(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-10
(45)【発行日】2024-05-20
(54)【発明の名称】海洋大型海藻による希土類元素および/またはリチウムの回収方法および回収システム
(51)【国際特許分類】
C22B 3/18 20060101AFI20240513BHJP
C22B 59/00 20060101ALI20240513BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20240513BHJP
C22B 3/02 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C22B3/18
C22B59/00
C22B26/12
C22B3/02
(21)【出願番号】P 2022514013
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(86)【国際出願番号】 PT2020000003
(87)【国際公開番号】W WO2021040551
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-08-31
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】522079012
【氏名又は名称】エヌナインヴィイー-ネイチャー,オーシャン アンド ヴァリュー,エルディーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ガリンホ ヘンリケ,ブルノ マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ダ クンハ ペレイラ、マリア エデュアルダ
(72)【発明者】
【氏名】ピント バスト ピンヘイロ トレス,ホセ マリア
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-212309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068420(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109161684(CN,A)
【文献】Jessica Jacinto,Removal and recovery of Critical Rare Elements from contaminated waters by living Gracilaria gracilis,Journal of Hazardous Materials,2017年10月27日,344(2018),531-538,https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304389417308105?via%3Dihub
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素(REE)および/またはリチウムの一次媒体(A)からの回収方法であって、
-REEおよび/またはリチウムの少なくとも1種の初期濃度(Ci)および6を超えるpHを示す、一次媒体(A)の初期水性媒体(AI)を第1の回収装置(1)に供給するステップ、
-作業期間の間に前記初期水性媒体(AI)と活発に相互作用できるように、生きている海洋大型海藻の少なくとも第1の量(QI)、及びさらなる少なくともその第2の量(QII)、を前記第1の回収装置(1)に供給するステップ、
-生きている海洋大型海藻の前記第1の量(QI)を、さらに、REEおよび/またはリチウムの一次媒体(A)の初期濃度に基づいて決定し、それによって、前記第1の回収装置(1)中の、その最大1m深さまでの分布を含み、前記初期水性媒体(AI)の上面に対し、8~12kg/m2が含まれる生きている海洋大型海藻の質量に従って、生きている海洋大型海藻の前記第1の量(QI)を供給するステップ、
-第1の水性体積(V1)を前記一次媒体(A)に供給し、第1の水性媒体(AI)を得て、それにより、前記第1の水性媒体(AI)が6を超え、9未満であるpHを示し、その前記量(QI、QII)に対して、最大で200g/Lの生きている海洋大型海藻の含有量を有し、前記第1の回収装置(1)で収集され得るように前記
第1の水性体積(V1)を決定するステップ、
-前記作業期間後に、前記それぞれの初期濃度(Ci)より低いREEおよび/またはリチウムの少なくとも1種の現在の濃度(CF)を示す作業水性媒体(AF)を得るステップ、
-生きている海洋大型海藻の前記量(QI、QII)の少なくとも一部を前記作業水性媒体(AF)から分離するステップ、
-生きている海洋大型海藻の前記分離した量(QI、QII)を処理し、前記生きている海洋大型海藻により前記作業水性媒体(AF)から以前に回収された前記それぞれの量に少なくとも類似のREEおよび/またはリチウムの量を含む二次媒体(B)を得るステップ、を含む方法。
【請求項2】
前記ステップを含む複数の作業サイクルを含み、それにより、各作業サイクルで、それぞれの初期濃度(Ci)の少なくとも50%に相当するREEおよび/またはリチウムの量が回収されること、および
生きている海洋大型海藻との相互作用の前に、
-前記一次媒体(A)中に存在する、少なくともREEおよび/またはリチウムを含む元素の前記初期濃度を測定するステップ、
-一次媒体(A)および初期水性媒体(AI)の少なくとも1つの初期塩分を測定するステップ、
-塩水の体積を含む第1の水性体積(V1)を、前記一次媒体(A)に供給し、第1の水性媒体(AI)を得て、それにより、その前記量(QI、QII)に対して、第1の水性媒体(AI)が最大で40g/Lの生きている海洋大型海藻の含有量を有し、前記
第1の水性体積(V1)を決定するステップ、および前記作業期間中に、少なくとも前記作業水性媒体(AF)を得るまで、前記第1の回収装置(1)で収集された水性媒体のREEおよび/またはリチウムの少なくとも1種の濃度を測定するステップ、
の少なくとも1つの前記ステップをさらに含むこと、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
