BSA)、ポリエチレングリコール(PEG)、双性イオン材料、もしくは非特異的結合をブロックする他の材料などの非汚染剤でブロックされた表面であり得る。そのような実施態様では、細胞の動きを抑制するために、基板122の下の磁石144によって引力を加えることができる。
【0089】
磁石144は、マイクロウェルチップ112Bの近くに配置され、例えば、マイクロウェルチップ112Bが配置されるステージ(または、例えば所定の位置に摺動することによってカートリッジが挿入されるチャンバ)の下に配置される。磁石144は、マイクロウェル122Aの上方の流体チャンバ内の標的物質の動きを誘導および制御するために、流れに依存しない可変磁力を印加するために使用される。例えば、磁石144は、しばしば標的物質の意図しない喪失をもたらす、非標的物質の偽陽性検出を回避するために洗浄工程を使用することを必要とせずに、標的物質102をマイクロウェルチップのマイクロウェル内に移動させ、および/または補足された標的物質102Aをマイクロウェル122A内に保持するために使用される。
【0090】
特定の実施形態では、磁石144は、例えば、入口ポートから出口ポートまで、マイクロウェルチップの表面に平行な方向に横方向に移動して、標的物質102がマイクロウェル122A内に捕捉されることを可能にする。例えば、磁力は、標的物質102をマイクロウェルチップ112Bの表面に向かって移動させ、個々のマイクロウェル122Aに「ちょうど落ちる(click-fall)」まで、標的物質をマイクロウェルチップ112Bの表面に沿って水平に引き摺る。この「磁気引き摺り」技法を使用して、顕微鏡観察を必要とせずに標的物質の捕捉を可能にすることができる。捕捉されると、捕捉された標的物質は、抽出のためにアクセスされ得るか、または分析デバイスを使用して撮像および特性評価のために分析され得る。いくつかの実施形態では、マイクロウェルチップ112Bの表面に沿った個々のマイクロウェル122Aの座標は、マイクロウェルからの捕捉された標的物質102Aの反復可能であるが自動化された抽出を可能にすることが知られている。
【0091】
標的物質の精製および抽出のためのマイクロ流体試験カートリッジデバイス
図2A図2Bは、図1Aに示すシステムと共に使用することができるマイクロ流体試験カートリッジデバイス200の一例の概略図である。最初に図2Aを参照すると、標的物質の精製に使用することができるマイクロ流体デバイス200が示されている。この実施形態では、マイクロ流体デバイス200は多孔性チップを収容するが、図1Bおよび図1C、ならびに図3を参照して本明細書で説明するように、精製チップおよび抽出チップのいずれかまたは両方を代替的に収容することができる。様々な実施形態では、マイクロ流体デバイスは、多孔性チップおよびマイクロウェルチップの各々の1つまたは複数、または各々もしくは両方の倍数を、例えば直列または並列に収容することができる。例えば、マイクロウェルチップと直列の多孔性チップを、多孔性チップおよびマイクロウェルチップの1つまたは複数の対と並列に配置することができる。あるいは、いずれの細胞を捕捉するかおよびそれらをどのように分析するかに応じて、2つ以上の多孔性チップを直列に配置し、続いて、2つ以上のマイクロウェルチップを直列または並列に配置することができる。
【0092】
マイクロ流体デバイス200は、流体がマイクロ流体デバイス200のハウジング内の流体回路に導入される入口ポート202Aおよび202Bを含む。流体は、出口ポート204Aおよび204Bを通ってマイクロ流体デバイス200を出る。マイクロ流体デバイス200はまた、本明細書に記載のように磁化された標的物質を単離し捕捉するための引力を加えるために磁石を配置することができる溝206を含む。
【0093】
図2Bは、マイクロ流体デバイス200の個々の層を概略的に示す。図2B-1は、マイクロ流体デバイス200の個々の層の一方の側の斜視図を含み、図2B-2は、マイクロ流体デバイス200の個々の層の他方の側の斜視図を含む。マイクロ流体デバイス200は、上部カバー210、底部カバー260、ならびに中間層220,230,240、および250を含む。中間層230は、試料流体内の標的物質よりも小さいが、試料流体内の未結合磁性ビーズよりも大きいサイズの細孔を含む多孔性表面230Aを含む。例えば、多孔性表面230Aは、上述し、図1Bに示した多孔性表面118のものと同様の細孔の配置構成を有することができる。様々な層においてすべてのねじ穴が示されているわけではないことに留意されたい。
【0094】