-少なくとも前記一次媒体(A)が固体またはスラッジの形態で最初に供給される場合には、第1の水性体積(V1)を前記一次媒体(A)に添加して、前記初期水性媒体(AI)を得るステップ、
-前記一次媒体(A)が最初に水銀を含むスラッジの形態である場合には、最大12時間にわたり少なくとも100℃、および最高で400℃の温度に晒すステップ、
-前記一次媒体(A)が最初に固体状態またはスラッジである場合には、前記一次媒体(A)に、超純水、水、2%の硫酸アンモニウム、2%の酢酸アンモニウム、2%の二リン酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム1モル/L、2%の硝酸で酸性化した水および10%の硝酸で酸性化した水、の少なくとも1種を供給するステップ、
-第2の水性体積(V2)を前記初期水性媒体(AI)に供給し、
前記初期水性媒体(AI)が、5~40
mg/Lの塩分を含み、それにより、前記第1と第2の水性体積(V1、V2)の少なくとも1種が、
・第1の回収装置(1)により前の作業サイクルで処理された第2の水性媒体(AII)の再使用を可能とするように、第1の回収装置(1)とのオプションの流体接続により設けられた第2の回収装置(2)、
・生きている海洋大型海藻の量(Q)の、前記第1の回収装置(1)への供給のために、前記第1の回収装置(1)とのオプションの流体接続(31)により設けられた供給装置(3)、の少なくとも1つから供給されるステップ、
の少なくとも1つをさらに含むこと、
および、
-前記作業水性媒体(AF)を、前記第1の回収装置(1)から生きている海洋大型海藻の前記量(QI、QII)の少なくとも一部と一緒に放出し、これら、ならびにREEおよび/またはリチウムを、前記第1の回収装置(1)からの生きている海洋大型海藻の前記量(QI、QII)から分離するステップ、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
-前記海洋大型海藻:褐藻植物、紅藻植物、緑藻植物の少なくとも1つから少なくとも1つの種を選択するステップ、
-前記第1の回収装置(1)に供給される生きている海洋大型海藻の第1の量(QI)を、さらに、前記初期水性媒体(AI)の体積(VA)のREEおよび/またはリチウムならびに塩分の濃度の少なくとも1つに基づいて決定し、それにより、生きている海洋大型海藻の前記第1の量(QI)が少なくとも前記一次媒体(A)の前記体積(VA)に対して、または他の水性体積とのその合計に対して決定され、それにより、海洋大型海藻の前記第1の量(QI)が、さらに、前記一次媒体(A)のREEおよび/またはリチウムの初期濃度(Ci)に基づいて決定され、それによって、生きている海洋大型海藻の前記第1の量(QI)が、
・前記初期水性媒体(AI)の前記体積(VA)に対して、5~20kg/m3が含まれる生きている海洋大型海藻の質量、
に従って供給されるステップ、
の少なくとも1つを含むこと、を特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
一次媒体(A)から希土類元素(REE)および/またはリチウムを含む元素の回収のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法を実施するためのシステムであって、
-水性媒体(A)の体積(VA)を、第1の接続(11)を介して収集し、生きている海洋大型海藻の量(QI、QII)とのその相互作用をもたらし、流体の前記体積を、第2の接続(12)を介して放出できるように適合された第1の回収装置(1)、
-生きている海洋大型海藻の量の、供給装置(3)から前記第1の回収装置(1)への供給手段、
-それからの放出流体の収集、およびそこへの流体流の供給、
の少なくとも1つを実施できるように、前記第1の回収装置(1)に流体接続して設けられた追加の第2の回収装置(2)、
-前記第1の回収装置(1)が最大1.0mの水性媒体の収集のための有用な深さを有し、
-生きている海洋大型海藻を
前記第1の回収装置(1)に供給し、それからも大型海藻を回収できるように適合された、前記第1の回収装置(1)とのオプションの流体接続で設けられた少なくとも1つの供給装置(3)、
-2つの形態の1つ、REEを含む溶液の形態、またはREEを含む灰分または残炭の形態を含む、生きている海洋大型海藻の前記量(QI、QII)からの二次媒体(B)の調製手段、
-大型海藻の回収、および前記海洋大型海藻からの第2の媒体(B)の前記形態の少なくとも1つの調製のための、さらに1つの回収装置、
を提供することを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、固体媒体として、スラッジとして、または、例えば、産業廃水もしくは水流の一部などの水性媒体として利用可能な所与の一次媒体から、および特定の種類の藻類、特に、特定の生きている海洋大型海藻の使用に基づいて、希土類元素(REE)および/またはリチウム、および任意選択の、例えば、潜在的有害元素(PTE)などの他の元素の回収方法および回収システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
新規技術による種々の用途のために、いくつかのREEに対する次第に増加する需要、抽出するのに利用可能な量としてのそれらの発生源の相対的な地理的制約、ならびに、産業工程の排出物中のそれらの存在に関連する抽出工程に起因する環境影響、および潜在的毒性学的影響により、一般的には水性媒体からの、および特に産業廃水からのREEの回収の可能性に対する関心が次第に高まってきている。
【0003】
さらに、前記REEに加えて、リチウムもまた、技術的および経済的関心が高まってくると考えられており、この金属は、海洋及び産業廃水両方の塩水媒体中で頻繁に発見することができる。
【0004】
従って、多くの塩水媒体が経済的価値のある元素の回収のための機会を提供し、このような回収がそれ自体環境に影響をもたらすことなく達成できることがさらに重要である。
【0005】
さらに、産業廃水の処理は、現在、いくつかの潜在的有害元素の除去の必要性を含む、前記排出物の最終廃棄に関して適用可能な規制のために、多くの産業にとって問題となっている。
【0006】
この点に関し、水性媒体からの希土類元素の分離のために、藻類および微生物の使用について同様に言及している先行技術による既知のいくつかの解決策が存在する。
【0007】
特開平01-015133(JPS6415133(A))は、金色、銀および白金などの貴金属の回収のための緑藻または褐藻などの藻類のカプセル化について開示している。特に、前記藻類は、50メッシュを通過できる微粒子に粉砕される。
特開平2-83093(A)は、前記産業廃水からのCu、Niまたは類似金属などの重金属の吸着のための単細胞クラミドモナス属の緑藻類を使用した産業廃水の精製方法を開示している。
特開平6-212309(A)は、希土類元素のイオン溶液に添加でき、元素の吸着が、3~4.5の間のpHで最大となる、両方とも微細藻類であるスピルリナまたはクロレラによる選択的吸着の使用に基づくREEの分離方法を開示している。
特開平9-98773(A)は、メチロバクテリウム属(methylobacterium)で、REEを蓄積できる新規微生物を開示している。
特開2013-1964(A)は、希土類元素を回収する別の方法を開示し、この場合、鉄還元細菌、シュワネラ・アルガを使用するのが好ましい。
EP3008219B1は、希土類元素の1種のスカンジウムを分離する方法を開示している。
特開2017-8355(A)は、微生物をベースにした別のREE回収方法を開示し、特開2017-61739(A)は、セネデスムス属の緑藻を使用する方法を開示している。
EP0599711A1は、例えば、チノリモなどの光合成微生物の生細胞による、汚染物質、特に、金属および/または放射性ヌクレオチド(radionucleotide)を含む液体排出物の処理装置を開示している。
さらに、文献、Jacinto J.,Henriques B.,et al,“Removal and recovery of Critical Rare Earth elements from contaminated waters by living Gracilaria gracilis”は、液体排出物からの希土類元素(REE)の回収でグラシラリア・グラシリスの使用について考察している。しかし、この文献は、産業プロセスフレームワーク中で、およびこのような工程および関連システムの操作に適合するいくつかの因子およびパラメーターを考慮して、水性媒体を処理する最適条件を開示していない。
【0008】
ES2251286A1は、栄養素を吸収および再利用でき、および/または重金属を固定/捕捉でき、銅および亜鉛の濃度を特異的に参照できる、アミミドロ属またはシオグサ属の大型緑藻を含む残留水の処理システムを開示している。
【0009】
DE4321089A1には、重金属で汚染された有害媒体、水、スラッジ、堆積物、または汚染された土壌からの、藻類の使用による重金属の選択的汚染除去のための方法が開示され、それにより、海洋大型海藻から得られた、生きているまたは失活したバイオマスが有害媒体と接触させて処理および配置される。
【0010】
先行技術文献のいずれも、特に産業による水性排出物からのREEおよび/またはリチウムの回収のための、生きている大型海藻の種類、量およびさらなる最適作業パラメーターを開示していない。これらの観点は、特に大型海藻に基づく、水性媒体からのREEおよび/またはリチウムの回収方法の工業化のために極めて重要である。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、一次媒体、特に、固体、液体およびスラッジ様排出物を含む産業工程からの残留物に付随する水性媒体、または例えば、ダム、水路、海岸または外洋などの帯水層に付随する水性媒体から希土類元素(REE)および/またはリチウムの効率的で規模拡大可能な回収方法を提供することである。
【0012】
上述の目的は、請求項1に記載の回収方法により本発明に従って達成される。
特に、上述の目的は、任意選択で、固体、半固体または液体媒体として利用可能で、例えば、白金族元素、潜在的有害元素(PTE)などの他の元素より最終的に高い希土類元素および/またはリチウムの初期濃度を示し、この水性媒体に対して少なくとも第1の量の生きている海洋大型海藻を供給する、一次媒体から得られる水性媒体の初期体積を含む回収方法により解決される。
【0013】
例えば、収集装置中で密閉軌道循環(closed trajectory circulation)を誘導する回転式ショベル型などの水性媒体の強制循環手段の支援、および/またはさらに大気ガスまたは二酸化炭素などの一定ガス量の前記水性媒体中への注入手段の支援などにより、生きている海洋大型海藻の前記量が前記水性媒体と活発に相互作用できるのが好ましい。
【0014】
前記工程は、目的の元素の第1の回収装置の段階の作業期間の間に、バッチ処理型の連続サイクルで実施できる。
前記工程は、生きている海洋大型海藻の量、および検討期間中の大型海藻の増殖速度に対応した、その一部の定期的な、例えば、毎日の除去に基づいて実施できる。
前記工程は、前記水性媒体を収集するための、それぞれの第1および第2の量の生きている海洋大型海藻に暴露するそれぞれのステップおよびその後に、前記水性媒体が、例えば、自由天然水路に供給され得るステップを含む、少なくとも第1および第2の連続的回収装置を含み得る。
前記工程は、閉回路中の複数の作業サイクルにおける所与の量の塩水、例えば、海水の再循環を含み得る。
前記工程は、作業期間を含むことができ、それにより、
-前記作業期間が96時間未満、好ましくは72時間未満である場合が好ましいことがわかる、初期水性媒体(A
I
)の体積、および生きている海洋大型海藻の量(Q)の少なくとも1つに基づいて演繹的に行う方法、
-下記の少なくとも1つに基づいて、帰納的に行う方法、
・それぞれの初期濃度(C
i
)のレベルに対して、少なくとも大略で、REEおよび/またはリチウムの少なくとも1種の濃度レベルの予め定めたオーダーの量の減少、
・それぞれの初期濃度レベルより低い、REEおよび/またはリチウムの少なくとも予め設定された濃度レベル、
-REEおよび/またはリチウム、任意選択で、さらなる複数の他の元素の濃度の定期的測定に基づく方法、
の少なくとも1つに従って生きている海洋大型海藻の前記量(Q
I
)の供給に対して前記作業期間が決定される。
前記工程は、いくつかの作業サイクルを含むことができ、それによって、前記作業サイクルの少なくともいくつかで、
-前記水性媒体(A
I
、A
II
)の生きている海洋大型海藻の前記第1の量(Q
I