特定の実施形態では、上部カバー210および底部カバーはアルミニウムから作成され、中間層220,230,240、および250はシリコーン、ポリカーボネート、または同様の透明な化学耐性プラスチック層から作成されるが、他の適切な材料も使用されてもよい。あるいは、底部および/または上部カバーは、デバイス内の標的物質の観察を可能にするために、ガラスまたはプラスチックなどの透明材料から作成することができる。
【0095】
いくつかの実施態様では、層220および240は、多孔性チップ112Aおよび/またはマイクロウェルチップ112Bを中央でシールするガスケットとして共に作用する、例えばシリコーンまたはフルオロシリコーンなどの軟質エラストマーから作成される。そのような実施態様では、層220および240は、上部および下部フローチャンバの側壁、ならびに層210および250上の流体チャネル間の任意の貫通孔接続を形成する。図2Cは、マイクロ流体デバイス200の上部カバー210の側面図である。図2Cに示す上部カバー210の表面は、入口ポート202Aおよび入口ポート202B(図2Aに示す)をそれぞれ介してマイクロ流体デバイス200に導入される流体、例えば試料流体を受け入れるチャネル210Aおよび210Bを含む。上部カバー210の表面はまた、中間層220,240、および250によって形成され、多孔性表面230(図2B-1に示す)によって分離された流体チャンバから出る流体を受け入れるチャネル210Cおよび210Dを含む。流体は、出口204Aおよび204Bをそれぞれ通ってチャネル210Cおよび210Dを出る。
【0096】
図2Dは、マイクロ流体デバイス200の中間層220の側面図である。図2Dに示す中間層220の表面は、マイクロ流体デバイス200の流体回路を通って流れ、チャネル210Aを出る流体を受け取るチャンバ220Aを含む。中間層220の表面はまた、チャネル210Bを出る流体を受け入れる凹部220Bと、例えばマイクロ流体デバイス200のチャンバを出た後に流体をチャネル210Dに導く凹部220Cとを含む。
【0097】
図2Eは、マイクロ流体デバイス200の中間層250の側面図である。図2Eに示す中間層250の表面は、凹部220Bを流れる流体を受け入れるチャネル250Aを含む。中間層250の表面はまた、流体を凹部220Cに導くチャネル250Bを含む。図2Fは、マイクロ流体デバイス200の底部カバー260の側面図である。
【0098】
図2B-1に示すように、マイクロ流体デバイス200が完全に組み立てられると、中間層220は、チャンバ220Aによって画定された空間が多孔性表面230Aによって分離された流体チャンバの上部を形成するように、マイクロ流体デバイス200の層構成内の中間層230の上に配置される。チャンバ220Aによって画定される空間は、図1Bを参照して上述したように、未結合の磁性ビーズおよび非標的物質が多孔性表面230Aを介してマイクロ流体デバイスから除去されるように試料流体が処理されるマイクロ流体デバイス200の流体回路の領域であり得る。
【0099】
両方のチップは、微細加工されたシリコンから作製され、アルミニウムおよびプラスチックから機械加工され、シリコーンを使用してシールされた流体チャンバに収容され得る。いくつかの実施態様では、これらのチャンバのうちの2つがアッセイに使用され、一方は多孔性チップに使用され、他方はマイクロウェルチップに使用される。後者の場合、上部カバー(絵図の下部)を開いてマイクロピペットで細胞を抽出する。細胞は磁力によってマイクロウェル内に保持されるため、この操作は、細胞の位置を乱すことなく容易に達成される。
【0100】
一体型マイクロ流体試験カートリッジデバイス
図3は、多孔性チップ310Aおよびマイクロウェルチップ310Bの両方を有する使い捨て一体型試験カートリッジ300の一例の概略図である。カートリッジ300は、プラスチック部品上に成形された一体型流体回路を含む。多孔性チップ310Aは、流体回路内のマイクロウェルチップ310Bの上流に配置され、結果、本明細書に記載のようい、カートリッジ300に導入された試料流体が最初に多孔性チップ310Aの流体チャンバを通って流れ、次いでマイクロウェルチップ310Bの流体チャンバを通って流れる。
【0101】
カートリッジ300は、複数の入口ポート302A、302B、および302Cを含む。各入口は、本明細書に記載のアッセイを実行するためにカートリッジ300の流体回路に異なる種類の流体を導入するために使用される。例えば、入口ポート302Aは試料流体、例えば全血を導入するために使用され、入口ポート302Bは磁性ビーズ溶液を導入するために使用され、入口ポート302Cはアッセイ試薬溶液、例えばPBS、蛍光色素などを導入するために使用される。
【0102】
カートリッジ300はまた、複数の出口ポート304A、304B、および304Cを含む。各出口は、カートリッジ300の流体回路を出る異なる種類の流体を除去するために使用される。例えば、出口ポート304Aは、マイクロウェルチップ310Bから出る廃棄物を除去するために使用され、出口ポート304Bは、多孔性チップ310Aの上部チャンバ、例えば図1Bに示す流体チャンバ114から出る廃棄物を除去するために使用され、出口ポート304Cは、多孔性チップ310Aの下部チャンバ、例えば図1Bに示すチャンバ116から出る廃棄物を除去するために使用される。
【0103】
カートリッジ300の入口ポートおよび出口ポートは、図1Aに示すように、試料チャンバ、試薬リザーバ、および廃棄物容器に接続する配管などのアッセイシステムの他の構成要素とのインターフェースを提供するために、それぞれカバー302および304によって覆われている。いくつかの実施形態では、カートリッジ300の入口ポートおよび出口ポートは、カートリッジ300の内部での試料インキュベーション、すなわち、カートリッジ300に流体を導入した後のインキュベーションを可能にするためにカートリッジ300の上で閉じる蓋上のマニホールドリグとインターフェースする。例えば、流体試料は、カートリッジ300を使用してアッセイを実行するときにいかなる外部の試料処理も必要とせずに、カートリッジデバイス内の磁性ビーズ溶液と共にインキュベートすることができる。そのような実施形態では、カートリッジを移動させて試料の混合を促進するステージ上にカートリッジを配置することができる。例えば、ステージを軸に沿って移動させて、カートリッジを前後に揺動させることができる。
【0104】
カートリッジ300は、マイクロウェルチップ310Bおよび多孔性チップ310Aとの間の流体の流れをそれぞれ調整するための切替弁302Dおよび304Dを含む。切替弁302Dを使用して、標的物質の磁化のための流体試料および磁性ビーズ溶液のインキュベーションのために、多孔性チップ310Aの上流の流体回路を通る流体の流れを調整することができる。切替弁304Dを使用して、マイクロウェルチップ310Bの上流の流体回路を通る流体の流れを制御することができる。例えば、切替弁304Dを使用して、本明細書に記載のマイクロウェル内の標的物質を捕捉するために、多孔性チップ310Aの上部チャンバ内の試料流体がマイクロウェルチップ310Bの流体チャンバを出入りすることを可能にすることができる。
【0105】
スライドドア/カバーおよびハンドル320が、マイクロウェルチップ310Bを覆う。抽出チップ内の特定の既知の位置への細胞区画化が完了すると、スライドドア320が開かれ、例えばマイクロピペットまたは他の細胞抽出/ピッキング機構を使用した、細胞への直接アクセスを提供する(約1mmの深さの緩衝層を介して)。このスライドドアは、例えば、レッジ、ノッチ、または他の機械的機構の下でカートリッジを移動させるために協働するように走査x-yおよび電動zステージを構成し、ドアを開くことによって、手動または自動で開くことができる。他の実施形態では、別個の機械的システム、例えばロボットアームを使用して、スライドドアおよびハンドル320を開くことができる。次いで、抽出された細胞を、例えばマイクロウェルプレート、例えば96ウェルマイクロウェルプレート内の個々のビンまたはウェルに配置することができる。
【0106】
試薬カートリッジ
図4A図4Bは、図1Aに示すシステム100と共に使用することができる試薬カートリッジ400の一例の概略図である。図4Aは、アッセイ試薬を貯蔵するための基板402内のリザーバの例を示す。図4Bは、手動または半自動アッセイシステムにおいて使用するための嵌合マニホールド420上に配置された試薬カートリッジ400の実施形態を示す。
【0107】