)の、少なくとも一部、好ましくは、少なくとも大部分を除去するステップ、
-前記第1と第2の回収装置(1、2)の少なくとも1つで、生きている海洋大型海藻の第2の量(Q
II
)を前記水性媒体(A
I
、A
II
)に供給し、それにより、生きている海洋大型海藻の前記第2の量(Q
II
)が生きている海洋大型海藻の前記第1の量(Q
I
)の決定のために考慮された少なくとも1つの因子に従って決定されるステップ、
-前記作業期間後、および前記第1の回収装置(1)からの前記作業水性媒体(A
F
)の放出後に、前記第1の回収装置(1)の生きている海洋大型海藻の前記量(Q
I
、Q
II
)の少なくとも一部を維持するステップ、
-任意選択で、前記第1の回収装置(1)から生きている海洋大型海藻の前記量(Q
I
、Q
II
)を放出するステップ、
の少なくとも1つをさらに含む。
前記工程は、いくつかの作業サイクルを含むことができ、それによって、前記作業サイクルの少なくともいくつかで、
-周期的に、好ましくは、少なくとも1日1回、前記水性媒体(A
I
、A
II
)から生きている海洋大型海藻の前記第1の量(Q
I
)の一部を除去し、好ましくは、生きている海洋大型海藻の前記第1の量(Q
I
)の増殖速度に対応する一部、例えば、2~50%、好ましくは5~40%が含まれる一部を除去し、それにより、好ましくは、前記作業サイクルの開始時の大型海藻の前記量の少なくともほとんどを回復するステップ、
-生きている海洋大型海藻の、好ましくは、前記除去された生きている海洋大型海藻の一部に対応する第2の量(Q
II
)を、好ましくは、生きている海洋大型海藻の供給装置から、定期的に供給するステップ、
の少なくとも1つをさらに含む。
前記工程は、いくつかの作業サイクルを含むことができ、それによって、各作業サイクルの少なくとも一部の間に、
-前記生きている海洋大型海藻と前記水性媒体(A
I
、A
II
)との前記活発な相互作用を、例えば、
・回転式ショベルなどの形態の液圧駆動手段、および
・植物プランクトンなどの微細藻類の増殖を最小限にするために、閉回路中で前記水性媒体(A
I
、A
II
)中へのガス流の、好ましくは、通常の循環方向での注入手段、
の少なくとも1つの手段により可能とするステップ、
-生きている海洋大型海藻の前記量(Q
I
、Q
II
)に一定量の栄養素を供給するステップ、
-大気および二酸化炭素の少なくとも1つを含むガス流を、
・前記第1と第2の回収装置(1、2)の少なくとも1つを含む前記水性媒体(A
I
、A
II
)、
・前記供給装置(3)、
の少なくとも1つに供給するステップ、
-前記第1の回収装置(1)に対して曝気および光放射を可能にし、
・例えば、外部光度に応じて、夜間の以前に定めた照明レベルを確保する自然光および/または人工光、
・水性媒体の温度変化を最小化するために、例えば、外部温度に応じた、外部環境および/または内部環境、
の作業入力の少なくとも1つへ曝露するステップ、
-ガス流の前記水性媒体(A
I
、A
II
)に対する運動と供給を含む、前記作業入力のそれぞれ1つを調節するステップ、
の少なくとも1つをさらに含む。
前記工程は、二次媒体(B)を得るために、前記作業期間および前記作業水性媒体(AF)からのその分離後に、生きている海洋大型海藻の前記量(Q
I
、Q
II
)を処理するステップを含むことができ、それによって、前記ステップは、
-海洋大型海藻の前記量(Q)に対し2%または10%の酸剤の少なくとも1つを含む溶解剤を供給し、それにより、第1の溶液(B1)を得るステップ、
-任意選択で、大気圧および大気温度より高い周囲圧力および周囲温度、好ましくは、少なくとも1200psiの圧力および少なくとも170℃の温度に供するステップ、
-前記第1の溶液(B1)に、予め決定した量の、好ましくは、分離される標的元素との化学的親和性を有する基で表面を官能化した磁性ナノ材料(NM)を添加し、作業期間の間に前記溶液との相互作用を可能とし、および好ましくは、その後、前記溶液を磁気作用(AM)に晒し、前記第1の溶液(B1)から、少なくともそれぞれの標的元素、例えば、REEおよび/またはリチウムではない元素などの元素を分離し、それにより、REEおよび/またはリチウム(B2)の少なくとも1種を主に含み、前記第1の溶液(B1)から除去された標的元素を欠く溶液の形態で、前記二次媒体(B)を得るステップ、
-任意選択で、前記第1の溶液(B1)から、鉛、水銀、クロム、ニッケル、銅、カドミウムなどの少なくとも1種を含む、PTEを分離するステップ、
-任意選択で、REEおよび/またはリチウムの溶液を得た後で、前記二次媒体(B)が固体として得られるように、REEおよび/またはリチウムを吸着するステップ、
-任意選択で、REEおよび/またはリチウムの少なくとも1種を含む、前記二次媒体(B)を得るために、前記第1の溶液(B1)からREEを分離するステップ、
を含む。
さらに、生きている海洋大型海藻の前記量(Q
I
、Q
II
)を処理する前記ステップは、前記作業期間および前記作業水性媒体(AF)からのその分離後に、二次媒体(B)を得るために、
-任意選択で、海洋大型海藻の前記量(QI、QII)を乾燥するステップ、
-REEおよび/またはリチウムの少なくとも1種を含む、灰分または残炭を得るために、海洋大型海藻の前記量(QI、QII)の燃焼または熱分解によるものを含む、灰化ステップ、
を含むことができる。
本発明による前記工程は、
-水産養殖装置中に、好ましくは、供給装置(3)へのオプションの流体接続を備えた、海洋大型海藻の水産養殖槽を用意し、それにより、海洋大型海藻の前記水産養殖槽が、海洋大型海藻群:褐藻植物、紅藻植物、緑藻植物の少なくとも1つの種を含むステップ、
-任意選択で、海洋大型海藻の前記水産養殖槽の前記水性媒体の塩分を、随時測定および調節するステップ、
をさらに含むことができる。
【0015】
関連する目的は、その作業期間および水性媒体からの分離後に、前記大型海藻上の前記希土類元素および/またはリチウムの分離を含む方法を提供することである。
【0016】
この目的は、大型海藻により回収されたREEおよび/またはリチウムの量を含む第1の溶液を得るために、作業期間の終わりに前記水性媒体からその分離後に、生きている海洋大型海藻を溶解剤に暴露することにより、本発明に従って解決される。
【0017】