カートリッジ400のリザーバは、アッセイの異なる段階において使用される正確な量の試薬を貯蔵するのに適切なサイズにすることができる。リザーバ410は、インキュベーション間のすすぎ工程および洗浄工程に使用されるPBSなどの試薬を貯蔵するために使用することができる。リザーバ412,414,422,424,432,434,442および444は、蛍光色素、磁性ビーズ溶液、またはアッセイを実施するときに少量において使用される他の溶液を貯蔵するために使用することができる。リザーバ452,462,472および482は、他の溶液の濃度を調整するために使用される洗浄液および希釈剤を貯蔵することができる。いくつかの実施形態では、リザーバ410は、約40mLまでの液体を貯蔵するようなサイズにされ、リザーバ412,414,422,424,432,434,442および444は、0.5~2mLの液体を貯蔵するようなサイズにされ、リザーバ452,462,472および482は、5~10mLの液体を貯蔵するようなサイズにされる。いくつかの実施態様では、リザーバ410はPBSを貯蔵し、リザーバ412,414,422,424,432,434,442および444は蛍光色素、定着剤を貯蔵し、452,462,472および482は脱イオン水、Tween(登録商標)洗浄液、BSA、またはエタノールを貯蔵する。図4Aは、リザーバアレイのリザーバ構成の一例を示しているが、本開示内では他の構成も考えられる。例えば、リザーバは、システム100によって実行される特定のアッセイに基づいて、異なる形状、深さ、および間隔を有することができる。
【0108】
特定の実施形態では、試薬カートリッジ400は、血液試料中の肺がんのCTCのアッセイを行うために使用される。そのような実施形態では、試薬カートリッジ400は、肺癌向け捕捉抗体、例えば抗EpCAM、抗EGFRおよび抗PD-L1によってコーティングされたビーズを含む磁性ビーズ溶液、脱イオン水、エタノール、BSA+Tween(登録商標)洗浄緩衝液、RBS pF洗剤、赤血球溶解緩衝液、PBS緩衝液、パラホルムアルデヒド(PFA)、Triton(登録商標)、ならびに蛍光タグ、例えばサイトケラチン、CD45および核染色剤、例えばHoechst染色剤で修飾された染色抗体溶液などの試薬を貯蔵することができる。
【0109】
試薬溶液は、それらが適切に機能し、再現可能な基準を満たすことを確実にする方法で試薬カートリッジ400に貯蔵することができる。例えば、抗体-ビーズ複合体は、長期性能を維持するために4°Cで指定の濃度範囲、例えば1~10mg/mLで貯蔵することができる。いくつかの実施態様では、試薬カートリッジ400は、アッセイワークフローが開始される(その時点で、カートリッジはシステム、例えばシステム500に挿入されるまで、例えば最大6ヶ月間、冷蔵庫に貯蔵される。システムは、必要に応じて試薬を冷却することができる。例えば、冷却貯蔵を必要とする試薬、例えば、色素、抗体溶液などのいくつかは、高濃度/低容量で貯蔵され(またはさらには凍結乾燥され)、次いでPBSまたは水によってアッセイ中に自動的に再構成され得る。
【0110】
特定の実施形態では、抗体-ビーズ複合体は、50~200mM NaCl、0~50mM KCl、および0~10%グリセロールを補充したGoodの緩衝液(PMID 5942950)に貯蔵することができる。アジド(0.2%)を、汚染を緩和するために緩衝液に含めることができる。抗体との結合後、ビーズは緩衝液によって3回洗浄され、4°Cで貯蔵される。隔月のアリコートを採取し、比活性について試験し、貯蔵緩衝液が汚染されていないことを確実にするために時間ゼロ対照と比較することができる。この試験を使用して、官能化ビーズが、シールされた試薬カートリッジ内で長期間の貯蔵時間にわたって90%を超える比活性を保持することを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、磁性ビーズは、Dynabead(登録商標)MyONE(登録商標)T1ビーズ(サイズ1μm)であり、全血中でのインキュベーション中に拡散してよく混合するのに十分小さいサイズを有するが、非特異的凝集を回避するのに十分大きい。
【0111】
自動アッセイシステム
図5は、自動分析システム500、例えば、完全自動システムの一例の概略図である。システム500は、本明細書に記載の技法を使用して流体試料から標的物質を単離、捕捉、および/または抽出するアッセイを実行するように構成することができる。アッセイは、アッセイを行う際の使いやすさを低減する、オペレータによる介入を最小限にするか、またはまったく行わずに行うことができる。システム500はまた、手動の試料処理における変動性に起因する誤差の可能性を低減することによってアッセイの再現性を改善するために使用することができる。
【0112】