あるいは、REEおよび/またはリチウムの分離は、灰分または残炭として得られる、大型海藻により回収されたREEおよび/またはリチウムを得るために、大型海藻を灰化、燃焼または熱分解することにより実現できる。
【0018】
二次媒体中に得られたREEは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウムおよびイットリウム元素の内の少なくとも1種、好ましくは複数種を含み得る。
【0019】
以前に、生きている海洋大型海藻により塩水媒体から、例えば、それから供給された第1の溶液から回収された元素の分離が、REEおよび/またはリチウムに加えて、少なくとも1種の潜在的有害元素(PTE)、および白金族元素からの少なくとも1種の元素、例えば、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金などのなくとも1種をさらに含むのが好ましい。
【0020】
本発明の範囲、および現在通常認められている定義では、潜在的有害元素は、例えば、アンチモン、ヒ素、カドミウム、クロム、銅、鉛、水銀、ニッケル、セレン、テルル、タリウム、スズ、コバルト、マンガン、モリブデン、バナジウム、ストロンチウムおよび亜鉛などの一連の元素であると理解されるべきである。
【0021】
本発明に関連する1つの目的は、本発明により開示されるタイプの方法を実施するためのシステムであって、特に、塩水媒体の形で供給される一次媒体から、生きている海洋大型海藻による、希土類元素(REE)および/またはリチウムおよび潜在的有害元素(PTE)、および白金族元素を含む、任意選択のさらなる他の元素の回収を目標とする、使用されるべき最適量を含む、より良好な効率で使用される手段を備えた、構築の複雑さのより少なく、より小さい相対寸法の、特により小さい面積しか必要としない、システムを提供することである。
【0022】
上述の目的は、請求項5に記載の手段により本発明に従って解決され、好ましい実施形態は、従属請求項で開示される。
前記システムは、第1の回収装置(1)を備えることができ、それにより少なくとも前記第1の回収装置(1)が、曝気および光放射に曝露され、任意選択で、前記第1の回収装置(1)の少なくとも水平方向の延長部で、少なくとも部分的に光放射に透過性である表面で覆われ、好ましくは、その延長部分の少なくとも一部に沿って同様に曝気および光照射に曝露された少なくとも1つの他の封じ込め面を更に有する、少なくとも1つの自由流体表面を備える。
さらに、少なくとも前記第1の回収装置(1)、好ましくは、前記第2の回収装置(2)が同様に、
-最大1.5m、好ましくは最大1.0m、特に好ましくは最大0,8mの水性媒体の収集のための有用な深さ、
-閉回路の全体形状、例えば、2つの横断循環伸長部により連結された2つの長手方向延長部を含む細長い矩形または楕円形型の全体形状、
-前記回路に沿った方向、深さ方向の少なくとも1つの方向で、前記水性媒体(AI、AF)の循環を生成できるように設けられた、例えば、回転式ショベル形態の液圧駆動手段(14)、
-大気および二酸化炭素の少なくとも1つを、前記水性媒体(AI、AF)に供給できるように、設けられたガス供給手段(15)、
-生きている海洋大型海藻の量(Q)に栄養素を供給できるように設けられた栄養素供給手段(16)、
の少なくとも1つを提供する。
前記システムは、
-少なくとも1つのその乾燥工程、好ましくは、さらに、その灰化工程のために、大型海藻の量を収集できるように適合された大型海藻収集装置、
-大型海藻の乾燥を可能にできるように適合された装置、
-大型海藻の灰化、燃焼または熱分解を可能にできるように適合された装置、
の少なくとも1つをさらに含むことができる。
前記システムは、
-大型海藻収集装置、
-REEおよび/またはリチウムを含む第1の溶液を得るために、大型海藻収集装置に酸剤を供給する手段、
-大気圧および大気温度より高い圧力および温度の少なくとも1つ、好ましくは、少なくとも1200psiの圧力および少なくとも170℃の温度を前記大型海藻収集装置に提供するように適合された装置、
-好ましくは、標的元素との磁気相互作用のために、官能化ナノ材料の調製手段、
-少なくとも1種の整列方向に沿って配列され、前記大型海藻収集装置に対し磁気相互作用を与えることができる、少なくとも1つの、好ましくは複数の磁気素子を含む磁気装置、
の少なくとも1つを含む、REEおよび/またはリチウムの前記溶液調製手段を備えることができる。
本発明は、以降で本発明の好ましい実施形態および添付図に基づいて、より詳細に説明される。図は、簡略化した概略図で示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による工程、生きている海洋大型海藻による塩水媒体中に存在する元素の回収段階、および大型海藻からの元素の分離段階のフローチャートである。
【
図2】大型海藻からの元素の分離の第2段階の好ましい実施形態のフローチャートである。
【
図3】REEおよび/またはリチウムの一次媒体からの回収システムおよび工程の第1の実施形態の図である。
【
図4】初期水性媒体(A
I)と、生きている海洋大型海藻の量(Q)との間の相互作用を与えるように適合された第1の回収装置(1)の実施形態の図である。
【
図5】本発明によるシステムおよび工程の第2の実施形態の図である。
【
図6】本発明によるシステムおよび工程の第3の実施形態の図である。
【
図7】本発明によるシステムおよび工程の第4の実施形態の図である。
【
図8】本発明によるシステムおよび工程の第5の実施形態の図である。
【
図9】海洋大型海藻の溶解後の第1の溶液からの一部の元素の分離の実施形態の図である。
【
図10】水性媒体の塩分の関数としての、生きている海洋大型海藻の種々の種類による複数のREEの分離実験の結果のグラフである。
【
図11】用いた大型海藻の種類の関数としての、生きている海洋大型海藻の種々の種類による複数のREEの分離実験の結果のグラフである。
【
図12】大型海藻の種類および水性媒体中のリチウムの初期濃度の関数としての、生きている海洋大型海藻の種々の種類によるリチウムの分離実験の結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、例えば、産業廃水などの前記元素を含む塩水媒体からの、または天然帯水層の一部からの希土類元素(REE)および/またはリチウムを含む、特定の元素の回収のための本発明による工程の主要ステップを表す。
【0025】
前記ステップは、6を超えるpH、特に6を超え9未満のpHを有し、少なくとも部分的に流体で、REEおよび/またはリチウムの初期濃度(Ci)を含む複数の元素の初期濃度を示し、初期水性媒体(A)に生きている海洋大型海藻の少なくとも1種の量(Q)を供給する、初期塩水媒体(A)の使用に対応する。例えば、液圧などの流体循環手段の支援を受けて、前記生きている海洋大型海藻と前記水性媒体(A)との活発な相互作用が存在すると好都合である。
【0026】
実施した試験によると、作業期間後に、初期水性媒体(AI)から元素の一部を回収した生きている海洋大型海藻は、その結果として、それぞれの初期濃度(Ci)より低いREEおよび/またはリチウムの濃度(Cf)を示す作業水性媒体(AF)が生じることが立証される。
【0027】
前記作業期間は、生きている海洋大型海藻が、初期水性媒体(AI)中に初期に存在する、REEおよび/またはリチウム、最終的にはさらなる他の元素、例えば、潜在的有害元素(PTE)、および白金族の元素の少なくとも一部のほとんど、好ましくは、少なくとも70%を回収するのに十分な期間に相当し得る。
【0028】
前記作業期間は監視されるか、または前記元素の少なくとも一部の元素の初期濃度(Ci)に従って予め決定され、それにより、前記元素の少なくとも一部の最終濃度(Cf)が予め決定された値より小さいのが好ましい。
【0029】
例えば、鉛、水銀などのPTEの少なくとも最終濃度(Cf)、すなわち、前記作業期間の終わりの、または前記水性媒体の自由帯水層への放出の前の濃度が、産業廃水の公共利用の自由帯水層への放出に適用可能なそれぞれ最小環境法令遵守値よりも小さいのが好ましい。
生きている海洋大型海藻の量(Q)は、作業期間後に、作業水性媒体(AF)から分離される。この場合、前記水性媒体(A)は、公共利用の帯水層へ放出、または生きている海洋大型海藻との相互作用を含む第2の工程ステップに再循環できる。
【0030】
生きている海洋大型海藻の量(Q)は、例えば、PTEなどの回収した元素の少なくとも一部の分離ステップ、および産業的に再使用の可能性を有する、REEおよび/またはリチウムを含む特定の元素を主に含むか、またはそれのみを含む、特に
図2に示される二次媒体(B)に対応する、媒体を供給するステップの少なくとも1つを提供するために、本発明による工程の第2のステップ群に更に供され得る。
【0031】
この回収工程の第2のステップ群は、第1に、生きている海洋大型海藻の量の、その溶解のための酸剤への曝露を含み、その結果、水性媒体(A)から以前に回収された全ての元素を含む第1の溶液が得られる。
【0032】
任意選択で、第1の溶液(B1)は、周囲条件より高い少なくとも1種の圧力および温度を有する環境に曝露され得る。
【0033】
次のステップでは、好ましくは、除去されるべき標的元素に特定の化学親和性を有する基で表面を官能化された磁性ナノ材料が前記第1の溶液に添加される。
【0034】
この溶液は後で磁石の作用に曝露され、それにより、前記官能化ナノ材料に結合した標的元素を除去し、前に除去された他の元素より高い濃度のREEおよび/またはリチウムをもたらす第2の溶液が得られる。
【0035】
図3は、REEおよび/またはリチウム、好ましくは、例えば、PTE、および白金族からの元素などのさらに他の元素の一次媒体(A)からの回収システムおよび工程の好ましい実施形態を模式的に示す。前記一次媒体(A)は、例えば、地表水路、または産業工程からの残留物もしくは流出物などの自由帯水層の一部で、固体、液体またはスラッジの形態で利用可能であり得る。工程の第1の実施形態の場合では、前記残留物または流出物は、元の位置から、例えば、産業設備からインサイツで提供される処理システムまで輸送できる。あるいは、前記一次媒体(A)の量は、元の位置に対しエクスサイツの回収システムに輸送できる。
【0036】
一次媒体(A)が最初に比較的高濃度の、例えば、環境法令遵守値より高い濃度の水銀を含むスラッジの形態である場合には、工程は、それを少なくとも100℃、および最高で400℃の乾燥温度で、最大12時間、好ましくは最大6時間にわたり供することにより、一次媒体(A)を乾燥するステップを含めることができる。
【0037】
一次媒体(A)が最初に実質的に固体またはスラッジ媒体などの形態で供給される場合には、第1の水性体積を一次媒体(A)に添加し、水性の実質的に流体形態で、6を超えるpHを示す初期水性媒体(AI)を得て、回収システムの第1の回収装置(1)中で収集および処理できる第1のステップを含めることができる。
【0038】
前記一次媒体(A)が最初に固体またはスラッジ状態などで供給される場合には、本発明による工程は、前記一次媒体(A)に、超純水、水、2%の硫酸アンモニウム、2%の酢酸アンモニウム、2%の二リン酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム1モル/L、2%の硝酸で酸性化した水および10%の硝酸で酸性化した水、の少なくとも1種を供給することを含み得る。
【0039】
任意選択で、一次媒体(A)が最初に固体またはスラッジなどの形態で供給されるさらなる場合には、工程は、水性媒体の第1の体積(V1)、特に、塩水の体積を前記一次媒体(A)に添加し、初期水性媒体(AI)を得るステップを更に含めることができる。
【0040】
第2の水性体積(V2)の水、好ましくは塩水を前記初期水性媒体(AI)に加え、5~40、好ましくは10~35の塩分を含む水性体積(VA)を得ることができる。
【0041】
特に、回収工程は、複数の連続サイクルを含み、各サイクルは、特に、第1の回収装置(1)の収集体積に適合された量の一定量の初期水性媒体(AI)を供給するステップ、および例えば、第1の回収装置(1)とのオプションの流体接続(31)が設けられた供給装置(3)から生きている海洋大型海藻の量(QI)を供給するステップを含み、それにより、これらが初期水性媒体(AI)と、好ましくは活発な相互作用、すなわち、所与の作業期間(T1)の間、水性媒体(A)中での生きている海洋大型海藻の活発な循環により相互作用が可能となる。
【0042】