システム500は、ディスプレイ510と、ハウジング520と、ハウジング520内の区画530とを含む。いくつかの実施態様では、システムは、試料流体、例えば血液と磁性ビーズとが混合され、特定の試料流体に必要に応じて加温または冷却されるインキュベーションチャンバを含む。そのようなインキュベーションチャンバは、ハウジング内またはハウジングの外側にあり得る。インキュベーションチャンバがハウジング内にある場合、試料流体は、例えばプラスチックまたはゴムチューブなどの流体導管を通じて、試料流体容器(例えば、試験管、バイアル、またはバキュテナ)からハウジング内のインキュベーションチャンバ内の試料流体リザーバに流すことができ、そこで磁性ビーズを穏やかな動きで加えて混合することができ、試料流体を必要に応じて加熱または冷却することができる。
【0113】
区画530は、流体試料から標的物質を単離、捕捉、および/または抽出するための自動アッセイを実行するために使用される構成要素を囲む。例えば、区画530は、試験カートリッジ532、試薬カートリッジ534、試料チューブ536、チューブラック538、撮像対物レンズ542、および収集デバイス544を囲む。試験カートリッジ532は、撮像および分析に使用される対物レンズ542に対する試験カートリッジ532の配置を調整するために、1つまたは複数の磁石および他の電子部品を収容する並進ステージ546の上に配置される。試薬カートリッジ534は、カートリッジ蓋548によってシールまたは覆われている。いくつかの実施形態では、試験カートリッジ532は、図3に示すカートリッジ300であり、試薬カートリッジ534は、図4Aおよび図4Bに示すカートリッジ400である。
【0114】
システム500は、試験カートリッジ532を使用して単離および/または捕捉された標的物質の画像を捕捉するための撮像顕微鏡(図5には示されていない)を含む。顕微鏡は、対物レンズ542を介して試験カートリッジ532の流体チャンバの画像を収集する。顕微鏡は、著しい人間の介入なしに計算デバイスによって自動的に操作することができる。いくつかの実施形態では、顕微鏡は、相手先商標製品製造会社(OEM)の顕微鏡構成要素を使用する特注の撮像デバイスである。そのような実施形態では、コンピューティングデバイスは、顕微鏡製造業者のソフトウェア開発キット(SDK)を、アッセイ動作中に並進ステージ546の制御を提供するカスタムコードと統合するソフトウェアを作動させることができる。例えば、カスタムコードは、MATLAB(登録商標)上で開発することができ、あるいはC/C#などの適切な目的指向プログラミング言語でコード化することができる。
【0115】
試験カートリッジ532は、並進ステージ546の上に配置され、カートリッジハウジングの上の単純なボール戻り止めおよび/またはラッチドアなどの様々な機械的締結具によって定位置に固定することができる。カートリッジ装填中の精密な位置決めは必要ではないが、細胞計数のための試験カートリッジ532内のマイクロウェルチップの走査中および走査後に試験カートリッジ532の位置合わせを達成することができる。このステップでは、マイクロウェルチップ内の既知の相対位置を有するいくつかのウェルの実際の「x」および「y」位置を、顕微鏡による走査中に得られる画像から決定することができ、位置較正がもたらされる。試薬カートリッジ534の配置も同様に実現することができる。例えば、試薬カートリッジ534のリザーバは、漏れを防止するために使用されるパンチスルーシリコーン層の上方にあり得る。
【0116】
試験カートリッジ532は、ホルダ552からの試料流体ならびに試薬カートリッジ534からの磁石ビーズ溶液および試薬溶液を受け取るための流体入口を有する。試験カートリッジ532はまた、本明細書に記載のように、流れを方向付けるためにセレクタを作動させるための空気圧入力(図示せず)、ならびにマイクロウェルチップおよび多孔性チップからの出口、ならびに多孔性チップ112Aからマイクロウェルチップ112Bへの流れを制御するための別の空気圧アクセス(図示せず)を含む。別個の真空チャネル(図示せず)が、試薬カートリッジ534からシステムを通して、選択された試薬を引き出す。例えば、真空と空気圧の両方を生成することができる小型のダイアフラムポンプ(図示せず)を使用して、試薬カートリッジ534から試薬を抽出する。
【0117】
システム500は、コンピュータ制御バルブマトリックス(図示せず)と、図1Aに示す流体制御デバイス130などのポンプとを組み込む。バルブマトリックスは、試薬カートリッジ534内の各試薬リザーバの下流に接続する小さな流体弁(the LeeCompany、コネティカット州エセックス)から構成することができる。流体制御バルブは、試薬カートリッジ534内のリザーバの上流の空気圧バルブとすることができる。