作業期間の終了後、工程は、REEおよび/またはリチウムの初期濃度(Ci)より小さいREEおよび/またはリチウムの最終濃度(Cf)を示す作業水性媒体(AF)の、第1の回収装置(1)から、例えば、水域または自由水路への放出、および第1の回収装置(1)中の生きている海洋大型海藻の前記量(QI)の少なくとも一部を保持し、それにより生きている海洋大型海藻により回収されたREEおよび/またはリチウムを含む第2の水性媒体(B)を生成することを含むことができる。
【0043】
あるいは、工程は、第2の水性媒体(B)の後での処理のために、第1の回収装置(1)からの生きている海洋大型海藻の前記量(QI)の放出、および第2の作業期間(T2)の間の第1の回収装置(1)での前記水性媒体(A)との相互作用のために、生きている海洋大型海藻の第2の量(QII)の供給を含むことができる。
【0044】
REEおよび/またはリチウムの初期濃度(Ci)の前記減少は、前記REEおよび/またはリチウムの少なくとも一部において、処理される前記水性媒体塩分、ならびに用いられる生きている海洋大型海藻の種類と量(QI)に応じて、50%超、好ましくは70%超であり得る。
【0045】
特に、
図4で観察されるように、前記第1の回収装置(1)は、通常の循環方向中に密閉流体循環経路を備えることができる。さらに、第1の回収装置(1)は、初期水性媒体(A
I)のフィーダー(11)および例えば、帯水層または海洋などの水域または自由水路と流体接続して設けられた第1の放出装置(12)を提供する。第1の回収装置(1)は、前記一次水媒体(A)処理の終了後の生きている海洋大型海藻を含む前記第2の水性媒体(B)の収集のために、収集容器と流体接続して設けられ得る第2の放出装置(13)を更に提供できる。
【0046】
前記第1の回収装置(1)は、最大1mの深さおよび前記放出装置の少なくとも1つの方向に傾斜した底部領域を有する太陽輻射に曝露された開放貯蔵槽として提供できる。
【0047】
生きている海洋大型海藻と水性媒体(A)との間の相互作用が、液圧駆動(14)、例えば、プロペラなどの形態の機械的手段、および/またはガス流、例えば、二酸化炭素流注入手段(15)を含む追加の手段による、動力学的エネルギーの供給が活発に起こる場合には、特に有利であると実証された。
【0048】
生きている海洋大型海藻の前記量(QI)は、初期水性媒体(AI)の量、前記一次媒体(A)に対し、またはそれから得られた前記初期水性媒体(AI)に対し、以前に測定されたREEおよび/またはリチウムの濃度、の少なくとも1つに従って、予め決定できる。
【0049】
発明者により実施されたいくつかの試験に基づいて、前記初期水性媒体(AI)の2g/L~25g/L、好ましくは、2.5g/L~20g/L、およびさらに好ましくは、3~15g/Lを含む生きている海洋大型海藻の量(QI)を使用することが、特に有利であるとして示された。
【0050】
図5は、本発明によるシステムと工程の実施形態であり、産業プロセスからのスラッジの形態の一次媒体(A)が供給される。この場合、一次媒体(A)の前記スラッジの量は、水性媒体(A
II)、例えば、水、または塩水の体積との混合物であり、第1の回収装置(1)に対し、初期水性媒体(A
I)を供給する。
【0051】
さらに、生きている海洋大型海藻の第1の量(QI)が更に供給され、例えば、前記生きている海洋大型海藻の水産養殖槽の一部であり得る供給装置(3)からオプションの流体接続(31)を介して、および高濃度のREEおよび/またはリチウムを含む水性媒体に前もって曝露されることなく、供給される。
【0052】
前記初期水性媒体(AI)の塩分およびpHは、第2の体積の、例えば、好ましくは海水などの塩水の水性媒体(AII)を加えることにより更に調節され得る。
【0053】
生きている海洋大型海藻によるREEおよび/またはリチウムの回収工程の変化は、塩分およびREE、リチウムおよびPTE、任意選択で、さらなる他の元素の少なくとも1種の濃度を含む一連のパラメーターの定期的測定により監視できる。
【0054】
図6は、第1の回収装置(1)中で、生きている海洋大型海藻の第1の量(Q
I)との相互作用の作業期間後に、初期水性媒体(A
I)が第2の水性媒体(A
II)としてここで第2の回収装置(2)に放出され、好ましくは、前記第1の回収装置(1)に生きている海洋大型海藻の前記量(Q
I)を保持する、実施形態である。
【0055】
生きている海洋大型海藻の前記第1の量(QI)は、大型海藻により回収されたREEおよび/またはリチウムおよびPTEを含む媒体を得るために、後で処理できる。
使用の初期段階での生きている海洋大型海藻の第2の量(QII)は、前記第2の水性媒体(AII)に添加でき、第2の作業期間の間に、その相互作用を促進できる。
この構成は、潜在的により短い全期間で、前記一次媒体(A)からREE、リチウムおよびPTEの少なくとも1種の第1および第2の回収レベルをもたらす好都合な結果になる。
【0056】
図7は、生きている海洋大型海藻の初期水性媒体(A
I)、量(Q
I)が供給され、所与の作業期間後に、第2の水性媒体(A
II)の体積が供給され、それにより、前記第2の水性媒体(A
II)は、好ましくは、海洋大型海藻の別の量(Q
I)を用いた第1の処理の前の目的であった媒体であるが、しかし、まだ、REEおよび/またはリチウムが比較的高濃度、および特に、PTEが比較的高濃度、例えば、排出物の自由水域への放出に許容されている規制最大値を超える濃度を示す、本発明による回収のシステムおよび工程の別の実施形態である。
【0057】
図8は、初期水性媒体(A
I)および生きている海洋大型海藻の第1の量(Q
I)が最初に第1の回収装置(1)に供給され、それにより、生きている海洋大型海藻の前記第1の量(Q
I)の一部(Q
p)が、その後、前記初期水性媒体(A
I)から定期的に除去され、特に、生きている海洋大型海藻の前記第1の前記第1の量(Q
I)に対応する部分が除去されている、本発明によるシステムおよび工程の好ましい実施形態である。
【0058】
生きている海洋大型海藻の第1の量(QI)の一部(Op)の前記回収が、少なくとも1日1回および1日6回以下で実施される場合が好ましい。
【0059】
別の好ましい実施形態では、第1の回収装置(1)中で5~50%、好ましくは3~40%の量の生きている海洋大型海藻を含む部分(Qp)が除去され、そのため、好ましくは、作業サイクルの開始時での生きている海洋大型海藻の量に少なくとも近い量を回復するのが好ましい。
【0060】
この工程では、第2の体積の水性媒体(AII)、または塩水を供給できる。
【0061】
好ましい実施形態では(示していない)、生きている海洋大型海藻の第2の量(QII)、好ましくは除去された生きている海洋大型海藻の一部(Qp)に相当する量を、好ましくは、第1の回収装置(1)への生きている海洋大型海藻の供給に適合された、収集装置(3)から定期的に供給できる。
【0062】
図9は、生きている海洋大型海藻の前記量(Q
I)により以前に回収された、REEおよび/またはリチウムを含む、元素の分離を基準にして第2の媒体(B
1)を供給する、好ましい実施形態のステップを模式的に示す。実際に、生きている海洋大型海藻は、異なる種類の最終用途を有する元素を含む、初期水性媒体(A
I)中に存在する複数の異なる元素を回収でき、従って、前記元素の少なくとも一部の分離を実施するのが有利である。
【0063】
特に、この実施形態は、REEおよび/またはリチウムの少なくとも1種、またはさらに、例えば、鉛、水銀などのPTEの少なくとも1種の元素の量の少なくとも大部分の分離を含み得る。
【0064】
特に、生きている海洋大型海藻の量(Q)に対する、酸剤、超純水の少なくとも1種を含む溶解剤を、任意選択で、大気圧および大気温度より高い圧力および温度、好ましくは、少なくとも1200Psiの圧力、および少なくとも170℃の温度の環境下で適用し、それにより、第1の溶液(B1)を得ることが本発明により想定される。
【0065】
さらに、前記第1の溶液(B1)に、予め決定した量の、好ましくは、分離される標的元素との化学的親和性を有する基で表面を官能化した磁性ナノ材料(NM)を添加し、作業期間の間に溶液との相互作用を可能とし、および好ましくは、その後、前記第1の溶液(B1)を磁気作用(AM)に晒し、例えば、REEおよび/またはリチウムではない元素などの少なくとも1種のそれぞれの標的元素を前記第1の溶液(B1)から分離し、それにより、REEおよび/またはリチウム、任意選択でその他のものを含み、前記第1の溶液(B1)から以前に分離した標的元素を欠く、第2の溶液(B2)を得ることが想定される。
【0066】
REEおよび/またはリチウムに加えて、本発明による工程は、第2の溶液(B2)中に存在する白金族の元素を含む他の元素の除去と分離を更に提供し、それにより、それらは、大部分の濃度を構成する元素となり得る。
【0067】
あるいは、第2の媒体(B2)は、大型海藻、その灰化、燃焼または熱分解物の乾燥量、およびそれから得られた灰分または残炭中に存在するREEおよび/またはリチウムを含むいくつかの元素の分離を基準にして供給され得る。
【0068】
図10および11は、塩水媒体からの特定の生きている海洋大型海藻によるREE属の異なる元素の回収効率を測定するために、本発明の発明者により考案され、実施された試験の結果を示す。
【0069】
前記一連の実験は、海洋大型海藻の下記の種のそれぞれ1種に対し実施された。アルバ・インテスティナリス(Ulva intestinalis)、フカス・スピラリス(Fucus spiralis)、フカス・ベシキュロサス(Fucus vesiculosus)、アルバ・ラクティューカ(Ulva lactuca)、グラシラリア種(Gracilaria sp.)およびオスムンデア・ピンナティフィダ(Osmundea pinnatifida)。海洋大型海藻の前記種のそれぞれ1種は、類似の濃度の次のREE:Ce、Dy、Eu、Gd、La、Nd、Pr、TbおよびYを含む水性媒体(AI)と相互作用した。
【0070】
図10で認められるように、前記初期水性媒体(A
I)の塩分は、これらの試験で考慮された海洋大型海藻の大半の種でREEの回収に影響を与える。特に、水性媒体(A
I)の塩分は、5~35を含むのが有利であることが明らかになった。
【0071】
初期水性媒体(AI)は、海洋の塩分、または海水などによる水産養殖の塩分などの場合に該当する、生きている海洋大型海藻の発生源の媒体の塩分と類似の塩分を示すときに、特に有利あるとして実証された。
【0072】
この点に関し、海洋大型海藻の発生源の水産養殖の塩分および前記初期水性媒体(AI)の塩分が、30~35である場合が、特に有利であるとして更に実証された。
【0073】
図11で観察できるように、海洋大型海藻アルバ・インテスティナリス、アルバ・ラクティューカおよびグラシラリア種は、より良好なREEの回収速度を示す。
【0074】
特に、REEおよび/またはリチウムの組み合わせた回収結果を改善するために、および/または所与のREEおよび/またはリチウムの優先的除去を所与の海洋大型海藻種により促進するために、好ましくは、一次媒体(A)中の濃度の第1の測定値に基づいて、前記生きている海洋大型海藻の少なくとも2つの異なる種の使用を決定できる。
生きている海洋大型海藻の前記第1の量(QI)は、有利にも、次の海洋大型海藻種:F.ベシキュロサス(褐藻植物)、O.ピンナティフィダ(紅藻植物)、アルバ・ラクティューカ(緑藻植物)、グラシラリア種(紅藻植物)およびU.インテスティナリス(緑藻植物)の少なくとも1種を含み得る。
さらに、生きている海洋大型海藻の前記第1の量(QI)が、アルバ・ラクティューカ(緑藻植物)、グラシラリア種(紅藻植物)およびU.インテスティナリス(緑藻植物)の少なくとも1種、好ましくは、少なくとも2種を含む場合が好ましい。
【0075】
図12は、塩水媒体からの生きている海洋大型海藻によるリチウムの回収効率を測定するために、本発明の発明者により考案され、実施された一連の試験の結果を示す。
【0076】
この場合も同様に、前記一連の実験は、海洋大型海藻の次記の種のそれぞれ1種に対し実施された:アルバ・インテスティナリス、フカス・スピラリス、フカス・ベシキュロサス、アルバ・ラクティューカ、グラシラリア種およびオスムンデア・ピンナティフィダ。海洋大型海藻の前記種のそれぞれ1種は、2種の濃度のリチウム:5および10mg/Lを含む初期水性媒体(AI)と相互作用した。「現場藻類」は、生態系から直接収集した藻類に相当し、一方、「ブランク溶液」は、リチウムが添加されていない海水と接触させている藻類に相当する。
【0077】
実施した試験および他の既知の生物物理学的特性によれば、本発明によるREEおよび/またはリチウムの回収工程で使用される生きている海洋大型海藻が、アルバ・ラクティューカである場合が好ましい。