【0118】
本明細書に記載されるように、試料流体は、試験カートリッジ532の内部の磁性ビーズ溶液とインキュベートすることができる。混合を促進するために、並進ステージ546は、インキュベーション中に例えば振動的に水平に移動するようにプログラムすることができる。試験カートリッジ532のハウジング内の磁石、例えば電磁石または永久磁石は、無視できるヒステリシスを有する低損失の高周波フェライトコアから構成することができる。磁石の銅巻線は、例えばペルチェ冷却ブロック内に浸漬することによって冷却することができる。この構造は、現在使用されている永久磁石を置き換えるのに必要な大きな磁力を発生させることができるコンパクトな電磁石アセンブリ形状を可能にする。
【0119】
収集デバイス544は、本明細書に記載のマイクロウェルチップのマイクロウェルに捕捉された標的物質を抽出するために使用される。いくつかの実施形態では、収集デバイス544は、ポンプ、例えば高精度ピストンポンプ、例えば故障なしに500万サイクルを超えることができるピストンポンプに接続されたマイクロピペットである。ピストンポンプは、小容量の液体、例えばマイクロリットル以下の容量でマイクロピペット先端部を通して細胞を押し引きすることができる。ピストンポンプを三方弁に接続して、洗浄試薬をチップに押し込んで自動的にすすぐことができる。マイクロピペット先端部は、細胞抽出のためにマイクロピペットを精密な高さまで下降させることができる垂直小型リニアアクチュエータに取り付けることができる。いくつかの実施形態では、マイクロピペット先端部のx-y座標は、絶対基準座標系として固定され、並進ステージ546を移動させて、固定されたマイクロピペット先端部の位置決めに対する試験カートリッジ532の位置決めを調整することができる。マイクロピペットを通して収集された標的物質は、下流の分析、例えばPCRのために、チューブラック538に配置されたチューブに導入することができる。
【0120】
典型的なアッセイ動作中、オペレータは、最初に試料チューブ536をホルダ552に取り付ける。ホルダ552は、配管を通って試験カートリッジ532の流体回路に試料チューブ536内の流体試料を輸送するために使用される空気圧チューブシステムに取り付けられる。オペレータは、ディスプレイ510上に提示されたインターフェースにアクセスして、例えば、実行されるアッセイの種類、システム100によって分析される標的物質、および/または試料流体から抽出する標的物質の数を指定する。いくつかの実施形態において、システム500が異なる標的物質について異なる種類のアッセイを行うことができる場合、オペレータは、インターフェースを使用して、異なる種類のアッセイの中から特定のアッセイを行うための操作を選択することができる。次いで、受信したユーザ選択を使用して、本明細書に記載のようにアッセイパラメータを指定するように、システム500のコンピューティングデバイスを構成する。
【0121】
図6は、本明細書に記載のシステムを使用して細胞を捕捉するプロセス600の一例のフローチャートである。簡潔には、プロセス600は、標的物質を含む試料流体を流体リザーバから使い捨てカートリッジのチャンバに導入する動作(610)、試薬リザーバから使い捨てカートリッジのチャンバに1つまたは複数の試薬を導入する動作(620)、カートリッジに導入された試料流体および1つまたは複数の試薬をインキュベートする動作(630)、カートリッジの下に調整可能に配置された磁石構成要素を使用してチャンバに可変磁力を印加する動作(640)、試料流体にカートリッジの多孔性表面上を通過させる動作(650)、およびカートリッジに対する磁石構成要素の位置、磁場強度、または両方を調整する動作(660)を含むことができる。
【0122】
より詳細には、プロセス600は、標的物質を含む試料流体を流体リザーバから使い捨てカートリッジのチャンバに導入する動作(610)を含むことができる。例えば、図1Aに示すように、標的物質を含む試料流体は、流体制御デバイス130を使用して試料チューブ132からマイクロ流体デバイス110のチャンバに導入することができる。チャンバは、多孔性チップ112Aの流体チャンバ114(図1Bに示す)またはマイクロウェルチップ112Bのマイクロ流体チャンバ124(図1Cに示す)であり得る。
【0123】
プロセス600は、試薬リザーバから使い捨てカートリッジのチャンバに1つまたは複数の試薬を導入すること(620)を含むことができる。例えば、図1Aに示すように、流体制御デバイス130を使用して、試薬カートリッジ134の試薬リザーバからマイクロ流体デバイス110のチャンバに1つまたは複数の試薬を導入することができる。チャンバは、マイクロウェルチップ112Bのマイクロ流体チャンバ124(図1Cに示す)であり得る。
【0124】
プロセス600は、カートリッジに導入された試料流体および1つまたは複数の試薬をインキュベートすること(630)を含むことができる。例えば、本明細書で論じるように、試料流体および試薬がマイクロ流体デバイス110に導入されると、混合物は、マイクロ流体デバイス110を使用して実行されているアッセイの種類によって指定される時間にわたってインキュベートすることができる。
【0125】
プロセス600は、カートリッジの下に調整可能に配置された磁石構成要素を使用してチャンバに可変磁力を印加すること(640)を含むことができる。例えば、図1Aに示すように、マイクロ流体デバイス110の下に調整可能に配置された磁石構成要素144を使用して、マイクロ流体デバイス110の下に可変磁力を加えることができる。
【0126】
プロセス600は、試料流体にカートリッジの多孔性表面上を通過させること(650)を含むことができる。例えば、図1Aに示すように、流体制御デバイス130を使用して、マイクロ流体デバイス110の流体回路を通して流動流体を導入し、試料流体に多孔性チップ112Aの多孔性表面118上を通過させることができる。図1Bに示すように、流体制御デバイス130によって適用される流量は、非磁性物質、例えば非標的物質104を多孔性表面118の上でそこから外方に移動させるのに十分であり得るが、磁性標的物質、例えば標的物質102を多孔性表面118から外方に除去するのに十分ではないものとすることができ、標的物質は可変磁力によって細孔118A上に保持される。
【0127】
プロセス600は、カートリッジに対する磁石構成要素の位置、磁場強度、またはその両方を調整すること(660)を含むことができる。例えば、本明細書に記載されるように、磁石構成要素144によって加えられる可変磁力は、マイクロ流体デバイス110に対する磁石構成要素144の位置を調整することによって、磁石構成要素144の磁場強度を増減することによって、またはその両方によって調整することができる。
【0128】
実施例
本発明は、以下の実施例にさらに記載され、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定するものではない。
【0129】
実施例1-スパイク細胞アッセイ
既知量の標的物質をスパイクした血液試料から標的物質を捕捉および単離する際の性能を評価するために、システム100を用いて実験を行う。一般に、スパイク実験は、既知の量の流体にスパイクされた既知の数の細胞を用いて行われ、マイクロ流体デバイス110内において試料流体、例えば8mLの血液試料が生成、精製、捕捉、および抽出される。
【0130】
細胞のストック懸濁液を調製し、次いで、一定数の細胞に外挿する懸濁液の小画分を血液試料に注入する。例えば、絨毛癌細胞(JEG 3)をATCCから得て培養する。既知の数の細胞を、それらを1つずつ決定論的に吸引する(例えば、6個の細胞)か、または多数の細胞を含有する少量のストック懸濁液を使用することによって、血液試料にスパイクする。抗体被覆磁性ビーズのカクテルを、ビーズの群をEpCAM抗体で官能化し、別の群をHLA-G抗体で官能化することによって調製する。抗体は、既にビオチン化されているものとして購入することができ、ストレプトアビジン被覆ビーズにカップリングされる。細胞が捕捉されると、それらは、細胞が実際にそれらの表面上にこれらの抗原を有することを検証するために、蛍光タグ付きEpCAMおよびHLA-G抗体で染色される。細胞はまたHoechstによって染色されて、核DNAが検証される。
【0131】
6細胞の場合、各細胞を個別に血液試料に注入する。次いで、血液試料を抗体被覆ビーズとインキュベートし、初期単離のために多孔性チップに流し、次いで、本明細書に記載の単一細胞区画化のためにマイクロウェルチップに導入する。
【0132】
一般に、標的細胞の数が少ないため、多孔性チップ上の中間純度、すなわち多孔性チップ上の細胞の総数(検出された細胞およびWBC)に対する検出された細胞の比は通常低い。これが、次に細胞がウェルチップ上に移され、個々のウェルに分離される理由であり、これにより、システムまたはユーザは、他の細胞に触れることなく個々の細胞を選択および抽出(例えば、マイクロピペッティングを介して)することができ、100%の「最終的な純度」が得られる。
【0133】
この実施例では、モデル細胞はスパイクによって評価されるが、本明細書に記載のシステムおよび技法は、多種多様な試料中の多くの種類の希少細胞を検出するために使用することができる。例えば、膵臓癌、膀胱癌、前立腺癌および腎臓癌の患者から得られた試料、ならびに妊婦の血液試料からの胎児栄養膜細胞を用いてCTCを検出するために他の実験を行うことができる。
【0134】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の標的物質の捕捉および単離技法は、標準的な抗体親和性および特異性を有する市販の抗体を使用して使用することができる。他の実施態様では、システム特異的抗体、例えば非市販の抗体を開発して、抗体親和性および特異性に関して微調整された対照を提供して、本明細書に記載の粒子捕捉システムと共に使用した場合の信頼性を改善し、アッセイ操作を行う性能の変動を低減することができる。
【0135】
システム特異的抗体はまた、肺がんCTCの表面に過剰発現される3つの抗原、例えばEpCAM、EGFRおよびPD-L1と特異的に結合するように設計することができる。抗体カクテルを使用して様々なCTCを捕捉することができる。例えば、カクテルは、上皮(EpCAM)であるCTC、上皮から間葉への移行(EGFR)を経たCTC、およびアテゾリズマブなどのモノクローナル抗体ベースの薬物によって標的とされやすい腫瘍組織を表すCTCを捕捉するために使用され得る。
【0136】
実施例2-NSCLC患者の血液試料からのCTCカウント
本明細書に記載の粒子捕捉システムは、非小細胞肺癌(NSCLC)患者の血液試料からCTCを単離、捕捉、および/または分析するために使用される。実験は、ステージIV NSCLCと診断された患者からの試料を用いて行われる。患者の一部は癌治療を受けている場合がある。EpCAM、EGFRおよびビメンチン抗体のカクテルを使用して、磁性ビーズを官能化する。官能化された磁性ビーズを、収集した各血液試料とインキュベートした。
【0137】
直径1マイクロメートルのストレプトアビジンコーティングビーズをSigmaAldrichから入手し、Abcam(EGFR、ビメンチン)およびR&D(EpCAM)システムから得られるビオチン化抗体と結合させることができる。ビーズを、揺動または回転条件下で35~60分間の期間にわたって16mLに希釈した8mL血液試料とインキュベートする。次いで、混合物を2mL/分の流体流量で多孔性チップに流した。PBSおよび赤血球溶解緩衝液を用いて洗浄を行い、残っている赤血球を除去する。
【0138】
図7Aは、そのような実験からの可能性のある結果を示す。結果は、患者試料の一部において1つまたは複数のCTCが同定されることを示す。より多数のCTCが、典型的には、癌処置を受けていない患者からの患者試料において観察され、CTCカウントが全身腫瘍組織量と相関を有することを示している。
【0139】
図7Bは、CTCを有する患者血液試料の可能性のある蛍光画像を示す。CTCの蛍光同定のために、血液試料をサイトケラチンCKで染色する。CD45+白血球をCTC同定のための陰性対照として使用する。最初の単離中に多孔性チップ上でわずか数百個のWBC(1億のうち)しか捕捉されないように、高流量を使用して不要な細胞のほとんどすべてを洗い流す。その後、試料をマイクロウェルチップに導入して、各細胞を別個の区画に単離し、所望の単一細胞のみを抽出することを可能にする。この技法は、CTCの純度を約100%まで高める。
【0140】
他の実施形態
いくつかの実施形態を説明した。それにもかかわらず、本発明の思想および範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができることが理解されよう。さらに、図に示されている論理フローは、望ましい結果を達成するために、示されている特定の順序、または連続した順序を必要としない。さらに、記載されたフローから他のステップを提供することができ、またはステップを排除することができ、記載されたシステムに他の構成要素を追加または除去することができる。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求項の範囲内にある。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B-1-2B-2】
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B